以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタのインク経路構成を概略的に示す図である。
尚、図1には、記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送部、画像形成された記録媒体を搬出する排出部、インクヘッドのクリーニングを行うクリーニング部、及びインク吐出制御を始めとして装置全体を制御する制御部等の通常のインクジェットプリンタが備えている構成は図示を省略されている。
図1に示すインクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4種類の色のインクを用いて記録媒体に画像を記録する。なお、図1においては、代表的に1色のインクに関わるインク経路の構成が示されている。
このインクジェットプリンタ1は、大別すると、記録媒体に画像を記録する画像記録部3と、画像記録部3に対してインクを循環させるインク循環部(インク循環経路)4と、インク循環経路4にインクを補充する補充部6と、不要となったインクやオーバーフローしたインクを収容する廃液部7と、を備えている。
画像記録部3は、インク吐出部としての複数のインクヘッド2と、複数のインクヘッド2にインクを分配するためのインク分配器11と、複数のインクヘッド2からインクを回収するインク回収器12と、を備えている。
インク分配器11は、第1のタンク31及び複数のインクヘッド2と接続されており、インク回収器12は、第2のタンク32及び複数のインクヘッド2と接続されている。
インクヘッド2内の圧力は、インク循環時に、印字動作に適した負圧(本実施形態では、ゲージ圧で約−1kPa)に保たれている。これにより、インクヘッド2のノズルには、内側に球面状に凹むメニスカスが形成される。そして、インクヘッド2は、外部装置から入力された画像信号に基づいてインクを吐出し、搬送部によって搬送される記録媒体上に画像を記録する。
なお、本実施形態では、インク分配器11を設けたが第1のタンク31とインクヘッド2を直接接続してもよい。同様に、本実施形態では、インク回収器12を設けたが第2のタンク32とインクヘッド2を直接接続してもよい。
また、本実施形態の画像記録部3は、記録媒体の幅(搬送方向に直交する方向)に満たない短尺なヘッドを複数用い、これら短尺なヘッドを記録媒体の幅方向に、例えば千鳥状に並べてフレーム等に固定し、ラインヘッドを構成している。もちろん、画像記録部3は、ラインタイプ(ラインヘッド)に限らず、記録媒体上を走査しながら画像記録を行うシリアルタイプ(シリアルヘッド)であってもよい。
補充部6は、インクが充填されたインクカートリッジ5と接続されるジョイント部13と、インクカートリッジ5の誤装着を防止し且つインク残量を検出するためのカートリッジ判断部14と、開閉することでインクカートリッジ5から第2のタンク32へのインクの補給動作を行う補給弁63と、で構成される。なお、インクカートリッジ5は、ジョイント部13に対して矢印a方向に着脱可能となっている。
廃液部7は、タンクトレイ21と、タンクトレイ21上に配置された廃液タンク22と、廃液タンク22に収容された廃インク量を検知する廃インク量検知部23と、廃液タンク22の装着有無を検知するタンク装着検知部24と、廃液タンク22と接続されたトレイ状のオーバーフロータンク44と、で構成される。
ここで、オーバーフロータンク44は、上面が開口しており、大気と連通した状態となっている。そして、オーバーフロータンク44は、ポンプ33が破損してインクが漏れてもそのインクを全て受けるようポンプ33の下方に設けられている。
また、オーバーフロータンク44には、第1の大気開放路としての気圧路82の一端側が接続されている。気圧路82の他端側は、第1のタンク31と接続されている。この気圧路82には、大気開放弁46、及び第1のフィルタとしての大気開放フィルタ80が設けられている。これにより、第1のタンク31は、大気開放弁46の開閉によって大気と連通した状態(大気圧状態)、又は大気との連通が遮断された状態(密閉状態)となる。なお、大気開放フィルタ80は、大気から第1のタンク31内に吸気される空気に含まれる異物(塵挨)を除去する。
さらに、オーバーフロータンク44には、第2の大気開放路としての気圧路83の一端側が接続されている。気圧路83の他端側は、第2のタンク32と接続されている。この気圧路83には、第2のフィルタとしての大気開放フィルタ81が設けられている。これにより、第2のタンク32は、常に大気と連通した状態(大気圧状態)となっている。なお、大気開放フィルタ81は、大気から第2のタンク31内に吸気される空気に含まれる異物(塵挨)を除去する。
ここで、大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81は、長期間使用を続けていると、当然目詰まり等の異常が発生する。大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81の目詰まり等の異常が発生した場合、空気抵抗が大きくなり、インク循環時において、第1のタンク31や第2のタンク32のインク液面の変動により発生するタンク内の空気量の体積変動に応じて、大気から気圧路82、気圧路83を通りタンク内に吸い込まれたり、吐き出されたりする単位時間当たりの空気量が少なくなる。
すると、タンク内圧が適正な圧(大気圧)からオフセットした値となり、インク循環時にノズル孔にかかる圧が適正値から外れ、吐出不良や濃度低下といった印字品位の低下を招く虞がある。また、インク循環流量も減少し、印字品位の低下を招く虞がある。
