JP5492155B2 - コイル型電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、コイル型電子部品に関し、特に、回路基板上への面実装が可能な小型化されたコイル型電子部品に適した軟磁性合金を用いたコイル型電子部品に関する。
従来、高周波で用いられるチョークコイルの磁性コアとして、フェライトコアや金属薄板のカットコアや、圧粉磁芯が使用されている。
フェライトに比較して、金属磁性体を用いると、高い飽和磁束密度を得られる利点がある。一方、金属磁性体そのものは、絶縁性が低いので、絶縁処理を施す必要がある。
特許文献1には、表面酸化被膜を有するFe−Al−Si粉末と結着剤からなる混合物を圧縮成形後、酸化性雰囲気中で熱処理することが提案されている。該特許文献によれば、酸化性雰囲気中で熱処理することで、圧縮成形時に合金粉末表面の絶縁層が破れたところに酸化層(アルミナ)を形成して、低いコア損失で良好な直流重畳特性を持つ複合磁性材料が得られるとしている。
特許文献2には、金属磁性体粒子を主成分とし、ガラスを含有する金属磁性体ペーストを用いて形成される金属磁性体層と、銀等の金属を含有する導体ペーストを用いて形成される導体パターンを積層して、積層体内にコイルパターンが形成された積層型電子部品、そして、この積層型電子部品は窒素雰囲気中において400℃以上の温度で焼成されていることが記載されている。
特開2001−11563号公報 特開2007−27354号公報
特許文献1の複合磁性材料では、あらかじめ表面に酸化被膜を形成したFe−Al−Si粉末を使用して成形を行うので、圧縮成形時には大きな圧力が必要であった。
また、パワーインダクタのような、より大きな電流を流す必要がある電子部品に適用する場合においては、さらなる小型化に十分応えられるものではない、という課題があった。
また、特許文献2の積層型電子部品では、金属磁性体粒子を均一にガラス被覆する制御が必要であり、窒素雰囲気を利用しなければならず、生産コストが上がる課題があった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、低コストにて生産することができ、かつ、高い透磁率と高い飽和磁束密度の両方の特性を兼ね備えた磁性体を備えたコイル型電子部品を提供するものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、鉄、ケイ素および鉄より酸化しやすい元素を含有する軟磁性合金の粒子と結合材とを混合して成形し、その成形体を酸素雰囲気で熱処理して結合材を分解させ、軟磁性合金の粒子の表面を酸化させ酸化層を形成させると、熱処理前の透磁率よりも熱処理後の透磁率が高くなるという現象を見出した。そして、その熱処理した成形体は酸化層を介して軟磁性合金の粒子同士が結合されていることが見出された。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
(1)素体の内部あるいは表面にコイルを有するコイル型電子部品であって、
素体は、鉄、ケイ素および鉄より酸化しやすい元素であるクロムを含有する軟磁性合金の粒子(「合金粒子」、「軟磁性体粒子」ともいう)群から構成され、各軟磁性合金粒子の表面には、当該粒子と結合材の混合物からなる成形体の熱処理により当該粒子を酸化して形成した酸化層が生成され、当該酸化層は当該合金粒子に比較してクロムを多く含み、粒子同士は当該酸化層を介して結合されおり、かつ、前記粒子同士を結合している前記酸化層は同一の相であることを特徴とするコイル型電子部品。
(2)軟磁性体粒子同士を結合する部分の酸化層の厚みは、結合に関与しない軟磁性体粒子表面の酸化層よりも厚いことを特徴とする(1)に記載のコイル型電子部品。
(3)軟磁性体粒子同士を結合する部分の酸化層の厚みは、結合に関与しない軟磁性体粒子表面の酸化層よりも薄いことを特徴とする(1)に記載のコイル型電子部品。
(4)軟磁性体粒子のうち少なくとも一部は50nm以上の厚さをもつ酸化層を有する粒子であることを特徴とする(1)または(2)に記載のコイル型電子部品。
(5)前記軟磁性合金は、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%の組成であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のコイル型電子部品。
(6)軟磁性体粒子の算術平均粒径は、30μm以下であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載のコイル型電子部品。
(7)前記酸化層は、前記軟磁性体粒子側から見て外側に向かって、
前記鉄成分の含有量が低下し、且、前記クロムの含有量が増加する第一の酸化層と、
前記鉄成分の含有量が増加し、且、前記クロムの含有量が低下する第二の酸化層と、
をこの順番で含むことを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載のコイル型電子部品。
(8)前記軟磁性体粒子側から見て外側に向かって、
前記第一の酸化層にて、前記クロムの含有量について変曲点を有することを特徴とする(7)に記載のコイル型電子部品。
(9)走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によるZAF法で算出した鉄に対するクロムのピーク強度比が前記粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きい酸化層であることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載のコイル型電子部品。
(10)前記コイルは、その端部が前記素体の表面に形成された導体膜と電気的に接続されていることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載のコイル型電子部品。
(11)前記コイルが、素体の内部に形成されたコイル導体であることを特徴とする請求項1から(10)のいずれかに記載のコイル型電子部品。
(12)コイル導体は、導体パターンであり、素体と同時に焼成された導体であることを特徴とする(11)に記載のコイル型電子部品。
本発明によれば、各軟磁性体粒子の絶縁層として、当該粒子を酸化して形成した酸化層を用いているので、絶縁のために、樹脂、ガラスを軟磁性体粒子に混合する必要がない。また、あらかじめ表面に酸化処理したFe−Al−Si粉末と比較して、成形時に大きな圧力をかける必要がない。そのため、低コストにて生産することができ、かつ、高い透磁率と高い飽和磁束密度の両方の特性を兼ね備えた磁性体を得ることができる。
本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の第1の実施形態を示す側面図である。 第1の実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の断面の拡大模式図である。 第1の実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体を走査型電子顕微鏡を用いてエネルギー分散型X線分析で分析した結果を示す図である。 第1の実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体をX線回折分析装置を用いて酸化層を分析した結果を示す図である。 第1の実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体を走査型電子顕微鏡を用いてエネルギー分散型X線分析で線分析した結果を示す図である。 本発明のコイル型電子部品の第1の実施形態を示す一部を透視した側面図である。 第1の実施形態のコイル型電子部品の内部構造を示す縦端面図である。 本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の実施形態の変形例の一例を示す内部構造の透視図である。 本発明の電子部品の実施形態の変形例の一例を示す内部構造の透視図である。 本発明の実施例の3点曲げ破断応力の試料測定方法を示す説明図である。 本発明の実施例の体積抵抗率の試料測定方法を示す説明図である。
