JP7279607B2 - 鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体 - Google Patents

鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体 Download PDF

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Description

本開示は、鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体に関するものである。
従来より、合金溶湯の凝固解析において、合金溶湯の共晶凝固温度と冷却速度との相関関係を利用することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010-110792号公報
ところで、合金製鋳造品の耐久性を評価する観点から、合金製鋳造品の弾塑性応力を解析することは重要である。特許文献1の記載の技術は、上記相関関係を凝固解析に利用するものであるが、当該文献には合金製鋳造品の弾塑性応力解析への利用については言及されていない。
また、例えば複雑な形状の鋳造品を製造する場合に、異なる素材の鋳型を組み合わせる手法が考えられる。そのような場合には、鋳造品の部位毎に溶湯の冷却速度が異なり得るが、冷却速度の違いの影響を鋳造品の弾塑性応力解析に反映させる方法はこれまでに報告されていない。
そこで本開示では、高い精度を有する鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本開示では、鋳造品の部位毎の合金溶湯の冷却速度とその部位の機械的特性との関係を弾塑性応力解析に反映させるようにした。
ここに開示する第1の技術は、鋳型のキャビティに合金の溶湯を注入して得られる鋳造品の弾塑性応力解析方法であって、前記キャビティの形状データを分割して複数の要素からなる解析モデルを作成する工程と、前記キャビティに前記溶湯を注入したときの前記各要素の節点における該溶湯の温度変化情報を取得する工程と、前記温度変化情報に基づき、前記各節点において前記溶湯の温度が前記合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い特定の温度である基準温度を通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度として算出する工程と、予め試験的に求めておいた前記基準冷却速度と前記鋳造品の機械的特性との相関関係に基づいて、前記基準冷却速度に応じた複数の機械的特性データを準備する工程と、前記基準冷却速度に基づいて、前記複数の機械的特性データから所定の機械的特性データを選択する工程と、前記温度変化情報と前記所定の機械的特性データとに基づいて、前記各要素における残留応力値を算出する工程と、を備えたことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法である。
鋳造品では、凝固組織が微細で均一なほどその強度が高くなることが知られている。特に、合金を材料とする鋳造品では、凝固組織は共晶組織であり、この共晶組織の結晶粒の大きさが微細で均一なほどその強度は高くなる。共晶組織の結晶粒の大きさを微細で均一なものにするためには、合金溶湯の冷却速度を速めることが効果的と考えられる。すなわち、合金溶湯の冷却速度を速めると、溶湯の凝固が開始するときの過冷却が大きく発生する。そうして、大きな過冷却により、多くの初晶が形成されるから、結果として微細な結晶粒が多く形成される。
合金材料は、多成分系であるから、その組成に応じた液相線温度及び固相線温度を有する。本願発明者らは、合金溶湯の温度が、この固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い基準温度を通過するときの、合金溶湯の冷却速度、すなわち基準冷却速度に応じて、共晶組織の結晶粒の大きさが異なることを見出した。そして、共晶組織の結晶粒の大きさは、鋳造品の強度に関係するから、基準冷却速度と鋳造品の強度との間に相関関係があることを見出した。
例えば、鋳造品の製造過程において、部位毎に冷却速度に差がある場合、部位毎に鋳造品の強度に差が生じることになる。従来、鋳造品の耐久性等に影響のある残留応力を評価するための弾塑性応力解析では、鋳造品の機械的特性はどの部位も同一であることを前提として行われる。しかしながら、部位毎に冷却速度に差がある場合、上述のごとく部位毎に強度に差が生じるから、鋳造品の機械的特性も部位毎に異なることになる。
本構成では、予め試験的に溶湯の基準冷却速度と鋳造品の機械的特性との相関関係を求めておき、当該相関関係に基づいて溶湯の基準冷却速度に応じた複数の機械的特性データを準備する。そして、節点毎に、該節点の基準冷却速度に基づいて、複数の機械的特性データから所定の機械的特性データを選択し、弾塑性応力の解析に使用する。本構成によれば、基準冷却速度に応じて、その部位の機械的特性をより適切に反映した機械的特性データを用いるから、鋳造品の弾塑性応力解析の精度を向上させることができる。なお、機械的特性データとは、具体的には例えば、応力-ひずみ特性の温度依存性データ等である。温度変化情報は、具体的には例えば、鋳造品の湯流れ解析及び凝固解析等のCAE解析、検証用ワークの温度測定実験等の試験的方法により得られた情報である。
第2の技術は、第1の技術において、前記温度変化情報は、前記鋳型への前記溶湯の注入完了時点から前記鋳造品の完成時点までの時間を複数のタイムステップに分割したときの、該タイムステップ毎の温度情報であり、前記溶湯の冷却速度は、任意の前記タイムステップにおける開始温度と終了温度との差を当該タイムステップの経過時間で除して得られ、前記基準冷却速度は、前記開始温度と前記終了温度との間に前記基準温度が初めて含まれる前記タイムステップにおける前記冷却速度であることを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法である。
溶湯の注入完了時点から初めて基準温度に到達した時点で、溶湯の凝固が開始し初晶の形成が進み得る。すなわち、基準温度に初めて到達した時点の冷却速度は、最終的に得られる鋳造品の凝固組織の緻密さ及び均一性に与える影響が最も大きいと考えられる。本構成によれば、より実現象を的確に反映した冷却速度を基準冷却速度とするから、弾塑性応力解析の精度がさらに向上する。
第3の技術は、第1又は第2の技術において、前記温度変化情報は、前記鋳造品について湯流れ解析及び凝固解析を行うことにより得られる情報であり、前記解析モデルを作成する工程は、複数の第1要素からなる湯流れ解析及び凝固解析用の第1解析モデルを作成する工程と、複数の第2要素からなる弾塑性応力解析用の第2解析モデルを作成する工程と、を備え、前記温度変化情報を得る工程は、前記第1解析モデルを用いて前記湯流れ解析及び凝固解析を行うことにより、前記各第1要素の温度変化情報を得る工程と、前記第1要素と前記第2要素とを対応させたときに、前記各第1要素に含まれる前記各第2要素の節点に、該第1要素の温度変化情報を、該節点の温度変化情報として設定する工程と、を備えたことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法である。
本構成によれば、湯流れ解析及び凝固解析において得られる精度の高い温度変化情報を弾塑性応力解析に利用できるから、弾塑性応力解析の精度が向上する。また、湯流れ解析及び凝固解析と弾塑性応力解析とに用いるシステムの違い、要素の分割方法によらず、湯流れ解析及び凝固解析における温度変化情報を弾塑性応力解析に利用できる。
第4の技術は、第1~3の技術のいずれか1つにおいて、前記合金は、凝固過程において初晶としてデンドライト結晶が形成されるアルミニウム合金であり、前記基準冷却速度と前記鋳造品の機械的特性との前記相関関係は、前記基準冷却速度と前記デンドライト結晶のデンドライト2次アーム間隔(DAS)との関係、及び、前記DASと前記鋳造品の機械的特性との関係に基づいて、求めることを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法である。