そこで本実施形態では、詳細は後述するが、この大気開放フィルタ80と大気開放フィルタ81の目詰まり(異常)をポンプ33の駆動状態により検知し、大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81の交換をユーザに告知する。
なお、大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81は、容易に交換可能なように、インク経路を一時的に封止する機能を有した、カートリッジ式のフィルタユニットとなっている。
次に、インク循環経路4について説明する。
このインク循環経路4は、第1のタンク31、インクヘッド2、第2のタンク32、ポンプ33、熱交換器34とから構成される。また、ポンプ33と熱交換器34との間には一方向弁66が配置されている。
これらの構成部位の内、インクヘッド2のノズルが形成されたノズル面60と、第1のタンク31のインク液面61と、第2のタンク32のインク液面62と、のそれぞれの位置関係は、鉛直方向(重力方向)に低い位置から高い位置へ順に、インク液面62、ノズル面60、インク液面61となるように配置されている。
インク循環経路4は、インク循環時において、第1のタンク31から、インク分配器11、インクヘッド2、インク回収器12、第2のタンク32、ポンプ33、一方向弁66、熱交換器34の順にインクを流す。そして、インク循環経路4は、インクが第1のタンク31へ帰還するようにチューブにより各々を接続している。
ここで、インク循環経路4の構成について更に詳しく説明する。
この実施形態1のインク循環経路4は、第1の経路40と第2の経路41の2つに大きく分けることができる。
第1の経路40は、第1のタンク31からインクヘッド2を経由して第2のタンク32へインクが流れる経路である。第2の経路41は、第2のタンク32から、一方向弁66、熱交換器34、を経由して、第1のタンク31まで、ポンプ33によってインクが帰還する経路である。
まず、第1の経路40の個々の構成について詳細に説明する。
第1のタンク31は、インクヘッド2より重力方向上方に配置されている。この第1のタンク31には、インク入口ポート31aと、インク出口ポート31bと、大気ポート31cと、が設けられている。また、第1のタンク31内には、インク液面の位置を所定の高さに保つために、液面検出部42が設けられている。
液面検出部42は、第1のタンク31内でインクの面の高さに応じて回動するように支持軸42dにより軸支されたフロート部材42aと、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cと、例えば磁気センサからなる液面位置センサ42bとにより構成される。
この液面位置センサ42bは、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cの磁力を検出する。これによって液面位置センサ42bは、フロート部材42aの位置、即ち、第1のタンク31のインク液面61を検出する。
このように液面検出部42は、第1のタンク31内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。
インク入口ポート31aは、チューブを介して後述する第2の経路41側の熱交換器34に接続されている。そして、インク入口ポート31aは、熱交換器34から流出したインクを第1のタンク31内に流入させる。
尚、インク入口ポート31aの第1のタンク31内の開口部は、流入したインクに気泡が混入し難いよう、第1のタンク31内のインク液面61より鉛直方向(重力方向)に対して低い位置に設けられている。
インク出口ポート31bは、チューブによってインク分配器11に接続されている。第1のタンク31のインク出口ポート31bから流出したインクは、インク分配器11を介して略均等に各インクヘッド2に分配される。そして、インクヘッド2は、搬送される記録媒体に対して、ノズル面60に形成されたノズルからインクを吐出し、画像記録を行う。
ここで、インクヘッド2に流入するインク量は、ノズルから吐出されるインク量を上回るよう設定されている。そのため、インクヘッド2で吐出されなかったインクは、インク回収器12に流れ込む。そして、インク回収器12のインクは、チューブを経由して第2のタンク32に流れる。
大気ポート31cは、気圧路82の他端側と接続されている。この気圧路82には、前述したように、大気開放フィルタ80が設けられているため、大気開放弁46を開放し、第1のタンク31を大気と連通させた際、異物が除去された空気が第1のタンク31に流入する。
なお、本実施形態では、気圧路82の一端側をオーバーフロータンク44に接続したが、気圧路82は、大気開放フィルタ80を介して第1のタンク31内を大気と連通させることができれば、オーバーフロータンク44に接続しなくてもよい。
第2のタンク32は、インクヘッド2より重力方向下方に配置されている。この第2のタンク32には、インク入口ポート32aと、インク出口ポート32bと、大気ポート32cと、補給ポート32dと、が設けられている。また、第2のタンク32内には、インク液面を所定の高さに保つために、第1のタンク31と同様、液面検出部45が設けられている。
液面検出部45は、第2のタンク32内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸45dにより軸支されたフロート部材45aと、フロート部材45aに取り付けられた磁石42cと、例えば磁気センサからなる液面位置センサ45bとにより構成される。
この液面位置センサ45bは、フロート部材45aに取り付けられた磁石45cを検出する。これにより液面位置センサ45bは、フロート部材45aの位置即ち、第2のタンク32のインク液面62を検出する。このように液面検出部45は、第2のタンク32内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。
