JP2015174116A - ひけ割れの推定方法及びその推定プログラムの記憶媒体 - Google Patents

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拓 松谷
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Abstract

【課題】鋳造品の表面に発生する可能性の高いひけ割れ欠陥を精度高く推定できる方法の提供を目的とする。【解決手段】鋳造シミュレーションによって鋳造品の三次元形状に基づく、凝固収縮率の分布から鋳造品のひけ巣の発生する可能性のある部位を予測するステップと、前記ひけ巣の発生予測部位の鋳造品の表面からの最短距離(L)を求める計測ステップと、前記ひけ巣の体積(V)を求める計測ステップと、前記ひけ巣の発生予測部位周辺の凝固時間(T)を求める計測ステップとを有し、前記最短距離(L),体積(V)及び凝固時間(T)をパラメーターとして鋳造品の表面にひけ割れが発生する可能性を評価するステップを有することを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は鋳造品の表面に発生するひけ割れ欠陥の推定方法及びその推定プログラムを記録した記憶媒体に関する。
アルミニウム合金等のダイカスト鋳造分野においては凝固収縮率の分布を予測したり、湯流れを解析する鋳造シミュレーションが行われている。
また、表面の凹凸形状が複雑な鋳造品にあっては、ひけ巣に起因して表面が陥没し発生するピンホールとも称されるひけ割れ欠陥が発生しやすい課題があった。
このような場合に鋳造シミュレーションを用いて凝固収縮率の分布を予測するだけではひけ割れ欠陥の発生程度を予測することができなかった。
特許文献1には予測されるひけ巣のうち窪み状角部の表面との間の最短距離とこの窪み状角部の曲率半径にて、ひけ割れの生じる可能性を予測する技術を開示する。
しかし、同公報に開示する推定方法には、ひけ巣の発生形態が充分に考慮されていなかった。
ひけ巣には概ね1つの空洞状に形成した単一巣と複数の空洞に分散した分散巣の形態があり、鋳造品の表面から予測巣までの距離や窪み状角部の曲率半径だけでは分散巣の予測ができないものであった。
鋳造シミュレーションによる凝固収縮率の分布から、ひけ巣の体積(V)を計測した値が同じであっても分散巣であれば単一巣に比較して、ひけ割れが発生しにくいことに着目し本発明に至った。
特許第5040618号公報
本発明は、鋳造品の表面に発生する可能性の高いひけ割れ欠陥を精度高く推定できる方法の提供を目的とする。
本発明に鋳造品のひけ割れ推定方法は、鋳造シミュレーションによって鋳造品の三次元形状に基づく、凝固収縮率の分布から鋳造品のひけ巣の発生する可能性のある部位を予測するステップと、前記ひけ巣の発生予測部位の鋳造品の表面からの最短距離(L)を求める計測ステップと、前記ひけ巣の体積(V)を求める計測ステップと、前記ひけ巣の発生予測部位周辺の凝固時間(T)を求める計測ステップとを有し、前記最短距離(L),体積(V)及び凝固時間(T)をパラメーターとして鋳造品の表面にひけ割れが発生する可能性を評価するステップを有することを特徴とする。
本発明に係るひけ割れの推定方法は鋳造シミュレーションにより凝固収縮率の分布から予測した複数のひけ巣のうち、表面にひけ割れ欠陥として発現する恐れが高いものを推定するに当たり、同じひけ巣の体積(V)であっても分散巣であれば、ひけ割れとなるピンホールにまで至らないことに着目し、分散巣の程度を溶湯の凝固時間(T)にて推定した。
ここで、前記鋳造品のひけ割れの推定に用いる予測式が(P)=定数(a)+係数(K)/(L)+係数(K)×(V)×(T)で表されるものであってよい。
このような推定方法のプログラムは記憶媒体に記録させ、コンピューターにて実行させることができる。
従来、鋳造シミュレーションを用いて鋳造品の三次元形状に基づいて凝固収縮率を予測しただけでは、ひけ割れの発生の有無までは推定できず、例えば特許文献1の推定方法では分散巣等の巣の発生形態が充分に考慮されていなかった。
これに対して本発明は、ひけ巣の発生部位とひけ巣の発生形態に関するパラメーターを用いて推定したことにより鋳造表面にひけ割れが発生するか否かの推定精度が向上し、実際に型製作をする前に事前検討することで、その結果を型設計に反映できる。