アルミニウム合金を材料とする鋳造品では、凝固過程において、初晶としてα-Alデンドライト結晶が生成される。このデンドライト結晶を微細化するためには、デンドライト結晶のサイズを小さくすることに加えて、デンドライト結晶のアームの発生を抑えることが効果的である。デンドライト結晶のアームの発生を抑えるとは、具体的に、互いに隣り合う2次アーム間の間隔(DAS)を狭くすることを意味する。2次アームとは、デンドライト結晶の主軸から、該主軸の延びる方向に垂直な方向に成長するアームである。隣り合う2次アーム間の距離が狭くなると、当該2次アーム間の間隙に分布する共晶等の凝固組織のサイズも小さくなり、微細な凝固組織が得られる。
本構成では、合金溶湯の基準冷却速度とDASとの関係を求める一方、DASと鋳造品の機械的特性との関係を求める。そして、これら2つの関係から、合金溶湯の基準冷却速度と鋳造品の機械的特性との関係を求める。こうして、実現象をより的確に反映した機械的特性データを弾塑性応力解析に用いることができる。そうして、鋳造品の弾塑性応力解析の解析精度を高めることができる。
第5の技術は、第1~4の技術のいずれか1つにおいて、前記鋳型は、前記鋳造品の一部を形成する金型と、該鋳造品の他部を形成する砂型と、を備えたことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法である。
例えば、鋳造品の部位毎に当該部位を形成する鋳型の材質が異なる場合がある。具体的には例えば、鋳造品の一部を金型により形成するとともに、一部以外の他部を砂型により形成する場合等である。このような場合、金型により冷却される部分は溶湯の冷却速度が速くなるため、凝固組織が緻密化され、強度が高くなる。一方、砂型により冷却される部分は、溶湯の冷却速度が金型接触部分よりも緩やかになるため、湯まわり性が向上する。そうして、砂型を用いることにより鋳造品を薄肉化できる。すなわち、鋳造品のうち、高強度を要する一部を形成する鋳型として金型を用いるとともに、当該一部以外の他部を形成する鋳型として砂型を用いることにより、一部の強度を高めるとともに、他部を薄肉化して鋳造品を軽量化できる。
このように、例えば金型と砂型とを組み合わせることにより、より高強度且つ薄肉化された鋳造品の製造が可能となる。しかし、鋳造品の部位により、鋳型の材質が異なると、溶湯の冷却速度に差が生じる。これにより、鋳造品の部位毎に機械的特性に差が生じる。
本構成によれば、鋳造品の部位毎に当該部位を形成する鋳型の材質が異なることにより溶湯の冷却速度に差が生じる場合であっても、基準冷却速度に応じて適切な機械的特性データを選択して解析を行うから、精度の高い弾塑性応力解析が可能となる。
第6の技術は、第5の技術において、前記鋳造品は、エンジンのシリンダヘッドであり、前記金型は、前記一部として前記シリンダヘッドの燃焼室を形成し、前記砂型は、前記他部として前記燃焼室以外の部分を形成することを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法である。
エンジンのシリンダヘッドのうち、燃焼室を構成する部分は、高温の燃焼ガスにも耐えうるよう高い機械的強度が必要となる。一方、燃焼室を構成する部分以外の部分は、燃焼室を構成する部分に比べると、比較的機械的強度の要求レベルは低い。従って、燃焼室を形成する鋳型として金型を用いるとともに、燃焼室以外の部分を形成する鋳型として砂型を用いることにより、燃焼室を構成する部分の機械的強度を高めつつ、燃焼室以外の部分を薄肉化してシリンダヘッドを軽量化できる。
本構成によれば、このようなシリンダヘッドの弾塑性応力解析の精度を向上できる。
ここに開示する第7の技術は、鋳型のキャビティに合金の溶湯を注入して得られる鋳造品の弾塑性応力解析システムであって、モデル作成手段と、冷却速度算出手段と、記憶手段と、選択手段と、弾塑性応力解析手段と、を備え、前記モデル作成手段は、前記キャビティの形状データを分割して複数の要素からなる解析モデルを作成し、冷却速度算出手段は、前記キャビティに前記溶湯を注入したときの前記各要素の節点における該溶湯の温度変化情報に基づき、前記各節点において前記溶湯の温度が前記合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い特定の温度である基準温度を通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度として算出し、前記記憶手段は、前記解析モデルと、前記温度変化情報と、前記基準冷却速度と、該基準冷却速度と前記鋳造品の機械的特性との相関関係に基づいて準備された複数の機械的特性データと、を記憶し、前記選択手段は、前記基準冷却速度に基づいて、前記複数の機械的特性データから所定の機械的特性データを選択し、前記弾塑性応力解析手段は、前記温度変化情報と前記所定の機械的特性データとに基づいて、前記各要素における残留応力値を算出することを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析システムである。
本構成では、基準冷却速度に応じて、部位毎の機械的特性をより適切に反映した所定の機械的特性データを選択し、鋳造品の弾塑性応力の解析に用いる。そうして、鋳造品の弾塑性応力解析の精度を向上できる。
ここに開示する第8の技術は、鋳型のキャビティに合金の溶湯を注入して得られる鋳造品の弾塑性応力解析プログラムであって、コンピュータに、前記キャビティの形状データを分割して複数の要素からなる解析モデルを作成する手順と、前記キャビティに前記溶湯を注入したときの前記各要素の節点における該溶湯の温度変化情報を取得する手順と、前記温度変化情報に基づき、前記各節点において前記溶湯の温度が前記合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い特定の温度である基準温度を通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度として算出する手順と、前記基準冷却速度に応じて予め設定された複数の機械的特性データから、前記基準冷却速度に基づいて、所定の機械的特性データを選択する手順と、前記温度変化情報と前記所定の機械的特性データとに基づいて、前記各要素における残留応力値を算出する手順と、を実行させることを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析プログラムである。
本構成によれば、基準冷却速度に応じて、部位毎の機械的特性をより適切に反映した機械的特性データを用いるから、鋳造品の弾塑性応力解析の精度を向上できる。
ここに開示する第9の技術は、第8の技術に記載された鋳造品の弾塑性応力解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
本構成によれば、鋳造品の弾塑性応力解析の精度を向上できる。
以上述べたように、本開示によると、基準冷却速度に応じて、その部位の機械的特性をより適切に反映した機械的特性データを用いるから、鋳造品の弾塑性応力解析の精度を向上させることができる。
