JP5483396B2 - マルチトールの蒸発結晶化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マルチトールの結晶化方法であって、非常に短い時間をかけて減圧下で蒸発させることによって、結晶化を行わせる方法に関する。
本発明の方法は、より詳細には、マルチトール含量が高く、最初は準飽和状態である、マルチトール含量の高いマルチトール溶液を、蒸発させて、部分的な減圧下の測定温度でマルチトールの準安定領域内の過飽和にする工程を含む。
次いで、種晶の添加工程を、その大きさおよび過飽和溶液中での分散が制御されたマルチトール種結晶を用いて行う。
次いで、本発明の方法は、温度条件、蒸発の間蒸気をポンプにより送り込むことによる攪拌条件、および結晶化させるマルチトールシロップの供給条件を制御することによって、マルチトールの飽和状態を結晶が成長する時間全体を通して一定に保つ工程を含む。
このようにして、本発明により、2時間未満の時間で、完全に制御された粒径分布のマルチトール結晶を得ることが可能になる。
マルチトール(1,4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール)は、マルトースの水素化によって得られるポリオールである。
マルチトール分子内に還元性末端がないことにより、マルチトールに高い熱的および化学的安定性が付与される。
マルチトールは、スクロースより低カロリーであるが、砂糖と同様の官能特性を有する。マルチトールは齲蝕原性がなく、したがって多くの食品および薬学的応用に用いられる。
今日知られているマルチトールの唯一の結晶の形態は、無水形態であり、米国特許第4408041号に記載されている。
実際に、マルチトールの結晶形態は、Hayashibara社がマルチトール結晶の製造を最初に記載した蒸気特許の公開日である1983年になるまで知られていなかった。
それ以前は、このポリオール製品は、結晶化することができないと常に考えられていた。実際には、この誤った仮説は、例えばマンニトールまたはエリスリトールなどの他のポリオールの場合と同様に、過飽和溶液からのマルチトールの結晶化の制御が容易ではないという事実に起因する。さらに、マルチトール溶液は、3以上の重合度を有するポリオールからなる多くの不純物を含有していた。
マルチトールに本質的な特定の性質、例えば特に、その溶解性も、観察された困難性の原因であった。
本発明の目的において、用語「マルチトールの溶解度」は、固体状態のマルチトールと平衡状態にある飽和溶液のマルチトール濃度を意味する。
所与の温度でのマルチトール溶液の「マルチトール過飽和」は、本発明の目的において、マルチトール溶液中のマルチトールの質量の水の質量に対する比が、純粋な形態の飽和溶液中のマルチトールの質量の水の質量に対する比を超えていると定義する。
温度の関数としてのマルチトールの溶解度曲線および過飽和限界曲線(σと表示する)は、溶液中でのマルチトールの挙動を通常反映し、その濃度ドメインを温度の関数として以下の3つの領域に分けることができる。
1)未飽和(σ<1):結晶化することができない領域、
2)σ=1〜σ=1.08:核形成および成長が起こり得る準安定状態、および
3)σ=1.08超:自発的な核形成、成長、および無定形化が制御不能な態様で起こり得る不安定領域。
所与の化合物の準安定領域では、通常、成長または消失しうる種晶が自発的に生成することを特徴とし、形成されたこの種晶は不均一であり、不規則な形状を有する。
マルチトールについては、準安定状態の過飽和限界はσ=1.08である(Schoutenら、1999, Carbohydrate Research, 322, 298-302)。この値は、他の糖類と比較すると相対的に低く、結晶化の制御を特に難しくする。
マルチトールの水への溶解性は、過飽和の判定に極めて重要であり、結晶の成長を支配する推進力を表す。
マルチトールの水への溶解性に影響を及ぼす傾向がある全ての要因の中で、温度は最も顕著な影響を及ぼす要因であると考えられる(OhnoおよびHirao, 1982, Carbohydrate Research, 108, 163-171)。
マルチトールの溶解性は、温度の上昇にしたがって顕著に増加する。1つの指標として、溶解性は、8.5℃での水100 ml当たり132.5 gから、90℃での水100 ml当たり567.3 gに上昇する(A. GHARSALLAOUIらの文献、Food Biophysicsでの発表待ち)。
