あるアナログ入力電圧Vinを標本化・量子化して最終的に数値に変換することを目的とするAD変換回路には様々なものが存在するが、そのうちの1つとして2重積分型AD変換回路(ADコンバータ)と言われるものがある(例えば、特許文献1参照)。2重積分型AD変換回路の一般的な回路構成例を図9(AD変換回路7)に示している。
AD変換回路7は、第1、第2の電流源I1、I2と、第1、第2、第3のスイッチSW1,SW2,SW3と、第1のアンプ1と、第1の容量C1と、第1のコンパレータ2と、制御回路3と、発振器4と、カウンター回路5と、レジスター6とから構成されている。
第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2は相補的なものであり、一方が導通状態であれば他方が非導通状態となる。第1のスイッチSW1が導通状態のときは第2のスイッチSW2が非導通状態であるため、第2の電流源I2に相当する電流が第1のアンプ1の出力から引かれる。また、第2のスイッチSW2が導通状態であるときは第1のスイッチSW1は非導通状態であるため、第1の電流源I1に相当する電流が第1のアンプ1の出力に吸い込まれる。
第1のアンプ1の非反転入力端子にはあるバイアス電圧Vbが与えられており、第1の容量C1によって第1のアンプ1の出力が反転入力端子に帰還されている。また第1のアンプ1の反転入力端子には第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2が接続されている。また第1のアンプ1は第1のコンパレータ2の非反転入力端子に出力している。第3のスイッチSW3は第1の容量C1の電荷を完全に放電する用途で使用する。
第1のコンパレータ2の反転入力端子にはあるバイアス電圧Vbが印加されており、かつ第1のコンパレータ2は制御回路3に論理信号を出力している。
発振器4は、ある発振周波数で発振した波形をカウンター回路5に提供し、カウンター回路5は発振器4の出力によって一定周期ごとにカウントアップされている。制御回路3は、第1・第2・第3のスイッチSW1・SW2・SW3の導通/非導通の制御や、カウンター回路5の制御を行う。レジスター6は、カウンター回路5から出力されたデータを保持する。カウンター回路5は、発振器4によって一定周期ごとにカウントアップされていることから、計時機能を提供している。
AD変換回路7において、第1の電流源I1は、外部から与えられた基準電圧Vrefをある抵抗RでV−I変換した電流Vref/Rを出力する。また第2の電流源I2は、AD変換されるアナログ入力電圧Vinをある抵抗RでV−I変換した電流−Vin/Rを出力する。AD変換回路7を用いて、アナログ入力電圧VinのAD変換を行う方法を以下に説明する。
初期状態では第1・第2・第3のスイッチSW1,SW2,SW3のいずれも非導通状態となっている。まず、第3のスイッチSW3を導通状態にすることで第1の容量C1に存在する電荷を完全に放電する。放電終了後、スイッチSW3を再び非導通状態にする。
第1のスイッチSW1を非導通状態から導通状態へ遷移させ、第2のスイッチSW2は非導通状態を保持する。第1のアンプ1の出力から第2の電流源I2の方向に電流を引くことで第1の容量C1を一定時間充電する。充電時間はカウンター回路5により測定される。
第1の容量C1に対し一定時間充電を行った後、第1のスイッチSW1を導通状態から非導通状態へと遷移させ、第2のスイッチSW2を非導通状態から導通状態へと遷移させる。同時にカウンター回路5のカウント値を0に戻す。
直ちに第1の電流源I1から発生する電流により、第1の容量C1に充電された電荷が放電される。第1の容量C1に充電された電荷の放電が開始されてから該容量C1に充電された電荷がすべて放電されるまでの時間を、カウンター回路5を用いて測定する。測定された時間が、アナログ電圧Vinを数値に変換したものに該当する。以下アナログ電圧Vinがある数値に変換される順序を定量的に説明する。
まず、第1の容量C
1に電荷を一定時間T
c充電したとする。充電電流はV
in/Rであることから、充電開始から時間T
cを経過したときの第1のアンプ1の出力電圧は下記の[数1]で記述できる。
一定時間T
c充電を行った後、第1の容量C
1に充電された電荷は電流値V
ref/Rにて放電される。第1の容量C
1に充電された電荷の放電が開始されてから該容量C
1の電荷がすべて放電されるまでの時間がT
xであるとすると、以下の[数2]が成り立つ。
ここで、カウンター回路5は発振器4によって一定周期ごとにカウントアップされており、発振器4の周期はTであるとする。計時開始直後カウンター値は0であるので、時間Tx経過後、カウンター値はΔxとなっている。ただしΔx=Tx/Tである。したがって、時間Txは発振器の周期Tとある数値Δxとの積Tx=ΔxTで表現できる。
いま、T
c=Δ
cT、及び、T
x=Δ
xT、と記述できることを考慮にいれた上で[数2]を計算・整理すると、以下の[数3]を導くことができる。
上記[数3]は、AD変換回路7によりあるアナログ電圧V
inが数値Δ
xに変換されることを示している。なおAD変換終了後、該変換値Δ
xがレジスター6に格納される。アナログ電圧V
inをある数値Δ
