JP5491425B2 - 高圧ポンプ - Google Patents
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Description
高圧ポンプの加圧室において加圧された燃料は、吐出通路を通って燃料出口に吐出される。この吐出通路には、加圧室から吐出された高圧燃料が再び加圧室に逆流することを防止するための吐出弁装置が組み付けられている。
特許文献1に記載の高圧ポンプにおいても、加圧室から高圧燃料が吐出される吐出通路には、高圧燃料の加圧室への逆流を防止する逆止弁として機能する吐出弁装置が組み付けられている(特許文献1の図1、図2を参照)。
しかし、従来のように吐出通路が別体のポンプボディにサブアセンブリ化された吐出弁装置を組み付ける場合、弁部材が組み込まれた吐出弁装置の位置決めをすることが容易であるのに対し、吐出通路一体ポンプボディの吐出通路に個々の構成部品を挿入して吐出弁装置を組み付ける場合、弁部材の位置決めをすることが容易ではないという問題が生じた。
このように請求項1に係る高圧ポンプは、吐出通路の内壁部に形成されている傾斜部が、シート部の端面を取り囲む位置にあり、その内径が燃料出口側から加圧室側に向かって小さくなっている。これにより、吐出弁部材を燃料出口側から挿入する際に、挿入されつつある吐出弁部材の向きが傾斜部によって調整され、吐出弁部材の第1端面がシート部の端面に容易かつ正確に当接する。即ち、吐出弁部材が燃料出口側から吐出通路に挿入される過程で、傾斜部による調芯作用を受け、吐出弁部材のシート部に対する容易かつ正確な位置決めがなされる。
このように請求項2に係る高圧ポンプは、シート部が第2吐出通路の中内径通路に配設される場合であっても、吐出弁部材が燃料出口側から第2吐出通路の大内径通路に挿入され、傾斜部に取り囲まれた位置で吐出弁部材の第1端面がシート部の端面に当接する際に、中内径通路と大内径通路との境界にある傾斜部の調芯作用により、吐出弁部材のシート部に対する容易かつ正確な位置決めがなされる。
このように請求項3に係る高圧ポンプは、シート部がシリンダ形成部材の外壁部に形成される場合、吐出弁部材が燃料出口側から第1吐出通路に向かって挿入され、吐出弁部材の第1端面が傾斜部に取り囲まれた位置でシート部の端面に当接する際に、第1吐出通路と第2吐出通路との境界にある傾斜部の調芯作用により、吐出弁部材のシート部に対する容易かつ正確な位置決めがなされる。
このように請求項4に係る高圧ポンプは、傾斜部がテーパ形状をなしていることにより、挿入されつつある吐出弁部材に対する傾斜部による調芯作用が有効に発揮されるため、吐出弁部材のシート部に対する容易かつ正確な位置決めがなされる。
このように請求項5に係る高圧ポンプは、傾斜部が階段形状をなしていることにより、挿入されつつある吐出弁部材に対する傾斜部による調芯作用が有効に発揮されるため、吐出弁部材のシート部に対する容易かつ正確な位置決めがなされる。
このように請求項7に係る高圧ポンプは、支持部材が第2吐出通路に圧入されることにより、支持部材が安定して固定され、この支持部材により他方の端部を係止された付勢部材の付勢力により吐出弁部材の第1端面がシート部の端面に適切に付勢される。このため、吐出弁装置としての適正な機能が確保される。
このように請求項7に係る高圧ポンプは、支持部材が吐出弁部材のガイド部をガイドすることにより、吐出弁部材の往復移動が安定かつスムーズになり、吐出弁装置としての適正な機能が確保される。また、支持部材が壁面に連通孔を有することにより、吐出弁部材の第1端面がシート部の端面から離座する際に、加圧室から燃料出口に向かう高圧燃料の流れがスムーズになり、高圧ポンプの適正な機能が確保される。
このように請求項8に係る高圧ポンプは、支持部材が吐出弁部材の最大リフト量を規制するストッパとなる端部を有することにより、吐出弁部材の往復移動が安全かつ適正なものになり、吐出弁装置としての適正な機能が確保される。
そして、シート部の内径断面積(上流側通路面積)をAINとし、吐出弁部材が最大リフトした際のシート部と吐出弁部材の弁部との間に形成される開口部の面積(最大開口面積)をASとし、連通孔の面積(下流側通路面積)をAOUTとした場合に、次式
AOUT<AS<1.5×AIN
が成立するように、支持部材が吐出弁部材の最大リフト量を規制している。
このように請求項9に係る高圧ポンプは、下流側通路面積AOUTと最大開口面積ASとの間に、次式
AOUT<AS
