JP5482060B2 - タルク粉末を含む樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、特定の形態を有するタルク粉末を含む樹脂組成物に関する。詳しくは、自動車部品、家電製品部品、事務機器部品等に好適に用いられる樹脂組成物に関する。
従来、プロピレン・エチレン共重合樹脂等にタルクを配合した樹脂組成物は、その優れた機械的性質や熱的性質、リサイクル性等を示すことから自動車部品、家電製品部品又は事務機器部品等の工業部品分野に広く使用されている。一方、これらの分野への展開が広がるにつれ、上記樹脂組成物にはますます高度な物性レベルが要求されている。これらの要求に対応するため、例えば、プロピレン・エチレン共重合樹脂に種々のタルク、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム等を加えて、剛性や耐衝撃性を向上させる試みが数多く行われている(特許文献1及び2参照)。
しかしながら、この様なタルクを含有する樹脂組成物は、タルクの増量に伴い、その比重大きくなるため、更なる改良が望まれている。例えば、自動車用途については、地球温暖化防止、CO排出規制等の観点から軽量化が求められており、車両に搭載される部品の比重を小さくすることが必要となってきている。そのため、上記部品に用いられる樹脂組成物としては、従来と同様の曲げ弾性率でありながら、比重が小さく、剛性が高いもの等が求められている。
また、これらの樹脂組成物を用いた成形体は、線膨張係数が大きいために外気温の変化により寸法が変化することがある。線膨張係数は、フィラーの配合により改善可能であるが、従来の金属製部品を樹脂組成物製部品に代替するには、更なる改良が望まれている。特許文献3には、これらの課題を解決すべく、特定形状を有するタルクの併用が提案されているが、この方法は、タルクを湿式法で製造しているため、乾燥工程等が必要になる上にスケールアップが難しく、製造コストが掛かるという課題があった。
特開昭57−73033号公開公報 特開昭57−8235号公開公報 国際公開第98/45374号公開公報
本発明は、この様な現状をふまえ、物性−比重バランスに優れ、自動車内外装品、家電製品部品、事務機器部品等の種々の用途に使用可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の結晶構造を有するタルク原石を粉砕及び/又は分級することにより得られる特定形状のタルク粉末を含む樹脂組成物が剛性、耐面衝撃性、曲げ弾性率等の機械的物性に優れ、線膨張係数が小さく、物性−比重バランスが良好とすることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の要旨は、ポリプロピレン系樹脂中にタルク粉末を含む樹脂組成物であって、前記タルク粉末がタルク原石を乾式粉砕及び分級して得られるタルク粉末であって、前記タルク原石の広角X線回折法による配向評価における12次の回折ピークの半値幅が1度以上30度以下であり、且つ前記タルク粉末のJIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が2.0μm以上18.0μm以下であることを特徴とする樹脂組成物に存する。
本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の樹脂組成物であって、前記タルク粉末のJIS R1619に従って測定した遠心沈降法によるメディアン径D50(S)が1.0μm以上6.0μm以下であり、且つ、前記タルク粉末の下記式により求められるアスペクト比定数が1.0以上15.0以下であることを特徴とする樹脂組成物に存する。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)
本発明の第3の要旨は、ポリプロピレン系樹脂中にタルク粉末を含む樹脂組成物であって、前記タルク粉末が広角X線回折法による配向評価において12次の回折ピークの半値幅が1度以上30度以下であるタルク原石を、JIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が10.0μm以上25.0μm以下になるまで乾式粉砕又は乾式粉砕後に分級した後、JIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が2.0μm以上18.0μm以下のタルク粉末を分級することにより得られるタルク粉末であることを特徴とする樹脂組成物に存する。
本発明の第4の要旨は、第1乃至3の何れか1つの要旨に記載の樹脂組成物であって、前記タルク粉末が脱気圧縮され、かさ密度が0.3以上1.0以下の圧縮タルク状態で含まれていることを特徴とする樹脂組成物に存する。
本発明の第5の要旨は、第1乃至4の何れか1つの要旨に記載の樹脂組成物であって、前記樹脂と前記タルク粉末の比率が前記樹脂20.0〜99.9重量部に対し、前記タルク粉末0.1〜80.0重量部であることを特徴とする樹脂組成物に存する。
本発明の第の要旨は、第1乃至5の何れか1つの要旨に記載の樹脂組成物であって、前記ポリプロピレン系樹脂がプロピレン・エチレン−ブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物に存する。
本発明の第の要旨は、第1乃至の何れか1つの要旨に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体に存する。
本発明の第の要旨は、第の要旨に記載の成形体であって、曲げ弾性率が2800MPa以上10000MPa以下であることを特徴とする成形体に存する。
本発明の第の要旨は、第又はの要旨に記載の成形体であって、流れ方向とその直角方向の線膨張係数が10ppm以上45ppm以下であることを特徴とする成形体に存する。
本発明の樹脂組成物は、特定の形態のタルク粉末を含むため、本発明の樹脂組成物の成形体を軽量でありながら、剛性、耐面衝撃性、曲げ弾性率等の機械的物性に優れ、線膨張係数が小さいものとすることが可能である。従って、本発明の樹脂組成物は、物性と比重とのバランスに優れ、自動車部品、家電製品部品、事務機器部品等に好適に用いられる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
1.タルク原石
本発明の樹脂組成物に含まれるタルク粉末は、特定の結晶構造を有するタルク原石を乾式粉砕及び/又は分級して得られる。具体的には、本発明に係るタルク粉末は、広角X線回折法による配向評価における12次の回折ピークの半値幅が1度以上30度以下のタルク原石を乾式粉砕及び/又は分級して得られる。また、該半値幅は25度以下であるのが好ましく、20度以下であるのが更に好ましい。また、該半値幅から算出されるタルク原石の配向度は、0.7以上であるのが好ましく、0.8以上であるのが更に好ましく、0.9以上であるのが特に好ましく、また、上限は1.0であるのが好ましい。ここで、タルク原石の12次の回折ピークの半値幅及び結晶の配向度は、以下のようにして測定することができる。
(結晶構造)
12次の回折ピークの半値幅は、株式会社リガク製卓上型回転対陰極型X線発生装置「ultrax18」を使用して、Niフィルターで単色化したCuKα線で、シンチレーションカウンター及び波高分析器を用いて、X線回折強度を測定することにより求めることができる。ここで、光学系は反射法とし、発散スリット1/2°、受光スリット0.15mm、散乱スリット1/2°とする。具体的には、X線源から発散したX線をタルクの劈開面に照射しながら、対称反射法で2θ=5〜80°(2θはブラッグ角)の範囲の回折強度を記録する。配向度の測定には、2θ=59.3°付近に観察される12次の回折ピークを使用する。シンチレーションカウンターを2θ=59.3°の位置にセットし、θ=0〜60°(θはブラッグ角で2θの1/2)走査して回折強度を記録する。この時、スキャンスピードは、5°/min、サンプリングは0.02°とする。(0012)回折ピークの強度分布(I(θ))を次式で表されるガウス関数でカーブフィッティングし、算出した値を半値幅とする。半値幅が小さいほど、回折ピークはシャープで、高度に配向していることを意味する。
I(θ)=a+bexp[−{(θ−c)/d}
a、b、c:カーブフィッティングで最適化される変数
半値幅=2d(ln2)1/2
また、該半値幅から次式によって与えられるタルク粉末の配向度は、0.7以上であるのが好ましく、0.8以上であるのが更に好ましく、0.9以上であるのが特に好ましく、また、上限は1.0であるのが好ましい。配向の完全度は、配向度が0に近いほど低く、1に近いほど高い。
配向度=(180−半値幅)/180
このような結晶構造を有するタルク原石は、中国遼寧省海城地区産の桃色のタルク原石、中国広西自治区産のタルク原石、インドのウッタル・プラデシュ州産、インドのラジャスタン州産等の各地域産のタルク原石のうち、上述の好ましい結晶構造を有するものを用いればよい。
