(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のダイカストマシン1の要部を示す図である。
ダイカストマシン1は、金型101を保持する不図示の型締装置と、金型101のキャビティ107に溶湯MLを射出する射出装置3と、射出装置3に溶湯MLを供給する給湯装置5とを有している。
金型101は、固定金型103と、固定金型103に対して型開閉方向に移動される移動金型105とを有している。キャビティ107は、固定金型103と移動金型105との間に形成される。
射出装置3は、キャビティ107に連通する射出スリーブ7と、射出スリーブ7内を摺動可能な射出プランジャ9と、射出プランジャ9を駆動可能な射出シリンダ11と、射出プランジャ9の位置を検出する位置センサ12とを有している。
射出スリーブ7は、円筒状に形成されており、固定金型103に水平に挿通されることにより、ゲート109を介してキャビティ107に連通している。射出スリーブ7の上面には、溶湯MLを射出スリーブ7内に供給するために給湯口7aが形成されている。
射出プランジャ9は、射出スリーブ7に嵌合するプランジャチップ13と、プランジャチップ13に固定され、射出スリーブ7から延出するプランジャロッド15とを有している。射出スリーブ7内に供給された溶湯は、プランジャチップ13がキャビティ107側へ前進することにより、キャビティ107内へ射出、充填される。
射出シリンダ11は、液圧シリンダにより構成されており、シリンダチューブ17と、シリンダチューブ17内を摺動する不図示のピストンと、当該ピストンに固定され、シリンダチューブ17から延出するピストンロッド19とを有している。
ピストンロッド19は、カップリング21を介してプランジャロッド15に連結されている。シリンダチューブ17の内部は、不図示のピストンにより2つのシリンダ室に区画されている。そして、2つのシリンダ室に選択的に作動液(例えば油)が供給されることにより、不図示のピストンが移動し、ひいては、射出プランジャ9が駆動される。
位置センサ12は、例えば、ピストンロッド19に設けられたスケール部19aとともに、リニアスケール(リニアエンコーダ)を構成している。そして、位置センサ12は、位置センサ12とスケール部19aとの相対移動量に比例したパルス数の信号、又は、当該パルス数に基づく位置を出力する。リニアスケールは、磁気式であってもよいし、光学式であってもよい。
給湯装置5は、保温炉151に保持されている溶湯MLを汲み出し、給湯口7aに注ぐためのラドル23と、ラドル23を支持するアーム25と、アーム25を支持するベース27と、ラドル23の異常を検出するための付着センサ29とを有している。
ラドル23は、例えば、鉄を主体として形成されるとともに、ライニングが施されている。ライニングには、例えば、酸化アルミ、酸化チタン、黒鉛粉、カオリンなどの水溶液に水ガラスを少量添加したものが使用される。
ラドル23は、底部及び底部の周囲を囲む周面部を有する容器本体23aと、容器本体23aの周面部の頂部から外側へ突出する注ぎ口23bとを有している。ラドル23は、例えば、注ぎ口23b側において、アーム25の先端に回転可能に連結されている。
ラドル23には、例えば、ベース27に内蔵されたラドル用モータ35(図2参照)の回転が、アーム25に内蔵されたチェーン等を含む伝達機構を介して伝達される。これにより、ラドル23は、所望の角度で傾斜するように駆動される。
アーム25は、例えば、複数の長尺部材が回転可能に連結されることにより構成され、リンク機構を構成している。アーム25は、根元側の所定位置がベース27に内蔵されたアーム用モータ37(図2参照)により回転されることにより、矢印Lmで示すように、ラドル23を、保温炉151内の位置と給湯口7a上の位置との間で移動させる。
アーム25によりラドル23が保温炉151の溶湯MLに漬され、その後、ラドル23が溶湯MLから引き上げられることにより、ラドル23により溶湯MLが汲み出される。そして、ラドル23を所定の角度(傾斜角θ)に傾斜させ、汲み出した溶湯MLの一部を保温炉151に戻すことにより、ラドル23内の溶湯MLは、1ショットの鋳造に必要十分な量とされる。なお、ラドル23は、溶湯MLに漬される前から、溶湯MLから引き上げられるまでの間に亘って、傾斜角θに傾斜されていてもよい。