xに変換する一連の動作の中での第1のアンプ1の出力電圧時間変位を図10に示している。
さて、図9で示されたAD変換回路7を更に具体化したものが図11に示されている(AD変換回路14)。AD変換回路14について、AD変換回路7と比べ具体化された部分を中心に以下説明する。
相補スイッチである第1のマルチプレクサMXB1は、2入力IN1、IN2、1出力OUT1、1制御端子CT1から構成される。2入力IN1、IN2には、第1の電流源I1と第2の電流源I2が接続されており、1出力OUT1にはPチャネルトランジスタPM1のドレインが接続されている。制御端子CT1に印加される論理信号により、2入力IN1、IN2の切り替えが行われる。
PチャネルトランジスタPM1、PM2と、NチャネルトランジスタNM1、NM2とは、夫々カレントミラー対を構成している。
第1のスイッチSW11は、PチャネルトランジスタPM2のドレインとNチャネルトランジスタNM1のソースを接続している。第2のスイッチSW12は、PチャネルトランジスタPM2のドレインと第1のアンプ11の反転入力端子を接続している。第3のスイッチSW13は、第1のアンプ11の反転入力端子とNチャネルトランジスタNM2のドレインを接続している。制御回路13により、スイッチSW11、SW12、SW13の導通/非導通状態が制御される。
ここで、第1の容量C1に対して充電を行うとき、第1のマルチプレクサMXB11の1出力OUT1は入力IN2と導通しており、スイッチSW11・SW13は導通状態に、スイッチSW12は非導通状態となっている。PチャネルトランジスタPM1,PM2とNチャネルトランジスタNM1,NM2がそれぞれカレントミラーを構成していることから、PチャネルトランジスタPM1に流れる電流と同じ電流値Vin/RがNチャネルトランジスタNM2に流れる。つまり、第1のアンプ11の出力からNチャネルトランジスタNM2に向けて電流値Vin/Rが引かれる。
第1の容量C1に蓄えられた電荷の放電を行うとき、第1のマルチプレクサMXB11の1出力OUT1は入力IN1と導通しており、またスイッチSW11・SW13は非導通状態に、スイッチSW12は導通状態となっている。PチャネルトランジスタPM1とPチャネルトランジスタPM2はカレントミラー対を構成しており、PチャネルトランジスタPM1とPチャネルトランジスタPM2には、同一電流Vref/Rが流れる。PチャネルトランジスタPM2に流れる電流Vref/Rは、第2のスイッチSW12を介して第1のアンプ11の出力に吸い込まれる。
ここで、第1の容量C1に対して充電を行う場合、カレントミラー回路(NチャネルトランジスタNM1、NチャネルトランジスタNM2)のソース−ドレイン間電圧が同一でないことによって生じるラムダ長効果やミスマッチング性等により、NチャネルトランジスタNM1に流れる電流値Vin/Rが、NチャネルトランジスタNM2に対して正確にコピーされることは通常非常に困難である。つまり、実際に第1の容量C1の充電に使用される電流値はVin/Rとは通常多少異なるのであり、このことはADコンバータ変換誤差につながる。即ち、第1の容量C1に対して、充電を行うときに使用する経路と放電を行うときに使用する経路が完全に一致していないことにより、ADコンバータ変換誤差を生じさせてしまう。
上記の問題点を考慮して充放電時に使用する経路を一致させた回路構成を、図12に示している(AD変換回路211)。
図12の回路構成では、図9の回路構成に対して、第1のマルチプレクサMXB21の入出力端子が2入力・1出力から、3入力・1出力へと変更されている。更に、第1の抵抗R1と、第2のコンパレータ24と、演算回路28と、第1のレジスター29と、第2のレジスター210とが追加されている。具体的には、第1のアンプ22の非反転入力端子と第1のコンパレータ23の反転入力端子と第2のコンパレータ24の反転入力端子にはあるバイアス電圧Vcが加えられている。
また第1のマルチプレクサMXB21は、第1、第2、第3の入力端子IN1・IN2・IN3と、第1の出力端子O1と、出力を制御する第1と第2の制御端子N1・N2から構成されている。制御端子N1には制御回路25からの信号が印加され、制御端子N2には第2のコンパレータ24からの信号が印加されている。
制御端子N1にL信号が印加された場合、制御端子N2に印加された信号に関係なく出力端子O1からは入力IN1に印加された電圧が出力される。また制御端子N1にH信号が印加された場合、制御端子N2にH信号が印加されたならば入力IN3に印加された電圧が出力端子O1から出力され、また制御端子N2にL信号が印加されたならば入力IN2に印加された電圧が出力端子O1から出力される機能を、第1のマルチプレクサMXB21は持ち合わせている。それと共に第1のマルチプレクサMXB21の出力端子O1は、第1の抵抗R1に接続されている。
演算回路28は3つの入力端子と1つの出力端子を持ち、カウンター回路27から出力された値と第2のレジスター210に格納された値とを用いて演算を行い、その値を第1のレジスター29に格納する機能を提供している。
図12に示すAD変換回路211を用いてあるアナログ入力電圧Vinを整数値に変換する過程を以下に説明する。
