JP2020049503A - 溶湯供給量に基づいたダイカストマシンの射出条件補正方法 - Google Patents

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伸吾 池田
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Abstract

【課題】金型のキャビティに溶湯を射出充填するために、射出スリーブ内に注ぎ入れられた溶湯の量を高精度で計量してダイカストマシンの射出条件の補正をする。
【解決手段】溶解炉から金属溶湯を汲み上げるラドル4と、ラドル4により汲み上げられた金属溶湯が注ぎ入れられる射出スリーブ7と、射出スリーブ内で進退される射出プランジャ8と、射出プランジャ8を進退させる射出シリンダー9とを備え、射出シリンダー9により射出プランジャ8を前進させることにより、射出スリーブ内に有する金属溶湯を型閉された金型のキャビティに射出充填するダイカストマシンであって、ラドル4から射出スリーブ内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さhを湯面検出センサー10により計測して金属溶湯の給湯量を演算により計量して射出条件を補正する。
【選択図】図5

Description

本発明は、射出スリーブの給湯室内に供給された溶湯を射出プランジャの前進により金型のキャビティ内へ射出充填するダイカストマシンの射出条件の補正方法に関する。特に、金型のキャビティ内に溶湯を高速で射出充填する際に、射出スリーブの給湯室内に実際に注ぎ入れられた溶湯の量を計量することによりダイカストマシンの射出条件を補正する方法に関する。
従来から用いられている一般的なダイカストマシンにおいては、溶解炉で溶融された金属材料を1ショット毎にラドルで汲み上げる際に、汲み上げ量が所定量となるように制御して、汲み上げられた溶湯を射出スリーブの給湯口に給湯する。そして、射出スリーブ内に進退可能に設けた射出プランジャの前進動作により金型のキャビティ内へ金属溶湯を射出充填して、鋳造成形品の成形が行われている。
近年の、ダイカストマシンは電動化などにより高性能化が進んでおり、射出動作の安定性や繰り返し精度などが向上している。しかし、コールドチャンバーダイカストマシンの溶湯供給方法は、現在でも、ラドルを使用して汲み上げる方法が主流である。その際、ラドルへの溶湯付着や湯こぼれなどが原因で発生する給湯量の変動は、ダイカストの射出条件の中で重要なポイントとなる充填完了位置や高速射出切替え位置を不安定化させ、製品品質へ悪影響を及ぼす大きな課題として残っている。
こうしたダイカストマシンにおいては、ラドルによる給湯量のバラツキは、金型のキャビティ内へ射出充填される溶湯の充填量の変動を引き起こし、成形品の巣、湯廻り不足、強度不足等の要因となる。このことから、射出スリーブ内への正確な溶湯充填量を知ることが必要となる。それに関連して、例えば、特許文献1及び特許文献2には、溶解炉から汲み上げられたラドル内の汲み上げ溶湯量を計測するダイカストマシンが開示されている。しかしながら、前述したように、ラドル内の溶湯量を制御したとしても、ラドルへの溶湯付着や湯こぼれなどにより、溶湯量が変動するとの課題は残る。
そこで、本発明では、レーザー変位センサー等の湯面センサーを用いて、ダイカストマシンの射出スリーブの給湯室内に供給された溶湯面の高さ計測することによって、直接的に給湯室内への給湯量を演算して計量するものである。それにより、計測結果をダイカストマシンの射出工程の制御にフィードバックすることであり、溶湯供給量の変動に基づいた射出条件の補正を達成するようにしたものである。
特開2011−143425号公報 特開2000−190060号公報
本発明が解決しようとする課題は、ダイカストマシンにおいて、給湯後・射出前の射出スリーブの給湯室内の給湯量を、湯面検出センサーで湯面を正確に計測して演算により計量して射出条件の補正に寄与させることであり、それにより実際の給湯量に応じて射出条件を設定することである。
図5に示すように、本発明のダイカストマシンに用いるラドル式の溶湯供給方式は、従来から知られたものであり、溶解炉から溶湯を汲みあげ、ダイカストマシンに装着された射出スリーブの給湯室内に供給する方式である。このような溶湯供給方式は、ラドルが取付けられたアームを駆動するモーターとラドルを回動させるモーターを備えている。溶解炉側では溶湯の増減により変動する湯面に対して、ラドルによる汲み上げ量を一定に保つために、ラドルを一定の深さで侵入した位置で、アーム駆動を停止させる機能が備えられている。