その後、アーム25によりラドル23が給湯口7a上に搬送され、注ぎ口23bが下方側になるようにラドル23が傾斜されることにより、ラドル23内の溶湯MLは、給湯口7aに注がれる。なお、このときの傾斜角は、ラドル23内に溶湯MLが残留しないように十分な大きさ(容器本体23aの注ぎ口23b側の内面が、容器本体23aの底部側を上方にして傾く大きさ)とされる。
付着センサ29は、ラドル23を撮像するビジョンセンサにより構成されている。ラドル23において、ライニングの効果が低下すると、溶湯MLを射出スリーブ7に注いだ後において、溶湯MLがラドル23に付着する。そこで、付着センサ29は、給湯後のラドル23を撮像することにより、溶湯MLの付着状態を検出する。これにより、ラドル23の異常が検出される。
なお、付着センサ29は、ラドル23により溶湯MLを射出スリーブ7に注いだ後から、次のショットのために保温炉151の溶湯MLにラドル23が漬される前までの間において、ラドル23の内部を撮像可能な適宜な位置に配置されてよい。図1では、付着センサ29が、溶湯MLを射出スリーブ7に注いだ直後のラドル23の内部を撮像可能な位置に配置されている場合を例示している。
給湯後のラドル23に溶湯MLが付着した場合、1ショットの鋳造に必要十分な量の溶湯MLが射出スリーブ7に給湯されなかったことになる。そこで、溶湯の不足分に応じて、後述する高速切換位置を変更し、不良品の発生を抑制するために、付着センサ29は、溶湯MLの付着の有無だけでなく、溶湯MLの付着量を検出可能に構成されている。
図2は、ダイカストマシン1の信号処理系の構成を示すブロック図である。
ダイカストマシン1は、入力部33、付着センサ29及び位置センサ12からの入力信号に基づいて、ラドル用モータ35、アーム用モータ37、射出シリンダ11及び出力部39を制御する制御装置31を有している。
入力部33は、例えば、複数のスイッチを含む操作パネルにより構成されており、ユーザの入力操作に応じた信号を制御装置31に入力する。入力部33は、例えば、ユーザの入力操作に基づいて、後述する高速切換位置とされるべき位置や減速開始位置とされるべき位置(以下、これらを「設定位置V1」と総称することがある。)の情報を含む信号を制御装置31に入力する。
ラドル用モータ35は、例えば、ステップモータやサーボモータにより構成されている。なお、ラドル用モータ35は、直流モータでも交流モータでもよい。ラドル用モータ35は、ラドル用モータドライバ41から供給された電力により駆動される。ラドル用モータドライバ41は、制御装置31からの制御信号に応じた電力をラドル用モータ35に出力する。
アーム用モータ37は、ラドル用モータ35と同様に、直流形又は交流形のステップモータやサーボモータにより構成されている。アーム用モータ37は、アーム用モータドライバ43から供給された電力により駆動される。アーム用モータドライバ43は、制御装置31からの制御信号に応じた電力をアーム用モータ37に出力する。
射出シリンダ11は、液圧回路45から作動液が供給される。液圧回路45は、例えば、特に図示しないが、ポンプ、アキュムレータ、バルブを含んで構成されており、制御装置31からの制御信号に応じて、射出シリンダ11に作動液を供給する。
出力部39は、例えば、表示装置、スピーカ、プリンタのいずれかを適宜に含んで構成されている。出力部39は、制御装置31からの制御信号に基づいて、画像表示、音声出力、及び/又は、印刷を行う。
制御装置31は、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータにより構成されている。そして、CPUがROMや外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、以下に述べる各部が構成される。
付着量算出部49は、付着センサ29からの信号及び付着量データD1に基づいて、給湯後のラドル23に付着している溶湯MLの付着量を算出する。
付着量データD1は、付着センサ29の検出値と溶湯MLのラドル23における付着量とを対応付けたマップを保持している。例えば、付着センサ29がラドル23に付着した溶湯MLの表面積を検出するものである場合、付着量データD1は、その表面積と、溶湯の体積若しくは質量とを対応付けて保持している。このようなマップは、例えば、実験などにより得られる。
