以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。本実施形態のケミカルヒートポンプ装置は、車両のエンジン(内燃機関)の排熱を蓄熱して、この熱を所望時に取り出して車室内へ送風する送風空気の冷却に有効利用するものである。
図1は本第1実施形態に係るケミカルヒートポンプ装置を示す全体構成図である。なお、図1は後述する冷却蓄熱モードを示している。
本実施形態のケミカルヒートポンプ装置は、冷却対象物を冷却するとともに高温外部熱を蓄熱する冷却蓄熱モードと、冷却蓄熱モードで蓄熱された高温外部熱を放熱する放熱モードとを切り替え可能に構成されている。
ケミカルヒートポンプ装置は、ケミカルヒートポンプサイクル102を備えている。このケミカルヒートポンプサイクル102は、加熱されることによりアンモニアを放出するとともに、冷却されることによりアンモニアを吸収する第1反応物が収容された第1反応器11と、加熱されることによりアンモニアを放出するとともに、冷却されることによりアンモニアを吸収する第2反応物が収容された第2反応器12とを備えている。
第1反応器11には、第1反応器11内を高温外部熱により加熱、または高温外部熱より温度の低い低温外部熱により冷却する第1熱交換器110が収容されている。同様に、第2反応器12には、第2反応物を高温外部熱により加熱、または低温外部熱により冷却する第2熱交換器120が収容されている。
ここで、本実施形態において、冷却対象物は送風空気であり、高温外部熱はエンジン101の排熱であり、低温外部熱は外気が有する熱(冷熱)である。また、第1反応物および第2反応物としては、例えば臭化ストロンチウムのアンミン錯体等の金属ハロゲン化物のアンミン錯体を用いることができる。
本実施形態のヒートポンプ装置には、エンジン101を冷却するエンジン冷却水が流れる冷却水回路103が設けられている。そして、冷却水回路103を流れるエンジン冷却水が第1、第2熱交換器110、120に供給されることにより、エンジン101の排熱が第1、第2熱交換器110、120に供給されるようになっている。
また、本実施形態のヒートポンプ装置には、外気と冷媒との間で熱交換を行うことにより冷媒を冷却する外気熱交換器104と、この冷媒が流れる冷媒回路105が設けられている。そして、冷媒回路105を流れる冷媒が第1、第2熱交換器110、120に供給されることにより、外気の有する熱が第1、第2熱交換器110、120に供給されるようになっている。なお、冷媒回路105には、後述する凝縮器4も接続されている。
第1反応器11および第2反応器12には、第1電気式三方弁31のアンモニア入口側が接続されている。この第1電気式三方弁31は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替手段である。
具体的には、第1電気式三方弁31は、第1反応器11出口側と後述する凝縮器4との間を接続するアンモニア流路(図1の実線矢印で示す回路)と、第2反応器12出口側と凝縮器4との間を接続するアンモニア流路(図1の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第1電気式三方弁31のアンモニア出口側には、凝縮器4のアンモニア入口側が接続されている。凝縮器4は、第1電気式三方弁31から流出したアンモニアと冷媒との熱交換によって、アンモニアを放熱させて凝縮させる熱交換器である。
凝縮器4のアンモニア出口側には、貯留部5のアンモニア入口側が接続されている。貯留部5は、凝縮器4で凝縮したアンモニアを貯留するための容器である。
貯留部5のアンモニア出口側には、電気式膨張弁6のアンモニア入口側が接続されている。電気式膨張弁6は、貯留部5から流出したアンモニアを減圧膨張させる減圧手段であるとともに、電気式膨張弁の6の下流側、すなわち後述する蒸発器7へ流出させるアンモニアの流量を調整する流量調整手段である。
この電気式膨張弁6は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構である。具体的には、後述する蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち電気式膨張弁6の下流側に流出させるアンモニアの流量を増加させるように構成されている。
電気式膨張弁6のアンモニア出口側には、蒸発器7のアンモニア入口側が接続されている。蒸発器7は、電気式膨張弁6で減圧膨張されたアンモニアと送風空気との熱交換によって、アンモニアを蒸発させるとともに、送風空気を冷却する熱交換器である。
蒸発器7のアンモニア出口側には、第2電気式三方弁32のアンモニア入口側が接続されている。この第2電気式三方弁32は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替手段である。具体的には、第2電気式三方弁32は、蒸発器7出口側と第2反応器12との間を接続するアンモニア流路(図1の実線矢印で示す回路)と、蒸発器7出口側と第1反応器11との間を接続するアンモニア流路(図1の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
ところで、第1熱交換器110の入口側には、第3電気式三方弁33の出口側が接続されている。この第3電気式三方弁33は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。具体的には、第3電気式三方弁33は、冷却水回路103におけるエンジン101出口側と第1熱交換器110との間を接続する流路(図1の実線矢印で示す回路)と、冷媒回路105における外気熱交換器104出口側と第1熱交換器110との間を接続する流路(図1の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第1熱交換器110の出口側には、第4電気式三方弁34の入口側が接続されている。この第4電気式三方弁33は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。具体的には、第4電気式三方弁34は、第1熱交換器110と冷却水回路103におけるエンジン101入口側との間を接続する流路(図1の実線矢印で示す回路)と、第1熱交換器110と冷媒回路105における外気熱交換器104入口側の間を接続する流路(図1の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第3、第4電気式三方弁33、34を共に冷却水回路103側に切り替えることで、第1熱交換器110にエンジン冷却水、すなわちエンジンの排熱が供給される。一方、第3、第4電気式三方弁33、34を共に冷媒回路105側に切り替えることで、第1熱交換器110に冷媒、すなわち外気が有する熱が供給される。したがって、第3、第4電気式三方弁33、34が、本発明の第1供給切替手段に相当している。
また、第2熱交換器120の入口側には、第5電気式三方弁35の出口側が接続されている。この第5電気式三方弁35は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。具体的には、第5電気式三方弁35は、冷媒回路105における外気熱交換器104出口側と第2熱交換器120との間を接続する流路(図1の実線矢印で示す回路)と、冷却水回路103におけるエンジン101出口側と第2熱交換器120との間を接続する流路(図1の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第2熱交換器120の出口側には、第6電気式三方弁36の入口側が接続されている。この第6電気式三方弁36は、後述する制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。具体的には、第6電気式三方弁36は、第2熱交換器120と冷媒回路105における外気熱交換器104入口側との間を接続する流路(図1の実線矢印で示す回路)と、第2熱交換器120と冷却水回路103におけるエンジン101入口側の間を接続する流路(図1の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第5、第6電気式三方弁35、36を共に冷却水回路103側に切り替えることで、第2熱交換器120にエンジン冷却水、すなわちエンジンの排熱が供給される。一方、第5、第5電気式三方弁35、36を共に冷媒回路105側に切り替えることで、第2熱交換器120に冷媒、すなわち外気の熱が供給される。したがって、第5、第6電気式三方弁35、36が、本発明の第2供給切替手段に相当している。
また、本実施形態では、凝縮器4および貯留部5の内容積の合計は、ケミカルヒートポンプサイクル102内に存在するアンモニアの全てが凝縮器4において冷媒により冷却されて凝縮した際の当該液化アンモニアの体積以上となるように設定されている。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。図2は、本第1実施形態の電気制御部のブロック図である。
図2に示すように、制御手段としての制御装置20は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空気清浄制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された機器の作動を制御する。
出力側に接続された機器としては、電気式膨張弁6、第1〜第6電気式三方弁31〜36等が挙げられる。
また、制御装置20の入力側には、各センサ群からの検出信号が入力される。このセンサ群としては、エンジン101出口側のエンジン冷却水温度THを検出する冷却水温度センサ21、外気熱交換器104出口側の冷媒温度TMを検出する冷媒温度センサ22、蒸発器7から吹き出される送風空気の温度である蒸発器吹出空気温度(蒸発器温度)TLを検出する蒸発器温度センサ23、第1熱交換器110の入口側流体(冷却水または冷媒)温度(第1入口温度)T1inを検出する第1入口温度センサ24、第1熱交換器110の出口側流体温度(第1出口温度)T1outを検出する第1出口温度センサ25、第2熱交換器120の入口側流体温度(第2入口温度)T2inを検出する第2入口温度センサ26、第2熱交換器120の出口側流体温度(第2出口温度)T2outを検出する第2出口温度センサ27等が挙げられる。
