JP5483891B2 - インク追従体及びそれを用いた水性ボールペン - Google Patents
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例えば、安定な追従性を有し、ペン体に衝撃が加わってもインク追従体が飛散しない弾性応答が優位なインク追従体(例えば、本願出願人による特許文献1参照)や、液体インク溜め中に使用されたインク追従体(粘弾性フォロアー)として、低い周波数または剪断速度で主に弾性応答を示す組成物を有することを特徴とする液体インク溜めを用いたボールペン(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
従って、複式水性ボールペンなどのボールペンにおいて、従来よりも内径が細いチューブに用いる場合のインク追従体は、追従性とノックに対する耐衝撃性というトレードオフの関係にある性能を両立させることが必要となる。
なお、ここでいうノックによる衝撃と上記特許文献1に記載された落下に対する衝撃とは、現象としては異なるものの、インク追従体が受ける衝撃力はほぼ同等である。すなわち、ノック式の筆記具においては、短い時間の間にインク収容管中のインクがインク追従体へ向かう方向に繰り返し強い衝撃を受けることになる。そうすると、インクが追従体の内部に徐々に侵入したり、ついには貫通してインクが漏れ出したりする場合がある。
(1) 測定温度25℃において、剪断応力を0Paの状態から1秒当たり2Paの割合で徐々に増加させてゆき、剪断速度が1.0s−1に達したときの剪断応力が40Paを越えないことを特徴とするインク追従体。
(2) 測定温度25℃において、剪断速度5000s−1での粘度値が800mPa・s以上であることを特徴とする上記(1)に記載のインク追従体。
(3) 設定温度25℃において、周波数領域1〜63rad/sで指数関数的に増加させながら各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上を示すことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインク追従体。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一つに記載されたインク追従体を備えたことを特徴とする水性ボールペン。
本発明のインク追従体は、測定温度25℃において、剪断応力を0Paの状態から1秒当たり2Paの割合で徐々に増加させてゆき、剪断速度が1.0s−1に達したときの剪断応力が40Paを越えないことを特徴とするものである。
本発明において、上記剪断応力の測定は、周期的応力または周期的ひずみを物質に与えるような周期的測定(動的測定)が可能な装置(レオメータ)により測定でき、例えば、RS−600(HAAKE社製)、コーンプレート:φ35mm、1°により測定することができる。
なお、剪断速度が1.0s−1に達したときの剪断応力が40Paを超える場合には、目的の本発明の効果を発揮できなくなり、好ましくない。
本発明のインク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα−オレフィン、エチレンα−オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV−15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
また、用いることができる具体的なポリα−オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P−26、P−46,P−56、P−150,P−350,P−1500、P−2200、(P−10000、P−37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なエチレンα−オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC−10、HC−20、HC−100、HC−150、(HC−600、HC−2000)(以上、三井化学社製)などが挙げられる。
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP−301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。
用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−300、AEROSIL−380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−974D、AEROSIL−972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
更に、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG−1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
水添スチレン−ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
これらの増粘剤の中で、本発明の効果を更に発揮させる点から、好ましくは、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が望ましい。