が成立し、下流側通路面積AOUTが相対的に小さくなることから、吐出弁部材の弁部より燃料出口側(下流側)の燃料の圧力が相対的に上昇し、吐出弁部材の第1端面がシート部の端面に着座しようとする際に、下流側から吐出弁部材の弁部に圧力がかかり易くなるため、閉弁速度が上がる。
また、最大開口面積ASと上流側通路面積AINとの間に、次式
AS<1.5×AIN
が成立し、最大開口面積ASが相対的に小さくなることから、吐出弁部材の最大リフト量が小さくなるように規制され、吐出弁部材の必要以上のリフトが抑制される。このため、吐出弁部材の移動距離が短くなり、閉弁速度が上がる。
従って、高圧ポンプの吐出効率を高め、性能の向上が図られる。
即ち、シリンダ形成部材とポンプボディとが連続的な一体となっている、いわゆるシリンダ一体型ポンプボディを用いる場合であっても、シリンダ形成部材がポンプボディと異なる、いわゆる別体シリンダの場合であっても、請求項1〜9に係る高圧ポンプの発明は適用される。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による高圧ポンプの吐出弁部に吐出弁装置が組み付けられた状態(閉弁状態)を図1及び図2に示し、その吐出弁装置の最大リフト時の開弁状態を図3に示す。
先ず、本実施形態による高圧ポンプ1について、図1を用いて説明する。
高圧ポンプ1は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給系統に設けられる。燃料タンクから汲み上げられた燃料は、高圧ポンプ1により加圧され、デリバリパイプに蓄圧される。そしてデリバリパイプに接続するインジェクタから内燃機関の各気筒に噴射供給される。
また、高圧ポンプ1は、ポンプボディ10、プランジャ部20、ダンパ室40、吸入弁部50、電磁駆動部60、吐出弁部70などを有している。
ポンプボディ10には、円筒状のシリンダ孔11と、このシリンダ孔11に連通する加圧室12とが一体として形成されている。本実施形態では、ポンプボディ10は、特許請求の範囲に記載の「シリンダ形成部材」および「ポンプボディ」に相当する。
プランジャ部20は、プランジャ21、プランジャストッパ23、シール部材24、オイルシールホルダ25、プランジャスプリング28などから構成される。
また、プランジャストッパ23よりもスプリング座27側の小径部212の周囲には、シール部材24が小径部212の周囲を囲んで装着されている。この小径部212に接する内周側のテフロンリング(「テフロン」は登録商標)と外周側のOリングとからなり、小径部212の周囲の燃料油膜の厚さを規制し、プランジャ21の摺動によるエンジンへの燃料のリークを抑制するものである。
また、オイルシールホルダ25のスプリング座27側の端部には、オイルシール26が小径部212の周囲を囲んで装着されている。このオイルシール26は、小径部212の周囲のオイル油膜の厚さを規制し、プランジャ21の摺動によるオイルのリークを抑制するものである。
このプランジャスプリング28の機能により、プランジャ21は、図示しないタペットを介してカムシャフトのカムと接することでシリンダ孔11の軸方向に往復移動する。そして、このプランジャ21の往復移動により、加圧室12の容積が変化することで燃料が吸入、加圧される。
ダンパ室40は、凹部41、カバー42、ダンパユニット43などから構成される。
ポンプボディ10には、シリンダ孔11の反対側に、シリンダ孔11側に凹む凹部41が設けられている。この凹部41には、内部を外気から遮断するための有底筒状のカバー42が被せられている。
パルセーションダンパ44は、2枚の金属ダイアフラム441,442の内部に所定圧の気体が密封されている。そして、2枚の金属ダイアフラム441,442がダンパ室40の圧力変化に応じて弾性変形することで、ダンパ室40の燃圧脈動を低減する。
蓋側支持部46の上方には、波ばね48が配置されている。これにより、カバー42をポンプボディ10に取り付けた状態で、波ばね48が蓋側支持部46を底側指示部45側へ押圧する。その結果、パルセーションダンパ44は、その周縁部を蓋側支持部46と底側支持部45とによって周方向に均等な力で挟持され固定される。
吸入弁部50は、供給通路52、弁ボディ53、シート部54、吸入弁55などから構成される。
