JP5484511B2 - 増築用金物、増築構造及び増築方法 - Google Patents

増築用金物、増築構造及び増築方法 Download PDF

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Description

本発明は、建物の増築に用いる増築用金物と、増築用金物を備える増築構造と、増築用金物を用いる増築方法と、に関するものである。
近年、建物の長寿命化に伴って、ライフプランに合わせて建物を増築することが多くなっている。
例えば、両親の住居と同じ敷地内に子供の住居を建てようとした場合、土地の制約などもあって、キッチンやトイレなどは共有し、居室だけを増築するような場合がある。
このように建物を増築する際には、既築側の建物と増築側の建物とを連結し、既築側と増築側とを一体化することで、耐震性などに必要な強度を確保することが一般的である。
そして、この連結には、既築側と増築側とに跨って設置される金具が用いられることがある。
このような金具として、例えば、特許文献1には、壁式工法の各壁パネルの上端部に差し渡される接続具が開示されている。この接続具を用いることで、複数の建物ユニットの各壁パネルを所定の突合せ角度状態で確実に接続することができる。
また、特許文献2には、対応する壁パネルの長手方向に沿う長さを、壁パネルの厚みの2倍以上に設定していることによって、接続具を接続のための定規として用いることが開示されている。これによって、各壁パネルを正確な位置に設置することができるようになる。
さらに、特許文献3には、下階建物ユニット群の上に上階建物ユニットを載置する場合に、各壁パネルの上端部を接続具によって接続し、この上に上階建物ユニットの床パネルを載置することが開示されている。このように上階建物ユニットを載置することで、簡素な構造で下階建物ユニット群の上に上階建物ユニットを載置することができる。
特開昭60−238543号公報 特開昭60−238544号公報 特開昭60−238545号公報
しかしながら、上記した特許文献の構成では、壁パネルの上端部に差し渡すように接続具を設置するため、増築する場合には、接続具を設置する前にあらかじめ既築側の上階部分を取り外しておく必要があった。
さらに、上記した接続具は壁パネルの上端部に取り付けるものであるため、上下階の接続のためのジョイントボルトなどが障害となって、長さが制限される場合があった。このように接続具の長さが制限されると、建物に必要な連結の強度が得られなくなる可能性があった。
そこで、本発明は、既築側の上階部分を取り外さずに施工できるうえに、必要な強度を確保できる増築用金物と、この増築用金物を備える増築構造と、この増築用金物を用いる増築方法と、を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の増築用金物は、建物を増築する際に既築側と増築側とを連結する増築用金物であって、既築側の横部材と増築側の横部材とに跨って設置される横連結板と、既築側の縦部材と増築側の縦部材とに跨って設置される縦連結板と、を備え、前記横連結板と前記縦連結板とは一枚の金属板を略直角に折り曲げることで形成されるとともに、前記横連結板には、前記既築側の横部材又は前記増築側の横部材に別の構造を取り付けるためのボルトの位置に対応する切欠き部が設けられることを特徴とする。
ここで、前記横連結板は、前記既築側の横部材と増築側の横部材とが配置された幅よりも狭い幅に形成された構成とすることができる。また、前記縦連結板の長さは、連結に必要な強度を確保するのに前記横連結板では不足する長さ以上に形成された構成とすることができる。
また、前記横連結板の両側に前記縦連結板を備えることができる。
そして、本発明の増築構造は、上記のいずれかの増築用金物を備える増築構造であって、前記横連結板は、既築側の壁の最上部の横部材の下面と増築側の壁の最上部の横部材の下面とに跨って設置されるとともに、前記縦連結板は、既築側の壁の縦部材の側面上端近傍と増築側の壁の縦部材の側面上端近傍とに跨って設置されることを特徴とする。
また、本発明の増築構造は、前記建物は、床パネルと壁パネルとを備える壁式工法の建物であり、前記横連結板は、既築側壁パネルの上枠の下面と増築側壁パネルの上枠の下面とに跨って設置されるとともに、前記縦連結板は、既築側壁パネルの縦枠の上端近傍と増築側壁パネルの縦枠の上端近傍とに跨って設置されることを特徴とする。
