JP5487402B2 - 磁気平衡式電流センサ - Google Patents

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Description

本発明は、磁気抵抗効果素子(TMR素子、GMR素子)を用いた磁気平衡式電流センサに関する。
電気自動車においては、電気を用いてモータを駆動しており、このモータ駆動用の電流の大きさは、例えば電流センサにより検出される。この電流センサとしては、導体の周囲に被測定電流による磁束を集める環状の磁気コアを設け、この磁気コアのコアギャップ(切欠部)に磁気検出素子を配置すると共に、磁気コアの環状部分に負帰還用のコイルを巻回した磁気平衡式電流センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の磁気平衡式電流センサは、導体に被測定電流が流れると、磁気検出素子からの出力を電流に変換して負帰還用コイルにフィードバックし、被測定電流による誘導磁界を負帰還用コイルに生じるキャンセル磁界により打ち消すように印加させ、負帰還用コイルに流れる電流を出力として取り出している。また、この電流センサは、磁気コアに対して安定的に飽和残留磁化を発生させるリセット回路部が設けられており、電源立ち上げ時や電源の異常低下時における、残留磁化の変化による出力変動を抑制している。
特開2004−279226号公報
しかしながら、上記した特許文献1に記載の磁気平衡式電流センサは、残留磁化の調整により測定精度が向上されるが、残留磁化の影響によりヒステリシスが発生してしまっていた。また、この磁気平衡式電流センサは、磁気コアを設けて構成されるため、小型化をはかることができず、さらに磁気コアの内側に被測定電流を流す導体を通す必要があるため、設置時の作業性が悪化するという問題があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、センサの小型化及び設置時の作業性を向上させることができると共に、ヒステリシスを小さくして測定精度を高めることができる磁気平衡式電流センサを提供することを目的とする。
本発明の磁気平衡式電流センサは、被測定電流を通流する電流線からの誘導磁界により出力が変化する磁気センサと、前記磁気センサに印加される前記誘導磁界を減衰させる磁界減衰部と、前記磁気センサの出力により前記誘導磁界を相殺するキャンセル磁界を発生させ、当該キャンセル磁界と前記誘導磁界とが相殺される平衡状態となったときに、前記被測定電流に応じた電流が流れるフィードバックコイルとを備え、前記フィードバックコイルは、前記磁界減衰部に印加される前記キャンセル磁界の向きを、前記磁界減衰部に印加される前記誘導磁界の向きに対して逆方向に向けるように設けられたことを特徴とする。
この構成によれば、磁界減衰部に印加される誘導磁界が、フィードバックコイルのキャンセル磁界により弱められるため、磁界減衰部が磁気的に飽和しにくくなり、ヒステリシスを小さくして測定精度を高めることができる。また、磁気コアのコアギャップに磁気センサを配置する構成と比較して、センサの小型化及び設置時の作業性を向上させることができる。
本発明の磁気平衡式電流センサにおいては、前記磁界減衰部は、前記磁気センサと前記電流線との間に配置されることが好ましい。この構成によれば、磁界減衰部により磁気センサに印加される誘導磁界を効果的に減衰させることができる。
本発明の磁気平衡式電流センサにおいては、前記フィードバックコイルが、前記磁気センサ及び前記磁界減衰部を内側に配置可能な筒状に形成されることが好ましい。この構成によれば、コイルの内側に磁気センサ及び磁界減衰部が配置される構成となるため、簡易にセンサの小型化を図ることができる。
本発明の磁気平衡式電流センサにおいては、前記フィードバックコイルが、平面コイルであることが好ましい。この構成によれば、フィードバックコイルが平面コイルであるため、簡易にセンサの薄型化を図ることができる。また、フィードバックコイルから生じるキャンセル磁界の拡大が抑えられ、周辺回路に対する影響が小さくなる。
本発明の磁気平衡式電流センサにおいては、前記磁気センサ、前記磁界減衰部、前記フィードバックコイルの順、または前記フィードバックコイル、前記磁界減衰部、前記磁気センサの順に、基板に対して積層されたことが好ましい。この構成によれば、磁気センサ、磁界減衰部、フィードバックコイルが一体化されるため、設置時の作業性を向上させることができる。