本開示の一実施形態に係る弾塑性応力解析システムを示すブロック図である。 鋳造品の一例であるシリンダヘッドの斜視図である。 図2のシリンダヘッドの製造方法の一例を説明するための模式図であり、(a)鋳型、(b)溶湯の注入途中、(c)溶湯の注入完了を示す図である。 図2のシリンダヘッドの製造方法の一例を説明するための模式図であり、(a)金型の除去工程、(b)第1面に対するシャワリング工程、(c)第1面及び第2面に対するシャワリング工程、(d)時効処理工程を示す図である。 本開示の一実施形態に係る弾塑性応力解析方法を示すフローチャートである。 解析モデル作成工程及び温度変化情報取得工程の詳細を示すフローチャートである。 第1解析モデルの一例である。 第2解析モデルの一例である。 第1解析モデル及び第2解析モデルの対応を説明するための図である。 ワークの各部の温度変化情報の一例を示すグラフである。 冷却速度及び基準冷却速度の算出方法を説明するための図である。 基準冷却速度算出工程の詳細を示すフローチャートである。 基準冷却速度データの一例を示す図である。 基準冷却速度とDASとの関係を示すグラフである。 引張試験に使用した試験片を示す図である。 DASと引張強度との関係を示すグラフである。 基準冷却速度と引張強度との関係を示すグラフである。 各工程のデータの流れ及び弾塑性応力解析工程を説明するためのフローチャートである。 応力-ひずみ特性の温度依存性データの一例を示すグラフである。 応力-ひずみ特性の温度依存性データの一例を示すグラフである。 比較例における残留応力値分布を示す図である。 実施例における残留応力値分布を示す図である。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(一実施形態)
<鋳造品の弾塑性応力解析システム>
本開示に係る鋳造品の弾塑性応力解析システム21は、CAE(Computer Aided Engineering)システムである。弾塑性応力解析システム21は、図1に示すように、記憶装置25(記憶手段)と、演算装置26と、制御装置22と、入力装置23と、出力装置24と、を備える。
鋳造品は、合金の溶湯を鋳型のキャビティに注入して鋳造することにより得られる製品である。鋳造品は、具体的には例えば、シリンダヘッド、ミッションケース、クラッチハウジング、ロアブロック、サスハウジング、ロアアーム、シリンダブロック、リアハブサポートの車両部品、その他の各種鋳造品である。合金としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽合金が挙げられる。アルミニウム合金としては、例えばAC4B材、AC4C材、AC4D材等の一般的な鋳造材が挙げられる。鋳造方法としては、低圧鋳造、高圧鋳造、半凝固鋳造等が挙げられる。
図1に示すように、入力装置23、出力装置24、記憶装置25及び演算装置26は、制御装置22に接続されている。入力装置23は、コンピュータに接続されるキーボードやマウスによって構成され、演算装置26に数値や指示等を入力する。出力装置24は、コンピュータに接続されるディスプレイ等によって構成され、演算装置26による演算結果等に基づく種々のデータを表示する。記憶装置25としては、コンピュータにおけるRAMやROM等、ネットワークサーバ等からなる記憶部が用いられる。演算装置26としては、コンピュータのCPUからなる演算処理部等が用いられる。制御装置22としては、コンピュータのCPUからなる制御部等が用いられる。
記憶装置25は、後述する解析モデル251、溶湯の温度変化情報、溶湯の基準冷却速度データ、複数の機械的特性データ等を記憶する。また、記憶装置25は、鋳型を含む鋳造方案に関する情報、鋳造条件に関する情報、演算装置26における演算に関する情報、並びに弾塑性応力解析等の各種解析のための演算処理を実行するプログラム等を記憶する。
演算装置26は、記憶装置25に記憶されたデータ及び入力装置23から入力される数値及び指示に基づき、記憶装置25に記憶された演算プログラムに従った演算処理を行う。演算装置26は、モデル作成部(モデル作成手段)と、冷却速度算出部(冷却速度算出手段)と、選択部(選択手段)と、弾塑性応力解析部(弾塑性応力解析手段)と、を構成する。
詳細は後述するが、モデル作成部は、鋳型の設計段階で作成された鋳造方案3DCADモデルを分割して、複数の要素からなるCAE解析用の解析モデル251を作成する。
また、冷却速度算出部は、温度変化情報に基づき、解析モデル251の各要素の節点において、溶湯の温度が後述する基準温度Kを通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度Vとして算出する。
選択部は、基準冷却速度Vに基づいて、複数の機械的特性データから所定の機械的特性データを選択する。
弾塑性応力解析部は、各節点における温度変化情報及び所定の機械的特性データに基づいて、各要素における残留応力値を算出する。
<鋳造品の弾塑性応力解析方法>
以下、本実施形態に係る鋳造品の弾塑性応力解析方法について、図2に示す直列4気筒エンジンのシリンダヘッド900を鋳造品とする場合を例に挙げて説明する。なお、シリンダヘッド900の方向について言及するときは、便宜的に図2に示すとおりとする。シリンダヘッド900は、AC4B相当のアルミニウム合金を主材料とする鋳造品である。本実施形態に係る弾塑性応力解析方法は、上述の弾塑性応力解析システムを用いて行うことができる。
≪シリンダヘッドの製造方法≫
まず、図3及び図4を参照して、鋳造によるシリンダヘッド900の製造方法の一例を説明する。
図3(a)は、シリンダヘッド900を鋳造するための鋳型901を示す。この鋳型901内には、キャビティ905及び押湯空間906が形成されている。鋳型901は、第1砂型902(砂型)と、金型903と、第2砂型904(砂型)とを備えており、これらは互いに分離可能である。なお、本明細書において、第1砂型902及び第2砂型904をまとめて砂型902,904と称する場合がある。
第1砂型902は、第1空間902aと、第2空間902bと、これら両空間902a,902bを互いに連通する複数の連通部902eと、を有する。キャビティ905は、第1砂型902の第1空間902aと、金型903と、により形成される。押湯空間906は、第1砂型902の第2空間902bと、第2砂型904と、により形成される。また、第1砂型902の複数の連通部902eは、押湯空間906から溶湯909(図3(b)等参照)をキャビティ905に供給する溶湯供給路907を構成する。
図3(b)に示すように、第2砂型904が下側となるように鋳型901を配置して、キャビティ905及び押湯空間906にアルミニウム合金の溶湯909を注入する。そして、溶湯909のキャビティ905及び押湯空間906への注入が完了すると、図3(c)に示すように、鋳型901を、第2砂型904が上側となるように反転させる。この状態で放置して、溶湯909を凝固させる。キャビティ905内における溶湯909の凝固が進むにつれてキャビティ905内の溶湯909の体積が減少すると、押湯空間906内の溶湯909が自重により溶湯供給路907を通じてキャビティ905内に自然に供給される。こうして、溶湯909が凝固することで、ワーク910が得られる。
図4(a)~(d)に示すように、ワーク910は、キャビティ905に対応する製品部911と、押湯空間906に対応する押湯部912と、溶湯供給路907に対応する連結部913とを有する。また、ワーク910において、金型903により形成された面を第1面910a(一部)とする。また、第2砂型904により形成された面を第2面910bとする。さらに、第1砂型902により形成された、製品部911の押湯部912側の面を第3面910cとする。また、製品部911の中央を中央部910dとする。なお、後述するように、第1面910aは、シリンダヘッド900の燃焼室の壁面を構成する。
ワーク910は、鋳造後、焼入れ冷却、次いで時効処理がなされる。具体的には、図4(a)に示すように、ワーク910の鋳造後に、鋳型901の金型903を第1砂型902から分離してワーク910の第1面910aを露出させる。そして、図4(b)に示すように、第1面910aに対するミスト状の冷却剤W(本実施形態では冷却水)の吹き付け、すなわちシャワリングが行われ、ワーク910は焼入れ冷却される。その後、図4(c)に示すように、第2砂型904も鋳型901から分離される。そして、第1面910aに加えて第2面910bにもシャワリングが行われ、ワーク910はさらに焼き入れ冷却される。第1面910aに対するシャワリング終了後、第2面910bに対するシャワリングが1~2分程度継続される。そうして、第2面910bに対するシャワリングが終了し、焼き入れ冷却が終了する。焼き入れ冷却の終了と同時に、図4(d)に示すように、第2砂型904が第2面910bに接触するように鋳型901の元の位置に戻される。そうして、ワーク910の時効処理が行われる。この時効処理では、第2砂型904の残留熱がワーク910全体に伝わる。そうして、ワーク910全体の機械的強度及び寸法の不均一性が是正される。
