図1は本発明の視線誘導標支持器材の実施例を示す斜視図であり、図2は図1に示す視線誘導標支持器材の構造を示す図であり、特に図2(A)には上面図、図2(B)には側面図、図2(C)には背面図を示す。
視線誘導標支持器材1は、視線誘導標2(図4以降に示す)を被着体構造物5(図5以降に示す)に取り付ける器材である。視線誘導標2は、反射機材(デリニエータ)であり、道路を通行する車両のドライバーの視線誘導のための標識である。被着体構造物5は、例えばガードレール、道路脇の縁石、トンネルの側壁等である。
視線誘導標支持器材1は、平板部11、接続部12、平板部13、端部14を有する。平板部11(第1の平面を有する部分)は、視線誘導標2が貼付される貼付面を有する平板状の誘導標支持部である。また、平板部13(第2の平面を有する部分)は、その底面を被着体構造物5に当接して固定される平板状の構造物取付部である。視線誘導標支持器材1は、構造物取付部から誘導標支持部とのなす角度が60度〜90度の所定の支持角度で立ち上がるように形成される。
接続部12は、平板部11と平板部13とを接続する構造部分であり、平板部11と平板部13とが所定の支持角度を成すように形成される。接続部12は、所定の支持角度を形成する側に、例えば所定のR(半径Rを有する円の一部)を有するコーナーを有しても良い。所定のRは、例えば平板部11の肉厚と同程度の半径である。
端部14は、構造物取付部の平板部13が、誘導標支持部と交わる部分からさらに水平方向に、かつ断面が逆T字状の形になるように延び、その延びた水平方向の構造物取付部の端の部分である。また、端部14の先端面は、構造物取付部の底面に対して鋭角(例えば45度)の傾斜を有するように形成される。なお、端部14の前述の逆T字状の構造を、図2(B)に示すようにT字構造と呼ぶ。
視線誘導標支持器材1は、図2(A)及び図2(C)に示すように平板部13側にボルトのヘッドに嵌挿させるためのU字形切欠131を有する。なお、U字形切欠131に変えて、ボルト締結孔を有する構造であっても良い。
視線誘導標支持器材1は、主体成形材料として熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomers)が用いられ、上記構造を有するように一体成形により形成される。例えば、熱可塑性エラストマーの主体成形材料は、オレフィン系TPE/スチレン系TPE/塩化ビニル系TPE/ウレタン系TPE/ポリエステル系TPE/ポリアミド系TPE等である。
視線誘導標支持器材1は、可撓性・弾性力のある熱可塑性エラストマーで形成されているため、誘導標支持部の視線誘導標2が貼付された平面に加わる圧力に対して、構造物取付部と誘導標支持部とのなす角度が支持角度より小となるように誘導標支持部が屈曲し、加圧が解放されたときに、元の支持角度に復元する。
視線誘導標支持器材1によれば、上記構造を有するように可撓性のある熱可塑性ポリウレタンエラストマーで一体成形されて製作されるため、柔軟かつ復元性がある。これにより、視線誘導標支持器材1がガードレール・トンネルの側壁等に設置され、除雪作業、車両の衝突等による雪圧・衝撃等の外力を受け流すため、破損等を回避することができる。また、視線誘導標支持器材1から外力が解放されると、元の状態に戻るため、補修・施工作業等の労力を低減することができる。さらに、視線誘導標支持器材1が熱可塑性ポリウレタンエラストマーであるため、風圧等により視線誘導標支持器材1に貼付された視線誘導標2が小刻みな振動となる。その結果、視線誘導標2に付着した雪が落ち易く、雪の付着による汚れを低減することができる。以下、図面に従って具体例を説明する。
(例1)
図3は、視線誘導標支持器材1(1A)の他の実施例の斜視図であり、図4(A)および図4(B)は、視線誘導標2が貼付された視線誘導標支持器材1Aの斜視図及び側面図である。
図3に示す視線誘導標支持器材1Aの構造の一例は、特に貼着設置に適する場合の構造例であり、図1に示す視線誘導標支持器材1に比較して、さらに雪圧、衝撃力等の外力を分散させ、被着体構造物5との貼着面における接着力を高める構造である。以下に、図4(A)及び図4(B)を参照しながら、図3に示す視線誘導標支持器材1Aの構造の概要について説明する。