本発明の磁気平衡式電流センサによれば、被測定電流を流通する電流線からの誘導磁界により出力が変化する磁気センサと、前記磁気センサに印加される前記誘導磁界を減衰させる磁界減衰部と、前記磁気センサの出力により前記誘導磁界を相殺するキャンセル磁界を発生させ、当該キャンセル磁界と前記誘導磁界とが相殺される平衡状態となったときに、前記被測定電流に応じた電流が流れるフィードバックコイルとを備え、前記フィードバックコイルは、前記磁界減衰部に印加される前記キャンセル磁界の向きを、前記磁界減衰部に印加される前記誘導磁界の向きに対して逆方向に向けるように設けられている。このため、センサの小型化及び設置時の作業性を向上させることができると共に、ヒステリシスを小さくして測定精度を高めることができる。
本発明の実施の形態に係る磁気平衡式電流センサを示す図である。 本発明の実施の形態に係る磁気平衡式電流センサを示す図である。 図1に示す磁気平衡式電流センサの断面図である。 本発明の実施の形態に係る磁気平衡式電流センサの磁界強度と出力電圧との間の関係を示す図である。 磁気平衡式電流センサの変形例を示す図である。 他の磁気平衡式電流センサを示す図である。
近年、電気自動車の大出力化・高性能化に伴って、取り扱う電流値が大きくなってきており、そのため大電流時の磁気飽和を回避する必要がある。例えば、環状の磁気コアを用いた磁気平衡式電流センサにおいては、磁気飽和を回避するために磁気コアを大きくする必要があるが、磁気コアを大きくするとセンサ自体が大型化するという問題がある。このような磁気コアを用いた電流センサの課題を解決するために、磁気コアを用いずに、磁気抵抗効果素子を用いた磁気平衡式電流センサが提案されている。
しかしながら、磁気コアを用いず、磁気抵抗効果素子を用いた磁気平衡式電流センサにおいては、取り扱う電流値が大きくなると、大きなキャンセル磁界を発生させるためにフィードバック電流が大きくなり、消費電力が大きくなるという問題がある。このため、図6に示すような磁気平衡式電流センサが考えられる。
図6に示すように、この磁気平衡式電流センサは、磁気センサ61、フィードバックコイル62、磁界減衰部63を同一基板65上に形成して構成される。基板65上には、複数の層間絶縁膜66a、66b、66cと保護膜67とが積層されており、層間絶縁膜66a上に磁気センサ61、層間絶縁膜66b上にフィードバックコイル62、層間絶縁膜66c上に磁界減衰部63がそれぞれ形成されている。この構成により、磁気センサ61を導体68から最も遠ざけることができ、被測定電流Iから磁気センサ61に印加される誘導磁界を小さくできる。また、磁界減衰部63を導体68に最も近づけることができるので、誘導磁界の減衰効果を高めることができる。
このように、磁気平衡式電流センサは、磁気センサ61に印加される誘導磁界が小さくなるため、フィードバックコイル62に流す電流を小さくすることができ、省電力化を図ることができる。また、磁気センサ61、フィードバックコイル62、磁界減衰部63が同一基板65上に形成されるため、センサの小型化を図ることができる。
ところで、上記した磁気平衡式電流センサにおいては、被測定電流からの誘導磁界Aとフィードバック電流からのキャンセル磁界Bとが、磁界減衰部63に対して同じ向きで印加される。このため、磁界減衰部63に印加される磁界が大きくなって、磁界減衰部63が磁気飽和し易くなり、ヒステリシスが生じるおそれがあった。
本発明者らは、上記の点に着目し、磁界減衰部に印加される誘導磁界Aの向きに対し、キャンセル磁界Bの向きが逆向きとなるようにフィードバックコイルを設けることにより、磁界減衰部の磁気飽和を抑制してヒステリシスを減少できることを見出し、本発明をするに至った。すなわち、本発明の骨子は、磁界減衰部に印加されるキャンセル磁界の向きを、磁界減衰部に印加される誘導磁界の向きに対して逆方向に向けるようにフィードバックコイルを設けた磁気平衡式センサにより、ヒステリシスを小さくして測定精度を高めることである。また、磁気コアを用いずに、磁気センサ、フィードバックコイル、磁界減衰部と同一基板上に形成することによりセンサの小型化及び設置時の作業性を向上させることが可能となる。なお、磁界減衰部に印加されるキャンセル磁界の向きと磁界減衰部に印加される誘導磁界の向きとが逆方向とは、完全に逆方向である必要はなく、本発明の効果を奏する範囲において逆方向であれば良い。