上述の特定の結晶構造を有するタルク原石を乾式粉砕及び/又は分級することにより得られる特定形状のタルク粉末が樹脂に剛性、耐面衝撃性、曲げ弾性率等の優れた機械的物性を付与すると共に、線膨張係数が小さく、物性−比重バランスを良好なものとすることができる理由は不明であるが、以下のように推定される。すなわち、広角X線回折法による配向評価における「12次の回折ピークの半値幅」が小さいということは、12層の結晶の配向度合いが揃っていることを示す。そこで、本発明に係るタルク原石の結晶面が高配向であると、タルク原石の粉砕過程でタルクフィラーが剥離しながら微細化し、アスペクト比の高い粉末となるやすいため、これを含む樹脂組成物成形体の曲げ弾性率が向上すると考えられる。
タルク原石の形状は、本発明の優れた効果が発現されれば特に制限は無い。なお、本発明に係るタルク粉末の製造方法においては、粉砕前の状態をタルク原石とする。
2.タルク粉末の製造方法
本発明の樹脂組成物に含まれるタルク粉末の製造方法は、本発明に係るタルク粉末が得られる乾式法の製造方法であれば、どのような方法でもよい。ここで、乾式法は、湿式法に比べ、乾燥等が不要でスケールアップが容易という利点を有する。タルク粉末の製造方法としては、例えば、タルク原石を所望の粒径になるまでひたすら乾式法で機械的に粉砕する方法、タルク原石を乾式法で機械的に粉砕後に分級する方法等が挙げられる。ここで、乾式粉砕及び/又は分級は、各々1回のみ行っても、同一又は異なる装置を用いて2回以上行ってもよい。これらの方法の内、得られるタルク粉末のアスペクト比定数を好ましいものとし易いことから、乾式粉砕後に分級する方法が特に好ましい。以降、この特に好ましい方法について詳述するが、本発明に係るタルク粉末の製造方法は、これに限定されるものではない。
(乾式粉砕)
タルク原石の乾式粉砕は、湿式粉砕に比べ、乾燥等が不要で、スケールアップが容易である等の利点を有する。粉砕機としては、一般的にタルクの製造等に用いられている乾式粉砕機を用いることができる。粉砕は、1つの粉砕機で1回のみ粉砕を行なっても、粉砕効率を上げるためにタルク原石を粗粉砕(一次粉砕)した後、更に同一又は異なる粉砕機で微粉砕(二次粉砕)してもよい。また、粗粉砕及び微粉砕は、各々1回のみ行っても、同一又は異なる装置を用いて2回以上行ってもよいが、製造コストの点では、粗粉砕及び微粉砕を各々1回ずつ行うのが好ましい。
粉砕後のタルクの粒径は、過粉砕によるタルク粒子の扁平度合いの低下が起こり難く、本発明のタルク粉末を含む樹脂組成物の曲げ弾性率が高くなりやすい点では、大きい方が好ましいが、また、一方、本発明のタルク粉末を含む樹脂組成物におけるタルク粉末の含有効果、特に曲げ弾性率が高くなりやすい点及び分級を行う場合の歩留まりが大きくなり易い点では、小さい方が好ましい。具体的には、粉砕後のタルクの直径は、10μm以上であるのが好ましく、11μm以上であるのが更に好ましく、12μm以上であるのが特に好ましく、また、一方、25μm以下であるのが好ましく、19μm以下であるのが更に好ましい。なお、ここでの粒径は、後述のレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)である。
この好ましい粒径への粉砕を2回に分けて行う場合は、通常、粗粉砕でタルクを微粉砕機に投入できるサイズに砕いた後、微粉砕で更に微粉化する。粗粉砕後のタルクの直径は、微粉砕機で粉砕し易く、微粉砕機に掛かる負荷が小さい点では、小さい方が好ましい。粗粉砕後のタルクの直径は、具体的には、通常、直径10cm以下、好ましくは8cm以下、更に好ましくは5cm以下であることが好ましい。粗粉砕に適する乾式法の粉砕機としては、大きな石を砕くのに適することから、ハンマークラッシャー、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー等のクラッシャータイプの乾式粉砕機が挙げられる。
微粉砕に適する乾式粉砕法としては、例えば、摩砕式粉砕法、衝撃式粉砕法、衝突式粉砕法等が挙げられる。摩砕式粉砕法は、タルクを磨り潰すように粉砕する手法である。具体的な機械としては、VXローラーミル、5Rタイプレイモンドミル、4Rタイプレイモンドミル、竪型ミル、マスコロイダー等の石臼型粉砕機等が挙げられる。衝撃式粉砕法は、粉体に粉砕機により衝撃を与える事により粉砕する手法である。具体的な機械としては、アドマイザー、パルペライザー、ハンマーミル、ミクロンミル、ベベルインパクター、ピンミル、スーパーミクロンミル、ピンミル等が挙げられる。衝突式粉砕法は、粉体を衝突により粉砕する手法である。具体的な機械としては、乾式流動床式ジェットミル等のジェット型粉砕機;ネアミル、遊星ボールミル、連続式チューブミル等のボールミル等の粉砕機が挙げられる。なお、微粉砕機に分級機が内蔵されている粉砕機を用いる場合は、粉砕しながら分級を行ってもよい。
(分級)
粉砕されたタルクは、分級することによってその粒度を調整する。分級は、乾燥等が不要で、スケールアップが容易である等の利点を有することから湿式に比べ乾式が好ましい。乾式分級機としては、例えば、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレター、風簸分級機(安川製作所製「YACA−132」)、ターボクラッシファーアー(日清エンジ社製)、高精度気流分級機(日本ニューマチック社製「DSF」、「DXF」、「UFC」)、スラリースクリーナー等が挙げられる。ここで、分級機の条件を調節することにより、目的とする粒度のタルク微末を取り出すことができる。分級機は、粉砕機に内蔵されていても、粉砕機とは別の装置であっても構わないが、過粉砕が起こり難いことから分級機が粉砕機と別になっているのが好ましい。また、分級前のタルクが大きい場合などには、複数回、分級を繰り返してもよい。
3.タルク粉末
本発明の樹脂組成物に含まれるタルク粉末は、通常、以下の特定形態を有する。
(レーザー回折法により測定したメディアン径D50(L))
本発明に係るタルク粉末のJIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)は、2.0μm以上18.0μm以下である。該メディアン径は、小さい方がタルク粉末を含む樹脂組成物成形体の耐面衝撃性の点で好ましいが、また、一方、大きい方が、タルク粉末が扁平構造となり、タルク粉末を含む樹脂組成物成形体の曲げ弾性率の点で好ましい。従って、該メディアン径は、3.0μm以上であるのが好ましく、5.0μm以上であるのが更に好ましく、6.0μm以上であるのが特に好ましく、また、一方、15.0μm以下であるのが好ましく、10.0μm以下であるのが更に好ましい。
上記メディアン径D50は、レーザー法粒度分布測定機を用いて、JIS R1629に準拠して測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値から求められる。レーザー法粒度分布測定機としては、例えば、株式会社堀場製作所製「LA920」、株式会社島津製作所製「SALD−2000J」等により測定することができる。
(遠心沈降法によるメディアン径D50(S))
本発明に係るタルク粉末について、JIS R1619に従って測定した遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は、1.0μm以上6.0μm以下であるのが好ましい。該メディアン径は、小さい方がタルク粉末を含む樹脂組成物成形体の耐面衝撃性が優れたものとなりやすく、また、タルク粉末が扁平構造となり、タルク粉末を含む樹脂組成物成形体の曲げ弾性率が優れたものとなりやすい点で好ましい。具体的には、該メディアン径は、1.5μm以上であるのが好ましく、1.7μm以上であるのが更に好ましく、また、一方、5.0μm以下であるのが好ましく、4.0μm以下であるのが更に好ましい。
上記メディアン径は、遠心沈降法粒度分布測定機は、例えば、株式会社島津製作所製「CP」等により測定することができる。測定は、JIS R1619に準拠して、測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求められる。
(アスペクト比定数)
本発明に係るタルク粉末について、上記2種類のメディアン径の値から下記式によって求められるアスペクト比定数は、1.0以上15.0以下であるのが好ましい。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)
アスペクト比定数は、大きい方が本発明の樹脂組成物成形体の曲げ弾性率の点で好ましいが、また、一方、小さい方が本発明の樹脂組成物成形体の耐面衝撃性の点で好ましい。従って、アスペクト比定数は、具体的には、1.3以上であるのが更に好ましく、2.0以上であるのが特に好ましく、また、一方、7.0以下であるのが更に好ましく、2.7以下であるのが特に好ましい。
(表面処理)
本発明に係るタルク粉末には、樹脂等に対する接着性や分散性等を向上させる目的で、表面処理を行なってもよい。表面処理としては、例えば、有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等による処理等が挙げられる。これらの内、脂肪酸金属塩が好ましい。