今までのところ、従来技術に記載されたマルチトールの結晶化法におけるこれらの基本的な規則性を用いても、雑多な結果が得られるのみであった。
この理由は、結晶化が、必ずしも知られておらず制御されていない多くの要因を含む複雑な操作であることである。
結晶の最終的な形態が、結晶化条件に高度に依存することも挙げるべきである。不純物も、結晶の形状(晶相)を変え得る(例えば、出願人会社が欧州特許第905138号に記述したように、マルチトール結晶のプリズム型および二重ピラミッド型の形態が、異なる濃度のマルチトリイトールの存在下で形成される)。
不純物はさらに、多くの他の影響を結晶化に及ぼし、結晶化を妨げる場合もある。
さらに、結晶化が制御されないと、その構造がより安定な状態に変化しうる無定形生成物が得られる可能性もある。この「ガラス転移状態」は、構造、ならびに温度および湿度の環境条件に依存する。
一般に、結晶化は、2つの基本的なメカニズムである核形成および結晶成長が系統的に関連する物理的過程であると考えられている。
これらの2つの現象は、過飽和溶液中で起こる。さらに、過飽和溶液を得るための方法については、さまざまな結晶化法があり、冷却、蒸発、またはこれら2つの組合せによって過飽和が達成される熱的方法、および、共溶媒または系の特性を変える添加剤の添加を伴う方法に区別される。
結晶化させる化合物の溶解性が温度と共に急速に上昇する場合、冷却が適切な結晶化法となる。実際に、これが最もしばしば用いられる方法である。
この溶液を特定の過飽和レベルにまで冷却する。突然の冷却もしくはゆっくりとした冷却によって、あるいは、最も多くの場合種晶の添加によって、界面(すなわち種晶)を生じさせることができる。
実際に、これらの方法の選択は、溶質の性質および所望する結晶次第である。
結晶の成長は、一般に、徐々に温度を降下させることによって行う。したがって、このタイプの方法では、温度プロファイルが決定的な制御要因である。結晶化過程にある塊と冷却中の液体との間の温度差は、冷却装置に用いる熱交換機の金属表面上での結晶化を回避するために大きすぎべきではない。この結晶化は、「クラスト」または「ライニング」として知られる固体沈着プロセスであり、移送の妨げという追加的な問題を引き起こす。
工業的には、マルチトールの冷却による結晶化は、結晶成長速度によっては制限されないが、結晶化に用いる溶液を冷却する能力によって制限される。
マルチトールの場合、したがって、冷却による結晶化段階の前に、蒸発により濃縮する工程を行うことが多く、この工程により、過飽和にし、かつ、過飽和を維持することが可能になる。
したがって、許容可能な収率は、純度が低下した生成物を得る危険性を伴うことなく単一の工程で得ることはできないようである。
マルチトールの場合、プロセスは、一般にいくつかの工程で行われ、第1の結晶化に由来する母液が、結晶を分離した後で、新たな結晶化へ供給するために用いられる。
使い尽くしによるこの結晶化工程の代替法として、母液を、通常、擬似流動床中でのクロマトグラフィーによって処理することができる
減圧下のチャンバに熱い溶液を導入することによって、蒸発工程と冷却工程との組合せを行うこともできる。
これにより、自発的(「フラッシュ」)蒸発がもたらされる。徐々に圧力を低下させることにより、過飽和を維持することが可能になる。特定の過飽和値から出発して、冷却操作を行うことができる。
最初に市販された半結晶性マルチトール粉末は、最高で90%までであって良い含量を示す脱水化されたマルチトール溶液を、糖またはポリオールの結晶からなる種晶の添加によって固化させる工程からなる「バルク溶液」法によって製造された。このようなプロセスは、例えば、特開昭57-47680号および同第58-158145号に記載されている。
米国特許第4408401号には、「全糖」として知られている粉末状結晶混合物を、予備結晶化した溶液またはマスカイトの噴霧によって製造することも提唱されている。これらは、追加的に大量のポリオール類(例えば、ソルビトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、および、重合度がより高い他のポリオール類など)を含むマルチトールの過飽和水溶液を非常にゆっくりと冷却することによって得られる。
非常にゆっくりとした冷却、およびマルチトール種晶の添加は、マルチトール結晶の形成および成長のためのこのプロセスにおいて実質的に必須である。