従来のラドル式の溶湯供給方式における給湯量の調整動作を、図6(a)〜(c)に示す。まず、ラドルを設定時間炉内に侵入させた後(図6(a))、ラドルを所定角度に傾斜させた状態で計測位置まで上昇させて停止し、設定時間湯切りを行うことで、ラドル内に残る溶湯の量を調整する(図6(b))。その後、溶湯がこぼれない様、移送角度にラドルを回動させ、射出スリーブの給湯口上部まで溶湯を移送し(図6(c))、ラドルを回動させることで給湯動作を行うものである。
ダイカストマシンは、上記したように、使用する機器の進歩等により装置本体の停止位置精度などは向上したものの、計測時の湯切れ具合、ラドルへの溶湯付着、給湯時の湯こぼれなど、ラドルを使用することで発生する不可避的な給湯量の変動には対応できていないものであった。つまり、実際の給湯量を制御することは、装置の精度だけでは保障できないものであり、課題として残っているものである。
ダイカストマシンの射出条件で、特に、高速ストロークを的確に達成するためには、理論的には、成形製品の体積(つまり、金型のキャビティ容積)に対して鋳込湯量を正確に制御することが大事である。特に、成形製品の体積や金型容積により設計上の高速射出切替位置(低速射出動作から高速射出動作への切替位置:図2の矢印B)を基準に、各ショットで最適な高速射出切替位置を導き出し、射出条件を設定することが必要である。つまり、射出プランジャの後退位置(図2の矢印A)は一定であったとしても、射出スリーブの給湯室内の給湯量が変化した場合には、高速射出切替位置は必ずしも一定位置ではなく、補正の必要があるからである。また、高速での射出は、複数の高速射出速度と位置(高速射出設定位置)が設定可能である。
ラドルでの給湯の場合、給湯量のバラツキは、ラドルへの湯の付着(薄皮等)や、湯こぼれや、給湯装置の湯面検知手段への付着等、様々な要因がある。また、ポンプ等を利用した給湯法でも、炉の湯面変化や湯道管への付着や炉の湯面変化などが影響するものである。
このような給湯量のバラツキは、充填完了直前の増圧切替位置(高速射出動作から増圧動作への切替位置:図2の矢印C)にも影響する。よって、給湯量のバラツキは、成形品の製品品質、つまり、巣、湯廻り不足、強度不足等、多大な影響を及ぼすものである。
特許文献1及び特許文献2に開示されているダイカストマシンにおいては、ラドルにより汲み上げられた溶湯の溶湯量を把握することができる。しかし、ラドルにより汲み上げられた溶湯は、金型のキャビティに射出充填される前に、ラドルを傾けて射出スリーブ内に注ぎ入れられるものである。その際、ラドルにおける溶湯の全てを射出スリーブ内に注ぎ入れようとしたとしても、ラドル内には溶湯の一部が固着して残存してしまっていたり、湯こぼれを起こしたりしてしまうという実情がある。このことから、ラドルの動きで制御された溶湯量と、射出スリーブ内に注ぎ入れられた溶湯量とでは差が生じることが多い。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金型のキャビティ内に正確な量の溶湯を射出充填するために、ラドルにより汲み上げられた溶湯の量ではなくて、射出スリーブ内に注ぎ入れられた溶湯の量を直接的に高精度で計量するものである。それにより、射出条件の補正が可能なダイカストマシンの射出条件の補正方法を提供することを目的とするものである。
本発明のダイカストマシンの射出条件の補正方法は、溶解炉から金属溶湯を汲み上げるラドルと、該ラドルにより汲み上げられた前記金属溶湯が注ぎ入れられる筒状の射出スリーブと、射出スリーブ内で進退される射出プランジャと、該射出プランジャを進退させる進退駆動手段とを備え、該進退駆動手段により前記射出プランジャを前進させることにより、前記射出スリーブ内に有する前記金属溶湯を型閉された金型のキャビティ内に射出充填するダイカストマシンの射出条件の補正方法であって、
前記ラドルから前記射出スリーブ内に注ぎ入れられた前記金属溶湯の湯面高さを湯面検出センサーにより計測し、その計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいてダイカストマシンの射出条件を補正することを特徴とする。
さらに、本発明のダイカストマシンの射出条件の補正方法は、前記湯面検出センサーによる計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて、低速射出から高速射出に切り替える高速射出切替位置を補正することを特徴とする。