視線誘導標支持器材1Aは、平板部11、接続部12、平板部13、端部14を有する。平板部11は、視線誘導標2が貼付される貼付面を有する平板状の誘導標支持部である。平板部13は、その底面が被着体構造物5(図5参照)に当接して固定される平板状の構造物取付部の部分である。
端部14は、構造物取付部の平板部13が、誘導標支持部と交わる部分からさらに水平方向に、かつ断面が逆T字状の形になるように延び、その延びた水平方向の構造物取付部の端の部分である。また、端部14の先端面は、構造物取付部の底面に対して鋭角(例えば45度)の傾斜を有するように形成される。即ち、端部14の逆T字状の構造は、図4(B)に示すように前述したT字構造と同様である。
接続部12は、平板部11と平板部13とを接続する構造部分であり、特に視線誘導標2の貼付面側に凸型である所定のR(円の一部)で形成される凸部112を有する。なお、当該部分の構造を、図4(B)に示すようにR構造と呼ぶ。
この所定のRは、例えば、平板部11の肉厚が2mm程度の場合に、好ましくは1R(1mm)〜5R(5mm)程度の範囲である。
さらに、この所定のRで形成される凸部112の肉厚は、平板部11の肉厚よりも薄く形成するようにしても良い。例えば、平板部11の肉厚が2mmである場合に、凸部112の肉厚は1.5〜1.9mm程度とされる。
視線誘導標支持器材1Aは、上記のような構造を有し、さらに構造物取付部から誘導標支持部とのなす角度が60度〜90度の所定の支持角度で立ち上がるように熱可塑性エラストマーを主体成形材料として一体成形により形成される。例えば、支持角度は80度である。
以下に、図3に示す視線誘導標支持器材1Aの効果について説明する。一般に、接着したときに形成される接着層には、様々な応力が発生する。特に、接着層に受ける応力の基本形は引張り力、せん断力、割裂力、剥離力の4つに分けられる。この4つの基本形の中で、引張り力、せん断力は接着面全体に一様な応力を受ける。したがって「できるだけ最大の面積に、一様に応力を分布させる構造」が最も望ましい構造である。
しかし、割裂、剥離の場合には、接着面の一方あるいは端部に応力が偏る。特に、視線誘導標支持器材1Aでは、せん断力と剥離力との応力に対処する構造が求められる。以上の観点に鑑みて、図3に示す視線誘導標支持器材1Aにおいては、特に端部14、凸部112が設けられる。これにより、視線誘導標支持器材1Aが被着体構造物5に貼着された場合に、さらに雪圧・衝突等の外力による構造物取付部が剥離する方向への力を弱め、被着体構造物5との貼着面における接着力を高める。具体的には、視線誘導標支持器材1Aの構造では、以下の(1−1)乃至(1−5)の点において特徴を有する。
(1−1)R構造及びT字構造により、接合部(構造物取付部、誘導標支持部)にかかる応力を小さくする構造である。
(1−2)R構造及びT字構造により、接着剤の最高強度の方向(せん断、引張り)に応力がかかる構造である。
(1−3)R構造及びT字構造により、接着剤の最低強度の方向(剥離)にかかる応力を小さくする構造である。
(1−4)T字構造により、接着剤面積をできるだけ大きくする構造である。
(1−5)R構造により、視線誘導標2の剥離する応力を分散させる構造である。
図5(A)及び図5(B)は、視線誘導標支持器材1Aの外圧を受け流す動作の説明図である。なお、図5(A)及び図5(B)では、視線誘導標支持器材1Aが被着体構造物5に貼着設置される場合を示す。
図5(A)において、視線誘導標支持器材1Aが貼着設置された場合に、例えば水平方向に最大となる除雪時の雪圧31により発生するせん断力・引き裂き力(剥離力)に対しては、視線誘導標支持器材1Aと被着体構造物5(例えばガードレール)を貼着(接着)している粘着材等の接着力が対抗する。