時効処理が終了すると、ワーク910は最終工程(不図示)に進む。最終工程では、ワーク910の押湯部912及び連結部913が製品部911から切り離される。そうして、製品部911は、バリ取り等の仕上げ処理を経て、最終製品としてのシリンダヘッド900となる。
エンジンのシリンダヘッド900のうち、燃焼室を構成する第1面910aは、高温の燃焼ガスにも耐えるよう高い機械的強度が必要となる。一方、第1面910a以外の部分は、燃焼室を構成する第1面910aに比べると、比較的機械的強度の要求レベルは低い。
上記製造方法では、燃焼室を構成する第1面910aを形成する鋳型として金型903を用いるとともに、燃焼室以外の部分(他部)を形成する鋳型として砂型902,904を用いる。
金型により冷却される部分は溶湯の冷却速度が速くなるため、凝固組織が緻密化され、強度が高くなる。また、砂型により冷却される部分は、溶湯の冷却速度が金型接触部分よりも緩やかになるため、湯まわり性が向上する。そうして、砂型を用いることにより鋳造品を薄肉化できる。
上記製造方法では、図3に示す合金の注入工程において、溶湯は砂型にのみ接触するから、湯まわり性がよく、金型鋳造に比べると、溶湯の注入時間が短縮できるとともに薄肉化できる。また、シリンダヘッド900の燃焼室を形成する第1面910aは金型903により冷却されるから、当該部分の機械的強度を向上できる。さらに、第2砂型904を用いた時効処理を採用するから、T6等の熱処理が不要となり、製造工程が大幅に簡略化及び短縮化できる。
≪弾塑性応力解析≫
本実施形態に係る鋳造品の弾塑性応力解析方法は、図5に示すように、解析モデル作成工程S1と、温度変化情報取得工程S2と、基準冷却速度算出工程S3と、機械的特性データ準備工程S4と、選択工程S5と、弾塑性応力解析工程S6と、を備える。
-解析モデル作成工程-
解析モデル作成工程S1は、キャビティ905の形状データを分割して複数の要素からなる解析モデル251を作成する工程である。解析モデルは、演算装置26のモデル作成部により作成される(図1参照)。
具体的には、図6に示すように、鋳型901及び鋳型901の素材に関する鋳造方案3DCADモデルデータ(以下、「CADデータ」ともいう。)を読み込む(図6中S100)。CADデータを分割して、複数の要素からなるCAE解析用の解析モデル251を作成する。解析モデル251の作成は、例えば市販の自動メッシュ作成ソフト等を用いることができる。CADデータは、キャビティ905の形状データを含む。解析モデル251は3Dメッシュモデルであり、鋳型901及びキャビティ905を構成する複数の要素を含む。なお、要素の形状は、鋳造品の形状、素材、計算効率及び計算精度のレベルに応じて適宜設定されるが、例えばヘキサ要素、テトラ要素、ピラミッド要素、プリズム要素等である。要素のサイズは、特に限定されるものではなく、鋳造品の形状、素材、計算効率及び計算精度のレベルに応じて適宜設定される。
本実施形態では、後述する湯流れ解析及び凝固解析用の第1解析モデル251Aと、弾塑性応力解析用の第2解析モデル251Bとをそれぞれ作成する(図6中S111,S121)。
第1解析モデル251Aは、図7に示すように、ヘキサ要素(第1要素)の3Dメッシュモデルである。第2解析モデル251Bは、図8に示すように、テトラ要素(第2要素)の3Dメッシュモデルである。
なお、第1解析モデル251A及び第2解析モデル251Bは、同一の3Dメッシュモデルでもよい。これにより、湯流れ解析及び凝固解析と、弾塑性応力解析とを、同一の3Dメッシュモデルを用いた連成解析により行うことができる。
-温度変化情報取得工程-
温度変化情報取得工程S2は、キャビティ905に溶湯を注入したときの第2解析モデル251Bの各要素の節点における溶湯の温度変化情報を得る工程である。
温度変化情報は、例えば、第1解析モデル251Aを用いて湯流れ解析及び凝固解析を行うことにより得られる。なお、温度変化情報は、鋳造品の湯流れ解析及び凝固解析等のCAE解析により取得してもよいし、検証用ワークの温度測定実験等により取得してもよい。
湯流れ解析及び凝固解析は、例えば、MAGMA GmbH製のMAGMASOFT(登録商標)、クオリカ株式会社製のJSCAST(登録商標)、株式会社CAPCAST製のCAPCAST(登録商標)等の汎用の鋳造シミュレーションソフトウェアを用いて行われる。
具体的には、図6に示すように、上述のソフトウェアにおいて、第1解析モデル251Aを読み込み、溶湯の初期温度、流入条件等の鋳造条件及び境界条件を設定する(図6中S112)。そして、湯流れ解析及び凝固解析を行う(S113)。詳細には、溶湯の注入開始時点から時効処理の終了時点(鋳造品の完成時点)までの時間を複数のタイムステップに分割する。そして、第1解析モデル251Aの各要素において、上記タイムステップ毎に、溶湯の注入開始時点から時効処理の終了まで、繰り返し計算を行い、各タイムステップにおける各要素の温度を算出する。そうして、第1解析モデル251Aの各要素におけるタイムステップ毎の温度情報、すなわち第1解析モデル251Aの各要素の温度変化情報が得られる。
なお、各タイムステップの経過時間は、鋳造品の種類、形状、鋳型の素材、合金材料、鋳造条件等に応じて適宜変化させてよい。また、例えば1種類の鋳造品の製造工程内において、段階毎に異なるタイムステップの経過時間を設定してもよい。特に、鋳造品の温度が後述する基準温度K近傍の温度となる工程近傍のタイムステップの経過時間を、他の工程のタイムステップの経過時間よりも短くすることが望ましい。これにより、より精度よく冷却速度を算出することができる。また、冷却速度の算出に関係しない温度変化情報の情報量を抑えて計算効率を向上できる。具体的には、タイムステップの経過時間は、例えば0.1秒以上10秒以下に設定することができる。
次に、上述のごとく得られた第1解析モデル251Aの各要素の温度変化情報を、第2解析モデル251Bの各要素の節点におけるタイムステップ毎の温度情報、すなわち第2解析モデル251Bの各節点の温度変化情報として設定する(S122)。
具体的に、図7に示す第1解析モデル251Aと、図8に示す第2解析モデル251Bとを対応させると、図9のようになる。例えば、図9において、第1解析モデル251Aのヘキサ要素51は、第2解析モデル251Bの複数のテトラ要素52と対応している。すなわち、テトラ要素52の複数の節点52aが、ヘキサ要素51内に位置している。これらの節点52aに、ヘキサ要素51について得られた温度変化情報を、節点52aの温度変化情報として設定する。このようにして、湯流れ解析及び凝固解析により得られた第1解析モデル251Aの各要素の温度変化情報を用いて、第2解析モデル251Bの各節点の温度変化情報を取得できる。第2解析モデル251Bの各節点の温度変化情報は、テキストデータとして書き出され、記憶装置25に格納される(S123)。
本構成によれば、湯流れ解析及び凝固解析に用いるシステムと弾塑性応力解析に用いるシステムとの違い、要素の分割方法によらず、湯流れ解析及び凝固解析において算出された温度情報を弾塑性応力解析に利用できる。なお、図9では、節点52aとしてコーナー節点のみを表示して説明しているが、中間節点を導入して弾塑性応力解析を行う構成としてもよい。中間節点を導入する場合も、温度変化情報の取得方法は、上記と同様である。
[鋳造時のワークの温度変化]
図10は、ワーク910の鋳造時の各部の温度変化を示している。図10の結果は、上述の製造方法を用いることを前提として、上述の湯流れ解析及び凝固解析により得られた温度変化情報の一例である。