表面処理剤としては、具体的には、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、エルカ酸等の飽和及び/又は不飽和脂肪酸;これらのマグネシウム、カルシウム、リチウム、亜鉛、ナトリウム等の金属塩;これらのエステル化合物;マレイン化ポリプロピレン、マレイン化ポリエチレン、マレイン化SEBS等のマレイン酸変成物;シラン系カップリング剤;チタネ−ト系カップリング剤又はジルコアルミネ−ト系カップリング剤等が挙げられる。これらの内、飽和脂肪酸の金属塩が好ましく、ステアリン酸のマグネシウム又はカルシウム塩が特に好ましい。
また、特に、接着性の向上を目的とする場合には、シラン系カップリング剤が好ましく、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、特にγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤が好ましい。
表面処理方法としては、例えば、上記の表面処理剤の0.01〜1.00重量%水溶液、又は水分分散液中に、タルク粉末を浸漬した後、140〜160℃で1〜2時間の熱処理する方法等が挙げられる。
(圧縮処理)
本発明に係るタルク粉末は、圧縮処理されていてもよい。タルク粉末を圧縮した圧縮タルクは、コンパクトに保管できる上、かさ密度増加により、樹脂と溶融混練する際に混練機に持ち込まれる空気の量が少なくなり、フィードネック等が生じ難くなり、溶融混練押出機に対する食い込み性が上がることにより、単位時間あたりのコンパウンドの生産量が増加する等の利点がある。タルク粉末を圧縮タルクにする場合は、圧縮効率を高めやすいことから、圧縮前に脱気しておくのが好ましい。以下、タルク粉末を脱気後に圧縮して圧縮タルクとする方法について説明するが、本発明に係る圧縮タルクの製造方法は、これに限定されるものではない。
タルクの脱気は、従来公知の装置及び方法により行うことができる。脱気減容機としては、例えば、栗本鐵工株式会社製「クリパック」、ホソカワミクロン株式会社製「デンスパック」等が挙げられる。
圧縮は、従来公知の装置及び方法により行うことができる。圧縮時は、砕き難い固まりができないように圧力等を調整するのが好ましい。圧縮に用いる装置としては、例えば、栗本鐵工株式会社製ローラーコンパクター等が挙げられる。
圧縮タルクのかさ密度は、小さい方が圧縮ムラによる塊発生に基づく、成形品の白点が生じ難い点で好ましく、また、一方、大きい方がコンパクトに保管できる上、樹脂と溶融混練する際に混練機に持ち込まれる空気の量が少なく、フィードネック等が生じ難く、溶融混練押出機に対する食い込み性が上がることにより、単位時間あたりのコンパウンドの生産量が増加するため好ましい。具体的には、JIS K−6720に基づき測定される、圧縮後のタルクのかさ密度は、通常0.30以上、好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.45以上であるのがよい。なお、圧縮前のタルクのかさ密度は、通常1.00以下、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.60以下である。なお、圧縮前のタルク粉末の同かさ密度は、通常0.10以上、好ましくは0.11以上、更に好ましくは0.12以上であり、また、一方、通常0.50以下、好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.25以下である。
圧縮によるタルクの圧縮率は、低い方が圧縮ムラによる塊発生に基づく、成形品の白点が生じ難い点で好ましく、また、一方、高い方がコンパクトに保管できる上、樹脂と溶融混練する際に混練機に持ち込まれる空気の量が少なく、フィードネック等が生じ難く、溶融混練押出機に対する食い込み性が上がることにより、単位時間あたりのコンパウンドの生産量が増加するため好ましい。圧縮によるタルクの圧縮率は、気圧縮前のかさ密度を脱気後のかさ密度で割った値として、通常3.1以上、好ましくは3.2以上であり、また、一方、通常7.0以下、好ましくは6.5以下、更に好ましくは5.5以下である。
4.樹脂組成物
(樹脂組成物)
上述のタルク粉末を含む樹脂組成物を成形して得られる成形体は、軽量でありながら、各種機械的物性に優れるものとすることが可能である。本発明の樹脂組成物に係る樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも構わないが、本発明の樹脂組成物の成形体が軽量でありながら、剛性、耐面衝撃性、曲げ弾性率等の機械的物性に優れ、線膨張係数が小さいものとすることが可能であり、且つ、リサイクル性にも優れるものとなりやすいことから熱可塑性樹脂であるのが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
本発明において、熱可塑性樹脂とは、加熱により軟化し、外力により変形又は流動する樹脂を言う。
特に、本発明の樹脂組成物を射出成形等で成形する場合、本発明の樹脂組成物の流動性は重要である。即ち、本発明に係る熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、小さい方が耐衝撃性等に優れるが、大きい方が流動性に優れ、薄肉成形体を成形する際にも大きな型締め力を要せず、低温成形で良いため、生産性に優れる。具体的には、JIS K−7210−1995に従って、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが2g/10分以上であるのが好ましく、3g/10分以上であるのが更に好ましく、8g/10分以上であるのが特に好ましく、20g/10分以上であるのが最も好ましく、また、一方、300g/10分以下であるのが好ましく、200g/10分以下であるのが更に好ましく、150g/以下であるのが特に好ましい。メルトマスフローレートの調製は、本発明に係る熱可塑性樹脂の重合時に調整する又は重合反応槽の出口以降で溶融混練前にジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド等の有機過酸化物を添加する等によって行うことができる。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合コポリマー等のポリプロピレン系樹脂;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;4−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、11−ナイロン、6,10−ナイロン、MXD・6−ナイロン等のナイロン樹脂;アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、液晶ポリマー等のポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等のアクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。これらは1種類単独でも、2種類以上で任意の種類と比率で用いてもよい。これらのうち、軽量でリサイクル性及び成形性が良好であるため、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂の種類は、本発明の優れた効果が発現されれば、特に限定はされないが、本発明の成形体の主な用途及び成形性等を考慮すると、プロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。プロピレン・エチレンブロック共重合体中のエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の量は、オルトジクロルベンゼンによる抽出において、100℃以下で溶出される量によって定量することができる。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分は、耐衝撃性を向上させつつ、成形体の線膨張係数を低減する効果に優れることから多い方が好ましいが、また、一方、成形体の曲げ弾性率等の剛性については、少ない方が好ましい。具体的には、プロピレン・エチレンブロック共重合体中の結晶性プロピレン単独重合部分とエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分を合計100重量%に対して、エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分は、3重量部以上あるのが好ましく、5重量部以上あるのが更に好ましく、7重量部以上あるのが特に好ましく、また、一方、50重量部以下あるのが好ましく、40重量部以下あるのが更に好ましく、30重量部以下あるのが特に好ましい。また、結晶性プロピレン単独重合部分が50重量部以上あるのが好ましく、60重量部以上あるのが更に好ましく、70重量部以上あるのが特に好ましく、また、一方、97重量部以下あるのが好ましく、95重量部以下あるのが更に好ましく、93重量部以下あるのが特に好ましい。
結晶性プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、本発明の成形体の曲げ弾性率に優れることから、0.980以上であるのが好ましく、0.985以上であるのが更に好ましい。ここで、アイソタクチックペンタッド分率は、炭素13核磁気共鳴スペクトル法を用いて測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。