ちなみに、本実施形態では、図1に示すように、第1入口温度センサ24は、第3電気式三方弁33の下流側かつ第1熱交換器110の上流側に配置されている。第1出口温度センサ25は、第1熱交換器110の下流側かつ第4電気式三方弁34の上流側に配置されている。第2入口温度センサ26は、第5電気式三方弁35の下流側かつ第2熱交換器120の上流側に配置されている。第2出口温度センサ27は、第2熱交換器120の下流側かつ第6電気式三方弁36の上流側に配置されている。
さらに、制御装置20の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル28が接続され、この操作パネル28に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル28に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車室内送風空気の冷却(冷房)の開始を指令する冷房スイッチ281、車室内目標温度Taを設定する車室内温度設定スイッチ282等が設けられている。
図3に本第1実施形態における制御装置20が実行する冷却蓄熱モードの制御(以下、冷却蓄熱制御という)のフローチャートを示し、図4に本第1実施形態における制御装置20が実行する放熱モードの制御(以下、放熱制御という)のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態になると、制御装置20は図3に示す処理を開始する。
まず、ステップ101で、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態とするための制御信号を出力する。具体的には、第1電気式三方弁31に対して、第2反応器12側を閉じて第1反応器11側を開くように制御信号を出力する。また、第2電気式三方弁32に対して、第1反応器11側を閉じて第2反応器12側を開くように制御信号を出力する。また、第3、第4電気式三方弁33、34に対して、冷媒回路105側を閉じて冷却水回路103側を開くように制御信号を出力する。また、第5、第6電気式三方弁35、36に対して、冷却水回路103側を閉じて冷媒回路105側を開くように制御信号を出力する。
次に、ステップ102で、冷却水温度センサ21により検出された冷却水温度THが、予め定めた基準冷却水温度TH0以上か否かを判定する。ステップ102にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が不足しており、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができないと判断し、放熱制御に移行する。この放熱制御の詳細については後述する。
一方、ステップ102にて冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上になっていると判定された場合は、ステップ103に進み、冷却負荷要求があるか否かを判定する。冷却負荷要求があるか否かは、冷房スイッチ281がオン状態かオフ状態かに基づいて判定することができる。すなわち、冷房スイッチ281がオン状態であれば冷却負荷要求があると判定し、冷房スイッチ281がオフ状態であれば冷却負荷要求がないと判定することができる。
ステップ103にて冷却負荷要求がないと判定された場合は、蒸発器7にアンモニアを供給する必要がないと判断し、ステップ104へ進む。ステップ104では、電気式膨張弁6を閉じ、電気式膨張弁6の下流側にアンモニアが流れないようにして、ステップ106へ進む。
一方、ステップ103にて冷却負荷要求があると判定された場合は、ステップ105にて、蒸発器7の冷却負荷に基づいて電気式膨張弁6の絞り通路面積(開度)を調整する。具体的には、蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち蒸発器7に流入させるアンモニアの流量を増加させる。本実施形態では、車室内目標温度Taから蒸発器温度TLを引いた値が増大する程、電気式膨張弁6の絞り通路面積を増大させる。
次のステップ106では、第1熱交換器110および第2熱交換器120のうち冷却水回路103と接続されている、すなわち冷却水が流通している熱交換器において、その入口側温度と出口側温度との差が、予め定めた基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。具体的には、第1熱交換器110に冷却水が流通している場合は、第1入口温度T1inから第1出口温度T1outを引いた値である第1熱交換器温度差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。一方、第2熱交換器120に冷却水が流通している場合は、第2入口温度T2inから第2出口温度T2outを引いた値である第2熱交換器温度差ΔT2が、予め定めた基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。
ステップ106にて第1熱交換器温度差ΔT1もしくは第2熱交換器温度差ΔT2が基準温度差ΔTc以上になっていると判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、脱アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、ステップ102に戻る。
一方、ステップ106にて第1熱交換器温度差ΔT1もしくは第2熱交換器温度差ΔT2が基準温度差ΔTcを下回っていると判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が低くなっており、脱アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち脱アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ107へ進む。
ステップ107では、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態および後述する第2状態のうち、現在の状態と異なる状態(もう一方の状態)とするための制御信号を出力し、ステップ102に戻る。すなわち、現在、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態とされている場合は、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第2状態とするための制御信号を出力する。
具体的には、第1電気式三方弁31に対して、第1反応器11側を閉じて第2反応器12側を開くように制御信号を出力する。また、第2電気式三方弁32に対して、第2反応器12側を閉じて第1反応器11側を開くように制御信号を出力する。また、第3、第4電気式三方弁33、34に対して、冷却水回路103側を閉じて冷媒回路105側を開くように制御信号を出力する。また、第5、第6電気式三方弁35、36に対して、冷媒回路105側を閉じて冷却水回路103側を開くように制御信号を出力する。
一方、現在、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態とされている場合は、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態とするための制御信号を出力する。
次に、第1実施形態における制御装置20が実行する放熱制御について、図4および図5を参照して説明する。図5は第1実施形態における放熱モードのケミカルヒートポンプ装置を示す全体構成図である。図3のステップ102にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合に、放熱制御が開始される。
まず、ステップ201で、冷却負荷要求があるか否かを判定する。冷却負荷要求があるか否かは、ステップ103と同様、冷房スイッチ281がオン状態かオフ状態かに基づいて判定することができる。ステップ201にて冷却負荷要求がないと判定された場合は、後述するステップ205へ進む。
一方、ステップ201にて冷却負荷要求があると判定された場合は、ステップ202で、蒸発器7の冷却負荷に基づいて電気式膨張弁6の絞り通路面積(開度)を調整する。具体的には、ステップ105と同様、蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち蒸発器7に流入させるアンモニアの流量を増加させる。
続いて、ステップ203で、第1熱交換器110および第2熱交換器120のうち冷媒が流通している熱交換器、すなわち冷媒回路105と接続されている熱交換器において、その入口側温度と出口側温度との差である冷媒流通熱交換器温度差ΔTMが、基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。
ステップ203にて冷媒流通熱交換器温度差ΔTMが基準温度差ΔTc以上になっていると判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、吸アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、吸アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、そのまま後述するステップ205へ進む。
一方、ステップ203にて冷媒流通熱交換器温度差ΔTMが基準温度差ΔTcを下回っていると判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、吸アンモニア反応の反応率が低くなっており、吸アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち吸アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ204へ進む。
ステップ204では、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態および第2状態のうち、現在の状態と異なる状態(もう一方の状態)とするための制御信号を出力し、ステップ205へ進む。具体的には、現在、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態とされている場合は、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第2状態とするための制御信号を出力する。一方、現在、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態とされている場合は、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態とするための制御信号を出力する。