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る磁気平衡式電流センサを示す図である。本実施の形態においては、図1及び図2に示す磁気平衡式電流センサは、被測定電流Iが流れる導体11の近傍に配設される。この磁気平衡式電流センサは、導体11に流れる被測定電流Iによる誘導磁界を打ち消す磁界(キャンセル磁界)を生じさせるフィードバック回路12を備えている。このフィードバック回路12は、被測定電流Iによって発生する磁界を打ち消す方向に巻回されたフィードバックコイル121と、磁気検出素子である2つの磁気抵抗効果素子122a,122bと、2つの固定抵抗素子123a,123bとを有する。
フィードバックコイル121は、平面コイル(例えば、扁平状の渦巻きコイル)で構成されている。この構成においては、磁気コアを有しないので、低コストでフィードバックコイルを作製することができる。また、ソレノイドコイルの場合に比べて、フィードバックコイルから生じるキャンセル磁界が広範囲に拡がることを防止でき、周辺回路に影響を与えることを回避できる。さらに、ソレノイドコイルの場合に比べて、被測定電流が交流の場合に、フィードバックコイルによるキャンセル磁界の制御が容易であり、制御のために流す電流もそれほど大きくならない。これらの効果については、被測定電流が交流で高周波になるほど大きくなる。フィードバックコイル121は平面コイルで構成する場合において、平面コイルの形成面と平行な面内で誘導磁界とキャンセル磁界の両方が生じるように平面コイルが設けられていることが好ましい。
磁気抵抗効果素子122は、被測定電流Iからの誘導磁界の印加により抵抗値が変化する。2つの磁気抵抗効果素子122a,122bは、2つの固定抵抗素子123a,123bと共に磁界検出ブリッジ回路を構成している。このように磁気抵抗効果素子を有する磁界検出ブリッジ回路を用いることにより、高感度の磁気平衡式電流センサを実現することができる。また、固定抵抗素子を用いずに、被測定電流Iからの誘導磁界の印加により抵抗値が増大するものと減少する磁気抵抗効果素子を組み合わせて磁界検出ブリッジ回路を構成すると、さらに高感度な磁気平衡式電流センサを実現することができる。
この磁界検出ブリッジ回路は、被測定電流Iにより生じた誘導磁界に応じた電圧差を生じる2つの出力を備える。図2に示す磁界検出ブリッジ回路においては、磁気抵抗効果素子122bと固定抵抗素子123aとの間の接続点に電源Vddが接続されており、磁気抵抗効果素子122aと固定抵抗素子123bとの間の接続点にグランド(GND)が接続されている。さらに、この磁界検出ブリッジ回路においては、磁気抵抗効果素子122aと固定抵抗素子123aとの間の接続点から一つの出力を取り出し、磁気抵抗効果素子122bと固定抵抗素子123bとの間の接続点からもう一つの出力を取り出している。これらの2つの出力は増幅器124で増幅され、フィードバックコイル121に電流(フィードバック電流)として与えられる。このフィードバック電流は、誘導磁界に応じた電圧差に対応する。このとき、フィードバックコイル121には、誘導磁界を相殺するキャンセル磁界が発生する。そして、誘導磁界とキャンセル磁界とが相殺される平衡状態となったときのフィードバックコイル121に流れる電流に基づいて検出部(検出抵抗R)で被測定電流を測定する。
図3は、図1に示す磁気平衡式電流センサを示す断面図である。図3に示すように、本実施の形態に係る磁気平衡式電流センサにおいては、フィードバックコイル121、磁界減衰部30及び磁界検出ブリッジ回路が同一基板21上に形成されている。図3に示す構成においては、薄板状の磁界減衰部30が、フィードバックコイル121と磁界検出ブリッジ回路との間に配置され、フィードバックコイル121が被測定電流Iに近い側に配置されている。すなわち、導体11に近い側からフィードバックコイル121、磁界減衰部30、磁気抵抗効果素子122の順に配置する。これにより、磁気抵抗効果素子122を導体11から最も遠ざけることができ、被測定電流Iから磁気抵抗効果素子122に印加される誘導磁界を小さくすることができる。また、磁界減衰部30を磁気抵抗効果素子122よりも導体11側に近付けたので、磁気抵抗効果素子122に対する誘導磁界の減衰効果をより高めることができる。さらに、磁界減衰部30に印加される誘導磁界Aの向きに対し、キャンセル磁界Bの向きが略逆向きとなるようにフィードバックコイルを設けることにより、磁界減衰部30における磁気飽和を抑制し、ヒステリシスを小さくして測定精度を高めることができる。