補正量算出部51は、付着量算出部49により算出された付着量に基づいて、設定位置V1の補正量V2を算出する。具体的には、付着量(体積)を射出スリーブ7の断面積により割ることにより補正量V2が算出される。なお、射出スリーブ7の断面積は、入力部33に対する操作などにより予め制御装置31に記憶されている。
切換位置設定部52は、入力部33から入力された設定位置V1及び補正量算出部51により算出された補正量V2に基づいて、後述する高速切換位置や減速開始位置を設定する。具体的には、設定位置V1を補正量V2だけキャビティ107側へずらした位置を高速切換位置や減速開始位置として設定する。
射出制御部53は、切換位置設定部52により設定された高速切換位置や減速開始位置に基づいて液圧回路45を制御する。なお、射出制御部53は、位置センサ12により検出される射出プランジャ9の位置及び速度に基づいて、射出プランジャ9の位置制御及び速度制御を行う。
図3は、射出装置3の射出動作を説明する図である。具体的には、図3(a)は、射出装置3における射出圧力の経時変化を示す図であり、図3(b)は、射出装置3における射出速度(射出プランジャ9の速度)の経時変化を示す図である。
不図示の型締装置において、金型101の型閉じ及び型締めが完了し、給湯装置5により射出スリーブ7内に溶湯が供給されると、射出プランジャ9が前進を開始し、低速射出が行われる。低速射出では、射出プランジャ9は、比較的低速の速度VLで前進する。なお、射出プランジャ9が速度VLで前進するときの射出圧力は、比較的低圧の圧力PLである。
射出プランジャ9が所定の高速切換位置に到達すると(図3(b)のD点)、射出プランジャ9の速度が比較的低速の速度VLから比較的高速の速度VHに切り換えられ、高速射出が開始される。なお、射出プランジャ9が速度VHで前進するときの射出圧力は、圧力PLよりも高圧の圧力PHである。
射出プランジャ9が所定の減速開始位置に到達すると(図3(b)のL点)、射出プランジャ9の減速が開始される。そして、射出速度は、速度VHから急激に減速される(速度Vd)。一方、溶湯はキャビティ107に概ね充填されており、射出プランジャ9により押圧されている溶湯は逃げ場を失うから、射出圧力は圧力PHから急激に上昇する(圧力Pd)。
減速が終了すると、増圧が開始され(図3(b)のM点以降)、射出速度は更に遅くなりつつ(速度Vt)、射出圧力は上昇する(圧力Pt)。そして、射出プランジャ9は停止し、射出圧力は鋳造圧力(終圧)Pmaxになり、溶湯の充填は完了する。その後、射出圧力は鋳造圧力Pmaxに維持される。
図4は、ダイカストマシン1が実行する給湯及び射出に係る処理の手順を示すフローチャートである。
図4の処理は、繰り返し実行される複数回の成形サイクル(ショット)において、1回の成形サイクルにつき1回実行される。各成形サイクルにおいては、ダイカストマシン1は、図4の処理が開始される前までに、不図示の型締装置により金型101の型閉じ及び型締めを行う。
ステップS1では、ダイカストマシン1は、給湯装置5により給湯を行う。すなわち、制御装置31は、ラドル23により保温炉151から溶湯MLを汲み出し、汲み出した溶湯MLを射出スリーブ7に注ぐように、アーム用モータ37及びラドル用モータ35を制御する。
ステップS2では、ダイカストマシン1は、ラドル23における溶湯MLの付着状態を検出する。すなわち、付着センサ29は、ラドル23を撮像し、その撮像画像、又は、その撮像画像に基づく処理結果を制御装置31に出力する。
ステップS3では、ダイカストマシン1は溶湯MLの付着量を算出する。すなわち、付着量算出部49は、付着量データD1を参照して、付着センサ29からの信号(検出値)に応じた溶湯MLの付着量を特定する。
ステップS4では、ダイカストマシン1は補正量V2を算出する。すなわち、補正量算出部51は、付着量算出部49の算出した付着量に基づいて補正量V2を算出する。
ステップS5では、ダイカストマシン1は切換位置の設定を行う。すなわち、切換位置設定部52は、設定位置V1及び補正量V2に基づいて高速切換位置及び減速開始位置を設定する。
ステップS6では、ダイカストマシン1は低速射出を開始する。すなわち、射出制御部53は、比較的低速の速度VLで射出プランジャ9を前進させるように、液圧回路45を制御する。
