JP5489162B2 - 車両用座席構造 - Google Patents

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本発明は、車両用座席構造に関し、特に、シートベルトと、シートクッションの内部に設けられたシートフレームとの干渉を防止するための構造に関する。
自動車に配設されるシートベルト装置として、リトラクタから引き出したシートベルトを、ショルダ、バックル、及び、アンカーの3点で支持するいわゆる3点式のシートベルト装置が周知である(例えば、特許文献1参照)。
また、車両用シートのシートクッションとして、シートクッションを支持するシートフレームと、シートクッションの形状を維持する形状維持ワイヤとを有する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−123000号公報 特開2007−159628号公報
図8に、自動車のシート101の一構成例を示す。このシート101は、図8(a)に示すように、シートクッション110及びシートバック120からなり、シートクッション110は、クッション体111と、クッション体111を支持するシートフレーム112とを備える。シートフレーム112は、図8(b)に示すように、クッション体111を下方から支持している。シートフレーム112の車体後方端部付近はフレームカバー113で覆われている。尚、以下の説明では、車体前後方向を単に「前後方向」、車体幅方向を単に「幅方向」と言う。
平常時(自動車の停止時や通常走行時)には、図8(a)に示すように、シートベルト装置102のシートベルトWは、フレームカバー113やクッション体111に接触するが、シートフレーム112と直接接触することはない。しかし、自動車の急ブレーキ時や衝突時には、図9(a)に示すように着座者Mが前方に投げ出され、これに伴ってシートベルトWが前方に強く引っ張られる。このとき、図9(b)に示すように、シートベルトWがクッション体111を切り裂き、シートフレーム112に幅方向外側から接触して損傷する恐れがある。特に、シートフレーム112を板金のプレス加工で形成し、図示のように幅方向外側に向けて断面略コの字形状とすると、幅方向外側の角部にバリが形成されるため、このバリにシートベルトWが接触して損傷する恐れが高くなる。
また、自動車の床面に設けられるシートベルト装置102のアンカー103は、安全性を高める観点から、より前方に配置される傾向にある。すなわち、図9に示すようにアンカー103が比較的後方に配置されると、衝突時にシートベルトW’の腰ベルト部が着座者Mの腹部に沿ってずり上がり(図9の点線参照)、着座者MがシートベルトW’をくぐり抜ける恐れがある。一方、図10に示すようにアンカー103を前方(例えば、シートバック120の真下付近)に配置すると、シートベルトWのずり上がりを防止し、着座者Mをシート101上に確実に拘束することができる。しかし、このようにアンカー103を前方に配置すると、急ブレーキ時や衝突時に、シートベルトWがシートフレーム112と干渉しながら前方に引っ張られる領域(図10にAで示す領域)が長くなり、シートベルトWが損傷する恐れが高くなる。
例えば、シートフレーム全体をフレームカバーで覆えば、シートベルトとシートフレームとの干渉を防止できるが、フレームカバーが大きくなるため、コスト高を招く。
本発明の解決すべき課題は、車両の衝突時等におけるシートベルトとシートフレームとの干渉を、低コストに防止することができる車両用座席構造を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、シートクッションと、シートクッションへの着座者が装着するシートベルトとを有する車両用座席構造であって、シートクッションが、シートクッションを支持するシートフレームと、シートクッションの形状を維持する形状維持ワイヤとを備え、形状維持ワイヤの一部をシートフレームより車体幅方向外側に配してこの部分をガイド部とし、形状維持ワイヤに接触したシートベルトをガイド部に沿わせて車体前方に滑らせながら車体幅方向外側に逃がすようにしたものである。
