JP5495505B2 - 流延方法及び溶液製膜方法 - Google Patents

流延方法及び溶液製膜方法 Download PDF

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Description

本発明は、流延方法及び溶液製膜方法に関するものである。
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは、ポリマーフィルムの中でも光学等方性に優れていることから、液晶表示装置の偏光膜の保護フィルム,光学補償フィルム(例えば、視野角拡大フィルムなど)などの光学フィルムとして用いられている。
主なフィルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、フィルムの厚さの精度を調節することが難しく、また、フィルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学フィルムの製造方法に適していない。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含んだポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に吐出し、支持体上のドープから形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、十分に乾燥した湿潤フィルムをフィルムとして巻き取る方法である。この溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、フィルム、特に光学フィルムの製造方法として、溶液製膜方法が採用されている。
ところで、溶液製膜方法によりフィルムを連続的に製造すると、支持体の表面に析出物が析出する(以下、プレートアウト現象と称する)。この析出物は、ポリマー含有の脂肪酸やカルシウムが作用して生成した脂肪酸カルシウム等を含み、支持体上のドープから析出したものと考えられる。この析出物は、支持体表面に比べドープとの密着性が大きいため、析出物が析出した支持体表面から流延膜を剥ぎ取る際には、流延膜の剥離荷重にばらつきが生じる。したがって、プレートアウト現象が発生したままの支持体上にドープを吐出して、溶液製膜方法を行うと、流延膜の一部が支持体表面に剥げ残る、或いは、湿潤フィルムに剥ぎ段とよばれる剥離跡が生成してしまう。
したがって、溶液製膜方法を行う場合には、支持体表面上の析出物を除去するために、定期的に支持体表面の手入れを行うことが必要になる。例えば、特許文献1では、溶剤を浸した布等を用いて支持体表面を拭いて、析出物を除去する方法が提案されている。
特開2003−001654号公報
ところで、特許文献1に記載される方法を行った直後の支持体表面ではプレートアウト現象の発生が抑えられるものの、一定時間(以下、表面寿命と称する)が経過すると、プレートアウト現象が再発し、流延膜の剥げ残りや湿潤フィルムに剥ぎ段が生成してしまう。更に、特許文献1に記載される方法により定期的に支持体表面のメンテナンスを行いながら溶液製膜方法を行うと、次第に表面寿命が短くなり、結果として、効率よくフィルムを製造することができない。したがって、特許文献1に記載される方法は、プレートアウト現象の発生を抑える方法としては、限界がある。
本発明は、支持体表面のメンテナンスを行い、表面寿命の短縮化を回避しつつ、ドープから流延膜を形成する流延方法、及び、効率よくフィルムを連続的に製造することができる溶液製膜方法を提供するものである。
本発明は、走行するエンドレス支持体の表面に、ポリマー及び溶媒が含まれるドープを吐出し、前記表面上の前記ドープから流延膜を形成し、前記流延膜を前記表面から剥ぎ取って湿潤フィルムとする流延方法において、前記ドープの吐出を停止し、前記表面を研磨し、表面の研磨後から24時間以内に、ドープを表面に吐出し、ポリマー1g当たりにおけるカルシウムイオン、マグネシウムイオンの含有量の総和が、1.0μmol以上3.0μmol以下であることを特徴とする。
本発明は、走行するエンドレス支持体の表面に、ポリマー及び溶媒が含まれるドープを吐出し、前記表面上の前記ドープから流延膜を形成し、前記流延膜を前記表面から剥ぎ取って湿潤フィルムとする流延方法において、前記ドープの吐出を停止し、前記表面を研磨し、前記表面の研磨後から24時間以内に、前記ドープを前記表面に吐出し、前記表面において、線条であって、長さ100μm以上、幅が1.0μm以上の欠陥が、1mm 当たりに1個以上50個以下となるように、表面の研磨を行うことを特徴とする。
