JP5480331B2 - 射出金型装置 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂射出物を製造するための射出金型装置に関し、特に金型装置の内部に加熱及び冷却手段を備え、射出過程で金型を加熱又は冷却できる射出金型装置に関する。
射出成形とは、通常プラスティックなどの合成樹脂製の製品を成形する一つの方法である。この射出成形においては、所定形状に形成された金型のキャビティ内に溶融した樹脂を射出して充填し、これを冷却して固化することにより、キャビティの形状と同じ形状の製品を成形する。
この射出成形により成形された製品は一般に表面が粗くなるので、別途の塗装又は表面処理工程を必要とし、それにより工程が複雑になる。
そこで、射出表面を美しくし、工程を単純化するために、射出成形を行った後に金型の外側部分のみ冷却し、内側部分は徐々に冷却する冷金型が開発された。しかし、熱的強度を向上させることはできるが、高温の成形材が注入されるとしても金型の内側部分が初期は低温状態であるため、温度を均一に維持することは困難であり、射出物の表面を美しくすることは困難であった。
そこで、金型の温度を高温に維持して射出を行いながらも、迅速に冷却する成形技術が研究され、高温金型技術が開発された。
高温金型技術は、金型に埋設された熱線などにより金型の温度を高温に維持して射出が行われるようにし、樹脂が均一にキャビティを充填するようにする。また、金型に埋設された冷却水流路により迅速な冷却が均一に行われるようにする。それにより、射出物の表面が均一に形成されて美しい外観が形成される。また、別途の表面処理工程を必要としないので、無塗装により工程を簡素化することができる。
このような高温金型技術において、金型温度を上げることや金型温度を下げることは射出物の表面状態を決定する重要な要素となる。その中で、金型温度を下げる技術として、加熱手段が備えられたキャビティ金型板の背面に冷却板を備え、冷却時に冷却板をキャビティ金型板に接触させて迅速に冷却が行われるようにする技術が用いられる。
ここで、冷却板が均一にキャビティ金型板に接触すると、冷却効率が向上し、キャビティ金型板に冷却温度ムラがなくなり、射出物の表面状態が良好になる。
しかし、キャビティ金型板の場合、高温状態から急速に冷却されるので、頻繁な使用を要する量産体制においては熱膨張及び変形が発生する。それにより、キャビティ金型板と冷却板が均一に接触しなくなるので、冷却温度ムラが大きくなるという問題が生じる。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、金型の表面を均一に冷却できる金型装置を提供することを目的とする。
また、冷却温度ムラを減少させることにより、射出物の不良率を改善でき、均一な品質を確保できる金型装置を提供することを目的とする。
さらに、冷却速度及び冷却効率を向上させることにより、量産性を向上させることのできる金型装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、前面にキャビティが形成されて内部に加熱手段が備えられたキャビティ金型板、及び前記キャビティ金型板の背面に接離して内部に冷却手段が備えられた冷却板を含むキャビティ金型と、前記キャビティ金型板と共に前記キャビティを定めるコア金型とを含み、前記冷却板は少なくとも2つに分割された分割面からなる金型装置が提供される。
本発明の他の態様によれば、前面にキャビティが形成されて内部に加熱手段が備えられたキャビティ金型板、前記キャビティ金型板を支持するベース、及び前記キャビティ金型板と前記ベース間で前記キャビティ金型板と接離可能に固定されて内部に第1冷却手段が備えられた冷却板を含むキャビティ金型と、前記キャビティ金型板と共に前記キャビティを定めるコア金型板を備え、前記コア金型板内に配置される加熱手段及び第2冷却手段を含むコア金型と、前記加熱手段と前記冷却手段の作動を制御する制御部とを含み、前記キャビティ金型板は第3冷却手段を含むことを特徴とする金型装置が提供される。
このような本発明の態様によれば、金型の冷却板を分割し、冷却板の分割された各面がキャビティ金型板の背面に密着するようにする。それにより、金型の冷却温度ムラを減少させ、射出物の不良率を減少させることができ、均一な品質を確保することができる。
