JP2008155230A - 鋳造方案設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳造条件が変動しても鋳物の品質を保証することができる鋳造方案設計方法を提供する。
【解決手段】複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固解析に基づく鋳造方案設計方法であって、前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する段階(S300)と、前記複数水準の鋳物の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の熱物性値を算出する段階(S310)と、前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する段階(S320)と、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内であるか否かを判定する段階(S340)と、を含んでいる。
【選択図】図3
【解決手段】複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固解析に基づく鋳造方案設計方法であって、前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する段階(S300)と、前記複数水準の鋳物の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の熱物性値を算出する段階(S310)と、前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する段階(S320)と、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内であるか否かを判定する段階(S340)と、を含んでいる。
【選択図】図3
Description
本発明は、鋳造方案設計方法に係わり、詳細には、電子計算機によるシミュレーションを利用した鋳造方案設計方法に関する。
健全で安価な鋳物を製造するためには、鋳造品の形状や鋳造の設計方針を事前に検討することが必要である。そのための手段の一つとして、電子計算機(以下、「コンピュータ」と称する)を用いた鋳造解析が広く用いられている。
鋳造解析の種類は、流動解析、変形解析、伝熱凝固解析など多岐に渡り、特に、伝熱凝固解析は、鋳物の機械的特性の予測(例えば、鋳物の硬度や強度)、引け巣の予測、または金属組織の不良による鋳造欠陥の予測をするための重要な解析方法である(例えば、特許文献1および特許文献2)。
一般的な伝熱凝固解析は、解析モデル(解析対象物となる鋳物や鋳型領域を複数の要素(以下、「セル」と称する)に分割して構成されるモデル)において、相互に隣接するセル間の微少時間における熱流束を計算し、これを順次、微少時間間隔ごとに繰り返し、解析モデルの温度変化を求める解析方法である。
各セル間の熱流束の計算は、セルごとに設定された熱物性値、例えば、凝固開始温度、凝固潜熱量、比熱、熱伝導率などを用いて行われる。
ところで、日常の操業において鋳造条件が変動する場合、これに応じて鋳物の熱物性値も変動することが考えられる。熱物性値の変動は、鋳物の凝固形態に直接影響を与えるので、鋳物の品質に重大な影響を及ぼす可能性がある。
しかしながら、従来の伝熱凝固解析方法では、鋳造条件の変動にかかわらず、鋳物の熱物性値として1種類の鋳物の金属材種につき1水準の値のみを用い、解析結果が目標とする鋳物の品質を満足するまで解析モデルの形状を変化させて伝熱凝固解析を繰り返し実行していた。
特開平7−113771号公報
特開平8−313464号公報
したがって、上記従来の伝熱凝固解析方法では、鋳造条件の変動に係わらず解析に用いた1水準の鋳物の熱物性値に対しての鋳物の品質が保証されるに留まり、鋳造条件の変動に伴い変化する熱物性値に対しての鋳物の品質を保証することができないという問題点がある。
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、鋳造条件が変動しても鋳物の品質を保証することができる鋳造方案設計方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る鋳造方案設計方法は、複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固解析に基づく鋳造方案設計方法であって、前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する段階と、前記複数水準の鋳物の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の熱物性値を算出する段階と、前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する段階と、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内であるか否かを判定する段階と、を含むことを特徴とする。
また、上記の目的を達成するために本発明に係る鋳物の鋳造方案設計装置は、複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固計算に基づく鋳造方案設計装置であって、前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する鋳造条件設定手段と、前記複数水準の鋳物の鋳造条件に対応する前記鋳物の熱物性値を算出する熱物性値算出手段と、前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する伝熱凝固解析手段と、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内か否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