続いてステップ205では、冷却水温度センサ21により検出された冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上か否かを判定する。ステップ205にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が未だ不足しており、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができないと判断し、ステップ201に戻る。
一方、ステップ205にて冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上になっていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が増大し、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができると判断し、上述した冷却蓄熱制御へ移行する。
次に、上述の構成において本実施形態の作動について説明する。まず、冷却蓄熱モードの作動について図1および図6を参照して説明する。図6は第1実施形態に係るケミカルヒートポンプ装置の冷却蓄熱モードの作動を説明するためのタイムチャートである。
冷却蓄熱モードでは、まず、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態となる。すなわち、第1電気式三方弁31が第1反応器11側を開いた状態となり、第2電気式三方弁32が第2反応器12側を開いた状態となり、第3、第4電気式三方弁33、34が冷却水回路103側を開いた状態となり、第5、第6電気式三方弁35、36が冷媒回路105側を開いた状態となる。
このため、第1反応器11において、第1反応物がエンジン冷却水を介してエンジン101の排熱により加熱され、第1反応器11から気体状態のアンモニアが放出される。この気体状態のアンモニアが凝縮器4に流入し、冷媒と熱交換して凝縮される。凝縮器4で凝縮したアンモニアは、貯留部5に流入し、貯留される。
このとき、冷却負荷要求がなければ、電気式膨張弁6が全閉状態となっているので、貯留部5内のアンモニア量が増加する。これにより、エンジン101の排熱が蓄熱される。
一方、冷却負荷要求があれば、蒸発器7の冷却負荷に応じて電気式膨張弁6の絞り通路面積が調整されるので、冷却負荷に応じた量のアンモニアが蒸発器7へ流出される。具体的には、蒸発器7の冷却負荷が大きい程、蒸発器7へ流出されるアンモニア量が多くなる。
蒸発器7に流入したアンモニアは、送風空気と熱交換して蒸発し、その際に送風空気は冷却される。蒸発器7で蒸発したアンモニアは、第2反応器12に流入し、第2反応器12において冷媒により冷却され、第2反応物に吸収される。
このように、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態とすることで、第1反応器11から放出されたアンモニアは、凝縮器4、貯留部5、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第2反応器12で吸収される。すなわち、冷却蓄熱モードでは、貯留部5に液化アンモニアを貯留することによりエンジン101の排熱の蓄熱を行うとともに、アンモニアを蒸発器7で送風空気と熱交換させることにより送風空気の冷却を行うことができる。
そして、第1熱交換器温度差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回ると、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態となる。すなわち、第1電気式三方弁31が第2反応器12側を開いた状態となり、第2電気式三方弁32が第1反応器11側を開いた状態となり、第3、第4電気式三方弁33、34が冷媒回路105側を開いた状態となり、第5、第6電気式三方弁35、36が冷却水回路103側を開いた状態となる。
このため、第2反応器12において、第2反応物がエンジン101の排熱により加熱されるので、第2反応器12から、第1状態の際に吸収したアンモニアが放出される。このアンモニアは、第1状態と同様、凝縮器4で冷媒と熱交換して凝縮された後、貯留部5で貯留される。そして、貯留部5から電気式膨張弁6を介して蒸発器7に流入したアンモニアは、蒸発器7で蒸発した後、第1反応器11に流入し、第1反応器11において冷媒により冷却され、第1反応物に吸収される。
このように、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第2状態とすることで、第2反応器12から放出されたアンモニアは、凝縮器4、貯留部5、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第1反応器11で吸収される。
なお、本実施形態の冷却蓄熱モードでは、蒸発器7の冷却負荷およびケミカルヒートポンプサイクル102の性能から自動的に蓄熱が行われる。このため、蓄熱のための特別な制御が不要となる。
ところで、図7は、本第1実施形態における第1、第2反応物の脱アンモニア反応の平衡線、およびアンモニアの気液平衡線を示すグラフである。図7の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。なお、第1、第2反応物の脱アンモニアの反応の化学式は、次の化学式1に示される。
(化1)
A・mNH3(固体)+nNH3(気体)⇔A・(m+n)NH3(固体)
ここで、上記化学式1において、Aはアンモニアとアンミン錯体を形成する化合物を表し、mおよびnは自然数を表している。
図7において、実線は脱アンモニア反応における平衡線を表しており、破線はアンモニアの気液平衡線を表している。
以下、図7を参照しつつ、本第1実施形態における冷却蓄熱モードについてより詳細に説明する。
本実施形態のケミカルヒートポンプ装置では、まず、第1反応器11内の第1反応物質は温度THのエンジン冷却水で加熱されるため、温度THにおける第1反応物質の平衡圧力Pdよりも低い圧力においてアンモニアを放出する。そして、第1反応器11から放出されたアンモニアの圧力を、温度TMの冷媒で冷却された凝縮器4における飽和蒸気圧Pcよりも高くすることで、凝縮器4にてアンモニアを気体から液体へと相変化させることができる。そして、液化アンモニアが貯留部5に貯留される。
次に、液化アンモニアは貯留部5から電気式膨張弁6へ導かれ、電気式膨張弁6にて減圧膨張した後、蒸発器7へ導かれる。蒸発器7に流入したアンモニアは、圧力Peにて蒸発し、蒸発器7の温度はTLまで低下する。
ここで、第2反応器12内は温度TMの冷媒によって冷却されているため、第2反応器12内の第2反応物質(第1反応物と同一物質)は、温度TMにて冷却される。このため、第2反応器12においては、圧力Psよりも高い圧力Peの気体状態のアンモニアを吸収する。
次に、放熱モードの作動について図5を参照して説明する。エンジン101の排熱の熱量が不足している放熱モードでは、第1反応器11および第2反応器12から気体状態のアンモニアが放出されないが、蒸発器7の冷却負荷要求がある場合には、冷却蓄熱モード時に貯留部5に貯留された液化アンモニアを蒸発器7へ導くことで、送風空気の冷却を行う。
以下、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態となっている状態で放熱モードに移行した場合について説明する。
放熱モードにおいて冷却負荷要求があれば、冷却負荷に応じて電気式膨張弁6の絞り通路面積が調整されるので、蒸発器7の冷却負荷に応じた量のアンモニアが蒸発器7へ流出される。具体的には、蒸発器7の冷却負荷が大きい程、蒸発器7へ流出されるアンモニア量が多くなる。
蒸発器7に流入したアンモニアは、冷却対象物である送風空気と熱交換して蒸発し、その際に冷却対象物である送風空気は冷却される。蒸発器7で蒸発したアンモニアは、第2反応器12に流入し、第2反応器12において冷媒により冷却されて吸収される。
このように、放熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態とすることで、貯留部5から導入されたアンモニアは、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第2反応器12で吸収される。
そして、冷媒が流れている第2反応器12の第2熱交換器120の入口側と出口側の温度差(冷媒流通熱交換器温度差ΔTM)が基準温度差ΔTcを下回ると、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態となる。このため、第1反応器11内が冷媒により冷却されるので、貯留部5から電気式膨張弁6を介して蒸発器7に流入したアンモニアは、蒸発器7で蒸発した後、第1反応器11に流入し、第1反応器11において冷媒により冷却されて吸収される。
このように、放熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第2状態とすることで、貯留部5から導入されたされたアンモニアは、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第1反応器11で吸収される。
以上説明したように、本実施形態の冷却蓄熱モードでは、貯留部5に液化アンモニアを貯留することによりエンジン101の排熱が蓄熱される。このため、水顕熱よりも蓄熱密度の高い液化アンモニアを蓄熱材として用いることができる。したがって、ケミカルヒートポンプ装置全体の小型化を図りつつ、時間の経過とともに蓄熱量が低下することを抑制できる。
また、電気式膨張弁6を、蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち蒸発器7へ流出させるアンモニアの流量を増加させるように構成することで、蒸発器7の冷却負荷に応じて蒸発器7に流入するアンモニアの量を調整することができる。このため、送風空気の目標冷却温度である車室内目標温度Taが変化しても、常に必要な量だけ送風空気を適切に冷却することができる。