さらに、本発明のダイカストマシンの射出条件の補正方法は、前記湯面検出センサーによる計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて、高速射出設定位置を補正することを特徴とする。
さらに、本発明のダイカストマシンの射出条件の補正方法は、前記湯面検出センサーによる計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて、充填完了直前の増圧切替位置を補正することを特徴とする。
本発明によれば、金型のキャビティに射出充填する溶湯量について、従来技術のように、ラドル内における溶湯量(射出スリーブ内に注ぎ入れられる前の溶湯量)を計測するのではなく、ラドルから実際に注ぎ入れられた射出スリーブ内の溶湯量を湯面高さに基づいて計量するものである。このようにしたことから、金型のキャビティ内に射出充填される実際の溶湯量の計量し、それにより、高速射出切替位置及び充填完了位置を高精度に制御することが可能となる。そして、このような射出スリーブ内の溶湯量の高精度な計量結果に基づき、各ショット毎の射出充填に係る動作制御を行うことが可能となり、ひいては製造される成形品の品質にバラツキが生じることを回避することが可能となる。
本発明の一実施例としてのダイカストマシン全体を示す概略構成図である。 本発明の一実施例としてのダイカストマシンの動作を示す説明図であり、(a)〜(d)の順に動作過程を示している。 本発明の一実施例としてのダイカストマシンの変形例を示す説明図である。 本発明の一実施例としてのダイカストマシンの更なる変形例を示す説明図である。 本発明の他の実施例としての湯面センサーの取付け状態を示す説明図である。 ラドル式給湯装置の計量動作を説明する説明図である。
以下、本発明の実施形態としてのダイカストマシンの具体的構成と、直接に計測した給湯量に基づいたダイカストマシンの射出条件の補正方法の実施例を図1乃至図6に基づき説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、本実施例において説明した具体的な実施態様に限らず、それ以外の当業者であれば容易に変更可能な構成のものに対しても容易に適用可能である。
本発明の射出条件の補正方法に使用するダイカストマシンにおいては、実際に射出スリーブに給湯された給湯量を、給湯の湯面高さを計測し、その計測結果から演算して計量し、実際の溶湯供給量の変化に対応して射出条件を補正するものである。特に、各ショット毎に高速射出切替位置(図2(c)の矢印B)及び、充填完了位置である増圧切替位置(図2(d)の矢印C)を実際の給湯量から判断し、ダイカストマシンの動作を切り替える位置を常に的確な位置に設定する事で、安定した高速でのダイカスト生産と製品品質を維持するものである。また、高速での射出は、詳細な図示はないが、複数の高速射出速度と位置(高速射出設定位置)が設定可能である。ここで、湯面検出センサーの設置方法は限定されるものではなく、固定式のものでも良く、昇降式またはスライド式等の移動手段を持ち給湯装置との干渉を避ける構造とするものでも良い。
本発明に係る射出条件の補正方法に用いるダイカストマシンは、
溶解炉から金属溶湯を汲み上げるラドルと、該ラドルにより汲み上げられた金属溶湯が注ぎ入れられる筒状の射出スリーブと、射出スリーブ内で進退される射出プランジャと、該射出プランジャを進退させる進退駆動手段とを備え、該進退駆動手段により射出プランジャを前進させることにより、射出スリーブ内に有する金属溶湯を型閉された金型のキャビティ内に射出充填するダイカストマシンであって、
ラドルから射出スリーブ内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さを測定する湯面検出センサーを備えている。この湯面検出センサーは、その種類が限定されるものではなく、磁歪式センサーでも、レーザー式検出センサーでも、撮像カメラをセンサーでも良い。
さらに、本発明に係る射出条件の補正方法に用いるダイカストマシンは、
その実施例として、ラドルにより汲み上げられた金属溶湯が注がれる給湯口を射出スリーブの上部に設け、給湯口に臨んだ該給湯口の開放部に湯面検出センサーを設けているものを説明しているが、湯面が検出されるものであれば、これに限るものではない。
さらに、本発明に係る射出条件の補正方法に用いるダイカストマシンは、
その実施例として、射出スリーブ内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さを測定するときに、湯面検出センサーを給湯口付近まで移動させる移動装置を備えているものを説明しているが、これに限るものではなく、固定式の湯面検出センサーでも良い。