また、上記の目的を達成するために本発明に係る鋳物の鋳造方案設計プログラムは、複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固計算に基づく鋳造方案設計プログラムであって、前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する手順と、前記複数水準の鋳物の鋳造条件に対応する前記鋳物の熱物性値を算出する手順と、前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する手順と、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内か否かを判定する手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
以上のように構成された本発明に係る鋳物の鋳造方案設計方法、鋳造方案設計装置、および鋳造方案設計プログラムによれば、複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する鋳物の熱物性値を算出して伝熱凝固解析を実行している。この結果、鋳造条件の変動に伴い変化する鋳物の熱物性値に対応した鋳物の品質を保証することができ、精度の高い鋳造方案設計方法を提供することができる
本発明者は、鋳物の熱物性値の変化が鋳物の溶湯が凝固するときの温度変化を示す冷却曲線から読み取れることに着目した。そして、この冷却曲線から、鋳造条件と鋳物の熱物性値との関係式を導出し、この関係式を伝熱凝固解析に適用することによって、複数水準の鋳造条件に対応した鋳物の品質を予測することが可能となることを見出した。
以下に、本発明に係る鋳造方案設計方法を第1実施形態および第2実施形態に分けて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同じ構成要素には、同じ参照番号を付してある。
まず、本発明に係る鋳造方案設計方法を実施するための鋳造方案設計装置について詳細に説明しておく。
図1は、本発明に係る鋳造方案設計方法を実施するための鋳造方案設計装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態における鋳造方案設計装置(以下、「コンピュータ」と称する)100は、CPU111、RAM113、ROM115、ハードディスク117、ディスプレイ121、および入力部131を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス141を介して相互に接続されている。
コンピュータ100は、例えばパーソナルコンピュータなどの電子計算機であり、伝熱凝固解析プログラム(以下、「シミュレーションプログラム」と称する)に基づいて伝熱凝固解析を実行したり、解析結果から得られた情報を加工して表示したりするものである。解析結果から得られる情報は、例えばセルの温度の経時的変化、共晶凝固開始温度、凝固潜熱量、冷却速度、または凝固時間などであり、解析結果から得られる各種の情報(以下、これらの情報を「欠陥判定パラメータ」と称する)が該当する。そして、欠陥判定パラメータに基づき鋳物の比較・評価、例えば製品として合格品であるか否か(鋳物の品質が保証されているか否か)などの判断が行われる。
CPU111は、シミュレーションプログラムに基づいて上記各部の制御や伝熱凝固解析に必要な各種演算処理を実行するものである。CPU111は、鋳造条件設定部(鋳造条件設定手段)、熱物性値算出部(熱物性値算出手段)、伝熱凝固解析部(および伝熱計算手段および伝熱凝固解析手段)、判定部(判定手段)、冷却速度算出部(冷却速度算出手段)として機能する。
RAM113は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するものである。
ROM115は、コンピュータ100の基本動作を制御する各種プログラムやパラメータなどをあらかじめ格納しているものである。
ハードディスク117は、OS(オペレーティングシステム)やコンピュータ100の所定の動作を制御するためのプログラムやパラメータを格納するものである。ハードディスク117には、解析モデルの作成および変更、各種熱物性値の算出、解析結果から得られた情報の加工または表示、欠陥判定パラメータに基づく完成品の比較・評価を実行するプログラムなど、その他、一般的な伝熱凝固解析に必要なプログラムがあらかじめ記憶されている。さらに、ハードディスク117は、解析結果を記憶する記憶領域としても機能する。なお、伝熱凝固解析に必要なプログラムは、記録媒体(例えば、CD−ROM、DVD−ROMなどの記録媒体)にあらかじめ記憶されているものでも良く、この記録媒体からプログラムを直接読み取って伝熱凝固解析をコンピュータ100に実行させても良い。
ディスプレイ121は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイなどであり、解析結果によって得られた各種の情報を表示するものである。
入力装置131は、マウス、キーボード、またはタッチパネルなどのポインティングデバイスであり、ユーザーからの入力を受け付けるものである。
以上のように構成されたコンピュータ100を用いて、本発明に係る鋳造方案設計方法が実行される。
以下に、本発明の第1実施形態に係る鋳造方案設計方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図2から図9は、本発明の第1実施形態に係る鋳物の鋳造方案設計方法および鋳造方案設計装置の説明に供する図である。図2は、本実施の形態の鋳造方案設計方法によって設計される鋳物を例示したものを、図3は図1に示した鋳造方案設計装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは、本実施の形態に係る鋳造方案設計方法の手順に相当するものである。図4〜図9は本実施の形態に係る鋳造方案設計方法の処理内容を説明するために用いられる図である。