熱可塑性樹脂がプロピレン・エチレン−ブロック共重合体である場合は、その結晶性プロピレン単独重合部分のメルトフローレートは、流動性の点では大きい方が好ましく、また、一方、耐衝撃性の点では小さい方が好ましい。そこで、具体的には、5g/10分以上であるのが好ましく、10g/10分以上であるのが更に好ましく、30g/10分以上であるのが特に好ましく、また、一方、1000g/10分以下であるのが好ましく、800g/10分以下であるのが更に好ましく、500g/10分以下であるのが特に好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、一般的に、結晶性プロピレン単独重合部分とエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分とからなるが、ポリプロピレン系樹脂中における結晶性プロピレン単独重合部分及びエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の含有量、分子量等により、様々なグレードが存在する。ここで、特に、エチレン・プロピレン共重合体の重量平均分子量は、本発明の樹脂組成物の成形性に影響するため、高分子量であるのが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、1種類のグレードであっても、2種類以上の任意の組み合わせ及び比率のグレードであっても構わないが 上述のような高分子量なグレードのエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分を併用するのが好ましい。このエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の重量平均分子量は、100℃以下で溶出されるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分の粘度[η]copolyとして見積もることができる。該[η]copolyは、高い方が射出成形におけるフローマーク等の成形外観が向上し、成形内圧が低下しやすくなるので好ましく、具体的には、該[η]copolyが6.0以上であるのが特に好ましい。
ここで、プロピレン・エチレンブロック共重合体中のエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyは、以下のようにして求められる。まず、結晶性プロピレン単独重合体部分の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリングし、該部分の固有粘度[η]homoを測定する。次に、結晶性プロピレン単独重合体部分を重合した後、エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分を重合して得られた最終重合物(F)の固有粘度[η]Fを測定し、以下の関係式から求める。この測定は、ウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度135℃で行う。
[η]F=(100−Wc)/100×[η]homo+Wc/100×[η]copoly
ポリプロピレン系樹脂は、各種公知の方法で得たものを用いることができる。具体的には、公知のチーグラーナッタ触媒又はメタロセン触媒等を用いて得ることができる。チーグラーナッタ触媒としては、高立体規則性触媒等が挙げられる。また、チーグラーナッタ触媒を用いる製造法としては、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等を例示することができる。すなわち、上記触媒の存在下、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用することにより、プロピレンとエチレンとを用いて重合することにより得ることができる。
(熱可塑性エラストマー)
本発明に係る熱可塑性樹脂には、ポリプロピレン系樹脂と共に熱可塑性エラストマーが含有されているのが好ましく、ポリプロピレン系樹脂と共にエチレン系樹脂エラストマー及び/又はスチレン系樹脂エラストマーが含有されているのが特に好ましい。エチレン系樹脂エラストマー及び/又はスチレン系樹脂エラストマーは、具体的には、例えば、エチレン・プロピレン共重合エラストマー(エチレンプロピレンゴム)、エチレン・ブテン共重合エラストマー、エチレン・ヘキセン共重合エラストマー及びエチレン・オクテン共重合エラストマー等のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体及びエチレン・プロピレン・イソプレン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー;スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物及びスチレン・イソプレン・スチレントリブロック体の水素添加物等のスチレン系エラストマー等が挙げられる。なお、上記のスチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物は、ポリマー主鎖をモノマー単位でみると、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンとなるので、通常、SEBSと略称されるものである。また、上記の様なコモノマーを使用せずに、エチレンだけの単独重合体、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等も使用することができる。これらのエラストマーは、1種類のみでも、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
エチレン系樹脂エラストマーは、各モノマーを触媒の存在下重合することにより製造される。触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、国際公開WO−91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒等を使用することができる。重合法としては、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して重合することができる。市販品としては、例えば、三井化学社製タフマーPシリーズ及びタフマーAシリーズ、デュポンダウ社製エンゲージEGシリーズなどを挙げることができる。
スチレン系樹脂エラストマーにおけるトリブロック共重合体の水素添加物(SEBS、SEPS)の製造法の概要を述べる。これらのトリブロック共重合体は、一般的なアニオンリビング重合法で製造することができ、逐次的にスチレン、ブタジエン、スチレンを重合しトリブロック体を製造した後に、水添する方法(SEBSの製造方法)と、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体をはじめに製造した後、カップリング剤を用いてトリブロック体にした後に、水添する方法がある。また、ブタジエンの代わりにイソプレンを用いることによって、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)も同様に製造することができる。市販品としては、例えば、旭化成社製タフテックシリーズ、クレイトンポリマーズ社製クレイトンシリーズなどを挙げることができる。
本発明に係るエラストマーのメルトフローレートは、特に、本発明の成形体を自動車外装材等に用いる場合等は、0.5g/10分以上であるのが好ましく、0.7g/10分以上であるのが更に好ましく、また、一方、500g/10分以下であるのが好ましく、400g/10分以下であるのが更に好ましく、50g/10分以下であるのが特に好ましい。
本発明に係るエラストマーの密度は、低い方が耐衝撃性改良効果に優れ、線膨張係数も低下する傾向にあることから、0.90g/cm以下であるのが好ましく、0.88g/cm以下であるのが更に好ましく、0.87g/cm以下であるのが特に好ましい。
(タルク粉末と樹脂の比率)
本発明の樹脂組成物は、通常、本発明に係るタルク粉末と樹脂を溶融混練して作製する。該樹脂組成物中のタルク粉末の含有量は、少ない方がタルク粉末の分散性の点で好ましく、また、一方、多い方が本発明の樹脂組成物の成形体の曲げ剛性等の機械的物性の点で好ましい。具体的には、タルク粉末と樹脂の合計100重量部に対して、タルク粉末は、通常0.1重量部以上、好ましくは5重量部以上、更に好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上であり、また、一方、通常80重量部以下、好ましくは85重量部以下、更に好ましくは80重量部以下であるのがよい。
(ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーの比率)