本明細書において「粒子を酸化して形成した酸化層」は粒子の自然酸化以上の酸化反応により形成された酸化層であり、粒子による成形体を酸化性雰囲気で熱処理することにより粒子の表面と酸素とを反応させ成長させた酸化層をいう。なお、「層」は組成上、構造上、物性上、外観上、及び/又は製造工程上等によりほかと識別できる層であり、その境界は明確であるもの、明確でないものを含み、また、粒子上で連続膜であるもの、一部に非連続部分を有するものを含むものである。ある態様では、「酸化層」は粒子全体を被覆する連続酸化膜である。また、このような酸化層は本明細書で特定されるいずれかの特徴を有するものであり、粒子の表面の酸化反応により成長した酸化層は、別の方法により被覆された酸化膜層と識別され得るものである。また、本明細書において「より多い」、「よりし易い」等比較を表す表現は実質的な差異を意味し、機能、構造、作用効果において有意な差異を奏する程度の差異を意味する。
以下、本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の第1の実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の外観を示す側面図である。
本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10は、巻線型チップインダクタのコイルを巻回するためのコアとして用いられるものである。ドラム型のコア11は、回路基板等の実装面に並行に配設されコイルを巻回するための板状の巻芯部11aと、巻芯部11aの互いに対向する端部にそれぞれ配設された一対の鍔部11b、11bを備え、外観はドラム型を呈する。コイルの端部は、鍔部11b、11bの表面に形成された外部導体膜14に電気的に接続されている。
本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10は、鉄(Fe)、ケイ素(Si)および鉄より酸化しやすい元素を含有する軟磁性合金の粒子群から構成され、各軟磁性体粒子の表面は当該粒子が酸化した酸化層が形成され、当該酸化層は当該合金粒子に比較してクロムを多く含み、粒子同士は、当該酸化層を介して結合されていること特徴とする。
以下の記載は、元素名または、元素記号にて記す。
図2は、本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の断面の拡大模式図であり、素体の厚さ方向の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて3000倍で撮影して得られた組成像に基づいて作成したものである。
上記の模式図における複数の粒子、および酸化層の識別は、以下のようにして行うことができる。まず、素体の中心を通る厚さ方向の断面が露出するように研磨し、得られた断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影して組成像を得る。
走査型電子顕微鏡(SEM)では、構成元素の違いにより、組成像にコントラスト(明度)の違いとして表れる。
次に、上記で得られた組成像について、各画素を3段階の明度ランクに分類する。明度ランクは、上記組成像中で粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち、各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子(酸化層が形成されていない原料としての合金粒子)の平均粒径(d50%)より大きい粒子の組成コントラストを中心明度ランクとし、上記組成像中でこの明度ランクに該当する部分は粒子1と判断することができる。また、組成コントラストが上記中心明度ランクより暗い明度ランクの部分は酸化層2と判断することができる。なお、望ましくは、複数測定する。
また、上記中心明度ランクより明るい明度ランクの部分は空孔3と判断することができる。
酸化層2の厚みの測定は、粒子と酸化層2の境界面から、酸化層2と空孔3との境界面までの最短距離を酸化層2の厚みとすることにて、求めることができる。
酸化層2の厚みは、具体的には以下のように求めることができる。素体10の厚さ方向の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて1000倍ないし3000倍で撮影し、得られた組成像の1粒子について画像処理ソフトウェアを用いて重心を求め、その重心点から半径方向にEDS(エネルギー分散型X線分析装置)で線分析を行う。酸素濃度が重心点での酸素濃度の3倍以上の領域を酸化物と判定し(即ち、測定のブレを考慮し3倍を閾値としそれ未満は非酸化層と判定するということであり、実際の酸化層の酸素濃度は100倍以上にもなり得る)、粒子外周部までを酸化層2の厚みとして測長する。ある態様においては、酸化層の領域は本明細書で記載するいずれかの方法(明度ランクによる識別法、酸素濃度による識別法、後述する組成比による識別法、ピーク強度比による識別法等)、あるいはその他酸素元素の存在(濃度)と関連付けられる公知のいずれかの方法から、適宜、評価方法を選択して画定することができる。
なお、ある態様では、酸化層を有する軟磁性体粒子の平均粒径は、原料粒子(成形、熱処理前の粒子)の平均粒径と実質的にあるいはほぼ同じである。
合金粒子の表面に形成された酸化層2の厚みは、1つの合金粒子においても、部分により異なる厚みとすることができる。
態様として、全体として、合金粒子表面の酸化層(空孔3に隣接する酸化層)よりも厚い酸化層で結合されている合金粒子同士とすることで、高強度の効果を得られる。
また別の態様として、全体として、合金粒子表面の酸化層(空孔3に隣接する酸化層)よりも薄い酸化層で結合されている合金粒子同士とすることで、高透磁率の効果を得られる。
さらに別の態様として少なくとも軟磁性体粒子群の一部は、50nm以上の厚さをもつ酸化層(表面酸化層として)を部分的に有する粒子である。
本発明において、前記粒子同士を結合している前記酸化層は、同一の相である。同一の相とは、粒子間の酸化層中に空隙が実質的に無く(酸化層が隣接する空孔以外には)同一の結晶より構成され連続的に結合していることであり、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。また、結晶の構造は、図4に示すようにX線回折分析装置により確認することができる。
酸化層の構造、組成、厚み等は、後述するように、原料粒子の組成、粒子間の距離(充填率)、熱処理温度、熱処理時間、熱処理雰囲気中の酸素量等により制御することができる。酸化層の厚みは、粒子間でもばらつくが、ある態様では、実質的に全ての或いはほとんどの酸化層は10〜200nmの範囲で厚みを有する。
別の態様として、前記酸化層は、前記合金粒子側から見て、前記鉄成分の含有量が低下し、且、前記酸化しやすい元素の含有量が増加する第一の酸化層と、前記鉄成分の含有量が低下し、且、前記酸化しやすい元素の含有量が低下する第二の酸化層と、を含むことが好ましい。