このように、本発明では、シートクッションの形状を維持する形状維持ワイヤを利用することにより、シートベルトとシートフレームとの干渉を防止している。すなわち、形状維持ワイヤの一部をシートフレームの幅方向外側に配することで、急ブレーキ時や衝突時にシートベルトが前方に引っ張られたときに、シートベルトがシートフレームに接触する前に形状維持ワイヤに接触するため、シートベルトとシートフレームとの干渉を防止できる。
ところで、自動車の衝突時等には、前方に投げ出された着座者の慣性力によりシートベルトのシートベルトが非常に大きな力で前方に引っ張られる。一方、形状維持ワイヤは、通常、シートクッションの形状を維持する程度の強度しか有していない。このため、衝突時等のシートベルトの大きな引っ張り力が形状維持ワイヤにまともに加わると、形状維持ワイヤが変形あるいは切断され、シートベルトがシートフレームに干渉する恐れがある。そこで、形状維持ワイヤに接触したシートベルトの引っ張り力を、ガイド部でまともに受け止めるのではなく、ガイド部に沿わせて前方に滑らせながら幅方向外側に逃がすことで、強度がそれ程高くない形状維持ワイヤでシートベルトとシートフレームとの干渉を防止することができる。
尚、シートベルトをガイド部に沿わせて前方に滑らせながら幅方向外側に逃がすためには、例えばガイド部を前方に向けて幅方向外側に傾斜した形状とすればよい。あるいは、平常時はガイド部が上記のように傾斜した形状でなくても、衝突時等にシートベルトから受ける引っ張り力でガイド部を上記のように傾斜させた形状にしてもよい。
以上のように、本発明の車両用座席構造によれば、車両の衝突時におけるシートベルトとシートフレームとの干渉を、シートフレーム全体を覆うフレームカバーを設けることなく低コストに防止することができる。
本発明の実施形態に係る車両用座席構造の正面図である。 図1の車両用座席構造の側面図である。 シートクッションの骨組部分の(a)側面図、(b)平面図、及び(c)正面図である。 シートクッションの骨組部分の(a)側面図、及び(b)平面図である。 他の実施形態に係るシートクッションの骨組部分の平面図である。 他の実施形態に係るシートクッションの骨組部分の(a)側面図、及び(b)正面図である。 他の実施形態に係るシートクッションの骨組部分の平面図である。 従来の自動車のシート(平常時)の一構成例を示す(a)側面図、及び(b)幅方向断面図である。 従来の自動車のシート(衝突時)の一構成例を示す(a)側面図、及び(b)幅方向断面図である。 従来の自動車のシートの他の構成例を示す側面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態に係る車両用座席構造は、例えば自動車のリア側の座席に適用されるものであり、図1に示すように、シートクッション10及びシートバック20からなるシート1と、シート1の着座者Mが装着するシートベルト装置2とを有する。
シートベルト装置2は、いわゆる3点式シートベルト装置であり、具体的には、リトラクタ3に引き出し可能に収容されたシートベルトWを、ショルダ4、バックル5、及び、アンカー6の3点で支持している。バックル5とアンカー6との間の腰ベルト部W1で着座者Mの腰部を拘束すると共に、ショルダ4とバックル5の間の胴ベルト部W2で着座者Mの胴体を拘束する。アンカー6は、図2に示すように、シートバック20の真下付近に配置され、具体的には、着座者MのヒップポイントPの水平方向後方を基準位置とし、この基準位置に対する角度αが30°〜80°の範囲内の床面(図2にBで示す領域)に配置される。尚、シート1が前後移動可能なスライド式である場合は、シート1をスライドさせたときでも常に上記の範囲内となる位置にアンカー6を配置することが望ましい。
シートクッション10は、図3に示すように、クッション体11(鎖線)と、シートクッション10を支持するシートフレーム12と、シートクッション10の表面を覆う表装材(例えば布地や合成皮革、図示省略)と、シートクッション10の形状を維持するための形状維持ワイヤ14とを有する。クッション体11は、ウレタン等の緩衝性の高い材料で形成される。
シートフレーム12は、例えば鋼板のプレス加工により、前後方向に延びた略直線状に形成される。本実施形態のシートフレーム12の断面は、幅方向外側に向けて開口したコの字形状を成している(図3(c)参照)。シートフレーム12は、クッション体11の幅方向両端縁に沿って一本ずつ設けられ、この一対のシートフレーム12によりクッション体11の下面が支持される。シートフレーム12の後方部分は、フレームカバー13で覆われている(図3(a)参照)。