また、本発明の他の態様によれば、冷却板がより均一に金型に密着するように密着圧力を与えることにより、金型の冷却温度ムラを減少させ、冷却速度及び効率を改善し、量産性を向上させる。
また、本発明のさらに他の態様によれば、キャビティの形状的な特徴を考慮して金型の冷却温度ムラを補償することができる。それにより、金型の均一な冷却温度分布を得ることができる。
本発明による金型装置の第1実施形態を示す側断面図である。 図1の金型装置が型合わせされた状態を示す側断面図である。 第1実施形態の変形例を示す斜視図である。 第1実施形態の他の変形例を示す斜視図である。 本発明による金型装置の冷却板の背面に弾性体が備えられた状態を示す斜視図である。 従来の金型装置における金型の位置による温度分布を示すグラフである。 本発明による金型装置における金型の位置による温度分布を示すグラフである。 本発明による金型装置の第2実施形態を示す側断面図である。 第2実施形態における金型装置が型合わせされた状態を示す側断面図である。 第2実施形態の部分拡大斜視図である。 第2実施形態における支持部材の変形例を示す斜視図である。 第2実施形態における支持部材の他の変形例を示す斜視図である。 本発明による金型装置の第3実施形態を示す側断面図である。 第3実施形態におけるキャビティに樹脂が注入される前の状態を示す側断面図である。 第3実施形態の作動順序を概略的に示すフローチャートである。 CENA1材質のキャビティ金型板における温度分布を示す斜視図である。 モールドマックスHH材質のキャビティ金型板における温度分布を示す斜視図である。 表面処理方法による付着力の変化を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態により本発明を実施するための具体的内容について説明する。
図1は本発明による金型装置の第1実施形態を示す側断面図であり、図2は図1の金型装置が型合わせされた状態を示す側断面図である。
図1及び図2を参照すると、第1実施形態の金型装置は、キャビティ金型100と、キャビティ金型100の前面に型合わせされるコア金型200とからなる。
キャビティ金型100は、固定された金型であり、前面110aにキャビティ120が形成されて内部に加熱手段111が備えられたキャビティ金型板110と、キャビティ金型板110の背面110bに接離して内部に第1冷却手段131が備えられた冷却板130とを含む。また、キャビティ金型100は、キャビティ金型板110が装着されるベース140と、キャビティ金型板110とベース140間に冷却板130が移動可能に収容される収容空間150と、収容空間150において冷却板130がキャビティ金型板110に接離するように移送する冷却板移送手段160とを含む。
キャビティ金型板110は、図1に示すように、地面又は支持構造物(図示せず)に固定支持されるベース140に着脱可能に支持固定されている。
キャビティ金型板110は、後述するコア金型200のコア金型板210と互いに噛み合って射出物300が形成されるキャビティ120空間を形成するが、そのためにキャビティ金型板110の前面110aにキャビティ120の一部を形成する陰刻された部分を備える。
キャビティ金型板110は、金型の温度を高温に維持して射出が行われるようにする加熱手段111を備える。図1に示すように、加熱手段111は、キャビティ金型板110の内部に形成された孔に埋設されており、一般に電気ヒーターが使用される。加熱手段111はキャビティ金型板110の前面110aと所定の間隔をおいて離隔しているので、前面に露出しない。また、加熱手段111が埋設される孔は、キャビティ金型板110の前面110aに沿って互いに離隔するように複数形成される。それにより、加熱手段111は、射出物が位置するキャビティ120に沿って均一に熱を伝達することができる。