さらに、前記合金粒子側から見て、前記第一の酸化層にて、前記クロム(Cr)の含有量について変曲点(すなわち、含有量の変化を示す線の傾きがゼロの点)を有することがより好ましい。なお、第一の酸化層と第二の酸化層との境界は明瞭でもよいし、曖昧でもよい。
この構造は、図5に示すようにEDS(エネルギー分散型X線分析装置)にて確認でき、飽和磁束密度の低下を抑制する効果が得られる。
上記電子部品用軟磁性合金を用いた素体における粒子の組成比は次のようにして確認することができる。まず、原料粒子を粒子の中心を通る断面が露出するように研磨し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影した組成像について、粒子の中心付近の1μm□の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出する。次に、上記電子部品用軟磁性合金素体のほぼ中心を通る厚さ方向の断面が露出するように研磨し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影した組成像中から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子の平均粒径(d50%)より大きい粒子を抽出し、その長軸と短軸の交点付近の1μm□の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出し、これを上記原料粒子における組成比と対比することで上記電子部品用軟磁性合金を用いた素体中の合金粒子の組成比を知ることができる(原料粒子の組成は公知であるためZAF法で算出された組成同士を比較することで素体中の合金粒子の組成を求めることができる)。
上記電子部品用軟磁性合金を用いた素体における酸化層の厚さは、上記方法で同定した粒子1,1の表面に存在する酸化層の粒子1の表面からの厚さの最厚部の厚さt1と最薄部の厚さt2の単純平均から求めた平均厚さT=(t1+t2)/2とした。
本発明の一つの態様として、酸化しやすい元素の例として、クロムの態様をあげる。
本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10は、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%を含有する複数の粒子1,1と、粒子1の表面に生成された酸化層2を備える。酸化層2は、少なくとも鉄及びクロムを含み、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による鉄に対するクロムのピーク強度比R2が粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比R1よりも実質的に大きい(例えばR2はR1の数倍以上、数十倍以上)。また、複数の粒子間には、空孔3が存在する箇所もある。
上記電子部品用軟磁性合金素体について、前記酸化層2における鉄に対するクロムのピーク強度比R2と、前記粒子1における鉄に対するクロムの強度比R1は、それぞれ次のようにして求めることができる。まず、上記組成像における粒子1の内部の長軸d1と短軸d2とが交わる点を中心とした1μm□の組成をSEM−EDSで求める。次に、上記組成像における粒子1の表面の酸化層2の最厚部の厚さt1と最薄部の厚さt2から平均厚さT=(t1+t2)/2に相当する酸化層厚さの部位における酸化層の厚さの中心点を中心とした1μm□の組成についてSEM−EDSで求める。そして、粒子1の内部における鉄の強度C1FeKa、クロムの強度C1CrKaより、鉄に対するクロムのピーク強度比R1=C1CrKa/C1FeKaを求めることができる。また、酸化層2の厚さの中心点における鉄の強度C2FeKa、クロムの強度C2CrKaより、鉄に対するクロムのピーク強度比R2=C2CrKa/C2FeKaを求めることができる。
また、本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体において、隣接する粒子1,1の表面に生成された酸化層を介して結合されていることは、上記組成像に基づいて作成される図2に示されるような模式図より確認することができる。また、隣接する粒子1,1の表面に生成された酸化層を介して結合されていることは、電子部品用軟磁性合金を用いた素体の磁気特性、強度の向上として現れる。
本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体を製造するには、態様の一つとして、最初に、クロム、ケイ素、鉄含有する原料粒子に例えば熱可塑性樹脂などの結合剤を添加し、攪拌混合させて造粒物を得る。次に、この造粒物を圧縮成形して成形体を形成し、得られた成形体を大気中で400〜900℃で熱処理する。この大気中で熱処理を行うことで、混合した熱可塑性樹脂を脱脂するとともに、もともと粒子中に存在し熱処理により表面に移動してきたクロムと、粒子の主成分である鉄を酸素と結合させながら、金属酸化物からなる酸化層を粒子表面に生成させ、かつ隣接する粒子の表面の酸化層同士を結合させる。生成された酸化層(金属酸化物層)は、主にFeとクロムからなる酸化物であり、粒子間の絶縁を確保し電子部品用軟磁性合金を用いた素体を提供することができる。
原料粒子の例としては、水アトマイズ法で製造した粒子、原料粒子の形状の例として、球状、扁平状があげられる。
本発明において、酸素雰囲気下にて熱処理温度をあげると結合剤は分解し、軟磁性合金体は酸化される。このため、成形体の熱処理条件として、大気中、400〜900℃で、1分以上保持することが好ましい。この温度範囲内で熱処理を行うことで、優れた酸化層を形成することができる。より好ましくは、600〜800℃である。大気中以外の条件、例えば、酸素分圧が大気と同程度の雰囲気中で熱処理してもよい。還元雰囲気又は非酸化雰囲気では、熱処理により金属酸化物からなる酸化層の生成が行われないため、粒子同士が燒結し体積抵抗率は著しく低下する。
雰囲気中の酸素濃度、水蒸気量については特に限定されないが、生産面から考慮すると、大気あるいは乾燥空気であることが望ましい。
熱処理温度が400℃を越えると優れた強度と優れた体積抵抗率を得ることができる。
一方、熱処理温度が、900℃を超えると、強度は増加するものの、体積抵抗率の低下が発生する。
上記熱処理温度中の保持時間は、1分以上とすることによりFeとクロムを含む金属酸化物からなる酸化層が生成されやすい。酸化層厚は一定値で飽和するため保持時間の上限はあえて設定しないが、生産性を考慮し2時間以下とすることが妥当である。
以上のとおり、熱処理条件を、上記範囲とすることで優れた強度と優れた体積抵抗率を同時に満たし、酸化層を有する軟磁性合金を用いた素体とすることができる。
つまり、熱処理温度、熱処理時間、熱処理雰囲気中の酸素量等により、酸化層の形成を制御している。
本発明の電子部品用軟磁性合金素体においては、上記の処理を鉄−ケイ素−鉄よりも酸化しやすい元素の合金粉に適用することで、高い透磁率と高い飽和磁束密度とを得ることができる。そして、この高い透磁率により、従来に比べてより小型の軟磁性合金素体でより大きい電流を流すことが可能な電子部品を得ることができる。
そして、軟磁性合金の粒子を樹脂またはガラスで結合させたコイル部品と異なり、樹脂もガラスも使わず、大きな圧力をかけて成形することもないので低コストにて生産することができる。