具体的には、図10は、鋳型901への溶湯909の注入開始時点から時効処理開始後数分経過時点までの各部の温度変化である。なお、横軸の時間は、図3(c)に示す、溶湯909が金型903にまで到達、すなわち溶湯909の注入完了時点を0秒としている。また、各部は、図4(a)~(d)に示すように、第1面910a、第2面910b、第3面910c、及び中央部910dである。
図10中時刻t1は、図4(a)に示すように金型903を鋳型901から分離した時刻である。また、時刻t2は、図4(b)に示すように、第1面910aに対するシャワリングを開始した時刻である。時刻t3は、図4(c)に示すように、鋳型901から第2砂型904を分離し、第1面910aに対するシャワリングを継続したまま第2面910bに対するシャワリングを開始した時刻である。時刻t4は、第1面910aに対するシャワリングを終了した時刻である。時刻t5は、図4(d)に示すように、第2面910bに対するシャワリングを終了するとともに時効処理を開始した時刻である。
図10に示すように、各部の温度は、注入完了時点の時刻0秒から金型903を除去する時刻t1に至るまで、概ね徐々に低下する。なお、第2面910b、第3面910c及び中央部910dの温度に比べると、第1面910aの温度の低下度合いが大きい。これは、第1面910aは金型903により直接冷却されているのに対し、第1面910a以外の各部は砂型902,904による冷却の影響が大きいためである。なお、第2面910b、第3面910c及び中央部910dの温度の各々を比較すると、金型903に近い方が概ねより速く低下する傾向にある。
次に、時刻t1において、金型903を除去すると、金型903による第1面910aの冷却が行われなくなる。そうして、製品部911側に伝わる押湯部912側の熱により、第1面910aの温度は徐々に上昇する。
そして、時刻t2において、第1面910aに対するシャワリングが開始すると、第1面910aの温度は急激に低下する。また、中央部910dの温度も、第1面910aの冷却に伴い、徐々に低下する。
さらに、時刻t3において、第2面910bに対するシャワリングが開始すると、第2面910bの温度は急激に低下する。そして、第3面910c及び中央部910dの温度も、第1面910a及び第2面910bの冷却に伴い、徐々に低下する。
そして、時刻t4において、第1面910aのシャワリングが終了した時点で、第1面910aの温度が徐々に復温する。
さらに、時刻t5において、時効処理が開始することにより、第2面910bの温度が少し上昇する。そうして、ワーク910全体の温度が、安定化しつつ徐々に低下する。そして、ワーク910全体の温度は、図示はしないが最終的に室温にまで低下する。
-基準冷却速度算出工程-
基準冷却速度算出工程S3では、上述の温度変化情報に基づき、第2解析モデル251Bの各節点において溶湯の温度が基準温度Kを通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度Vとして算出する。基準冷却速度Vの算出は、演算装置26の冷却速度算出部により行われる。
[冷却速度]
図11を参照して、溶湯の冷却速度の算出方法を説明する。任意の節点のN番目のタイムステップNにおいて、当該タイムステップNの開始温度をK、終了温度をKN+1とすると、溶湯の冷却速度Vは、下記式(1)で表される。
=-(KN+1-K)/W ・・・(1)
なお、開始温度K及び終了温度KN+1は、0秒の温度を1番目としたときの、それぞれ、N番目の温度及びN+1番目の温度である。また、式(1)中Wは、タイムステップNの経過時間である。
式(1)に示すように、冷却速度Vは、タイムステップNにおける開始温度Kと終了温度KN+1との差を当該タイムステップの経過時間Wで除して得られる。
なお、冷却速度Vの値は、溶湯の温度が低下する場合には正の値となり、上昇する場合には負の値となる。本実施形態では、溶湯の凝固過程、すなわち降温過程が重要であるから、冷却速度は、原則として0℃/s超であるとしてよい。
[基準温度]
基準温度Kは、合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い温度である。
合金材料は、多成分系であるから、その組成に応じた固相線温度及び液相線温度を有する。固相線温度は、溶湯の固相率及び液相率がそれぞれ100%及び0%となる温度である。液相線温度は、溶湯の固相率及び液相率がそれぞれ0%及び100%となる温度である。すなわち、固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い温度では、合金は液体と固体が混合した状態である。
合金を材料とする鋳造品では、凝固組織は共晶組織である。この共晶組織の結晶粒の大きさが微細で均一なほどその強度は高くなる。
溶湯の温度が固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い基準温度Kにあるとき、溶湯の一部が凝固して、溶湯は、液体と、固体すなわち共晶組織とが混ざり合った状態にある。そうすると、溶湯の温度が基準温度Kにあるときに、共晶組織の結晶粒の数、大きさが概ね定まる可能性がある。
特に、図10に示すように、キャビティ905への溶湯の注入が完了した時刻0秒では、溶湯の温度は液相線温度以上と考えられる。そして、時間経過に伴い、溶湯の温度は徐々に低下する。そうして、溶湯の温度が初めて基準温度Kを通過するときに、溶湯の凝固が進行して初晶が生じ始めると考えられる。初晶は、溶湯の温度低下、すなわち溶湯の凝固が進行するにつれて、大きくなるから、初晶の数が多いほど、共晶組織の結晶粒の大きさが小さく、数が多くなると考えられる。
固相線温度及び液相線温度としては、文献値、実験値、CAE解析による解析値等を用いることができる。CAE解析では、固相線温度及び液相線温度は、例えば上述の鋳造シミュレーションソフトウェアを用いて実材料の熱分析を行い、溶湯の固相率を計算することにより決定できる。AC4B相当のアルミニウム合金を主材料とする鋳造品の場合、CAE解析により算出される固相線温度及び液相線温度は、表1に示すように、それぞれ、例えば510℃及び604℃となる。そして、当該アルミニウム合金の場合は、510℃超604℃未満の温度を基準温度Kとすることができる。
Figure 0007279607000001
なお、基準温度Kは、ある程度の数の初晶が形成され得る温度の近傍と考えられる温度に設定することが望ましい。具体的には例えば、基準温度Kは、合金の固相率が10%以上40%以下となる温度に設定することが望ましい。ある程度の数の初晶が形成され得る温度が、初晶の数の決定に大きく寄与する可能性が高いからである。上述のアルミニウム合金の場合、例えば、基準温度Kは、573℃以上594℃以下の温度に設定することが望ましく、具体的には580℃等に設定できる。
[基準冷却速度]
基準冷却速度Vは、溶湯の温度が基準温度Kを通過するときの溶湯の冷却速度である。基準冷却速度Vが速くなると、溶湯の凝固が開始するときの過冷却が大きく発生する。そうすると、大きな過冷却により、多くの初晶が形成される。結果として微細な結晶粒が多く形成される。すなわち、基準冷却速度Vが速い方が、共晶組織の結晶粒の大きさがより微細で均一となり、鋳造品の機械的強度は高まると考えられる。
基準冷却速度Vは、開始温度と終了温度との間に基準温度Kが含まれるタイムステップにおける冷却速度として算出することができる。図11に例示するように、例えばタイムステップNの開始温度Kと終了温度KN+1との間に基準温度Kが含まれる場合には、式(1)により算出された冷却速度Vが基準冷却速度Vとなる。
なお、溶湯の注入完了時点である時刻0秒から、開始温度と終了温度との間に基準温度Kが初めて含まれるタイムステップにおける冷却速度を、基準冷却速度Vとすることが望ましい。溶湯の注入完了から温度が低下する過程において、溶湯の温度が初めて基準温度Kを通過するときに、形成される初晶の数が概ね決定される可能性が高いからである。