ところで、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態とされている、すなわち第1熱交換器110にエンジン冷却水(エンジン101の排熱)が供給されている場合、第1反応器11では、時間経過とともに、脱アンモニア反応の反応率が低くなり、脱アンモニア反応が効率的に行われなくなる。
これに対し、本実施形態では、冷却蓄熱モードにおいて、第1熱交換器110における入口側温度と出口側温度との差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第2状態に切り替えている。これによれば、第1反応器11において、脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第2熱交換器120にエンジン冷却水が供給されるようにし、第2反応器12において脱アンモニア反応を生じさせることができる。
同様に、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態とされている、すなわち第2熱交換器120にエンジン冷却水が供給されている場合においても、第2熱交換器120における入口側温度と出口側温度との差ΔT2が基準温度差ΔTc下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第1状態に切り替えている。これによれば、第2反応器12において、脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第1熱交換器110にエンジン冷却水が供給されるようにし、第1反応器11において脱アンモニア反応を生じさせることができる。このように、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態と第2状態とに交互に繰り返し切り替えることにより、冷却蓄熱モードを連続的に作動させることができる。
ところで、放熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態とされている、すなわち第2熱交換器120に冷媒(外気の有する熱)が供給されている場合、第2反応器12では、時間経過とともに、吸アンモニア反応の反応率が低くなり、吸アンモニア反応が効率的に行われなくなる。
これに対し、本実施形態では、放熱モードにおいて、第2熱交換器110における入口側温度と出口側温度との差ΔTMが基準温度差ΔTcを下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第2状態に切り替えている。これによれば、第2反応器12において、吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第1熱交換器110に冷媒が供給されるようにし、第1反応器11において吸アンモニア反応を生じさせることができる。
同様に、放熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態とされている、すなわち第1熱交換器110に冷媒が供給されている場合においても、第1熱交換器110における入口側温度と出口側温度との差ΔTMが基準温度差ΔTcを下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第1状態に切り替えている。これによれば、第1反応器11において、吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第2熱交換器120に冷媒が供給されるようにし、第2反応器12において吸アンモニア反応を生じさせることができる。このように、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態と第2状態とに交互に繰り返し切り替えることにより、放熱モードを連続的に作動させることができる。
ところで、エンジン101の排熱を蓄熱するためには、液化したアンモニアを第1反応器11および第2反応器12と空間的に分離しておくことが望ましい。
そこで、本実施形態では、凝縮器4および貯留部5の内容積の合計を、ケミカルヒートポンプサイクル102内に存在するアンモニアの全てが凝縮器4において冷媒により冷却されて凝縮した際の当該液化アンモニアの体積以上となるように設定している。これによれば、エンジン101の排熱を蓄熱する際、液化したアンモニアの全てを貯留部5および凝縮器4内に貯留することができるので、蓄熱時に液化したアンモニアを第1反応器11および第2反応器12と空間的に分離することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8および図9に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、冷却蓄熱モードおよび放熱モードにおける第1〜第6電気式三方弁31〜36の第1状態と第2状態の切り替えを、経過時間τに基づいて行う点が異なるものである。
図8は本第2実施形態における制御装置20が実行する冷却蓄熱制御を示すフローチャートであり、第1実施形態におけるステップ106が変更されているとともに、ステップ101Aおよびステップ107Aが追加されている。
車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態になると、制御装置20は図8に示す処理を開始する。まず、ステップ101Aで、時間経過を計測するタイマをゼロに初期化し、ステップ101以下の処理を行う。
また、ステップ104またはステップ105の後、ステップ106Aでは、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが予め定めた基準時間Δτc以上になっているか否かを判定する。
ステップ106Aにて経過時間τが基準時間Δτcを下回っていると判定された場合は、エンジン冷却水が流通する熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、脱アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、ステップ102に戻る。
一方、ステップ106Aにて経過時間τが基準時間Δτc以上になったと判定された場合は、エンジン冷却水が流通する熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が低くなっており、脱アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち脱アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ107へ進む。
また、ステップ107の後、ステップ107Aでタイマをゼロにリセットし、ステップ102に戻る。
図9は、本第2実施形態における制御装置20が実行する放熱制御を示すフローチャートであり、第1実施形態におけるステップ203が変更されているとともに、ステップ204Aが追加されている。図8のステップ102にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合に、図9に示す放熱制御が開始される。
ステップ202の後、ステップ203Aでは、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが予め定めた基準時間Δτc以上になっているか否かを判定する。
ステップ203Aにて経過時間τが基準時間Δτcを下回っていると判定された場合は、冷媒が流通する熱交換器が収容されている反応器において、吸アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、吸アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、そのまま後述するステップ205へ進む。
一方、ステップ203Aにて経過時間τが基準時間Δτc以上になったと判定された場合は、冷媒が流通する熱交換器が収容されている反応器において、吸アンモニア反応の反応率が低くなっており、吸アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち吸アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ204へ進む。
また、ステップ204の後、ステップ204Aでタイマをゼロにリセットし、ステップ205へ進む。
本実施形態では、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが基準時間Δτc以上になった場合に、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、現在の状態と異なる状態に切り替えている。これにより、第1反応器11において脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第2反応器12において脱アンモニア反応を生じさせることができる。逆に、第2反応器12において脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合には、第1反応器11において脱アンモニア反応を生じさせることができる。これにより、冷却蓄熱モードを連続的に作動させることができる。
同様に、放熱モードにおいても、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが基準時間Δτc以上になった場合に、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、現在の状態と異なる状態に切り替えている。これにより、第2反応器12において吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第1反応器11において吸アンモニア反応を生じさせることができる。逆に、第1反応器11において吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合には、第2反応器12において吸アンモニア反応を生じさせることができる。これにより、放熱モードを連続的に作動させることができる。したがって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図10〜図16に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、反応器を3つ設けた点が異なるものである。