また、本実施形態の電子部品用軟磁性合金素体においては、高い飽和磁束密度を維持しつつ、大気中の熱処理後においても、素体表面へのガラス成分等の浮き出しが防止され、高い寸法安定性を有する小型のチップ状電子部品を提供することができる。
次に、本発明の電子部品の第1の実施形態について、図1、図2、図6および図7を参照して説明する。図1および図2は先の電子部品用軟磁性合金素体の実施形態と重複するので説明を省略する。図6は、本実施形態の電子部品を示す一部を透視した側面図である。また、図7は、本実施形態の電子部品の内部構造を示す縦断面図である。本実施形態の電子部品20は、コイル型電子部品として巻線型チップインダクタである。上述した電子部品用軟磁性合金を用いた素体10であるドラム型のコア11と、前記素体10からなり、ドラム型のコア11の両鍔部11b、11b間をそれぞれ連結する図示省略した一対の板状コア12,12を有する。コア11の鍔部11b、11bの実装面には一対の外部導体膜14,14がそれぞれ形成されている。また、コア11の巻芯部11aには絶縁被覆導線からなるコイル15が巻回されて巻回部15aが形成されるとともに、両端部15b、15bが鍔部11b、11bの実装面の外部導体膜14,14にそれぞれ熱圧着接合されている。外部導体膜14,14は、素体10の表面に形成された焼付導体層14aと、この焼付導体層14a上に積層形成されたNiメッキ層14b、およびSnメッキ層14cを備える。上述した板状コア12,12は、樹脂系接着剤によりドラム型のコア11の鍔部11b、11bに接着されている。
本実施形態の電子部品20は、クロム、ケイ素、鉄を含有する複数の粒子と、該粒子の表面に生成され、少なくとも鉄及びクロムを含み、走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によりZAF法で算出した鉄に対するクロムのピーク強度比が前記粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きい酸化層と、を備え、隣接する前記粒子の表面に生成された酸化層同士が結合されている上述した電子部品用軟磁性合金を用いた素体10をコア11として備える。また、素体10の表面には、少なくとも一対の外部導体膜14,14が形成されている。本実施形態の電子部品20における電子部品用軟磁性合金を用いた素体10については上述と重複するので説明を省略する。
コア11は、少なくとも巻芯部11aを有し、巻芯部11aの断面の形状は、板状(長方形)、円形、楕円をとることができる。
さらに、前記巻芯部11aの端部に少なくとも鍔部11を有することが好ましい。
鍔部11があると、巻芯部11aに対するコイルの位置を鍔部11で制御しやすくなり、インダクタンスなどの特性が安定する。
コア11の態様は、一つの鍔を有する態様、二つ鍔を有する態様(ドラムコア)、巻芯部11aの軸長方向を実装面に対して垂直に配置する態様、水平に配置する態様がある。
特に、巻芯部11aの軸の一方のみに鍔を有し、巻芯部11aの軸長方向を実装面に対して垂直に配置した態様は、低背化をするのに好ましい。
外部導体膜14は、電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の表面に形成されており、前記外部導体膜14に前記コイルの端部が接続されている。
外部導体膜14は、焼き付け導体膜、樹脂導体膜がある。電子部品用軟磁性合金素体10への焼き付け導体膜の形成例としては、銀にガラスを添加したペーストを、所定の温度で焼き付ける方法がある。電子部品用軟磁性合金を用いた素体10への樹脂導体膜の形成例としては、銀とエポキシ樹脂とを含有するペーストを塗布し、所定の温度処理する方法がある。焼き付け導体膜の場合、導体膜形成後、熱処理できる。
コイルの材質としては、銅、銀がある。コイルに絶縁被膜を施すことが好ましい。
コイルの形状としては、平角線、角線、丸線がある。平角線、角線の場合、巻き線間の隙間を小さくできるため、電子部品の小型化をするのに好ましい。
本実施形態の電子部品20における電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の表面の外部導体膜14,14の焼付導体膜層14aは、具体的な例としては、以下のようにして形成することができる。
上述した素体10であるコア11の鍔部11b、11bの実装面に、金属粒子とガラスフリットとを含む焼付型の電極材料ペースト(本実施例では焼付型Agペースト)を塗布し、大気中で熱処理を行うことで、素体10の表面に直接電極材を焼結固着させる。またさらに、形成された焼付導体膜層14aの表面に電解メッキでNi,Snの金属メッキ層を形成してもよい。
また、本実施形態の電子部品20は、態様の一つとして以下の製造方法によっても得ることができる。
具体的な組成の例として、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%を含有する原料粒子と結合剤とを含む材料を成形し、得られた成形体の少なくても実装面となる表面に金属粉末とガラスフリットを含む焼付型の電極材料ペーストを塗布した後、得られた成形体を大気中400〜900℃で熱処理する。またさらに、形成された焼付導体層上に金属メッキ層を形成してもよい。この方法によれば、粒子の表面に酸化層が生成されるとともに隣接する粒子の表面の酸化層同士が結合された電子部品用軟磁性合金素体とこの素体の表面の導体膜の焼付導体層とを同時に形成することができ、製造プロセスを簡略化することができる。
鉄よりもクロムの方が酸化しやすいので、純鉄に比較して、酸化雰囲気で熱を加えたときに、鉄の酸化が進みすぎることを抑制できる。クロム以外としてアルミニウムをあげることができる。
次に、本発明の電子部品用軟磁性合金素体の実施形態の変形例について、図8を参照して説明する。図8は、変形例の一例の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10’を示す内部構造の透視図である。本変形例の素体10’は、外観が直方体状を呈し、内部には蔓巻螺旋状に巻回された内部コイル35が埋設されており、内部コイル35の両端部の引出部がそれぞれ素体10’の互いに対向する一対の端面に露出されている。素体10’は、内部に埋設された内部コイル35とともに積層体チップ31を構成する。本変形例の電子部品用軟磁性合金素体10’は、先の第1の実施形態の電子部品用軟磁性合金素体10と同様に、クロム、ケイ素、鉄を含有する複数の粒子と、粒子の表面に生成され、少なくとも鉄及びクロムを含み、走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による鉄に対するクロムのピーク強度比が粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きい酸化層と、を備え、隣接する粒子の表面に生成された酸化層同士が結合されていることを特徴とする。
本変形例の電子部品用軟磁性合金素体10’においても、先の第1の実施形態の電子部
品用軟磁性合金素体10と同様の作用・効果を有する。
次に、本発明の電子部品の実施形態の変形例について、図9を参照して説明する。図9は、変形例の一例の電子部品40を示す内部構造の透視図である。本変形例の電子部品40は、上述した変形例の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10’の互いに対向する一対の端面およびその近傍に、内部コイル35の露出された引出部と接続するように形成された一対の外部導体膜34、34を備える。外部導体膜34,34は、図示省略するが、先の第1の実施形態の電子部品20の外部導体膜14,14と同様に、焼付導体層と、この焼付導体層上に積層形成されたNiメッキ層、Snメッキ層を備える。本変形例の電子部品40においても、先の第1の実施形態の電子部品20と同様の作用・効果を有する。