しかし、この「全糖」は、十分な結晶化からはほど遠いものである。なぜなら、これは、さらに約40分乾燥する必要があり、かつ、10時間熟成する必要もあるからである。
しかし、その水蒸気に対する安定性は中くらいであり、貯蔵により固化することがしばしば問題とされる。
出願人会社は、その欧州特許第185595号および同第189704号において、連続クロマトグラフィーによる分別技術に基づく方法を用いて、高い含量のマルチトール粉末を製造することを提唱することにより、これらの問題に対する最初の解決策に向けた貢献をした。
これらの方法により、競争力のあるコストで、99%を超える純度を有する粉末を、マルチトールの含量が特に高いクロマトグラフィーフラクション中に存在するこのマルチトールの水溶液を結晶化することによって得ることが可能になった。
一方で「バルク溶液」法、他方で水溶液中の結晶化として知られるこの技術は、長い間、結晶性マルチトールの唯一の工業的製造法であると考えられてきた。
しかし、工業的に、達成すべき最も困難な段階は依然として結晶の大きさおよび形の制御の問題である。
具体的には、マルチトールを結晶化すると、容量が大きな結晶化装置内での摩滅または冷却により、あるいは乾燥中に粉塵が生じる。
微細な結晶の存在、粒径の不均一性、およびマルチトールの天然の吸湿性が、ポリオールの結晶化の分野の専門家を、結晶性マルチトール粉末の貯蔵、輸送、および調整に通常用いられる条件下で水蒸気および温度に対して長期化された安定性を確実にすることができる結晶化法の探索へと駆り立てた。
その結果、「バルク溶液」技術および水溶液中での冷却による結晶化技術と一緒に、蒸発結晶化法が研究された。
しかし、マルチトールの結晶化に向けたこれらの研究の多くは、蒸発および冷却を組み合わせた過度に長い従来の方法を用いた。
具体的には、多くの場合は、せいぜいバルク溶液中の結晶の熟成を確実にするくらいであることが多く、これを集めた後、乾燥させ、さらに機械的な影響、例えば、結晶の破砕、粉塵の形成、および吸湿性の増大を考慮することなしに粉砕していた。
これらの例には、下記のものが含まれる。
−米国特許出願公開第2006/0078662号は、種晶を添加しないマルチトールの製造方法を教示する。最初に、溶液を蒸発させることによって濃縮して、残存湿潤性を4.5%〜6%にした後、10〜20℃の温度に冷却する。濃縮し、冷却した溶液を、最後に押出機に供給する。
粉砕後に得られた生成物は、50〜500μmの間の過度に分散した粒径を、不安定な生成物に特徴的な0.2〜0.8%の残存湿潤性と共に有し、さらに、低純度の製品に特徴的な144〜148℃の融点(純粋なマルチトールの融点は146〜147℃である)を有している。
−国際公開第2005/014608号には、クロマトグラフィー分離によって(乾燥重量基準で92%を超えるマルトース含量に)富化されたマルトースに富むシロップ(乾燥重量基準で70〜80%)を調製し、その後、触媒的に水素化した後、濃縮し、次いで固化または結晶化し、乾燥することが記載されている。このマルチトール結晶は、98.5%の固体含量を有し、マルチトール含量が97%以上である。
しかし、この結晶化法を用いてクロマトグラフィー後のマルチトール溶液を精製する場合、多くは、多数の長く複雑かつ煩雑な工程による。
−欧州特許出願公開第139573号には、表面「フラッシュ」蒸発、および連続的なマルチトール溶液の再循環が記載されており、マルチトール溶液を、蒸発器の外側の圧縮蒸気の熱を用いる熱交換機で加熱する。
溶液の一部を結晶と共に集めて、結晶を母液から分離し、次いで母液を再循環させる。結晶の一部は、結晶化装置のステム内のデカンテーションによって集める。
しかし、この方法は、多くの単位操作(フラッシュ蒸発、蒸気の圧縮、熱交換、デカンテーション)を含み、このことがこの方法を特に魅力的でも工業的に価値のあるものでもなくしている。
−最後に、国際公開第02/04473号には、製糖業において従来用いられている結晶化法を模倣した実験室条件下で蒸発再結晶法を実施することによるマルチトール結晶の調製を包含する。
この方法は、基本的に、広いスペクトルの残存オリゴマーを含有する水素化マルトースシロップに不純物を添加した状態で実施される蒸発結晶化からなる。
国際公開第02/04473号には、50%〜80%のマルチトール収率および60%〜70%固体含量の結晶化マルチトールの製造が記載されている。これらの収率は、蒸発結晶化後に、母液と結晶の間の固体含量の差異を用いて得られる。