さらに、本発明の増築方法は、上記のいずれかの増築用金物を用いる増築方法であって、既築側建物の外壁面材の一部を取り外し、該既築側建物の外壁に平行に増築側建物の外壁を設置し、既築側の外壁の横部材と増築側の外壁の横部材とに跨って前記横連結板を設置するとともに、既築側の外壁の縦部材と増築側の外壁の縦部材とに跨って前記縦連結板を設置し、前記増築側建物に内壁面材を取り付けることを特徴とする。
このように、本発明の増築用金物は、既築側の横部材と増築側の横部材とに跨って設置される横連結板と、既築側の縦部材と増築側の縦部材とに跨って設置される縦連結板と、を備えている。
したがって、障害物などによって横連結板の長さが制限される場合であっても、不足する分を縦連結板の長さで補うことによって、必要な強度を確保することができる。
また、前記横連結板には、前記既築側の横部材又は前記増築側の横部材に別の構造を取り付けるためのボルトの位置に対応する切欠き部を設けることで、ボルトが障害とならずに、増築用金物として必要な長さを確保できる。
さらに、前記横連結板の両側に前記縦連結板を備えることで、1枚の縦連結板だけでは長さが不足する場合にも、必要な長さを確保することができる。
そして、本発明の増築構造において、前記横連結板は、既築側の壁の最上部の横部材の下面と増築側の壁の最上部の横部材の下面とに跨って設置されるとともに、前記縦連結板は、既築側の壁の縦部材の側面上端近傍と増築側の壁の縦部材の側面上端近傍とに跨って設置されている。
したがって、高い位置に増築用金物を取り付けることによって必要な強度を得ることができるうえに、既築側の上階部分を載置した状態のままで既築側と増築側とを連結することができる。
また、本発明の増築構造において、前記横連結板は、既築側壁パネルの上枠の下面と増築側壁パネルの上枠の下面とに跨って設置されるとともに、前記縦連結板は、既築側壁パネルの縦枠の上端近傍と増築側壁パネルの縦枠の上端近傍とに跨って設置されている。
したがって、壁パネルの構造材である上枠どうしや縦枠どうしを連結することによって、壁パネルどうしを強固に連結することができるため、建物ユニットどうしを強固に連結することができる。
さらに、本発明の増築方法は、既築側建物の外壁面材の一部を取り外し、該既築側建物の外壁に平行に増築側建物の外壁を設置し、既築側の外壁の横部材と増築側の外壁の横部材とに跨って前記横連結板を設置するとともに、既築側の外壁の縦部材と増築側の外壁の縦部材とに跨って前記縦連結板を設置し、前記増築側建物に内壁面材を取り付けることを特徴とする。
したがって、既築側の上階部分を載置した状態のままで、簡単な施工によって、既築側と増築側とを連結することができる。
本発明の最良の実施の形態の増築用金物の構成を説明する斜視図である。 本発明の最良の実施の形態の増築用金物を備えるユニット建物の全体構成を一部の建物ユニットを省略して説明する斜視図である。 建物ユニットの構成を分解して説明する分解図である。 本発明の最良の実施の形態の増築用金物の構成を説明する断面図である。(a)は建物を水平方向に切断して下方から見た断面図であり、(b)は鉛直方向に切断して側方から見た断面図である。 本発明の最良の実施の形態の増築用金物の設置箇所を説明する斜視図である。(a)は1階部分の連結箇所であり、(b)は2階部分の連結箇所である。 本発明の最良の実施の形態の増築用金物を用いる増築方法の順序を説明する説明図である。(a)は既築側の外壁面材を取り外す前の状態であり、(b)は取り外した後の状態である。 本発明の最良の実施の形態の増築用金物を用いる増築方法の順序を説明する説明図である。(a)は増築用金物を取り付けている状態であり、(b)は取り付け後の状態である。 本発明の実施例の増築用金物の構成を説明する斜視図である。
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図2を用いて本実施の形態の増築用金物7を備えるユニット建物Uの全体構成を説明する。
図2は、本実施の形態のユニット建物Uの全体構造を、一部の建物ユニット1,2,2を省略して説明する斜視図である。
本実施の形態のユニット建物Uは、いわゆる枠組壁工法の建物であり、図2に示すように、既築側としてコンクリートなどによって構築される既築側基礎51と、この既築側基礎51の上に設置される1階の既築ユニット3,・・・と、この1階の既築ユニット3,・・・の上に設置される2階の既築ユニット4,・・・と、既築側屋根ユニット61と、を備えている。