ポンプボディ10には、シリンダ孔11の中心軸と略垂直に筒部51が設けられ、この筒部51の内部は燃料の供給通路52となっている。また、この筒部51の内側には弁ボディ53が収容され、係止部材によって固定されている。この弁ボディ53の内側には、凹テーパ状の円周面を有するシート部54が形成されており、このシート部54と相対して吸入弁55が配置されている。そして、この吸入弁55は、弁ボディ53の底部に設けられた孔の内壁に案内されて往復移動するものであり、吸入弁55がシート部54から離座することで供給通路52を開放し、吸入弁55がシート部54に着座することで供給通路52を閉塞する。
また、ストッパ56には、ストッパ56の軸に対して傾斜する傾斜通路58が周方向に複数形成されている。供給通路52を通って供給されてきた燃料は、この傾斜通路58を通って加圧室12に吸入される。また、供給通路52は、加圧側通路59を介してダンパ室40に連通している。
電磁駆動部60は、コネクタ61、固定コア62、可動コア63、フランジ64などから構成される。
コネクタ61は、コイル611及び端子612を有し、端子612を通じてコイル611に通電されることにより磁界を発生するようになっている。固定コア62は磁性材料で作られ、コイル611の内側に収容されている。可動コア63は磁性材料で作られ、固定コア62と対向して配置されている。そして可動コア63は、フランジ64の内側に軸方向に往復移動可能に収容されている。
ニードル67は略円筒状に形成され、ガイド筒65の内壁に案内されて往復移動する。また、ニードル67は、一方の端部が可動コア63に固定され、他方の端部が吸入弁55の電磁駆動部60側の端面に当接可能である。
コイル611に通電していないとき、可動コア63と固定コア62とは、第2スプリング68の弾性力により互いに離れている。これにより、可動コア63と一体のニードル67が吸入弁55側へ移動し、ニードル67の端面が吸入弁55を押圧することで吸入弁55が開弁する。
吐出弁部70は、吐出通路71、吐出弁装置80などから構成されている。
ポンプボディ10には、シリンダ孔11の中心軸と略垂直に吐出通路71が形成されている。この吐出通路71は、一方で加圧室12に連通し、他方で燃料出口72に連通している。また、この吐出通路71は、加圧室12側から燃料出口72側に向かって順に小内径通路711、中内径通路712、大内径通路713、大内径通路713より相対的に内径が小さい出口側第1通路714、及び出口側第1通路714より相対的に内径が大きい出口側第2通路715を有している。また、中内径通路712と大内径通路713との境界の内壁部には、線形テーパ形状をなす傾斜部73が形成されている。
本実施形態では、小内径通路711は、特許請求の範囲に記載の「第1吐出通路」および「第2吐出通路」に相当する。また、中内径通路712、大内径通路713、出口側第1通路714、出口側第2通路715は「第2吐出通路」に相当する。
吐出弁装置80は、シート部81、吐出弁部材82、スプリング83、アジャスティングパイプ84などから構成される。
吐出通路71の中内径通路712には、円筒状のシート部81が圧入されている。このシート部81は、一方の加圧室12側の端面が小内径通路711と中内径通路712との段差面に当接し、他方の燃料出口72側の円筒断面状の端面811が周囲を傾斜部73に取り囲まれている。
また、吐出通路71の大内径通路713及び出口側第1通路714には、円筒状のアジャスティングパイプ84が圧入されている。このアジャスティングパイプ84は、加圧室12側の外径が相対的に小さい小外径部841と、燃料出口72側の外径が相対的に大きい大外径部842とを有している。この大外径部842の外周面は、圧入により出口側第1通路714の内周面に密着して固定されている。また、小外径部841の外周面は、出口側第1通路714より内径が大きい大内径通路713の内周面との間に、空間74を形成している。
また、アジャスティングパイプ84は、吐出弁部材82が吐出通路71の中心線方向に往復移動する際のガイド部824をガイドする内周面843、吐出弁部材82が往復移動する際の最大リフト量αを規制するためのストッパとなるストッパ端部844、及び小外径部841に開口された連通孔845を有している。
また、図3に示すように、ストッパ端部844は、シート部81の内径断面積(上流側通路面積)AINと、吐出弁部材82が最大リフトした際のシート部81と吐出弁部材82の弁部823との間に形成される開口部の面積(最大開口面積)ASと、連通孔845の面積(下流側通路面積)AOUTとの間で、次式
AOUT<AS<1.5×AIN
が成立するように、吐出弁部材82の最大リフト量αを規制するものである。