インク入口ポート32aは、チューブを介してインク回収器12と接続されている。そして、インク入口ポート32aは、インク回収器12で回収したインクを第2のタンク32内に流入させる。
インク出口ポート32bは、チューブを介してポンプ33と接続されている。そして、インク出口ポート32bは、第2のタンク32内のインクをポンプ33へと流出させる。
大気ポート32cは、気圧路83の他端側と接続されている。この気圧路83には、前述したように、大気開放フィルタ81が設けられているため、異物が除去された空気が第2のタンク32に流入する。
なお、本実施形態では、気圧路83の一端側をオーバーフロータンク44に接続したが、気圧路83は、大気開放フィルタ81を介して第1のタンク32内を大気と連通させることができれば、オーバーフロータンク44に接続しなくてもよい。
補給ポート32dは、補給弁63を介して補充部6に接続されている。具体的には、補給ポート32dは、補給弁63を介してジョイント部13に接続されている。そして、第2のタンク32には、補給弁63を開くことでインクカートリッジ5内のインクが補充される。
すなわち、補給弁63の開閉動作は、インク液面62の高さを所望の範囲に維持するよう、液面検出部45の検出結果に応じて行われる。具体的には、液面検出部45がONの場合、第2のタンク32のインク量が十分足りていると判断し、補給弁63は閉じた状態となっている。
逆に、液面検出部45がOFFの場合、第2のタンク32のインク量が不足していると判断し、補給弁63を開いた状態にする。この動作により、インクカートリッジ5のインクが第2のタンク32に補給され、第2のタンク32の液面高さは、所望の範囲に維持される。
なお、本実施形態では、インクカートリッジ5を第2のタンク32より重力方向上方に配置することで補給弁63を開くことにより第2のタンク32へインクの補充を行っているが、インクカートリッジ5から第2のタンク32へインクを送液出来れば良く、補給弁63の代わりにポンプ等によりインクの送液を行っても構わない。
次に、第2の経路41の個々の構成について詳細に説明する。
ポンプ33は、例えば、電磁式のピストンポンプを用いることができる。ポンプ33の駆動、停止は、インク液面61の高さを所望の範囲に維持するよう、液面検出部42の検出結果に応じて行われる。
具体的には、液面検出部42がONの場合、第1のタンク31のインク量が十分足りていると判断しポンプ33を停止する。逆に、液面検出部42がOFFの場合、第1のタンク31のインク量が不足していると判断し、ポンプ33を駆動する。
この動作により、第2のタンク32のインクが第1のタンク31に揚送され、第1のタンク31の液面高さは、所望の範囲に維持される。
この実施形態1では、ポンプ33の送液能力は、第2のタンク32に流入してくるインク量よりも、多くのインクを第1のタンク31へと送液可能に設計されている。これは、第2のタンク32のオーバーフローを防止するためである。
すなわち、通常の使用状態で第2のタンク32に流入するインク流量よりも、ポンプ33が駆動した際、揚送可能なインク流量を多くすることで、第2のタンク32がインクで溢れないようにするためである。
尚、この実施形態1では、ポンプ33に電磁式のピストンポンプを用いているが、前述したように第2のタンク32に流入するインク量よりも、多くのインクを送液出来る能力があれば良く、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、チューブポンプ、ロータリーポンプ、渦巻きポンプを用いても構わない。
ポンプ33のインク排出側(第1のタンク31への送液側の径路)には、一方向弁66が接続され、第1のタンク31のインク液面61と、第2のタンク32のインク液面62との高低差によるインクの逆流(第1のタンク31から第2のタンク32への逆流)を防止している。
すなわち、前述したようにポンプ33の送液能力は、第1のタンク31からインクヘッド2を経由し第2のタンク32に流れ落ちる量よりも高く設定されているため、インク循環動作が行われた際、ポンプ33の動作は間欠動作を行うことになる。
ポンプ33が停止した際には、水頭差により第1のタンク31から第2のタンク32へインクが逆流しようとする。この流れを一方向弁66は防止している。
熱交換器34は、インク循環経路4内を流れるインクを加温、及び/又は、冷却する。すなわち、熱交換器34は、インク循環経路4内を流れるインクの温度を画像記録可能な所望の温度に制御する。なお、各インクヘッド2、又はその近傍のインク流路には、熱交器34を制御するために温度センサ47が配置されている。
このように構成されたインクジェットプリンタ1では、記録媒体に画像を記録する際、大気開放弁46を開放し、第1のタンク31内を大気開放状態にする。これによって第1のタンク31のインクは、重力によってインクヘッド2を経由して第2のタンク32に流れ落ちる。この時、第1のインク液面61は低下し、第2のタンク32のインク液面62は上昇する。
そして、第1のタンク31及び第2のタンク32内のインク量に応じてポンプ33、補給弁63の動作を制御し、インクを循環させる。
つまり、第1のタンク31、インク分配器11、インクヘッド2、インク回収器12、第2のタンク32、ポンプ33、一方向弁66、熱交換器34の順にインクが流れ、第1のタンク31へ帰還するようインクが循環する。