表面の研磨を3回以上行うことが好ましい。前記表面の研磨後の前記表面の表面粗さが、0.0001μm以上1.0μm以下であることが好ましい。前記表面の温度を5℃以下に冷却することが好ましい。
更に、本発明の溶液製膜方法は、上記記載の流延方法によって得られる前記湿潤フィルムを乾燥して、フィルムとすることを特徴とする。
本発明によれば、プレートアウト現象を誘発する支持体表面の欠陥を除去し、新たな欠陥が生成する前の支持体表面上にドープを吐出するため、プレートアウト現象の発生を抑えることができる。したがって、本発明によれば、表面寿命の短縮化を回避しつつ、面状に優れたフィルムを効率よく連続的に製造することができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
[溶液製膜方法]
図1に、本実施形態で用いる溶液製膜設備10の概略図を示す。溶液製膜設備10は、ストックタンク11と流延室12とピンテンタ13とクリップテンタ14と乾燥室15と冷却室16と巻取室17とを有する。
ストックタンク11は、モータ11aで回転する攪拌翼11bとジャケット11cとを備える。ストックタンク11の内部には、フィルム20の原料となるポリマーが溶媒に溶解したドープ21が貯留されている。ストックタンク11内のドープ21は、ジャケット11cにより温度が略一定(25〜35℃)となるように調整される。また、攪拌翼11bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、ドープ21を均一な品質に保持している。ストックタンク11の下流には、ギアポンプ25及び濾過装置26が設置されている。ギアポンプ25は、ストックタンク11に貯留するドープ21を、濾過装置26を介して流延ダイ30に送る。濾過装置26は、ドープ21中の不純物を取り除く。濾過されたドープ21は流延ダイ30に送られる。
流延室12には、流延ダイ30、支持体としての流延ドラム32、剥取ローラ34、温調装置35,36、及び減圧チャンバ37が設置されている。流延ドラム32は図示を省略した駆動装置により軸32aを中心に、方向Z1へ回転する。この回転により、周面32bは、方向Z1へ一定速度(50m/分以上200m/分以下)で走行する。温調装置35は、流延室12の内部温度を、10〜57℃の範囲内で略一定となるように調整する。温調装置36が、流延ドラム32の周面32bの温度は所定の範囲内で略一定になるように調整されている。
流延ダイ30は、回転する流延ドラム32の周面32bに向けて、ドープ21を吐出する。その後、流延ドラム32の周面32b上のドープ21から流延膜33が形成される。そして、流延ドラム32が約3/4回転する間に、ゲル化による自己支持性が流延膜33に発現し、流延膜33は剥取ローラ34によって流延ドラム32から剥ぎ取られる。
減圧チャンバ37は、流延ダイ30に対し、方向Z1の上流側に配置されており、減圧チャンバ37内を負圧に保ち、流延ビードの背面(後に、流延ドラム32の周面32bに接する面)側を所望の圧力に減圧する。流延ビードの背面側の減圧により、流延ドラム32の回転により発生する同伴風の影響を少なくし、流延ダイ30と流延ドラム32との間に安定した流延ビードを形成し、膜厚ムラの少ない流延膜33を形成することができる。
また、温調装置36は、流延ドラム32の周面32bの温度を所望の温度に保つために、流延ドラム32に伝熱媒体を循環させる。伝熱媒体は所望の温度に保持されており、流延ドラム32内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム32の周面32bの温度が所望の温度に保持される。
流延ドラム32の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。流延ドラム32の材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延ドラム32の周面32bに施されるクロムメッキ処理はビッカース硬さHv700以上、膜厚2μm以上、いわゆる硬質クロムメッキであることが好ましい。