さらに、本発明における電子部品用軟磁性合金素体を構成する複数の粒子の組成は、2≦クロム≦8wt%で、かつ、1.5≦ケイ素≦7wt%、88≦鉄≦96.5%を含有とすることが好ましい。この範囲のとき、本発明の電子部品用軟磁性合金素体は、さらに、高い強度と高い体積抵抗率を示す。
一般的に、軟磁性合金はFe量が多いほど高飽和磁束密度のため直流重畳特性に有利であるものの、高温多湿時に錆が発生やその錆の脱落等が磁性素子としての使用時に問題となっている。
また、磁性合金へのクロム添加が耐食性に効果があることはステンレス鋼に代表されるようによく知られている。しかしながら、クロムを含有する上記合金粉末を用いて非酸化性雰囲気中で熱処理を行った圧粉磁心では、絶縁抵抗計で測定した比抵抗が10−1Ωcmと粒子間での渦電流損失が発生しない程度の値は有しているものの、外部導体膜を形成するには10Ωcm以上の比抵抗が必要であり、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層を形成することができなかった。
そこで、本発明では、上記組成を有する原料粒子と結合剤とを含む成形体を、酸化雰囲気中で熱処理することで粒子の表面に金属酸化物層からなる酸化層を生成させ、かつ隣接する粒子の表面の酸化層同士を結合させことで、高い強度を得るものである。得られた電子部品用軟磁性合金素体の体積抵抗率ρ は、10Ωcm以上と大幅に向上し、素体の表面に形成された外部導体膜の焼付導体層上へのNi、Sn等の金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することが可能となった。
さらに好ましい形態の本発明の電子部品用軟磁性合金素体において、組成を限定する理由を説明する。
複数の粒子の組成中のクロムの含有量が、2wt%未満では、体積抵抗率は低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。
また、クロムが8wt%より多い場合にも、体積抵抗率は低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。
また、上記特許文献1に記載されたようにFe−Si−Al粉末を用い大気中熱処理により酸化物の被覆を形成したものは、被覆がクロムを含まない酸化物である。このため、その体積抵抗率は10Ωcmに比べて低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。
上記電子部品用軟磁性合金素体において、複数の粒子の組成中のSiは体積抵抗率の改善の作用を有するが、1.5wt%未満ではその効果は得られず、一方、7wt%より大きい場合にも、その効果は十分でなく、その体積抵抗率は10Ωcmに満たないため、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。また、Siは透磁率の改善の作用も有するが、7wt%より大きい場合には、Fe含有量の相対的低下による飽和磁束密度の低下と成形性の悪化に伴う透磁率および飽和磁束密度の低下が生じる。
クロム以外の酸化されやすい元素としてアルミニウムを用いた場合は、アルミニウム2〜8wt%、ケイ素1.5〜12wt%、鉄80〜96.5wt%が好ましい。
複数の粒子の組成中のアルミニウムの含有量が、2wt%未満では、体積抵抗率は低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。また、アルミニウムの含有量が、8wt%より大きい場合には、Fe含有量の相対的低下による飽和磁束密度の低下が生じる。
防錆の観点から、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%の組成であることが好ましい。
なお、鉄、クロム、ケイ素の合金粒子に、鉄、アルミニウム、ケイ素の合金粒子を混合(例えば合金粒子合計の50wt%未満)したものでも適用可能である。
上記電子部品用軟磁性合金素体において、複数の粒子の組成中の鉄の含有量が88wt%未満では飽和磁束密度の低下と成形性の悪化に伴う透磁率および飽和磁束密度の低下が生じる。また、鉄の含有量が96.5wt%より大きい場合には、クロム含有量、ケイ素含有量の相対的低下により体積抵抗率が低下する。
本発明において、さらに、複数の粒子の平均粒径は原料粒子の平均粒子径d50%(算術平均)に換算したときに5〜30μmであることがより望ましい。また、上記複数の粒子の平均粒径は、素体の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影した組成像中から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子について、各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2の総和を上記粒子の個数で割った値で近似することもできる。
合金金属粒子群は、粒度分布を持ち、必ずしも真球でなくいびつな形状をとなっている。
また、立体である合金金属粒子を2次元(平面)でみるとき、どこの断面で観察するかで見かけ大きさが異なる。
このため、本発明の平均粒径では、測定する粒子数を多くすることで、粒子径を評価する。
このため、少なくても下記条件にて該当する粒子数を少なくとも100以上測定することが望ましい。
具体的方法は、粒子断面にて最大となる径を長軸とし、長軸の長さを2等分した点を求める。
その点が含まれ粒子断面にて最小となる径を短軸とする。これを長軸寸法、短軸寸法と定義する。
測定する粒子は、粒子断面にて最大となる径が大きい粒子を大きい順に順番に並べ、粒子断面の累計比率が、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できない粒子と、空孔と、酸化層を除いた面積の95%になる大きさのものを測定する。
上記平均粒径がこの範囲内にあると、高い飽和磁束密度(1.4T以上)と高い透磁率(27以上)を得られるともに、100kHz以上の周波数においても、粒子内で渦電流損失が生じるのが抑制される。
なお、本明細書において、開示する具体的数値は、ある態様では約そのような数値であること意味し、また、範囲の記載において上限および・または下限の数値はある態様では範囲に含まれており、ある態様では含まれていない。また、ある態様では数値は平均値、典型値、中央値等を意味する。
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
電子部品用軟磁性合金を用いた素体の磁気特性の良し悪しを判断するのに、原料粒子の充填率が80体積%となるように成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して外径14mm、内径8mm、厚さ3mmのトロイダル状に成形し、大気中で熱処理を施したのち、得られた素体に直径0.3mmのウレタン被覆銅線からなるコイルを20ターン巻回して試験試料とした。飽和磁束密度Bsの測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製:VSM)を用いて行い、透磁率μの測定は、LCRメーター(アジレントテクノロジー社製:4285A)を用いて測定周波数100kHzで測定した。飽和磁束密度Bsが、0.7T以上を良と判定した。透磁率μが20以上のものを良と判定した。