インクヘッド2のノズルプレート面60、第1のタンク31のインク液面61、及び第2のタンク32のインク液面62のそれぞれの位置関係と配管(第1のタンク31とインクヘッド2までの配管長や配管太さ、及び、インクヘッド2と第2のタンク32までの配管長や配管太さ)は、インク循環時において、インクヘッド2内部に、印字に適した圧(例えば、インク循環状態で、ノズル圧が約−1kPa)がかかるように設定され、この圧により、ノズル孔にメニスカスが形成される。
また、インクジェットプリンタ1の待機時には、大気開放弁46を閉じ、第1のタンク31内を大気に対して遮断する。
このとき、第2のタンク32は、前述したようにインクヘッド2より重力方向下方に配置され、且つ大気と連通しているため、インクヘッド2のノズルには水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において、インクヘッド2からインクが垂れ落ちることはない。
次に、この実施形態1における、大気開放フィルタ80、及び大気開放フィルタ81の異常、例えば、目詰まりを検出する方法を詳しく説明する。
なお、本実施形態1において大気開放フィルタ80、及び大気開放フィルタ81の異常検出は、例えば、装置の起動時やジョブとジョブの間のように印字が行われていない状態で、且つインクが循環した状態で行われる。
図2(a)は、上方に大気開放フィルタ80、及び大気開放フィルタ81の目詰まりが無い状態における第1のタンク31の液面変動を表す図を示し、下方にその液面変動に対応するポンプ33の動作を示している。
図2(b) は、上方に大気開放フィルタ80の目詰まりが発生した状態における第1のタンク31の液面変動を表す図を示し、下方にその液面変動に対応するポンプ33の動作を示している。
図2(c) は、上方に大気開放フィルタ81の目詰まりが発生した状態における第1のタンク31の液面変動を表す図を示し、下方にその液面変動に対応するポンプ33の動作を示している。
先ずは、図2(a) を参照し、目詰まりの無い状態について説明を行う。図2(a) の上方に示された図は、横軸に時間を示し、縦軸に第1のタンク31の液面変動量を示している。図2(a) の下方に示された図は、横軸に時間を示し、縦軸にポンプ33の駆動波形を示している。
なお、図2(a) の上方に示された図において縦軸の上限及び下限とは、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cの磁力によって液面位置センサ42bのON/OFFが切り替わるべき液面の高さを示している。
よって、上限とは、第1のタンク31内が所定量のインクで満たされ、液面検出部42がONとなる状態である。また、下限とは、第1のタンク31内のインクが所定量以下となり、液面検出部42がOFFとなる状態である。
前述したようにインク循環中において第1のタンク31内のインクは、大気開放弁46が開放されているため、画像記録部3を介して第2のタンク32へと流れ落ちる。
そのため、図2(a)に示すように、第1のタンク31内のインク液面は、液面検出部42がOFFとなる位置71まで徐々に低下(減少)していく。そして、制御部は、第1のタンク31内のインク液面が位置71になるとポンプ33を駆動させる。
この時、ポンプ33は、第1の径路40を通り第2のタンク32へ流入するインク量よりも多くのインク量を第2のタンク32から第1のタンク31に送液するため、第1のタンク31内のインク液面は徐々に上昇(増加)し、液面検出部42がONとなる位置70となる。
そして、制御部は、第1のタンク31内のインク液面が位置70になるとポンプ33を停止する。ポンプ33が停止されると、再度、第1のタンク31内のインク液面は徐々に低下し、位置71となる。
このように、インク循環中、第1のタンク31のインク液面61の高さは、時間軸に対して繰り返し変動し、それに応じて、制御部は、ポンプ33の駆動と停止とを繰り返し制御する。
ここで、図2(a) の下方の図中の時間t1は、ポンプ33を駆動している期間を示し、時間t2は、ポンプ33が停止している期間を示している。
例えば、単位時間あたりのポンプ33の送液能力(第2のタンク32内のインクを第1のタンク31に送る能力)を、第1の径路40を介して第2のタンク32に流入するインク量の略2倍に設定した場合、ポンプ33の駆動時間と停止時間は略等しくなる。
すなわち、図2(a)に示すように、大気開放フィルタ80に目詰まりが無い状態では、時間t1と時間t2とが「t1≒t2」となる。
次に、図2(b) を参照し、大気開放フィルタ80の目詰まりが発生した状態について説明する。尚、図2(b)においても、ポンプ33の送液能力を第1の径路40を介して第2のタンク32に流入するインク量の略2倍に設定した場合について示している。
図2(b)の上方の図の位置70、71は、図2(a)の上方の図の場合と同様である。図2(b) の下方の図中の時間t3は、ポンプ33が駆動されている期間を示し、時間t4は、ポンプ33が停止している期間を示している。
図2(b)においても図2(a)と同様に、第1のタンク31内のインク液面は、液面検出部42がOFFとなる位置71まで徐々に低下(減少)していく。そして、制御部は、第1のタンク31内のインク液面が位置71になるとポンプ33を駆動する。
ポンプ33が駆動されると、第1のタンク31内のインク液面は徐々に上昇(増加)し、液面検出部42がONとなる位置70となる。そして、制御部は、第1のタンク31内のインク液面が位置70になるとポンプ33を停止する。ポンプ33が停止されると、再度、第1のタンク31内のインク液面は徐々に低下し、位置71となる。
ここで、大気開放フィルタ80の目詰まりが発生すると、第1のタンク31内の液面変動に応じて、大気から第1のタンク31内に流入する空気量は、目詰まりした大気開放フィルタ80の空気抵抗の増加により減少していく。