図3に示す層構成の一例について詳細に説明する。図3に示す磁気平衡式電流センサにおいては、基板21上に絶縁層である熱シリコン酸化膜22が形成されている。熱シリコン酸化膜22上には、アルミニウム酸化膜23が形成されている。アルミニウム酸化膜23は、例えば、スパッタリングなどの方法により成膜することができる。また、基板21としては、シリコン基板などが用いられる。
アルミニウム酸化膜23上には、磁気抵抗効果素子122a,122bが形成されている。このとき、磁気抵抗効果素子122a,122bと共に固定抵抗素子123a,123bも設けられ、磁界検出ブリッジ回路が作り込まれる。磁気抵抗効果素子122a,122bとしては、TMR素子(トンネル型磁気抵抗効果素子)、GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)などを用いることができる。例えば、GMR素子として、反強磁性層、固定磁性層、非磁性層、フリー磁性層を有する多層膜で構成されるスピンバルブ型GMR素子やスピンバルブ型TMR素子を用いることができる。
スピンバルブ型GMR素子としては、図2の拡大図に示すようなミアンダ形状を有するGMR素子であることが好ましい。このミアンダ形状においては、リニアリティを考慮すると、ピン(Pin)方向の幅Dが1μm〜10μmであることが好ましい。この場合において、リニアリティを考慮すると、長手方向が誘導磁界の方向及びキャンセル磁界の方向に対して共に垂直になることが望ましい。このようなミアンダ形状にすることにより、ホール素子よりも少ない端子数(2端子)で磁気抵抗効果素子の出力を採ることができる。
また、スピンバルブ型TMR素子としては、リニアリティを考慮すると、ピン方向の幅が1μm〜10μmの長方形であることが好ましい。この場合において、リニアリティを考慮すると、長手方向が誘導磁界の方向及びキャンセル磁界の方向に対して共に垂直になることが望ましい。
磁気抵抗効果素子122a,122bを形成したアルミニウム酸化膜23上には、絶縁層としてポリイミド層25が形成されている。ポリイミド層25は、ポリイミド材料を塗布し、硬化することにより形成することができる。
ポリイミド層25上には、シリコン酸化膜27が形成されている。シリコン酸化膜27は、例えば、スパッタリングなどの方法により成膜することができる。
シリコン酸化膜27上には、磁界減衰部30が形成されている。磁界減衰部30を構成する材料としては、アモルファス磁性材料、パーマロイ系磁性材料、又は鉄系微結晶材料等の高透磁率材料を用いることができる。
磁界減衰部30を形成したシリコン酸化膜27上には、絶縁層としてポリイミド層29が形成されている。ポリイミド層29は、ポリイミド材料を塗布し、硬化することにより形成することができる。
ポリイミド層29上には、フィードバックコイル121が形成されている。フィードバックコイル121は、コイル材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより形成することができる。あるいは、フィードバックコイル121は、下地材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びめっきにより形成することができる。
フィードバックコイル121を形成したポリイミド層29上には、保護膜としてシリコン酸化膜31が形成されている。シリコン酸化膜31は、例えば、スパッタリングなどの方法により成膜することができる。
このような構成を有する磁気平衡式電流センサにおいては、図3に示すように、被測定電流Iから発生した誘導磁界Aを磁気抵抗効果素子122a、122bで受け、その誘導磁界をフィードバックしてフィードバックコイル121からキャンセル磁界Bを発生し、2つの磁界(誘導磁界A、キャンセル磁界B)を相殺して磁気抵抗効果素子122に印加する磁場が零になるように適宜調整する。
本発明の磁気平衡式電流センサにおいては、図3に示すように、フィードバックコイル121の磁気抵抗効果素子122側に隣接して磁界減衰部30を有する。磁界減衰部30は、被測定電流Iから生じ磁気抵抗効果素子122a,122bに印加される誘導磁界を減衰させる。フィードバックコイル121は、被測定電流Iから生じ磁気抵抗効果素子122に印加される誘導磁界を打ち消すと共に磁界減衰部30に印加される誘導磁界を減衰させるように、キャンセル磁界Bを発生する(磁気抵抗効果素子および磁界減衰部において、誘導磁界Aの方向とキャンセル磁界Bの方向が逆方向)。よって、磁界減衰部30の磁気飽和が抑制されるため、ヒステリシスを十分に小さくできる。
