しかしながら、上述した技術は、運転者が減速行動を行わない場合に減速制御を行うものであり、仮に運転者が装置の減速制御が開始するより早く減速行動をとった場合には、装置による減速行動がキャンセルされてしまう。このため、少しだけブレーキを踏んだ後に離すような行動をとると、減速が不十分であるにもかかわらず減速制御が行われないおそれがあるという技術的問題点がある。
更に、運転者が早めの減速行動をとった場合には、再び減速条件とマッチするまでは減速制御が行われないため、減速支援がキャンセルされたと勘違いした運転者が自分で減速行動をとる羽目になり、支援機能の効果が十分に発揮されないおそれがあるという技術的問題点もある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、運転者が早めの減速行動をとった場合においても、好適に減速制御を実行可能な車両の制御装置を提供することを課題とする。
本発明の車両の制御装置は上記課題を解決するために、車両の減速を行うべき減速対象地点における運転者の減速行動を学習する学習手段と、前記車両が前記減速対象地点に接近している場合に、前記学習された減速行動に基づく減速条件及び前記車両の走行状態を比較して、減速制御を行うべきか否かを判定する判定手段と、前記判定手段において前記減速制御を行うべきと判定された場合に、前記学習された減速行動に応じた減速制御を行う減速制御手段と、前記判定手段において前記減速制御を行うべきでないと判定されてから、前記減速制御を行うべきと判定されるまでに、前記運転者による減速操作及び該減速操作の終了を自動的に検出する減速操作検出手段と、前記減速操作が終了した時点から、前記減速操作を引き継ぐと共に前記減速制御を完了させるべき減速目標地点までの減速を補完するような減速パターンを演算する演算手段と、前記減速パターンに応じた補完減速制御を行う補完減速制御手段とを備え、前記演算手段は、前記補完減速制御が開始されたことを前記運転者に認識させるために、前記補完減速制御開始直後に減速度変化量を一時的に増加させるように前記減速パターン演算する。
本発明の車両の制御装置によれば、自動車等の車両の走行時において、例えばカーブや交差点、一時停止線のような減速を行うべき減速対象地点における運転者の減速行動が学習される。具体的には、例えばカーブを曲がる際の運転者のブレーキペダルの操作タイミングや操作量が学習される。これにより、運転者の減速行動と車両の走行位置や道路情報とを結びつけて学習することができる。
上述した学習が行われると、同様の減速対象地点に接近している場合に、学習された減速行動に基づく減速条件及び車両の走行状態を比較して、減速制御を行うべきか否かが判定される。即ち、学習された減速行動に基づいて導き出された減速条件と、現在の車両の走行状態とを比較することで、装置による支援的な減速制御を行うべきか否かが判定される。尚、減速条件及び走行状態は、例えば車速や減速対象地点までの距離、減速度等のパラメータとして適宜設定される。
減速制御を行うべきと判定された場合は、学習された減速行動に応じた減速制御が行われる。即ち、運転者が減速行動を行わずとも装置によって自動的に減速制御が行われ、学習された際に行われた運転者の減速行動が行われているかのように車両が減速される。よって、運転者の車両の運転に対する負担を軽減でき、より好適な運転環境を実現できる。
一方で、減速制御を行うべきでないと判定された場合は、再び判定が行われて減速制御を行うべきとされるまでに、運転者による減速操作及び減速操作の終了が検出される。尚、ここでの「減速操作の終了」とは、典型的には、ブレーキがオフになったことを指すものであるが、ブレーキが緩められた時点を減速操作の終了として扱うことも可能である。
ここで本発明では特に、運転者による減速操作が検出された場合には、減速操作が終了した時点から減速制御を完了させるべき減速目標地点までの減速を補完するような減速パターンが演算される。この減速パターンは、直前まで行われていた運転者による減速操作を引き継ぐようなものとして演算される。尚、ここでの「引き継ぐように」とは、減速パターンが、直前に行われた運転者による減速操作(例えば、ブレーキペダルの操作量)等に基づいて演算されるという趣旨であり、典型的には、運転者による減速操作から装置による減速制御への移行がスムーズに行われるように減速パターンが演算される。
減速パターンが演算されると、演算された減速パターンに応じて補完減速制御が行われる。即ち、運転者による減速操作が終了した時点から、減速操作を引き継ぐような減速が行われ、減速目標地点において適切な車速を実現できる。尚、「減速操作が終了した時点」とは、典型的には減速操作が終了した瞬間を指す趣旨であるが、多少ずれた場合であっても、運転者による減速操作から補完減速制御への移行が運転者に違和感を与えない程度にスムーズであるのであればよい。即ち、減速操作が終了してから補完減速制御が開始されるまでに(或いは、減速パターンが演算されるまでに)多少のタイムラグがあってもよい。