その影響により、第1のタンク31の内圧は大気圧より低い圧(ゲージ圧で負圧)となり、第1のタンク31から第2のタンク32に流れるインク量が抑制される力が加わる。その為、第1のタンク31から第2のタンク32へ流れるインク量は減少し、第1のタンク31の液面61は、降下するスピードが遅くなる。
換言すれば、液面検出部42がONとなってからOFFになるまでの時間が延びる。このようにポンプ33の駆動を停止している時間t4は、大気開放フィルタ80の目詰まりが無い場合の時間t2に比べて長くなる。すなわち「t2<t4」となる。
一方、ポンプ33を駆動している時間t3は、図2(a) に示す時間t1と略同等な時間、すなわち「t3≒t1」となる。
以上のように、大気開放フィルタ80に目詰まりが発生しているか否かによって、ポンプ33の駆動状態(駆動条件)が変化する。換言すれば、制御部は、ポンプ33の駆動状態に基づいて大気開放フィルタ80の異常を検出することができる。
そこで、大気開放フィルタ80が目詰まりしていない状態と目詰まりした状態とでは、ポンプ33の停止時間に「t2<t4」の関係があることから、ポンプ33の停止時間(t2とt4)に基づいて大気開放フィルタ80の異常を検出する。
すなわち、制御部は、停止時間t4を停止時間t2に基づいて算出された閾値(所定の時間)と比較することによって大気開放フィルタ80の異常を検出する。なお、閾値(所定の時間)は、以下のように設定されている。
インク循環経路において、第1の径路40(インクヘッド2)には、常に所定量以上のインクを流す必要がある。そのため、閾値(所定の時間)は、第1の径路40(インクヘッド2)を流れるインク量が所定量未満にならない値(時間)に設定されている。
例えば、第1の径路40(インクヘッド2)を流れるインク量がインクヘッド2の最大吐出量に対して略2倍の量に設定された場合、閾値(所定の時間)は、停止時間t2の略150%(略1.5倍)に設定される。
そして、制御部は、停止時間t4が閾値(所定の時間)を超えた場合に大気開放フィルタ80が目詰まりしたと判断し、大気開放フィルタ80の交換を行うようインクジェットプリンタの不図示の表示パネルによりユーザに通知する。
また、インクは温度によって粘度が異なる。そのため、インクの温度に基づいて上記閾値(所定の時間)を複数設定してもよい。このような場合、制御部は、インクの温度を検出し、検出されたインクの温度に対応する閾値(所定の時間)と停止時間t4とを比較することで大気開放フィルタ80の目詰まりが発生しているか否かを判断する。
また、上述では、制御部は、ポンプ33の停止時間(t2とt4)に基づいて大気開放フィルタ80の異常を検出したが、以下のようにして検出を行ってもよい。
例えば、制御部は、ポンプ33の駆動時間t3及び停止時間t4の比率(t3/t4、又はt4/t3)と閾値を比較することによって、大気開放フィルタ80の異常を検出してもよい。
この時の閾値は、上述したように第1の径路40(インクヘッド2)を流れるインク量を考慮して、大気開放フィルタ80の目詰まりが発生していない時のポンプ33の駆動時間t1及び停止時間t2の比率(t1/t2、又はt2/t1)を基準にして算出されている。
また、例えば、制御部は、ポンプ33の停止時間t4を所定回数分だけ累積し、累積停止時間Σt4と閾値を比較することによって、大気開放フィルタ80の異常を検出してもよい。
この時の閾値は、上述したように第1の径路40(インクヘッド2)を流れるインク量を考慮して、大気開放フィルタ80の目詰まりが発生していない時のポンプ33の上記所定回数分だけ累積した累積駆動時間Σt2を基準にして算出されている。
また、例えば、制御部は、ポンプ33の駆動時間t3及び停止時間t4をそれぞれ所定回数分だけ累積し、累積駆動時間Σt3及び累積停止時間Σt4の比率(Σt3/Σt4、又はΣt4/Σt3)と閾値を比較することによって、大気開放フィルタ80の異常を検出してもよい。
この時の閾値は、上述したように第1の径路40(インクヘッド2)を流れるインク量を考慮して、大気開放フィルタ80の目詰まりが発生していない時のポンプ33の上記所定回数分だけ累積した累積駆動時間Σt1及び累積停止時間Σt2の比率(Σt1/Σt2、又はΣt2/Σt1)を基準にして算出されている。
また、例えば、制御部は、インク循環を所定の時間Tだけ行った際のポンプ33の駆動、又は停止回数によって大気開放フィルタ80の異常を検出してもよい。
すなわち、大気開放フィルタ80に目詰まりが発生しているとポンプ33の停止時間が長くなるため、時間T内にポンプ33が駆動する回数は、目詰まりが発生していない時と比較して少ない回数となり、時間T内にポンプ33が停止する回数は、目詰まりが発生していない時と比較して少ない回数となる。
もちろん、時間T内におけるポンプ33の累積停止時間、又は累積駆動時間、又は累積停止時間と累積駆動時間との比率によって大気開放フィルタ80の異常を検出してもよい。
次に、図2(c) を用い、大気開放フィルタ81の目詰まりが発生した状態について説明を行う。尚、図2(c)においても、ポンプ33の送液能力を第1の径路40を介して第2のタンク32に流入するインク量の略2倍に設定した場合について示している。
図2(c) の上方に示す図上の各点70、71が個々に表す意味については、図2(a)の場合と同様である。また、図2(c) の図中の時間t5はポンプ33を駆動している時間を示し、時間t6はポンプ33が停止している時間を示している。
図2(c)においても図2(a)と同様に、第1のタンク31内のインク液面は、液面検出部42がOFFとなる位置71まで徐々に低下(減少)していく。そして、制御部は、第1のタンク31内のインク液面が位置71になるとポンプ33を駆動する。