本発明に係る推定方法の流れを示すフローチャートである。 (a)は鋳造品の表面(溝部)にひけ割れ(ピンホール)が発生した例を示し、(b)はピンホール部の断面写真を示す。 重回帰分析による検討内容を示す。 (a)ひけ巣の形態を示し、(b)はその形態が相違する説明図を示す。
以下、本発明に係る推定方法を検討した内容を説明する。
ひけ割れは、ひけ巣に起因して鋳造品の表面にピンで開けたようなホールが発生する不良であり、ピンホールとも称されている。
その表面写真を図2(a)に示し、断面写真を図2(b)に示す。
そこで本発明者らは図3に示すように、ひけ巣に起因するピンホール危険ポイント(目的変数)に対する要因系のモデルを選定し、これらを説明変数とする重回帰分析を実施した。
その結果、説明変数のうち「ひけ巣−表面距離(L)」、「ひけ巣体積(V)」及び「凝固時間(T)」の3つが有意となり、ピンホール危険ポイント(P)の回帰式は(P)=(a)+(K)/(L)−(K)×(V)×(T)と表すことができた。
ここで(a)は定数、K,Kは係数である。
次に特許文献1と比較して「凝固時間(T)」が有意となった理由を調査すべく、ひけ巣の部分の断面観察を実施した。
その結果、図4(a)に示すように表面からの距離が同じ程度でも単一巣の形態を示すA部の方が分散巣の形態を示すB部よりもひけ巣の体積が小さいにもかかわらず、A部にひけ割れが発生し、B部はピンホールにならなかった。
これは図4(b)に説明図を示すように、ダイカスト鋳造において凝固が速いと分散巣になりやすいからであった。
次に本発明に係るひけ割れの推定方法の手順を図1に示すフローチャートで説明する。
製品となる鋳造品の鋳物・鋳型モデルを作成(S1)し、その一方で鋳造品の三次元形状の鋳造表面モデルを作成する(S2)。
次に鋳造条件を設定し(S3)、鋳造シミュレーションにて凝固収縮率分布を予測する(S4)。
鋳造シミュレーションには、株式会社CAPCAST製のソフト「CAPCAST」を用いた。
この時点で、鋳造シミュレーションによるひけ巣の予測部位の三次元データと、鋳造品の三次元形状のデータとを統合する。
次に「ひけ巣の大きさ」[ひけ巣体積(V)],「ひけ巣周辺の凝固時間」[凝固時間(T)]及び「ひけ巣と鋳物表面との最短距離(L)」を計測する(S5)。
次に重回帰式(P)=(a)+(K)/(L)+(K)×(V)×(T)を用いて評価点を算出する。
これにより、ひけ割れが生じる可能性が高い鋳造品の表面部位を特定する(S7)。
評価式の定数(a)及び係数(K),(K)は、鋳造製品の大きさ,種類等に応じて設定することができる。
複雑な油路を有するオートマチック車のバルブボディを対象に本発明に係るプログラムを用いて推定したもの及び従来(特許文献1)に基づいて推定したものと、実機評価したものを比較した。
その結果、実機ではピンホールが3ヶ所発生し、その部位及び個数は、本発明に係る推定方法と一致した。
これに対して従来による推定では、6ヶ所となり適合率が約50%と低かった。

Claims (3)

  1. 鋳造シミュレーションによって鋳造品の三次元形状に基づく、凝固収縮率の分布から鋳造品のひけ巣の発生する可能性のある部位を予測するステップと、
    前記ひけ巣の発生予測部位の鋳造品の表面からの最短距離(L)を求める計測ステップと、
    前記ひけ巣の体積(V)を求める計測ステップと、
    前記ひけ巣の発生予測部位周辺の凝固時間(T)を求める計測ステップとを有し、
    前記最短距離(L),体積(V)及び凝固時間(T)をパラメーターとして鋳造品の表面にひけ割れが発生する可能性を評価するステップを有することを特徴とする鋳造品のひけ割れ推定方法。
  2. 前記鋳造品のひけ割れの推定に用いる予測式が(P)=定数(a)+係数(K)/(L)+係数(K)×(V)×(T)で表されることを特徴とする請求項1記載の鋳造品のひけ割れ推定方法。
  3. 請求項1又は2に記載のひけ割れ推定方法をコンピュータに実行されるためのプログラムを記録した記憶媒体。
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