JP5495392B2 - 廃液から有価物を製造する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ素系廃液の処理過程で発生するケイフッ化水素酸を原料として、工業用薬品として有用なケイフッ化ナトリウムを製造する方法に関するものである。
半導体製造産業、液晶製造産業、及び太陽電池製造産業等の産業では、ケイ素化合物のエッチングやケイ素基盤洗浄等の工程において、多量のフッ化水素酸が、単独或いは塩酸等の酸と適当な比率で混合された混酸として使用されている。それに伴い、使用後のフッ素系廃液量も増加しており、地球環境保全及び資源の有効利用の観点からその適切な処理が望まれている。そして、その処理も産業廃棄物として処理するのではなく、フッ素資源の有効利用のため、その廃液を原料として使用し、工業薬品を製造する方法の確立が求められている。
フッ素系廃液の廃物の負荷を軽減するためのいくつかの方法が報告されている。その例として、ケイ素を含む場合、難溶性のケイフッ化ナトリウムを生成するナトリウム化合物やカリウム化合物を加え、ケイフッ化ナトリウムやケイフッ化カリウムとして取り除き、処理後の液をガラスのケミカルエッチング剤として再利用する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、ガラスのケミカルエッチング廃液に対して、まずナトリウム化合物やカリウム化合物を加えて廃液中のケイフッ化水素酸及びホウフッ化水素酸を難溶性のケイフッ化ナトリウムまたはホウフッ化物として固定化処理した後、カルシウム塩を加えてフッ素を固定化するか、ホウフッ化物を含有する場合はあらかじめアルミニウム化合物を加えてホウフッ化物をホウ酸とフッ化物に分解した後、カルシウム塩を加えてフッ素の固定化処理を行う方法がある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、これらの方法は、ケイフッ化物の製造に関して、操作の手順、原料化合物の選定、原料化合物の量、原料化合物の投入方法等、工業的製法として必要な条件については検討されていない。
したがって、これらの方法で回収したケイフッ化ナトリウムは、廃水の処理過程でフッ素を除去するための方法において発生した産業廃棄物であって、かなり純度が低く工業用薬品としての価値は極めて低い。
特許第3623663号公報
特許第3635643号公報
本発明は、半導体製造産業、液晶製造産業、及び太陽電池製造産業等の産業から排出されるフッ素系廃液の処理過程で発生するケイフッ化水素酸を原料として、工業薬品として有用なケイフッ化ナトリウムを製造する方法を提供することを目的とするものである。
フッ素系廃液に含まれるケイフッ化水素酸については、例えば、特許文献2に記載されているように、ケイフッ化水素酸はナトリウム化合物で処理することにより難溶性のケイフッ化ナトリウムとして分離できるが、フッ素系廃液には、消費されなかったフッ化水素酸を多量に含有しているので、ナトリウム化合物で処理したときにフッ化ナトリウムや酸性フッ化ナトリウムが生成するため、この方法では、工業薬品レベルの品位のケイフッ化ナトリウムを製造することは困難である。
したがって、前記特許文献記載の方法はあくまでも廃液中のフッ素を除去するための方法に過ぎず、ケイフッ化ナトリウムを製造する方法には適さない。
本発明者等は、鋭意研究の結果、フッ素系廃液の処理過程で発生するケイフッ化水素酸を原料として、工業用薬品として有用なケイフッ化ナトリウムを製造する方法を見出した。すなわち、フッ素系廃液の処理過程で発生するケイフッ化水素酸を原料として、工業用薬品レベルの品位のケイフッ化ナトリウムを製造するための、操作の手順、原料化合物の選定、原料化合物の量、原料化合物の投入方法について種々検討し、工業的に確立し得る方法を完成するに至った。
本発明は、フッ素系廃液に含まれるフッ化水素酸を酸化ケイ素化合物と反応させる過程で発生するケイフッ化水素酸をナトリウム化合物と反応させることによって、ケイフッ化ナトリウムを製造する方法に関するものである。
以下に、本発明について、詳細に説明する。
フッ素系廃液中に含まれるケイフッ化水素酸は、ナトリウム化合物と反応させケイフッ化ナトリウムとすることができるが、フッ化水素酸が共存する場合、ケイフッ化ナトリウムを製造する過程で、ナトリウム化合物と反応し、フッ化ナトリウムや酸性フッ化ナトリウムが生成するのでケイフッ化ナトリウムの純度が低減する。したがって、フッ化水素酸は酸化ケイ素化合物と反応させてケイフッ化水素酸に変換しておかなければならない。使用する酸化ケイ素化合物としては、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、及びケイ酸ナトリウムを挙げることができる。
そして、本発明の目的であるケイフッ化ナトリウムを製造するためには、反応させる酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数がフッ化水素酸のモル数に対して0.20から0.33倍であればよい。
Figure 0005495392
これは、酸化ケイ素化合物として二酸化ケイ素の一例である式(1)に示す酸化ケイ素化合物とフッ化水素酸の反応において、酸化ケイ素化合物を過剰にして化学平衡をケイフッ化水素酸の生成方向へ促進させるためである。
なお、酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数が、フッ化水素酸のモル数に対して、0.20倍を下回ると、フッ化水素酸を完全にケイフッ化水素酸に変換できない。0.33倍を上回ることは経済的でない。