ポンプ33が駆動されると、第1のタンク31内のインク液面は徐々に上昇(増加)し、液面検出部42がONとなる位置70となる。そして、制御部は、第1のタンク31内のインク液面が位置70になるとポンプ33を停止する。ポンプ33が停止されると、再度、第1のタンク31内のインク液面は徐々に低下し、位置71となる。
ここで、大気開放フィルタ81が目詰まりすると第2のタンク32内の液面変動に応じて、ポンプ33が第2のタンク32内のインクを第1のタンク31へ揚送する際、大気から第2のタンク32内に流入する空気量は、目詰まりした大気開放フィルタ81の空気抵抗の増加により減少していく。
その影響により、第2のタンク32の内圧は大気圧より低い圧(ゲージ圧で負圧)となり、第1のタンク31から第2のタンク32に流れるインク量を促進する力が加わる。つまり、第1のタンク31から第2のタンク32へ流れるインク量は増加する。
そのため、図2(c)に示すように、大気開放フィルタ81の目詰まりが発生していない場合(図2(a))と比較して、第1のタンク31内のインク液面が位置70となってから位置71になるまでの時間が短縮される。
換言すれば、液面検出部42がONとなってからOFFになるまでの時間が短くなる。このようにポンプ33の駆動を停止している時間t6は、大気開放フィルタ81の目詰まりが無い場合の時間t2に比べて短くなる。すなわち「t6<t2」となる。
一方、ポンプ33を駆動している時間t5は、図2(a) に示す時間t1と略同等な時間、すなわち「t5≒t1」となる。
以上のように、大気開放フィルタ81に目詰まりが発生しているか否かによって、ポンプ33の駆動状態(駆動条件)が変化する。換言すれば、制御部は、ポンプ33の駆動状態に基づいて大気開放フィルタ81の異常を検出することができる。
そこで、大気開放フィルタ81が目詰まりしていない状態と目詰まりした状態とでは、ポンプ33の停止時間に「t6<t2」の関係があることから、ポンプ33の停止時間(t2とt6)に基づいて大気開放フィルタ81の異常を検出する。
すなわち、停止時間t6を停止時間t2に基づいて算出された閾値と比較することによって大気開放フィルタ81の異常を検出する。
また、インクは温度によって粘度が異なる。そのため、大気開放フィルタ80の異常検出と同様に、インクの温度に基づいて上記閾値(所定の時間)を複数設定してもよい。
このような場合、制御部は、インクの温度を検出し、検出されたインクの温度に対応する閾値(所定の時間)と停止時間t6とを比較することで大気開放フィルタ81の目詰まりが発生しているか否かを判断する。
さらに、大気開放フィルタ80の異常検出と同様に、ポンプ33の駆動時間t5及び停止時間t6の比率(t5/t6、又はt6/t5)を用いたり、ポンプ33の停止時間t6を所定回数分だけ累積し、累積した累積停止時間Σt6を用いたり、ポンプ33の駆動時間t5及び停止時間t6をそれぞれ所定回数分だけ累積し、累積した累積駆動時間Σt5及び累積停止時間Σt6の比率(Σt5/Σt6、又はΣt6/Σt5)を用いたり、インク循環を所定の時間Tだけ行った際のポンプ33の駆動、又は停止回数によって大気開放フィルタ81の異常を検出してもよい。
以上のように、本実施形態1によれば、ポンプ33の駆動状態に基づいて大気開放フィルタ80、及び大気開放フィルタ81の異常を検出することができ、ユーザにフィルタの交換を告知することができる。
また、本実施形態1では、大気開放フィルタ80が目詰まりした場合と、大気開放フィルタ81が目詰まりした場合とで、ポンプの停止時間に「t2<t4」と「t2>t6」の違いがある。
そのため、大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81のどちらのフィルタの目詰まりが発生したかを区別して判断することが出来る。
なお、本実施形態1では、印字が行われていないインク循環状態でフィルタの異常の検知を行っているが、印字中においてもインクヘッドから吐出されるインク量を考慮することで大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81の異常を検出することができる。
また、本実施形態1では、ポンプの駆動時間、又は停止時間の少なくとも一方に基づいて大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81の異常を判断したが、ポンプを駆動するための駆動部における駆動電流の変化に基づいて大気開放フィルタ80及び大気開放フィルタ81の異常を判断してもよい。
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係るインクジェットプリンタ1′のインク経路構成を概略的に示す図である。本実施形態2は、気圧路82に全色共通の第1の共通気室8を設けた点が前述した実施形態1と異なる。
また、本実施形態2は、気圧路83に全色共通の第2の共通気室9、及び大気開放弁54を設けた点が前述した実施形態1と異なる。さらに、本実施形態2は、圧力調整部10を設けた点が前述した実施形態1と異なる。その以外については、前述した実施形態1と同様なため、説明は省略する。
第1の共通気室8は、気圧路82において大気開放弁46及び大気開放フィルタ80より第1のタンク31側に設けられている。そして、この第1の共通気室8には、全色の第1のタンク31における大気ポートが接続されている。
大気開放弁46は、開閉(開放/遮断)することにより、第1の共通気室8の内部を大気と連通、又は遮断させる。つまり、全色の第1のタンク31は、第1の共通気室8に接続されているため、大気開放弁46の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断される。