上記特性を更に向上させたインク追従体を得る点から、好ましくは、上記増粘剤として、熱可塑性オレフィン系エラストマーをインク追従体全量に対して、2〜5質量%含有、残部を不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤とすることが望ましい。
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1〜63rad/s」で指数関数的に増加させながら各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていたが、本発明では、上記1〜63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、内径が細いチューブを用いた場合にも追従性とノックに対する耐衝撃性というトレードオフの関係にある性能を高度に両立させ、追従性とノックに対する耐衝撃性に更に優れたインク追従体とすることができる。
特に、本発明のインク追従体は、インク中の水分が揮発によって急速に減少することを防ぎ、また、筆記時のインク消費速度が大きくてフォロワー移動速度が比較的大きい場合に対応できる点から、水性ボールペンに好適に使用することができる。
チューブ内径(直径)は、本発明のインク追従体の機能を好適に発揮させるためには、好ましくは、1.5〜3.0mmであるものが好ましく、また、インク追従体の充填長は5〜20mm、更に好ましく8〜15mmであるものが好ましい。
このノック式の水性ボールペンでは、ペン先の収納および繰り出し操作が円滑にでき、かつ、収納時におけるインクや追従体への衝撃が過度にかからない点から、ノック機構を構成するバネ(リターンスプリング)としては、バネ乗数0.025〜0.075N/mm、使用時加重が45〜180、収納時加重が12〜45gであるものが好ましく、更に好ましくは、バネ乗数0.03〜0.06N/mm、使用時加重が60〜130、収納時加重が15〜30gであるものを使用することが望ましい。
本発明となるインク追従体が収容された水性ボールペン用チューブ10としては、例えば、図1に示すように、ボールペンチップ15と、継手14と、インク収容管11とから構成されるものが挙げられる。インク収容管11は、ポリプロピレン製などの樹脂製の管であり、その内部には水性ゲルインクなどの水性インク12が収容されており、更に、水性インク12の後端には本発明となるインク追従体13、すなわち、測定温度25℃において、剪断応力を0Paの状態から1秒当たり2Paの割合で徐々に増加させてゆき、剪断速度が1.0s−1に達したときの剪断応力が40Paを越えないことを特徴とするインク追従体13が収容されている。
この水性ボールペン用チューブ10は、例えば、図2及び図3に示すような、ノック式の水性ボールペン20に搭載され、使用に供されるものとなる。このノック式の水性ボールペン20は、三本(黒色、赤色、青色)の水性ボールペン用チューブ10を先軸21と後軸22とが螺合により着脱自在となる軸筒23の軸先24から、夫々の筆記先端部を選択的に出没可能とした複式の水性ボールペンである。この水性ボールペン20のノック機構30は、各3本の水性ボールペン用チューブ10…を着脱可能に嵌着すると共に、リターンスプリングとなるバネ31…を挿通したノック体32…を備えたものであり、ノック体32の一つを下方にノックすることにより選択的に出没可能とするものである。図示符号25はゴム部材やエラストマー部材から構成されるグリップ部であり、26はクリップ部である。なお、水性ボールペン用チューブ10の内径(直径)は、1.5〜3.0mm、インク追従体の充填長は5〜20mmに設定されるものが好ましく、また、ノック機構を構成するリターンスプリングであるバネ31としては、上記好ましい範囲となるバネ乗数、使用時加重、収納時加重のものが用いられる。
また、本発明の水性ボールペンでは、速書などの筆記速度によらず安定した追従性を有し、ボールペンに加えられたノック衝撃によってもインク追従体が飛散などしない水性ボールペンが得られるものとなる。
各実施例及び比較例に用いた水性ボールペン用インク(全量100質量%)は、次に示す配合組成のものを使用した。
染料:ウオーターブラックR455 7.0質量%
(オリエント化学工業社製)
染料:ウオーターイエロー6C 1.0質量%
(オリエント化学工業社製)
液体媒体:プロピレングリコール 20.0質量%
粘度調整剤:キサンタンガム〔KELZAN HP〕 0.2質量%
(三晶社製)
界面活性剤:オレイン酸カリウム 0.5質量%
防腐剤:ナトリウムオマジン 0.1質量%
防錆剤:ベンズトリアゾール 0.1質量%
イオン交換水: 残 部
以上の配合物を撹拌後ろ過し、水性ボールペン用黒インクを得た。
(実施例1〜5及び比較例1〜2のインク追従体の調製方法)
基油と増粘剤(及び添加剤)を調合し、150℃〜190℃でミキサーにて高速で120分〜180分間撹拌し、室温まで冷却後、ロール処理を1回行い、インク追従体を得た。
基油と増粘剤を調合し、160℃〜170℃でミキサーにて高速で約180分間撹拌し、室温まで冷却後、ニーダ−で60分間混練を行い、インク追従体を得た。
(比較例4のインク追従体の調製方法)
基油と増粘剤(及び添加剤)を調合し、160℃〜170℃でミキサーにて低速で約120分間撹拌し、室温まで冷却し、インク追従体を得た。