形状維持ワイヤ14は、例えば中実の断面円形の鋼線材に曲げ加工を施して形成される。形状維持ワイヤ14は、主にシートクッション10の下部の縁に沿って設けられ、この形状維持ワイヤ14に表装材(図示省略)が固定される。図3に示すように、形状維持ワイヤ14の一端部14aは、シートフレーム12の上面12aに溶接固定される。図示例では、シートフレーム12のうち、フレームカバー13の直近位置に溶接固定される。
形状維持ワイヤ14には、シートフレーム12より幅方向外側に配されたガイド部Gが設けられる。ガイド部Gは、シートフレーム12とシートベルトWとが干渉し得る前後方向領域A内に設けられる。図示例では、フレームカバー13の前方端部から、フレームカバー13から前方に突出したシートフレーム12の前後方向略中央部までの範囲が上記の領域Aとされる。
本実施形態の形状維持ワイヤ14には、図3(b)に示すように、シートフレーム12に溶接固定された一端部14aから前方に向けて幅方向外側に傾斜した方向に延びる第1傾斜部14bが設けられ、この第1傾斜部14bがガイド部Gとして機能する。この第1傾斜部14bは、図3(a)に示すように、一端部14aから前方に向けて下方に傾斜し、シートフレーム12の幅方向外側を横切って、第2傾斜部14cに接続している。第2傾斜部14cは、前方に向けて下方に傾斜した方向に延び、シートフレーム12の下面12bとおよそ同じ高さに至っている。第2傾斜部14cは、水平方向前方に延びる水平部14dに接続している。
上記のシート1の着座者Mが、急ブレーキや衝突等により前方に投げ出されると、図4に示すように、着座者Mの慣性力によりシートベルトWが前方に強く引っ張られる(矢印C参照)。これにより、仮にシートベルトWがクッション体11を切り裂くような事態が生じても、シートベルトWは形状維持ワイヤ14の第1傾斜部14b(ガイド部G)に接触する。このように、シートベルトWがシートフレーム12に接触する前に形状維持ワイヤ14の第1傾斜部14bに接触することで、シートベルトWとシートフレーム12との干渉を防止できる。特に、本実施形態では、第1傾斜部14bの端部14aがシートフレーム12に溶接固定されているため、シートベルトWとの接触により第1傾斜部14bが全体的に幅方向内側に移動してシートベルトWがシートフレーム12に接触する事態を確実に防止できる。
また、本実施形態のように、形状維持ワイヤ14のガイド部Gを、前方に向けて幅方向外側に傾斜した第1傾斜部14bで構成することにより、シートベルトWを第1傾斜部14bに沿って前方に滑らせながら、幅方向外側に逃がすことができる(矢印D参照)。このように、シートベルトWの引っ張り力をガイド部Gでまともに受け止めるのではなく、シートベルトWをガイド部Gに沿って前方に滑らせながら幅方向外側に逃がすことで、強度がそれ程高くない形状維持ワイヤ14でシートベルトWとシートフレーム12との干渉を防止することができる。
尚、上記のように、形状維持ワイヤ14でシートベルトWとシートフレーム12との干渉を回避するためには、シートフレーム12とシートベルトWとが干渉し得る前後方向領域A(図3参照)の全域にわたって、シートフレーム12の幅方向外側に形状維持ワイヤ14を配することが好ましい。従って、シートフレーム12に溶接固定された形状維持ワイヤ14の一端部14aは、図3に示すように、フレームカバー13の直近位置に設けることが望ましい。しかし、必ずしも一端部14aをフレームカバー13の直近位置に設ける必要はなく、シートベルトWの損傷を回避できる範囲内で、一端部14aをフレームカバー13から離隔させて前方位置に固定してもよい。この場合、形状維持ワイヤ14が短くなって材料コストを低減することができる。
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