さらに、本発明に係る射出条件の補正方法に用いるダイカストマシンは、
その実施例として、射出スリーブ内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さを測定する湯面検出センサーとして、非接触式の磁歪式湯面センサーを説明しているが、これに限るものではなく、レーザー式検出センサーでも、撮像カメラをセンサーでも良い。
さらに、本発明に係る射出条件の補正方法に用いるダイカストマシンは、
ラドルから金属溶湯が注ぎ入れられる射出スリーブ内は円筒状に形成されており、
その実施例として、湯面検出センサーにより計測された射出スリーブ内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さh、射出スリーブの内径d、射出スリーブ内の長さ寸法Lを用いて、射出スリーブに注ぎ入れられた金属溶湯の総溶湯量を演算する演算手段を備えている。
さらに、本発明に係る射出条件の補正方法に用いるダイカストマシンは、
その実施例として、湯面検出センサーは、湯面の揺れが収まってから正確な湯面を検知することも可能である。その為には、金属溶湯がラドルから射出スリーブ内に注ぎ入れられるのが完了してから、例えば、0.1秒以上2.0秒以内(好ましくは1.0秒から1.5秒)に、金属溶湯の湯面高さを測定する計測時間設定手段を備えることで達成できる。もちらん、計測時間設定手段を備えずに、金属溶湯を供給後直ちに湯面の検知を行うこともできる。
図1に示す本実施例の射出条件の補正方法に用いるダイカストマシン1は、固定金型2と移動金型3とからなる型閉された金型のキャビティ内へ金属溶湯を射出充填して成形品を製造するものである。
ダイカストマシン1には、図示しない溶解炉から金属溶湯を汲み上げるラドル4、ラドル4を回動・移動させるリンクアーム5、ラドル4により汲み上げられた金属溶湯が注ぎ入れられる給湯口6が開放部として上部に形成された円筒状の射出スリーブ7、射出スリーブ7内で進退可能に設けられた射出プランジャ8、射出プランジャ8を前進・後退駆動する進退駆動手段たる射出シリンダー9、ダイカストマシン1の各種制御を行う制御手段12を備えている。この制御手段12は、射出シリンダー9の駆動、リンクアーム5を介してのラドルの動作、後述する磁歪式湯面センサー等の湯面検出センサー10の装着された昇降又はスライド等をする移動装置11の動作制御等、ダイカストマシン1の各種制御を行う。
射出プランジャ8を前進・後退駆動するための射出シリンダー9と、当該射出シリンダー9に作動流体を供給する作動流体供給装置13との間には、射出プランジャ8の前進や後退、及び前進速度を低速や高速に切り替えることが可能な速度切替バルブ14が設けられている。また、射出シリンダー9には、当該射出シリンダー9のストロークから射出プランジャ8の位置を検出するための位置センサー15が設けられている。射出プランジャ8の射出速度や圧力の制御は、制御手段12によって達成される。
本実施例のダイカストマシン1には、射出スリーブ7の給湯室71内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さh(図2(b))を計測する非接触式の磁歪式湯面センサーである湯面検出センサー10を備えている。本発明に用いる湯面検出センサー10は、本実施例での非接触式の磁歪式湯面センサーに限るものではなく、他の方法、例えば、レーザー式検出センサー、撮像カメラをセンサーとして用いるものでも良い。また、その設置方法も、特に限定されるものではなく、固定式、昇降式、またはスライド式の何れであっても良い。
本実施例の湯面検出センサー10は、昇降又はスライドするように構成する場合には、昇降又はスライド等をする移動装置11に装着されていて、給湯口6に臨んだ該給湯口6の上方に配設される。湯面の揺れが収まってから湯面検出を行う場合には、金属溶湯がラドル4から射出スリーブ7内に注ぎ込まれるのが完了してから0.1秒以上2.0秒以内(特に好ましくは、1.02秒から1.5秒後)に、射出スリーブ7内の金属溶湯の湯面高さhを測定する。なお、本実施例の湯面検出センサー10は測定を行うとき、昇降又はスライド等をする移動装置11により給湯口6付近まで下降される。
湯面検出のタイミングは、射出開始前もしくは、低速射出後で高速射出前に検出することができる。