先ず、吐出通路71の中内径通路712にシート部81を燃料出口72側から圧入し、その外周面を中内径通路712の内周面に密着させて固定する。このとき、シート部81の加圧室12側の端面が、小内径通路711と中内径通路712との段差面に当接すると共に、燃料出口72側の端面811が、周囲を傾斜部73に取り囲まれる位置にくるようにする。
このとき、シート部81の端面811が、中内径通路712と大内径通路713との境界にある傾斜部73に取り囲まれる位置にあり、この傾斜部73の内径が燃料出口72側の大内径通路713から加圧室12側の中内径通路712に向かって小さくなる線形テーパ形状をなしていることにより、燃料出口72側から中内径通路712に向かって挿入される吐出弁部材82は、傾斜部73によりその挿入の向きが調整され、吐出弁部材82の第1端面821がシート部81の端面811に容易かつ正確に当接される。即ち、吐出弁部材82は、燃料出口72側から中内径通路712に向かって挿入される過程で、線形テーパ形状をなす傾斜部73による調芯作用を受けるため、吐出弁部材82のシート部81に対する容易かつ正確な位置決めがなされる。
続いて、小外径部841を加圧室12側に向けた状態で、アジャスティングパイプ84を燃料出口72側から出口側第1通路714及び大内径通路713に挿入し、更に大外径部842を出口側第1通路714に圧入して、大外径部842の外周面を出口側第1通路714の内周面に密着させて固定する。
このとき、アジャスティングパイプ84をスプリング83の他方の端部に係止させる。また、アジャスティングパイプ84の内径部8に吐出弁部材82のガイド部824を挿入させる。
プランジャ21がシリンダ孔11内を上昇するにつれて加圧室12の燃料の圧力が上昇する。そして、弁部材装置80の弁部材83よりも加圧室12側(上流側)の燃料から弁部材83が受ける力が、スプリング84の弾性力と弁部材83より燃料出口72側(下流側)の燃料から受ける力との和よりも大きくなると、図3に示されるように、弁部材83の第1端面821はシート部73の端面731から離座する。即ち、吐出弁装置80は開弁状態となる。これにより、加圧室12で加圧された高圧燃料は、小内径通路711及び中内径通路712から大内径通路713を通って燃料出口72に吐出される。
AOUT<AS<1.5×AIN
が成立するように規制されている。
AOUT<AS
が成立し、下流側通路面積AOUTが相対的に小さくなることから、吐出弁部材82の弁部823より下流側の燃料の圧力が相対的に上昇する。このため、吐出弁部材82の第1端面821がシート部81の端面811に着座しようとする際に、下流側から吐出弁部材82の弁部823に圧力がかかり易くなる。こうして吐出弁装置80の閉弁速度が上がる。
AS<1.5×AIN
が成立し、最大開口面積ASが相対的に小さくなることから、吐出弁部材82の最大リフト量αが小さくなるように規制されることになる。このため、吐出弁部材82が必要以上にリフトすることが抑制され、吐出弁部材82の移動距離が短くなる。こうして、吐出弁装置80の閉弁速度が上がる。
このように高圧ポンプ1の吐出弁部70に組み付けられた弁部材装置80は、加圧室12から燃料出口72に向かって吐出される高圧燃料に対する逆止弁として機能する。
(1)吸入行程
カムシャフトの回転により、プランジャ21がシリンダ孔11内を上死点から下死点に向かって下降すると、加圧室12の容積が増加し、加圧室12内の燃料が減圧される。このとき、吐出弁部70においては、吐出弁装置80の吐出弁部材82がシート部81に着座して、吐出通路71を閉塞する。また、吸入弁部50においては、加圧室12と供給通路52との差圧により、吸入弁55が第1スプリング57の付勢力に抗して図1の右方向に移動して、開弁状態となる。このとき、電磁駆動部60のコイル611への通電は停止されているので、可動コア63及びこの可動コア63と一体のニードル67は第2スプリング68の付勢力により図1の右方向に移動する。従って、ニードル67と吸入弁55とが当接して、吸入弁55は開弁状態を維持する。これにより、供給通路52から加圧室12に燃料が吸入される。
ここで、大径部211と可変容積室30の断面積比は概ね1:0.6である。従って、加圧室12の容積の増加分と可変容積室30の容積の減少分の比も1:0.6となる。このため、加圧室12が吸入する燃料の約60%が可変容積室30から供給され、残りの約40%が燃料入口から吸入される。これにより、加圧室12への燃料の吸入効率が向上する。