図2から図9は、本発明の第1実施形態に係る鋳物の鋳造方案設計方法および鋳造方案設計装置の説明に供する図である。図2は、本実施の形態の鋳造方案設計方法によって設計される鋳物を例示したものを、図3は図1に示した鋳造方案設計装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは、本実施の形態に係る鋳造方案設計方法の手順に相当するものである。図4〜図9は本実施の形態に係る鋳造方案設計方法の処理内容を説明するために用いられる図である。
図2を参照しつつ、本実施の形態の鋳造方案設計方法で設計される鋳物について説明する。図2は、本実施の形態の鋳造方案設計方法によって設計される鋳物200およびチラー210を示したものである。図2(A)に示すように、鋳物200は、車両用鋳鉄部品であって、ベース部200aとノーズ部200bとを備えるカム形状の部材である。図2(B)に示すように、鋳物200のベース部200aの肉厚は、ノーズ部200bの肉厚よりも薄く設計されている。したがって、ベース部200aの部位Aは軸孔加工されるため比較的低い硬度が求められる部位であり、ノーズ部200bの部位Bは耐摩耗性から比較的高い硬度が求められる部位である。本実施の形態では、鋳物200およびチラー210を解析モデルとしている。
また、本実施の形態では、鋳造条件として、鋳物の溶湯が溶解炉から注湯取鍋に出湯された時刻からの経過時間を示すフェーディング時間を用い、2水準のフェーディング時間に対して鋳造される鋳物200が所定の品質保証範囲内に含まれるか否かを判定する場合を例に挙げて説明する。以下、本実施の形態に係る鋳造方案設計方法を詳細に説明する。
図3に示すように、まず、解析モデルに対して複数水準の鋳造条件を設定する(S300)。
)。具体的には、解析対象物となる鋳物の複数の要素から形成される解析モデルを作成し、この解析モデルに対して、鋳造に関する複数水準の鋳造条件を設定する。
)。具体的には、解析対象物となる鋳物の複数の要素から形成される解析モデルを作成し、この解析モデルに対して、鋳造に関する複数水準の鋳造条件を設定する。
解析モデルの作成は、解析モデルの作成に必要なデータ、例えば形状データ(解析対象となる鋳物の形状、鋳物の設計形状、鋳型の形状など、鋳物の凝固解析を行うために必要な形状データ)、要素分割数、鋳造時間、鋳物を形成する材料、鋳物の溶湯の温度など、一般的なシミュレーションに必要な各種データを入力装置131からコンピュータ100へ入力することによって開始され、入力された各種データに基づきコンピュータ100が演算することによって終了する。解析モデルはメッシュモデルとして作成される。初期条件の設定は、入力装置131から各種データをコンピュータ100へ入力することによって行なわれる。なお、解析モデルの作成に必要なデータや初期条件、鋳造条件などは、あらかじめハードディスク117などに記憶させておいても良いし、作業者が手入力しても良い。また、要素分割数はメッシュモデルのセル数(要素数)に等しく、要素分割はシミュレーションを行う際のメッシュモデルに対して行われる。セルとはメッシュモデルの各要素を指す。
前記鋳造条件の設定は、鋳物を形成する材料の成分、鋳物を形成する材料の溶湯温度、接種材の種類、接種材の添加量、またはフェーディング時間のうちの少なくともいずれか一つを鋳造条件として設定する。
本実施の形態では、複数水準の鋳造条件として、フェーディング時間が0分(以下、「フェーディング時間0分」と称する)およびフェーディング時間が15分(以下、「フェーディング時間15分」と称する)の2つの水準の鋳造条件を設定している。既に説明したように、フェーディング時間とは、鋳物の溶湯が溶解炉から注湯取鍋に出湯した時刻を起点とした経過時間を意味し、このフェーディング時間が長いほど鋳物の溶湯の黒鉛化能は低下する。通常、生産工場におけるフェーディング時間は最長15分であることから、鋳造条件としてフェーディング時間0分およびフェーディング時間15分の2つの水準を採用している。
次に、設定された複数水準の鋳造条件のうち、一の鋳造条件を選択する(S310)。具体的には、鋳造条件であるフェーディング時間0分およびフェーディング時間15分のうちから一の鋳造条件を選択、例えば、フェーディング時間0分を選択する。
次に、選択した鋳物の鋳造条件に対応する熱物性値を算出する(S320)。熱物性値の算出は、上述したように、ハードディスク117にあらかじめ記憶されている鋳造条件と鋳物の熱物性値との関係式(例えば、鋳造条件に対応した熱物性値を算出する変換テーブル)を用いて、選択した鋳造条件に対応する鋳物の熱物性値を算出する。本実施の形態では、ステップS310の処理で選択された鋳造条件であるフェーディング時間0分に対応する熱物性値が算出される。
以下に、鋳造条件に対応する熱物性値の算出方法を詳細に説明する。本実施の形態では、鋳造条件としてフェーディング時間を採用しているので、フェーディング時間と熱物性値の一つである共晶凝固開始温度との関係を例に挙げて説明する。
図4は、フェーディング時間による鋳物の冷却曲線の変化を示したものである。横軸は時間、縦軸は温度を示している。冷却曲線A0はフェーディング時間0分の冷却曲線であり、このときの共晶凝固開始温度はT0である。冷却曲線A15はフェーディング時間15分の冷却曲線であり、このときの共晶凝固開始温度はT15である。図4に示すように、共晶凝固開始温度は、フェーディング時間が長くなるほど低下していく。これは、鋳造条件を変更した場合、鋳造条件の変更に伴い冷却曲線が変化するので、冷却曲線に対応する熱物性値も変化することを示している。
そして、これらの冷却曲線を数値化して処理することにより、フェーディング時間と共晶凝固開始温度との関係式を導出することができる。他の熱物性値も、同様にして導出することができる。
次に、ステップS320の処理で算出した熱物性値を用いて、伝熱凝固解析を実行する(S330)。伝熱凝固解析の基本原理は、解析モデル(解析対象物となる鋳物や鋳型領域などを複数のセルに分割して構成されるモデル)において、セルの特徴に応じた熱物性値を設定し、相互に隣接するセル間の微少時間間隔における熱流束を計算する。そして、順次、微少時間間隔ごとに熱流束の計算を繰り返して解析モデルの温度変化を求める。