上述した補完減速制御が行われないとすると、仮に運転者が減速制御を行うべきと判定される前に(即ち、装置による減速制御が行われる前に)減速行動をとった場合に、減速制御を行うか否かの判定条件である車両の走行状態が変化するため、減速制御がキャンセルされてしまう。このため、少しだけブレーキを踏んだ後に離すような行動をとると、減速が不十分であるにもかかわらず減速制御が行われないおそれがある。更に、運転者が早めの減速行動をとった場合には、再び減速制御を行うべきと判定されるような走行状態となるまでは減速制御が行われないため、減速支援がキャンセルされたと勘違いした運転者が自分で再び減速行動をとる羽目になり、減速支援機能の効果が十分に発揮されないおそれがある。
しかるに本発明では、減速パターンに応じた補完減速制御を行うことができるため、運転者が減速制御の開始される前に減速行動をとった場合であっても、減速操作の終了から好適に車両を減速させることができる。具体的には、運転者による減速操作を引き継ぐような減速が行われることになるため、運転者に何ら違和感を与えずに、スムーズな減速を実現できる。従って、運転者の減速に対する負担を減らすと共に、減速目標地点までの好適な減速を実現できる。
以上説明したように、本発明の車両の制御装置によれば、運転者が早めの減速行動をとった場合においても、好適に減速制御を実行可能である。
本発明の車両の制御装置の一態様では、前記演算手段は、前記車両が前記減速目標地点から所定の距離内を走行している場合に、前記減速パターンを演算する。
この態様によれば、演算手段の動作条件を、車両が減速目標地点から所定の距離内を走行している場合とすることによって、減速目標地点から遠く離れた地点において補完減速制御が行われるのを防止できる。即ち、実際には減速すべきでない地点において補完減速制御が行われてしまうことを防止できる。閾値となる「所定の距離」は、装置が搭載される車両の仕様や運転者の減速行動の傾向、或いは車速等に基づいて適宜設定される。
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記演算手段は、前記減速目標地点までの間に他の前記減速対象地点が無い場合に、前記減速パターンを演算する。
この態様によれば、演算手段の動作条件を、減速目標地点までの間に他の減速対象地点が無い場合とすることによって、本来の減速目標地点以外の地点に対する減速操作を検出して補完減速制御が行われてしまうことを防止できる。即ち、実際には減速すべきでない地点において補完減速制御が行われてしまうことを防止できる。他の減速対象地点は、例えば高精度GPS(Global Positioning System)や車載カメラ等によって検出される。
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記演算手段は、前記減速操作が終了した時点における前記車両の速度、前記減速目標地点において実現されるべき前記車両の速度、及び前記減速目標地点までの距離を用いて前記減速パターンを演算する。
この態様によれば、減速操作検出手段において減速操作の終了が検出された際に、その時点での車両の速度、減速目標地点において実現されるべき車両の速度(即ち、補完減速制御によって最終的に到達すべき車速)、及び減速目標地点までの距離が検出され、少なくともこの3つのパラメータを用いて減速パターンが演算される。このようにすれば、容易且つ確実に減速パターンを演算することができ、補完減速制御を好適に行うことができる。
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記演算手段は、前記補完減速制御開始直後の減速度が、前記運転者による減速操作の終了直前の減速度に近くなるように前記演算パターンを演算する。
この態様によれば、補完減速制御開始直後の減速度が、運転者による減速操作の終了直前の減速度に近くなるため、運転者による減速操作から補完減速制御への移行をよりスムーズに行うことが可能である。この場合、運転者による減速操作と補完減速制御とで減速度の差がないため、減速度が急激に変化することによって運転者が不快感を覚えてしまうことを防止できる。
尚、本態様における「直後」及び「直前」とは、上述したような効果を得られるまでに短い時間を指すものであり、運転者による減速操作から補完減速制御への移行時における減速度変化ができるだけ小さくされるのが好ましい。