カムシャフトの回転により、プランジャ21がシリンダ孔11内を下死点から上死点に向かって上昇すると、加圧室12の容積が減少する。このとき、所定の時期まではコイル611への通電が停止されているので、第2スプリング68の付勢力によりニードル67と吸入弁55は図1の右方向に位置する。これにより、供給通路52は開放した状態が維持される。このため、加圧室12に一度吸入された低圧燃料が供給通路52へ戻される。従って、加圧室12の圧力は上昇しない。
このとき、加圧室12がダンパ室40側へ排出する低圧燃料の容積の約60%が、ダンパ室40から可変容積室30に吸入される。これにより、燃圧脈動の約60%が低減される。
プランジャ21がシリンダ孔11内を下死点から上死点に向かって上昇する途中の所定の時刻に、コイル611へ通電される。するとコイル611に発生する磁界により、固定コア62と可動コア63との間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が第2スプリング68の弾性力と第1スプリング57の弾性力との差より大きくなると、可動コア63とニードル67は固定コア72側(図1の左方向)へ移動する。これにより、吸入弁55に対するニードル67の押圧力が解除される。吸入弁55は、第1スプリング57の弾性力、及び加圧室12からダンパ室40側へ排出される低圧燃料の流れによって生ずる力により、シート部54側へ移動する。従って、吸入弁55はシート部54に着座し、供給通路52が閉塞される。
尚、加圧行程の途中でコイル611への通電が停止される。加圧室12の燃料圧力が吸入弁55に作用する力は、第2スプリング68の付勢力より大きいので、吸入弁55は閉弁状態を維持する。
コイル611へ通電するタイミングを早くすれば、調量行程の時間が短くなると共に、加圧行程の時間が長くなる。これにより、加圧室12から供給通路52へ戻される燃料が少なくなり、吐出通路71から吐出される燃料が多くなる。
一方、コイル611へ通電するタイミングを遅くすれば、調量行程の時間が長くなると共に、吐出行程の時間が短くなる。これにより、加圧室12から供給通路52へ戻される燃料が多くなり、吐出通路71から吐出される燃料が少なくなる。
このように、コイル611へ通電するタイミングを制御することで、高圧ポンプ1から吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御する。
本実施形態の高圧ポンプ1は、先に燃料出口72側から中内径通路712に圧入したシート部81の端面811が、中内径通路712と大内径通路713との境界にある傾斜部73に取り囲まれる位置にあり、この傾斜部73の内径が燃料出口72側の大内径通路713から加圧室12側の中内径通路712に向かって小さくなる線形テーパ形状をなしていることにより、続いて燃料出口72側の大内径通路713から中内径通路712に向かって挿入される吐出弁部材82は、傾斜部73によってその挿入の向きが調整されるため、吐出弁部材82の第1端面821をシート部81の端面811に容易かつ正確に当接させることができる。即ち、吐出弁部材82が大内径通路713側から中内径通路712側に向かって挿入される過程で、線形テーパ形状をなす傾斜部73による調芯作用を受けるため、吐出弁部材82のシート部81に対する容易かつ正確な位置決めをすることができる。
また、アジャスティングパイプ84は、その内周面843に吐出弁部材82のガイド部824を収容し、吐出弁部材82の往復移動をガイドすることにより、吐出弁部材82の往復移動をスムーズにして、吐出弁装置80の機能を適正に発揮させることができる。
また、アジャスティングパイプ84は、吐出弁部材82が往復移動する際の最大リフト量αを規制するためのストッパ端部844を有することにより、吐出弁装置80の機能を適正かつ安全に発揮させることができる。
AOUT<AS<1.5×AIN
が成立するように規制されていることにより、下流側通路面積AOUTが相対的に小さくなって、吐出弁部材82の弁部823より下流側の燃料の圧力が相対的に上昇するため、吐出弁部材82の第1端面821がシート部81の端面811に着座しようとする際に、下流側から吐出弁部材82の弁部823に圧力がかかり易くなり、吐出弁装置80の閉弁速度を上げることができる。
また、最大開口面積ASが相対的に小さくなって、吐出弁部材82の最大リフト量αが小さくなるように規制され、吐出弁部材82の必要以上のリフトが抑制されるため、吐出弁部材82の移動距離が短くなり、吐出弁装置80の閉弁速度を上げることができる。