また、流延室12内には、蒸発している溶媒を凝縮液化するための凝縮器(コンデンサ)39と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置40とが備えられている。凝縮器39で凝縮液化した溶媒は、回収装置40により回収される。その溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
流延室12の下流には、渡り部41、ピンテンタ13、クリップテンタ14が順に設置されている。渡り部41は、搬送ローラ42によって剥ぎ取られた湿潤フィルム38をピンテンタ13に導入する。ピンテンタ13は、湿潤フィルム38の両側縁部を保持しながら搬送する。搬送される湿潤フィルム38には乾燥風が送られ、湿潤フィルム38に含まれる溶媒が除去され、フィルム20となる。
クリップテンタ14は、フィルム20の両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を走行する。クリップにより走行するフィルム20に対し乾燥風が送られ、フィルム20には、フィルム幅方向への延伸処理とともに乾燥処理が施される。
ピンテンタ13及びクリップテンタ14の下流にはそれぞれ耳切装置43a、43bが設けられている。耳切装置43a、43bはフィルム20の両側縁部を裁断する。この裁断した両側縁部は、送風によりクラッシャ44a、44bに送られて、粉砕され、ドープ等の原料として再利用される。なお、クリップテンタ14、クラッシャ44bは省略しても良い。
乾燥室15には、多数のローラ47が設けられており、これらにフィルム20が巻き掛けられて搬送される。乾燥室15内の雰囲気の温度や湿度などは、図示しない空調機により調節されており、乾燥室15の通過によりフィルム20の乾燥処理が行われる。乾燥室15には吸着回収装置48が接続されており、フィルム20から蒸発した溶媒が吸着回収される。
乾燥室15の出口側には冷却室16が設けられており、この冷却室16でフィルム20が室温となるまで冷却される。冷却室16の下流には強制除電装置(除電バー)49が設けられており、フィルム20が除電される。さらに、強制除電装置49下流側には、ナーリング付与ローラ50が設けられており、フィルム20の両側縁部にナーリングが付与される。巻取室17には、巻芯51aを回転させてフィルム20を巻芯51aに巻き取る巻取機51、プレスローラ52が設けられている。巻取室17に送られたフィルム20は、プレスローラ52で押圧されながら、巻芯51aに巻き取られる。
巻取機51で巻き取られるフィルム20は、搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フィルム20の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、2500mmより幅広の場合にも効果がある。さらに、フィルム20の厚みが20μm以上または80μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
溶液製膜設備10を用いて溶液製膜方法を行う場合には、流延ドラム32の周面32bのメンテナンスを定期的に行う必要がある。図1及び図2に示すように、本発明では、噴射装置60を用いて、流延ドラム32の周面32bのメンテナンスを行う。噴射装置60は、流延室12内に噴射ヘッド61を備える。噴射ヘッド61は、ノズル62とカバー63とからなる。噴射ヘッド61は、ノズル62からドライアイス粒子を含む気体(以下、混合気体と称する)を周面32bに向けて噴射する。また、噴射ヘッド61にはシフト部が接続されている。このシフト部の操作により、ノズル62の噴射口64と流延ドラム32の周面32bとの噴射距離L1や、周面32bに当たる際の混合気体の飛散方向と当該周面32bにおける法線方向とが成す噴射角度θ1を所望の値に設定することができる。
本発明において、ドライアイス粒子の粒子径は、5μm以上20μm以下であることが好ましい。噴射角度θ1は、45°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、5°以下であることが特に好ましい。噴射距離L1は、0.1mm以上15mm以下であることが好ましく、0.1mm以上10mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上2mm以下であることが特に好ましい。