まず、第1のマルチプレクサMXB21の第1・第2・第3の入力端子IN1・IN2・IN3には、夫々アナログ入力電圧Vinと基準電圧Vref1と基準電圧Vref2とが印加される。基準電圧Vref1と基準電圧Vref2は、Vref1>Vc>Vref2かつVc=(Vref1+Vref2)/2の関係を満たすものであるとする。
図9に示すAD変換回路7と同様に、まず第1の容量C1に対して、Vin>Vcであれば電流値(Vin−Vc)/R1で、Vin<Vcであれば電流値(Vc−Vin)/R1で一定時間Tc(=ΔcT)充電を行う。第1のマルチプレクサMXB21の制御端子N1にはL信号が印加されている。なお、一定時間充電が終了すると制御端子N1にはH信号が印加される。
次に第2のコンパレータ24の出力がH信号のとき(つまり、Vin>Vcであるとき)は、基準電圧Vref2が第1のマルチプレクサMXB21の出力端子O1から出力され、第2のコンパレータ24の出力がL信号のとき(つまり、Vin<Vcであるとき)は、基準電圧Vref1が第1のマルチプレクサMXB21の出力端子O1から出力される。したがって、Vin>Vcであるときは電流値(Vc−Vref2)/R1にて、またVin<Vcであるときは電流値(Vref1−Vc)/R1にて、第1の容量C1に充電された電荷を完全に放電する。
第1の容量C1中の電荷が完全に放電されると、バイアス電圧Vcから離れていた第1のアンプ22の出力がバイアス電圧Vcに戻る(図13参照)。このことが第1のコンパレータ23により検知され、更に制御回路25により検知されると、直ちにカウンター回路27で実行されているカウントアップの作業を停止し、該カウンター回路27が保持している値が演算回路28に転送される。演算回路28は該カウンター回路27から入力された値と第2のレジスター210が保持している値を演算し、その演算結果を第1のレジスター29に格納する。第1のレジスター29に格納された値がアナログ電圧VinをAD変換した結果となる。
図12に示すAD変換回路211では、第1のアンプ22の出力端子から第1のマルチプレクサMXB21の出力端子O1までの経路を充電時・放電時いずれの場合においても使用するため、図11に示すAD変換回路14を用いてAD変換を行うよりも変換精度を向上させることが期待できる。
ここで、第1のアンプ22の出力の時間変位を、図13に示している。図13中の軌跡(1)、軌跡(2)、軌跡(3)、軌跡(4)の充電時電流はそれぞれ(Vc−Vin4)/R1、(Vc−Vin3)/R1、(Vin2−Vc)/R1、(Vin1−Vc)/R1であり、放電電流はそれぞれ(Vref1−Vc)/R1、(Vref1−Vc)/R1、(Vc−Vref2)/R1、(Vc−Vref2)/R1である。ここで、Vin1、Vin2、Vin3、Vin4に関しては、Vin1>Vin2>Vc>Vin3>Vin4の関係を満たし、基準電圧Vref1と基準電圧Vref2は、Vref1>Vc>Vref2の関係を満たしている。
AD変換回路211に入力するアナログ電圧Vinには、理論上、上限と下限とが存在する。アナログ入力電圧Vinの理論上の入力範囲下限Vinminは充電完了時における第1のアンプ22の出力電圧が電源電圧Vddと同一になるときであり、アナログ入力電圧Vinの理論上の入力範囲上限Vinmaxは充電完了時における第1のアンプ22の出力電圧が接地GNDと同一になるときである。実際の使用時においては、アナログ入力電圧Vinの範囲は、上記理論上の入力範囲よりも多少狭いことが求められる。
アナログ入力電圧V
inと放電終了時のカウンター値Δ
xとの関係を次に説明する。アナログ入力電圧V
inがV
in<V
cを満たすとき充電電流が(V
c−V
in)/R
1であり、放電電流が(V
ref1−V
c)/R
1であるから、アナログ入力電圧V
inと放電終了時のカウンター値Δ
xの間において以下の[数4]が成り立つ。
上記[数4]を計算・整理し、T
c=Δ
cT、及び、T
x=Δ
xTであることを考慮すると次の[数5]を導くことができる。
(ただしV
in<V
cのとき)
一方、アナログ入力電圧V
inがV
in>V
cを満たすとき充電電流が(V
in−V
c)/R
1であり、放電電流が(V
c−V
ref2)/R
1であるから、アナログ入力電圧V
inと放電終了時のカウンター値Δ
xの間において以下の[数6]が成り立つ。
同様に上記[数6]を計算・整理し、T
c=Δ
cT、及び、T
x=Δ
xTであることを考慮すると次の[数7]を導くことができる。
(ただしV
in>V
cのとき)
上記の[数5]、[数7]に基づき、アナログ入力電圧Vinを横軸に、放電終了時のカウンター値Δxを縦軸にとった場合のVinとΔxの関係を表現したものが図14に示されている。ΔxはVin=Vcに関して対称性があるため、アナログ入力電圧Vinとカウンター値Δx間には線形性は存在するが単調増加性は存在しない。ここで、演算回路28を使用することで単調増加性を確保する方法を以下説明する。
図14より、V
in<V
cのときはΔ
xを横軸に対して折り返しその値に{V
c/(V
ref1−V
c)}Δ
cを加える。また、V
in≧V
cのときはΔ
xに{V
c/(V
ref1−V
c)}Δ
cを加える。具体的にはV
in<V