本発明の第2実施形態による高圧ポンプの吐出弁部に吐出弁装置が組み付けられた状態(閉弁状態)を図4に示し、その吐出弁装置の最大リフト時の開弁状態を図5に示す。尚、以下複数の実施形態において、上記第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
先ず、本実施形態による高圧ポンプ2の吐出弁部70について、図4及び図5を用いて説明する。尚、高圧ポンプ2の吐出弁部70以外の部分は、上記第1実施形態の図1に示す高圧ポンプ1と同じ構成を有しているため、その説明を省略する。
但し、中内径通路712と大内径通路713との境界には、上記第1実施形態の場合の線形テーパ形状をなす傾斜部73と異なり、階段形状をなす傾斜部73Aが形成されている。
吐出弁装置80が高圧ポンプ2の吐出弁部70に組み付けられた状態も、上記第1実施形態の場合と基本的には同じである。但し、階段形状の傾斜部73Aの内周面と吐出弁部材82の弁部823の外周面との間には空隙が形成されており、両方の周面が密接しない状態である。この空隙は、吐出弁装置80が開弁状態となったときに、上流側の高圧燃料がシート部81と吐出弁部材82の弁部823との間を通って下流側に流れる際の流路を確保するためのものである。
先ず、燃料出口72側から中内径通路712にシート部81を圧入し、その端面811が周囲を傾斜部73Aに取り囲まれる位置にくるようにする。
続いて、燃料出口72側から大内径通路713に吐出弁部材82を挿入し、その第1端面821をシート部81の端面811に当接させる。
こうして、シート部81、吐出弁部材82、スプリング83、及びアジャスティングパイプ84を燃料出口72側から順に吐出通路71に挿入することにより、アジャスティングパイプ84に端部を係止されたスプリング83の付勢力により吐出弁部材82の弁部823の第1端面821がシート部81の端面811に付勢されている吐出弁装置80が、吐出弁部70に組み付けられる。
尚、吐出弁部70に組み付けられた吐出弁装置80の作動、及び高圧ポンプ2の作動については、上記第1実施形態の場合と同様であるため、その説明を省略する。
本実施形態は、上記第1実施形態の線形テーパ形状をなす傾斜部73の代わりに、階段形状をなす傾斜部73Aが吐出通路71の内壁部に形成されている点で相違する。しかし、吐出弁部材82が燃料出口72側から大内径通路713に挿入され、その第1端面821がシート部81の端面811に当接する際に、階段形状をなす傾斜部73Aが、線形テーパ形状をなす傾斜部73と同様の調芯作用を奏することにより、吐出弁部材82のシート部81に対する容易かつ正確な位置決めをすることができる。
従って、本実施形態は、上記第1実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができる。
本発明の第3実施形態による高圧ポンプの吐出弁部に吐出弁装置が組み付けられた状態を図6に示す。
先ず、第3実施形態による高圧ポンプ3について、図6を用いて説明する。
高圧ポンプ3は、シリンダ孔がポンプボディ10とは別の部材で形成されているシリンダ別体型の高圧ポンプである。そして、ポンプボディ10とは別体のシリンダ形成部材90には、円筒状のシリンダ孔、このシリンダ孔に連通する加圧室91、及びこの加圧室91に連通してシリンダ孔の中心軸と略垂直方向に延びる吐出通路92が一体として形成されている。吐出通路92は、特許請求の範囲に記載の「第1吐出通路」に相当する。
尚、高圧ポンプ3のシリンダ形成部材90及び吐出弁部70以外の部分は、上記第1実施形態の図1に示す高圧ポンプ1と同じ構成を有しているため、その説明を省略する。
吐出弁装置80Aは、シート部95、吐出弁部材82、スプリング83、アジャスティングパイプ84などから構成される。
シート部95は、上述したように、シリンダ形成部材90の外壁部に形成されている。吐出弁部材82は、吐出通路71aの大内径通路713aに収容され、その第1端面821がシート部95の端面951に当接している。
こうして吐出弁部70に吐出弁装置80Aが組み付けられている。
シート部95はシリンダ形成部材90の外壁部に既に形成されているため、先ず、吐出弁部材82を燃料出口72側から大内径通路713aに挿入し、その第1端面821をシート部95の端面951に当接させる。
続いて、上記第2実施形態の場合と同様に、スプリング83、アジャスティングパイプ84を順に挿入して収容する。