次に、図3に示す流延工程70及び流延ドラム32のメンテナンス工程71についての一例を説明する。流延工程70では、図1に示すように、流延ドラム32が軸32aを中心に回転し、周面32bが走行する。流延ダイ30は周面32bに向けてドープ21を吐出する(図3のS100)。吐出されたドープ21は、周面32b上に流延膜33を形成する(図3のS110)。温調装置36により、流延ドラム32の温度は所定の範囲内で略一定に保持されているため、周面32b上の流延膜33は冷却され、ゲル化により自己支持性を有するものとなる。流延ドラム32の周面32bの温度は、−20℃以上5℃以下であることが好ましく、−10℃以上0℃以下であることがより好ましい。剥取ローラ34は、流延膜33を周面32bから剥ぎ取り、湿潤フィルム38として、渡り部41へ送る(図3のS120)。その後、周面32bは流延ダイ30から吐出された新たなドープ21を支持する。こうして、流延室12では、流延工程70が連続的に行われることにより、ドープ21から湿潤フィルム38が連続的に形成される。
一定時間を超えて流延工程70を連続して行うと、流延ドラム32にはプレートアウト現象が発生し、周面32b上に析出物が析出する。したがって、図3のように、流延工程70の開始から一定時間が経過する前に、メンテナンス工程71を行うことが好ましい。
図2に示すように、メンテナンス工程71では、周面32b上の析出物を除去するために、ポンプ25(図1参照)の操作により、ドープ21の流延ダイ30からの吐出を停止する(図3のS200)。次に、噴射装置60(図1参照)は、噴射ヘッド61から混合気体を周面32bに噴射する噴射処理を行う(図3のS210)。混合気体の噴射により、混合気体に含まれるドライアイス粒子が、周面32b上の析出物に衝突する。この衝突のエネルギーにより析出物を粉砕し、除去することができる。また、析出物や流延ドラム32の表面との衝突エネルギーによりドライアイス粒子は融解する。このようにして流延ドラム32の表面上に生成した液状の二酸化炭素が析出物を溶解させる。更に、析出物を含む液状の二酸化炭素が、析出物とともに蒸発することにより、流延ドラム32上の析出物を除去することも可能である。その後、所定期間の間、噴射処理を行った後、図1に示すように、ポンプ25の操作により、流延ダイ30によるドープ21の周面32bへの吐出を再開する(図3のS100)。そして、流延工程70が連続的に行われることにより、新たなドープ21から湿潤フィルム38が連続的に形成される。
図3に示すS120からS100までの間、すなわち、流延膜33が剥ぎ取られた後から新たに吐出されたドープ21を支持するまでの周面32b上では、流延膜33が存在しないものの、ドープ21を含む液膜が残留する。この液膜は、流延膜33と同様に周面32bを覆うため、周面32bが水や酸素、或いはこれらを含む物と接触することを防ぐ。しかしながら、この液膜の厚さは極めて薄いため、ドープ21の吐出停止から一定時間が経過すると、ドープ21の蒸発などにより液膜が消失してしまう結果、周面32bが露出してしまう。
流延室12内の雰囲気の湿度や酸素濃度はできるだけ低くなるように調節されているものの、雰囲気に含まれる水や酸素の量を完全に除去することは困難である。したがって、周面32bが露出すると、周面32bが水や酸素、或いはこれらを含む物と接触しやすくなる。特に、溶液製膜方法では、周面32bの温度を5℃以下に保持するため、周面32bにおいて結露が起こりやすい。周面32bが水や酸素、或いはこれらを含む物と接触すると、周面32bにおいて、酸化被膜が形成する。酸化被膜は、周面32bに比べ、脂肪酸イオン及びカルシウムのイオンが作用して析出物を析出しやすい。したがって、周面32b上に酸化被膜が形成すると、表面寿命が短くなる。
本発明では、ドープ21の吐出の停止からドープ21の吐出の再開を行うまでの期間T1を24時間以内とし、ドープ21の吐出の停止から期間T1が経過するまでに、酸化膜を除去する噴射処理を行うため、周面32bに酸化被膜が生成する前にドープ21の吐出の再開を行うことが可能となり、表面寿命の短縮化を回避しつつ、流延工程を行うことができる。したがって、本発明によれば、面状に優れたフィルムを効率よく製造することができる。