cのとき、つまり第2のコンパレータ24の出力から制御回路25に対してL信号が入力されたとき、演算回路28は以下の[数8]で示される演算を行う([数8]は、演算回路28の出力である)。
一方、V
in>V
cのとき、つまり第2のコンパレータ24の出力から制御回路25に対してH信号が入力されたとき、演算回路28は以下の[数9]で示される演算を行う([数9]は、演算回路28の出力である)。
上記の[数8]、[数9]の演算を実施すると、アナログ入力電圧Vinと、演算回路28の出力との間に、線形性と単調増加性を確保できる。演算回路28は、カウンター回路27から入力されたデータΔx (1)またはΔx (2)と第2のレジスター210から入力されたデータ{Vc/(Vref1−Vc)}Δcとについて、[数8]または[数9]に従った演算を行い第1のレジスター29に出力する。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る好適な実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るAD変換回路411の概略回路図である。第1の実施形態に係るAD変換回路411は、アナログ入力電圧Vinと基準電圧(Vref1、Vref2)とを切り替えて出力する切替え手段(MXB41)と、所定のバイアス電圧Vcが非反転入力端子に印加され、反転入力端子に切替え手段(MXB41)の出力が入力される第1のアンプを含む積分器(42)と、バイアス電圧Vcが反転入力端子に印加され積分器(42)の出力が非反転入力端子に印加されており積分器(42)の出力が反転入力端子Vcに到達したことを検知する比較器(44)と、アナログ入力電圧Vinに基づいて、積分器(42)における充電及び放電の時間を測定して、デジタル値を算出する演算手段(46、47、48、49、410)とから構成される。このような2重積分AD変換回路において、更に、アナログ入力電圧Vinの値の領域を判定するアナログ電圧領域判定手段(412)と、アナログ電圧領域判定手段(412)が、アナログ入力電圧Vinの値がバイアス電圧Vcの近傍である第1の領域に在ると判定するときアナログ入力電圧Vinの値が第1の領域以外の領域に在ることになるようにアナログ入力電圧Vinに対して所定の演算を為すアナログ電圧演算手段(41)とを備え、演算手段(46、47、48、49、410)は、アナログ電圧演算手段(41)が行う所定の演算に対応する調整演算を行ってデジタル値を算出することを特徴とする。特に、第1の実施形態に係るAD変換回路411では、アナログ電圧演算手段(41)における所定の演算が、アナログ入力電圧Vinに所定の実数値を乗算することであり、演算手段における調整演算は、デジタル値を所定の実数値で除算することである。以下では、図12に示す従来技術であるAD変換回路211から追加された回路部分を中心に説明する。
図1に示すアナログ電圧演算回路41は、1入力端子I41_1と、1出力端子O41と、2制御端子C41_1,C41_2を備えている。入力端子I41_1にはアナログ入力電圧Vinが印加されており、それを演算したアナログ電圧が出力端子O41から出力される。なお、アナログ電圧演算回路41は、2制御端子C41_1,C41_2に印加された信号に対応する演算式に従いアナログ電圧の演算を行う。
アナログ電圧領域判定回路412は、3入力端子I412_1,I412_2,I412_3と、2出力端子O412_1,O412_2を備えている。3入力端子I412_1、I412_2、I412_3には夫々アナログ電圧Vin、Vc−ε、Vc+εが印加されている。
アナログ電圧領域判定回路412は、アナログ電圧Vinが、次のように定義されるレベル領域1、レベル領域2、又は、レベル領域3の、いずれに属するかを判定する。
・レベル領域1:Vinmin以上Vc−ε以下、
・レベル領域2:Vc−ε以上Vc+ε以下、
・レベル領域3:Vc+ε以上Vinmax以下。
アナログ入力電圧Vinがレベル領域1の範囲内に入っている場合、出力端子O412_1と出力端子O412_2からは、夫々L信号とL信号が出力される。またアナログ入力電圧Vinがレベル領域2の範囲内に入っている場合、出力端子O412_1と出力端子O412_2からは、夫々H信号とL信号が出力される。またアナログ入力電圧Vinがレベル領域3の範囲内に入っている場合、出力端子O412_1と出力端子O412_2からは、夫々H信号、H信号が出力される。アナログ電圧領域判定回路412の2出力は、制御回路45と、アナログ電圧演算回路41の2制御端子と、演算回路48とに印加される。
図12に示すAD変換回路211を用いる従来のAD変換技術では、第1のアンプ22の非反転入力端子及び第1のコンパレータ23の反転入力端子に印加される電圧Vc付近の電圧が、AD変換回路211の入力として印加される場合、第1の容量C1に微小な充放電を行うことになるので、変換値が不正確不安定になることを前に述べた。そこで第1の実施形態に係る回路では、アナログ入力電圧VinがVc−ε≦Vin≦Vc+εの領域(レベル領域2)にあるとき、変換値が不安定不正確になることを前提とする。つまり、図1に示すAD変換回路411では、アナログ入力電圧VinがVc−ε≦Vin≦Vc+εを満たす場合と満たさない場合とでは、異なる方法でAD変換を行う。