次いで、この各特性のインク追従体と、上記インクを、下記表1に示す各内容で、ノック式ボールペン体(SXE3−400−07)の三菱鉛筆社製の外軸およびインク収容管(リフィールチューブ、内径1.8mm)に、水性インク0.135〜0.16g、追従体0.02〜0.03g(充填長:10〜15mm)を夫々充填し、ボール径0.5mmの三菱鉛筆社製の水性BP用チップ(UMR−85N用)を装着したペンについて、下記試験方法により、ノック衝撃(初期、経時)の評価、速書(初期、経時)の評価、文字書き安定性(初期)の評価の各項目の評価試験を行った。なお、上記各評価における「初期」とは、インク追従体及びインク充填直後の各評価であり、「経時」とは、ペン体を50℃、湿度30%の条件で、ペン先を横向きにして1ヶ月間放置した後の各評価である。また、ノック式ボールペンに用いたバネは、バネ乗数0.03〜0.05N/mm、使用時バネ加重0.7〜1.0N、収納時バネ加重0.2〜0.4Nとなるものを使用した。また、インク消費速度は、4.0m/minの筆記時にて6〜20mg/10mであった。
これらの結果を下記表1に示す。
RS−600(HAAKE社製)、コーンプレート:φ35mm、1°にて、測定温度25℃において、剪断応力を0Paの状態から1秒当たり2Paの割合で徐々に増加させてゆき、剪断速度が1.0s−1に達したときの剪断応力Paを測定した。
RS−600(HAAKE社製)、コーンプレート:φ20mm、1°にて測定温度25℃において、180秒間かけて剪断速度を1000s−1から9000s−1までリニアに増加させ、剪断速度が5000s−1となる時点の粘度値を測定した。
測定装置:RS−600(HAAKE社製)
測定条件(周波数依存性)
ジオメトリー:パラレルプレート35mmφ動的測定
SWEEP TYPE:FREQUENCY SWEEP
周波数範囲: 0.01 〜 100 Hz (0.063〜628 rad/s)
測定間隔:6points/decade
ひずみ:100%
測定温度:25℃
雰囲気:大気中
〔tanδ値の測定方法:比較例3、4〕
測定装置:ダイナミックスぺクトロメーターRDS−II
(レオメトリック・サイエンティフィツク社製)
測定条件(周波数依存性)
ジオメトリー:パラレルプレート50mmφ動的測定
SWEEP TYPE:FREQUENCY SWEEP
周波数範囲: 0.1 〜 10 Hz (0.63〜62.8 rad/s)
測定間隔:6points/decade
ひずみ:100%
測定温度:25℃
雰囲気:窒素気流中
ペン先の繰り出しと、収納を100回繰り返す動作を、10本のチューブについて行い、インク追従体の状態を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:変化が認められない。
○:インクと追従体の界面のわずかな変形、または、インクの追従体側への進入痕跡や少量の進入が認められる。
△:インクの追従体内への進入が認められるが、貫通や漏れには至っていない。
×:インクが追従体を貫通し、漏れが認められる。
各ペン体をISO規格に準拠した筆記用紙に、フリーハンドでφ3〜4cmの螺旋を3倍速(約12m/min)と通常速度(約4m/min)でそれぞれ筆記し、各筆記描線を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:通常速度、3倍速の筆記とも全くカスレがなく、スムースに安定して筆記できる。
○:3倍速筆記で僅かな線切れが起きる。通常速度での筆記は可能。
△:3倍速筆記で多少の線切れが起きる。通常速度での筆記は可能。
×:通常に筆記してもインクが追従せず線切れが起こる。
1cm角の桝目に、ABCと連続筆記し、筆記された文字を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:インクの流出が十分で、正常に筆記できる。
○:インク流出量がやや少なく感じられるが、正常に筆記できる。
△:インク流出量が少なく、文字が薄く感じられたり、たまに線が欠けることがある。
×:インクの追従性が悪く、カスレが発生したり、筆記不能であったりする。
比較例を詳しく見ると、比較例1及び2は剪断速度が1.0s−1に達したときの剪断応力が40Paを越えるインク追従体であり、この場合は、速書におけるインク追従性が劣るものとなり、比較例3及び4は、従来(特許文献1、特開2004−142323号公報に記載の実施例2及び3)の各インク追従体であり、これらの場合は、速書筆記追従性および文字書き安定性が劣ることが判明した。
11 インク収容管
12 水性インク
13 インク追従体
15 ボールペンチップ
20 水性ボールペン
Claims (3)
- チューブ内径(直径)が1.5〜3.0mmであるチューブ(リフィール)を備えたノック式の水性ボールペンに用いられるインク追従体であって、測定温度25℃において、剪断応力を0Paの状態から1秒当たり2Paの割合で徐々に増加させてゆき、剪断速度が1.0s-1に達したときの剪断応力が40Paを越えず、かつ周波数領域1〜63rad/sで指数関数的に増加させながら各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.7以上を示すことを特徴とするインク追従体。
- 測定温度25℃において、剪断速度5000s-1での粘度値が800mPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載のインク追従体。
- 請求項1又は2に記載されたインク追従体を備えたことを特徴とするノック式の水性ボールペン。
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