第2の共通気室9は、気圧路83において大気開放弁54及び大気開放フィルタ81より第2のタンク32側に設けられている。そして、この第2の共通気室9には、全色の第2のタンク32における大気ポートが接続されている。
大気開放弁54は、開閉(開放/遮断)することにより、第2の共通気室9の内部を大気と連通、又は遮断させる。つまり、全色の第2のタンク32は、第2の共通気室9に接続されているため、大気開放弁54の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断される。
また、第2の共通気室9には、圧力調整部10が接続されている。この圧力調整部10は、ベローズ51、錘52及びベローズ昇降機構53で構成される。
ベローズ51は、第2の共通気室9にチューブによって接続されている。また、ベローズ51には、錘52が取り付けられている。この錘52は、ベローズ昇降機構53によって昇降する。
つまり、ベローズ昇降機構53が上昇すると、ベローズ51は縮み、ベローズ昇降機構53が下降すると、ベローズ51は錘52によって伸長する。なお、ベローズ51を縮めさせた状態のベローズ昇降機構53の位置を待機位置とする。また、ベローズ51を伸長させた状態のベローズ昇降機構53の位置を負圧生成位置とする。
ここで、大気開放弁54を閉じると、第2のタンク32の空気部分、第2の共通気室9及びベローズ51の内部は連通しつつ外部とは閉じられた空間となる。この状態でベローズ51を伸縮させると、上記閉じられた空間の体積が増減する。これによって、全色の第2のタンク32内の圧力は、同時に変化する。
すなわち、大気開放弁54を閉じた状態でベローズ昇降機構53を待機位置から負圧生成位置に移動させると、ベローズ51が錘52の重さによって下方に引っ張られ、上記閉じられた空間の体積が増加する。これにより、第2の共通気室9内には、錘52に加わる重力と釣り合う大きさの負圧がかかる。
第2の共通気室9は、チューブを介して第2のタンク32と連通している。そのため、第2のタンク32には、第2の共通気室9と同じ負圧がかかる。さらに第2のタンク32は、チューブを介してインクヘッド2と連通しているため、インクヘッド2にも同じ負圧がかかる。
この負圧は、インク循環時において、印字に適した圧(例えば、インク循環状態で、ノズル圧が約−1kPa)に設定されている。これにより、インクヘッド2のノズルには、メニスカスが形成される。
このように構成されたインクジェットプリンタ1′では、記録媒体に画像を記録する際、大気開放弁46を開放し、第1のタンク31内を大気開放状態にするとともに、大気開放弁54を閉じ、圧力調整部10で大気より低い圧(ゲージ圧でマイナス)を生成することで第2のタンク32内を大気より低い圧にする。
このような状態で本実施形態のインクジェットプリンタ1′は、インク循環経路4内でインクを循環させる。
また、インクジェットプリンタ1′の待機時には、大気開放弁46を閉じ、大気開放弁54を開くことで、第1のタンク31内は大気に対して遮断し、第2のタンク32内は大気に対して開放する。
このとき、第2のタンク32は、インクヘッド2より重力方向下方に配置されているため、インクヘッド2のノズルには第2のタンク32の液面との水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において、インクヘッド2からインクが垂れ落ちることはない。
本実施形態において、大気開放フィルタ80の目詰まりが発生した場合には、前述した実施形態1に記載の図2(a),(b) と同様な第1のタンク31の液面変動及び、ポンプ33の駆動波形が得られる。
そのため、大気開放フィルタ80が目詰まりしていない状態と、目詰まりした状態とでは、ポンプ33の停止時間に「t2<t4」の関係がある。よって、本実施形態においても、前述した実施形態1と同様に、ポンプの駆動状態に基づいて大気開放フィルタ80の異常を検出することができる。
続いて、実施形態1及び2に共通するフィルタの交換時期を予測する処理について説明する。実施形態1及び2に示したインクジェットプリンタ1、1′は、定期的又は常時、ポンプ33の駆動波形をモニタし、ポンプの停止時間や駆動時間の推移から予想される大気開放フィルタ80,81の交換時期を演算し、その交換時期をパネル上へ表示してユーザに告知する機能を有している。
図4は、実施形態1及び2に共通する大気開放フィルタの交換時期を予測する処理のフローチャートである。
図5(a) は、大気開放フィルタの交換時期を予測するために算出される回帰式を示している。また、図5(b) は、塵挨の多い環境で動作するインクジェットプリンタについて、大気開放フィルタの交換時期を予測するために算出された回帰式を示している。
図4、図5(a),(b) を用いて、大気開放フィルタの交換時期を予測、告知する手順を説明する。
STEP101では、インク循環動作が開始される。
インク循環動作では、液面検出部42、45の検出結果に基づいてポンプ33、及び補給弁63が制御される。STEP102では、インク循環中のポンプ33の駆動時間や停止時間をモニタし、図示しない制御部内のデータメモリ内に日時と各時間(駆動時間や停止時間)が格納される。
STEP103では、STEP102で取得したポンプ33の駆動時間や停止時間を、大気開放フィルタ80,81の目詰まりと判断される時間(閾値)と比較し、大気開放フィルタ80,81が目詰まりしているか否かを判断する。このSTEP103での判断は、前述した実施形態1と同様なため、説明は省略する。
大気開放フィルタ80、81の少なくとも一方が目詰まりしていると判断された場合(STEP103の判断がYES)には、STEP107へ進み、インクジェットプリンタの動作を停止し、ユーザへ大気開放フィルタの交換を行うようモニタ表示により告知を行う。