図10は、本第3実施形態における冷却蓄熱モードのケミカルヒートポンプ装置を示す全体構成図である。図10に示すように、本実施形態のケミカルヒートポンプ装置は、冷却対象物を冷却するとともに高温外部熱を蓄熱する冷却蓄熱モードと、冷却蓄熱モードで蓄熱された高温外部熱を放熱する放熱モードと、蓄熱のみを行うことにより冷却蓄熱モードよりも高密度な蓄熱を行う高密度蓄熱モードとを切り替え可能に構成されている。
本実施形態のケミカルヒートポンプサイクル102は、加熱されることによりアンモニアを放出するとともに、冷却されることによりアンモニアを吸収する第3反応物が収容された第3反応器13を備えている。この第3反応器13は、第1反応器11および第2反応器12より内容積が大きくなっている。また、第3反応器13には、第3反応器13内を高温外部熱により加熱、または高温外部熱より温度の低い低温外部熱により冷却する第3熱交換器130が収容されている。
ここで、本実施形態において、高温外部熱はエンジン101の排熱であり、低温外部熱は外気が有する熱(冷熱)である。また、第3反応物としては、第1反応物および第2反応物と同じ物質を用いており、例えば金属ハロゲン化物のアンミン錯体である臭化ストロンチウムのアンミン錯体を用いることができる。
冷却水回路103を流れる冷却水が第3熱交換器130に供給されることにより、エンジン101の排熱が第3熱交換器130に供給されるようになっている。また、冷媒回路105を流れる冷媒が第3熱交換器130に供給されることにより、外気の有する熱が第3熱交換器130に供給されるようになっている。
第3熱交換器130の入口側には、第7電気式三方弁37の出口側が接続されている。この第7電気式三方弁37は、制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。具体的には、第7電気式三方弁37は、冷却水回路103におけるエンジン101出口側と第3熱交換器130との間を接続する流路(図10の実線矢印で示す回路)と、冷媒回路105における外気熱交換器104出口側と第3熱交換器130との間を接続する流路(図10の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第3熱交換器130の出口側には、第8電気式三方弁38の入口側が接続されている。この第8電気式三方弁38は、制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。具体的には、第8電気式三方弁38は、第3熱交換器130と冷却水回路103におけるエンジン101入口側との間を接続する流路(図10の実線矢印で示す回路)と、第3熱交換器130と冷媒回路105における外気熱交換器104入口側の間を接続する流路(図10の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
第7、第8電気式三方弁37、38を共に冷却水回路103側に切り替えることで、第3熱交換器130にエンジン冷却水、すなわちエンジン101の排熱が供給される。一方、第7、第8電気式三方弁37、38を共に冷媒回路105側に切り替えることで、第3熱交換器130に冷媒、すなわち外気の熱が供給される。したがって、第7、第8電気式三方弁37、38が、本発明の第3供給切替手段に相当している。
第3反応器13には、第9電気式三方弁39のアンモニア出入口側が接続されている。この第9電気式三方弁39は、制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替手段である。具体的には、第9電気式三方弁39は、第3反応器13と凝縮器4との間を接続するアンモニア流路と、第3反応器13と蒸発器7または第2電気式三方弁32との間を接続するアンモニア流路とを切り替える。
より詳細には、第3反応器13には、第3反応器13から放出されたアンモニア、または第3反応器13に流入するアンモニアが通過する第1通路131の一端が接続されている。第1通路131の他端は、第9電気式三方弁39に接続されている。
第9電気式三方弁39には、第3反応器13から放出されたアンモニアを凝縮器4へ導く第2通路132の一端が接続されている。第2通路132の他端は、第1電気式三方弁31のアンモニア出口側と凝縮器4のアンモニア入口側との間に接続されている。
また、第9電気式三方弁39には、蒸発器7で蒸発したアンモニア、または第3反応器13から放出されたアンモニアが流通する第3通路133の一端が接続されている。第3通路133の他端は、蒸発器7のアンモニア出口側と第2電気式三方弁32のアンモニア入口側との間に接続されている。
図11に本第3実施形態における制御装置20が実行する冷却蓄熱制御のフローチャートを示し、図12に本第3実施形態における制御装置20が実行する放熱制御のフローチャートを示し、図13に本第3実施形態における制御装置20が実行する高密度蓄熱モードの制御(以下、高密度蓄熱制御という)のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態になると、制御装置20は図11に示す処理を開始する。
まず、ステップ301で、上記第1実施形態のステップ101と同様、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態とするための制御信号を出力する。
次に、ステップ302で、第7、第8電気式三方弁37、38に対して、冷媒回路105側を閉じて冷却水回路103側を開くように制御信号を出力する。さらに、第9電気式三方弁39に対して、第3通路133側を閉じて第2通路132側を開くように制御信号を出力する。
次に、ステップ303で、冷却水温度センサ21により検出された冷却水温度THが、予め定めた基準冷却水温度TH0以上か否かを判定する。ステップ303にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が不足しており、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができないと判断し、放熱制御に移行する。この放熱制御の詳細については後述する。
一方、ステップ303にて冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上になっていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が十分にあり、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができると判断し、ステップ304へ進む。
ステップ304では、冷却負荷要求があるか否かを判定する。冷却負荷要求があるか否かは、冷房スイッチ281がオン状態かオフ状態かに基づいて判定することができる。すなわち、冷房スイッチ281がオン状態であれば冷却負荷要求があると判定し、冷房スイッチ281がオフ状態であれば冷却負荷要求がないと判定することができる。
ステップ304にて冷却負荷要求がないと判定された場合は、蒸発器7にアンモニアを供給する必要がないと判断し、高密度蓄熱制御へ移行する。この高密度蓄熱制御の詳細については後述する。
一方、ステップ304にて冷却負荷要求があると判定された場合は、ステップ305にて、蒸発器7の冷却負荷に基づいて電気式膨張弁6の絞り通路面積(開度)を調整する。具体的には、蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち蒸発器7に流入させるアンモニアの流量を増加させる。本実施形態では、車室内目標温度Taから蒸発器温度TLを引いた値が増大する程、電気式膨張弁6の絞り通路面積を増大させる。
次のステップ306では、上記第1実施形態のステップ106と同様、第1熱交換器110および第2熱交換器120のうち冷却水回路103と接続されている、すなわち冷却水が流通している熱交換器において、その入口側温度と出口側温度との差が、予め定めた基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。具体的には、第1熱交換器110に冷却水が流通している場合は、第1入口温度T1inから第1出口温度T1outを引いた値である第1熱交換器温度差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。一方、第2熱交換器120に冷却水が流通している場合は、第2入口温度T2inから第2出口温度T2outを引いた値である第2熱交換器温度差ΔT2が、予め定めた基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。
ステップ306にて第1熱交換器温度差ΔT1もしくは第2熱交換器温度差ΔT2が基準温度差ΔTc以上になっていると判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、脱アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、ステップ303に戻る。
一方、ステップ306にて第1熱交換器温度差ΔT1もしくは第2熱交換器温度差ΔT2が基準温度差ΔTcを下回っていると判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が低くなっており、脱アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち脱アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ307へ進む。
ステップ307では、上記第1実施形態のステップ107と同様、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態および第2状態のうち、現在の状態と異なる状態(もう一方の状態)とするための制御信号を出力し、ステップ303に戻る。
次に、第3実施形態における制御装置20が実行する放熱制御について、図12および図14を参照して説明する。図14は第3実施形態における放熱モードのケミカルヒートポンプ装置を示す全体構成図である。図11のステップ303にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合に、放熱制御が開始される。
まず、ステップ401で、冷却負荷要求があるか否かを判定する。冷却負荷要求があるか否かは、ステップ304と同様、冷房スイッチ281がオン状態かオフ状態かに基づいて判定することができる。ステップ401にて冷却負荷要求がないと判定された場合は、後述するステップ404へ進む。