まず、AD変換回路411にVinmin<Vin<Vc−ε(レベル領域1)又は、Vc+ε<Vin<Vinmax (レベル領域3)を満たすアナログ電圧Vinが入力された場合は、アナログ電圧演算回路41の出力端子O41からは入力端子I41_1に印加されたアナログ電圧Vinがそのまま出力される。その後の動作は、図12に示すAD変換回路211を用いた従来の変換回路と同様である。
次に、AD変換回路411にVc−ε≦Vin≦Vc+ε(レベル領域2)であるアナログ電圧Vinが入力されたとき、該AD変換回路411は直接Vinを正確にAD変換することができない。そこで第1の実施形態に係る回路では、アナログ入力電圧VinとAD変換値とが正比例の関係にあることを利用して、アナログ入力電圧Vinを2倍にした電圧2VinのAD変換を実施し、その際の出力値を2で除算することを行う。このようにすることでアナログ入力電圧VinをAD変換した値を正確に求めることができる(図2参照)。当然ながら、アナログ入力電圧Vinは、Vc+ε<2Vin<Vinmaxの関係を満たすことが求められる。
アナログ入力電圧Vinが、Vc−ε<Vin<Vc+ε(レベル領域2)である場合に、AD変換回路411を用いてAD変換を行う際の具体的な回路動作を説明する。
アナログ電圧領域判定回路412からアナログ電圧演算回路41の制御端子C41_1,C41_2に提供される信号により、アナログ電圧演算回路41は、アナログ入力電圧VinがVc−ε<Vin<Vc+εに属していることを認識する。
このときアナログ電圧演算回路41は、入力された電圧Vinを2倍にして出力する。つまり、アナログ電圧演算回路41から2×Vinが出力される。アナログ入力電圧2VinのAD変換を実施しその変換値を2で除算すれば、アナログ入力電圧VinをAD変換した値を求めることができる。図3は、アナログ電圧2VinをAD変換した場合の第1のアンプ43の出力端子の電圧変位を示したものである。
なお第1の実施形態に係るAD変換回路411は、アナログ入力電圧VinがVc−ε<Vin<Vc+ε(レベル領域2)に属しているとき、つまり直接AD変換を実施できないときは、レベル領域3(Vc+ε以上Vinmax以下)に入るように実数値で乗算された入力電圧のAD変換を行い、その変換値を同一実数で除算することよりアナログ電圧Vinに対応するAD変換値を求める、というものであってもよい。更に第1の実施形態に係るAD変換回路411は、アナログ入力電圧Vinがレベル領域2に属しているとき、レベル領域1(Vinmin以上Vc−ε以下)に入るように実数値で除算された入力電圧のAD変換を行い、その変換値を同一実数で乗算することによりナログ電圧Vinに対応するAD変換値を求める、というものであってもよい。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るAD変換回路512の概略回路図である。第2の実施形態に係るAD変換回路512は、アナログ入力電圧Vinと基準電圧(Vref1、Vref2)とを切り替えて出力する切替え手段(MXB51)と、所定のバイアス電圧Vcが非反転入力端子に印加され、反転入力端子に切替え手段(MXB41)の出力が入力される第1のアンプを含む積分器(52)と、バイアス電圧Vcが反転入力端子に印加され積分器(52)の出力が非反転入力端子に印加されており積分器(52)の出力が反転入力端子Vcに到達したことを検知する比較器(54)と、アナログ入力電圧Vinに基づいて、積分器(52)における充電及び放電の時間を測定して、デジタル値を算出する演算手段(56、57、58、59、510、511)とから構成される。このような2重積分AD変換回路において、更に、アナログ入力電圧Vinの値の領域を判定するアナログ電圧領域判定手段(512)と、アナログ電圧領域判定手段(512)が、アナログ入力電圧Vinの値がバイアス電圧Vcの近傍である第1の領域に在ると判定するときアナログ入力電圧Vinの値が第1の領域以外の領域に在ることになるようにアナログ入力電圧Vinに対して所定の演算を為すアナログ電圧演算手段(51)とを備え、演算手段(56、57、58、59、510、511)は、アナログ電圧演算手段(51)が行う所定の演算に対応する調整演算を行ってデジタル値を算出することを特徴とする。特に、第2の実施形態に係るAD変換回路512では、アナログ電圧演算手段(51)における所定の演算が、アナログ入力電圧Vinに所定電圧値を加算すること、若しくは、アナログ入力電圧Vinから所定電圧値を減算することであり、演算手段における調整演算は、アナログ入力電圧Vinに所定の電圧値を加算して算出された第1のアナログ入力電圧に基づいて演算手段が算出した第1のデジタル値と、アナログ入力電圧Vinから所定の電圧値を減算して算出された第2のアナログ入力電圧に基づいて演算手段が算出した第2のデジタル値との、平均値を求めることである。以下では、図1に示す第1の実施形態に係るAD変換回路411との差異部分を中心に説明する。
図1に示す第1の実施形態に係るAD変換回路411を利用するには、アナログ入力電圧V
inが次の[数10]を満たす必要がある。
従って、アナログ入力電圧V
inが、V
c+ε<2V
inを満たしても、2V