冷却板130は、キャビティ金型板110の背面110bに備えられ、キャビティ金型板110とベース140間に形成される収容空間150内に移動可能に備えられる。すなわち、図2に示すように、キャビティ金型100とコア金型200が型合わせされる際に、冷却板130はキャビティ金型板110の背面110bに接触するように移動することができる。このような冷却板130の移動は、ベース140に備えられて冷却板130の背面に結合される冷却板移送手段160により行われる。冷却板移送手段160は、油圧又は空圧装置で構成することができる。
冷却板130は、内部に第1冷却手段131を備える。第1冷却手段131は、冷却板130の内部に形成されて冷却水が流れる冷却水流路となっている。この冷却水流路は、キャビティ金型100の外部に連結された給水管132により冷却水が供給される。前記冷却水流路は、冷却板130に沿って均一に形成され、冷却板130によるキャビティ金型板110の冷却効果が均一に発生するようにする。
また、冷却板130は、少なくとも2つに分割された分割面130a、130bからなる。図3には冷却板130が2分割された例を示し、図4には冷却板130が4分割された例を示す。しかし、本発明による金型装置の冷却板はこれに限定されるものではなく、少なくとも2つに分割されていれば本発明の範囲に含まれる。
図3を参照すると、冷却板130は2つの分割面130a、130bに区分される。それぞれの分割面130a、130bには第1冷却手段131が備えられ、背面にそれぞれの分割面130a、130bに連結される冷却板移送手段160が備えられる。冷却板移送手段160は、分割面130a、130bのそれぞれに備えられるが、それぞれの分割面130a、130bの中心部に連結される。
図4を参照すると、冷却板130は4つの分割面130c、130d、130e、130fに区分される。4つの分割面130c、130d、130e、130fにもそれぞれ冷却手段が備えられ、背面にそれぞれの冷却板移送手段160が連結される。図4は冷却板130の背面を示す図である。図4において、冷却板130にはそれぞれの分割面130c、130d、130e、130fに連結される冷却板移送手段160が結合される結合孔134c、134d、134e、134fが形成されている。
図3及び図4において、それぞれの分割面130c、130d、130e、130fは互いに分離されている。よって、それぞれの分割面130c、130d、130e、130fに連結された冷却板移送手段160の動作も異なる。すなわち、それぞれの分割面130c、130d、130e、130fが冷却板移送手段16によりキャビティ金型板110に異なる高さで接触するように形成することができる。
このような構成においては、冷却板130を分割してキャビティ金型板110の背面に合わせ、冷却板130の分割面130c、130d、130e、130fのそれぞれがキャビティ金型板110の背面に密着できるようにする。それにより、冷却温度ムラを減少させて射出物の不良率を減少させることができ、均一な品質を確保することができる。
また、分割面130a、130b、130c、130d、130e、130fは、それぞれベース140との間に装着される複数の弾性体133を備える。図2には弾性体133が装着される位置を示し、図5には弾性体133が具体的に冷却板130に装着された状態を示す。
図5を参照すると、弾性体133は、コイルばねからなり、冷却板130の背面に装着される。ここで、弾性体133は、それぞれの分割面130a、130bにおいて、冷却板移送手段160が冷却板130に結合される結合孔134a、134bを中心に、分割面130a、130bの各角部に対称に装着されている。
このような構成においては、冷却板移送手段160によりそれぞれの分割面130a、130bがキャビティ金型板110の背面に密着するが、より均一に密着できるように、弾性体が密着圧力を与える。
また、冷却板130は、異なる材質の分割面を選択的に組み合わせてもよい。すなわち、図3において、2つの分割面を形成する第1分割面130aと第2分割面130bは、異なる材質であってもよい。
このような構成においては、キャビティ120の形状的な特徴によりキャビティ金型板110に局部的な冷却温度ムラが発生することを考慮し、冷却温度ムラを補償できるように熱伝導率の異なる材質で分割面を組み合わせる。それにより、より均一な冷却温度分布が得られる。
