JP5481752B2 - 蛍光x線分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラスビードに調製された試料における各成分の濃度(含有率)を求める蛍光X線分析装置に関する。
従来、蛍光X線分析において、試料が粉状または粒状である場合には、試料中の元素を均一に分布させるために、試料および融剤を加熱溶融してガラスビードに調製してから、そのガラスビードに1次X線を照射し、発生する蛍光X線の強度を測定する。試料中の化合物が結晶水を含んでいる場合や炭酸塩である場合には、調製時の加熱溶融によって、試料から水や二酸化炭素が揮散する。つまり、試料および融剤の合計重量からガラスビードの重量を差し引いた分だけ試料の重量が減少し、これを強熱減量(狭義)と呼んでいる。
一方、試料が例えば鉄鉱石で鉄をFeOとして含んでいる場合には、調製時の加熱溶融によって、FeOが空気中の酸素と化学反応を起こし、Feになってガラスビード中に残る。つまり、ガラスビードの重量から試料および融剤の合計重量を差し引いた分だけ試料の重量が増加し、これを強熱増量と呼んでいる。
このようなガラスビード法を用いた蛍光X線分析では、検量線法が採用され、検量線法のうち、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)の理論強度計算に基づいて理論マトリックス補正定数を計算するセミファンダメンタルパラメータ法(SFP法)も採用されている(特許文献1の段落0042〜0043参照)。特許文献1に記載の方法で理論マトリックス補正定数を計算する際には、強熱減量に対応する強熱減量成分を想定して、この成分を試料の一成分として扱っており、強熱増量に対応する強熱増量成分としては扱っていない。
これに対し、実際の試料では、強熱減量と強熱増量が混在しており、蛍光X線分析の定量演算では両者を区別できないため、合わせて強熱減量(広義)として、強熱増量を負の強熱減量とみなすことが適切であることから、本願出願人は、ガラスビードに調製された試料について、FP法またはSFP法を利用して、負の値にもなり得る強熱減量を扱うことができ、各成分の濃度を適切に求めることができる蛍光X線分析装置について出願している(特願2009−245377)。
上述した従来の技術は、いずれも、強熱減量に対応する強熱減量成分も含めて元の試料について各成分の濃度の合計が100%になるように定量演算するために、試料の希釈率が一定になるように試料の重量および融剤の重量を精密に測定してガラスビードに調製するか、試料の重量および融剤(またはガラスビード)の重量の測定値に基づき個々の試料の希釈率を計算して基準となる希釈率からのずれを補正するなどの必要がある。
特許第2626857号公報
しかし、チタン酸バリウムなどの電子材料のような無機成分を含む試料の場合には、特に正確な分析が必要であってガラスビードに調製することが適切であり、水分などの強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することが求められる。このような試料に、上述した従来の技術を適用するのは、試料と融剤の目標重量値に対しての正確な秤量または実際の秤量値を用いた秤量値の補正、および強熱減量の補正に手間と熟練を要することになり、適切でない。強熱減量成分を除去してからガラスビードに調整しても、強熱減量の補正は不要となるが、強熱減量成分を完全に除去するにもそれなりの手間と熟練を要するとともに、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量または実際の秤量値を用いた秤量値の補正は必要である。したがって、従来の技術では、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができない。
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去、秤量、秤量値を用いた補正を不要としつつ、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算でき、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の第1構成の蛍光X線分析装置は、まず、無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段とを備えている。さらに、前記ガラスビードについて前記試料に含まれていた各無機成分の濃度および残分としての前記融剤の濃度を仮定し、そのガラスビードについて仮定した各成分の濃度に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度と前記検出手段で測定した測定強度を理論強度スケールに換算した換算測定強度とが合致するように、前記ガラスビードについて仮定した各成分の濃度を逐次近似的に修正計算して、前記ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段を備えている。