尚、吐出弁装置80Aが組み付けられた吐出弁部70の作動、及び高圧ポンプ3の作動については、上記第1実施形態の場合と同様であるため、その説明を省略する。
本実施形態は、上記第2実施形態の階段をなす傾斜部73Aの代わりに、別の階段形状をなす傾斜部73Bが形成されている点で相違する。
また、本実施形態の高圧ポンプ3は、上記第2実施形態の高圧ポンプ2とは異なる構造となっている。即ち、上記第2実施形態の高圧ポンプ2がシリンダ一体型ポンプボディを用いているのに対して、本実施形態の高圧ポンプ3はポンプボディ10とシリンダ形成部材90とが別体であるシリンダ別体型ポンプボディを用いている。
更に、本実施形態の吐出弁装置80Aも、上記第2実施形態の吐出弁装置80とは一部が相違する。即ち、上記第2実施形態におけるシート部81がポンプボディ10の吐出通路71に配設されているのに対して、本実施形態においてはシート部95がシリンダ形成部材90の外壁部に形成されている点で相違する。
従って、本実施形態は、上述したような上記第2実施形態との相違点を有するにも拘らず、上記第2実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができる。換言すれば、本願発明は、シリンダ一体型ポンプボディを用いる高圧ポンプにも、シリンダ別体型ポンプボディを用いる高圧ポンプにも好適に適用することができる。
本発明の第4実施形態による高圧ポンプの吐出弁部に吐出弁装置が組み付けられた状態を図7に示す。
第4実施形態による高圧ポンプ4の吐出弁装置80Bは、第1実施形態に対し、アジャスティングパイプの構成、特に、連通孔の位置のみが異なる。すなわち、支持部材としてのアジャスティングパイプ85は、吐出弁部材82のガイド部824をガイドする内周面853、吐出弁部材82が往復移動する際の最大リフト量を規制するためのストッパ端部854、及び大外径部852に開口された連通孔855を有している。
この連通孔855は、小外径部851の外周面と大内径通路713の内周面との間に形成された空間74と、アジャスティングパイプ85の内周面853と吐出弁部材82のガイド部824の燃料出口72側の端面とに挟まれた空間とを連通する。
本実施形態の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため説明を省略する。
上記第1実施形態では、傾斜部73が線形テーパ形状をなしているが、線形以外の例えば放物線テーパ形状をなしてもよい。また、上記第2及び第3実施形態では、傾斜部73A、Bがそれぞれ異なる階段形状をなしているが、例示した階段形状以外にも、例えば角部を丸めた階段形状など、種々の階段形状であってもよい。いずれの場合であっても、傾斜部がシート部の端面を取り囲む位置にあり、燃料出口側から加圧室側に向かって内径が小さくなる形状であればよい。
10 ・・・ポンプボディ(シリンダ形成部材)
11 ・・・シリンダ孔
12 ・・・加圧室
13 ・・・リリーフバルブ通路
14 ・・・連通口
20 ・・・プランジャ部
21 ・・・プランジャ
30 ・・・可変容積室
40 ・・・ダンパ室
50 ・・・吸入弁部
60 ・・・電磁駆動部
70 ・・・吐出弁部
71 ・・・吐出通路(第1吐出通路、第2吐出通路)
71a ・・・吐出通路(第2吐出通路)
711 ・・・小内径通路(第1吐出通路、第2吐出通路)
712 ・・・中内径通路(第2吐出通路)
713、713a ・・・大内径通路(第2吐出通路)
714、714a ・・・出口側第1通路(第2吐出通路)
715、715a ・・・出口側第2通路(第2吐出通路)
72 ・・・燃料出口
73、73A、73B・・・傾斜部
80、80A、80B・・・吐出弁装置
81、95 ・・・シート部
811、951 ・・・端面
82 ・・・吐出弁部材
821 ・・・第1端面
822 ・・・第2端面
823 ・・・弁部
824 ・・・ガイド部
83 ・・・スプリング(付勢部材)
84、85 ・・・アジャスティングパイプ(支持部材)
841、851 ・・・小外径部
842、852 ・・・大外径部
843、853 ・・・内周面
844、854 ・・・ストッパ端部
845、855 ・・・連通孔
90 ・・・シリンダ形成部材
91 ・・・加圧室
92 ・・・吐出通路(第1吐出通路)
93 ・・・凹部
94 ・・・窪み
Claims (10)
- プランジャと、