また、コア金型200は、キャビティ金型100の前面に型合わせできるように移動可能に備えられる。キャビティ金型100側に移動できるようにコア金型200のコアベース220に移送手段(図示せず)が連結されてもよく、ガイド部材(図示せず)などが備えられてもよい。
コア金型200は、キャビティ金型板110と型合わせされてキャビティ120を形成するコア金型板210を備えており、コア金型板210は、キャビティ金型板110とは別に内部に別途の加熱手段211と第2冷却手段212を備え、冷却水供給管213を備える。コア金型板210の加熱手段や冷却手段などについては、キャビティ金型板110における説明と重複するので、詳細な説明は省略する。
コア金型200には、金型を貫通する射出物注入管310が備えられる。射出物注入管310により注入された射出物300は図1に概略的に示す。
また、キャビティ金型100とコア金型200による射出物成形は次のように行われる。図1に示すように、冷却板130がキャビティ金型板110と離隔している状態で、キャビティ金型板110とコア金型板210の加熱手段111、211が稼働し、金型板を加熱して高温状態を維持する。この場合、図2に示すように、キャビティ金型100とコア金型200が型合わせされているので、キャビティ金型板110とコア金型板210がキャビティ120を形成する。
加熱されて高温の状態にあるキャビティ120に射出物300が注入されて充填される。射出物が充填された図2の状態で、冷却板移送手段160が稼働して冷却板130がキャビティ金型板110の背面に接触する。また、冷却板130の第1冷却手段131とコア金型板210の第2冷却手段212が作動して冷却が行われる。
図6及び図7は、分割冷却板130を備えない状態と備えた状態で、金型の様々な地点での温度分布を示す図である。このような温度分布グラフはキャビティ金型板110の様々な地点にサーモカップルを埋設して得ることができる。
図6から、分割冷却板130を備えない状態では、金型の様々な地点での各時間の温度が広い範囲に分布していることが分かる。それに比べて、分割冷却板130を備えた状態の図7からは、金型の様々な地点での各時間の温度が、図6とは異なり、狭い範囲に分布していることが分かる。
図6の状態では、金型の特定地点での温度が非常に高くなることがあるので、射出工程全体で上げることのできる温度に限度がある。しかし、図7の状態では、金型の全体的な温度分布が小さく形成されるので、金型の温度を十分に上げることができる。それにより、高温の状態で射出を行うことができるので、射出物の不良率を減少させることができ、均一な品質を確保することができる。
また、図6の状態では、繰り返される大量の作業の途中に、金型の全体的な温度分布が大きくなることを防止するために、休止時間を要する。しかし、図7の状態では、温度分布が大きくないので、不要な休止時間を短縮することができ、作業効率や量産性を向上させることができる。
図8及び図9は、本発明による金型装置の第2実施形態を示す図である。以下、図8及び図9を参照して第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図8及び図9を参照すると、第2実施形態においては、第1実施形態における収容空間150内に、一側面がベース140に結合されて他側面がキャビティ金型板110の背面110bに結合される支持部材170をさらに含む。
支持部材170は、柱状の構成でキャビティ金型板110を支持し、略円柱状である。
支持部材170は、冷却板130を貫通して収容空間150内に装着される。すなわち、支持部材170は、収容空間150内で、一側面がベース140に結合され、他側面がキャビティ金型板110の背面110bに結合される。
図10を参照すると、冷却板130には、支持部材170が貫通する貫通孔133が備えられている。従って、支持部材170は、貫通孔133を貫通してキャビティ金型板110をベース140に対して支持する。それにより、厚さの薄いキャビティ金型板110の背面110bを柱状の支持部材170が支持するようにし、キャビティ金型板110の前面110aから加えられる圧力に対してキャビティ金型板110を支持できるようにする。よって、キャビティ金型板110の厚さを厚くしなくても、効率的に構造的強度を向上させることができる。