[基準冷却速度算出工程の手順]
基準冷却速度算出工程S3の具体的な手順の一例を図12に示す。まず、第2解析モデル251Bの各節点の温度変化情報を読み込む(S131)。そして、各節点のN番目及びN+1番目の温度情報をロードする(S132)。N番目のタイムステップNの経過時間Wを算出する(S133)。その後、温度確認ループ処理S134を行う。温度確認ループ処理S134は、第2解析モデル251Bの全節点において開始温度K及び終了温度KN+1の間に基準温度Kが含まれるかどうかを判定するとともに、基準温度Kが含まれる場合には基準冷却速度Vを算出するループ処理である。具体的には、開始温度K及び終了温度KN+1を確認して(S135)、これらの温度の間に基準温度Kが含まれるかどうかを判定する(S136)。そして、工程S136において、開始温度K及び終了温度KN+1の間に基準温度Kが含まれると判定された場合には、タイムステップNの冷却速度Vを、この節点における基準冷却速度Vとして算出する(S137)。一方、工程S136において、開始温度K及び終了温度KN+1の間に基準温度Kが含まれないと判定された場合には、別の節点における温度確認ループ処理S134に進む。このようにして、全節点における温度確認ループ処理S134が終了したら、全節点において基準冷却速度Vを算出したか否かを判定する(S138)。全節点において基準冷却速度Vを算出したと判定された場合は、全節点における基準冷却速度Vのテキストデータを書き出す(S139)。この基準冷却速度Vのテキストデータは、記憶装置25に記憶される。一方、全節点において基準冷却速度Vを算出していないと判定された場合は、次のタイムステップN+1に進み(S140)、工程S132~工程S138を繰り返す。
このようにして算出した基準冷却速度Vのデータの一例を図13に示す。なお、図13は、図2におけるシリンダヘッド900を左側から見た概略図であり、ハッチングが細かくなるほど、基準冷却速度Vは速くなる。図13中、第3面910c及び中央部910dを含む白抜き部分は、基準冷却速度Vが最も遅い。また、第1面910aに近づくにつれて、基準冷却速度Vは速くなる。そして、第1面910aの大部分は、基準冷却速度Vが最も速い結果となっている。
-機械的特性データ準備工程-
機械的特性データ準備工程S4は、予め試験的に求めておいた基準冷却速度Vと鋳造品の機械的特性との相関関係に基づいて、基準冷却速度Vに応じた複数の機械的特性データを準備する工程である。
[相関関係の算出]
基準冷却速度Vと鋳造品の機械的特性との相関関係は、例えば、CAE解析の結果と実試験の結果とを照合させること等の試験的方法により予め算出できる。具体的には例えば、検証用のワーク910について、上述のごとくCAE解析により算出した基準冷却速度Vデータと、ワーク910の各部から切り出した試験片の機械的特性データとを照合する。以下、具体例について説明する。
AC4B等のアルミニウム合金を材料とする鋳造品では、溶湯の凝固過程において、初晶としてα-Alデンドライト結晶が形成される。このデンドライト結晶を微細化するためには、デンドライト結晶のサイズを小さくすることに加えて、デンドライト結晶のアームの発生を抑えることが効果的である。デンドライト結晶のアームの発生を抑えるとは、具体的に、互いに隣り合う2次アーム間の間隔(デンドライト2次アーム間隔、DAS)を狭くすることを意味する。2次アームとは、デンドライト結晶の主軸から、該主軸の延びる方向に垂直な方向に成長するアームである。アルミニウム合金を材料とする鋳造品では、DASは、例えば20μm以上80μm以下程度となる。DASが小さい場合、隣り合う2次アーム間の間隙に分布する共晶のサイズが小さくなり、微細な凝固組織が得られる。
このDASを用いることにより、基準冷却速度Vと鋳造品の機械的特性との相関関係を求めることができる。
具体的には、まず、基準冷却速度Vと、デンドライト結晶のDASとの関係を求める。
図14に、基準温度Kを580℃に設定したときの基準冷却速度Vと、当該基準冷却速度Vを算出した部位のDASとの関係を示す。
DASの測定は、上述の製造方法により製造した常温の検証用のワーク910の各部から10mm角程度の試験片を切り出し、試験片の表面を磨き研磨後、市販のマイクロスコープで観察することにより行った。
基準冷却速度Vは、CAE解析を用いた上述の方法により、算出した解析値である。
図14中、基準冷却速度Vが2.8℃/s~3.5℃/s程度のデータは、検証用のワーク910の第1面910a及びその近傍のデータである。また、基準冷却速度Vが0.3℃/s~1℃/s程度のデータは、検証用のワーク910の中央部910dにおけるデータである。
図14に示すように、基準冷却速度Vが速い第1面910a及びその近傍は、DASが20μm~25μm程度と小さい。一方、基準冷却速度Vが遅い中央部910dは、DASが50μm~60μm程度と大きい。
このように、図14の結果から、基準冷却速度Vに応じて共晶組織の結晶粒の大きさが異なる、すなわち、基準冷却速度Vが速くなるとDASは小さくなることが判る。
次に、DASと鋳造品の機械的特性との関係を求める。
鋳造品の機械的特性として、検証用のワーク910の各部から切り出した試験片の引張強度を測定した。
具体的には、DAS測定用の試験片を切り出した箇所と近接した位置において、図15に示す引張試験用の鍔付き試験片を切り出した。そして、この鍔付き試験片について、25℃で引張試験を行い、引張強度[MPa]を求めた。
図16に、DASと引張強度との関係を示す。DASが20μm~25μm程度である第1面910a及びその近傍から切り出した試験片の引張強度は、270MPa~305MPa程度であった。一方、DASが50μm~60μm程度である中央部910dから切り出した試験片の引張強度は、190MPa~245MPa程度であった。このように、図16の結果から、DASが小さいほど、鋳造品の機械的強度は高くなることが判る。
そして、図14に示す基準冷却速度VとDASとの関係、及び、図16に示すDASと引張強度との関係に基づいて、基準冷却速度Vに対し引張強度をプロットすると、図17に示す、基準冷却速度Vと引張強度との間の相関関係が得られる。図17の結果から、基準冷却速度Vが2.8℃/s~3.5℃/s程度の場合、引張強度は270MPa~305MPa程度となり、機械的強度が高いことが判る。一方、基準冷却速度Vが0.3℃/s~1℃/s程度の場合、引張強度は190MPa~245MPa程度となり、機械的強度が低いことが判る。
初晶としてデンドライト結晶が形成されるアルミニウム合金を材料とする鋳造品では、上述のごとく、DASを考慮することにより、実現象をより的確に反映して、基準冷却速度Vと引張強度との間の相関関係を求めることができる。
なお、初晶としてデンドライト結晶を生成しない合金では、DAS以外の共晶組織の結晶粒のサイズを評価するパラメータを使用してもよい。また、例えばそのようなパラメータを考慮することなく、各部の基準冷却速度Vに対して、各部の機械的強度データをプロットすることにより、両者の相関関係を得るようにしてもよい。
[複数の機械的特性データの準備]
図18は、図5に示す各工程において得られるデータの流れを示している。なお、図18中A、B及びCの符号は、図6の符号A及びB、並びに、図12の符号Cと対応している。
図18に示すように、機械的特性データ準備工程S4では、上述のごとく求めた基準冷却速度Vと引張強度との間の相関関係に基づいて、基準冷却速度Vに応じた複数の機械的特性データを準備する。
従来、鋳造品の耐久性等に影響のある残留応力を評価するための弾塑性応力解析では、鋳造品の機械的特性はどの部位も同一であることを前提とする。すなわち、弾塑性応力解析に使用する機械的特性データとして、鋳造品に応じた1種類の応力-ひずみ特性の温度依存性データが使用される。