この1階の既築ユニット3,・・・は、アンカーボルト(不図示)によって既築側基礎51に固定され、2階の既築ユニット4,・・・は、ジョイントボルト81(図4参照)によって1階の既築ユニット3,・・・に固定されている。
そして、本実施の形態のユニット建物Uは、増築側として既築側基礎51に隣接してコンクリートなどによって構築される増築側基礎52と、この増築側基礎52の上に設置される1階の増築ユニット1,・・・と、この1階の増築ユニット1,・・・の上に設置される2階の増築ユニット2,・・・と、増築側屋根ユニット62と、を備えている。
この1階の増築ユニット1,・・・は、アンカーボルト(不図示)によって増築側基礎52に固定され、2階の増築ユニット2,・・・は、ジョイントボルト81(図4参照)によって1階の増築ユニット1,・・・に固定されている。
この1階の増築ユニット1は、図3の分解図に示すように、床パネル15と、この床パネル15の3辺に立設された壁パネル16,16,16と、を備えている。なお、図3においては、説明の便宜のために、実際には設けられる内壁面材を省略している。
この床パネル15は、いわゆる206材や210材の骨組(不図示)の上面に、パーチクルボードや構造用合板などの床面材19が貼られて構成されている。
また、壁パネル16は、床パネル15に載置される下枠18と、この下枠18に平行で最上部に位置する横部材である上枠11と、下枠18と上枠11とに架け渡される縦部材である複数の縦枠12,・・・と、を備えている。さらに、一部の壁パネル16には、通気や採光のための窓を設けるための窓用開口部17が形成されている。
これらの下枠18や上枠11や縦枠12は、いわゆる204材によって形成されるもので、相互にクギによって直接的に固定されていることに加え、後述する外壁面材14や内壁面材(不図示)とクギによって固定されることで相互に間接的に固定されている。
そして、下枠18、上枠11、縦枠12で構成された枠組の屋外側には、硬質木片セメント板や構造用合板やシージングボードなどの外壁面材14が貼られるとともに、屋内側には、石膏ボードや構造用合板などの内壁面材が貼られている。
なお、1階の増築ユニット1における1階の既築側ユニット3に接続される側の外壁面材14は、増築完了時には屋内壁の裏側となるため、あらかじめ取り外されている。
また、隣接する1階の増築ユニット1と接する側の上枠11の上面には、2つの増築ユニット1の上枠11に跨るようにジョイントプレート(不図示)が設置されて、増築ユニット1,1どうしを水平方向に連結している。
なお、上記した1階の増築ユニット1の構成は、2階の増築ユニット2、1階の既築ユニット3、2階の既築ユニット4においても略同様であるから、説明は省略する。
そして、本実施の形態のユニット建物Uでは、図2において円で囲んだ箇所Aの拡大図である図1,4に示すように、1階の既築ユニット3の壁パネル36と、この壁パネル36と略平行に並設されて隣接する1階の増築ユニット1の壁パネル16と、に跨って、増築用金物7が設置されて、増築構造Sを形成している。
この増築用金物7は、1枚の矩形の金属板を略直角に折り曲げることで、横連結板71と縦連結板72とが形成されて、全体として略L字に構成されている。
この横連結板71は、上面が、1階の既築ユニット3の上枠31の下面と、この上枠31の下面と同一平面上に形成された1階の増築ユニット1の上枠11の下面と、の両方に接するように架け渡されて、クギ82,・・・によって固定されている。
さらに、この横連結板71には、別の構造である2階の既築ユニット3や2階の増築ユニット2を固定するためのボルトとしてのジョイントボルト81,・・・を取り付けるための切欠き部71b,・・・が設けられている。
この切欠き部71bには、1階と2階とを固定するボルトとしてのジョイントボルト81と、座金83と、が設置され、1階と2階とを強固に連結している。
加えて、この横連結板71は、上枠11,31に跨って設置された状態で、電線などのコードを挿通できるように、コード用切欠き11a,31aよりも狭い幅に形成されている。
また、縦連結板72は、上記した横連結板71の一端を略直角に折り曲げるようにして形成されるもので、板の外側面が、1階の既築ユニット3の縦枠32の上端近傍の内側面と、この縦枠32の内側面と同一平面上に形成された1階の増築ユニット1の縦枠12の上端近傍の内側面と、の両方に接するように架け渡されて、クギ82,・・・によって固定されている。