電子部品用軟磁性合金を用いた素体の強度の良し悪しを判断するのに、図10に示す測定方法を用いて以下の通り、3点曲げ破断応力を測定した。3点曲げ破断応力を測定するための試験片は、原料粒子の充填率が80体積%となるように成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して長さ50mm、幅10mm、厚さ4mmの板状の成形体に成形したのち、大気中で熱処理を施したものである。
3点曲げ破断応力が1.0kgf/mm以上を良とした。
飽和磁束密度Bs、透磁率μ、3点曲げ破断応力とも良のものを、合格とした。
さらに、電子部品用軟磁性合金を用いた素体の体積抵抗率の良し悪しを判断するのに、図11に示すように、JIS−K6911に準じて測定を行った。体積抵抗率を測定するための試験片は、原料粒子の充填率が80体積%となるように成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して直径100mm、厚さ2mmの円板状に成形したのち、大気中で熱処理を施したものである。
体積抵抗率が、1×10−3Ωcm以上を可、1×10−1Ωcm以上を良、1×10Ωcm以上を優と判断した。1×10−1Ωcm以上であれば、高周波で使用したときに、渦電流による損失を小さくできる。さらに、1×10Ωcm以上であれば、湿式メッキによる導体層上への金属メッキ層を形成できる。
また、電子部品用軟磁性合金素体の表面の外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層の形成の良し悪しを判断するのに、以下に述べる実施例では、電子部品用軟磁性合金素体の形状をドラム型とした。
得られた電子部品試料の外部導体膜上への金属メッキ層の形成の良し悪しの判断は、拡大鏡を用いた目視外観判断により、Ni、Snメッキが焼付導体層上に連続的に形成され、かつ焼付導体層からその周囲へのメッキ延びの発生がないものを○とし、その他を×とした。
(実施例1)
電子部品用軟磁性合金素体を得るための原料粒子として、平均粒子径(d50%)が10μmの水アトマイズ粉で、組成比がクロム:5wt%、ケイ素:3wt%、鉄:92wt%の合金粉(エプソンアトミックス(株)社製 PF-20F)を用いた。上記原料粒子の平均粒子径d50%は、粒度分析計(日機装社製:9320HRA)を用いて測定した。また、上記粒子を粒子の中心を通る断面が露出するまで研磨し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM:日立ハイテクノロジー社製S−4300SE/N)を用いて3000倍で撮影した組成像について、粒子の中心付近と表面近傍それぞれの1μm□の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出し、粒子の中心付近における上記の組成比と粒子の表面近傍における上記の組成比とがほぼ等しいことを確認した。
次に、上記粒子とポリビニルブチラール(積水化学社製:エスレックBL:固形分30wt%濃度溶液)を湿式転動攪拌装置にて混合し造粒物を得た。
得られた造粒粉を、複数の粒子の充填率が80体積%となるように、成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して、長さ50mm、幅10mm、厚さ4mmの角板状の成形体と、直径100mm、厚さ2mmの円板状の成形体と、外径14mm、内径8mm、厚さ3mmのトロイダル状の成形体、および巻芯部(幅1.0mm×高さ0.36mm×長さ1.4mm)の両端に角鍔(幅1.6mm×高さ0.6mm×厚さ0.3mm)を有するドラム型のコア成形体と、一対の板状コア成形体(長さ2.0mm×幅0.5mm×厚さ0.2mm)を得た。
上記で得られた円板状の成形体、トロイダル状の成形体、ドラム型の成形体、一対の板状成形体について、大気中、700℃で60分の熱処理を行った。
上記円板状の成形体の熱処理により得られた円板状の素体について、JIS−K6911に準じて体積抵抗率の測定を行い、結果を表1に示した。
また上記ドラム型の成形体の熱処理で得られたドラム型の素体について、巻芯部のほぼ中心を通る厚さ方向の断面が露出するように研磨し、その断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影し組成像を得た。次に、上記で得られた組成像について、各画素を3段階の明度ランクに分類し、上記組成像中で粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち、各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子の平均粒径(d50%)より大きい粒子の組成コントラストを中心明度ランクとし、上記組成像中でこの明度ランクに該当する部分を粒子1と判断した。また、組成コントラストが上記中心明度ランクより暗い明度ランクの部分を酸化層2と判断した。また、上記中心明度ランクより明るい明度ランクの部分を空孔3と判断し、得られた結果を模式図として図2に示した。
次に、上記組成像中から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子の平均粒径(d50%)より大きい粒子を抽出し、その長軸と短軸の交点付近の1μm□の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出し、これを上記原料粒子における組成比と対比して、上記素体における複数の粒子の組成比が原料粒子の組成比とほぼあるいは実質的に等しいことを確認した。
次に、上記組成像における粒子1の内部の長軸d1と短軸d2とが交わる点を中心とした1μm□の組成をSEM−EDSで求め、その結果を図3(A)に示した。次に、上記組成像における粒子1の表面の酸化層2の最厚部の厚さt1と最薄部の厚さt2から平均厚さT=(t1+t2)/2に相当する酸化層厚さの部位における酸化層の厚さの中心点を中心とした1μm□の組成についてSEM−EDSで求め、図3(B)に示した。図3(A)より、粒子1の内部における鉄の強度C1FeKaが4200count、クロムの強度C1CrKaが100count、鉄に対するクロムのピーク強度比R1=C1CrKa/C1FeKaが0.024である。図3(B)より、酸化層2の厚さの中心点における鉄の強度C2FeKaが3000count、クロムの強度C2CrKaが1800count、鉄に対するクロムのピーク強度比R2=C2CrKa/C2FeKaが0.60であり、前記粒子の内部における鉄に対するクロムのピーク強度比R1よりも大きいことがわかる。
また、本発明の電子部品用軟磁性合金素体において、隣接する粒子1,1の表面に生成された酸化層2,2同士が結合されていることは、上記組成像に基づいて作成された図2に示す模式図より確認することができた。
以上の結果より、本実施例1の電子部品用軟磁性合金素体は、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%を含有する複数の粒子1,1と、粒子1の表面に生成された酸化層を備え、酸化層は、少なくとも鉄及びクロムを含み、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による鉄に対するクロムのピーク強度比が粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きいものであることを確認した。