大気開放フィルタが詰まっていないと判断された場合(STEP103の判断がNO)には、STEP104に進む。STEP104では、STEP102でメモリ内に格納されているデータを用い、図5(a) の波形93に示されるような回帰式を算出する。
なお、回帰式は、説明対象事例に近い類似事例を過去事例の事例1、事例2、・・・から探索する場合に、ユークリッド距離により判断すると探索結果に誤りが出る場合があることに基づいて、この誤りを正すために、回帰式に入力する入力因子の特定の入力因子に重要度と持たせる算出方式である。
本例では、回帰式を算出する際には、定期的例えば、1週間毎に取得されたデータが数十個以上蓄積されてから行われる。これは、初期的に取得したデータのみで算出された回帰式では、インクジェットプリンタが設置された環境(塵挨の量)を反映するには信頼性が低いためである。
また、回帰式は使用されている大気開放フィルタの性能を加味し、次数や関係式を事前に設定しても構わない。本実施形態では、ポンプ停止時間をy、大気開放フィルタの目詰まりが発生する日時をxとし、y=a*x^2の関係式をベースとして、取得したポンプ停止時間のデータより変数aの値を算出している。
STEP105では、STEP104で算出された回帰式に、大気開放フィルタが目詰まりを発生したと判断されるポンプ停止時間の値を代入し、大気開放フィルタが目詰まりする日時を逆算し推定する。
図5(a) では、日時92が大気開放フィルタの目詰まりが発生すると予想される日時となる。なお、91は、大気開放フィルタの交換が必要な位置を示している。また、図5(b) の波形94は、塵埃の多い環境で動作しているインクジェットプリンタから取得されたポンプ停止時間のデータにより算出された回帰式である。
波形93よりも波形94の方が立ち上がりが急となっており、大気開放フィルタが目詰まりすると予想される日時93は、塵埃の多い環境で動作しているインクジェットプリンタの方が短い期間に設定されていることを示している。
STEP106では、STEP105で予測された大気開放フィルタが目詰まりする時期をパネルに表示することで、ユーザに告知している。但し、STEP104で説明したように、取得したデータが少ない設置初期状態では、STEP104で回帰式の算出は行っていないため、ユーザへの告知も行わない。
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係るインクジェットプリンタ1″のインク経路構成を概略的に示す図である。本実施形態のインクジェットプリンタ1″においては、第1のタンク31と連通する気圧路82の大気開放弁46とオーバーフロータンク44との間で、第2のタンク32と連通する気圧路83の端部が連結されている。
そして、気圧路82と気圧路83との連結部と、オーバーフロータンク44との間に、第1のタンク31と第2のタンク32に共通の大気開放共通フィルタ84が介装されている。すなわち、本実施形態では、第1のタンク31と第2のタンク32に対し、1個の大気開放フィルタを共通に用いる点が実施形態1の場合と異なる。
図7(a) の上は、実施形態3に係るインクジェットプリンタ1″の大気開放共通フィルタの目詰まりが無い状態における第1のタンクの液面変動を表す図、下はその液面変動に対応するポンプの動作を示す図、図7(b) の上は大気開放共通フィルタの目詰まりが発生した状態における第1のタンクの液面変動を表す図、下はその液面変動に対応するポンプの動作を示す図である。
大気開放共通フィルタ84に目詰まりが生じていない場合は、図7(a)に示すように、前述した実施形態1の図2(a)と同様になる。
次に、図7(b) を用い、大気開放共通フィルタ84の目詰まりが発生した状態について説明を行う。
図7(b) の下方の図中のt7は、ポンプ33が駆動されている時間を示し、t8は、ポンプ33が停止している時間を示している。大気開放共通フィルタ84の目詰まりが発生すると、インク循環経路4は大気から遮断された気密状態となる。
気圧路82と気圧路83は連結部で連通しているので、第1のタンク31内における空気部分と第2のタンク32内における空気部分とは連通している。
したがって、ポンプ33が駆動されて第2のタンク32のインクが揚送されると、第2のタンク32の空気部分に発生する負圧に引かれて第1のタンク31の空気部分の空気が第2のタンク32の空気部分に移動する。
これにより、第1のタンク31の空気部分にはポンプ33が駆動に連動して、第2のタンク32の負圧とで平均化された負圧が発生する。この負圧が、ポンプ33による第1のタンク31への揚送を助成する。すなわち、図7(a) に示す時間t1よりも、図(b) に示す時間t7のほうが短くなる。
他方、第1のタンク31の空気部分と第2のタンク32の空気部分とが連通していることにより、第1のタンク31のインク液面61と、第2のタンク32のインク液面62との水頭差は大気開放時と同様に働いている。
第1のタンク31のインク量が減少する際に第1のタンク31の空気部分に発生する負圧は引かれて第2のタンク32の空気部分の空気が第1のタンク31の空気部分に移動する。
これにより、第2のタンク32の空気部分には、第1のタンク31のインク量の減少に連動して、第1のタンク31の負圧とで平均化された負圧が発生する。この負圧が、第1のタンク31から第2のタンク32へのインクの落下を助成する。すなわち、図7(a) に示す時間t2よりも、図(b) に示す時間t8のほうが短くなる。
したがって、「t7<t1」且つ「t8<t2」であるとき、大気開放共通フィルタ84に目詰まりが発生していると判断することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。