上記構成を有する磁気平衡式電流センサは、磁気検出素子として磁気抵抗効果素子、特にGMR素子やTMR素子を有する磁界検出ブリッジ回路を用いる。これにより、高感度の磁気平衡式電流センサを実現することができる。また、このような構成によれば、磁気抵抗効果素子と固定抵抗素子のTCR(Temperature Coefficient Resistivity)を一致させつつ、抵抗変化率の温度変化が小さいGMR素子やTMR素子を用いることで出力の温度依存を小さくできるので、温度特性を向上させることができる。また、上記構成を有する磁気平衡式電流センサは、フィードバックコイル121、磁界減衰部30及び磁界検出ブリッジ回路が同一基板上に形成されてなるので、小型化を図ることができる。さらに、この磁気平衡式電流センサは、磁気コアを有しない構成であるので、小型化、低コスト化を図ることができる。
次に、上記構成を有する磁気平衡式電流センサの線形特性について説明する。
図4は、本発明に係る磁気平衡式電流センサの磁界強度[mT]と出力電圧[V]との間の関係を示す図である。なお、図4において、磁界強度は被測定電流Iに比例している。本発明に係る磁気平衡式電流センサにおいては、被測定電流Iが大きくなり磁界減衰部30に大きな誘導磁界が印加されても、磁界減衰部30に対してフィードバック電流によるキャンセル磁界が逆向きに印加されるため、磁界減衰部30が磁気飽和しにくい。したがって、図4に示すように、広いレンジで、途中で傾きが変わることなく線形性が良好に保たれる。
また、磁界減衰部30が磁気飽和しにくいため、例えば、被測定電流Iを大きくして磁場強度を+5[mT]にした後に磁場強度をマイナス方向に変化させた場合であっても、出力電圧が原点を通る直線状に変化する。また、出力電圧は、磁場強度を−5[mT]にした後に磁場強度をプラス方向に変化させた場合には、磁場強度をマイナス方向に変化させた場合と略同一の直線状に変化する。この場合、磁場強度をプラス方向に変化させた場合の出力特性とマイナス方向に変化させた場合の出力特性のズレが測定誤差となるが、本発明に係る磁気平衡式電流センサでは出力特性のズレが僅かであり測定誤差が小さい。このように、本実施の形態に係る磁気平衡式電流センサは、ヒステリシスを十分に小さくして測定精度を高めることができる。
なお、上記した実施の形態では、導体11に近い側からフィードバックコイル121、磁界減衰部30、磁気抵抗効果素子122の順に、それぞれが基板21上に積層される構成としたが、この構成に限定されるものではない。図5(a)に示すように、導体48に近い側から磁気抵抗効果素子41、磁界減衰部43、フィードバックコイル42の順に、それぞれが基板45上に積層される構成としてもよい。例えば、最も基板45側の層間絶縁膜46a上にフィードバックコイル42、二番目に基板45側の層間絶縁膜46b上に磁界減衰部43、最も基板45から離れた層間絶縁膜46c上に磁気抵抗効果素子41がそれぞれ形成されている。この構成であっても、被測定電流Iによって磁界減衰部43に印加される誘導磁界Aが、フィードバック電流によって磁界減衰部43に印加されるキャンセル磁界Bにより減衰されるため、磁界減衰部43の磁気飽和を抑制できる。この場合、磁気抵抗効果素子41の形成面は、平滑で清浄であることが好ましい。また、基板を被測定電流Iの側に配置することで、パッケージの設計が容易になる場合や、被測定電流Iと磁気抵抗効果素子との距離を正確に配置しやすい場合には、図3に示した電流センサの上下をひっくり返し、被測定電流Iの側に基板21を持ってくる配置にすることも有効である。この場合、磁気抵抗効果素子の形成面は基板上のシリコン熱酸化膜やアルミニウム酸化膜であり、平滑で清浄な面に磁気抵抗効果素子を形成できる。
また、上記した実施の形態では、フィードバックコイル121が平面コイルで構成されたが、この構成に限定されるものではない。フィードバックコイル121は、被測定電流Iからの誘導磁界を相殺するキャンセル磁界を発生させるものであればよく、例えば、図5(b)に示すように、筒状(らせん状)コイルで構成されてもよい。