熱流束の計算は、一般的な伝熱計算の手法を用いて実行される。ここで、セルの特徴に応じた設定とは、鋳物(例えば、図2に示す鋳物200)に属するセルに対しては所定の熱物性値が設定され、それ以外のセル、すなわち、鋳型領域(例えば、図2に示すチラー300)に属するセルに対してはそれぞれが属する材料の熱物性値が設定されることを意味する。熱物性値としては、例えば凝固開始温度、液相線温度、比熱、熱伝導率などの伝熱計算に必要な物性値である。
なお、解析開始時においては、総てのセルに所定の初期温度が与えられているが、伝熱計算により、微少時間間隔後には初期温度は変化していく。解析開始時では、鋳物に属するセルの温度は、鋳型領域に属するセルの温度よりも高く設定されている。このため、伝熱計算の結果として鋳物に属するセルの温度は、当然、低下していくことになる。
本実施の形態では、解析結果から得られた温度変化のデータを数値化して処理し、セルごとの冷却速度を算出している。冷却速度は、以下のように算出される。
セルが共晶凝固開始温度TL達した時点から微少時間間隔である‘Δt’時間だけ前の当該セルの温度をTとすると、冷却速度‘dT/dt’は、下記の式(1)で表せる。
このように、冷却速度を算出する理由は、冷却速度は鋳物の品質の指針となる鋳物の機械的特性、例えば、鋳物の硬度に影響を及ぼす重要な因子だからである(冷却速度と鋳物の硬度との関係の詳細な説明は後述する)。
次に、総ての鋳造条件に対して伝熱凝固解析を実行したか否かを判定する(S340)。総ての鋳造条件に対して伝熱凝固解析を実行していない場合(S340:NO)、他の鋳造条件が選択され(S370)、他の鋳造条件に基づきステップS320以下の処理を再び実行する。具体的には、フェーディング時間15分を選択し、ステップS310以下の処理を再び実行する。
そして、総ての鋳造条件に対して伝熱凝固解析を実行した場合(S340:YES)、当該鋳造条件に対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内であるか否かを判定する(S350)。具体的には、ステップS330の処理で算出されたセルごとの冷却速度に基づいて鋳物の硬度が算出され、算出された硬度が所定の品質許容範囲内(以下、「規格値」と称する)であるか否かを判定している。以下に、冷却速度と鋳物の硬度との関係およびステップS350の処理内容について詳細に説明する。
図5は、冷却速度と鋳物の硬度との関係を示したものである。横軸は、図2に示す鋳物200の部位Cからの距離、縦軸は図2に示す鋳物200の硬度を示している。
図5に示すように、冷却速度と鋳物の硬度とはほぼ比例関係を有している。
前記規格値は、例えば、部位Cからの距離LAにおける部位A(図2(A)参照)の硬度の規格値はHA以下であり、部位Cからの距離LBにおける部位B(図2(A)参照)の硬度の規格値はHB以上であると定める。なお、既に説明したように、部位Aは比較的低い硬度が要求される部位であり、部位Bは比較的高い高度が要求される部位である。
この場合、図5に示す関係から、部位Aの冷却速度はVA以下であり、部位Bの冷却速度はVB以上を規格値として要求されていることが分かる。なお、冷却速度は、鋳物の硬度に影響を及ぼす因子であるため、本実施の形態では、冷却速度と鋳物の硬度との関係から、規格値を定めている。
図6は、鋳物の先端部(図2における部位C)からの距離と冷却速度との関係を示したものである。横軸は、図2に示す部位Cからの距離、縦軸は冷却速度を示している。また、曲線C0はフェーディング時間0分、曲線C15はフェーディング時間15分の場合を示している。上述したように、部位Aの冷却速度はVA以下、部位Bの冷却速度はVB以上が規格値として要求されているが、図6に示すように、フェーディング時間0分の場合、部位Aの冷却速度は冷却速度VA以下の規格値を満たす一方、部位Bの冷却速度は冷却速度VB以上の規格値を満たしていない。
また、フェーディング時間15分の場合、部位Bの冷却速度は冷却速度VB以上の規格値を満たす一方、部位Aの冷却速度は冷却速度VA以下の規格値を満たしていない。ステップS350の処理では、このようにして、冷却速度と鋳物の硬度との関係から規格値内であるか否かを判定するようにしている。
再び、ステップS350の処理内容の説明に戻る。上述のように、少なくとも一つの解析結果が規格値内でない場合(S350:NO)、解析モデルを変更する(S360)。解析モデルの変更は、例えば、図7に示すように、鋳鉄部品200のベース部200aの肉厚が大きくすると共に、チラー210の底部の容量が拡大するように変更する。なお、解析モデルの変更は、ユーザーが手動で実行しても良いし、ハードディスク117にあらかじめ記憶された解析モデルを自動的に読み込んで変更しても良い。なお、図7において図2と同じ構成要素には、同じ参照番号を付してある。そして、変更後の解析モデルを用いて、ステップS310以下の処理を繰り返す。
そして、総ての鋳造条件に対応する伝熱凝固解析から得られた結果が、規格値内であると判定した場合、処理を終了する(S350:YES)。具体的には、以下のような処理が実行されている。
図8は解析モデルの変更後の鋳物の先端部(図7における部位C)からの距離と冷却速度との関係を示したものである。横軸は、図7に示す部位Cからの距離、縦軸は冷却速度を示している。また、曲線C’0はフェーディング時間0分、曲線C’15はフェーディング時間15分の場合を示している。
図8に示すように、フェーディング時間0分の場合、部位Aの冷却速度は冷却速度VA以下の規格値を満たし、部位Bの冷却速度は冷却速度VB以上の規格値を満たしている。
また、図7に破線で示されるフェーディング時間15分の場合、部位Bの冷却速度は冷却速度VB以上の規格値を満たし、部位Aの冷却速度は冷却速度VA以下の規格値を満たしている。