上記の実施形態では、シートベルトWを幅方向外側に確実に逃がすために、第1傾斜部14bの幅方向に対する角度θ(平面視における角度、図3(b)参照)を比較的大きくしており、図示例ではθが約60°となっている。しかし、図5に示すように、第1傾斜部14bの幅方向に対する角度θを小さくした場合でも、第1傾斜部14bがシートベルトWとの当接により前方向きの負荷を受けて変形することにより第1傾斜部14b(点線で示す)の幅方向に対する角度θ’が大きくなり、この変形した第1傾斜部14bに沿ってシートベルトWを幅方向外側に逃がすことができる。この場合、変形前の第1傾斜部14bの幅方向に対する角度θを10°以上とすれば、シートベルトWとシートフレーム12との干渉を防止できる。また、図示のように、第1傾斜部14bの後方端部をシートフレーム12に溶接固定し、前方端部を自由端とすることで、シートベルトWの当接により第1傾斜部14bの角度θが大きくなる方向に変形しやすくなり、シートベルトWを第1傾斜部14bに沿って逃がしやすくなる。
また、上記の実施形態では、形状維持ワイヤ14をシートフレーム12の上面12aにのみ溶接固定した場合を示しているが、これに限らず、例えば図6に示すように、第2傾斜部14cの後方端部から二股に分かれた第1傾斜部14b及び第3傾斜部14eを設け、この第1傾斜部14b及び第3傾斜部14eをシートフレーム12の上面12a及び下面12bにそれぞれ溶接固定してもよい。第3傾斜部14eは、シートフレーム12の下面12bに溶接固定された一端部14fから前方に向けて幅方向外側に傾斜した方向に延び、図示例では略水平方向に延びている。この場合、第1傾斜部14bが、シートフレーム12の上面12aの幅方向外側端縁に形成された角部12a1とシートベルトWとの干渉を回避する主ガイド部Gとして機能し、第3傾斜部14eが、シートフレーム12の下面12bの幅方向外側端縁に形成された角部12b1とシートベルトWとの干渉を回避する副ガイド部G’として機能する。
また、上記の実施形態では、形状維持ワイヤ14の第1傾斜部14bによりガイド部Gを構成した場合を示しているが、車両の衝突時等にシートベルトWをガイド部Gに沿って前方に滑らせながら幅方向外側に逃がすことができる構成であれば、上記に限られない。例えば、図7に示すように、凹部14hが形成された形状維持ワイヤ14の幅方向部14gにより、ガイド部Gを構成することができる。具体的には、シートフレーム12に固定された形状維持ワイヤ14の一端部14aから幅方向外側に延び、第2傾斜部14cに接続する幅方向部14gを設け、この幅方向部14gに曲げ加工で凹部14hが形成される。この場合、シートベルトWが前方に強く引っ張られると、凹部14hにシートベルトWが嵌り、これによりシートベルトWの幅方向位置が拘束される。さらにシートベルトWが前方に引っ張られると、幅方向部14gが前方向きの負荷を受けて変形し、前方に向けて幅方向外側に傾斜した形状となる(図中点線で示す)。この傾斜した幅方向部14gに沿って、シートベルトWが凹部14hから外れて幅方向外側に逃がされることにより、シートベルトWとシートフレーム12との干渉を回避することができる。尚、幅方向部14gは、図7に示すように幅方向と平行な場合に限らず、例えば上記の第1傾斜部14bと同様に、前方に向けて幅方向外側に傾斜させて設けても良い。
また、上記の実施形態では、形状維持ワイヤ14がクッション体11と別体に設けられた場合を示しているが、例えば、クッション体11の内部に形状維持ワイヤ14を埋設した構成としてもよい。
1 シート
2 シートベルト装置
6 アンカー
10 シートクッション
11 クッション体
12 シートフレーム
13 フレームカバー
14 形状維持ワイヤ
14b 第1傾斜部(ガイド部G)
20 シートバック
W シートベルト
M 着座者

Claims (1)

  1. シートクッションと、シートクッションへの着座者が装着するシートベルトとを有する車両用座席構造であって、
    シートクッションが、シートクッションを支持するシートフレームと、シートクッションの形状を維持する形状維持ワイヤとを備え、
    形状維持ワイヤの一部をシートフレームより車体幅方向外側に配してこの部分をガイド部とし、形状維持ワイヤに接触したシートベルトをガイド部に沿わせて車体前方に滑らせながら車体幅方向外側に逃がすようにした車両用座席構造。
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