前記プランジャを軸方向に往復移動可能に収容する筒状のシリンダ孔、前記シリンダ孔に連通し、前記プランジャの往復移動により燃料が加圧される加圧室、前記加圧室に連通し、前記加圧室に燃料を吸入する吸入通路、及び、前記加圧室に連通し、前記加圧室で加圧された高圧燃料を吐出する第1吐出通路を有するシリンダ形成部材と、
前記第1吐出通路に連通し、前記加圧室からの高圧燃料を燃料出口に向かって吐出する第2吐出通路を有するポンプボディと、
前記第1吐出通路及び前記第2吐出通路からなる吐出通路の所定の位置に形成され、前記燃料出口側に向く端面を有する筒状のシート部と、
前記シート部の前記端面を取り囲む位置の前記吐出通路の内壁部に形成され、前記燃料出口側から前記加圧室側に向かって内径が小さくなる傾斜部と、
前記燃料出口側から前記第2吐出通路に挿入され、第1端面と第2端面とに挟まれた弁部を有し、前記第1端面が前記シート部の前記端面に当接する吐出弁部材と、
前記燃料出口側から前記第2吐出通路に挿入され、一方の端部が前記吐出弁部材の前記第2端面に当接する付勢部材と、
前記燃料出口側から前記第2吐出通路に挿入され、前記付勢部材の他方の端部に当接する筒状の支持部材と、を備えることを特徴とする高圧ポンプ。 - 前記第2吐出通路は、前記加圧室側から前記燃料出口側に向かって順に小内径通路、中内径通路、及び大内径通路を有し、
前記シート部は、前記燃料出口側から前記中内径通路に挿入され、
前記傾斜部は、前記中内径通路と前記大内径通路との境界に形成され、
前記吐出弁部材は、前記燃料出口側から前記大内径通路に挿入され、前記第1端面が前記傾斜部に取り囲まれた位置で前記シート部の前記端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。 - 前記シート部は、前記シリンダ形成部材の外壁部に形成されており、
前記傾斜部は、前記第1吐出通路と前記第2吐出通路との境界に形成され、
前記吐出弁部材は、前記燃料出口側から前記第2吐出通路に挿入され、前記吐出弁部材の前記第1端面が前記傾斜部に取り囲まれた位置で前記シート部の前記端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。 - 前記傾斜部は、テーパ形状をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記傾斜部は、階段形状をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記支持部材は、前記第2吐出通路に圧入されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記吐出弁部材は、前記弁部から前記第2端面側に延伸するガイド部を有し、
前記支持部材は、前記吐出弁部材が往復移動する際の前記ガイド部をガイドする内周面と、壁面に開口され、前記吐出弁部材の前記第1端面が前記シート部の前記端面から離座する際に前記加圧室から前記燃料出口に向かって流れる高圧燃料を通過させるための連通孔と、を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。 - 前記支持部材は、前記吐出弁部材が往復移動する際の最大リフト量を規制するストッパとなる端部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記吐出弁部材は、前記弁部から前記第2端面側に延伸するガイド部を有し、
前記支持部材は、前記吐出弁部材が往復移動する際の前記ガイド部をガイドする内壁部と、壁面に開口され、前記吐出弁部材の前記第1端面が前記シート部の前記端面から離座する際に前記加圧室から前記燃料出口に向かって流れる高圧燃料を通過させるための連通孔と、前記吐出弁部材が往復移動する際の最大リフト量を規制するストッパとなる端部と、を有し、
前記シート部の内径断面積をAINとし、前記吐出弁部材が最大リフトした際の前記シート部と前記吐出弁部材の前記弁部との間に形成される開口部の面積をASとし、前記連通孔の面積をAOUTとした場合に、次式
AOUT<AS<1.5×AIN
が成立するように、前記支持部材が前記吐出弁部材の最大リフト量を規制していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。 - 前記シリンダ形成部材は、前記ポンプボディと連続的な一体をなしていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
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