本発明に係るポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーとの比率は、ポリプロピレン系樹脂が多い方が 本発明の成形体の曲げ弾性率が高くなり易い点で好ましく、また、一方、熱可塑性エラストマーが多い方が耐衝撃性に優れるものとなり易い点で好ましい。
具体的には、両者の合計100重量%に対して、熱可塑性エラストマーは、通常1重量部以上、好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上、特に好ましくは18重量部以上であり、また、一方、通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下、更に好ましくは35重量部以下であるのがよい。
(その他の樹脂)
本発明の樹脂組成物に含まれていてもよい熱可塑性樹脂以外の樹脂としては、例えば、4−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、11−ナイロン、6,10−ナイロン、MXD・6−ナイロン等のナイロン樹脂;アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー等のポリエステル樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタアクリレート等のアクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類単独でも、2種類以上を任意の組合せ及び比率で用いてもよい。
(その他成分)
本発明の樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物の優れた効果や物性を大幅に損なわない範囲で、樹脂又はタルク粉末以外のその他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、酸化防止剤、耐候劣化防止剤、核剤、分散剤、着色剤及び繊維等が挙げられる。具体的には、酸化防止剤としては、例えば、フェノール系及びリン系の酸化防止剤等が挙げられる。耐候劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系等の耐候劣化防止剤が挙げられる。核剤としては、例えば、有機アルミ化合物、有機リン化合物等の核剤が挙げられる。分散剤としては、例えば、ステアリン酸の金属塩等が挙げられる。着色剤としては、例えば、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。繊維としては、例えば、繊維状チタン酸カリウム、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、繊維状硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム等のウイスカー、炭素繊維及びガラス繊維等が挙げられる。これらの他の成分は、1種類単独でも、2種類以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中に、タルク粉末及び樹脂以外の成分が含まれる場合の該樹脂組成物中におけるタルク粉末と樹脂の合計量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。また、同上限は、通常100重量%である。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明の樹脂組成物の優れた効果が発現されれば、特に制限は無いが、通常、上記各構成成分を押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造される。これらのうち、押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
5.樹脂組成物の成形体
本発明の成形体は、上述の本発明の樹脂組成物を成形して得られる。本発明の成形体は、どのような成形方法で成形しても構わないが、本発明の優れた効果がより発現されやすいことから射出成形法が好ましい。
本発明の成形体は、軽量でありながら、剛性、耐面衝撃性、アイゾット衝撃強度、曲げ弾性率等の機械的物性に優れ、線膨張係数が小さいものとすることが可能である。
本発明の成形体の曲げ弾性率は、2800MPa以上であるのが好ましく、2900MPa以上であるのが更に好ましく、また、一方、10000MPa以下であるのが好ましく、8000MPa以下であるのが更に好ましく、6000MPa以下であるのが特に好ましい。ここで、JIS−K7171に従って、幅10mm×長さ80mm×厚さ4mmの試験片について、23℃、支点間距離64.0mm、試験速度2.0mm/分で測定する。
本発明の成形体の線膨張係数は、温度変化による成形体の寸法の変化が小さいことから小さい方が好ましい。本発明の成形体の線膨張係数は、具体的には、45ppm以下であるのが好ましく、40ppm以下であるのが更に好ましく、38ppm以下であるのが更に好ましく、また、一方、10ppm以上であるのが好ましい。本発明の成形体の線膨張係数は、以下のようにして測定される。型締め圧170トンの射出成形機(株式会社東芝製「IS170FII」)にて、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件で射出成形した120mm×120mm×3mmの試験片を恒温室にて5日以上調整した後、成形加工時のひずみの除去、脱水及び脱気を行うために、100℃にて1時間アニール処理する。次いで、その試験片の中央から10mm×10mm×3mmの試験片を切り出し、各々樹脂の流れ方向とその直角方向の線膨張係数を、JISK−7197に従って、線膨張係数測定装置(株式会社島津製作所製「TMA−60」)を用いて、圧縮モードにて測定する。測定は、16℃〜85℃の温度範囲について2℃/分の昇温速度で行った内の25〜80℃までの平均線膨張係数を測定し、2方向の測定値の平均値とする。
本発明の成形体のアイゾット衝撃強度は、JIS K7110に従って、ノッチ半径0.25mm、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmのノッチ付きテストピースの23℃における衝撃強度を測定する。
6.用途
本発明の樹脂組成物は、物性と比重とのバランスに優れていることから、自動車部品、家電製品部品、事務機器部品等に好適に用いられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた材料および成形品の評価方法は、以下に示すとおりである。
[I]測定法
(1)広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅
広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅は、株式会社リガク製卓上型回転対陰極型X線発生装置「ultrax18」を使用して、Niフィルターで単色化したCuKα線で、シンチレーションカウンター及び波高分析器を用いて、X線回折強度を測定することにより求めた。ここで、光学系は反射法とし、発散スリット1/2°、受光スリット0.15mm、散乱スリット1/2°とした。具体的には、X線源から発散したX線をタルクの劈開面に照射しながら、対称反射法で2θ=5〜80°(2θはブラッグ角)の範囲の回折強度を記録した。配向度の測定には、2θ=59.3°付近に観察される12次の回折ピークを使用した。シンチレーションカウンターを2θ=59.3°の位置にセットし、θ=0〜60°(θはブラッグ角で2θの1/2)走査して回折強度を記録した。この時、スキャンスピードは、5°/min、サンプリングは0.02°とした。(0012)回折ピークの強度分布(I(θ))を次式で表されるガウス関数でカーブフィッティングし、算出した値を半値幅とした。
I(θ)=a+bexp[−{(θ−c)/d}
a、b、c:カーブフィッティングで最適化される変数
半値幅=2d(ln2)1/2
(2)配向度
上記半値幅から次式により、配向度を算出した。
配向度=(180−半値幅)/180
(3)レーザー回折法によるメディアン径D50(L)
レーザー回折法によるメディアン径D50(L)は、レーザー回折式粒度分布測定機(株式会社堀場製作所製「LA920」)を用いて、JIS R1629に従って測定することにより得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値から求めた。
(4)遠心沈降法によるメディアン径D50(S)
遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は、遠心沈降法粒度分布測定機(株式会社島津製作所製「SA−CP2−20」)を用いて、JIS R1619に従って、遠心回転数600rpm、セルの液面高さ3cmの条件で測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求められた。
(5)アスペクト比定数
アスペクト比定数は、上記2種類のメディアン径の値から下記式によって求めた。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)