具体的には、視線誘導標支持器材1Aが雪圧31を受け、平板部11が屈曲し、破線に示す力32及び33が作用する。これにより、被着体構造物5に貼着された平板部13及び端部14にせん断力(水平方向)と剥離力(垂直方向)とが作用する。この剥離力に対して、視線誘導標支持器材1AにおけるT字構造により、T字構造のない場合に比べて、特に図5(A)に示す接着力34の部分の接着力が増強される。
図5(B)において、例えば視線誘導標2に対する剥離力が最大となる方向からの雪圧41に対して、視線誘導標支持器材1Aは、その剥離力を低減する。具体的には、凸部112が屈曲することにより、誘導標支持部にかかる雪圧41を、例えば破線に示す分散力44と45とのように分散させる。これにより、視線誘導標2が平板部11に粘着、接着等により貼付された場合に、それに作用するせん断力・剥離力(分散力45)を低減することができる。なお、前述の説明と同様に、例えば破線の力42と43とによる分散力となるため、局部に集中する剥離力を低減し、視線誘導標支持器材1Aの被着体構造物5からの剥離、脱落等を防止する。
以上説明したように、視線誘導標支持器材1Aは、特に貼着設置の場合において、例えば固定手段として両面粘着テープ等を用いて、視線誘導標支持器材1Aを被着体構造物5に貼着して、脱落を防止するために適した構造を有する。これにより、例えば被着体構造物5としてガードレール等でボルト止めの固定手段が採用できない設置状況にある場合に、視線誘導標支持器材1Aを貼着設置させても、剥離、脱落等を防止することができる。
(例2)
図6は、視線誘導標支持器材1(1B)の更に他の実施例の側面図である。
図6において、視線誘導標支持器材1Bは、平板部11、接続部12、平板部13、端部14を有する。平板部11は、視線誘導標2(図示せず)が貼付される貼付面を有する平板状の誘導標支持部である。また、平板部11には、視線誘導標2の貼付面と反対側の面に肉厚薄部113を含む。肉厚薄部113の肉厚は、平板部11の肉厚よりも薄く形成される。例えば、肉厚薄部113の肉厚が薄く形成される。例えば、平板部11の肉厚を100%とする場合に、肉厚薄部113の最も薄い箇所の肉厚が20%〜80%となるように形成される。なお、図6に示す実施例において、肉厚薄部113の形状は、平板部11の貼付面と反対側が凹型構造により薄く形成されるが、貼付面側が凹型構造であっても、両側が凹側構造であっても良い。
平板部13は、その底面が被着体構造物5(図示せず)に当接して固定される平板状の構造物取付部の部分である。
端部14は、構造物取付部の平板部13が、誘導標支持部と交わる部分からさらに水平方向に、かつ断面が逆T字状の形になるように延び、その延びた水平方向の構造物取付部の端の部分である。また、端部14の先端面は、構造物取付部の底面に対して鋭角(例えば45度)の傾斜を有するように形成される。端部14の前述の逆T字状の構造は、図6に示すようにT字構造である。
視線誘導標支持器材1Bは、上記のような構造を有し、さらに構造物取付部から誘導標支持部とのなす角度が60度〜90度の所定の支持角度で立ち上がるように熱可塑性エラストマーを主体成形材料として一体成形により形成される。
視線誘導標支持器材1Bは、非常に簡易な構造で形成することができる。また、雪圧、衝撃等の外力を受けて肉厚薄部113が屈曲した場合に、肉厚薄部113の肉厚を平板部11の肉厚と同程度に形成する場合に比べて、その外力をより分散させることができる。この結果、肉厚が平板部11の同程度に形成する場合と比べて、視線誘導標支持器材1Bが屈曲しやすくなることにより他の部分の応力(引張り力)が小さくなるため、貼着設置された場合において端部14にかかる剥離力も小さくなる。
視線誘導標支持器材1Bは、例えば被着体構造物5としてガードレール等でボルト止めの固定手段が採用できない設置状況にある場合に、貼着設置の固定手段を採用する場合に適した支持器材である。また、視線誘導標支持器材1Bは、非常に簡易な構造で形成することができるため、製造コストの点においても低コストで製作することができる。
(例3)
図7は、エラストマーのガラス転移点Tgを示す図である。