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記演算手段は、減速度変化量が所定の値以下となるように前記減速パターンを演算する。
この態様によれば、減速パターンにおける減速度変化量(即ち、ジャーク)が所定の値以下となるため、急減速のない、非常になめらかな補完減速制御を行うことができる。閾値となる所定の値は、予め設定されるようにしてもよいし、リアルタイムで演算されるような値であってもよい。尚、所定の値は、典型的には、運転者が行った減速操作による減速度(より具体的には、減速操作終了直前の減速度)とされるが、車速等に応じて適宜変更することで、より好適な減速を実現可能である。
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記演算手段は、前記減速操作が終了した時点から前記車両が前記減速目標地点に到達するまでの時間を用いて前記減速パターン演算する。
この態様によれば、減速パターンを演算する際に、減速操作が終了した時点から車両が減速目標地点に到達するまでの時間が用いられるため、減速が長時間続くことにより、減速目標地点に到達する前に車速が低下し過ぎてしまうことを防止できる。
具体的には、補完減速制御によって車両が減速し過ぎてしまう程に、減速目標地点に到達するまでの時間が長い場合には、補完減速制御時の減速度が一時的に小さくなるような箇所を含む減速パターンが演算される。これにより、減速目標地点における車速は適切なものとされる。
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記演算手段は、前記補完減速制御が開始されたことを前記運転者に認識させるために、前記補完減速制御開始直後に減速度変化量を一時的に増加させるように前記減速パターン演算する。
この態様によれば、減速パターンが、減速度変化量を一時的に増加させるようなものとして演算されるため、運転者は、補完減速制御開始直後に減速度変化量の急激な増加によるショック(即ち、車両の揺れ)を感じる。これにより、運転者は補完減速制御が開始されたことを認識する。
上述したように、補完減速制御は、運転者による減速操作を引き継ぐように行われる。このため運転者は、補完減速制御が開始されたことを認識し難い場合がある。即ち、補完減速制御が開始された場合でも、補完減速制御が開始されていないと勘違いしてしまう場合がある。これに対し本態様では、運転者に敢えてショックを与えることで、補完減速制御が開始されたことを確実に認識させることができる。よって、より好適な運転環境を実現することが可能である。
以上説明したように、本発明の各態様は、車両の減速時の制御を行うものであるが、運転者による減速行動及び減速操作を、加速行動及び加速操作(例えば、アクセルペダルの操作)に置き換えることで、発進時や加速時の支援に対しても適用可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る車両の制御装置の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図1において、本実施形態に係る車両の制御装置は、走行状態検出部100と、学習部210と、判定部220と、減速制御部230と、演算部240と、補完減速制御部250とを備えて構成されている。
走行状態検出部100は、車速検出部110、減速目標検出部120及び減速操作検出部130を含んでおり、走行中の車両における様々なパラメータを検出することが可能に構成されている。
車速検出部110は、例えば車速センサ等で構成されており、車両の走行速度を検出する。
減速目標検出部120は、例えばGPSや車載カメラ等で構成されており、カーブや交差点、一時停止線のような減速を行うべき地点を検出するものである。
減速操作検出部130は、本発明の「減速操作検出手段」の一例であり、運転者によるブレーキペダルの操作を検出する。減速操作検出部130は、ブレーキペダルが操作されたことを検出する他、ブレーキペダルの操作タイミング及び操作量を検出できるように構成されている。
学習部210は、本発明の「学習手段」の一例であり、減速目標となる地点を走行中の運転者による減速行動を学習する。尚、この際の学習とは、検出されたパラメータを記憶するだけのものでもよいし、検出されたパラメータに各種演算処理を施したうえで記憶するようなものでもよい。
判定部220は、本発明の「判定手段」の一例であり、走行状態検出部100において検出された車両の走行状態と、学習部210において学習された減速条件とを比較して、車両に対して減速制御を行うべきか否かを判定する。