第1構成の蛍光X線分析装置は、FP法により試料における各成分の濃度を算出する算出手段を備えているが、その算出手段が、ガラスビードについて試料に含まれていた各無機成分の濃度および残分としての融剤の濃度を仮定して、ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化して各無機成分の濃度を試料についての最終分析値とする。したがって、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
本発明の第2構成の蛍光X線分析装置は、まず、無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、前記ガラスビードについて仮定した前記試料に含まれていた各無機成分の濃度および残分としての前記融剤の濃度が入力される入力手段とを備えている。さらに、その入力手段に入力された前記ガラスビードについて仮定した各成分の濃度に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度に基づいて蛍光X線の吸収および励起に関する理論マトリックス補正定数を計算するとともに、組成が既知で相異なる複数の標準となるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度と前記ガラスビードにおける成分の濃度との相関関係を、成分ごとに、前記理論マトリックス補正定数を用いて補正した検量線として求めて記憶し、分析対象であるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度に前記検量線を適用して前記ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段を備えている。
第2構成の蛍光X線分析装置は、SFP法により試料における各成分の濃度を算出する算出手段を備えているが、その算出手段が、FP法を利用して理論マトリックス補正定数を計算する際に、ガラスビードについて仮定された試料に含まれていた各無機成分の濃度および残分としての融剤の濃度を用いて、ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度に基づく。そして、分析対象であるガラスビードについて測定強度に前記理論マトリックス補正定数を用いて補正した検量線を適用してガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化して各無機成分の濃度を試料についての最終分析値とする。したがって、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
本発明の第3構成の蛍光X線分析装置は、まず、無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、前記試料の基準となる希釈率が入力される入力手段とを備えている。さらに、前記試料および融剤の合計重量から前記ガラスビードの重量を差し引いた強熱減量に対応する強熱減量成分を前記試料の一成分とするとともに、前記試料について各無機成分の濃度および残分としての前記強熱減量成分の濃度を仮定し、その試料について仮定した各成分の濃度および前記入力手段に入力された前記試料の基準となる希釈率に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度と前記検出手段で測定した測定強度を理論強度スケールに換算した換算測定強度とが合致するように、前記試料について仮定した各成分の濃度を逐次近似的に修正計算して、前記試料における各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段を備えている。
第3構成の蛍光X線分析装置は、FP法により試料における各成分の濃度を算出する算出手段を備えているが、その算出手段が、試料について各無機成分の濃度および残分としての強熱減量成分の濃度を仮定し、基準となる希釈率を用いて、試料における各成分の濃度を算出し、算出した各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化して各無機成分の濃度を試料についての最終分析値とする。したがって、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
本発明の第4構成の蛍光X線分析装置は、まず、無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、前記試料および融剤の合計重量から前記ガラスビードの重量を差し引いた強熱減量に対応する強熱減量成分を前記試料の一成分とするとともに前記試料について仮定した各無機成分の濃度および残分としての前記強熱減量成分の濃度、ならびに前記試料の基準となる希釈率が入力される入力手段とを備えている。さらに、その入力手段に入力された前記試料について仮定した各成分の濃度および前記試料の基準となる希釈率に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度に基づいて蛍光X線の吸収および励起に関する理論マトリックス補正定数を計算するとともに、組成が既知で相異なる複数の標準となるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度と前記ガラスビードにおける成分の濃度との相関関係を、成分ごとに、前記理論マトリックス補正定数を用いて補正した検量線として求めて記憶し、分析対象であるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度に前記検量線を適用して前記ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段を備えている。