図7において、横軸に複数の硬度のエラストマーを、縦軸にガラス転移点Tg(℃)を示す。ガラス転移点Tgとは、「硬くてもろい状態」から「粘弾性的もしくはゴム弾性的状態」変化する転移温度である。なお、試験データの一例は、DIN51007に準拠した測定手段により、示差走査熱量計で昇温条件10℃/分で測定されたものである。
図7に示すa〜cのエラストマーの種類は耐水性ポリエステルであり、d〜fのエラストマーの種類はポリエーテルである。複数のエラストマーa(85A)、b(95A)、c(64D)等の括弧の中は、JIS K7311に対応する硬度を示す。その付記中のA又はDは、JIS A又はJIS Dに対応するタイプであり、具体的には、タイプAは軟らかいタイプ(ゴム領域)、タイプDは硬いタイプ(プラスチック領域)である。85、95、64等の数値は、0〜100の間であり、硬いものほど大きい値を示す。なお、これらの範囲は、一部オーバラップする。
図7に示されるように、低硬度のエラストマーほど、ガラス転移点Tgは低くなる。例えば硬度85A〜64Dのガラス転移点Tgは、−40℃〜−12℃でもゴム弾性体である。従って、雪氷期の積雪地域における環境下で設置される視線誘導標支持器材1の成形材料として、少なくともこのような特性を有する熱可塑性エラストマーは適したものであると考えられる。
このように、雪氷期の最悪の設置環境、材料コスト等を考慮して、熱可塑性エラストマーの種類を選択する必要がある。例えば、この他にもポリウレタン系熱可塑性エラストマー(以下、TPUと言う)の場合に、硬度80A〜64Dのガラス転移点Tgは、−40℃〜−12℃でもゴム弾性体であり、埋雪・除雪時の圧力により破断・破壊されることはなく、また、製造コストに占める材料コストの面でも有利である。
視線誘導標支持器材1の弾性変形は、埋雪、除雪時に発生する雪圧等の場合に最も過酷な環境条件と考えられる。以下の説明は、例えば、TPUの素材の熱可塑性エラストマーが、上記のような環境条件の使用に十分耐えられるものであることを示す。
図8(A)は、TPUの素材の場合のヒシテリス曲線を示す図である。図8(A)において、横軸に試験対象物の伸び率(%)、縦軸に引張応力をメガパスカル(MPa)の単位で示す。なお、図8(A)に示す試験の一例は、JIS K6262に従って、TPU硬度を95A、100mm/min伸長時の条件において測定されたものである。
図8(A)に示すヒステリシスカーブh1〜h5は、引張応力及び伸びのかかり具合いに応じて残留伸びがどの程度になるかを示している。例えば、試験対象が最大15Mpa〜20Mpa程度までの引張応力と、最大150%程度の伸びとにより伸長されると、図8(A)に示すようにヒステリシスカーブh1を描く。その引張応力がヒステリシスカーブh2に示すように、徐々に解放されて引張応力が0となった場合に、試験材料の伸びは50〜70%程度の残留伸び(永久伸び)となる。
しかし、視線誘導標支持器材1の用途では、引張応力も数百キロパスカル(kPa)以下であり、伸びもわずか数%程度であることから、例えばヒステリシスカーブh5に示すような戻りとなるため、残留伸びは極めて小さいものである。なお、以上のようなことが、曲げや圧縮の場合においても同様に言える。
図8(B)は、TPUの素材の場合のクリープ特性を示す図である。図8(B)において、横軸に試験対象物の伸び率(%)、縦軸に引張応力(MPa)を示す。なお、図8(B)に示す試験の一例は、ISO899に従って、試験対象物のTPU硬度を85A、室温(23℃)での100mm/min伸長時の条件において測定されたものである。
クリープ特性は、材料に一定の温度で引張り荷重又は圧縮荷重をかけたときに、時間当たりの変形量(伸び)を示す特性である。具体的には、図8(B)には、1h(時間)〜100000hの同一時間に対するクリープ特性を示す。図8(B)によると、例えば雪圧が同じでも長時間の状態で保持されると、引張り応力が数百kPa以下であり、材料の伸びは、時間1hのときに比べて時間1000hのときには、最大1%程度大きいことになる。なお、23℃よりも低温(氷点下の温度等)である場合には、上記伸びの割合は小さいと言える。