そして、これらの横連結板71や縦連結板72には、クギ82,・・・を取り付けるためのクギ孔71a,72a,・・・が設けられ、これらのクギ孔71a,72a,・・・にクギ82,・・・が打ち込まれて、増築用金物7が上枠11,31や縦枠12,32に固定されている。
なお、上記した増築用金物7を備える増築構造Sは、2階の既築ユニット4と2階の増築ユニット2との連結(図2において円で囲んだ箇所B)においても、略同様であるため、説明は省略する。
次に、本実施の形態の増築用金物7を備える増築構造Sの施工方法の流れについて、図5を用いて説明する。
まず、図5(a)に示すように、既築側基礎51に隣接して、増築側基礎52をコンクリートなどによって構築し、この増築側基礎52の上に、1階の増築ユニット1,1を載置し、複数のアンカーボルト(不図示)によって固定する。
さらに、図5(a)の円で囲んだ箇所A,Aに、後述する施工順序で増築用金物7,7などを取付ける。
次に、図5(b)に示すように、1階の増築ユニット1,1の上に、2階の増築ユニット2,2を載置し、複数のジョイントボルト(不図示)によって固定する。
さらに、図5(b)の円で囲んだ箇所B,Bに、1階部分と同様に後述する施工順序で増築用金物7,7などを取付ける。
最後に、この2階の増築ユニット2,2の上に、増築側屋根ユニット62を載置し、複数のジョイントボルト(不図示)によって固定して、増築が完了する。
次に、上述した箇所A,Bにおける増築用金物7の施工順序について、図6,7の説明図を用いて詳細に説明する。なお、これらの箇所A,Bにおける増築用金物7の施工順序は略同様であるため、代表して1階の既築ユニット3と増築ユニット1とを連結する箇所Aを例に説明する。
まず、施工前の状態を説明すると、図6(a)に示すように、1階の既築ユニット3の上に2階の既築ユニット4が載置されている。そして、それぞれの外壁面材34,44が連続して設置されている。
次に、図6(b)に示すように、1階の既築ユニット3の外壁面材34の隅角部近傍の一部を、電動鋸などによって略矩形状に切り取り、上枠31や縦枠32,32を露出させる。この際、この切り取った部分の既築ユニット3の断熱材の一部も取り外しておく。
次に、図7(a)に示すように、既築ユニット3に隣接するように増築ユニット1を設置する。
ここにおいて、この増築ユニット1の外壁面材は取り外されており、内壁面材も一時的に取り外されている。さらに、増築ユニット1の断熱材85は、増築用金物7の設置の支障にならないように折り曲げられている。
そして、既築ユニット3の上枠31の下面と、この上枠31の下面と同一平面上に形成された増築ユニット1の上枠11の下面と、の両方に接するように、横連結板71を架け渡して、クギ82,・・・によって固定する。
この際、この横連結板71は、切欠き部71bの位置が上枠11,31に設けたボルト孔11b,31bの位置と一致するように設置される。
同様に、既築ユニット3の縦枠32の上端近傍の内側面と、この縦枠32の内側面と同一平面上に形成された増築ユニット1の縦枠12の上端近傍の内側面と、の両方に接するように、縦連結板72を架け渡して、クギ82,・・・によって固定する。
したがって、図7(b)に示すように増築用金物7が取り付けられることになる。
最後に、折り曲げられた断熱材85を元の位置に戻し、一時的に取り外しておいた内壁面材(不図示)を取り付けて施工が完了する。
次に、本実施の形態の増築用金物7を備える増築構造Sの作用について説明する。
このように、本実施の形態の増築用金物7は、既築ユニット3の横部材である上枠31と増築ユニット1の横部材である上枠11とに跨って設置される横連結板71と、既築ユニット3の縦部材である縦枠32と増築ユニット1の縦部材である縦枠12とに跨って設置される縦連結板72と、を備えている。
したがって、障害物などによって横連結板71の長さが制限される場合であっても、縦連結板72によって補うことによって、必要な強度を確保することができる。
つまり、一般に、地震荷重などを作用させて断面力などを計算する場合には、建物全体を1つの構造体として計算するが、その前提として、既築側と増築側とが連結されている必要がある。
この場合、既築側と増築側との連結は、抵抗するモーメントを大きくとることができるように、できる限り上方で行うことが望ましい。
したがって、本実施の形態のように、それぞれのユニットの最上部の横部材である上枠11,31に添うように横連結板71を設置することとなるが、既築ユニット3と増築ユニット1との間の引張力に耐えるためには、ある程度の長さが必要となる。