別実施例においては、図5に示すように、射出スリーブ7の給湯室71内に実際に給湯された溶湯量の計量は、射出スリーブ7の給湯口6の真上にレーザー変位センサーである湯面検出センサー10の計測結果により求められる。この湯面検出センサー10を取り付け、金属溶湯がラドル4から射出スリーブ7内に注ぎ込まれるのが完了してから溶湯面が安定する時間経過後(0.1秒以上2.0秒以内(本実施例では1.2秒後)に、射出スリーブ7の底面をゼロ点として、給湯後の溶湯面の高さhを計測することが可能である。そして、溶湯面の高さから射出スリーブ7の給湯室71内の溶湯充填部(図5においてハッチングで示す部分)の断面積を算出し、溶湯充填部の断面積と溶湯充填部の長さL(プランジャーチップ面から当該プランジャーチップ面と対向する分流子72までの長さ)とを用いて溶湯の体積、すなわち、実際に給湯された溶湯量を演算によって求めて計量する。この実施例の湯面検出センサー10は、センサー本体からレーザー光を放ち、測定面から反射したレーザー光の角度により距離を計測するものである。
実際に供給された溶湯量の計量値に基づいてダイカストマシンを制御する制御手段12には、軸線方向が水平に配置された円筒状の射出スリーブ7の内径d、及び射出スリーブ7内の長さ等の寸法のデータが格納された記憶手段16が接続されている。
制御手段12に備えた演算手段17は、射出スリーブ7の給湯室71内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さhと、射出スリーブ7の内径dと、射出スリーブ7内の溶湯充填部の長さL等の寸法とを用いて、ラドル4から射出スリーブ7内に注ぎ入れられた実際の金属溶湯の総溶湯量を演算により計量する。
次に、以上の実施例のように構成されたダイカストマシン1の動作について説明する。なお、図2において斜線で表したものは給湯室71内の金属溶湯である。図2(a)に示すように、射出プランジャ8が後退限A、湯面検出センサー10が上昇限に位置する状態において、溶解炉から汲み上げられた溶湯が、ラドル4が傾けられることにより上部開放部の給湯口6から射出スリーブ7の給湯室71内に注ぎ入れられる。注ぎ入れられている最中と注ぎ入れ完了後の0.1秒未満においては、湯面が波立つことから、本実施例では、溶湯が射出スリーブ7内に注ぎ入れられるのが完了してから溶湯面が安定する時間経過後に、湯面の乱れが収まるのを待って、湯面検出センサー10は射出スリーブ7内に注ぎ入れられた溶湯の湯面高さhを測定する。そのために、湯面検出センサー10は、図示しない計測時間設定手段を備えている。
次に、湯面検出センサー10を移動装置に設置した場合には、図2(b)に示すように、ラドル4が後退し、湯面検出センサー10が昇降又はスライド等をする移動装置11により給湯口6近くまで移動される。この状態で湯面検出センサー10により、射出スリーブ7内に注ぎ入れられた溶湯の湯面高さhが測定されると、制御手段12の演算手段17は、射出スリーブ7内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さhと、射出スリーブ7の内径dと、射出スリーブ7内の溶湯充填部の長さL等の寸法とを用いて、ラドル4から射出スリーブ7内に注ぎ入れられた金属溶湯の総溶湯量を演算する。そして、こうして計量された金属溶湯量は、射出プランジャ8が後退限Aから高速射出切替位置Bまで前進される低速射出工程(図2(c))や、射出プランジャ8が高速射出切替位置Bから充填完了位置である増圧切替位置Cまで前進される高速射出工程(図2(c))における切替位置の設定において効果的に利用される。また、本発明の補正方法に使用されるダイカストマシンは、複数の高速射出速度と位置(高速射出設定位置)が設定可能であり、演算された金属溶湯の総溶湯量は、当該高速射出設定位置での射出速度の制御にも適用される。
次に、本発明の実施例における射出条件の補正機能を説明する。本実施例のダイカストマシンの射出工程は、一般的に低速射出から始まり、高速射出充填、増圧による加圧工程で終わる。低速射出では、金型内のガスを金型外に放出し、溶湯がゲート位置(高速射出切替位置)に到達した際に高速射出に切り替える。高速射出では、キャビティに溶湯を短時間で充填し、その後、加圧工程で迅速に加圧を行い、製品の密度(強度)を確保する。その際の射出速度の切替位置(高速射出切替位置)や加圧動作開始位置(増圧切替位置)は、製品形状や金型に合わせて前後させ、最終的には製品の品質結果を基に最良の射出条件を導きだす。ダイカストマシンに設定される射出条件は、射出工程中の射出プランジャ8の位置と圧力を検出して速度や圧力の切り替えの指令を行う。