このように、規格値を満たすまで解析モデルの形状を変更し、鋳造条件のフェーディング時間0分とフェーディング時間15分の2水準に対する解析結果が規格値を満たせば処理を終了する。
以上のように構成された本発明に係る鋳物の鋳造方案設計方法およびその方案設計装置によれば、複数水準の鋳造条件に対応した熱物性値が算出され、算出された熱物性値を用いて伝熱凝固解析が実行される。そして、解析結果に基づいて鋳物の品質が判定され、鋳物の品質が所定の規格値内であると判定されるまで解析モデルが変更され、伝熱凝固解析が繰り返し実行される。この結果、鋳造条件の変動に伴い変化する鋳物の熱物性値に対応した鋳物の品質を保証することができ、精度の高い鋳造方案設計方法を提供することができる。
[第2実施形態]
第1実施形態では、鋳物の熱物性値が鋳造条件によって変化することを考慮することで、従来の方法よりも、精度の高い解析結果を得ることができることを説明した。鋳造条件は、主として鋳型に注湯されるまでの因子であるが、鋳型に注湯された後、鋳物の熱物性値に影響を及ぼす因子もある。鋳型に注湯された後、鋳物の熱物性値に影響を及ぼす因子として鋳物の溶湯の冷却速度が挙げられる。そこで、本実施の形態では、鋳造条件に応じて熱物性値が変化することに加えて、鋳物の溶湯の冷却速度に応じて鋳物の熱物性値が変化する場合について述べる。
第1実施形態では、鋳物の熱物性値が鋳造条件によって変化することを考慮することで、従来の方法よりも、精度の高い解析結果を得ることができることを説明した。鋳造条件は、主として鋳型に注湯されるまでの因子であるが、鋳型に注湯された後、鋳物の熱物性値に影響を及ぼす因子もある。鋳型に注湯された後、鋳物の熱物性値に影響を及ぼす因子として鋳物の溶湯の冷却速度が挙げられる。そこで、本実施の形態では、鋳造条件に応じて熱物性値が変化することに加えて、鋳物の溶湯の冷却速度に応じて鋳物の熱物性値が変化する場合について述べる。
図9から図12は、本発明の実施の形態に係る鋳物の伝熱凝固解析方法の説明に供する図である。図9および図10は図1に示した鋳造方案設計装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは、本実施の形態に係る鋳造方案設計方法の手順に相当するものである。図11から図12は、本実施の形態に係る鋳造方案設計方法における熱物性値の算出方法を説明するために用いられる図である。なお、本実施の形態において第1実施形態と同じ鋳造条件で処理を実行している。したがって、第1実施形態と同じ処理内容については、重複記載を避けるため詳細な説明は省略する。
図9に示すように、まず、解析モデルに対して複数水準の鋳造条件を設定する(S400)。
次に、設定された複数水準の鋳造条件のうち一の鋳造条件を選択する(S410)。
次に、選択した鋳造条件に対応する熱物性値を算出する(S420)。ステップ420の処理において算出される熱物性値は、図3のステップS320の処理と同様に算出される熱物性値であるが、これは、鋳造条件であるフェーディング時間のみを考慮した熱物性値であるので、本実施の形態では、鋳物の溶湯の凝固前の熱物性値(以下、「凝固前の熱物性値」と称する)を意味する。
次に、ステップS420の処理で算出された熱物性値を用いて、伝熱凝固解析処理が実行される(S430)。ここで、ステップS430の処理内容について詳細に説明する。
図10は、ステップS430のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず、解析モデルに対してステップS420の処理で算出された凝固前の熱物性が設定され、相互に隣接するセル間の伝熱計算を実行する(S431)。凝固前の熱物性値の設定はセルの特徴に応じて設定し、伝熱計算を実行する。
次に、伝熱計算の結果に基づきセルの温度が所定の温度(以下、「冷却速度算出温度」と称する)に達したか否かを判定する(S432)。セルが冷却速度算出温度に達しない場合、ステップS431以下の処理を繰り返し(S432:NO)、セルの温度が冷却速度算出温度に達した場合(S432:YES)、ステップS433の処理に進む。ステップS432の処理では、セルごとに冷却速度算出温度に達したか否かを判定している。
次に、冷却速度算出温度に達したセルに対して、当該セルの冷却速度を算出する(S433)。以下に、ステップS433における冷却速度の算出方法を詳細に説明する。
セルの温度が所定の温度に達した時点におけるセルの温度をTn、当該セルが所定の温度に達した時点から微少時間間隔である‘Δt’時間だけ前の当該セルの温度をTn−1とすると、冷却速度‘dT/dt’は、下記の式(2)で表される。
なお、冷却速度算出温度は任意の温度に設定することができるが、設定する温度は、実際の鋳造における共晶凝固開始温度以上であることが好ましい。しかしながら、現時点における解析上では、実際の鋳造における共晶凝固開始温度は未知である。そこで、冷却速度算出温度としては、鋳物の溶湯が無限遠の時間をかけて平衡凝固したときの共晶凝固開始温度とすることが好ましく、特に鋳物を形成する材料が鋳鉄の場合には、鋳物溶湯中の炭素が完全黒鉛化したときの共晶凝固開始温度とすることが好ましい。このような温度を設定すれば、解析モデルのうち、どのセルにおいても冷却速度算出温度が実際の鋳造における共晶凝固開始温度より低くなることが避けられるからである。
次に、算出した冷却速度に基づき、前記鋳物の溶湯の共晶凝固が開始されるときの凝固時の熱物性値(以下、「凝固時の熱物性値」と称する)と前記鋳物の溶湯の共晶凝固が完了した後の凝固後の熱物性値(以下、「凝固後の熱物性値」と称する)とを算出する(S434)。凝固時の熱物性値および凝固後の熱物性値は、ステップS433の処理から求めた冷却速度を用いてセルごとに算出される。
以下に、凝固時の熱物性値および凝固後の熱物性値の算出方法を詳細に説明する。凝固時の熱物性値として、共晶凝固開始温度、凝固潜熱量の算出方法を例に挙げて説明する。
凝固時の熱物性値のひとつである共晶凝固開始温度TLおよび凝固潜熱量qは、冷却速度‘dT/dt’の関数として、以下の式で表すことができる。
ここで、TLmaxは鋳物溶湯中の炭素元素が完全黒鉛化した場合の共晶凝固開始温度である。
