JP5494352B2 - 金型溶着判定方法及びその装置 - Google Patents
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Description
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記累積値に基づいて判定された金型の溶着可能性のある領域をその他の領域と識別可能な色によって表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記累積値に基づいて判定された金型の領域を、金型の溶着可能性のある領域を示す識別情報と金型の溶着可能性のない領域を示す識別情報に基づき金型の溶着可能性のある領域と金型の溶着可能性のない領域とを識別可能に表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
請求項4の発明によれば、基本的に請求項2と同様の作用、効果を奏する溶着判定装置を得ることができる。
請求項6の発明によれば、応力解析における境界条件(負荷条件)を注湯回数に応じて設定することができるため、高精度の応力解析ができる。
本実施例では、Al−Si−Cu系Al合金としてのADC10(JIS規格)の溶湯をキャビティを備えた金型へ加圧状態で注湯し、鋳造成形品、例えば、シリンダブロックB(図3参照)を形成する金型鋳造の例について説明する。
金型の化学成分は、C:0.32〜0.42wt%,Si:0.80〜1.20wt%,Mn:0.50wt%以下,P:0.030wt%以下,S:0.030wt%以下,Cr:4.50〜5.50wt%以下,Mo:1.00〜1.50wt%以下,V:0.80〜1.20wt%以下,残部:Feとされている。更に、この金型には、例えば、820〜870℃の焼きなまし、或いは1000〜1050℃の焼入れに続けて、550〜650℃の焼戻し等の熱処理が施されている。
図1に示すように、溶着判定装置1は、CAD(Computer Aided Design)装置2と、CAE(Computer Aided Engineering)装置3と、データベースとしての記憶装置4と、入力装置5と、処理装置6と、表示装置7等を備えている。CAD装置2とCAE装置3と記憶装置4と処理装置6は、通信回線を介して相互に各種情報の伝達が可能に構成されている。尚、前記各装置は、その他の通信手段を介して情報の送受信が相互に可能であり、また、各種情報を記録媒体に記憶させて他の装置に情報を伝達するように構成することも可能である。
S1では、金型への溶湯注入後において、溶湯が金型に溶着するか否かを判定するための溶着判定基準温度Tを設定する。溶着判定基準温度Tは、図3に示すように、シリンダブロックBの表面に対して複数の溶湯温度測定箇所、例えば測定ポイントa〜eを予め設定し、実際の鋳造工程において、シリンダブロックBの測定ポイントa〜eの溶湯温度を注湯からの経過時間毎に計測し、図4に示す各測定ポイントa〜eの溶湯温度の経過時間に対する推移傾向である溶湯温度曲線Ta〜Teを作成する。ここで、作成された溶湯温度曲線Ta〜Teは、各測定ポイントa〜e部分の溶湯と金型との境界部分の近傍部における溶湯温度である。尚、本例では説明のためa〜eの5箇所の測定ポイントを取り上げるが、より高い精度で解析を行うためには、測定ポイント数をより多く設定する、加えて、測定ポイントの配置を、凹、凸、平面など、金型内のあらゆる形状を網羅することが必要である。
CAE装置3は、CAE温度解析プログラムに基づいて溶湯の溶湯注入開始後における複数の経過時間における凝固解析を行う(S11)。図7に示すように、解析対象物としてのシリンダブロックBを三角形形状の面を備えた四面体要素等によって三次元的に要素分割し、複数のノードを備えたメッシュ状の有限要素モデル9を作成している。四面体要素によるシリンダブロックBの表面の要素分割は、任意に設定可能である。尚、凝固解析にあたり、有限要素モデル9をCAD装置2からの金型モデル情報に基づき作成することも可能である。また、本凝固解析工程では、有限要素モデル9全てのノードについて、溶着判定を行うものであるが、説明の便宜上、5つのノードf〜jを例として説明する。
CAD装置2によって、金型の形状データに基づき金型モデルを作成し(S21)、図8に示すように、この金型モデルに基づいて金型形状の複数のノードDf,Dg,Dhを備えた金型メッシュモデルとしての有限要素モデル8を作成している(S22)。金型の有限要素モデル8は、三角形形状等の面を備えた要素で二次元的に要素分割し、複数のノードを備えたシェルメッシュ状で作成している。ここで使用する有限要素モデルは、構造解析に主に用いる三次元ソリッドメッシュでも本技術が適用可能である。しかし、溶着という金型表面に発生する現象を捉える目的に対し、三次元ソリッドメッシュでは金型内部にまでメッシュを配置し、余剰な解析負荷が発生する虞があるため、溶着判定を精度よく実施するためには、二次元シェルメッシュの活用が最適であると考えられる。また、有限要素モデルの定義は、ノード番号情報、座標情報が備わっていれば、分割形式や分割要素数について、任意に設定可能である。有限要素モデル8は、ノードf,g,hの配置位置に対応したノードDf,Dg,Dhを備えている。S22が、本発明の有限要素モデル作成工程に相当している。
S31の判定の結果、溶着が発生する可能性のあるノードと判定された場合、そのノードに識別情報Xを付与する(S32)。
S35では、領域AXの表面積と固体状態の鋳造素材ADC10の剪断力を乗算して、鋳造成形品を金型から離型する際の領域AXに掛る剪断荷重を計算している。前記剪断力は、所定部位(例えば、鋳抜きピン)の溶着によって鋳抜きピンに発生する合力成分の引抜き方向の分力として算出することができる。