しかしながら、図17から判るように、鋳造品の各部の引張強度は、基準冷却速度Vに応じて大きく異なる。従って、各部において算出された基準冷却速度Vに応じて、当該各部の機械的強度をより的確に反映した応力-ひずみ特性の温度依存性データを用いることが、弾塑性応力解析の精度を向上させる上で効果的であると考えられる。
例えば、図17の結果は、基準冷却速度Vが2℃/s以上、機械的強度が270MPa~305MPa程度のデータの第1グループと、基準冷却速度Vが0℃/s超2℃/s未満、機械的強度が190MPa~245MPa程度のデータの第2グループと、に分けることができる。
上述の引張試験に使用した試験片と同様の箇所から切り出した同一形状の試験片を、昇降温条件の引張試験に供し、機械的特性データとして応力-ひずみ特性の温度依存性データを得た。具体的には、試験片を500℃の炉に入れて昇温させ、試験片温度が500℃に到達後、温度を安定化させるために500℃で1分間保持した。その後、試験片温度が試験温度になるまで試験片を空冷した。なお、空冷は、送風により行った。空冷時の送風条件は、試験片の冷却速度を一定とするため、予め試験的に決定された条件を用いた。試験片温度が試験温度に到達後、温度を安定化させるために試験温度で5分間保持した。その後、引張試験を行い、当該試験温度における応力-ひずみ特性を得た。同様に、試験温度を変えて、応力-ひずみ特性の温度依存性データを得た。
なお、応力-ひずみ特性の温度依存性データは、昇温条件を採用して計測してもよい。しかしながら、鋳造品の残留応力は、鋳造時の凝固過程、すなわち降温過程の影響により生じるから、応力-ひずみ特性の温度依存性データを得る場合にも、昇降温条件を採用して、降温過程のデータを得ることが望ましい。
第1グループは、第1面910a及びその近傍におけるデータであり、図19に示す応力-ひずみ特性の温度依存性データが得られた。一方、第2グループは、中央部910dにおけるデータであり、図20に示す応力-ひずみ特性の温度依存性データが得られた。
このようにして、後述する弾塑性応力解析に使用するための応力-ひずみ特性の温度依存性データを、各部の基準冷却速度Vの数値範囲に応じて、複数準備する。なお、上記の説明では、一例として、基準冷却速度Vの数値範囲を2種類に分けて、2種類の応力-ひずみ特性の温度依存性データを準備する場合について説明した。しかしながら、基準冷却速度Vの数値範囲は3種類以上に分けて、3種類以上の応力-ひずみ特性の温度依存性データを準備してもよい。応力-ひずみ特性の温度依存性データの数を増加させることにより、実現象をさらに的確に反映できるから、弾塑性応力解析の精度がさらに向上する。
これら複数の応力-ひずみ特性の温度依存性データは、図1に示す複数の機械的特性データとして、対応する基準冷却速度Vの数値範囲のデータと紐付けられた状態で、記憶装置25に格納される。
-選択工程-
図18に示すように、選択工程S5では、各節点における基準冷却速度Vの値に基づいて、上述のごとく準備された複数の応力-ひずみ特性の温度依存性データから所定の応力-ひずみ特性の温度依存性データ(所定の機械的特性データ)を選択する。選択工程S5は、演算装置26の選択部により行われる。
具体的には例えば、第2解析モデル251Bの各節点における基準冷却速度Vの値が、2℃/s以上であるか、2℃/s未満であるかを判定する。基準冷却速度Vの値が2℃/s以上である場合には、図19に示す応力-ひずみ特性の温度依存性データを選択する。一方、基準冷却速度Vの値が2℃/s未満である場合には、図20に示す応力-ひずみ特性の温度依存性データを選択する。
基準冷却速度Vの数値範囲を3種類以上に分けて、3種類以上の応力-ひずみ特性の温度依存性データを準備している場合には、各節点の基準冷却速度Vの値が含まれる数値範囲に応じた応力-ひずみ特性の温度依存性データを選択すればよい。
-弾塑性応力解析工程-
図18に示すように、弾塑性応力解析工程S6では、第2解析モデル251Bの各節点の温度変化情報を温度荷重データとする。そして、当該温度荷重データと、上述のごとく選択された所定の応力-ひずみ特性の温度依存性データとに基づいて、第2解析モデル251Bの各要素における残留応力値を算出する。弾塑性応力解析工程S6は、演算装置26の弾塑性応力解析部により行われる。
弾塑性応力解析、すなわち残留応力値の算出は、一般的なCAE解析手法により行うことができる。具体的には例えば、残留応力値の算出は、上述の湯流れ解析及び凝固解析と同様に、MAGMA GmbH製のMAGMASOFT(登録商標)、クオリカ株式会社製のJSCAST(登録商標)、株式会社CAPCAST製のCAPCAST(登録商標)等の汎用の鋳造シミュレーションソフトウェアを用いて行うことができる。
弾塑性応力解析工程S6において算出された残留応力値のデータは、鋳造品の破損部位判定、耐久性評価等に適宜使用される。
図21及び図22に、実際に行った弾塑性応力解析の結果を示す。
図21は、比較例であり、弾塑性応力解析工程S6で使用する応力-ひずみ特性の温度依存性データとして、図20のデータのみを採用した場合の解析結果である。図13の基準冷却速度Vの算出結果と、図21の解析結果とを比較すると、基準冷却速度Vが速い第1面910a近傍において、特に残留応力値が高くなっている。
これに対し、図22は、実施例であり、基準冷却速度Vが2℃/s以上の節点では図19のデータを選択するとともに、基準冷却速度Vが2℃/s未満の節点では図20のデータを選択して残留応力値を算出した結果である。図21において、特に残留応力値が高い結果となっていた部分の残留応力値が、図22では、より低く算出されている。
図21の比較例の結果では、第1面910a近傍の残留応力値が高い部分は、耐久性が低く、将来的な破損部位と誤判定される可能性がある。これに対し、図22の実施例の結果では、第1面910a近傍においても、残留応力値が極度に高く算出されておらず、より精度の高い破損部位判定、耐久性評価等を行うことができる。
このように、本実施形態に係る鋳造品の弾塑性応力解析によれば、基準冷却速度に応じて、その部位の機械的特性をより適切に反映した応力-ひずみ特性の温度依存性データを用いるから、鋳造品の弾塑性応力解析の精度を向上させることができる。そうして、鋳造品の破損部位判定、耐久性評価等の信頼性を向上させることができる。
≪弾塑性応力解析プログラム及びその記録媒体≫
以上の弾塑性応力解析方法の各工程は、弾塑性応力解析プログラムとしてプログラム化されている。すなわち、本実施形態に係る弾塑性応力解析プログラムは、コンピュータに、上記各工程のうち、例えば解析モデル作成工程S1の手順と、温度変化情報取得工程S2の手順と、基準冷却速度算出工程S3の手順と、選択工程S5の手順と、弾塑性応力解析工程S6の手順と、を実行させるプログラムである。この弾塑性応力解析プログラムは、記憶装置25に格納された状態で、制御装置22及び演算装置26により実行され得る。また、当該弾塑性応力解析プログラムは、記憶装置25に格納された状態に限らず、例えば光ディスク媒体や磁気テープ媒体など、コンピュータ読み取り可能な種々の周知の記録媒体に記録させておくことができる。そして、このような記録媒体を制御装置22の読み出し装置に装着して弾塑性応力解析プログラムを読み出すことにより、当該プログラムを実行可能である。
(その他の実施形態)
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、上記実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
上記実施形態で説明した鋳造品の製造方法は一例であり、製造方法は上述の方法に限られない。具体的には例えば、上記実施形態では、鋳型901として、金型903と、砂型902,904とを用いた鋳造方法を示したが、鋳型901として金型のみを用いる金型鋳造、砂型のみを用いる砂型鋳造においても本開示を適用できる。
上記実施形態では、溶湯の注入完了から溶湯の温度が初めて基準温度Kを通過するときの冷却速度を基準冷却速度Vとする方法について説明したが、当該方法に限定されない。例えば砂型のみを用いる砂型鋳造等では、溶湯全体の温度全体が低下しづらい結果、ある部位の溶湯の温度が一度基準温度Kを通過しても再度基準温度Kを上回る状況が考えられる。このような場合、例えば最後に基準温度Kを通過したときの冷却速度を基準冷却速度Vとする方法等を採用することができる。