以下に、本実施の形態で用いられる式(3)、(4)の算出方法を詳細に説明する。
図11は、人為的に冷却速度を変化させて鋳物を鋳造した場合における冷却曲線の概略図である。横軸は時間、縦軸は鋳物の温度を示している。この冷却曲線は、実際に鋳物の鋳造を繰り返して測定した結果を示したものである。このように冷却速度を変化させて測定する理由は、既に説明したように、鋳造条件を変更すれば冷却曲線も変化し、結果的にこれに対応する熱物性値も変化するからである。
冷却曲線B1は鋳物を徐冷して炭素元素が完全黒鉛化したときの冷却曲線であり、このときの共晶凝固開始温度はT3である。共晶凝固開始温度T3はTLmaxと等しい。冷却曲線A2は人為的に冷却速度を変えなかったときの冷却曲線であり、このときの共晶凝固開始温度はT2である。冷却曲線A3は鋳物を急冷して完全レデブライト化したときの冷却曲線であり、このときの共晶凝固開始温度はT1である。図に示すように、冷却曲線B2は冷却曲線B1〜B3により囲まれる領域に存在している。このとき、共晶凝固開始温度T5は共晶凝固開始温度T4〜T6の範囲に存在している。
図12は、図11に示した冷却曲線B1〜B3の測定結果から共晶凝固開始温度と共晶凝固開始時の冷却速度との関係を求めた結果を示したものである。横軸は共晶凝固開始時の冷却速度、縦軸は共晶凝固開始温度を示している。
図12に示すように、共晶凝固開始温度は共晶凝固開始時の冷却速度に反比例して低下している(曲線B’1〜B’3参照)。一の鋳造条件における鋳物の冷却速度と鋳物の共晶凝固開始温度の関係を示す曲線がB’1である場合、鋳造条件を変化させれば、鋳物の冷却速度と鋳物の共晶凝固開始温度の関係は、例えば曲線B’2、または、曲線B’3に変化する。具体的には、例えば鋳物の冷却速度がVCである場合、曲線B’1における共晶凝固開始温度はT7であるので、鋳造条件を変更すれば、曲線B’2における共晶凝固開始温度はT6に変化することが分かる。また、曲線B’2において、鋳物の冷却速度がVCからVDに変化すると、共晶凝固開始温度は、T6からT7に変化することが分かる。
なお、それぞれの曲線は、特定の共晶凝固開始温度および特定の冷却速度で変曲点を示している。この変曲点は、チル臨界冷却速度と称され、チル臨界冷却速度よりも共晶凝固開始時の冷却速度が大きい場合には、鉄−セメンタイト系共晶凝固が起こり、チル臨界冷却速度よりも冷却速度が小さい場合には、鉄−黒鉛系共晶凝固が起こることが知られている。
ここで、本実施の形態では、凝固時の熱物性値および凝固後の熱物性値を算出するために用いる冷却速度は、ステップS433の処理で説明したように、実際の溶湯の共晶凝固開始温度ではなく、鋳物の溶湯が無限遠の時間をかけて平衡凝固したときの共晶凝固開始温度(鋳物を形成する材料が鋳鉄の場合には、鋳物溶湯中の炭素が完全黒鉛化したときの共晶凝固開始温度)を用いて算出している。しかしながら、実際の鋳造における溶湯の共晶凝固開始温度と、鋳物の溶湯中の炭素元素が完全黒鉛化した場合の共晶凝固開始温度との差は実用上無視できる範囲であるため、図12に示す曲線を数式化することによって、数式(3)として表すことができる。
また、数式(4)も同様に、図2に示した冷却曲線B1〜B3の測定結果から算出している。数式(4)は、凝固潜熱量を変数とした一般的な反復解析(詳細な説明は省略する)により算出する。
ところで、凝固後の熱物性値は、上述のように冷却速度から算出することができるが、冷却速度からそのまま算出した熱物性値を用いるのではなく、凝固組織(例えば、パーライト/フェライトの面積比率)との関係から算出される熱物性値を用いることが好ましい。
このように、冷却速度から算出される凝固後の熱物性値をそのまま用いず、凝固組織との関係から求められる熱物性値を用いる理由は、次の通りである。
鋳物は、冷却速度によって、凝固後の金属組織が異なる。例えばダクタイルは、急冷するとチルを生じ、徐冷するとフェライトを晶出することが知られている。このように、鋳物を急冷した場合と徐冷した場合とでは凝固後の金属組織が異なるので、凝固後の熱物性値は異なることになる。
したがって、冷却速度から算出される値をそのまま凝固後の熱物性値として用いるよりも、上記のように冷却速度と凝固組織との関係から、凝固後の熱物性値を算出することが好ましい。この結果、凝固組織を考慮した精度の高い解析結果が得られることになる。
なお、鋳物を形成する材料が鋳鉄の場合、冷却速度が所定の速度より大きい場合には、鉄−セメンタイト系共晶凝固における冷却速度に基づき凝固時の熱物性値および凝固後の熱物性値を算出し、当該冷却速度が所定の速度以下の場合には、鉄−黒鉛系共晶凝固における冷却速度に基づき凝固時の熱物性値および凝固後の熱物性値を算出するようにすることが好ましい。
このように、所定の冷却速度を基準として熱物性値を算出する理由は、チル臨界冷却速度を挟んで、冷却速度と、凝固時および凝固後との熱物性値の関係式が変化するからである。
したがって、所定の速度としてチル臨界冷却速度を設定し、冷却速度がチル臨界冷却速度より大きい場合には、鉄−セメンタイト共晶凝固における冷却速度との関係式を用いて凝固時および凝固後の熱物性値を算出し、冷却速度がチル臨界冷却速度以下の場合には、鉄−黒鉛共晶凝固における冷却速度との関係式を用いて凝固時および凝固後の熱物性値を算出することが好ましい。
次に、セルがステップS434の処理で算出した共晶凝固開始温度に達したか否かを判定する(S435)。セルの温度が前記算出した共晶凝固開始温度に達していない場合、ステップS434以下の処理を繰り返し(S435:NO)、当該セルの温度が前記算出した共晶凝固開始温度に達した場合(S435:YES)、ステップS436の処理へ進む。
次に、前記共晶凝固開始温度に達したセルに対して、前記凝固時の熱物性値を設定して伝熱凝固解析を実行する(S436)。