S36では、S35で求めた領域AXの剪断荷重を、領域AXを構成するノード数で除算し、溶着が発生する可能性のある個々のノードに掛る引張応力を算出している(S37)。
S39では、識別情報Yが付与されたノードで構成された領域AYを領域AXと識別可能な色により色別(例えば青や緑色)表示している。図11に示すように、本実施例では、領域AYを、400回未満の注湯回数で溶着が発生する可能性のあるノードで構成される領域AY1と、800回未満の注湯回数で溶着が発生する可能性のあるノードで構成される領域AY2と、1500回未満の注湯回数で溶着が発生する可能性のあるノードで構成される領域AY3と、3000回未満の注湯回数で溶着が発生する可能性のあるノードで構成される領域AY4と、6000回未満の注湯回数で溶着が発生する可能性のあるノードで構成される領域AY5の5つの領域に区分して色別表示しており、これらの領域は、注湯回数に応じて識別情報Yから、識別情報Xへ変更される。
S41では、領域AYの表面積と固体状態の鋳造素材の摩擦力を乗算して、鋳造成形品を金型から離型する際の領域AYに掛る摩擦荷重を計算している。前記摩擦力は、所定部位(例えば、鋳抜きピン)の離型時、金型と固体状態の鋳造素材との摩擦によって鋳抜きピンに発生する合力成分の引抜き方向の分力として算出することができる。尚、剪断力と摩擦力は、金型からの抜き勾配が規定により決定される定数項であるため、予め両者の相関を求めておき、一方の値から他方の値を算出することも可能である。
処理装置6(基準温度設定手段)は、金型への溶湯注入後において溶湯が金型に溶着するか否かを判定するための溶着判定基準温度Tを設定するため、金型の材質と溶湯の材質が同じ組み合わせの場合、製品形状が変更されても溶着判定基準温度Tを共通に使用することができる。CAE装置3(溶湯温度算出手段)は、金型の複数部位に対応した溶湯の溶湯注入開始後の複数の経過時間における複数の溶湯温度Tf〜Tjを算出するため、演算により、溶湯と金型との境界部分の近傍部における溶湯温度を正確に算出することができる。
積算温度Eに基づいて判定された金型の領域を、金型の溶着可能性のある領域を示す識別情報Xと金型の溶着可能性のない領域を示す識別情報Yに基づき識別可能に表示する表示装置7を備えているため、視認しながら、溶着が発生可能性のある領域と溶着が発生する可能性のない領域を区分して金型に掛る初期負荷条件を設定することができ、精度の高い応力解析ができる。
1〕前記実施例においては、SKD61の金型とADC10の溶湯を採用した例を説明したが、少なくとも、溶着が発生する組み合わせであれば本発明を適用することができ、SKD11やSKD61等の金型とADC1やADC8等の溶湯を用いることも可能である。
2 CAD装置
3 CAE装置
4 記憶装置
6 処理装置
7 表示装置
8 (金型)有限要素モデル
8a (鋳抜きピン)有限要素モデル
9 (シリンダブロック)有限要素モデル
T,T1 溶着判定基準温度
S 評価基準
Tf〜Tj 溶湯温度
Ef〜Eh 積算温度
Claims (6)
- 注入された溶湯の金型への溶着を判定する金型溶着判定方法において、
金型へ注入された溶湯が金型に溶着するか否かを判定するための溶着判定基準温度を予め設定する第1ステップと、
金型の1または複数部位に対応した溶湯の溶湯注入開始後の複数の経過時間における複数の溶湯温度を算出する第2ステップと、
前記溶湯温度をステップ1の溶湯判定基準温度と照合して、溶着を判定する第3ステップと、
を備えたことを特徴とする金型溶着判定方法。 - 前記溶湯温度が前記溶着判定基準温度以上になる超過温度と経過時間とを時間積分して累積値を算出する第4ステップと、
前記累積値と、溶着の発生なしに金型へ注湯可能な有効注湯回数との関係を示す評価基準を設定する第5ステップと、
前記評価基準に基づいて金型のメンテナンス時期を決定する第6ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の金型溶着判定方法。 - 注入された溶湯の金型への溶着を判定する金型溶着判定装置において、
金型へ注入された溶湯が金型に溶着するか否かを判定するための溶着判定基準温度を設定する基準温度設定手段と、
金型の1または複数部位に対応した溶湯の溶湯注入開始後の複数の経過時間における複数の溶湯温度を算出する溶湯温度算出手段と、
前記溶湯温度が前記溶着判定基準温度以上になる温度領域を溶着と判定する溶着判定手段を備えたことを特徴とする金型溶着判定装置。 - 前記溶着判定基準温度を超過する温度曲線の超過分温度と経過時間とを時間積分して累積値を算出する累積値算出手段と、前記累積値と、溶着の発生なしに金型へ注湯可能な有効注湯回数との関係を示す評価基準を設定する評価基準設定手段と、
前記評価基準に基づいて金型のメンテナンス時期を決定する時期決定手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の金型溶着判定装置。 - 前記累積値に基づいて判定された金型の溶着可能性のある領域をその他の領域と識別可能な色によって表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の金型溶着判定装置。
- 前記累積値に基づいて判定された金型の領域を、金型の溶着可能性のある領域を示す識別情報と金型の溶着可能性のない領域を示す識別情報に基づき金型の溶着可能性のある領域と金型の溶着可能性のない領域とを注湯回数に応じて識別可能に表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の金型溶着判定装置。
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