また、上記トロイダル状の成形体の熱処理により得られたトロイダル状の素体について、直径0.3mmのウレタン被覆銅線からなるコイルを20ターン巻回して試験試料とした。飽和磁束密度Bsの測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製:VSM)を用いて行い、透磁率μの測定は、LCRメーター(アジレントテクノロジー社製:4285A)を用いて測定周波数100kHzで測定した。得られた結果を表1に示した。
また、上記で得られた角板状の成形体について、大気中において、熱処理温度150℃、200℃、300℃、500℃、600℃、700℃、800℃、1000℃でそれぞれ60分間熱処理して得られた角板状の素体および室温にて放置した角板状の成形体について、3点曲げ破断応力を測定した結果を表1及び表2に示した。
また、上記ドラム型の素体の両鍔部の実装面に、焼付型のAg導体膜ペーストを塗布し、大気中、約30分かけて700℃まで昇温し、700℃で10分保持し、その後約30分かけて降温することにより、導体膜材料の焼付処理を行い、外部導体膜の焼付導体層を形成した。さらに、該導体膜表面上に、電解メッキ法にて、Ni(厚さ2μm)、Sn(厚さ7μm)を形成した。
得られた結果を表1に示した。
この結果、素体の強度が7.4kgf/mm、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.51T、透磁率μが45で体積抵抗率が4.2×10Ωcm、金属めっき層の形成性が○、および、それぞれ良好な測定結果及び判断結果が得られた。なお、透磁率μについては、熱処理前にも測定を行った。その結果を表3に示した。
次に、上記ドラム型素体の巻芯部に絶縁被覆導線からなるコイルを巻回するとともに両端部をそれぞれ前記外部導体膜に熱圧着接合し、さらに、上記板状成形体の熱処理で得られた板状の素体を前記ドラム型の素体の鍔部の両側にそれぞれ樹脂系接着剤で接着して巻線型チップインダクタを得た。
(実施例2)
原料粒子の組成比を、クロム:3wt%、ケイ素:5wt%、鉄:92wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた結果を表1及び表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.46T、透磁率μが43で、素体の強度が2.8kgf/mm、体積抵抗率が2.0×10Ωcm、金属めっき層の形成性が○で、実施例1と同様、良好な測定結果及び判断結果が得られた。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
(実施例3)
原料粒子の平均粒子径(d50%)を6μmにした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた結果を表1及び表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.45T、透磁率μが27で、素体の強度が6.6kgf/mm、体積抵抗率が3.0×10Ωcm、金属めっき層の形成性が○、実施例1と同様、良好な測定結果及び判断結果が得られた。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
(実施例4)
原料粒子の平均粒子径(d50%)を3μmにした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた結果を表1及び表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.38T、透磁率μが20で、素体の強度が7.6kgf/mm、体積抵抗率が7.0×10Ωcm、金属メッキ層の形成性が○で、実施例1と同様、良好な測定結果及び判断結果が得られた。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
(実施例5)
原料粒子の組成比をクロム:9.5wt%、ケイ素:3wt%、鉄:87.5wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果及び判断結果を表1および表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.36T、透磁率μが33で素体の強度が7.4kgf/mm、体積抵抗率が4.7×10−3Ωcm、金属めっきの形成性が×、あった。クロムが8wt%を超えると本実施例では、体積抵抗率が低下することがわかった。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
(実施例6)
原料粒子の組成比をクロム:5wt%、ケイ素:1wt%、鉄:94wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果及び判断結果を表1および表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.58T、透磁率μが26で、素体の強度が18kgf/mm、体積抵抗率が8.3×10−3Ωcm、金属めっきの形成性が×であることがわかった。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
(実施例7)
大気中での処理温度を、1000℃とした以外は、実施例1と同様にして、インダクタ部品を得た。測定及び判断結果を表1に示す。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.50T、透磁率μが50で素体の強度が20kgf/mm、体積抵抗率が2.0×10Ωcm、金属めっきの形成性が×であった。熱処理温度を高くした本参考例では、3点曲げ破断応力が増加したが、体積抵抗率が実施例1に比較して低下した。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
参考例1
原料粒子の組成比をケイ素:9.5wt%、アルミニウム:5.5wt%、鉄:85wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果及び判断結果を表1および表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが0.77T、透磁率μが32で素体の強度が1.4kgf/mm、体積抵抗率が8.0×10Ωcm、金属めっきの形成性が×、であった。体積抵抗率が低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層の形成を行なうことができないことがわかった。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではアルミニウム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
(比較例1)
原料粒子の組成比を、クロム:1wt%、ケイ素:6.5wt%、鉄:92.5wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果及び判断結果を表1および表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.36T、透磁率μが17で、素体の強度が4.2kgf/mm、体積抵抗率が4.9×10Ωcm、金属めっき層の形成性が×、であった。また、SEM−EDSによる分析の結果、Crが2wt%未満の本比較例では、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)は、合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)を多く含む酸化物ではなく、そのため体積抵抗率が低いことがわかった。