この場合、新築の建物であれば、両方の横部材の上面にジョイントプレートを差し渡すことができるが、本実施の形態のように増築の建物の場合には、既築側の横部材の上面には別の構造が載置されているため、ジョイントプレートを差し渡すことができない。
さらに、上枠11,31の下面にジョイントプレートを設置しようとしても、上枠11,31には一定の間隔で縦枠12,32が取付けられており、引張力に耐えるために必要な長さを確保できない場合がある。
そこで、本実施の形態では、横連結板71の一端を折り曲げるようにして、縦部材である縦枠12,32に添わすことによって、増築用金物7全体として必要な長さを確保している。
このように横連結板71と縦連結板72とを備えていれば、横連結板71の長さが不足する場合でも、不足分に相当する長さの縦連結板72を備えることによって、必要な長さを確保することができる。
そして、引張力に耐えうるだけの長さを確保した増築用金物7によって、既築ユニット3,4と増築ユニット1,2とを強固に連結することができるため、地震荷重などに強い構造を備えたユニット建物Uを構築することができる。
また、横連結板71には、既築ユニット3の横部材である上枠31又は増築ユニット1の横部材である上枠11に別の構造を取り付けるためのボルトであるジョイントボルト81の位置に対応する切欠き部71bを設けることで、ジョイントボルト81が障害とならずに、増築用金物7として必要な長さを確保できる。
つまり、仮に、切欠き部71bを設けなければ、ジョイントボルト81の近傍の横連結板71は、横部材である上枠11,31から浮いてしまって取付けることができなくなるため、横連結板71を上枠11,31に固定するためのクギ82,・・・の本数が限られてしまう。
このように、横連結板71を上枠11,31に強固に固定できなければ、結果として、ユニット間の引張力を横連結板71に伝達することができなくなって、増築用金物7の機能を果たさなくなる。
これに対して、本実施の形態の増築用金物7のように、切欠き部71bを設ければ、横連結板71を上枠11,31に強固に固定できるため、ユニット間の引張力を上枠11,31を介して横連結板71に伝達することができる。
そして、本実施の形態の増築構造Sにおいて、横連結板71は、既築ユニット3の壁の最上部の横部材である上枠31の下面と増築ユニット1の壁の最上部の横部材である上枠11の下面とに跨って設置されている。
さらに、縦連結板72は、既築ユニット3の壁の縦部材である縦枠32の上端近傍と増築ユニット1の壁の縦部材である縦枠12の上端近傍とに跨って設置されている。
したがって、高い位置に増築用金物7を取り付けることによって必要な強度を得ることができるうえに、1階の既築ユニット3に2階の既築ユニット4を載置した状態のままで既築側と増築側とを連結することができる。
すなわち、上枠11,31の下面の位置は、増築ユニット1や既築ユニット3において、地面からもっとも離れているため、この位置に連結のための増築用金物7を設置すれば、もっとも効率よく引張力を負担させることができる。
加えて、上枠11,31の下面に横連結板71を取付け、縦枠12,32の上端近傍の側面に縦連結板72を取付けることで、2階の既築ユニット4を取り除く必要がなくなる。
このように、2階の既築ユニット4を取り除く必要がなくなれば、連結に係る2階の既築ユニット4と周囲の2階の既築ユニット4との接続や配線などを取り外したり、取り付け直したりする手間がなくなる。したがって、施工時間や費用なども大幅に減縮することができる。
また、本実施の形態の増築構造Sにおいて、横連結板71は、既築ユニット3の壁パネル36の上枠31の下面と増築ユニット1の壁パネル16の上枠11の下面とに跨って設置されるとともに、縦連結板72は、既築ユニット3の壁パネル36の縦枠32の上端近傍と増築ユニット1の壁パネル16の縦枠12の上端近傍とに跨って設置されている。
したがって、壁パネル36,16の構造材である上枠31,11どうしや縦枠32,12どうしを連結することによって、壁パネル36,16どうしを強固に連結することができるため、既築ユニット3と増築ユニット1とを強固に連結することができる。
すなわち、一般に、枠組壁工法においては、壁パネル36,16の剛性がきわめて大きいため、構造の基本単位となっているが、本実施の形態の増築構造Sでは、この壁パネル36,16どうしを増築用金物7によって強固に連結している。
そして、この隣接する壁パネル36,16は、それぞれ既築ユニット3や増築ユニット1の他の壁パネル36,16に強固に連結されているため、結果として、既築ユニット3や増築ユニット1を強固に連結していることとなる。