in>V
inmaxである場合には、第1の実施形態に係るAD変換回路411を利用できない。
また図2に示すように、アナログ入力電圧VinとAD変換値の関係式は理論的には原点を通過するが、実用時には第1のアンプ43の入力オフセット等のミスマッチング性により原点を通過しないこともある。アナログ入力電圧VinとAD変換値の関係式が原点を通過しない場合、第1の実施形態に係るAD変換回路411を利用すると、AD変換結果に誤差が生じることがある。これらの不都合を克服すべく、図4に示される第2の実施形態に係るAD変換回路512が構成されている。
第2の実施形態に係るAD変換回路512は、第1の実施形態に係るAD変換回路411(図1参照)と比べて、第3のレジスター511が追加されている。第3のレジスター511は、演算回路58に対してデータを転送することも演算回路58からデータを受け取ることもできるレジスターである。また、アナログ電圧演算回路51は、3入力端子I51_1,I52_1,I51_3、1出力端子O51、3制御端子C51_1,C51_2,D51_1を備えている。入力端子I51_1にはアナログ電圧Vinが、入力端子I51_2にはアナログ電圧Vin−2εが、入力端子I51_3にはアナログ電圧Vin+2εが印加されている。制御端子C51_1,C51_2には、H信号若しくはL信号が印加される。その余の部分は、第1の実施形態に係るAD変換回路411と同様のものである。
第2の実施形態に係るAD変換回路512を用いてアナログ入力電圧VinのAD変換を実施する手順を以下に説明する。
まず、アナログ入力電圧Vinが問題なくAD変換を実施できる領域に属している場合と、そうでない場合とで、AD変換実施手法が異なる。つまり、アナログ入力電圧VinがVin≦Vc−ε(レベル領域1)又はVc+ε≦Vin(レベル領域3)に属している場合と、Vc−ε<Vin<Vc+ε(レベル領域2)に属している場合とで、AD変換の方法が異なる。アナログ入力電圧Vinが、Vin≦Vc−ε(レベル領域1)又はVc+ε≦Vin(レベル領域3)にあるとき、アナログ電圧演算回路51は、アナログ電圧領域判定回路512からアナログ電圧演算回路51の制御端子C51_1、C51_2に入力される信号により、アナログ入力電圧Vinが、Vin≦Vc−ε(レベル領域1)又はVc+ε≦Vin(レベル領域3)にあることを認識する。このときアナログ電圧演算回路51は、入力端子I51_1に印加された電圧Vinがそのまま出力端子O51から出力される。その後の動作は、図12に示すAD変換回路211を用いた従来の変換回路と同様である。
アナログ入力電圧Vinが、Vc−ε<Vin<Vc+ε(レベル領域2)であるときは、直接アナログ入力電圧Vinを印加してAD変換を正確に実施することができない。そこで、第2の実施形態に係るAD変換回路512では、AD変換を二度行う。
第2の実施形態に係るAD変換回路512は、まず、アナログ電圧Vin−2εのAD変換を実施し変換結果を保持する。次に、アナログ電圧Vin+2εのAD変換を実施し、その変換結果を保持する。アナログ入力電圧VinとAD変換値とは線形の関係にあることから、アナログ電圧Vin−2εにおける変換値とアナログ電圧Vin+2εにおける変換値とを加算した結果を、2で除算すれば、アナログ入力電圧VinのAD変換値を求めることができる。
上記のAD変換の際の、AD変換回路512の回路動作は以下の通りである。アナログ電圧演算回路51は、AD変換開始前、アナログ電圧領域判定回路512から制御端子C51_1、C51_2を介して入力される信号により、アナログ入力電圧VinがVc−ε<Vin<Vc+ε(レベル領域2)であることを認識するとする。
このとき、まずアナログ電圧演算回路51の制御回路D51_1には、L信号が制御回路55より入力されている。この場合、アナログ電圧演算回路51の出力端子O51からは、入力端子I51_2に印加されたアナログ電圧Vin+2εが出力される。第1のマルチプレクサMXB51の出力O1と入力IN1とが導通状態となり、電流値{(Vin+2ε)−Vc}/R1で第1の容量C1に一定時間充電が行われる。充電終了後、第1のマルチプレクサMXB51の出力O1は、入力IN2と導通状態となり、電流値{Vc−Vref2}/R1にて、第1の容量C1に蓄えられた電荷が完全に放電されて一度目のAD変換が終了する。
その直後に、制御回路55は、アナログ電圧演算回路51の制御端子D51_1にH信号を印加する。アナログ電圧演算回路51は制御回路55からH信号を受け取ると、出力端子O51から、入力端子I51_3に印加された電圧Vin−2εが出力される。その後は一度目のAD変換と同様に、電流値{Vc−(Vin−2ε)}/R1で第1の容量C1に一定時間充電が行われ、電流値{Vref1−Vc}/R1にて第1の容量C1に蓄えられた電荷が完全に放電されて二度目のAD変換が終了する。
一度目と二度目のAD変換終了直後に、カウンター回路57に保持されているデータを夫々C57_1、C57_2とすると、一度目のAD変換時における変換値AD
1と二度目のAD変換時における変換値AD
2は、夫々、下記の[数11]、[数12]で記述することができる。
したがって、アナログ入力電圧V
inのAD変換値ADは、下記の[数13]で記述できる。