このような固体濃度を、工業的な条件に移行させることはできない。これらの濃度では、例えば、ポンプによる移送および遠心分離段階などの段階で問題が生じるからである。
さらに、蒸発による結晶化は、それだけを用いることはできず、冷却工程と組み合わせる必要がある。
実際は、蒸発によって結晶化開始剤のみが調製され、結晶化自体は従来通り30時間の冷却によって行われる。
多くの場合、達成された過飽和が、得られる結晶の大きさおよび形を効果的に制御することを可能にするためには高すぎることが分かる。
実際に、マルチトールの準安定領域の限界はσ=1.08であり、国際公開第02/4473号において言及されている過飽和は不安定領域であり、制御不能であると定義されている領域であることを思い出されたい。
最後に、低く定義されている収率は、結晶の真の収率より、遠心分離器に残ったマルチトールクリームに相関している。
欧州特許出願公開第139573号明細書 国際公開第02/04473号パンフレット
上述したことから、マルチトール結晶の大きさおよび形を、長く、骨の折れる、困難で複雑な工程を行うことなく制御することを可能にするマルチトールの結晶化法に対する満たされていない必要性がある。
出願人会社は、評価されるべきことに、これまで折り合いをつけることが困難であると考えられていたこれらの目標すべてについて、顕著に速いマルチトールの蒸発結晶化法であって、種晶の質を制御し、かつ、結晶成長の間中ずっと、マルチトールの溶解度条件およびマルチトール溶液の過飽和を制御することに基づく方法を提唱することによって折り合いをつけた。
したがって、本発明は、マルチトール結晶を蒸発結晶化によって製造する方法であって、
a) 乾燥物質に基づいて少なくとも85%のマルチトール含量、好ましくは乾燥物質に基づいて89%〜99%、より好ましくは乾燥物質に基づいて93%〜95%のマルチトール含量を有するマルチトール溶液を調製する工程と、
b) 前記マルチトール溶液を、減圧下、蒸発結晶化装置内で濃縮して、マルチトール過飽和度がマルチトールの準安定領域内にあるマルチトールシロップを得る工程と、
c) 前記過飽和マルチトール溶液に、分散した形態のマルチトール種晶を添加する工程と、
d) 温度条件、蒸気をポンプにより送り込むことによる激しい撹拌条件、および結晶化すべきマルチトールシロップの供給条件を制御することによって、マルチトールの過飽和度をマルチトールの準安定領域内に一定に維持しながら結晶化を行わせる工程と、
e) こうして得られた前記結晶を取り出す工程と
を含むことを特徴とする方法に関する。
本発明に係る蒸発による結晶化法は、マルチトール溶液を過飽和点まで蒸発させる段階と、その後、種晶を添加し、種晶の成長を達成するために過飽和度を一定に維持する段階とからなる。
第一の工程は、乾燥物質に基づいて少なくとも85%のマルチトール含量、好ましくは乾燥物質に基づいて89%〜99%、より好ましくは乾燥物質に基づいて93%〜95%のマルチトール含量を有するマルチトール溶液の調製からなる。
本発明において、含量の概念は、結晶マルチトール組成物中に存在する全ての炭水化物に対するマルチトールの百分率に相当し、乾燥重量/乾燥重量で表されるものと理解されるべきである。
これらの炭水化物は、ポリオール類、例えば、特に、ソルビトール、重合度(DP)3のポリオール、および重合度(DP)4のポリオールなどであってよい。この含量は、通常、高性能液体クロマトグラフィーで測定する。
マルチトール溶液の調製は、当業者に公知の任意の方法によって行う。
例えば、出願人会社が所有する欧州特許第905138号の教示に従って、記載された方法の工程を制御して、マルチトールシロップが、乾燥物質に基づいて少なくとも85%のマルチトール含量、好ましくは乾燥物質に基づいて89%〜99%、より好ましくは乾燥物質に基づいて93%〜95%のマルチトール含量を有し、乾燥物質に基づいて1%以下、好ましくは乾燥物質に基づいて0.5%以下のマルチトリイトール含量を有するようにすることによって製造することができる。
本発明の方法の第二の工程は、こうして得られたマルチトール溶液を、減圧下で濃縮して、マルチトール過飽和度がマルチトールの準安定領域内にあるマルチトールシロップを得る工程からなる。
マルチトール溶液の濃縮は、溶液から水を蒸発させることによって行い、この蒸発は、蒸発結晶化装置または再循環ループのいずれかの中に設置した熱交換機を通して飽和蒸気を供給することによって行う。