したがって、地震荷重などに強い構造を備えたユニット建物Uを構築することができる。
さらに、本実施の形態の増築方法は、既築ユニット3の外壁面材34の一部を取り外し、この既築ユニット3の外壁パネル36に平行に増築ユニット1の外壁パネル16を設置し、既築ユニット3の外壁パネル36の横部材である上枠31と増築ユニット1の外壁パネル16の横部材である上枠11とに跨って横連結板71を設置するとともに、既築ユニット3の外壁パネル36の縦部材である縦枠32と増築ユニット1の外壁パネル16の縦部材である縦枠12とに跨って縦連結板72を設置し、増築ユニット1に内壁面材を取り付けることを特徴とする。
したがって、1階の既築ユニット3の上階部分である2階の既築ユニット4を載置した状態のままで、簡単な施工によって、既築ユニット3,4と増築ユニット1,2とを連結することができる。
そして、このように簡単な施工によって、既築側と増築側とを連結することができれば、手間が少なくなって施工時間が短縮されるうえに、クレーン作業なども少なくできるため、より安全な施工が可能となる。
加えて、配線や配管などの取り外しや取付けなど、付随する作業も省略できるため、全体的な工程短縮や費用削減の効果はきわめて大きいといえる。
また、本実施の形態の増築用金物7は、横連結板71と縦連結板72とが1枚の金属板を略直角に折り曲げることによって一体に形成されている。
したがって、相互にフランジとウェブのような補強しあう関係にあるため、上枠31,11や縦枠32,12などの面がずれるような変形に対して、このフランジとウェブの効果によって抵抗することができる。
以下、図8を用いて、前記実施の形態とは別の形態の増築用金物7Aを備える増築構造S1について説明する。
なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
本実施例では、前記実施の形態とは異なり、横連結板71の両側に縦連結板72,72を備える場合について説明する。
まず、構成から説明すると、本実施例の増築用金物7Aを備える増築構造S1は、1階の既築ユニット3の壁パネル36と、この壁パネル36と略平行に並設されて隣接する1階の増築ユニット1の壁パネル16と、に跨って、増築用金物7Aが設置されて、増築構造S1を形成している。
そして、この増築用金物7Aは、金属によって板状に形成されるもので、1枚の金属板の両端を略直角に折り曲げるようにして、縦連結板72と横連結板71と縦連結板72とを備え、全体としてコ字状に構成されている。
この2つある縦連結板72,72のうち、一方の縦連結板72は、上記した横連結板71の一端を略直角に折り曲げるようにして形成されるもので、板の外側面が、1階の既築ユニット3の縦枠32の上端近傍の内側面と、この縦枠32の内側面と同一平面上に形成された1階の増築ユニット1の縦枠12の上端近傍の内側面と、の両方に接するように架け渡されて、クギ82,・・・によって固定されている。
そして、他方の縦連結板72は、横連結板71における一方の縦連結板72の反対側の他端を略直角に折り曲げるようにして形成されるもので、板の外側面が、上記した一方の縦枠32と対峙する他方の縦枠32の上端近傍の内側面と、この他方の縦枠32の内側面と同一平面上に形成された1階の増築ユニット1の縦枠12の上端近傍の内側面と、の両方に接するように架け渡されて、クギ82,・・・によって固定されている。
このように、本実施例の増築用金物7Aは、縦連結板72と横連結板71と縦連結板72とを備えている。
したがって、L字状に折り曲げられて横連結板71と縦連結板72とを1つずつ備える前記実施の形態の増築用金物7によっても依然として長さが不足する場合にも、必要な長さの増築用金物7Aを形成することができる。
また、前記実施の形態の増築用金物7によって長さが十分な場合でも、本実施例の増築用金物7Aを用いれば、より上方に増築用金物7Aの引張断面を有することとなって、構造計算において有利となる。
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、本実施の形態及び実施例では、建物として枠組壁工法のユニット建物Uを増築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、従来の軸組工法など、どのような建物を増築する場合にも適用することができる。