減速制御部230は、本発明の「減速制御手段」の一例であり、判定部220の判定結果に応じて、車両の減速を自動的に行えるように構成されている。
演算部240は、本発明の「演算手段」の一例であり、判定部220の判定結果に応じて、後述する補完減速制御を行うための減速パターンを演算する。減速パターンは、走行状態検出部100において検出された車両の走行状態に基づいて演算される。尚、減速パターンは、目標車速や減速度等のパラメータによって規定される。
補完減速制御部250は、本発明の「補完減速制御手段」の一例であり、演算部240において演算された減速パターンに基づいて、車両の減速制御を行う。補完減速制御については、後に詳述する。
尚、上述した学習部210、判定部220、減速制御部230、演算部240及び補完減速制御部250は、例えば車両の動力源たるエンジンやその他の各部位を制御するECU(Engine Control Unit)の一部として構成されている。
次に、第1実施形態に係る車両の制御装置の学習動作について、図2を参照して説明する。ここに図2は、第1実施形態に係る車両の制御装置の学習動作の流れを示すフローチャートである。
図2において、本実施形態に係る車両の制御装置は、先ず走行中の車両において、車両が減速対象地点に接近しているか否かを判定する(ステップS01)。即ち、減速を行うべきカーブや交差点に車両が接近中であるか否かを判定する。判定は、減速目標検出部120(図1参照)において検出された減速対象地点の情報をもとにして、例えば予め設定された閾値に基づいて行われる。この閾値は、減速対象地点の種類や各種条件別に異なる値として設定されてもよい。
減速対象地点に車両が接近中であると判定されると(ステップS01:YES)、減速対象地点における運転者の減速行動を検出する。具体的には、減速操作検出部130(図1参照)において、減速タイミングの検出(ステップS02)及び減速量の検出(ステップS03)が行われる。
続いて、本実施形態に係る車両の制御装置は、学習部210(図1参照)において、検出された減速タイミング及び減速量を、減速が行われた減速対象地点と関連づけることで、その減速対象地点における運転者の減速行動を学習する(ステップS04)。尚、減速対象地点における運転者の減速行動は、運転者毎に多少異なることが考えられるため、運転者毎に学習が行われるようにするのが好ましい。
このように学習された減速対象地点における運転者の減速行動は、以下に詳述する減速制御を開始するタイミングや減速制御における減速量を決定する際に用いられる。学習動作を一度済ませてしまえば、それ以降に同じ減速対象地点を走行する際に、減速制御が自動的に行われるようになる。但し、同じ減速対象地点を走行するのが2回目以降であったとしても、再び学習動作を行うようにしてもよい。
次に、第1実施形態に係る車両の制御装置の減速制御について、図3を参照して説明する。ここに図3は、第1実施形態に係る車両の制御装置の減速制御の流れを示すフローチャートである。
図3において、運転者の減速行動を学習済みとなった車両の制御装置は、その動作時に、先ず走行中の車両において、車両が減速対象地点に接近しているか否かを判定する(ステップS11)。即ち、学習時と同様に(ステップS01参照)、減速を行うべきカーブや交差点に車両が接近中であるか否かを判定する。尚、ステップS11の判定に用いられる閾値は、ステップS01の判定に用いられる閾値と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。また、対象となる減速対象地点は、学習した際に走行した減速対象地点と同一でなくともよく、例えばカーブのRや道幅等の各種条件が類似した減速対象地点であってもよい。
減速対象地点に車両が接近中であると判定されると(ステップS11:YES)、学習した運転者の減速行動に基づいて、装置による減速制御を行うべきか否かを判定する(ステップS12)。この判定は、判定部220(図1参照)によって行われる。判定部220は、走行状態検出100において検出される車速や減速対象地点までの距離と、学習された減速行動から導き出される減速条件とを比較することで、減速セ氏魚を行うべきか否かを判定する。
車両の走行状態が減速制御を行うべき走行状態であると判定されると(ステップS12:YES)、減速制御部230が、学習した減速行動に応じた減速制御を行う(ステップS13)。減速制御では、学習した際に行われた運転者による減速行動を模擬するような減速が自動的に行われる。従って、車両は減速対象地点への接近に合わせて好適に減速され、運転者は自ら減速行動を行わずに済む。