得られたマルチトール溶液の過飽和を作り出すためには、マルチトール濃度がその溶解度を超え、マルチトールの準安定領域内に設定された1.04〜1.08の過飽和度を有する最初のマルチトールシロップがもたらされるように溶液を修正しなければならない。
出願人会社は、93%〜95%の含量を有するマルチトール溶液について、これらの過飽和値が、75℃〜85℃の加熱温度〔調理温度(cooking temperature)〕および20〜30 kPaの部分的減圧で達成されることを突き止めた。
以下に例証するように、公称値を22 kPaに設定する場合には、加熱温度は76℃に相当する。
蒸発により除去されるべき水の量を、最初のマルチトール濃度から算出することにより求める。
本発明の方法の第三の工程は、1.04〜1.08の値、例えば1.05〜1.07の値の過飽和度が達成された後で、前記過飽和マルチトール溶液に、分散した形態のマルチトール種晶を添加する工程からなる。
この種晶の添加は、レーザー粒度分布計で測定して10〜50μm、好ましくは20〜30μm、より好ましくは約25μmの平均の大きさを有するマルチトール結晶を用いて行う。
これらの大きさは、粉末分散モジュール(乾式ルート)を備えたBeckman-Coulter社からのLS 230型レーザー散乱粒度分布計を使用して、製造業者の技術マニュアルおよび仕様書に従って測定する。
LS 230型レーザー散乱粒度分布計の測定範囲は、0.04μm〜2000μmである。
ホッパー下のスクリュー速度、および分散シュートの振動強度の操作条件は、光学濃度が4%〜12%、理想的には8%になるように決定する。
結果を容量パーセントとして算出し、μmで表す。
種晶として用いるマルチトール結晶を、飽和マルチトール溶液中またはポリエチレングリコール(特に、PEG-300)中に分散させる。これらの溶媒は、比較的高い粘度を有する食品グレードの溶媒であり、それらの大きさが小さいことに起因して通常凝集する結晶の分散および分離を可能にする。
結晶化用の種晶を分散させると、部分的減圧および高温の力を借りて、凝集および双晶形成を最小限にすることを可能にする。
導入する種晶の量は、下記式(f)(ROGEおよびMATHLOUTHI、AVH Association, 12th Symposium - Reims, March 2005より):
Figure 0005483396
〔式中、
ms:得られる結晶の質量;
ms:種晶の質量;
Ls:結晶化後の結晶の平均の大きさ;
Ls:種晶の大きさ
を表す(B. ROGEら、AVH Association - 12th Symposium - Reims, March 2005, pp. 15 - 22による)〕
に従って、得られる結晶の理論的な大きさの関数として算出する。
本発明の方法の第四の工程は、温度条件、蒸気をポンプにより送り込むことによる激しい撹拌条件、および結晶化させるべきマルチトールシロップの供給条件を制御することによって、マルチトールの過飽和度をマルチトールの準安定領域内に一定に維持しながら結晶化を行う工程からなる。
結晶化用の種晶の導入を、マスカイト中に空気を導入しないように注意しながら(空気が、減圧、加熱温度、および媒体の過飽和をも変化させるため、いかなる自発的な核形成も避けるべきである)行った後、結晶の成長工程を一定に維持した部分的減圧下で行う。
蒸発は、蒸発結晶化装置内で、過飽和マルチトール溶液の、激しく且つ良好に制御された撹拌が得られるように行う。
溶液から蒸発する水は、実際に、溶液を激しく撹拌するポンプ現象を引き起こす。
この現象が、機械的撹拌によって生ずるであろう振幅より遙かに大きな振幅で溶液を撹拌することを可能にする。
蒸発した水は、その後、蒸発結晶化装置から取り出されるか、あるいは蒸発結晶化装置内で凝縮される。
蒸発結晶化装置に入る溶液の乾燥物質量も、ポンプ現象に必要且つ十分な飽和蒸気量が得られるように調節する。
さらに、蒸発を制御することによって引き起こされた激しい撹拌により、熱および物質の均一な移動が可能になることに注目すべきである。これにより、以下に実証するように、結晶の制御された成長、および、固体へと向かわせる問題の原因であり、微細な粒子を生じる、従来技術において通常観察されていた自発的な核形成の低減がもたらされる。
出願人会社は、さらに、本発明のこの第四の工程を、以下の連続的な段階
−外部蒸発による濃縮段階、次いで、
−「濃縮」休止段階(内部蒸発)