ステップS7では、ダイカストマシン1は射出プランジャ9が高速切換位置に到達したか否か判定する。すなわち、射出制御部53は、位置センサ12の検出する位置がステップS5において設定された高速切換位置に到達したか否か判定する。
高速切換位置に到達していないと判定された場合は、低速射出が維持される。高速切換位置に到達したと判定された場合は、処理はステップS8に進む。
ステップS8では、ダイカストマシン1は高速射出を開始する。すなわち、射出制御部53は、比較的高速の速度VHで射出プランジャ9を前進させるように、液圧回路45を制御する。
ステップS9では、ダイカストマシン1は射出プランジャ9が減速開始位置に到達したか否か判定する。すなわち、射出制御部53は、位置センサ12の検出する位置がステップS5において設定された減速開始位置に到達したか否か判定する。
減速開始位置に到達していないと判定された場合は、速度VHが維持される。減速開始に到達したと判定された場合は、処理はステップS10に進む。ステップS10では、ダイカストマシン1は射出プランジャ9の減速を開始する。
その後、射出プランジャ9は停止し、増圧制御がなされる。そして、溶湯が凝固すると、ダイカストマシン1は、不図示の型締装置による型開き、不図示の押出装置による成形品の押し出しなどを行う。
図5(a)は、付着センサ29により撮像された画像111の一例を示す図である。図5(b)は、図5(a)の領域Vbの拡大図である。
画像111は、例えば、ラドル23の内側面の全体の像を含んでいる。画像111において、ラドル23の像と、ラドル23に付着した溶湯MLの像とは、色が異なる。そこで、付着センサ29は、画像111の色に基づいてラドル23と溶湯MLとを判別し、溶湯MLの表面積を算出する。
表面積は、例えば、溶湯MLの色であると判定される画素113の数と、画素113の面積と、画像111の縮尺とに基づいて算出される。画素113の面積は、付着センサ29により記憶されている。また、画像111の縮尺は、予め入力部33により入力されてもよいし、予め入力されたラドル23の実際の寸法と画像111におけるラドル23の像の寸法とに基づいて算出されてもよい。
以上の実施形態によれば、ダイカストマシン1は、金型101のキャビティ107に連通する射出スリーブ7と、射出スリーブ7内を摺動して射出スリーブ7内の溶湯MLをキャビティ107に射出する射出プランジャ9と、射出プランジャ9を駆動する射出シリンダ11とを有する。また、ダイカストマシン1は、保温炉115に保持されている溶湯MLを汲み出し、汲み出した溶湯MLを、射出スリーブ7に注ぐラドル23と、射出スリーブ7へ溶湯MLを注いだ後のラドル23における溶湯MLの付着状態を検出する付着センサ29と、制御装置31とを有する。制御装置31は、射出プランジャ9が所定の高速切換位置(D)に到達したときに射出プランジャ9の射出速度が高速(VH)に切り換わるように射出シリンダ11を制御する(ステップS7及びS8)。また、制御装置31は、溶湯MLの付着が検出されたショットにおける高速切換位置が、溶湯MLの付着が検出されなかったショットにおける高速切換位置よりもキャビティ107側になるように、付着センサ29の検出結果に基づいて、その検出結果と同一ショットにおける高速切換位置を設定する(ステップS3〜S5)。
従って、ラドル23のライニングの効果の低下などにより、溶湯MLがラドル23に付着し、その結果、射出スリーブ7に供給される湯量が低減した場合においても、適切な位置において高速射出を開始することができる。その結果、溶湯MLがゲート109に到達する前に高速射出が開始されることが抑制され、空気の巻き込みによる品質低下が抑制される。
なお、従来、湯量については、保温炉151から正確に汲み出すことばかりが注目されており、ラドル23に溶湯が付着することにより、汲み出した量と注ぐ量との間に差が生じ得ることは注目されていなかった。これは、ライニングの効果によりラドル23に溶湯MLが付着しないことが前提とされ、また、ダイカストマシン1の製造者においては、ライニングの効果が低下する前にラドル23を交換することを作業者に推奨していたためと考えられる。