(参考例
熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果及び判断結果を表1および表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.50T、透磁率μが35素体の強度が0.54kgf/mm、体積抵抗率が1.4×10Ωcm、であった。尚、本参考例においては、金属メッキ層の形成性について、試料の作成および評価を省略した。SEM−EDS分析の結果、本参考例では、粒子の表面には金属酸化物からなる酸化層の生成が行われなかった。このため、体積抵抗率が実施例に比較してやや低下した。
(参考例
大気中での処理温度を、300℃とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果及び判断結果を表1および表2に示した。
表1および表2に示すとおり、磁気特性としての飽和磁束密度Bsが1.50T、透磁率μが35で、素体の強度が0.83kgf/mm、体積抵抗率が1.4×10Ωcmであった。尚、本参考例においては、金属メッキ層の形成性について、試料の作成および評価を省略した。SEM−EDS分析の結果、本参考例では熱処理温度が400℃より低いために、粒子の表面には金属酸化物からなる酸化層の生成が十分に行われていないことがわかった。このため、体積抵抗率が実施例に比較してやや低下した。
(実施例9)
次に、積層タイプの実施例を示す。
実施例1と同じ合金粒子を用い、積層数が20層で、形状が3.2mm×1.6mm×0.8mmとなる、素体内部にコイルを有するコイル型電子部品を作成した。
まず、合金金属粒子85wt%、ブチルカルビトール(溶剤)13wt%で、ポリビニルブチラール(バインダ)2wt%の混合物をダイコータの塗工機にて、厚み40μmのシート状に加工し、次にAg粒子85wt%、ブチルカルビトール(溶剤)13wt%で、ポリビニルブチラール(バインダ)2wt%の導体ペーストをシートに塗布し、導電パターンを形成した。
次に導電パターンを形成したシートを積層しプレス圧 2ton/cmにて積層体を得た。
この積層体を、大気下で800℃、2hrの条件で熱処理し素体を得た。
この内部にコイルが形成された素体のコイルの引き出し部が露出している面および実装面に、Agを含むペーストを塗布し、700℃、10min熱処理をして、金属メッキ層を形成したコイル型電子部品を得た。磁気特性としての飽和磁束密度Bsは1.41T、透磁率μは15であった。なお、熱処理前の透磁率μは13であった。金属のメッキ層の形成はNiであった。また、SEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合され、該酸化層は合金粒子に比較して鉄よりも酸化しやすい元素(ここではクロム)が多く含む酸化物であることが確認できた。
なお、実施例1から4での粒子は結合部分の厚みが合金粒子表面の酸化層よりも厚かったものが確認された。実施例5、6での粒子は結合部分の厚みが合金粒子表面の酸化層よりも薄かったものが確認された。実施例1から8の粒子の酸化層の厚みが50nm以上であったものが確認された。
本発明の電子部品用軟磁性合金素体および該素体を用いた電子部品は、回路基板上への
面実装が可能な小型化された電子部品に好適である。特に、大電流を流すパワーインダクタに用いた場合、部品の小型化に好適である。
1:粒子
2:酸化層
3:空孔
10,10’:電子部品用軟磁性合金を用いた素体
11:ドラム型のコア
11a:巻芯部
11b:鍔部
12:板状コア
14:外部導体膜
14a:焼付導体膜層
14b:Niメッキ層
14c:Snメッキ層
15:コイル
15a:巻回部
15b:端部(接合部)
20:電子部品(巻線型チップインダクタ)
31:積層体チップ
34:外部導体膜
35:内部コイル
40:電子部品(積層型チップインダクタ)
d1:長軸寸法
d2:短軸寸法

Claims (12)

  1. 素体の内部あるいは表面にコイルを有するコイル型電子部品であって、
    素体は、鉄、ケイ素および鉄より酸化しやすい元素であるクロムを含有する軟磁性合金の粒子群から構成され、各軟磁性合金粒子の表面には、当該粒子と結合材の混合物からなる成形体の熱処理により当該粒子を酸化して形成した酸化層が生成され、当該酸化層は当該合金粒子に比較してクロムを多く含み、粒子同士は当該酸化層を介して結合されており、かつ、前記粒子同士を結合している前記酸化層は同一の相であることを特徴とするコイル型電子部品。
  2. 軟磁性体粒子同士を結合する部分の酸化層の厚みは、結合に関与しない軟磁性体粒子表面の酸化層よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載のコイル型電子部品。
  3. 軟磁性体粒子同士を結合する部分の酸化層の厚みは、結合に関与しない軟磁性体粒子表面の酸化層よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のコイル型電子部品。
  4. 軟磁性体粒子のうち少なくとも一部は50nm以上の厚さをもつ酸化層を有する粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のコイル型電子部品。
  5. 前記軟磁性合金は、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%の組成であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
  6. 軟磁性体粒子の算術平均粒径は、30μm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
  7. 前記酸化層は、前記軟磁性体粒子側から見て外側に向かって、
    前記鉄成分の含有量が低下し、且、前記クロムの含有量が増加する第一の酸化層と、
    前記鉄成分の含有量が増加し、且、前記クロムの含有量が低下する第二の酸化層と、
    をこの順番で含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
  8. 前記軟磁性体粒子側から見て外側に向かって、
    前記第一の酸化層にて、前記クロムの含有量について変曲点を有することを特徴とする請求項に記載のコイル型電子部品。
  9. 走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によるZAF法で算出した鉄に対するクロムのピーク強度比が前記粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きい酸化層であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
  10. 前記コイルは、その端部が前記素体の表面に形成された導体膜と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
  11. 前記コイルが、素体の内部に形成されたコイル導体であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
  12. コイル導体は、導体パターンであり、素体と同時に焼成された導体であることを特徴とする請求項11に記載のコイル型電子部品。
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