一方、ステップ401にて冷却負荷要求があると判定された場合は、ステップ402で、第7、第8電気式三方弁37、38に対して、冷却水回路103側を閉じて冷媒回路105側を開くように制御信号を出力する。さらに、第9電気式三方弁39に対して、第2通路132側を閉じて第3通路133側を開くように制御信号を出力する。
続いて、ステップ403で、蒸発器7の冷却負荷に基づいて電気式膨張弁6の絞り通路面積(開度)を調整する。具体的には、ステップ305と同様、蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち蒸発器7に流入させるアンモニアの流量を増加させる。
続いて、ステップ404で、冷却水温度センサ21により検出された冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上か否かを判定する。ステップ404にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が未だ不足しており、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができないと判断し、ステップ401に戻る。
一方、ステップ404にて冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上になっていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が増大し、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができるようになったと判断し、上述した冷却蓄熱制御へ移行する。
次に、第3実施形態における制御装置20が実行する高密度蓄熱制御について、図13および図15を参照して説明する。図15は第3実施形態における高密度蓄熱モードのケミカルヒートポンプ装置を示す全体構成図である。図11のステップ304にて、蒸発器7の冷却負荷要求がないと判定された場合に、高密度蓄熱制御が開始される。
まず、ステップ501で、電気式膨張弁6を全閉状態とする、すなわち電気式膨張弁6の絞り通路面積をゼロとし、蒸発器7へアンモニアが流出しないようにする。さらに、第7、第8電気式三方弁37、38に対して、冷媒回路105側を閉じて冷却水回路103側を開くように制御信号を出力する。さらに、第9電気式三方弁39に対して、第2通路132側を閉じて第3通路133側を開くように制御信号を出力する。
次のステップ502では、ステップ306と同様、第1熱交換器110および第2熱交換器120のうち冷却水回路103と接続されている、すなわち冷却水が流通している熱交換器において、その入口側温度と出口側温度との差が、予め定めた基準温度差ΔTcを下回っているか否かを判定する。
ステップ502にて第1熱交換器温度差ΔT1もしくは第2熱交換器温度差ΔT2が基準温度差ΔTc以上と判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、脱アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、そのまま後述するステップ504へ進む。
一方、ステップ502にて第1熱交換器温度差ΔT1もしくは第2熱交換器温度差ΔT2が基準温度差ΔTcを下回ったと判定された場合は、当該熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が低くなっており、脱アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち脱アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ503へ進む。
ステップ503では、ステップ307と同様、第1〜第6電気式三方弁31〜36に対して、第1状態および第2状態のうち、現在の状態と異なる状態(もう一方の状態)とするための制御信号を出力し、ステップ504へ進む。
ステップ504では、冷却水温度センサ21により検出された冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上か否かを判定する。ステップ504にて、冷却水温度THが基準冷却水温度TH0を下回っていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が不足し、当該エンジン101の排熱を利用して送風空気を十分に冷却することができないと判断し、上述した放熱制御へ移行する。
一方、ステップ504にて冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上になっていると判定された場合は、エンジン101の排熱の熱量が十分にあると判断し、ステップ505で、蒸発器7の冷却負荷要求があるか否かを判定する。冷却負荷要求があるか否かは、ステップ304と同様、冷房スイッチ281がオン状態かオフ状態かに基づいて判定することができる。
ステップ505にて冷却負荷要求がないと判定された場合は、蒸発器7にアンモニアを供給する必要がなく、高密度蓄熱制御を継続できると判断し、ステップ502に戻る。
一方、ステップ505にて冷却負荷要求があると判定された場合は、蒸発器7にアンモニアを供給する必要があり、高密度蓄熱制御を継続できないと判断し、上述した冷却蓄熱制御へ移行する。
次に、上述の構成において本実施形態の作動について説明する。まず、冷却蓄熱モードの作動について図10を参照して説明する。
冷却蓄熱モードでは、まず、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態となる。すなわち、第1電気式三方弁31が第1反応器11側を開いた状態となり、第2電気式三方弁32が第2反応器12側を開いた状態となり、第3、第4電気式三方弁33、34が冷却水回路103側を開いた状態となり、第5、第6電気式三方弁35、36が冷媒回路105側を開いた状態となる。
このため、第1反応器11において、第1反応物がエンジン冷却水を介してエンジン101の排熱により加熱され、第1反応器11から気体状態のアンモニアが放出される。この気体状態のアンモニアが凝縮器4に流入し、冷媒と熱交換して凝縮される。凝縮器4で凝縮したアンモニアは、貯留部5に流入し、貯留される。
さらに、第7、第8電気式三方弁37、38が冷却水回路103側を開いた状態となり、第9電気式三方弁39が第2通路132側を開いた状態となる。
このため、第3反応器13において、第3反応物がエンジン冷却水を介してエンジン101の排熱により加熱され、第3反応器13から気体状態のアンモニアが放出される。この気体状態のアンモニアが第2通路132を介して凝縮器4に流入し、冷媒と熱交換して凝縮される。凝縮器4で凝縮したアンモニアは、貯留部5に流入し、貯留される。
そして、冷却負荷に応じて電気式膨張弁6の絞り通路面積が調整されるので、蒸発器7の冷却負荷に応じた量のアンモニアが貯留部5から蒸発器7へ流出される。具体的には、蒸発器7の冷却負荷が大きい程、蒸発器7へ流出されるアンモニア量が多くなる。
蒸発器7に流入したアンモニアは、冷却対象物と熱交換して蒸発し、その際に送風空気は冷却される。蒸発器7で蒸発したアンモニアは、第2反応器12に流入し、第2反応器12において冷媒により冷却され、第2反応物に吸収される。
このように、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態とするとともに、第7、第8電気式三方弁37、38を冷却水回路103側が開いた状態とし、さらに第9電気式三方弁39を第2通路132側が開いた状態とすることで、第1反応器11および第3反応器13から放出されたアンモニアは、凝縮器4、貯留部5、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第2反応器12で吸収される。すなわち、冷却蓄熱モードでは、貯留部5に液化アンモニアを貯留することによりエンジン101の排熱の蓄熱を行うとともに、アンモニアを蒸発器7で送風空気と熱交換させることにより送風空気の冷却を行うことができる。
そして、第1熱交換器温度差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回ると、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態となる。すなわち、第1電気式三方弁31が第2反応器12側を開いた状態となり、第2電気式三方弁32が第1反応器11側を開いた状態となり、第3、第4電気式三方弁33、34が冷媒回路105側を開いた状態となり、第5、第6電気式三方弁35、36が冷却水回路103側を開いた状態となる。
このため、第2反応器12において、第2反応物がエンジン101の排熱により加熱されるので、第2反応器12から、第1状態の際に吸収したアンモニアが放出される。このアンモニアは、第1状態と同様、凝縮器4で冷媒と熱交換して凝縮された後、貯留部5で貯留される。そして、貯留部5から電気式膨張弁6を介して蒸発器7に流入したアンモニアは、蒸発器7で蒸発した後、第1反応器11に流入し、第1反応器11において冷媒により冷却され、第1反応物に吸収される。
このように、冷却蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第2状態とするとともに、第7、第8電気式三方弁37、38を冷却水回路103側が開いた状態とし、さらに第9電気式三方弁39を第2通路132側が開いた状態とすることで、第2反応器12および第3反応器13から放出されたアンモニアは、凝縮器4、貯留部5、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第1反応器11で吸収される。
次に、放熱モードの作動について図14を参照して説明する。エンジン101の排熱の熱量が不足している放熱モードでは、第1〜第3反応器11〜13から気体状態のアンモニアが放出されないが、蒸発器7の冷却負荷要求がある場合には、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードにおいて貯留部5に貯留された液化アンモニアを蒸発器7へ導くことで、送風空気の冷却を行う。
以下、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態となっている状態で放熱モードに移行した場合について説明する。