付着センサ29は、ラドル23における溶湯MLの付着量に応じて変化する検出結果を出力する。制御装置31は、付着量が多いほど高速切換位置(L)をキャビティ107側に設定する。従って、溶湯MLの付着量の変化を正確に捉え、ラドル23により汲み出す溶湯MLの補正量を的確に変化させることができる。
制御装置31は、射出速度を高速(VH)に切り換えた後、射出プランジャ9が所定の減速開始位置(L)に到達したときに射出速度が減速されるように射出シリンダ11を制御する(ステップS9及びS10)。また、制御装置31は、溶湯MLの付着が検出されたショットにおける減速開始位置が、溶湯MLの付着が検出されなかったショットにおける減速開始位置よりもキャビティ107側になるように、付着センサ29の検出結果に基づいて、その検出結果と同一ショットにおける減速開始位置を設定する(ステップS3〜S5)。
従って、ラドル23のライニングの効果の低下などにより、溶湯MLがラドル23に付着し、その結果、射出スリーブ7に供給される湯量が低減した場合においても、適切な位置において減速を開始することができる。その結果、キャビティ107に十分に溶湯が充填される前に減速が開始されることが抑制され、ヒケの発生などが抑制される。
付着センサ29は、ラドル23を撮像するビジョンセンサである。従って、付着センサ29の取付位置は、給湯後のラドル23を撮像可能な範囲であればよく、自由度が高い。歪ゲージ式のロードセルによりラドル23の重量を検出して付着状態を検出する場合、熱による部材の膨張などにより誤差が生じるおそれがある。しかし、ビジョンセンサであれば、そのようなおそれもない。
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係るダイカストマシン201の信号処理系の構成を示すブロック図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態の構成と共通又は類似の構成については、説明を省略することがあり、また、第1の実施形態と同一の符号を付すことがある。
第2の実施形態は、付着有無判定部147を有している点が第1の実施形態と相違する。また、第2の実施形態は、付着量算出部149における付着量の算出方法が第1の実施形態の付着量算出部49における付着量の算出方法と相違する。具体的には、以下のとおりである。
付着有無判定部147は、付着センサ29からの信号に基づいて、給湯後のラドル23に溶湯MLが付着しているか否かを判定する。例えば、付着センサ29が溶湯MLの表面積を検出するものである場合、付着有無判定部147は、その検出された表面積が所定の閾値を超えているか否か判定し、超えているときは、溶湯MLが付着していると判定する。
第1の実施形態では、付着量算出部49は、付着センサ29から付着量を特定可能な検出値(表面積)が入力され、当該検出値に基づいて付着量(補正量V2)を算出した。これに対し、第2の実施形態では、付着量算出部149は、付着センサ29からは、付着有無判定部147を介して、付着の有無(V0)のみが入力される。
そして、付着有無判定部147において、給湯後のラドル23に溶湯MLが付着していると判定された場合、付着量算出部149は、成形サイクル開始前に予め入力されている情報のみに基づいて、付着量(補正量V2)を算出する。
具体的には、付着量算出部149は、入力部33等を介して入力された、現在の設定湯量V4及びラドルサイズV3に基づいて補正量V2を算出する。設定湯量V4は、射出スリーブ7に供給されるべき湯量である。ラドルサイズV3は、ラドル23の容積であってもよいし、製造者において定めたラドルサイズの規格の名称(例えば、L、M、S)であってもよい。
また、付着量データD3は、設定湯量及びラドルサイズの種々の組み合わせに対して、溶湯MLの付着量を対応付けたマップを保持している。そして、付着量算出部149は、付着量データD3を参照することにより、現在の設定湯量V4及びラドルサイズV3に基づいて補正量V2を算出する。
なお、ダイカストマシン201のその他の構成及び動作については、第1の実施形態と同様である。
以上の第2の実施形態によれば、制御装置131は、付着センサ29の検出結果から溶湯MLの付着の有無に係る情報(V0)のみを取得し、溶湯MLの付着が検出されたときは、予め保持している情報(V4、V3、D3)に基づいてラドル23における溶湯MLの付着量を算出し、その算出した付着量が多いほど高速切換位置をキャビティ107側に設定する。