実際には、合成槽中において廃液を攪拌しながら、酸化ケイ素化合物を添加していき、フッ化水素酸を酸化ケイ素化合物と反応させてケイフッ化水素酸とし、過剰の酸化ケイ素化合物はろ過して除去する。
次に、前記の方法で調整した液にナトリウム化合物を添加し、ケイフッ化ナトリウムを合成する。ナトリウム化合物としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムが使用できる。ナトリウム化合物の添加方法は、固体の状態で投入してもよいが、適当な濃度の水溶液にして添加する方が、反応を制御しやすい。
廃液とナトリウム化合物の投入は、全量を一度に行ってもよいが、ケイフッ化ナトリウムの析出と分離を何回かに分けながら段階的に行ってもよい。また、ナトリウム化合物の投入量は、フッ素系廃液には、塩酸やホウフッ化水素のような他の種類の酸も含まれている場合もあり、ケイフッ化ナトリウムを収率よく回収するためには、ケイフッ化水素酸のモル数に対し、2.10から3.30倍が最適である。
また、ナトリウム化合物の投入量は、ナトリウム化合物に含まれるナトリウムのモル数でケイフッ化水素酸のモル数に対し、2.10〜3.30倍投入する。これは、本発明の目的であるケイフッ化ナトリウムを得るためには、式(2)で示す反応についてナトリウム化合物を過剰に添加することで、ケイフッ化ナトリウムが生成される方へ促進させるためである。ナトリウム化合物添加量がケイフッ化水素酸のモル数に対し2.10倍を下回ると、ケイフッ化水素酸をケイフッ化ナトリウムとして完全に回収できない。また、3.30倍を上回ることは、経済的でない。
Figure 0005495392
なお、ナトリウム化合物は、廃液中にホウフッ化水素酸が含まれる場合、ホウフッ化ナトリウムを生成させるが、投入量がそれに含まれるナトリウムのモル数でケイフッ化水素酸のモル数に対し、2.10〜3.30倍であれば、十分溶解し結晶となって析出はしない。
ケイフッ化ナトリウムを合成するとき、反応温度を35〜70℃の間で調整すると、35℃未満の場合と比較してケイフッ化ナトリウムの高純度で大きな結晶が得られるので、ケイフッ化ナトリウムを遠心分離機等のろ過器で反応液と分離する作業が円滑になり、工業的製法としてより有利になる。また、反応温度が70℃以上になると、反応液からケイフッ化水素酸が蒸発することや熱エネルギーを過剰に加えることになり、現実的ではない。 さらに反応温度の調整は、反応装置を加熱して制御してもよいが、ナトリウム化合物の水溶液を反応温度が35〜70℃になるように予め加熱して投入すると、より結晶が大きく成長するので有利である。
以上の発明によって製造したケイフッ化ナトリウムは、遠心ろ過機のようなろ過機で分離した後、乾燥して製品とする。
請求項1記載の発明によれば、半導体製造産業、液晶製造産業、及び太陽電池製造産業等の産業から排出されるフッ素系廃液に含まれるフッ化水素酸と酸化ケイ素化合物とを、酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数がフッ化水素酸のモル数に対して0.20から0.33倍で反応させる過程で発生するケイフッ化水素酸を原料として、工業用薬品であるケイフッ化ナトリウムを製造することができ、地球環境保護及び限られた資源の有効利用に益するところ大である。
請求項2記載の発明によれば、酸化ケイ素化合物として、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウムのいずれかを用いることで、ケイフッ化水素酸を製造することができる。
請求項記載の発明によれば、ナトリウム化合物である水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれかを、ケイフッ化水素酸のモル数の2.10から3.30倍で反応させることでケイフッ化ナトリウムの製造ができる。
請求項4記載の発明によれば、反応温度を35〜70℃の間で調整するか、あるいは、ナトリウム化合物の水溶液をあらかじめ加熱して投入して反応温度が35〜70℃になるように調整することにより、ケイフッ化ナトリウムの製造を可能にすることができる。
以下に、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
フッ素系廃液処理工程から得られた、フッ化水素酸5.50重量%を含む廃液400kgを原水とし、1mのポリエチレン容器に取った。これにフッ化水素酸量のモル数の0.28倍の二酸化ケイ素粉末18.5kgを投入し攪拌し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にした。そして、過剰分の二酸化ケイ素をろ過機で分離した。
ろ過液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は0.01重量%以下で、ケイフッ化水素酸の濃度は、18.2重量%であった。
このろ過液410kgを1mの本体が鉄製で内面がポリプロピレンライニングされたジャケット付反応器に計り採り、反応器のジャケットに減圧蒸気を流して液温を45℃に加熱した。
次に、液を攪拌しながら、炭酸水素ナトリウムの粉末103kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.30倍)を炭酸ガスの発生を調整しながら、少しずつ添加した。添加終了後、3時間攪拌をした。そのとき、反応熱も発生して、反応温度は58℃になった。
反応液を1日間放冷した。その後、結晶を遠心ろ過機で分離し後、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム98.9kgを得た。
その分析結果は、純度99.5重量%、平均粒子径(d50)が113μmであった。