からなる全体として一定した濃縮工程で行うことを推奨する。
マスカイトを蒸発させることによる濃縮段階は、「マスカイト調理」として知られている。これらにより、結晶成長によって引き起こされたマルチトール母液の過飽和の低下を補うことが可能になる。
蒸発結晶化は、2時間以内、好ましくは30〜90分間、さらに好ましくは40〜70分間の合計時間で行う。
出願人会社が知る限りでは、従来技術には、このように速いマルチトールの結晶化は今までに全く記載されていない。この結晶化時間は、冷却による結晶化に必要とされる時間より10倍〜40倍短い。
加熱温度は、70〜85℃、好ましくは72〜80℃に一定に保つ。
本発明の方法の第五の最終の工程は、結晶マルチトールを取り出す工程からなる。
結晶の洗浄は、当業者に公知の任意の方法によって行う。
得られる結晶の形、大きさ、および粒径分布を分析する。
結晶の晶相は、光学顕微鏡および電子顕微鏡の両方によって測定する。
光学顕微鏡では、結晶をガラス製るつぼに入れ、最大倍率250倍の対物レンズを備えたNikon双眼鏡下で検査した。カメラを、コンピュータに基づく画像取得システムに連結する。
画像は、グレーの256レベルで取得され、752×548ピクセルの解像度を有している。試料を、冷光をもたらす光ファイバーで照射する。これは、試料をその最初の状態に保つのに都合が良い。
電子顕微鏡では、観察は、Quanta 200 FEG FEI走査型電子顕微鏡を用いて行う。
結晶を、2〜5 kVの電圧下で観察する。写真は、50〜350倍の拡大顕微鏡下で撮影した後、印刷時に拡大する。
マルチトリイトール含量が1%未満のマルチトール溶液の結晶化によって得られる結晶は、出願人会社による欧州特許第905138号に教示した通り、二重ピラミッド型を有する。
レーザー粒度計を使用して測定した結晶の大きさは、50〜550μm、好ましくは150〜400μm、より好ましくは150〜350μmである。
出願人会社は、驚くべきことに、このマルチトール結晶の粒径分布が、ガウス型であり、変動係数が60%を超えず、好ましくは45%〜55%の範囲の値を超えないことを見いだした。
本発明の蒸発結晶化法を、約0.5%のマルトトリイトールを含有する、93%マルチトール溶液に適用すると、二重ピラミッド型の結晶を急速にもたらし、その狭い粒径分布により優れた流動性を有する流動性マルチトール粉末を得ることが可能になり、この粉末は、非常に広い温度範囲(15〜30℃)内および相対湿度範囲(45%〜75%)内のさまざまな貯蔵条件下で固化しないことにも注目すべきである。
最後に、結晶化収率は、比較的高く、マスカイトの乾燥重量に対するマスカイトから取り出した結晶の乾燥物重量として表して55%〜65%である。
本発明は、例示的かつ非限定的に提示する以下の実施例を読むことによってより明確に理解されるであろう。
結晶化は、マルチトール溶液を、準安定領域の限界内のマルチトール濃度に到達するまで蒸発させる工程、次いで、種晶を添加し、前記限界内の過飽和を維持して、種晶の成長を達成する工程からなる。
結晶化は、中央のウエル内に設置された撹拌機を備えた、6 m3の容積の容器で構成される工業的な蒸発結晶化装置内で行う。円筒状の管状熱交換機に飽和水蒸気を供給する。この蒸気は、1バール(100 kPa)の圧力でボイラーを用いて供給する。加熱温度は、連続的に制御する。
部分的な減圧は、メンブレン圧力スイッチを備えた液封ポンプを用いて得る。公称圧力を、72〜74℃の蒸気温度および加熱温度76℃に対応する22 kPaに保つ。
マスカイトの調理は、蒸気の外部蒸発によって過飽和固体含量に達するまで行う。
次いで、水の蒸発段階と内部濃縮段階とを、順に交代させて、過飽和と、結晶化工程の間中蒸気をポンプにより送り込むことによる特に激しい撹拌とを制御する。
追加的な飽和蒸気を必要に応じて送り込んで、マスカイトの撹拌を維持する。
調理の最終段階での温度は80℃である。
グレイニング(graining)は、バルク溶液中に、PEG-300に分散させた(約25μmに)標準化されたマルチトール結晶を、種晶のデカンテーションを避けるために十分な量で導入することによって行う。
結晶化は、部分的な減圧(22 kPa)下で行い、以下の工程を含む。
−溶液を濃縮して、蒸発によって1.07に等しい過飽和度が得られるようにする工程。蒸発により除去すべき水の量を、最初の濃度から算出する。
−所望の過飽和が達成されると、標準化した種晶を上述により示した式(f)に従って算出した量で導入することによって、種晶を添加する工程。