また、冷却板130は、支持部材170により収容空間150内での移動が誘導される。すなわち、前述したように、冷却板移送手段160により収容空間150を冷却板130が移動するが、支持部材170はこのような冷却板130の移動をガイドする役割も兼ねる。
図11及び図12は、支持部材170の変形例を示す図である。図11を参照すると、支持部材170の変形例においては、内部に冷却水流路171が形成される。冷却水流路171は、キャビティ金型板110と平行して離隔された少なくとも1つの平行流路171a、及び平行流路171aに冷却水を供給及び回収する連結流路171bを含む。それにより、連結流路171bを介して供給された冷却水が平行流路171aを流れ、支持部材170とキャビティ金型板110の背面110bとが接触して熱交換することにより、キャビティ金型板110を冷却する。
図12を参照すると、支持部材170のキャビティ金型板110の背面110bに当接する部分に、断熱板172が備えられてもよい。この断熱板172は、加熱されて高温状態にあるキャビティ金型板110の熱が冷却板130により熱交換されず、支持部材170により直接ベース140に伝達されることを防止する。また、支持部材170の熱による変形や損傷を防止する。
また、複数の支持部材170を備えてもよい。図10を参照すると、冷却板130に沿って複数の貫通孔133に複数の支持部材170が貫通結合されている。ここで、支持部材170の数に応じて複数の貫通孔133が備えられる。
支持部材170はステンレススチール(STS)材質で形成することが好ましい。これは、熱伝導率が低く、強度に優れるので、支持部材170と接触するキャビティ金型板110の熱による支持部材170の変形や損傷を低減することができるからである。
図13及び図14は、本発明による金型装置の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態は、第1実施形態のキャビティ金型板110に第3冷却手段を追加した点で異なる。すなわち、キャビティ金型板110の両端部付近に内部に冷却水が流れる第3冷却手段112を追加し、第1冷却手段131と共にキャビティ金型板110の冷却速度をさらに向上させている。
図13〜図15を参照して第3実施形態の動作について説明する。
図13はコア金型板とキャビティ金型板が噛み合って形成されたキャビティの内部に樹脂組成物が注入された後の、冷却板により樹脂組成物を冷却する状態を示す図であり、図14はキャビティの内部に樹脂組成物が注入される直前の状態を示す図である。
上記実施形態の動作を制御する制御装置は射出作業を繰り返し行うが、図15によれば、コア金型板210とキャビティ金型板110を開放し、前段階で射出された完成品を排出し、再びコア金型板210とキャビティ金型板110を閉じてキャビティ120を形成し、樹脂組成物を注入して冷却し、コア金型板210とキャビティ金型板110を開放する過程を繰り返す。
ここで、コア金型板210及びキャビティ金型板110に設置されたヒーターはコア金型板210とキャビティ金型板110が開放された直後に作動され、コア金型板210及びキャビティ金型板110の加熱が開始される。このように、コア金型板210及びキャビティ金型板110の加熱を金型の開放直後から行うことにより、加熱に要する時間を短縮することができる。その後、コア金型板210及びキャビティ金型板110が射出に適した温度に加熱されると適正温度を維持し、樹脂組成物の注入作業が完了するとヒーターの作動が停止して冷却段階に入る。
ここで、コア金型板210及びキャビティ金型板110を加熱することにより、注入された樹脂組成物をキャビティ120内に均一に分布させることができる。この段階において、冷却板130は、図14に示すように、キャビティ金型板110と分離された状態を維持するが、冷却板130に備えられた第1冷却手段131の内部には冷却水が供給されている。キャビティ金型板110の迅速な加熱のためには樹脂組成物が注入された後に冷却水を供給することが好ましいが、それによりキャビティ金型板110の冷却が遅延する。