第4構成の蛍光X線分析装置は、SFP法により試料における各成分の濃度を算出する算出手段を備えているが、その算出手段が、FP法を利用して理論マトリックス補正定数を計算する際に、試料について仮定された各無機成分の濃度および残分としての強熱減量成分の濃度と、基準となる希釈率とを用いて、ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度に基づく。そして、分析対象であるガラスビードについて測定強度に前記理論マトリックス補正定数を用いて補正した検量線を適用してガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化して各無機成分の濃度を試料についての最終分析値とする。したがって、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置を示す概略図である。 本発明の第2〜第4実施形態の蛍光X線分析装置を示す概略図である。
以下、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置について、図にしたがって説明する。図1に示すように、この装置は、無機成分を含む試料(例えばチタン酸バリウムなどの電子材料)3aおよび融剤3bが加熱溶融されて調製されたガラスビード3が載置される試料台8と、ガラスビード3に1次X線2を照射するX線管などのX線源1と、ガラスビード3から発生する蛍光X線4の強度を測定する検出手段9とを備えている。
詳細には図示しないが、ガラスビード3は、公知の方法により、試料3aおよび融剤3bが加熱溶融されて調製されたものである。検出手段9は、ガラスビード3から発生する蛍光X線4を分光する分光素子5と、分光された蛍光X線6ごとにその強度を測定する検出器7で構成される。なお、分光素子5を用いずに、エネルギー分解能の高い検出器を検出手段としてもよい。つまり、この実施形態の蛍光X線分析装置は、波長分散型でも、エネルギー分散型でもよい。
この装置は、さらに、ガラスビード3に調製された試料3aにおける各成分の濃度をFP法により算出するコンピュータなどの算出手段10Aを備えている。具体的には、算出手段10Aは、以下のように動作する。
まず、ガラスビード3について試料3aに含まれていた分析すべき成分である各無機成分iの濃度(ガラスビード全体を1.0とした場合の無次元の濃度)Cおよび残分としての融剤3bの濃度Cを仮定する。つまり、C=1−ΣCとする。なお、添字Fは、融剤についての値であることを意味している。
次に、そのガラスビード3について仮定した各成分の濃度C,Cに基づいて、次式(1)によりガラスビード3中の各成分iから発生する蛍光X線4の理論強度Iを計算し、その理論強度Iと検出手段9で測定した測定強度を理論強度スケールに換算した換算測定強度とが合致するように、ガラスビード3について仮定した各成分の濃度C,Cを逐次近似的に修正計算して、ガラスビード3における各成分の濃度C,Cを算出する。なお、蛍光X線の理論強度の近似式である式(1)において、kは定数、μ,μは各成分に対する吸収係数である。
=k/(Σμ+μ) (1)
なお、一般のFP法と同様に、検出手段9で測定した測定強度を理論強度スケールに換算して換算測定強度とするために、組成が既知で相異なる複数の標準試料(本発明の場合、標準試料もガラスビードに調製された試料である)を測定するとともに、標準試料の既知の組成から希釈率を用いてガラスビードの組成を求め、この組成から理論強度を計算して、各蛍光X線について測定強度を理論強度スケールに換算するための装置感度係数をあらかじめ求めておく。
次に、次式(2)により、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が百分率で100%になるように規格化し、規格化した各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。
=100C/ΣC (2)
このように、第1実施形態の蛍光X線分析装置は、FP法により試料3aにおける各成分iの濃度を算出する算出手段10Aを備えているが、その算出手段10Aが、ガラスビード3について試料3aに含まれていた各無機成分iの濃度Cおよび残分としての融剤3bの濃度Cを仮定して、ガラスビード3における各成分の濃度C,Cを算出し、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が100%になるように規格化して各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。ここで、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、試料中の強熱減量および試料と融剤の実際の秤量値の誤差はガラスビード中の全無機成分の濃度に比例して影響するので、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。なお、定量演算に使用する濃度は、ガラスビード中の濃度(含有率)であり、試料中の濃度をガラスビード中の濃度に換算したものである。