この場合、筒状のフィードバックコイル52の内側に、磁束減衰部53及び磁気抵抗効果素子51が配置される。例えば、最も基板55側の層間絶縁膜56a上にフィードバックコイル52の下端側、フィードバックコイル52の内側において、二番目に基板55側の層間絶縁膜56b上に磁気抵抗効果素子51、フィードバックコイル52の内側において、三番目に基板55側の層間絶縁膜56c上に磁界減衰部53、最も基板55から離れた層間絶縁膜56d上にフィードバックコイル52の上端側がそれぞれ形成されている。この構成であっても、被測定電流Iによって磁界減衰部53に印加される誘導磁界Aが、フィードバック電流によって磁界減衰部53に印加されるキャンセル磁界Bにより減衰されるため、磁界減衰部53の磁気飽和を抑制できる。
また、フィードバックコイル52が筒状コイルで構成される場合には、フィードバックコイル52が薄膜プロセスにより基板55上に形成されてもよいし、基板55外に導線を巻き付けることで形成されてもよい。
また、上記した実施の形態では、磁界減衰部が薄板状に形成されたが、この構成に限定されるものではない。磁界減衰部は、磁気抵抗効果素子に印加される磁界を減衰可能な構成であれば、どのような構成でもよい。
また、上記した実施の形態では、フィードバックコイルが、磁界減衰部に印加される誘導磁界の方向に対して逆方向にキャンセル磁界を生じさせるように設けられる構成としたが、この構成に限定されるものではない。フィードバックコイルは、磁界減衰部に印加される誘導磁界を減衰させる略逆方向にキャンセル磁界を生じさせるように設けられればよい。
このように、本実施の形態の磁気平衡式電流センサにおいては、磁界減衰部の磁気飽和が抑制されるため、ヒステリシスを十分に小さくして測定精度を高めることができる。また、磁気コアのコアギャップに磁気センサを配置する構成と比較して、センサの小型化及び設置時の作業性を向上させることができる。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における材料、各素子の接続関係、厚さ、大きさ、製法などは適宜変更して実施することが可能である。また、上記実施の形態においては、磁気平衡式電流センサに磁気抵抗効果素子を用いた場合について説明しているが、磁気平衡式電流センサにホール素子やその他の磁気検出素子を用いて構成してもよい。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
本発明は、電気自動車のモータ駆動用の電流の大きさを検出する電流センサに適用することが可能である。
本出願は、2010年8月23日出願の特願2010−185825に基づく。この内容は、全てここに含めておく。

Claims (5)

  1. 被測定電流を流通する電流線からの誘導磁界により出力が変化する磁気センサと、
    前記磁気センサに印加される前記誘導磁界を減衰させる磁界減衰部と、
    前記磁気センサの出力により前記誘導磁界を相殺するキャンセル磁界を発生させ、当該キャンセル磁界と前記誘導磁界とが相殺される平衡状態となったときに、前記被測定電流に応じた電流が流れるフィードバックコイルとを備え、
    前記フィードバックコイルは、前記磁界減衰部に印加される前記キャンセル磁界の向きを、前記磁界減衰部に印加される前記誘導磁界の向きに対して逆方向に向けるように設けられたことを特徴とする磁気平衡式電流センサ。
  2. 前記磁界減衰部は、前記磁気センサと前記電流線との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気平衡式電流センサ。
  3. 前記フィードバックコイルが、前記磁気センサ及び前記磁界減衰部を内側に配置可能な筒状に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気平衡式電流センサ。
  4. 前記フィードバックコイルが、平面コイルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気平衡式電流センサ。
  5. 前記磁気センサ、前記磁界減衰部、前記フィードバックコイルの順、または前記フィードバックコイル、前記磁界減衰部、前記磁気センサの順に、基板に対して積層されたことを特徴とする請求項4に記載の磁気平衡式電流センサ。
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