このグレイニングに続く段階は、下記表に示した通り、休止段階が組み入れられたいくつかの蒸発段階からなる。
複数の段階における結晶化工程は、54分間続き、温度は76℃〜80℃の間である。結晶の取りだしを次に行う。水で連続して2回洗浄することにより、結晶の遠心分離および乾燥後に、乾燥した流動性のある結晶粉末を取り出すことが可能になる。
Figure 0005483396
Figure 0005483396
濃縮段階により、結晶化工程の間の溶液のマルチトール含量の低下に伴って、通常結晶化速度が低下する問題を、克服することが可能になる。
Figure 0005483396
本発明の方法による減圧下で蒸発させると、結晶化時間を顕著に短縮し、均一な大きさおよび狭い粒径分布を有する二重ピラミッド型の結晶を得ることが可能になる。

Claims (15)

  1. 蒸発結晶化によってマルチトールの結晶を製造する方法であって
    a) 乾燥物質に基づいて少なくとも85%のマルチトール含量を有するマルチトール溶液を調製する工程と、
    b) 前記マルチトール溶液を、減圧下、蒸発結晶化装置内で濃縮して、マルチトール過飽和度がマルチトールの準安定領域内にあるマルチトールシロップを得る工程と、
    c) 前記過飽和マルチトール溶液に、分散した形態のマルチトール種晶を添加する工程と、
    d) 温度条件、蒸気をポンプにより送り込むことによる激しい撹拌条件、および結晶化すべきマルチトールシロップの供給条件を制御することによって、マルチトールの過飽和度をマルチトールの準安定領域内に一定に維持しながら結晶化を行わせる工程と、
    e) こうして得られた前記結晶を取り出す工程と
    を含み、
    − 前記蒸発結晶化を、75〜85℃の加熱温度および20〜30kPaの圧力で実施し、
    − 前記種晶の添加を、10〜50μmの大きさの結晶を用いて行う
    ことを特徴とする、方法。
  2. 前記マルチトール溶液が、乾燥物質に基づいて89%〜99%のマルチトール含量を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記マルチトール溶液が、乾燥物質に基づいて93%〜95%のマルチトール含量を有する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記種晶の添加を、20〜30μmの大きさの結晶を用いて行う、請求項に記載の方法。
  5. 前記種晶の添加を、25μmの大きさの結晶を用いて行う、請求項に記載の方法。
  6. 前記マルチトール種晶を、凝集体または双晶の形成を防止するために、飽和マルチトールシロップおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される比較的高粘度の食品グレードの溶媒中に分散させることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記比較的高粘度の食品グレードの溶媒が、PEG-300である、請求項に記載の方法。
  8. 前記蒸発結晶化を、蒸発/濃縮段階、および濃縮段階によって、2時間未満の持続時間で行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記蒸発結晶化を、蒸発/濃縮段階、および濃縮段階によって、30〜90分の持続時間で行う、請求項に記載の方法。
  10. 前記蒸発結晶化を、蒸発/濃縮段階、および濃縮段階によって、40〜70分の持続時間で行う、請求項に記載の方法。
  11. 得られるマルチトール結晶が、50〜550μmの粒径を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 得られるマルチトール結晶が、150〜400μmの粒径を有する、請求項11に記載の方法。
  13. 得られるマルチトール結晶が、150〜350μmの粒径を有する、請求項12に記載の方法。
  14. 得られるマルチトール結晶の粒径分布が、ガウス分布型であり、60%以下の変動係数を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記変動係数が、45〜55%の範囲内である、請求項14に記載の方法。
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