次に、本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置について説明する。図2に示すように、この装置は、前記第1実施形態の装置と比較すると、入力手段11Bを備えることと、算出手段10Bの動作内容とが異なるのみである。具体的には、入力手段11Bには、ガラスビード3(SFP法を具現化した第2実施形態の装置では、分析対象であるガラスビードとして想定されて代表的な組成をもつガラスビード)について仮定した、試料3aに含まれていた各無機成分iの濃度および残分としての融剤3bの濃度が入力される。また、算出手段10Bは、以下のように動作して、ガラスビード3に調製された試料3aにおける各成分の濃度をSFP法により算出する。
まず、入力手段11Bに入力されたガラスビード3について仮定した各成分の濃度C,Cに基づいて、前式(1)によりガラスビード3中の各成分iから発生する蛍光X線4の理論強度Iを計算し、その理論強度Iに基づいて蛍光X線の吸収および励起に関する理論マトリックス補正定数αを計算するとともに、組成が既知で相異なる複数の標準となるガラスビード3について検出手段9で測定した測定強度Iとガラスビード3における成分の濃度Cとの相関関係を、成分iごとに、前記理論マトリックス補正定数αを用いて補正した検量線として求めて記憶する。この検量線は、次式(3)で表される。なお、式(3)において、A,Bは定数であり、添字jはマトリックス補正成分についての値であることを意味し、Cはガラスビードにおけるマトリックス補正成分の濃度であり、Cに融剤の濃度Cは含まれない。
=(A +B)(1+Σα) (3)
次に、分析対象であるガラスビード3について検出手段9で測定した測定強度Iに前記検量線を適用してガラスビード3における各成分の濃度C,Cを算出する。
次に、第1実施形態の装置における算出手段10Aと同様に、前式(2)により、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が百分率で100%になるように規格化し、規格化した各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。
このように、第2実施形態の蛍光X線分析装置は、SFP法により試料に3aおける各成分iの濃度を算出する算出手段10Bを備えているが、その算出手段10Bが、FP法を利用して理論マトリックス補正定数αを計算する際に、ガラスビード3について仮定された試料3aに含まれていた各無機成分iの濃度Cおよび残分としての融剤3bの濃度Cを用いて、ガラスビード3中の各成分iから発生する蛍光X線4の理論強度Iを計算し、その理論強度Iに基づく。そして、分析対象であるガラスビード3について測定強度Iに前記理論マトリックス補正定数αを用いて補正した検量線を適用してガラスビード3における各成分の濃度C,Cを算出し、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が100%になるように規格化して各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。ここで、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、試料中の強熱減量および試料と融剤の実際の秤量値の誤差はガラスビード中の全無機成分の濃度に比例して影響するので、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
次に、本発明の第3実施形態の蛍光X線分析装置について説明する。図2に示すように、この装置は、前記第1実施形態の装置と比較すると、入力手段11Cを備えることと、算出手段10Cの動作内容とが異なるのみである。具体的には、入力手段11Cには、試料3aの基準となる希釈率が入力される。また、算出手段10Cは、以下のように動作して、ガラスビード3に調製された試料3aにおける各成分の濃度をFP法により算出する。
まず、試料3aおよび融剤3bの合計重量からガラスビード3の重量を差し引いた強熱減量に対応する強熱減量成分を試料3aの一成分とするとともに、試料3aについて各無機成分iの濃度(試料全体を1.0とした場合の無次元の濃度)Wおよび残分としての強熱減量成分の濃度Wを仮定する。つまり、W=1−ΣWとする。なお、添字Lは、強熱減量成分についての値であることを意味している。
次に、その試料3aについて仮定した各成分の濃度W,Wおよび入力手段11Cに入力された試料の基準となる希釈率Rに基づいて、次式(4)によりガラスビード3中の各成分iから発生する蛍光X線4の理論強度Iを計算し、その理論強度Iと検出手段9で測定した測定強度を理論強度スケールに換算した換算測定強度とが合致するように、試料3aについて仮定した各成分の濃度W,Wを逐次近似的に修正計算して、試料3aにおける各成分の濃度W,Wを算出する。測定強度を理論強度スケールに換算するための装置感度係数は、第1実施形態の装置と同様にあらかじめ求めておく。なお、理論強度の近似式である式(4)において、kは定数、μ,μ,μは各成分に対する吸収係数である。