[数13]で示される演算を実施するにあたり、まず第2のレジスター510に{Vc/(Vref1−Vc}Δcに相当するデータが格納される。一度目のAD変換終了時、カウンター回路57が保持しているデータC57_1が第3のレジスター511に格納される。次に二度目のAD変換終了時には、カウンター回路57が保持しているデータC57_2と、第3のレジスター511に格納されているデータC57_1と、第2のレジスター510に格納されているデータ{Vc/(Vref1−Vc}Δcを用いて、上記の[数13]に従う演算が実施される。その演算結果が第1のレジスター59に格納されると、アナログ入力電圧VinがVc−ε<Vin<Vc+εである場合における一連のAD変換が終了する。
なお図5は、アナログ入力電圧VinがVc−ε<Vin<Vc+εである場合における第1のアンプ53の出力の時間変位を示したグラフであり、図6は、アナログ入力電圧とAD変換値との関係を示したグラフである。
第2の実施形態に係るAD変換回路512は、アナログ入力電圧VinがVc−ε<Vin<Vc+ε(レベル領域2)に属しているとき、つまり直接AD変換を実施できないときは、アナログ入力電圧Vinと所定の関係にあり「レベル領域1」に含まれる第1のアナログ電圧値についてのAD変換を実施し、同時にアナログ入力電圧Vinと所定の関係にあり「レベル領域3」に含まれる第2のアナログ電圧値についてのAD変換を実施し、これら二つのAD変換結果に基づいて、アナログ入力電圧VinのAD変換結果を演算する、というものであってもよい。
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係るAD変換回路611の概略回路図である。以下では、第3の実施形態に係るAD変換回路611は、アナログ入力電圧Vinと基準電圧とを切り替えて出力する切替え手段(MBX61)と、所定のバイアス電圧Vcが非反転入力端子に印加され反転入力端子に切替え手段(MBX61)の出力が入力される第1のアンプを含む積分器(61)と、バイアス電圧Vcが反転入力端子に印加され、積分器(61)の出力が非反転入力端子に印加されており積分器(61)の出力が反転入力端子Vcに到達したことを検知する比較器(63)と、アナログ入力電圧Vinに基づいて積分器(61)における充電及び放電の時間を測定してデジタル値を算出する演算手段(65、66、67、68、69)とから構成される。このような2重積分AD変換回路において、更に、 アナログ入力電圧Vinの値の領域を判定するアナログ電圧領域判定手段(610)を備え、アナログ電圧領域判定手段(610)が、アナログ入力電圧Vinの値がバイアス電圧Vcの近傍である第1の領域に在ると判定するとき、基準電圧の値とバイアス電圧Vcの値とに所定の値が追加され、演算手段(65、66、67、68、69)は、基準電圧の値とバイアス電圧Vcの値とに所定の値が追加されたことに対応する調整演算を行ってデジタル値を算出することを特徴とする。以下では、図1に示す第1の実施形態に係るAD変換回路411、及び図4に示す第2の実施形態に係るAD変換回路512との差異部分を中心に説明する。
図12に示すAD変換回路211を用いる従来技術の回路では、アナログ入力電圧Vinがレベル領域2(Vc−ε<Vin<Vc+ε)に在る場合、第1の容量C1への充放電電流が微小となり、AD変換結果が不安定不正確になることを、前に述べた。このAD変換回路211において、第1のアンプ22の非反転入力端子と第1のコンパレータ23の反転入力端子に印加する電圧をVcからVc+αへ変化させると、AD変換結果が不安定になるレベル領域2’は、Vc+α−ε以上、Vc+α+ε以下となる。ただし、レベル領域2とレベル領域2’とが、共通範囲を持たないように電圧値αを定めるものとする。
つまり、第1のアンプ22の非反転入力端子と第1のコンパレータ23の反転入力端子に電圧Vcを印加しているときにアナログ入力電圧Vinがレベル領域2に入った場合、第1のアンプ22の非反転入力端子と第1のコンパレータ23の反転入力端子とに電圧Vc+αを印加すれば、アナログ入力電圧はAD変換結果が不安定となるレベル領域(レベル領域2’)から外れる。そうするとアナログ入力電圧はレベル領域2’以外に在ることになって、問題なくAD変換が行われることになる。AD変換後、変換結果に対して適宜演算が加えられれば、レベル領域2(Vc−ε<Vin<Vc+ε)に入ったアナログ入力電圧Vinに対応するAD変換値を求めることができることになる。このような変換は、図7で示すAD変換回路611を用いて実現することができる。AD変換回路611を用いてAD変換を行う具体的な手順を以下説明する。
まず、図7に示す第3の実施形態に係るAD変換回路611のうち、図12に示すAD変換回路211と比較して、追加若しくは変更された部分を述べる。
第1のマルチプレクサMXB61は、5入力端子(IN1,IN2,IN3,IN4)、3制御端子(N61_1,N61_2,N1)、及び1出力端子(O1)を備えており、出力端子O1は積分器61の入力となっている。入力端子(IN1,IN2,IN3,IN4)には、夫々アナログ電圧Vin、Vref1、Vref2、Vref1+αが印加されている。制御端子N61_1,N61_2にはアナログ電圧領域判定回路610の出力が印加されており、制御端子N1には制御回路64の出力が印加されている。出力端子O1がどの入力端子と導通状態となるかは、制御端子N61_1,N61_2,N1に印加される信号によって決定される。