なお、液膜が残留する周面32bに噴射処理を行い、この噴射処理により前記液膜が消失した場合であっても、周面32bに酸化被膜が生成する前にドープ21の吐出の再開を行うことが可能となるため、本発明によれば、寿命の短縮化を回避しつつ、流延工程を行い、面状に優れたフィルムを効率よく製造することができる。
上記実施形態では、周面32bに析出した析出物を除去するために噴射処理を行ったが、本発明はこれに限られず、上記噴射処理に代えて、或いは、上記噴射処理と組み合わせて、公知の析出物の除去方法を行っても良い。公知の析出物の除去方法を上記噴射処理との組み合わせて行う場合には、各方法を同時に行っても良いし、各方法を逐一行っても良い。公知の析出物の除去方法としては、例えば、酸素ラジカルを周面32bに供給する方法や、紫外線を周面32bに照射する方法などがある。前者の方法を用いる場合には、酸素を含むガスが充填されたガス充填室に1対の電極を設け、この1対の電極に所定の電圧を印加することにより、当該ガスから酸素ラジカルを発生させることが好ましい。こうして発生した酸素ラジカルを、流延室12内に設けられたダクトを介して、周面32bに供給することにより、析出物をCO、CO、H0や低分子化合物などに分解することができる。後者の方法を用いる場合には、紫外線ランプ(例えば、185nm及び254nmの2つの波長に強い線スペクトルを有する低圧水銀ランプ)を用いて紫外線を周面32bに照射することが好ましい。紫外線の照射により、析出物をCO、CO、H0や低分子化合物などに分解することができる他、流延室内12の酸素分子からこれら強力な酸化力を有する酸素原子O(D)及び酸素原子O(P)を生成することが出来る。更に、その他の公知の析出物の除去方法として、溶剤を含む布を用いて周面32bを拭き、周面32b上の析出物を除去する方法がある。溶剤としては、ジクロロメタン、アセトンやメタノールのうちすくなくとも1つを含む物を用いることが好ましい。
また、上記噴射処理に代えて、周面32bを研磨する周面研磨処理を行っても良い。この周面研磨処理により、周面32b上の表面欠陥を除去することができる。
図4に示すように、流延室12内には研磨ヘッド90が設けられる。研磨ヘッド90の先端には研磨部材91が設けられる。研磨ヘッド90は、図示しないシフト機構により、研磨部材91が周面32bと接触する接触位置と、研磨部材91が周面32bとの接触から退避する退避位置との間を移動自在となっている。
図5に示すように、溶液製膜設備10(図1参照)により溶液製膜方法を連続して行い、流延工程70の開始から一定時間が経過する前に、メンテナンス工程96を行う。図5に示すように、メンテナンス工程96では、ポンプ25(図1参照)の操作により、ドープ21の流延ダイ30からの吐出を停止する(図5のS300)。次に、シフト機構により研磨ヘッド90は退避位置から接触位置に移動し、研磨部材91は走行する周面32bを研磨する周面研磨処理を行う(図5のS310)。周面研磨処理により、周面32bの表面欠陥を除去することができる。そして、周面研磨処理の開始から所定の期間経過後、研磨ヘッド90は接触位置から退避位置に移動し、周面研磨処理が終了する。その後、図1に示すように、ポンプ25の操作により、流延ダイ30によるドープ21の周面32bへの吐出を再開する(図5のS100)。
周面32b上の表面欠陥では、平坦な周面32bに比べ、酸化被膜が形成しやすく、また、ドープ21に含まれるカルシウムのイオンが滞留しやすい。したがって、周面32bに表面欠陥が形成された流延ドラム32を用いて流延工程70(図5参照)を行うと、プレートアウト現象が発生し安くなる結果、表面寿命が短くなる。
本発明では、周面研磨処理の終了からドープ21を周面32bに吐出するまでの期間T2を24時間以内とするため、周面研磨処理終了後、酸化被膜が生成する前にドープ21の吐出の再開を行うことができる。したがって、本発明によれば、表面寿命を伸ばしつつ、或いは表面寿命を維持しつつ、流延工程を行うことができる。
周面研磨処理では、周面32b全体を均一に行うことが好ましい。周面研磨処理を複数の研磨処理に分けて行うことも好ましい。複数の研磨処理を行う場合には、各研磨処理を3回以上行うことが好ましい。なお、本明細書において、1回の研磨処理とは、研磨部材を用いて流延ドラム32の周面32bを研磨し、周面32b全体の表面粗さを略均一にすることをいう。複数の研磨処理を行う場合には、各研磨処理において、異なる粒度の研磨部材を用いることが好ましく、後に行う研磨処理では、先に行った研磨処理で用いた研磨部材よりも粒度が細かい研磨部材を用いることが好ましい。