=k/(Σμ+μ+μ) (4)
次に、次式(5)により、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が百分率で100%になるように規格化し、規格化した各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。
=100W/ΣW (5)
このように、第3実施形態の蛍光X線分析装置は、FP法により試料3aにおける各成分iの濃度を算出する算出手段10Cを備えているが、その算出手段10Cが、試料3aについて各無機成分iの濃度Wおよび残分としての強熱減量成分の濃度Wを仮定し、基準となる希釈率Rを用いて、試料3aにおける各成分の濃度W,Wを算出し、算出した各無機成分iの濃度の合計が100%になるように規格化して各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。ここで、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、試料中の強熱減量および試料と融剤の実際の秤量値の誤差は、試料3aにおける強熱減量成分の濃度Wに影響し、試料中の全無機成分の濃度に比例して影響するので、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
次に、本発明の第4実施形態の蛍光X線分析装置について説明する。図2に示すように、この装置は、前記第1実施形態の装置と比較すると、入力手段11Dを備えることと、算出手段10Dの動作内容とが異なるのみである。具体的には、入力手段11Dには、試料3aおよび融剤3bの合計重量からガラスビード3の重量を差し引いた強熱減量に対応する強熱減量成分を試料3aの一成分とするとともに試料3a(SFP法を具現化した第4実施形態の装置では、分析対象である試料として想定されて代表的な組成をもつ試料)について仮定した各無機成分iの濃度Wおよび残分としての強熱減量成分の濃度W、ならびに試料3aの基準となる希釈率が入力される。また、算出手段10Dは、以下のように動作して、ガラスビード3に調製された試料3aにおける各成分の濃度をSFP法により算出する。
まず、入力手段11Dに入力された試料3aについて仮定した各成分の濃度W,Wおよび試料の基準となる希釈率Rに基づいて、前式(4)によりガラスビード3中の各成分iから発生する蛍光X線4の理論強度Iを計算し、その理論強度Iに基づいて蛍光X線の吸収および励起に関する理論マトリックス補正定数αを計算するとともに、組成が既知で相異なる複数の標準となるガラスビード3について検出手段9で測定した測定強度Iとガラスビード3における成分の濃度Cとの相関関係を、成分iごとに、前記理論マトリックス補正定数αを用いて補正した検量線として求めて記憶する。この検量線は、前式(3)で表され、Cに強熱減量成分の濃度C、融剤の濃度Cは含まれない。
次に、分析対象であるガラスビード3について検出手段9で測定した測定強度Iに前記検量線を適用してガラスビード3における各成分の濃度C,C,Cを算出する。
次に、第1実施形態の装置における算出手段10Aと同様に、前式(2)により、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が百分率で100%になるように規格化し、規格化した各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。
このように、第4実施形態の蛍光X線分析装置は、SFP法により試料3aにおける各成分iの濃度を算出する算出手段10Dを備えているが、その算出手段10Dが、FP法を利用して理論マトリックス補正定数αを計算する際に、試料3aについて仮定された各無機成分iの濃度Wおよび残分としての強熱減量成分の濃度Wと、基準となる希釈率Rとを用いて、ガラスビード3中の各成分iから発生する蛍光X線4の理論強度Iを計算し、その理論強度Iに基づく。そして、分析対象であるガラスビード3について測定強度Iに前記理論マトリックス補正定数αを用いて補正した検量線を適用してガラスビード3における各成分の濃度C,C,Cを算出し、算出した各無機成分iの濃度Cの合計が100%になるように規格化して各無機成分iの濃度Z(%)を試料3aについての最終分析値とする。ここで、無機成分を含んでガラスビードに調製すべき試料について、試料中の強熱減量および試料と融剤の実際の秤量値の誤差は、試料3aにおける強熱減量成分の濃度Wに影響し、試料中の全無機成分の濃度に比例して影響するので、ガラスビード調製に際しての強熱減量成分除去は不要であり、試料と融剤の目標値に対しての正確な秤量も実際の秤量値を用いた秤量値の補正も不要であり、強熱減量成分を除いた無機成分のみの濃度の合計が100%になるように定量演算することにより、無機成分のみの濃度を簡便かつ正確に求めることができる。
なお、第3、第4実施形態の装置において、個々の試料の実際の希釈率が基準となる希釈率よりも小さい数値であるとき、そのずれ分は強熱増量として扱われることになるが、その場合には、前記特願2009−245377に記載のように、負の濃度をもつ強熱減量成分として負の濃度のまま計算を進めることができる。
1 X線源
2 1次X線
3 ガラスビード
3a 試料
3b 融剤
4 蛍光X線
9 検出手段