放熱モードにおいて冷却負荷要求があれば、冷却負荷に応じて電気式膨張弁6の絞り通路面積が調整されるので、蒸発器7の冷却負荷に応じた量のアンモニアが貯留部5から蒸発器7へ流出される。具体的には、蒸発器7の冷却負荷が大きい程、蒸発器7へ流出されるアンモニア量が多くなる。
蒸発器7に流入したアンモニアは、送風空気と熱交換して蒸発し、その際に送風空気は冷却される。蒸発器7で蒸発したアンモニアは、第2反応器12および第3反応器13に流入し、第2反応器12および第3反応器13において冷媒により冷却されて吸収される。
このように、放熱モードにおいて、貯留部5から導入されたアンモニアは、電気式膨張弁6および蒸発器7を介して第2反応器12および第3反応器13で吸収される。
次に、高密度蓄熱モードの作動について図15を参照して説明する。高密度蓄熱モードには、冷却負荷要求がなく、さらに冷却水温度THが基準冷却水温度TH0以上になっている、すなわちエンジン101の排熱の熱量が余剰している場合に移行される。
以下、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第1状態となっている状態で高密度蓄熱モードに移行した場合について説明する。
高密蓄熱モードでは、まず、電気式膨張弁6が全閉状態となり、第7、第8電気式三方弁37、38が冷却水回路103側を開いた状態となり、第9電気式三方弁39が第3通路133側を開いた状態となる。
このため、第3反応器13において、第3反応物がエンジン冷却水を介してエンジン101の排熱により加熱され、第3反応器13から気体状態のアンモニアが放出される。この気体状態のアンモニアが第3通路133および第2電気式三方弁32を介して第2反応器12に流入する。第2反応器12に流入したアンモニアは、冷媒により冷却され、第2反応物に吸収される。
このように、高密度蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態とするとともに、電気式膨張弁6を全閉状態とし、さらに第7、第8電気式三方弁37、38を冷却水回路103側が開いた状態とし、第9電気式三方弁39を第3通路133側が開いた状態とすることで、第3反応器13から放出されたアンモニアは、第3通路133を介して第2反応器12で吸収される。この際、エンジン101の排熱が蓄熱される。
そして、第1熱交換器温度差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回ると、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態となる。すなわち、第1電気式三方弁31が第2反応器12側を開いた状態となり、第2電気式三方弁32が第1反応器11側を開いた状態となり、第3、第4電気式三方弁33、34が冷媒回路105側を開いた状態となり、第5、第6電気式三方弁35、36が冷却水回路103側を開いた状態となる。
このため、第3反応器13から放出された気体状態のアンモニアが第3通路133および第2電気式三方弁32を介して第1反応器11に流入する。第1反応器11に流入したアンモニアは、冷媒により冷却され、第1反応物に吸収される。
このように、高密度蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第2状態とするとともに、電気式膨張弁6を全閉状態とし、さらに第7、第8電気式三方弁37、38を冷却水回路103側が開いた状態とし、第9電気式三方弁39を第3通路133側が開いた状態とすることで、第3反応器13から放出されたアンモニアは、第3通路133を介して第1反応器11で吸収される。この際、エンジン101の排熱が蓄熱される。
ところで、アンモニアと溶媒和しアンミン錯体を形成する物質は、一般的にアンモニアの溶媒和数によって平衡線が複数存在する。高密度蓄熱モードでは、この性質を利用することで高密度な蓄熱が可能となる。
図16は、本第3実施形態における第1〜第3反応物の脱アンモニア反応の平衡線、およびアンモニアの気液平衡線を示すグラフである。図16の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。なお、第1〜第3反応物の脱アンモニア反応の化学式は、次の化学式2、3に示される。
(化2)
A・mNH3(固体)+nNH3(気体)⇔A・(m+n)NH3(固体)
(化3)
A(固体)+mNH3(気体)⇔A・mNH3(固体)
ここで、上記化学式2、3において、Aはアンモニアとアンミン錯体を形成する化合物(本実施形態では臭化ストロンチウム)を表し、mおよびnは自然数を表している。
図16において、実線は上記化学式2に示す反応における平衡線を表しており、一点鎖線は上記化学式3に示す反応における平衡線を表しており、破線はアンモニアの気液平衡線を表している。
以下、図16を参照しつつ、本第3実施形態における高密度蓄熱モードについてより詳細に説明する。
エンジン101の排熱の熱量が余剰にあり、かつ、蒸発器7の冷却負荷要求がない場合には、第1反応器11内の第1反応物は温度THのエンジン冷却水により加熱され、図16の実線で示す上記化学式2の平衡線において圧力Pdにてアンモニアを放出させる。第1反応器11から放出したアンモニアは、凝縮器4で温度TMの冷媒によって冷却され、図16の破線で示すアンモニアの気液平衡線において圧力Pcで液化する。液化したアンモニアは貯留部5へ導かれる。ここで、高密度蓄熱モードでは、電気式膨張弁6は全閉状態であるため、蒸発器7側へとアンモニアは流れない。
一方、第2反応器12内は温度TMの冷媒により冷却される。ここで、第9電気式三方弁39を切り替えることにより、第2反応器11は第3反応器13と接続される。このとき、第3反応器13内の第3反応物は温度THのエンジン冷却水により加熱される。
すると、第2反応器12の第2反応物は図16の実線で示す上記化学式2の平衡線において圧力Psより高い圧力においてアンモニアを吸収することができ、第3反応器13内の第3反応物は図16の一点鎖線で示す上記化学式3の平衡線において圧力Pd’より低い圧力においてアンモニアを放出することができる。このため、冷却蓄熱モードでは、上記化学式2(図16中の実線)の反応までしかアンモニアを放出できないのに対し、高密度蓄熱モードでは、上記化学式3(図16中の一点鎖線)の反応までアンモニアを放出させることができる。これにより、蓄熱密度を増大させることができる。
以上説明したように、本実施形態の冷却蓄熱モードでは、貯留部5に液化アンモニアを貯留することによりエンジン101の排熱が蓄熱される。このため、水顕熱よりも蓄熱密度の高い液化アンモニアを蓄熱材として用いることができる。したがって、ケミカルヒートポンプ装置全体の小型化を図りつつ、時間の経過とともに蓄熱量が低下することを抑制できる。
また、電気式膨張弁6を、蒸発器7の冷却負荷の増大に応じて、絞り通路面積を増大させる、すなわち蒸発器7へ流出させるアンモニアの流量を増加させるように構成することで、蒸発器7の冷却負荷に応じて蒸発器7に流入するアンモニアの量を調整することができる。このため、送風空気の目標冷却温度である車室内目標温度Taが変化しても、常に必要な量だけ送風空気を適切に冷却することができる。
また、高密度蓄熱モードにおいては、第3反応器13から放出された気体状態のアンモニアを第1反応器11または第2反応器12内で吸収することにより、エンジン101の排熱を蓄熱することができる。この高密度蓄熱モードでは、上述したように、アンモニアと溶媒和しアンミン錯体を形成する物質が、一般的に、アンモニアの溶媒和数によって平衡線を複数有していることを利用している。このため、高密度蓄熱モードにおける蓄熱密度は、第3反応器13から放出された気体状態のアンモニアを凝縮器4で凝縮させて貯留部5に貯留する場合と比較して高くなる。すなわち、冷却蓄熱モードよりも高密度でエンジン101の排熱を蓄熱することができる。
また、本実施形態では、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードにおいて、第1熱交換器110における入口側温度と出口側温度との差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第2状態に切り替えている。これによれば、第1反応器11において、脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第2熱交換器120にエンジン冷却水が供給されるようにし、第2反応器12において脱アンモニア反応を生じさせることができる。
同様に、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態とされている、すなわち第2熱交換器120にエンジン冷却水が供給されている場合においても、第2熱交換器120における入口側温度と出口側温度との差ΔT2が基準温度差ΔTc下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第1状態に切り替えている。これによれば、第2反応器12において、脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第1熱交換器110にエンジン冷却水が供給されるようにし、第1反応器11において脱アンモニア反応を生じさせることができる。このように、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態と第2状態を交互に繰り返し切り替えることにより、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードを連続的に作動させることができる。
また、本実施形態では、放熱モードにおいて、第2熱交換器110における入口側温度と出口側温度との差ΔT2が基準温度差ΔTcを下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第2状態に切り替えている。これによれば、第2反応器12において、吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第1熱交換器110に冷媒が供給されるようにし、第1反応器11において吸アンモニア反応を生じさせることができる。