周面32bと水や酸素との接触を避けるため、窒素雰囲気或いは、Arなどの不活性ガス雰囲気中で、噴射処理や周面研磨処理を行うことが好ましい。また、周面研磨処理の後、ドープ吐出の再開前の間に、噴射処理を行っても良い。
表面粗さRaは、最終的に得られるフィルム20の表面の平滑性を考慮すると、周面32bの表面粗さRaはできるだけ小さく、例えば、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。一方、周面32bからの流延膜33の剥ぎ取り性を考慮すると、周面32bの表面粗さRaは、0.0001μm以上であることが好ましく、0.001μm以上であることがより好ましい。したがって、噴射処理後、或いは周面研磨処理後の周面32bの表面粗さRaが上記範囲となるように、噴射処理或いは周面研磨処理を行うことが好ましい。なお、周面32bの表面粗さRaは、JIS B 0601に基づき、表面粗さ計を用いて求めることができる。
周面32b上の表面欠陥の数が増大すると、周面32bにおいて、酸化被膜の生成や、プレートアウト現象の原因となる析出物の析出が誘発される。したがって、周面32bにおいて、長さ100μm以上、幅が1.0μm以上の線条の表面欠陥の数は、できるだけ少ないことが好ましく、例えば、50個/mm2 以下であることが好ましい。一方、表面欠陥がない場合には、流延ドラム32、特に周面32bにおいて発生する微小な歪みを緩衝できない結果、ワレ、ヒビや等、表面欠陥に比べ非常に大きな欠陥の発生が周面32bに生じやすくなるため、好ましくない。したがって、噴射処理後、或いは周面研磨処理後の周面32bの表面欠陥の数が上記範囲となるように、噴射処理或いは周面研磨処理を行うことが好ましい。なお、この表面欠陥の数は、周面32b上の任意に選択した面積1mm2 の領域について、マイクロスコープを用いて1000倍の倍率で観察し、存在が確認できた表面欠陥の数を表す。
上記実施形態では、期間T1を、ドープ21の吐出の停止からドープ21の吐出の再開を行うまでの期間としたが、本発明はこれに限られず、周面32bのドープ21の支持の停止から、周面32bのドープ21の支持の開始までの期間としてもよいし、当該期間のうち、前記液膜の消失により周面32bが水や酸素に晒されている間の期間としてもよい。同様にして、期間T2を、周面研磨処理の終了からドープ21を周面32bに吐出するまでの期間としたが、本発明はこれに限られず、周面研磨処理の終了から周面32bのドープ21の支持の開始までの期間としてもよいし、当該期間のうち、前記液膜の消失により周面32bが水や酸素に晒されている間の期間としてもよい。
上記実施形態では、噴射処理や周面研磨処理を流延室12内で行ったが、本発明はこれに限られず、流延ドラム32を流延室12から取り出し、別の処理室に移送し、処理室において噴射処理や周面研磨処理を行っても良い。
上記実施形態では、支持体として流延ドラム32を用いたが、エンドレスバンドを支持体として用いても良い。また、流延膜に含まれる溶媒の蒸発により、流延膜に自己支持性を発現させた後、流延膜を湿潤フィルムとして剥ぎ取っても良い。
<原料>
以下、本発明においてドープ21を調製する際に使用する原料について説明する。
本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
セルロースアセテートのアシル置換度の調整については、セルローストリアセテートをけん化して行う方法が一般的であり、本発明においてもこのような方法が用いられる。つまり、木材パルプや綿花リンターから得られるセルロースを酢酸及び無水酢酸で処理してアセチル基置換度が3のセルローストリアセテートを得る。無水酢酸はエステル化剤として働くが、その反応触媒として通常硫酸を用いる。そして、残存する硫酸を中和してから所定の公知の方法により熟成して、アシル基置換度が制御された目的とするセルロースアセテートを得る。残存する硫酸の中和は、カルシウム(Ca)化合物等の添加により行われる。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでもよい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