10A,10B,10C,10D 算出手段
11B,11C,11D 入力手段

Claims (4)

  1. 無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、
    前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、
    前記ガラスビードについて前記試料に含まれていた各無機成分の濃度および残分としての前記融剤の濃度を仮定し、そのガラスビードについて仮定した各成分の濃度に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度と前記検出手段で測定した測定強度を理論強度スケールに換算した換算測定強度とが合致するように、前記ガラスビードについて仮定した各成分の濃度を逐次近似的に修正計算して、前記ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段とを備えた蛍光X線分析装置。
  2. 無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、
    前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、
    前記ガラスビードについて仮定した前記試料に含まれていた各無機成分の濃度および残分としての前記融剤の濃度が入力される入力手段と、
    その入力手段に入力された前記ガラスビードについて仮定した各成分の濃度に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度に基づいて蛍光X線の吸収および励起に関する理論マトリックス補正定数を計算するとともに、組成が既知で相異なる複数の標準となるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度と前記ガラスビードにおける成分の濃度との相関関係を、成分ごとに、前記理論マトリックス補正定数を用いて補正した検量線として求めて記憶し、分析対象であるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度に前記検量線を適用して前記ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段とを備えた蛍光X線分析装置。
  3. 無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、
    前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、
    前記試料の基準となる希釈率が入力される入力手段と、
    前記試料および融剤の合計重量から前記ガラスビードの重量を差し引いた強熱減量に対応する強熱減量成分を前記試料の一成分とするとともに、前記試料について各無機成分の濃度および残分としての前記強熱減量成分の濃度を仮定し、その試料について仮定した各成分の濃度および前記入力手段に入力された前記試料の基準となる希釈率に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度と前記検出手段で測定した測定強度を理論強度スケールに換算した換算測定強度とが合致するように、前記試料について仮定した各成分の濃度を逐次近似的に修正計算して、前記試料における各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段とを備えた蛍光X線分析装置。
  4. 無機成分を含む試料および融剤が加熱溶融されて調製されたガラスビードに1次X線を照射するX線源と、
    前記ガラスビードから発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、
    前記試料および融剤の合計重量から前記ガラスビードの重量を差し引いた強熱減量に対応する強熱減量成分を前記試料の一成分とするとともに前記試料について仮定した各無機成分の濃度および残分としての前記強熱減量成分の濃度、ならびに前記試料の基準となる希釈率が入力される入力手段と、
    その入力手段に入力された前記試料について仮定した各成分の濃度および前記試料の基準となる希釈率に基づいて、前記ガラスビード中の各成分から発生する蛍光X線の理論強度を計算し、その理論強度に基づいて蛍光X線の吸収および励起に関する理論マトリックス補正定数を計算するとともに、組成が既知で相異なる複数の標準となるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度と前記ガラスビードにおける成分の濃度との相関関係を、成分ごとに、前記理論マトリックス補正定数を用いて補正した検量線として求めて記憶し、分析対象であるガラスビードについて前記検出手段で測定した測定強度に前記検量線を適用して前記ガラスビードにおける各成分の濃度を算出し、算出した前記各無機成分の濃度の合計が100%になるように規格化し、規格化した前記各無機成分の濃度を前記試料についての最終分析値とする算出手段とを備えた蛍光X線分析装置。
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