従って、付着センサ29は、付着の有無を検出可能なものであればよく、センサの選択肢が増える。また、例えば、付着センサ29が撮像に基づいて溶湯MLの表面積を検出する場合、ラドル23に対する付着センサ29の撮影方向によって表面積の検出値は変化し得る。従って、第1の実施形態では、そのような影響も考慮して、付着センサ29の取付位置を決定したり、付着量データD1を構築したりする必要がある。しかし、第2の実施形態では、そのようなことを考慮する必要がない。
ラドルは、一般にシンプルな形状をしている。従って、例えば、金型における溶湯MLの付着に比較して、ラドルにおける溶湯MLの付着は、一定のパターンで生じる可能性が高く、また、そのパターンに基づく付着量の予測方法は、複数のラドル間で共用できる可能性が高い。その結果、上述のように、付着の有無の判定結果、及び、付着センサ29による付着状態の検出前に予め入力されている情報のみに基づいて、溶湯の付着量を予測することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
溶湯の付着状態を検出するセンサは、ビジョンセンサに限定されない。また、センサは、溶湯の表面積を検出するものに限定されない。
例えば、センサは、ラドルの内面又は溶湯の表面との距離をラドル内面の複数位置について計測するレーザ干渉計を含むセンサであってもよい。すなわち、予め取得されているラドルの内面の形状と、検出されたラドルの内面における表面形状との差異に基づいて、溶湯の付着の有無、溶湯の表面積又は体積が検出されてもよい。
また、例えば、センサは、ラドルの内面及び溶湯の表面との距離をラドル内面の複数位置について計測する超音波センサであってもよい。すなわち、ラドルの内面の形状と、ラドルの内面における表面形状とが同時に取得され、その差異に基づいて、溶湯の付着の有無、溶湯の表面積又は体積が検出されてもよい。
また、例えば、センサは、ラドル及び溶湯から放射される赤外線に基づいてこれらの温度を検出するサーモビューア(2次元放射温度計)であってもよい。すなわち、溶湯の温度がラドルの温度よりも高温であることに基づいて、溶湯の付着の有無、溶湯の表面積又は溶湯の体積が検出されてもよい。
また、例えば、センサは、ラドル用モータ(35)の負荷トルクを検出するトルクセンサであってもよい。すなわち、溶湯の付着によって生じるラドルの重量の変化に基づいて、溶湯の付着の有無又は溶湯の体積が検出されてもよい。
また、ビジョンセンサは、可視光に基づく撮像を行うものに限定されない。例えば、ビジョンセンサは、赤外光や紫外光に基づく撮像を行うものであってもよい。
センサ及び制御装置の役割分担は、実施形態の態様に限定されない。例えば、第1の実施形態において、センサは画像を制御装置に出力し、制御装置において、画像処理を行って溶湯の表面積を算出してもよい。
溶湯の付着量の算出方法は、データ(D1、D3)に基づくものに限定されない。例えば、検出された表面積が代入される所定の計算式により、付着量が算出されてもよい。
制御装置が第2の実施形態のように、センサから付着量に係る情報を取得せずに付着量を算出する場合、算出に利用される情報は、現在の設定湯量(V4)及び現在のラドルサイズ(V3)に限定されない。例えば、ラドルの形状を分類したラドルタイプ、溶湯温度、溶湯の種類、ダイカストマシンの出荷後又はラドルの交換時からの給湯回数、溶湯の付着が検出された回数が利用されてもよい。
第1の実施形態のように、センサが付着量に応じた検出結果を出力する場合においても、付着の有無が判定されてよい。また、補正量等を算出するルーチンは、付着が検出されたときのみ実行されてもよいし、常に実行されていてもよい。溶湯の付着が検出されたときには、ラドルの交換を促す報知処理が行われてもよい。例えば、制御装置31は、所定の画像を表示するように表示装置(出力部39)を制御したり、所定の報知音を出力するようにスピーカ(出力部39)を制御してもよい。また、報知は、付着量の大小に応じて異なる態様で行われたり、給湯回数の増加に応じて異なる態様で行われたりしてもよい。
減速開始位置の設定及び減速制御は、なされなくてもよい。すなわち、溶湯がキャビティ内に充填されることによる反力のみにより、高速で前進している射出プランジャの減速がなされてもよい。