図8(A)及び図8(B)に示される特性を考慮しても、埋雪・除雪時に発生する雪圧により長時間伸張される場合における残留伸びは、数%程度以下と実用上小さい値と考えられ、視線誘導標支持器材1にとって問題はないと考えられる。また、短時間伸長であれば、残留伸びは1%程度であり、同様に問題はないと考えられる。従って、視線誘導標支持器材1は、例えば雪解け後、除雪後等に圧力が開放され場合に、元の形状に復元することができる。
図7及び図8等に示す特性、設置環境・条件、製造コスト等を考慮し、好ましくは、視線誘導標支持器材1に主体成形材料としてポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)を用いる。
この視線誘導標支持器材1は、一方の平板である平板部11と、他方の平板である平板部13とを有する。この平板部11及び平板部13の厚みと硬度とは、衝撃が加わったときには容易に変形して衝撃が逃がされると共に、人・車両等に損傷を与えず、かつ、風圧を受けたり強風にさらされたりしても振動を抑制するように設計される。
前述の観点から、平板部11、平板部13の肉厚はいずれも1〜8mm程度の範囲に設定することが好ましく、そのとき平板部11、平板部13の厚みは同じであっても異なっていてもよい。また、平板部11、平板部13の硬度は、いずれも硬度80A〜64Dの範囲内にあることが好ましい。
以上のことから、実用上、上記の肉厚、硬度を有するポリウレタン系熱可塑性エラストマーにより製作された視線誘導標支持器材1は、埋雪・除雪時の圧力により破断・破壊されることはない。
(例4)
視線誘導標支持器材1には、視線誘導標2の反射材(反射シート20)として、例えばマイクロプリズム層の背面側に金属蒸着層が配置した構造のマイクロプリズムシートが用いられる。マイクロプリズムシートは、薄く、柔軟性があり、再帰反射率が高い。一般に、ガラスビーズを利用したシートやプラスチックスレンズは、上記のマイクロプリズムシートに比して厚く、屈曲時に割れが発生し易く、また、視線誘導性が劣る。なお、複層構造に比して単層構造のマイクロプリズムシートは、屈曲時の割れが発生し難い。
図9(A)は、単層構造の反射シート20(マイクロプリズムシート)の一例を示す図であり、図9(B)は、視線誘導標2の視線誘導標支持器材1(図2に示す)への貼付の説明図である。
視線誘導標2は、例えば反射シート20を所定の大きさ、形状にしたものが用いられる。反射シート20は、視認性を有するように光が反射する再帰性反射材からなり、例えば単層構造のマイクロプリズムシートである。
図9(A)に示すように、マイクロプリズムシートの代表的なものは、反射シート20としてマイクロプリズム層24の片面に金属蒸着層25を配置し、そのマイクロプリズム層24の他面に着色層22(又は非着色)と基材層23との樹脂層を位置させたものである。この着色層22は、マイクロプリズム層24形成のためのキャスティングを厚めに行うことによりマイクロプリズム層24と一体になっていてもよく、マイクロプリズム層24とは別に樹脂の保護コーティング(又は樹脂フィルム)の貼着により設けてもよい。
樹脂層はマイクロプリズム層24の保護の役割を果たすと共に、この樹脂層を着色または非着色とすることにより金属蒸着層25による色調を金色や銀色にすることができる。なお、マイクロプリズム層24と金属蒸着層25との間には密着性を確保するために蒸着下地層を設けてもよい。樹脂層の上にはさらに反射材の表面を保護する保護コーティング層21が設けられる。
反射シート20の厚みに特に限定はないが、例えば、通常は0.1〜2mm程度とする。反射シート20は、上記の範囲内で薄目の方が、屈曲性能、衝撃性能の点で好ましい。反射シート20として、図9(A)に示す例のように粘着剤層26を有する場合には、反射シート20の離型紙27を剥離除去してから、図9(B)に示すプレート28の外面に圧着されて、貼付される。プレート28は、例えばポリカーボネードである。プレート28の厚みに特に限定はないが、図9(B)に示す例では、平板部11の肉厚と同程度かもしくはそれより薄い厚みである。