第2のマルチプレクサMXB62は、2入力端(IN6,IN7)、2制御端子(N62_1,N62_2)、及び1出力端子(O2)を備えており、出力端子O2は第1のアンプ62の非反転入力端子と第1のコンパレータ63の反転入力端子に接続されている。制御端子N62_1と制御端子N62_2にはアナログ電圧領域判定回路610の出力が印加されている。出力端子O2が、入力端子IN6と入力端子IN7とのいずれと導通状態となるかは、制御端子N62_1と制御端子N62_2に印加される信号により定まる。
アナログ電圧領域判定回路610は、3入力端子(I610_1,I610_2,I610_3)、及び2出力端子(O610_1,O610_2)を備えており、入力端子(I610_1,I610_2,I610_3)には、夫々アナログ電圧Vin、Vc−ε、Vc+εが印加されている。前述したように、アナログ電圧領域判定回路610は、アナログ入力電圧Vinがレベル領域1(Vinmin以上Vc−ε以下)、レベル領域2(Vc−ε以上Vc+ε以下)、又は、レベル領域3(Vc+ε以上Vinmax以下)のどの領域に入っているかを判定し、その判定結果を、第1のマルチプレクサMXB61と、第2のマルチプレクサMXB62と、演算回路67とに伝達している。
このように構成された第3の実施形態に係るAD変換回路611において、アナログ入力電圧Vinがレベル領域1(Vinmin以上Vc−ε以下)、又はレベル領域3(Vc+ε以上Vinmax以下)に入っている場合、第2のマルチプレクサMXB62の出力端子O2は入力端子I6と導通状態となり、積分器61中の第1の容量C1には電荷が一定時間充電される。その後、第1のマルチプレクサMBX1の出力端子O1は、Vin>Vcであれば入力端子IN3と、Vin<Vcであれば入力端子IN2と、夫々導通状態になり、第1の容量C1に保持された電荷の放電が完全に終了した時点でAD変換が終了する。この回路動作は、従来技術と同様のものである。
一方、アナログ入力電圧Vinがレベル領域2(Vc−ε以上Vc+ε以下)に入っている場合には、第2のマルチプレクサMXB62の出力端子O2は、入力端子I7と導通状態となる。つまり、第1のアンプ62の非反転入力端子、及び第1のコンパレータ63の反転入力端子には、電圧Vc+αが印加されるように、アナログ電圧領域判定回路610から第2のマルチプレクサMXB62に信号が送られる。電圧Vc+αが第1のアンプ62の非反転入力端子及び第1のコンパレータ63の反転入力端子に印加されると、AD変換が不安定となる領域(レベル領域2’)は、Vc−ε+α以上Vc+ε+α以下となる。当然ながら、レベル領域2とレベル領域2’とが共通部分を持たないように、正数αが決められている。この手順により、アナログ入力電圧Vinはレベル領域2’から外れる。
アナログ入力電圧VinをAD変換するには、まず、第1のマルチプレクサMXB61の出力端子O1が入力端子IN1と導通状態となり積分器61中の第1の容量C1に充電が一定時間行われる。次に出力端子O1は入力端子IN4と導通状態となり放電が始まる。完全に放電が終了すればAD変換作業が終了する。
図8は、アナログ入力電圧V
inと放電終了時のカウンター回路66の値Δ
xとの概略の関係を示すグラフある。点線で示されるグラフは、第1のアンプ62の非反転入力端子と第1のコンパレータ63の反転入力端子に印加される電圧がV
cのときのものである。実線で示されるグラフは、第1のアンプ62の非反転入力端子と第1のコンパレータ63の反転入力端子に印加される電圧がV
c+αのときのものである。まずV
cが印加される場合、V
inとΔ
xは下記の[数14]、[数15]で示される。
(ただしV
in<V
cのとき)
(ただしV
in>V
cのとき))
一方、V
c+αが印加される場合、V
inとΔ
xは下記の[数16]で記述される。
(ただしV
c−ε<V
in<V
c+εのとき)
アナログ入力電圧Vinがレベル領域2以外に入っている場合は、上述したように従来技術と同様であるので、式[数8]及び[数9]に示されるのと同様に、{−Δc/(Vref1−Vc)}Vin又は{Δc/(Vc−Vref2)}Vinに、{Vc/(Vref1−Vc}Δcを加える演算を、演算回路67にて行うことでアナログ入力電圧Vinに対応したAD変換値を求めることができる。
一方、アナログ入力電圧Vinがレベル領域2に入っている場合は、上記[数16]に示すように、{−Δc/(Vref1−Vc)}Vinに、{(Vc+α)/(Vref1−Vc)}Δcを加える演算を、演算回路67で行うことでアナログ入力電圧Vinに対応したAD変換値を求めることができる。即ち、アナログ入力電圧Vinがレベル領域2以外に入っている場合に利用する変換式(数14)に基づいて、AD変換が行われることになる。
なお、第3の実施形態に係るAD変換回路611において、電圧値αが負数である場合には、第1のマルチプレクサMXB61の入力端子IN4に印加する電圧値を、Vref2+αにすればよい。