ここで、鋳物を形成する材料が鋳鉄の場合、凝固時の熱物性値として、共晶凝固開始温度と凝固潜熱量とを用いることが好ましい。鋳物の場合、冷却速度が大きいと鉄−セメンタイト共晶凝固が起こりやすく、冷却速度が小さいと鉄−黒鉛共晶凝固が起こりやすい。鉄−セメンタイト共晶凝固と鉄−黒鉛共晶凝固では熱物性値のなかでも共晶凝固開始温度と凝固潜熱量に顕著な違いがあるからである。このように、凝固時の熱物性値のうち、共晶凝固開始温度と凝固潜熱量とをセルごとに付与することで、より解析精度が向上する。
次に、前記伝熱凝固解析の結果に基づき、前記セルが凝固を完了したか否かを判定する(S437)。セルの凝固が完了していない場合、ステップS436以下の処理を繰り返し(S437:NO)、当該セルの凝固が完了した場合、ステップS438の処理へ進む(S437:YES)。
次に、凝固が完了したセルに対して前記凝固後の熱物性値を設定し、伝熱凝固解析を実行する(S438)。そして、すべてのセルの凝固が完了すれば処理を終了し、ステップS440(図9参照)へ進む。
次に、すべての鋳造条件に対して伝熱凝固解析を実行したか否かを判定する(S440)。すべての鋳造条件に対して伝熱凝固解析を実行していない場合(S440:NO)、他の鋳造条件が選択され(S470)、ステップS410以下の処理を繰り返す。そして、すべての鋳造条件に対して伝熱凝固解析を実行した場合(S440:YES)、ステップS450の処理へ進む。
次に、それぞれの前記鋳造条件に対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、規格値内であるか否かを判定する(S450)。鋳造条件のうちの少なくとも一つの解析結果が規格値内でないと判定した場合(S450:NO)、解析モデルを変更する(S460)。そして、総ての鋳造条件に対応する伝熱凝固解析から得られた結果が、規格値内である判定した場合(S450:YES)、処理を終了する。
以上のように構成された本発明に係る鋳造方案設計方法およびその設計装置によれば、複数水準の鋳造条件に対応した熱物性値が算出され、さらに、鋳物の冷却速度から算出される熱物性値を用いて伝熱凝固解析が実行される。この結果、鋳造条件の変動に伴い変化する鋳物の熱物性値に対応した解析結果が得られることになり、精度の高い鋳造方案を提供することができる。
また、本発明に係る鋳造方案設計方法およびその設計装置では、伝熱凝固解析結果から得られる情報を加工することによって、解析モデルの全部または一部における欠陥判定パラメータを数値、色彩、グラフ、または図形などを用いて表示することができる。
また、本発明に係る鋳造方案設計方法をコンピュータが読み取り可能なようにプログラム化したり、このプログラム化したデータを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録したりすることもできる。
本発明は、鋳物の伝熱凝固解析、または、鋳物の伝熱凝固解析に基づく鋳造方案に関する技術分野に有用である。
100 鋳造方案設計装置、
111 CPU、
113 RAM、
115 ROM、
117 ハードディスク、
121 ディスプレイ、
131 入力部、
200 鋳物
210 チラー
A0、A15 冷却曲線、
B1〜B3 冷却曲線、
C0、C15、C’0、C’15 鋳物先端部からの距離と冷却速度との関係を示す曲線、
B’1〜B’3 共晶凝固開始時の冷却速度の変化曲線
T0、T15、T1〜T7 共晶凝固開始温度、
VA〜VD 冷却速度。
111 CPU、
113 RAM、
115 ROM、
117 ハードディスク、
121 ディスプレイ、
131 入力部、
200 鋳物
210 チラー
A0、A15 冷却曲線、
B1〜B3 冷却曲線、
C0、C15、C’0、C’15 鋳物先端部からの距離と冷却速度との関係を示す曲線、
B’1〜B’3 共晶凝固開始時の冷却速度の変化曲線
T0、T15、T1〜T7 共晶凝固開始温度、
VA〜VD 冷却速度。
Claims (15)
- 複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固解析に基づく鋳造方案設計方法であって、
前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する段階と、
前記複数水準の鋳物の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の熱物性値を算出する段階と、
前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する段階と、
前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内であるか否かを判定する段階と、
を含むことを特徴とする鋳造方案設計方法。 - 前記所定の品質許容範囲に含まれるか否かを判定する段階の後に、
前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報の少なくとも一つの情報が前記品質許容範囲外である場合、前記解析モデルを変更する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の鋳造方案設計方法。 - 前記解析モデルを変更する段階の後に、
前記変更した解析モデルに対して請求項1に記載の前記鋳物の熱物性値を算出する段階から前記所定の品質許容範囲内であるか否かを判定する段階を実行することを特徴とする請求項2に記載の鋳造方案設計方法。 - 前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する段階は、
前記鋳物の溶湯の凝固前の熱物性値を用いて相互に隣接する前記要素間の伝熱計算を実行する段階と、
前記伝熱計算に基づき前記要素の冷却速度を算出する段階と、
算出した冷却速度に基づき、前記鋳物の溶湯が共晶凝固を開始するときの凝固時の熱物性値と前記鋳物の溶湯が共晶凝固を完了した後の凝固後の熱物性値とを算出する段階と、
前記冷却速度から算出した前記凝固時の熱物性値と前記凝固後の熱物性値とを用いて伝熱凝固解析を実行する段階と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋳造方案設計方法。 - 前記伝熱計算に基づき前記要素の冷却速度を算出する段階は、