(6)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、JIS−K7171に従って、幅10mm×長さ80mm×厚さ4mmの試験片について、23℃、支点間距離64.0mm、試験速度2.0mm/分で測定した。
(7)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは、ASTM−D1238に従って、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定した。
(8)線膨張係数
線膨張係数は、以下のようにして測定した。先ず、型締め圧170トンの射出成形機(株式会社東芝製「IS170FII」)にて、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件で射出成形した120mm×120mm×3mmの試験片を恒温室にて5日以上調整した後、成形加工時のひずみの除去、脱水及び脱気を行うために100℃にて1時間アニール処理した。次いで、その試験片の中央から10mm×10mm×3mmの試験片を切り出し、各々樹脂の流れ方向とその直角方向の線膨張係数を、JISK−7197に従って、線膨張係数測定装置(株式会社島津製作所製「TMA−60」)を用いて、圧縮モードにて測定した。測定は、16℃〜85℃の温度範囲について2℃/分の昇温速度で行った内の25〜80℃までの平均線膨張係数を測定し、2方向の測定値の平均値とした。
(9)100℃以下で溶出されるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分の粘度[η]copoly
プロピレン・エチレンブロック共重合体中のエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyは、以下のようにして求めた。まず、結晶性プロピレン単独重合体部分の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリングし、該部分の固有粘度[η]homoを測定した。次に、結晶性プロピレン単独重合体部分を重合した後、エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分を重合して得られた最終重合物(F)の固有粘度[η]Fを測定し、以下の関係式から求めた。この測定は、ウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度135℃で行った。
[η]F=(100−Wc)/100×[η]homo+Wc/100×[η]copoly
(10)アイゾット衝撃強度
成形体のアイゾット衝撃強度は、JIS K7110に従って、ノッチ半径0.25mm、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmのノッチ付きテストピースの23℃における衝撃強度を測定した。
[製造例1]
インドのラジャスタン州産のタルク原石(Golcha Associated Soapstone Dist.Co.Pvt.Ltd.製。広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅13.9。配向度0.92)(原石1)をジョークラッシャーを用いて、粒径10mm以下に粗粉砕し、更に、分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーにより微粉砕及び分級を行った。得られたタルク粉末のレーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は、13.2μmであった。
該タルク粉末を更に風簸分級機(安川製作所製「YACA−132」)を用いて、ディスク回転数6000回転/分で分級した。得られたタルク粉末のレーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は7.5μm、遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は2.1μmであり、アスペクト比定数は2.57であった。
[製造例2]
粗粉砕をハンマーミルを用いて行った以外は、製造例1と同様にして、タルク粉末を得た。風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)は、14.0μmであった。また、風簸分級機後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は8.1μmであり、メディアン径D50(S)は2.3μmであり、アスペクト比定数は2.52であった。
[製造例3]
粗粉砕をロールクラッシャーを用いて行った以外は、製造例1と同様にして、タルク粉末を得た。風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)は、15.0μmであった。また、風簸分級機後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は7.8μmであり、メディアン径D50(S)は2.5μmであり、アスペクト比定数は2.12であった。
[製造例4〜6]
製造例1における風簸分級機で分級前のタルク粉末を、各々、サイクロン分級機、ミクロンセパレーター又はエルボジェットにて分級した。得られたタルク粉末のメディアン径D50(L)、メディアン径D50(S)及びアスペクト比定数は、各々、サイクロン分級機を用いた場合のメディアン径D50(L)が8.8μm、メディアン径D50(S)が2.7μm、アスペクト比が2.26であり、ミクロンセパレーターを用いた場合のメディアン径D50(L)が8.7μm、メディアン径D50(S)が3.0μm、アスペクト比定数が1.90であり、エルボジェットを用いた場合のメディアン径D50(L)が6.4μm、メディアン径D50(S)が2.1μm、アスペクト比定数が2.05であった。
[製造例7〜9]
製造例1において、分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーの代わりに、各々、VXミル、アトマイザー又はレイモンドミルを用いて粉砕及び分級を行った以外は、製造例1と同様にして、タルク粉末を得た。VXミルを用いた場合は、風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)が20.0μm、風簸分級機後のタルク粉末のメディアン径D50(L)が8.0μm、メディアン径D50(S)が3.4μm、アスペクト比定数が1.35であり、アトマイザーを用いた場合は、風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)が15.0μm、風簸分級機後のタルク粉末のメディアン径D50(L)が8.0μm、メディアン径D50(S)が3.4μm、アスペクト比定数が1.35であり、レイモンドミルを用いた場合は、風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)が13.2μm、風簸分級機後のタルク粉末のメディアン径D50(L)が7.4μm、メディアン径D50(S)が2.9μm、アスペクト比定数が1.55であった。
[製造例10]
製造例4において、分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーで粉砕及び分級する代わりにミクロンミルを用いて粉砕した以外は、製造例1と同様にして、タルク粉末を得た。このサイクロン分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)は13.2μm、サイクロン分級機で分級後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は8.3μm、メディアン径D50(S)は3.9μm、アスペクト比定数は1.13であった。
[製造例11]
インドのラジャスタン州産のタルク原石の代わりにインドのウッタル・プラデシュ州産のタルク原石(Golcha Associated Soapstone Dist.Co.Pvt.Ltd.製。広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅8.3。配向度0.95。)(原石2)を用いた以外は、製造例8と同様にしてタルク粉末を得た。この風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)は13.7μm、風簸分級機で分級後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は7.8μm、メディアン径D50(S)は2.2μm、アスペクト比定数は2.55であった。
[製造例12]
インドのラジャスタン州産のタルク原石の代わりに中国遼寧省産のピンク色のタルク原石(広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅26.3。配向度0.85。)(原石3)を用いた以外は、製造例1と同様にしてタルク粉末を得た。この風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)は24.0μm、風簸分級機で分級後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は15.2μm、メディアン径D50(S)は7.1μm、アスペクト比定数は1.14であった。