本開示は、高い精度を有する鋳造品の弾塑性応力解析方法、解析システム、解析プログラム、及び記録媒体を提供することができるので、極めて有用である。
21 弾塑性応力解析システム
22 制御装置
23 入力装置
24 出力装置
25 記憶装置(記憶手段)
26 演算装置(モデル作成手段、冷却速度算出手段、選択手段、弾塑性応力解析手段)
251 解析モデル
251A 第1解析モデル
251B 第2解析モデル
900 シリンダヘッド
901 鋳型
902 第1砂型(砂型)
903 金型
904 第2砂型(砂型)
905 キャビティ
910 ワーク
910a 第1面(一部)
910b 第2面(他部)
910c 第3面(他部)
910d 中央部(他部)
S1 解析モデル作成工程
S2 温度変化情報取得工程
S3 基準冷却速度算出工程
S4 機械的特性データ準備工程
S5 選択工程
S6 弾塑性応力解析工程
開始温度
N+1 終了温度
基準温度
基準冷却速度
経過時間

Claims (9)

  1. 鋳型のキャビティに合金の溶湯を注入して得られる鋳造品の弾塑性応力解析方法であって、
    前記キャビティの形状データを分割して複数の要素からなる解析モデルを作成する工程と、
    前記キャビティに前記溶湯を注入したときの前記各要素の節点における該溶湯の温度変化情報を取得する工程と、
    前記温度変化情報に基づき、前記各節点において前記溶湯の温度が前記合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い特定の温度である基準温度を通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度として算出する工程と、
    予め試験的に求めておいた前記基準冷却速度と前記鋳造品の機械的特性との相関関係に基づいて、前記基準冷却速度に応じた複数の機械的特性データを準備する工程と、
    前記基準冷却速度に基づいて、前記複数の機械的特性データから所定の機械的特性データを選択する工程と、
    前記温度変化情報と前記所定の機械的特性データとに基づいて、前記各要素における残留応力値を算出する工程と、を備えた
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法。
  2. 請求項1において、
    前記温度変化情報は、前記鋳型への前記溶湯の注入完了時点から前記鋳造品の完成時点までの時間を複数のタイムステップに分割したときの、該タイムステップ毎の温度情報であり、
    前記溶湯の冷却速度は、任意の前記タイムステップにおける開始温度と終了温度との差を当該タイムステップの経過時間で除して得られ、
    前記基準冷却速度は、前記開始温度と前記終了温度との間に前記基準温度が初めて含まれる前記タイムステップにおける前記冷却速度である
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記温度変化情報は、前記鋳造品について湯流れ解析及び凝固解析を行うことにより得られる情報であり、
    前記解析モデルを作成する工程は、
    複数の第1要素からなる湯流れ解析及び凝固解析用の第1解析モデルを作成する工程と、
    複数の第2要素からなる弾塑性応力解析用の第2解析モデルを作成する工程と、を備え、
    前記温度変化情報を得る工程は、
    前記第1解析モデルを用いて前記湯流れ解析及び凝固解析を行うことにより、前記各第1要素の温度変化情報を得る工程と、
    前記第1要素と前記第2要素とを対応させたときに、前記各第1要素に含まれる前記各第2要素の節点に、該第1要素の温度変化情報を、該節点の温度変化情報として設定する工程と、を備えた
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1つにおいて、
    前記合金は、凝固過程において初晶としてデンドライト結晶が形成されるアルミニウム合金であり、
    前記基準冷却速度と前記鋳造品の機械的特性との前記相関関係は、前記基準冷却速度と前記デンドライト結晶のデンドライト2次アーム間隔(DAS)との関係、及び、前記DASと前記鋳造品の機械的特性との関係に基づいて、求める
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1つにおいて、
    前記鋳型は、前記鋳造品の一部を形成する金型と、該鋳造品の他部を形成する砂型と、を備えた
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法。
  6. 請求項5において、
    前記鋳造品は、エンジンのシリンダヘッドであり、
    前記金型は、前記一部として前記シリンダヘッドの燃焼室を形成し、
    前記砂型は、前記他部として前記燃焼室以外の部分を形成する
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析方法。
  7. 鋳型のキャビティに合金の溶湯を注入して得られる鋳造品の弾塑性応力解析システムであって、
    モデル作成手段と、冷却速度算出手段と、記憶手段と、選択手段と、弾塑性応力解析手段と、を備え、
    前記モデル作成手段は、前記キャビティの形状データを分割して複数の要素からなる解析モデルを作成し、
    冷却速度算出手段は、前記キャビティに前記溶湯を注入したときの前記各要素の節点における該溶湯の温度変化情報に基づき、前記各節点において前記溶湯の温度が前記合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い特定の温度である基準温度を通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度として算出し、
    前記記憶手段は、前記解析モデルと、前記温度変化情報と、前記基準冷却速度と、該基準冷却速度と前記鋳造品の機械的特性との相関関係に基づいて準備された複数の機械的特性データと、を記憶し、
    前記選択手段は、前記基準冷却速度に基づいて、前記複数の機械的特性データから所定の機械的特性データを選択し、
    前記弾塑性応力解析手段は、前記温度変化情報と前記所定の機械的特性データとに基づいて、前記各要素における残留応力値を算出する
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析システム。
  8. 鋳型のキャビティに合金の溶湯を注入して得られる鋳造品の弾塑性応力解析プログラムであって、
    コンピュータに、
    前記キャビティの形状データを分割して複数の要素からなる解析モデルを作成する手順と、
    前記キャビティに前記溶湯を注入したときの前記各要素の節点における該溶湯の温度変化情報を取得する手順と、
    前記温度変化情報に基づき、前記各節点において前記溶湯の温度が前記合金の固相線温度よりも高く液相線温度よりも低い特定の温度である基準温度を通過するときの該溶湯の冷却速度を基準冷却速度として算出する手順と、
    前記基準冷却速度に応じて予め設定された複数の機械的特性データから、前記基準冷却速度に基づいて、所定の機械的特性データを選択する手順と、
    前記温度変化情報と前記所定の機械的特性データとに基づいて、前記各要素における残留応力値を算出する手順と、を実行させる
    ことを特徴とする鋳造品の弾塑性応力解析プログラム。
  9. 請求項8に記載された鋳造品の弾塑性応力解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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