供給された溶湯量が安定しない場合に高速射出切替位置や増圧切替位置が同じであると、ダイカストマシンの射出動作に対する金型内の溶湯の流動到達位置がショット毎に異なることになり、ガス抜きや充填状態も安定しない。本来は、一定の量の溶湯を供給することができれば問題はない。しかし、ラドル式では給湯室内に供給される溶融の変動は避けられない。そこで、射出条件の補正が必要となる。それで、本発明の射出条件の補正方法においては、ラドル給湯により給湯量が変動しても溶湯が金型内の同じ位置で速度、工程の切り替えが行えるように、実際の給湯室71内の実際の溶湯量を計量し、射出動作の補正を行うものである。
射出条件の補正方法の手順は、以下の通りである。
(1)基準となる射出条件を決定する
(2)湯面検出センサーにより、溶湯液面高さを計測する
(3)給湯後の計測された溶湯液面高さから、ショット毎の給湯量を演算により計量する
(4)良品時の計算重量をダイカストマシンの記憶手段に記憶する
(5)ショット毎の計算重量と良品時の計算重量との差をプランジャ径から射出ストロークに換算する
(6)換算されたストロークを射出条件の高速切替位置(高速射出切替位置)以降の設定値に対し、射出動作補正を行う
つまり、湯面検出センサー10による計測結果に基づいて高速射出切替位置、高速射出設定位置(複数位置で設定可能)、増圧切替位置が実際の給湯量の増減により、前後に補正されるように、ダイカストマシンの動作が変更される。
以上のように本実施例のダイカストマシン1によれば、金型のキャビティ内に射出充填するための溶湯量の計量が、従来技術のように、ラドルにおける溶湯(射出スリーブ内に注ぎ入れられる前の溶湯)ではなく、ラドル4から注ぎ入れられた射出スリーブ7内の溶湯の計測された湯面高さに基づいて演算により計量されたものであることから、金型のキャビティ内に射出充填される溶湯量の計量を高精度に行うことが可能となる。そして、このような高精度な計量結果に基づき、射出工程や高速射出工程や増圧射出工程等の射出充填に係る動作制御を正確に行うことが可能となることから、ひいては製造される成形品の品質にバラツキが生じることを回避することが可能となる。
1 ダイカストマシン
2 固定金型
3 移動金型
4 ラドル
5 リンクアーム
6 給湯口
7 射出スリーブ
71 給湯室
72 分流子
8 射出プランジャ
9 射出シリンダー(進退駆動手段)
10 湯面検出センサー(磁歪式センサー、レーザ変位センサー、撮像カメラ)
11 移動装置(移動手段)
12 制御手段
13 作動流体供給装置
14 速度切替バルブ
15 位置センサー
16 記憶手段
17 演算手段
A 後退限
B 高速射出切替位置
C 充填完了位置、増圧切替位置
d 内径
h 湯面高さ
L 長さ

Claims (4)

  1. 溶解炉から金属溶湯を汲み上げるラドルと、該ラドルにより汲み上げられた前記金属溶湯が注ぎ入れられる筒状の射出スリーブと、射出スリーブ内で進退される射出プランジャと、該射出プランジャを進退させる進退駆動手段とを備え、該進退駆動手段により前記射出プランジャを前進させることにより、前記射出スリーブ内に有する前記金属溶湯を型閉された金型のキャビティ内に射出充填するダイカストマシンの射出条件の補正方法であって、
    前記ラドルから前記射出スリーブ内に注ぎ入れられた前記金属溶湯の湯面高さを湯面検出センサーにより計測し、その計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて射出条件を補正することを特徴とするダイカストマシンの射出条件の補正方法。
  2. 前記湯面検出センサーによる計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて、低速射出から高速射出に切り替える高速射出切替位置を補正することを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシンの射出条件の補正方法。
  3. 前記湯面検出センサーによる計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて、高速射出設定位置を補正することを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシンの射出条件の補正方法。
  4. 前記湯面検出センサーによる計測結果により給湯量を演算して計量し、その計量結果に基づいて、充填完了直前の増圧切替位置を補正することを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシンの射出条件の補正方法。
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