一方で、車両の走行状態が減速制御を行うべき走行状態でないと判定されると(ステップS12:NO)、減速操作検出部130は、運転者による減速操作が検出されたか否かを判定する(ステップS14)。更に、減速操作が検出された場合には(ステップS14:YES)、減速対象地点に対応した減速目標とされる減速目標地点までの距離が所定距離以下であるか否かを判定する(ステップS15)。
尚、ここでの「所定距離」は、減速目標地点から遠く離れた地点において後述する補完減速制御が行われるのを防止するための閾値であり、装置が搭載される車両の仕様や運転者の減速行動の傾向、或いは車速等に基づいて適宜設定される。また、補完減速制御が不適切な条件下で行われるのを防止するための判定として、減速目標地点までの間に他の減速対象地点があるか否かという判定を用いることもできる。この場合、本来の減速目標地点以外の地点に対する減速操作を検出して補完減速制御が行われてしまうことを防止できる。
運転者による減速操作が検出されない場合(ステップS14:NO)及び減速目標地点までの距離が所定距離以下でない場合(ステップS15:NO)、処理はステップS12へと戻り、再び車両の走行状態が減速制御を行うべき走行状態であるか否かが判定される。即ち、上述したステップS14及びステップS15の判定処理は、通常の減速制御(ステップS13)が行われるか、或いは運転者による減速操作が検出されるまで繰り返し行われる。
減速目標地点までの距離が所定距離以下である場合(ステップS14:YES)、運転者による減速操作の終了が検出されると(ステップS16:YES)、演算部240が、補完減速制御を行うための減速パターンを演算する。そして補完減速制御部250は、演算された減速パターンに基づいて、補完減速制御を行う(ステップS18)。
減速パターンは、例えば車両の減速度によって表すことができる。この際の減速度aは、減速操作終了時点の車速をV0、減速目標地点における車速(即ち、目標車速)をV、減速目標地点までの距離をxとして以下の数式(1)で求めることができる。
a=(V02−V2)/2x ・・・(1)
このような計算式によれば、比較的簡単な方法で減速パターンを演算することが可能である。
次に、上述した補完減速制御について、図4から図6を参照して、より具体的に説明する。
ここに図4は、第1実施形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の走行時の各パラメータの変化を示すグラフである。また図5及び図6は夫々、比較例に係る車両の制御装置を搭載した車両の走行時の各パラメータの変化を示すグラフである。
図4において、例えば減速目標地点までの残距離がL1の地点で運転者による減速操作が行われ、残距離L2の地点で減速操作が終了されたとする。この場合、減速操作が終了した残距離L2となる地点から、減速度aで補完減速制御が行われる。これにより、減速目標地点における車速は自動的に目標速度V0となる。
図5において、上述した補完減速制御が行われない場合を考えると、減速操作が終了した残距離L2となる地点では、車速が減速制御条件を下回っているため通常の減速制御は行われない。そして、車速が減速条件となる残距離L3の地点において減速制御制御が行われることとなる。このような場合、残距離がL2となる地点からL3となる地点までの減速は行われないため、車両の減速度の変化が頻繁に起こってしまう。
これに対し、本実施形態に係る車両の制御装置では、図4に示したように、補完減速制御が、運転者の操作が終了する残距離L2の時点から行われる。即ち、運転者の減速行動を引き継ぐように、装置による補完減速制御が行われる。従って、減速度の変化を抑えたスムーズな減速を実現することができる。
図6において、図5に示した場合と同様に補完減速制御が行われない場合には、装置による減速制御が行われる前に、運転者が再び減速操作を行ってしまうおそれがあると考えられる。具体的には、残距離L2の地点において減速操作を終了した運転者が、残距離L4の地点において、自らの減速操作によって装置による減速制御がキャンセルされてしまったと勘違いし、再び自らが減速操作を行ってしまう。この場合、装置による減速制御は全く行われず、せっかくの減速支援機能の効果が発揮されない。
これに対し、本実施形態に係る車両の制御装置では、図4に示したように、運転者の減速操作が終了する残距離がL2の地点から補完減速制御が開始される。従って、運転者の勘違いを防止し、確実に減速支援機能の効果を発揮することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両の制御装置によれば、運転者が早めの減速行動をとった場合においても、好適に減速制御を実行可能である。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る車両の制御装置について、図7から図10を参照して説明する。ここに図7及び図9は夫々、第2実施形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の走行時の各パラメータの変化を示すグラフである。また図8及び図10は夫々、第2実施形態に係る車両の制御装置における減速パターンの演算方法の一例を示すグラフである。
尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、減速パターンの演算方法が異なり、装置構成やその他の動作については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
図7において、第2実施形態に係る車両の制御装置では、補完減速制御開始時の減速度が、その直前まで行われていた運転者による減速操作の減速度aと同じ値(或いは、できる限り近い値)となるように減速パターンが演算される。加えて第2実施形態では、車両が減速目標地点に近づく程に、補完減速制御による減速度が小さくなる。このため、よりスムーズな減速が行えるようになる。
図8において、第2実施形態に係る減速パターンの演算方法を具体的に説明する。図8では、運転者によるブレーキ操作の減速度aを引き継いで(即ち、同じ減速度aで)補完減速制御を行うと、減速目標地点到達までに車速が目標速度V0を下回ってしまう場合を示している(直線A参照)。
上述した場合には、走行中の車両の車速が、運転者による運転操作の減速度aを引き継いだ場合の車速の変化を示す傾きaの直線A、及び車速=V0を示す直線Bの両方を接線とする円の弧を描くような減速パターンとすればよい。
図9において、図7及び図8で示すような状況とは逆に、運転者によるブレーキ操作の減速度a’を引き継いで補完減速制御を行うと、減速目標地点到達時の車速が目標速度V0を上回ってしまう場合を考える。この場合、減速度a’で補完減速制御を続けただけでは目標速度V0を実現できないため、図に示すように、減速度が一時的に大きくされる。
図10において、図9に示すような状況下での減速パターンの演算方法を具体的に説明する。この場合には、先ず運転者による運転操作の減速度a’を引き継いだ場合の車速の変化を示す傾きa’の直線Cと、減速目標地点までの残距離=0を示す直線との交点Pを中心として、車速=V0を示す直線Bを接線とする円Kを考える。次に、円Kと、残距離0の時に車速が目標速度V0となる点を通る傾きa’の直線Dとの交点Qにおける、円Kの接線Eを描く。そして、車両の車速が、運転者による運転操作の減速度a’を引き継いだ場合の車速の変化を示す直線C、及び直線Eの両方を接線とする円の弧を描くような減速パターンとすればよい。尚、点Q以降の車速は、円Kの弧となる。
上述したような導出方法によれば、比較的簡単に減速パターンを求めることができ、より好適な補完減速制御が行える。但し、上述した減速パターンの導出例はあくまで一例であり、異なる導出方法を用いた場合でも本実施形態の効果を実現することは可能である。
以上説明したように、第2実施形態に係る車両の制御装置によれば、上述した第1実施形態と同様に、運転者が早めの減速行動をとった場合においても、好適に減速制御を実行可能である。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る車両の制御装置について、図11を参照して説明する。ここに図11は、第3実施形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の走行時の各パラメータの変化を示すグラフである。
尚、第3実施形態は、上述の第1及び第2実施形態と比べて、減速パターンの演算方法が異なり、装置構成やその他の動作については概ね同様である。このため第3実施形態では、第1及び第2実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
図11において、第3実施形態では、運転者による減速操作が開始された際の残距離L5及び終了された際の残距離L6が、上述した第1及び第2実施形態における残距離L1及びL2よりも長い場合について説明する。即ち、運転者の減速操作が、減速目標地点から比較的離れた地点において行われた場合について説明する。
この場合には、運転者によるブレーキ操作の減速度aを引き継いで減速度aのまま補完減速制御を行うと、減速目標地点到達までの距離が離れているため、必要以上に車速が低下してしまうおそれがある。このため第3実施形態では、図に示すように、引き継いだ減速度aを一旦ゼロまで減らした後に、再度減速度を増加させるような補完減速制御を行う。このような補完減速制御を実現する減速パターンは、例えば車両が減速目標地点に到達するまでの時間を考慮して求められる。