前記要素の温度が所定の温度に達したときに実行されることを特徴とする請求項4に記載の鋳造方案設計方法。 - 前記所定の温度は、前記鋳物の溶湯がある一定以上の時間をかけて平衡凝固したときの共晶凝固開始温度であることを特徴とする請求項5に記載の鋳造方案設計方法。
- 前記凝固時の熱物性値は、前記鋳物の共晶凝固開始温度と当該鋳物の凝固潜熱量とを含む熱物性値であることを特徴とする請求項4に記載の鋳造方案設計方法。
- 前記凝固後の熱物性値は、前記算出した冷却速度と前記鋳物の凝固組織との関係から算出される熱物性値であることを特徴とする請求項4に記載の鋳造方案設計方法。
- 前記冷却速度から算出した前記凝固時の熱物性値と前記凝固後の熱物性値とを用いて伝熱凝固解析を実行する段階は、
共晶凝固を開始した要素に対して前記凝固時の熱物性値を設定する段階と、
共晶凝固が完了した要素に対して前記凝固後の熱物性値を設定する段階と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の鋳造方案設計方法。 - 前記凝固時の熱物性値は、前記冷却速度から算出される共晶凝固開始温度を含み、
前記共晶凝固を開始した要素に対して前記凝固時の熱物性値を設定する段階は、
前記共晶凝固開始温度に達した要素に対して、前記凝固時の熱物性値を設定することを特徴とする請求項9に記載の鋳造方案設計方法。 - 複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する段階は、
前記鋳物を形成する材料の成分、前記鋳物を形成する材料の溶湯温度、接種材の種類、接種材の添加量、およびフェーディング時間のうちの少なくともいずれか一つを前記鋳造条件として設定することを特徴とする請求項1に記載の鋳造方案設計方法。 - 前記所定の品質許容範囲内か否かを判定する段階の後に、
前記伝熱凝固解析によって得られた情報を加工して表示する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の鋳造方案設計方法。 - 複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固計算に基づく鋳造方案設計装置であって、
前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する鋳造条件設定手段と、
前記複数水準の鋳物の鋳造条件に対応する前記鋳物の熱物性値を算出する熱物性値算出手段と、
前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する伝熱凝固解析手段と、
前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内か否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする鋳造方案設計装置。 - 複数の要素から形成される解析モデルを用いた鋳物の伝熱凝固計算に基づく鋳造方案設計プログラムであって、
前記解析モデルに対して複数水準の鋳物の鋳造条件を設定する手順と、
前記複数水準の鋳物の鋳造条件に対応する前記鋳物の熱物性値を算出する手順と、
前記算出した熱物性値を用いて、前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する前記鋳物の伝熱凝固解析を実行する手順と、
前記複数水準の鋳造条件にそれぞれ対応する伝熱凝固解析から得られた情報が、所定の品質許容範囲内か否かを判定する手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする鋳造方案設計プログラム。 - 請求項14に記載の鋳造方案設計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006344887A JP2008155230A (ja) | 2006-12-21 | 2006-12-21 | 鋳造方案設計方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006344887A JP2008155230A (ja) | 2006-12-21 | 2006-12-21 | 鋳造方案設計方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009151151A1 (ja) | 2008-06-13 | 2009-12-17 | 日本電気株式会社 | 情報処理装置、情報処理方法および情報処理制御プログラム |
JP2018062006A (ja) * | 2016-10-07 | 2018-04-19 | 日立金属株式会社 | 球状黒鉛鋳鉄鋳物の硬度を予測する方法 |
JP2021053696A (ja) * | 2019-10-02 | 2021-04-08 | マツダ株式会社 | 鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体 |
CN115017448A (zh) * | 2022-08-08 | 2022-09-06 | 南通东凯精密科技有限公司 | 一种金属铸造过程数据智能化传输方法 |
CN116000276A (zh) * | 2022-12-09 | 2023-04-25 | 清华大学 | 基于时空冷却精确控制的智能铸造方法、装置和介质 |
-
2006
- 2006-12-21 JP JP2006344887A patent/JP2008155230A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7279607B2 (ja) | 2019-10-02 | 2023-05-23 | マツダ株式会社 | 鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体 |
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