また、セルロースアシレートとしては、セルロースアシレート1g当たりに含まれるCaイオンの含有量XCaが0.1μmol/g以上2.5μmol/g以下、Mgイオンの含有量XMgが0.2μmol/g以上2.2μmol/g以下、Feイオンの含有量XFeが0.001μmol/g以上0.05μmol/g以下であることが好ましい。また、Xtotal=XCa+XMgとすると、Xtotalは、1.0μmol/g以上3.0μmol/g以下であることが好ましく、1.2μmol/g以上2.4μmol/g以下であることがより好ましく、2.4μmol/gであることが特に好ましい。Xtotalが1.0μmol/g未満の場合は、セルロースアシレートの脱アシル化反応が容易に起こりやすくなるため好ましくない。一方、Xtotalが3.0μmol/gを超えると、塩等として支持体に析出しやすくなるため好ましくない。
また、本明細書における含有量XCa、Mg含有量XMg、Fe含有量XFeは、セルロースアシレートをサンプルとして、イオンクロマトグラフィー、原子吸光スペクトル、ICP、ICP−MS等の分析方法により定量した値とする。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度および光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。アルコールとしては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステルおよびアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。各実験の説明は実験1で詳細に行い、実験2〜5については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
(実験1)
次に、実験1について説明する。フィルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
[ドープの調製]
ドープ21の調製に用いた化合物の処方を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.8) 89.3重量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1重量部
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6重量部
の組成比からなる固形分(溶質)を
ジクロロメタン 80重量部
メタノール 13.5重量部
n−ブタノール 6.5重量部
からなる混合溶媒に適宜添加し、攪拌溶解してドープ21を調製した。なお、ドープ21のTAC濃度は略23重量%になるように調整した。ドープ21を濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンク11に入れた。
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Caイオンの含有量XCaが1.65μmol/g、Mgイオンの含有量XMgが0.75μmol/g、Feイオンの含有量XFeが0.01μmol/gであった。XCaとXMgとの和であるXtotalは2.4(μmol/g)であった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、パルプから採取したセルロースを原料として合成されたものである。
溶液製膜設備10を用いてフィルム20を製造した。ポンプ25は、ストックタンク11内のドープ21を、濾過装置26を介して流延ダイ30へ送った。軸32aの駆動により、流延ドラム32を回転させた。周面32bの走行方向Z1における速度は、50m/分以上200m/分以下とした。温調装置36は、流延ドラム32の周面32bの温度を、−20℃以上0℃以下に調節した。流延ダイ30は、ドープ21を周面32b上に吐出し、周面32bに流延膜33を形成した。冷却により、流延膜33が自己支持性を有するものとなった後、剥取ローラ34を用いて、流延ドラム32から流延膜33を湿潤フィルム38として剥ぎ取った。剥取ローラ34は、湿潤フィルム38を渡り部41に案内した。渡り部41では、乾燥風を湿潤フィルム38にあてて、湿潤フィルム38を乾燥させた。渡り部41に設けられる搬送ローラ42は、湿潤フィルム38をピンテンタ13に案内した。湿潤フィルム38は、ピンテンタ13、乾燥室15での乾燥処理を経てフィルム20となった。フィルム20を巻取室17内の巻取機51で巻き取った。