また第3実施形態では特に、減速度を再度増加させた際に、減速度が運転者によるブレーキ操作の減速度aを超えないように減速パターンが求められている。従って、車両の減速度が、運転者が違和感を覚えてしまうまでに大きくなってしまうことを防止できる。
以上説明したように、第3実施形態に係る車両の制御装置によれば、上述した第1及び第2実施形態と同様に、運転者が早めの減速行動をとった場合においても、好適に減速制御を実行可能である。
<変形例>
上述した第1から第3実施形態では、減速制御が運転者のブレーキ操作の減速度aをそのまま引き継ぐような場合を例に挙げている。しかしながら、このような減速制御を行った場合には、運転者に対して、ブレーキを離したのに離れていない(言い換えれば、固着している)ような違和感を与えてしまうおそれがある。このため、運転者によるブレーキ操作の減速度aよりも小さい減速度を引き継ぐように減速制御を行ってもよい。
以下では、車両の制御装置がブレーキ操作の減速度aとは異なる減速度b(但し、a>b)を引き継ぐ場合について、図12及び図13を参照して説明する。ここに図12及び図13は夫々、変形例に係る車両の制御装置を搭載した車両の走行時の各パラメータの変化を示すグラフである。
図12に示すような変形例では、運転者の減速操作が終了すると、即座に、減速度bでの減速制御が行われる。即ち、減速度が離散的に変更される。
図13に示すような変形例では、運転者の減速操作が終了すると、減速度aから減速度bへの移行が行われた後、減速度bでの減速制御が行われる。即ち、減速度が連続的に変更される。
図12及び図13で示したような減速制御を行えば、上述したような運転者に違和感を与えてしまうようなケースを防止することができる。尚、減速度bは、例えば運転者のブレーキ操作の減速度aに対して、所定の演算処理を施すことによって算出される。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係る車両の制御装置について、図14を参照して説明する。ここに図14は、第4実施形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の走行時の各パラメータの変化を示すグラフである。
尚、第4実施形態は、上述の第1から第3実施形態と比べて、減速パターンの演算方法が異なり、装置構成やその他の動作については概ね同様である。このため第4実施形態では、第1から第3実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
図14において、第4実施形態に係る車両の制御装置では、補完減速制御を開始する際に、減速度が一時的に急激に増加するように減速パターンが求められている(図中の円で囲まれた部分を参照)。このため、運転者は、補完減速制御開始直後に減速度の急激な増加によるショック(即ち、車両の揺れ)を感じる。これにより、運転者は補完減速制御が開始されたことを認識する。
上述した第1から第3実施形態でも説明したように、補完減速制御は、運転者による減速操作の減速度aを引き継ぐように行われる。このような減速制御を行う場合、運転者は、補完減速制御が開始されたことを認識し難いことがある。即ち、補完減速制御が開始された場合でも、補完減速制御が開始されていないと勘違いしてしまう場合がある。
これに対し第4実施形態に係る車両の制御装置では、運転者に敢えてショックを与えることで、補完減速制御が開始されたことを確実に認識させることができる。よって、より好適な運転環境を実現することが可能である。尚、減速度が一時的に増加された後は、運転者による減速操作の減速度aを引き継ぐような補完減速制御が行われる。
また、運転者に補完減速制御の開始を認識させる方法としては、上述したショックを与える方法以外にも、例えば音や画面表示等による方法がある。即ち、補完減速制御の開始と共に、警告音を鳴らしたり、ナビゲーションシステム等の画面に補完減速制御開始を知らせる表示を行ったりしてもよい。
以上説明したように、第4実施形態に係る車両の制御装置によれば、上述した第1から第3実施形態と同様に、運転者が早めの減速行動をとった場合においても、好適に減速制御を実行可能である。
尚、上述した第1から第4実施形態では、車両の制御装置が減速時の制御を行う場合について説明しているが、運転者による減速行動及び減速操作を、加速行動及び加速操作に置き換えることで、発進時や加速時の支援に対しても適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。