このように反射シート20をプレート28に予め貼付し、そのプレート28を視線誘導標2として、視線誘導標支持器材1の平板部11の面に接着剤又は粘着剤等で貼付する。以上のようにプレート28に貼付された反射シート20は、視線誘導標支持器材1の平板状の誘導標支持部(図9(B)の平板部11)が外部からの物理的な力により変形しても、反射シート20が破損するおそれがない。
視線誘導標2に、単層構造のマイクロプリズムシートの反射シート20を用いることにより、水の進入/割れ/破れ等に強く、衝撃にも強い。従って、視線誘導標2が貼付された視線誘導標器材1をガードレール等へ設置した場合に、雪圧・車輌接触時の衝撃による割れ、破損等を回避することができる。
(例5)
図10は、視線誘導標支持器材1における視線誘導標2を貼付した例を示す斜視図である。特に、図10(A)は平板部13がU字形切欠131を有する平面であることを示す斜視図であり、図10(B)は平板部13が貼着占有面を有する平面であることを示す斜視図である。
図10(A)に示す視線誘導標支持器材1は、図2に示した視線誘導標支持器材1であり、平板部13にボルトのヘッドに嵌挿させるためのU字形切欠131を有する。図10(A)における視線誘導標支持器材1は、平板部11に視線誘導標2が貼付され、平板部13のU字形切欠131がボルトのヘッドに嵌挿されて、被着体構造物5に固定される。
図10(B)に示す視線誘導標支持器材1は、図2に示す視線誘導標支持器材1において平板部13にU字形切欠131を有さない構造であり、平らな平面を有する。図10(B)における視線誘導標支持器材1は、平板部11に視線誘導標2が貼付され、平板部13の底面が被着体構造物5に貼着されて、被着体構造物5に固定される。
以上のように、視線誘導標支持器材1の平板部13側に、被着体構造物5へ固定する固定手段が設けられる。以下に、視線誘導標支持器材1の複数の固定手段について説明する。
(2−1)アンカーボルト設置
図11(A)は、視線誘導標支持器材1の固定手段の一例の斜視図であり、図11(B)は、視線誘導標支持器材1の固定手段の一例の側面図である。
図11(A)及び図11(B)において、平板部13の面には、固定手段としてボルト締結孔が設けられている。なお、視線誘導標2が貼付された視線誘導標支持器材1の設置前の状態は、例えば前述の図10(B)に示す視線誘導標支持器材1の平面部13の中央付近にボルト締結孔を備えている。
図11(A)及び図11(B)の例では、施工者、保守者等が、被着体構造物5への視線誘導標支持器材1の固定手段として、ボルト締結孔に貫通されたボルト3により被着体構造物5に固定する場合を示す。このような固定手段が適用される被着体構造物5は、例えば道路脇のコンクリート高欄、トンネル内のコンクリート側壁等であり、ボルト3はアンカーボルトである。なお、例えば被着体構造物5がガードレールの場合には、ボルト3とナット等とを用いて締結する固定手段であっても良い。
(2−2)ボルト差込設置
ボルト差込設置の例においては、図10(A)に示すような視線誘導標支持器材1のU字形切欠131を利用して、ガードレールにボルト止めされる。このような固定手段が適用される被着体構造物5は、例えばガードレールのビーム内凹部、仮設用道路仕切りフェンス等である。
(2−3)貼着設置
貼着設置の例においては、図10(B)に示すような視線誘導標支持器材1の平板部13を底面とし、例えば固定手段として両面粘着テープ等を用いて、その底面が被着体構造物5に当接して固定されるように貼着する。更に、好ましくは脱落を防止するためにその両面粘着テープの周辺領域に接着剤等が塗布される。このような固定手段が適用される被着体構造物5は、ガードレールのビーム内凹部等である。具体的には、視線誘導標支持器材1に視線誘導標2が貼付された状態、即ち図10(B)に示すような状態で、施工者、保守者等が構造体取付部の底面を両面粘着テープ等により視線誘導標支持器材1を被着体構造物5に貼着する。
貼着設置の固定手段は、構造物取付部の底面に設置するための粘着剤または/および接着剤であることが好ましい。粘着剤を用いる場合は、両面粘着テープの形で設置することが多く、この場合には予め構造物取付部の底面に両面粘着テープを貼着しておくか(離型紙などの剥離シートで覆っておく)、現場で両面粘着テープを貼着することができる。