[製造例13]
分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーの代わりに分級機内蔵型磨砕式粉砕機VXミルにより粉砕及び分級を行い、風簸分級機のディスク回転数を毎分6000回転から11200回転に変更した以外は、製造例1と同様にしてタルク粉末を得た。風簸分級機で分級前の粉末のメディアン径D50(L)は、13.2μmであった。また、風簸分級機で分級後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は7.5μm、メディアン径D50(S)は2.1μm、アスペクト比定数は2.57であった。
[製造例14]
分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーの代わりに分級機内蔵型磨砕式粉砕機VXミルにより粉砕及び分級を行い、風簸分級機による分級をディスク回転数毎分11200回転で2回行った以外は、製造例1と同様にしてタルク粉末を得た。風簸分級機で分級前の粉末のメディアン径D50(L)は、17.2μmであった。また、風簸分級機で分級後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は10.0μm、メディアン径D50(S)は4.6μm、アスペクト比定数は1.17であった。
[製造例15]
製造例13で得られたタルク粉末を栗本鐵工株式会社製「クリパック」を用いて、かさ比重0.35まで脱気した後、取り出すことなく、引き続き栗本鐵工株式会社製ローラーコンパクター(ローラー間1.1mm、ローラー回転速度10rpm、押し込みスクリュー17rpm)で圧縮した。得られた脱気圧縮タルクは、かさ比重が0.57であった。
[製造比較例1]
インドのラジャスタン州産のタルク原石の代わりに中国遼寧省産の白塊タルク原石(広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅32。配向度0.82)(原石4)を用いた以外は、製造例7と同様にして、タルク粉末を得た。風簸分級機で分級前のタルク粉末のメディアン径D50(L)は11.8μm、風簸分級機で分級後のタルク粉末のメディアン径D50(L)は8.5μm、メディアン径D50(S)は6.8μm、アスペクト比定数は0.25であった。
[製造比較例2]
風簸分級機(安川製作所製「YACA−132」)による分級を行わなかった以外は、製造例7と同様にしてタルク粉末を得た。得られたタルク粉末のメディアン径D50(L)は20.0μm、メディアン径D50(S)は9.0μm、アスペクト比定数は1.22であった。
[製造比較例3]
インドのラジャスタン州産のタルク原石(Golcha Associated Soapstone Dist.Co.Pvt.Ltd.製。広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅13.9。配向度0.92)(原石1)をジョークラッシャーを用いて、粒径10mm以下に粗粉砕し、更に、分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーにより微粉砕及び分級を行った。得られたタルク粉末のレーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は28.2μmであった。該タルク粉末を更に風簸分級機(安川製作所製「YACA−132」)を用いて、ディスク回転数6000回転/分で分級した。得られたタルク粉末のレーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は25μm、遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は11μmであり、アスペクト比定数は1.27であった。
[製造比較例4]
インドのラジャスタン州産のタルク原石(Golcha Associated Soapstone Dist.Co.Pvt.Ltd.製。広角X線回折法における12次の回折ピークの半値幅13.9。配向度0.92)(原石1)をジョークラッシャーを用いて、粒径10mm以下に粗粉砕し、更に、分級機内蔵型衝撃式粉砕機パルペライザーにより微粉砕及び分級を行った。得られたタルク粉末のレーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は28μm、遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は11.5μmであり、アスペクト比定数は1.43であった。
[製造比較例5]
風簸分級機(安川製作所製「YACA−132」)による分級を行う代わりにジェットミルによる粉砕及び分級を行った以外は、製造例7と同様にしてタルク粉末を得た。得られたタルク粉末のメディアン径D50(L)は1.2μm、遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は0.8μmであり、アスペクト比定数は0.5であった。
[実施例1〜15及び比較例1〜5]
製造例1〜16及び製造比較例1〜5のタルク粉末20重量部とプロピレン・エチレンブロック共重合体C80重量部を配合した後、更にテトラキス[メチレン−3−(3´5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガノックス1010」)0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム0.4重量部を配合し、スーパーフローターを用いて5分間混合した。その後、二軸混練機(株式会社神戸製鋼製「KCM50」)にて210℃で混練造粒することにより、熱可塑性樹脂組成物を得た。これを、型締め圧100トンの射出成形機にて、成形温度220℃で試験片を作製し、各種の物性測定を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0005482060
[実施例16〜37、39、41及び比較例6〜9]
上述の各製造例及び製造比較例で得られたタルク粉末並びに以下の成分を各々表2に記載の量用いて、各種樹脂組成物を作製した。具体的には、各製造例1〜13又は製造比較例1〜4のタルク粉末と樹脂を配合した後、テトラキス[メチレン−3−(3´5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバジャパン社製「イルガノックス1010」)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバジャパン社製「イルガフォス168」)0.05重量部及びステアリン酸マグネシウム0.4重量部を配合して、川田製作所製スーパーミキサーで5分間混合した後、株式会社神戸製鋼社製二軸混練機「KCM50」にて210℃で回転数800rpmで溶融混練造粒することにより、熱可塑性樹脂組成物を得た。これを型締め圧100トンの射出成形機(東芝機械株式会社製「IS100FB」)にて成形温度220℃で各種試験片を作製し、各種物性を測定した。評価結果を表2に示す。
[実施例38及び40]
上述の製造例1で得られたタルク粉末及び以下の成分を各々表2に記載の量用いて、各種樹脂組成物を作製した。具体的には、表2に記載の量の各種樹脂及び表2に記載の製造例1のタルク粉末の内10重量部を配合した後、テトラキス[メチレン−3−(3´5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバジャパン社製「イルガノックス1010」)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバジャパン社製「イルガフォス168」)0.05重量部及びステアリン酸マグネシウム0.4重量部を配合して、川田製作所製スーパーミキサーで5分間混合したものを、株式会社神戸製鋼社製二軸混練機「TEX30α」の原料フィード口から供給した。更に 表2に記載の製造例1のタルク粉末の内30重量部(実施例38)又は25重量部(実施例40)を押出機中央部からサイドフィードして溶融混練造粒を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。これを型締め圧100トンの射出成形機(東芝機械株式会社製「IS100FB」)にて成形温度220℃で各種試験片を作製し、各種物性を測定した。評価結果を表2に示す。
[実施例42]
上述の製造例1で得られたタルク粉末及び以下の成分を各々表2に記載の量用いて、樹脂組成物を作製した。具体的には、実施例1のタルク粉末と樹脂を配合した後、テトラキス[メチレン−3−(3´5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバジャパン社製「イルガノックス1010」)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバジャパン社製「イルガフォス168」)0.05重量部及びステアリン酸マグネシウム1.2重量部をヘンシェルミキサーで均一混合し、2軸混練機(株式会社アイペック社製「HTM65」)を用いて、スクリュウ回転数250rpmにて混練造粒し、ペレット化してタルクマスターバッチ(MB−1)を得た。