以上の溶液製膜方法を連続で行い、フィルム20を連続製造した。流延工程70において、流延ドラム32にてプレートアウト現象発生の確認後、メンテナンス工程71を行った。メンテナンス工程71では、ドープ21の吐出を停止して、流延ドラム32の周面32bに噴射処理のみを施した。噴射処理後、周面32bの表面粗さRa及び周面32bにおける表面欠陥の数Nを測定したところ、表面粗さRaは、0.005μmであり、長さ100μm以上、幅が1.0μm以上の線条の表面欠陥の数Nは、10個/mm2 であった。その後、噴射処理が施された流延ドラム32へドープ21の吐出を再開した。ドープ21の吐出停止からドープ21の吐出の再開までの期間T1が20時間であった。このようにして、溶液製膜方法を行い、フィルム20を連続して製造した。
(表面寿命の評価)
各メンテナンス工程71,96を行った後の溶液製膜方法の開始から流延膜の剥げ残りや湿潤フィルムに剥ぎ段が発生するまでの表面寿命を求めた。そして、得られた表面寿命を以下基準に基づいて判定した。
◎:表面寿命が100時間以上であった。
○:表面寿命が48時間以上100時間未満であった。
△:表面寿命が24時間以上48時間未満であった。
×:表面寿命が24時間未満であった。
(実験2〜5)
実験2〜5では、表1に示す値にしたこと以外は、実験1と同様にしてフィルム20を製造した。
Figure 0005495505
表1から、本発明によれば、表面寿命を低下させることなく、面状に優れたフィルムを効率よく連続的に製造できることがわかった。
本発明に係る溶液製膜設備の概要を示す説明図である。 噴射処理の概要を示す側面図である。 流延工程及び第1のメンテナンス工程の概要を示す工程図である。 周面研磨処理の概要を示す側面図である。 流延工程及び第2のメンテナンス工程の概要を示す工程図である。
符号の説明
10 溶液製膜設備
12 流延室
20 フィルム
32 流延ドラム
33 流延膜
38 湿潤フィルム
60 噴射装置
61 噴射ヘッド
70 流延工程
71、96 メンテナンス工程
90 研磨ヘッド
91 研磨部材

Claims (6)

  1. 走行するエンドレス支持体の表面に、ポリマー及び溶媒が含まれるドープを吐出し、前記表面上の前記ドープから流延膜を形成し、前記流延膜を前記表面から剥ぎ取って湿潤フィルムとする流延方法において、
    前記ドープの吐出を停止し、
    前記表面を研磨し、
    前記表面の研磨後から24時間以内に、前記ドープを前記表面に吐出し、
    前記ポリマー1g当たりにおけるカルシウムイオン、マグネシウムイオンの含有量の総和が、1.0μmol以上3.0μmol以下であることを特徴とする流延方法。
  2. 走行するエンドレス支持体の表面に、ポリマー及び溶媒が含まれるドープを吐出し、前記表面上の前記ドープから流延膜を形成し、前記流延膜を前記表面から剥ぎ取って湿潤フィルムとする流延方法において、
    前記ドープの吐出を停止し、
    前記表面を研磨し、
    前記表面の研磨後から24時間以内に、前記ドープを前記表面に吐出し、
    前記表面において、線条であって、長さ100μm以上、幅が1.0μm以上の欠陥が、1mm当たりに1個以上50個以下となるように、前記表面の研磨を行うことを特徴とする流延方法。
  3. 前記表面の研磨を3回以上行うことを特徴とする請求項1または2記載の流延方法。
  4. 前記表面の研磨後の前記表面の表面粗さが、0.0001μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の流延方法。
  5. 前記表面の温度を5℃以下に冷却することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の流延方法。
  6. 請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の流延方法によって得られる前記湿潤フィルムを乾燥して、フィルムとすることを特徴とする溶液製膜方法。
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