粘着剤としては、例えばブチルゴム系の粘着剤、アクリル系の粘着剤等である。接着剤としては、エポキシ系、合成ゴム系、エポキシ変性シリコーン系接着剤等である。粘着剤または接着剤による密着力を向上させるため、構造物取付部の底面に、ウレタン系、その他のプライマーで処理しておいても良い。プライマー処理を施しておくと、風圧、強風、雨圧などによる振動が少なくなり、熱による膨張、収縮に対しても強固な固着が図られる。また、粘着剤と接着剤とを組み合わせて用いても良い。
上記の例では、図1に示す視線誘導標支持器材1の成形形態もしくは加工形態により、3種類の設置形態に対応できることを示した。なお、平板部13にU字形切欠131が設けられた視線誘導標支持器材1を、ボルト差込設置だけでなく、貼着設置に用いても良い。また、平板部13にボルト締結孔が設けられた視線誘導標支持器材1を、アンカーボルト設置だけでなく、貼着設置に用いても良い。即ち、このような視線誘導標支持器材1の構造を有する場合には、(2−1)及び(2−3)、又は、(2−2)及び(2−3)のいずれかに対応する構造であり、1種類の視線誘導標支持器材1で2種類の設置形態に対応することができる。
一方、平板部13にU字形切欠131、ボルト締結孔を設けずに貼着専用のための一様な貼着面を有する視線誘導標支持器材1のような構造であっても良い。このような視線誘導標支持器材1の構造の場合には、両面粘着テープ、接着剤等が塗布される貼着面の面積をより大きく設けることができ、貼着面全体に一様な応力を受ける。したがって、前述した(2−3)貼着設置形態において、「貼着面をできるだけ最大の面積に、一様に応力を分布させる構造」の点から有利となる。
以上のように、視線誘導標支持器材1は、可撓性のある熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いて雪圧・衝撃等の外力を容易に受け流す構造を有し、かつ、視線誘導標支持器材1の貼付面よりも大きい反射材(視線誘導標2)を貼付することができ、貼付される反射材(視線誘導標2)の形状、大きさについても幅を持たせて対応できる構造を有する。また、1つの視線誘導標支持器材1で複数の固定手段に対応できる構造を有する。
さらに、このような視線誘導標支持器材1によれば、複数の設置形態に対応して共通の視線誘導標支持器材を用いることができるため、視線誘導標支持器材の製造コストを大幅に低減することができる。一方、施工者・保守者側にとっても、複数の設置形態に共通の視線誘導標支持器材を用いることができるため、視線誘導標の施工部材、保守部材等の種類を削減することができ、余分な部材を極力抑えることができる。加えて、視線誘導標支持器材1は平薄板状、かつ、軽量である。これにより、運搬、施工及び保守管理面においても労力を大幅に低減することができる。
図12(A)及び図12(B)は、台形型視線誘導標を設置した例を示す図である。特に、図12(A)にはボルト差込設置の一例を示し、図12(B)には貼着設置の一例を示す。
図12(A)及び図12(B)に示す台形型視線誘導標は、図10(A)又は図10(B)に示す例のような視線誘導標支持器材1と台形型の視線誘導標2とから構成される。なお、図12(A)に示す視線誘導標支持器材1の平板部13には、図10(A)に示すU字形切欠131が設けられ、図12(B)に示す視線誘導標支持器材1の平板部13は、図10(B)に示す平らな貼着面を有する。
視線誘導標支持器材1の形状は、例えば、図12(A)及び図12(B)に示すようなガードレール(被着体構造物)5のビーム内凹部に設置する場合に、平板部11及び平板部13の肉厚=2mm、平板部11の大きさ=L字の底面部分の長さ55mm×幅50mm、平板部13の大きさ=L字の立ち上り部分の長さ44mm×幅50mm、接続部12のR2mm、支持角度80度である。なお、平板部11及び13の端部の端面の傾斜の角度は、各々、ほぼ45度の角度である。また、図12(A)に示す視線誘導標支持器材1のU字形切欠131が設けられる場合には、U字高さ35mm、U字幅22mmとされる。なお、平板部13にボルト締結孔が設けられる場合には、例えばその直径は8mmである。