[製造例43]
製造例42で得たマスターバッチ(MB−1)33重量部とプロピレン・エチレンブロック共重合体C67重量部をタンブラーで混合してから射出成型機(東芝機械株式会社製「IS100FB」)にて成形温度220℃で試験片を作製し、各種物性を測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0005482060
なお、表2中のタルク粉末と樹脂の配合量は、タルク粉末と樹脂を合計100重量%とした場合の相対量(内部)である。そして、タルク粉末又は樹脂以外の成分は、タルク粉末と樹脂を合計100重量部とした場合の相対量(外部)である。
(プロピレン・エチレンブロック共重合体)
・プロピレン・エチレンブロック共重合体A(PP−A。結晶性プロピレン単独重合部分
のメルトフローレートは58g/10分。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部
分の含有量は7重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分におけるエチレ
ン含量は39重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の粘度[η]co
polyは2.7)。
・プロピレン・エチレンブロック共重合体B(PP−B。結晶性プロピレン単独重合部分
のメルトフローレートは28g/10分。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部
分の含有量は27重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分におけるエチ
レン含量は37重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の粘度[η]c
opolyは3)。
・プロピレン・エチレンブロック共重合体C(PP−C。結晶性プロピレン単独重合部分
のメルトフローレートは30g/10分。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部
分の含有量は14重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分におけるエチ
レン含量は61重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の粘度[η]c
opolyは3.3)。
・プロピレン・エチレンブロック共重合体D(PP−D。結晶性プロピレン単独重合部分
のメルトフローレートは115g/10分。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体
部分の含有量は7重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分におけるエチ
レン含量は34重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の粘度[η]c
opolyは7)。
・プロピレン・エチレンブロック共重合体E(PP−E。結晶性プロピレン単独重合部分
のメルトフローレートは147g/10分。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体
部分の含有量は7重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分におけるエチ
レン含量は40重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の粘度[η]c
opolyは8)。
・プロピレン・エチレンブロック共重合体F(PP-F。結晶性プロピレン単独重合部分のメ
ルトフローレートは10g/10分。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の
含有量は7重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分におけるエチレン含
量は41重量%。エチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分の粘度[η]copo
lyは8.7)。
(熱可塑性エラストマー)
・オレフィン系エラストマー(三井化学株式会社「タフマーA4050S」。メルトフロ
ーレート6.5g/10分。密度0.862g/cm。コモノマー種は1−ブテン)。
・オレフィン系エラストマー(三井化学株式会社「タフマーA1050S」。メルトフロ
ーレート2.7g/10分。密度0.861g/cm。コモノマー種は1−ブテン)。
・αオレフィン系エラストマー(三井化学株式会社「タフマーA35070S」。メルト
フローレート30g/10分。密度0.87g/cm。コモノマー種は1−ブテン)。
・オレフィン系エラストマー(デュポンダウ社製「エンゲージEG8200」。メルトフ
ローレート10.0g/10分。密度0.875g/cm。コモノマー種は1−オク
テン)。
・オレフィン系エラストマー(デュポンダウ社製「エンゲージEG8842」。メルトフ
ローレート2.0g/10分。密度0.860g/cm。コモノマー種は1−オクテ
ン)。
・スチレン系エラストマー(シェルジャパン製「クレイトンG1657」。メルトフロー
レート10g/10分。SEBSタイプ。スチレン含有量14重量%。ジブロック/ト
リブロック型)
本発明の樹脂組成物は、これを成形して得られる成形体を、軽量でありながら、剛性、耐面衝撃性、曲げ弾性率等の機械的物性に優れ、線膨張係数が小さいものとすることが可能である。従って、本発明の樹脂組成物は、物性と比重とのバランスに優れ、自動車部品、家電製品部品、事務機器部品等に好適に用いられる。

Claims (9)

  1. ポリプロピレン系樹脂中にタルク粉末を含む樹脂組成物であって、前記タルク粉末がタルク原石を乾式粉砕及び分級して得られるタルク粉末であって、前記タルク原石の広角X線回折法による配向評価における12次の回折ピークの半値幅が1度以上30度以下であり、且つ前記タルク粉末のJIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が2.0μm以上18.0μm以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の樹脂組成物であって、前記タルク粉末のJIS R1619に従って測定した遠心沈降法によるメディアン径D50(S)が1.0μm以上6.0μm以下であり、且つ、前記タルク粉末の下記式により求められるアスペクト比定数が1.0以上15.0以下であることを特徴とする樹脂組成物。
    アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)
  3. ポリプロピレン系樹脂中にタルク粉末を含む樹脂組成物であって、前記タルク粉末が広角X線回折法による配向評価において12次の回折ピークの半値幅が1度以上30度以下であるタルク原石を、JIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が10.0μm以上25.0μm以下になるまで乾式粉砕又は乾式粉砕後に分級した後、JIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が2.0μm以上18.0μm以下のタルク粉末を分級することにより得られるタルク粉末であることを特徴とする樹脂組成物。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂組成物であって、前記タルク粉末が脱気圧縮され、かさ密度が0.3以上1.0以下の圧縮タルク状態で含まれていることを特徴とする樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂組成物であって、前記樹脂と前記タルク粉末の比率が前記樹脂20.0〜99.9重量部に対し、前記タルク粉末0.1〜80.0重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂組成物であって、前記ポリプロピレン系樹脂がプロピレン・エチレン−ブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
  8. 請求項7に記載の成形体であって、曲げ弾性率が2800MPa以上10000MPa以下であることを特徴とする成形体。
  9. 請求項7又は8に記載の成形体であって、流れ方向とその直角方向の線膨張係数が10ppm以上45ppm以下であることを特徴とする成形体。
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