同様に、放熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36が第2状態とされている、すなわち第1熱交換器110に冷媒が供給されている場合においても、第1熱交換器110における入口側温度と出口側温度との差ΔT1が基準温度差ΔTcを下回った場合には、第1〜第6電気式三方弁31〜36を現在の状態と異なる状態である第1状態に切り替えている。これによれば、第1反応器11において、吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第2熱交換器120に冷媒が供給されるようにし、第2反応器12において吸アンモニア反応を生じさせることができる。このように、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態と第2状態を交互に繰り返し切り替えることにより、放熱モードを連続的に作動させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図17および図18に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第3実施形態と比較して、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードにおける第1〜第6電気式三方弁31〜36の第1状態と第2状態の切り替えを、経過時間τに基づいて行う点が異なるものである。
図17は本第4実施形態における制御装置20が実行する冷却蓄熱制御を示すフローチャートであり、第3実施形態におけるステップ306が変更されているとともに、ステップ301Aおよびステップ307Aが追加されている。
車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態になると、制御装置20は図17に示す処理を開始する。まず、ステップ301Aで、時間経過を計測するタイマをゼロに初期化し、ステップ301以下の処理を行う。
また、ステップ305の後、ステップ306Aでは、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが予め定めた基準時間Δτc以上になっているか否かを判定する。
ステップ306Aにて経過時間τが基準時間Δτcを下回っていると判定された場合は、エンジン冷却水が流通する熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、脱アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、ステップ303に戻る。
一方、ステップ306Aにて経過時間τが基準時間Δτc以上になったと判定された場合は、エンジン冷却水が流通する熱交換器が収容されている反応器において、脱アンモニア反応の反応率が低くなっており、脱アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち脱アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ307へ進む。
また、ステップ307の後、ステップ307Aでタイマをゼロにリセットし、ステップ303に戻る。
図18は、本第4実施形態における制御装置20が実行する高密度蓄熱制御を示すフローチャートであり、第3実施形態におけるステップ502が変更されているとともに、ステップ503Aが追加されている。図17のステップ304にて、冷却負荷要求がないと判定された場合に、図18に示す放熱制御が開始される。
ステップ501の後、ステップ502Aでは、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが予め定めた基準時間Δτc以上になっているか否かを判定する。
ステップ502Aにて経過時間τが基準時間Δτcを下回っていると判定された場合は、冷媒が流通する熱交換器が収容されている反応器において、吸アンモニア反応の反応率が高い状態で維持されており、吸アンモニア反応が効率的に行われていると判断し、そのままステップ504へ進む。
一方、ステップ502Aにて経過時間τが基準時間Δτc以上になったと判定された場合は、冷媒が流通する熱交換器が収容されている反応器において、吸アンモニア反応の反応率が低くなっており、吸アンモニア反応が効率的に行われていない、すなわち吸アンモニア反応を継続させることができないと判断し、ステップ503へ進む。
また、ステップ503の後、ステップ503Aでタイマをゼロにリセットし、ステップ504へ進む。
本実施形態では、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードにおいて、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが基準時間Δτc以上になった場合に、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、現在の状態と異なる状態に切り替えている。これにより、第1反応器11において脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第2反応器12において脱アンモニア反応を生じさせることができる。逆に、第2反応器12において脱アンモニア反応の反応率が低くなった場合には、第1反応器11において脱アンモニア反応を生じさせることができる。これにより、冷却蓄熱モードおよび高密度蓄熱モードを連続的に作動させることができる。
同様に、放熱モードにおいても、第1〜第6電気式三方弁31〜36を第1状態および第2状態のうち現在の状態に切り替えた際からの経過時間τが基準時間Δτc以上になった場合に、第1〜第6電気式三方弁31〜36を、現在の状態と異なる状態に切り替えている。これにより、第2反応器12において吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合に、第1反応器11において吸アンモニア反応を生じさせることができる。逆に、第1反応器11において吸アンモニア反応の反応率が低くなった場合には、第2反応器12において吸アンモニア反応を生じさせることができる。これにより、放熱モードを連続的に作動させることができる。したがって、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図19に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第3実施形態と比較して、凝縮器および貯留部が2つずつ設けられている点が異なるものである。
図19は、本第5実施形態に係る冷却蓄熱モードのケミカルヒートポンプ装置を示す全体構成図である。図19に示すように、第1凝縮器4aおよび第1貯留部5aは、上記第3実施形態の凝縮器4および貯留部5と同様に構成されている。
本実施形態の第2通路132の他端は、第2凝縮器4bに接続されている。これにより、第3反応器13から放出されたアンモニアは、第1通路131、第9電気式三方弁39および第2通路132を介して第2凝縮器4へ導かれる。第2凝縮器4bは、第3反応器13から放出された気体状態のアンモニアと冷媒との熱交換によって、アンモニアを放熱させて凝縮させる熱交換器である。
第2凝縮器4bのアンモニア出口側には、第2貯留部5bのアンモニア入口側が接続されている。第2貯留部5bは、第2凝縮器4bで凝縮したアンモニアを貯留するための容器である。
第2貯留部5bのアンモニア出口側には、第4通路134の一端が接続されている。第4通路134の他端には、電気式膨張弁6のアンモニア入口側が接続されている。第4通路134には、第4通路134を開閉する開閉弁310が設けられている。開閉弁310は、制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。例えば、冷却蓄熱モードおよび放熱モードにおいては開閉弁310が全開され、高密度蓄熱モードにおいては開閉弁310が全閉されるようにしてもよい。本実施形態によれば、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、凝縮器4と貯留部5とを別体として構成するとともに、電気式膨張弁6と蒸発器7とを別体として構成した例について説明したが、これに限らず、図20に示すように、凝縮器4と貯留部5とを一体に構成するとともに、電気式膨張弁6と蒸発器7とを一体に構成してもよい。
これによれば、ケミカルヒートポンプ装置の構成を簡素化できる。さらに、電気式膨張弁6と蒸発器7とを一体に構成することで、電気式膨張弁6と蒸発器7との間を流れるアンモニアの圧力損失を低減できる。
(2)上述の各実施形態では、外気と冷媒との間で熱交換を行うことにより冷媒を冷却する外気熱交換器104を設け、凝縮器4および各反応器11〜13において冷媒が吸熱した熱を外気に放出した例について説明したが、これに限らず、加熱対象物と冷媒との間で熱交換を行う加熱用熱交換器を設け、凝縮器4および各反応器11〜13において冷媒が吸熱した熱を加熱対象物を加熱するために利用してもよい。
(3)上述の第1、第2各実施形態では、第1反応物および第2反応物として同一物質を用いた例について説明し、上述の第3〜第5実施形態では、第1反応物、第2反応物および第3反応物として同一物質を用いた例について説明したが、これらに限らず、反応物質として各々別の物質を用いてもよい。
(4)上述の各実施形態では、反応物として臭化ストロンチウムのアンミン錯体を用いた例について説明したが、これら限らず、塩化ストロンチウムのアンミン錯体等の金属ハロゲン化物のアンミン錯体等、加熱されることによりアンモニアを放出するとともに、冷却されることによりアンモニアを吸収する物質であれば他の物質を用いてもよい。
(5)上述の第3〜第5実施形態では、第3反応器13の内容積を、第1、第2反応器11、12の内容積より大きくした例について説明したが、これに限らず、第1、第2反応器11、12の内容積と同程度としてもよい。
(6)上述の各実施形態では、高温外部熱としてエンジン101の排熱を用いた例について説明したが、これに限らず、エンジン以外の機器の排熱や太陽熱等を用いてもよい。
(7)上述の各実施形態では、低温外部熱として外気の有する熱(冷熱)を用いた例について説明したが、これに限らず、高温外部熱より温度の低い他の熱源からの熱を用いてもよい。
(8)上述の各実施形態では、ケミカルヒートポンプ装置を車両に搭載するとともに、冷却対象物として車室内へ送風される送風空気を用いた例について説明したが、これに限らず、ケミカルヒートポンプ装置を定置型の空調装置等に搭載し、冷却対象物として建物の室内へ送風される送風空気を用いてもよい。