上記視線誘導標支持器材1に貼付される視線誘導標2の台形型の形状は、例えば、その台形の下底の長さ50mm、上底の長さ120mm、高さ93mmである。なお、台形の上底の角部は、丸みをつけている。視線誘導標2の反射材(反射シート20)としては、例えば、前述の図9に示す単層構造のマイクロプリズムシートを用いる。
図12(A)では、視線誘導標支持器材1と上記視線誘導標2とを組み合せた台形型視線誘導標がガードレール5のビーム内凹部にボルト差込設置された場合に、視線誘導標支持器材1が熱可塑性ポリウレタンエラストマーで構成されているため、雪圧・衝撃等を受け流すことができる。さらに、視線誘導標2が台形型の形状を有するため、雪圧・衝撃等の外力を受け流した後に、視線誘導標支持器材1が変形し、視線誘導標2がガードレール5のボルト51の両側のボルト52に挟まることを回避できる。従って、雪圧・衝撃等による外力を受けて変形し、その外力が解放されると元の状態に容易に戻るため、元の状態に戻す等の保守作業の労力を大幅に低減することができる。
図12(B)では、視線誘導標2が貼付された視線誘導標支持器材1をガードレール5へボルト差込設置ではなく、貼着設置による簡易な設置作業で設置された場合を示す。この場合には、ガードレール5側にボルト固定手段を必要とせず、視線誘導標支持器材1を現場でガードレール5に貼着するだけであり、補修・施工作業等の労力を大幅に低減することができる。
(例6)
図13は、視線誘導標支持器材1における視線誘導標2を貼付した他の一例を示す図である。特に、図13(A)には側面図を示し、図13(B)には前面図を示し、図13(C)には斜視図を示す。
図13(A)、図13(B)及び図13(C)において、複数の視線誘導標2Aが貼付されたプレート28を複数の視線誘導標支持器材1で取付けた例を示す。視線誘導標2Aは、例えばマイクロプリズムシートであり、予め所定の形状、大きさに切断されたものが、プレート28に貼付される。プレート28は、例えばポリカーボネイドからなり、プレート28の大きさは、視線誘導標支持器材1の大きさよりも数倍〜数十倍程度大きいものとされる。例えば、例5に示した視線誘導標支持器材1の大きさに対して、プレート28の大きさは縦=500mm、横=100mmである。
図13に示すように、3つの視線誘導標支持器材1が、1つのプレート28に均等な間隔で取付けられる。視線誘導標支持器材1のプレート28への取付け方法は、前述したような視線誘導標支持器材1の平板部11に両面テープ、粘着剤等による。
図14は、図13に示す視線誘導標支持器材1を被着体構造物5へ設置した一例を示す図である。特に、図14(A)には側面図を示し、図14(B)には斜視図を示す。
図14(A)及び図14(B)において、前述の図13に示したプレート28を、複数のプレート28を1つの単位とする視線誘導標識となるように、被着体構造物5(例えば、ガードレール)に設置した場合の一例である。この場合に、各々のプレート28では、視線誘導標2A(図13参照)の大きさ、形状が変えられて貼付され、全体(例えば、5組のプレート28)として1つの単位の視線誘導標識となる。なお、図14(B)に示すような場合に、1つのプレート28に貼付された少なくとも2つの視線誘導標支持器材1がガードレールに取り付けられる設置形態であっても良い。なお、設置形態は、被着体構造物5に応じて、ボルト差込設置、貼着設置等により適宜選択可能である。
以上説明したように、視線誘導標支持器材1は、種々の形状の視線誘導標2と組み合せて、ガードレール等の被着体構造物5に設置することができる。このように、視線誘導標支持器材1の貼付面よりも大きい視線誘導標2を貼付することができ、かつ、貼付される視線誘導標2の形状、大きさについても幅を持たせて対応できる構造を有する。また、1つの視線誘導標支持器材1で、複数の固定手段に対応できる構造を有している。