また、本実施の形態及び実施例では、増築用金物7,7Aに切欠き部71bを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、切欠き部71bを設けないものであってもよい。
さらに、本実施の形態及び実施例では、横連結板71を最上部の横部材である上枠11,31に設置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の最上部でない横部材に設置するものであってもよい。
同様に、本実施の形態及び実施例では、縦連結板72を縦部材である縦枠12,32の上端近傍に設置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、横連結板71が最上部でない横部材に設置される場合などには、縦部材の中間に設置するものであってもよい。
そして、本実施の形態及び実施例では、ユニット建物Uの外周部に近接する箇所A,Bに増築用金物7を設置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、耐力壁に設置するものであれば、どのような位置に設置するものであってもよい。
U ユニット建物
S,S1 増築構造
1 1階の増築ユニット(増築側)
2 2階の増築ユニット(増築側)
3 1階の既築ユニット(既築側)
4 2階の既築ユニット(既築側)
11,21,31 上枠(横部材)
12,32 縦枠(縦部材)
33 内壁面材
14,34,44 外壁面材
16,36 壁パネル
7,7A 増築用金物
71 横連結板
72 縦連結板
71a,72a クギ孔
71b 切欠き部
81 ジョイントボルト
82 クギ

Claims (4)

  1. 建物を増築する際に既築側と増築側とを連結する増築用金物であって、
    既築側の横部材と増築側の横部材とに跨って設置される横連結板と、既築側の縦部材と増築側の縦部材とに跨って設置される縦連結板と、を備え、
    前記横連結板とその両側の前記縦連結板とは一枚の金属板を略直角に折り曲げることで形成されるとともに、
    前記横連結板には、前記既築側の横部材又は前記増築側の横部材に別の構造を取り付けるためのボルトの位置に対応する切欠き部が設けられることを特徴とする増築用金物。
  2. 建物を増築する際に既築側と増築側とを連結する増築用金物であって、既築側の横部材と増築側の横部材とに跨って設置される横連結板と、既築側の縦部材と増築側の縦部材とに跨って設置される縦連結板と、を備え、前記横連結板と前記縦連結板とは一枚の金属板を略直角に折り曲げることで形成されるとともに、前記横連結板には、前記既築側の横部材又は前記増築側の横部材に別の構造を取り付けるためのボルトの位置に対応する切欠き部が設けられることを特徴とする増築用金物を備える増築構造であって、
    前記横連結板は、既築側の壁の最上部の横部材の下面と増築側の壁の最上部の横部材の下面とに跨って設置されるとともに、
    前記縦連結板は、既築側の壁の縦部材の側面上端近傍と増築側の壁の縦部材の側面上端近傍とに跨って設置されることを特徴とする増築構造。
  3. 前記建物は、床パネルと壁パネルとを備える壁式工法の建物であり、
    前記横連結板は、既築側壁パネルの上枠の下面と増築側壁パネルの上枠の下面とに跨って設置されるとともに、
    前記縦連結板は、既築側壁パネルの縦枠の上端近傍と増築側壁パネルの縦枠の上端近傍とに跨って設置されることを特徴とする請求項に記載の増築構造。
  4. 建物を増築する際に既築側と増築側とを連結する増築用金物であって、既築側の横部材と増築側の横部材とに跨って設置される横連結板と、既築側の縦部材と増築側の縦部材とに跨って設置される縦連結板と、を備え、前記横連結板と前記縦連結板とは一枚の金属板を略直角に折り曲げることで形成されるとともに、前記横連結板には、前記既築側の横部材又は前記増築側の横部材に別の構造を取り付けるためのボルトの位置に対応する切欠き部が設けられることを特徴とする増築用金物を用いる増築方法であって、
    既築側建物の外壁面材の一部を取り外し、
    該既築側建物の外壁に平行に増築側建物の外壁を設置し、
    既築側の外壁の横部材と増築側の外壁の横部材とに跨って前記横連結板を設置するとともに、既築側の外壁の縦部材と増築側の外壁の縦部材とに跨って前記縦連結板を設置し、
    前記増築側建物に内壁面材を取り付けることを特徴とする増築方法。
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