(実施例2)
フッ素系廃液処理工程から得られた、フッ化水素酸5.70重量%を含む廃液500kgを原水とし、1mのポリエチレン容器に取った。これにフッ化水素酸量のモル数の0.30倍のニ酸化ケイ素粉末25.7kgを投入し攪拌し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にした。そして、過剰分の二酸化ケイ素をろ過機で分離した。
ろ過液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は0.01重量%以下で、ケイフッ化水素酸の濃度は、18.1重量%であった。
この液を攪拌しながら、45℃に加熱した20重量%水酸化ナトリウム溶液312kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.36倍)を80分かけて滴下し、滴下終了後、4時間攪拌した。そのとき、反応温度は48℃になった。
反応液を1日間放冷した後、結晶を遠心ろ過機で分離し後、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム121kgを得た。
その分析結果は、純度99.8重量%、平均粒子径(d50)が65μmであった。
(実施例3)
フッ素系廃液処理工程から得られた、フッ化水素酸3.20重量%を含む廃液330kgを原水とし、1mのポリエチレン容器に取った。これにフッ化水素酸量のモル数の0.25倍の二酸化ケイ素粉末7.91kgを投入し攪拌し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にした。そして、過剰分の二酸化ケイ素をろ過機で分離した。
ろ過液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は0.01重量%以下で、ケイフッ化水素酸の濃度は、14.3重量%であった。
この液を攪拌しながら、70℃に加熱した20重量%塩化ナトリウム溶液250kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.56倍)を50分かけて滴下し、滴下終了後、3時間攪拌した。そのとき、反応熱も発生して、反応温度は55℃になった。
反応液を1日間放冷した。その後、結晶を遠心ろ過機で分離し、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム64.5kgを得た。
その分析結果は、純度99.7重量%、平均粒子径(d50)が101μmであった。
(比較例)
フッ素系廃液処理工程から得られた、フッ化水素酸3.20重量%を含む廃液330kgを原水とし、1mのポリエチレン容器に取った。これにフッ化水素酸量のモル数の0.17倍の二酸化ケイ素粉末6.37kgを投入し攪拌し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にした。そして、過剰分の二酸化ケイ素をろ過機で分離した。
ろ過液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は1.30重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は、13.5重量%であった。
この液を攪拌しながら、室温の20重量%塩化ナトリウム溶液188kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.04倍)を50分かけて滴下し、滴下終了後、3時間攪拌した。そのとき、反応熱が発生したが、反応温度は26℃になった。
反応液を1日間放冷した後、実施例3のときの3.5倍の時間をかけて結晶を遠心ろ過機で分離した後、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム52.7kgを得た。
その分析結果は、純度86.7重量%、平均粒子径(d50)が13.5μmであった。さらに、X線回折分析で調査したところ、ケイフッ化ナトリウムの他に、フッ化ナトリウム及び酸性フッ化ナトリウムが含まれており、工業用薬品として要求される品位を大きく下回ることが判明した。

Claims (4)

  1. ッ素系廃液に含まれるフッ化水素酸と酸化ケイ素化合物とを、酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数がフッ化水素酸のモル数に対して0.20から0.33倍で反応させ、その過程で発生するケイフッ化水素酸を、ナトリウム化合物である水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかと反応させ、ケイフッ化ナトリウムを製造する方法。
  2. 化ケイ素化合物として、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウムのいずれかを用いることを特徴とする、請求項1記載のケイフッ化ナトリウムの製造方法。
  3. ナトリウム化合物である水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれかをケイフッ化水素酸のモル数の2.10から3.30倍で反応させること特徴とする請求項1記載のケイフッ化ナトリウムの製造方法。
  4. 反応温度を35℃〜70℃の間で調整するか、ナトリウム化合物の水溶液を反応温度が35〜70℃になるように加熱して投入し、ケイフッ化ナトリウムを合成することを特徴とする請求項1又は3記載のケイフッ化ナトリウムの製造方法。
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