従って、冷却板130には継続して冷却水を供給して常に冷却された状態を維持し、同図に示すように、キャビティ金型板110と離隔された状態にしてキャビティ金型板110の加熱が遅延しないようにする。このとき、第2冷却手段212及び第3冷却手段112には冷却水が供給されない。
冷却段階に入ると、前述したように冷却板130がキャビティ金型板110に向かって前進してキャビティ金型板110を間接的に冷却すると共に、キャビティ金型板110及びコア金型板210にそれぞれ形成された第3冷却手段112及び第2冷却手段212にも冷却水が供給されて冷却を開始する。ただし、第2冷却手段212及び第3冷却手段112に冷却水が供給される時点は、前記樹脂組成物の注入が行われる過程内とする。すなわち、樹脂組成物の注入に要する時間は相対的に短いのに対して、冷却水の供給によるコア金型板210及びキャビティ金型板110の冷却に要する時間は相対的に長いので、樹脂組成物が供給される間に冷却水を供給し始めると冷却に要する時間を短縮することができる。
さらに、冷却板130により間接的にキャビティ金型板110を冷却すると共に、冷却水を直接キャビティ金型板110及びコア金型板210に供給することにより、迅速な冷却が可能となり、均一な温度分布を得ることができる。また、冷却板130が配置されるキャビティ金型板110には相対的に冷却水流路を少なく配置することにより、金型の構造が非常に複雑になることを防止でき、複数の冷却水流路による金型強度の低下も最小限に抑えられる。
一方、第1〜第3実施形態において、キャビティ金型板は周知の任意の金型鋼からなるが、好ましくは銅母材に重量比でBe:1.9%及びCo+Ni:0.25%が含まれる材質からなる。上記材質はモールドマックスHH(Moldmax HH)と呼ばれる材質であり、次のような物性を有する。
硬度:40HRC
引張強度:1175MPa
熱伝導率(20℃):105W/m・K
前記熱伝導率は従来のCENA1と呼ばれる金型鋼に比べて約5倍優れた値であるが、より高い熱伝導率を得るためにテンパリング処理を行う。テンパリング処理は、キャビティ金型板を形成し、400〜500℃の温度に加熱し、加熱炉内で常温まで徐冷することにより行われる。このようにテンパリング処理を行えば、硬度及び引張強度は同程度に維持されるが、熱伝導率が120W/m・Kに上昇するので、加熱及び冷却に要する時間が短縮されるだけでなく、キャビティ金型板内でも均一な温度分布を得ることができる。
図16は、20W/m・Kの熱伝導率を有する従来のCENA1を加熱し、キャビティ金型板の最高温度が80℃になるまで冷却した状態での温度分布を示す図である。測定の結果、キャビティ金型板の外周部の温度が80℃になるのに要する時間は約180秒であり、キャビティ金型板内でも最低20℃最高80℃の温度分布を示すことが分かる。これは、加熱の際も同様なので、キャビティ金型板全体にわたって温度差が比較的大きくなり、射出物の表面品質が不均一になる恐れがある。
図17は、前記モールドマックスHHをテンパリング処理したキャビティ金型板の温度分布を示す図であり、同様にキャビティ金型板の最高温度が80℃になるまで冷却した状態での温度分布を示す図である。測定の結果、キャビティ金型板の外周部の温度が80℃になるのに要する時間は約90秒と前記CENA1の半分程度であり、キャビティ金型板内でも最低31℃最高76℃の温度分布を示し、前記CENA1に比べて各地点の温度ムラが減少したことが分かる。
従って、前記テンパリング処理が行われたモールドマックスHHを利用すると、冷却及び加熱に要する時間をCENA1の半分に短縮できるだけでなく、加熱及び冷却時にキャビティ金型板内の温度がより均一になるので、射出物の表面品質も均一になるという効果を得ることができる。
ここで、前記金型装置において、射出物が接する表面にCrN(窒化クロム)コーティング層を形成してもよい。前記CrNコーティング層は、キャビティ金型板やコア金型板が射出物と直接接触することを防止し、射出物がキャビティ内に焼き付くことを防止する。さらに、高温環境で発生する腐食性ガスによるキャビティ金型板やコア金型板の損傷を最小限に抑える。
特に、本発明の実施形態においては射出物の表面をより美麗にするために高温雰囲気で射出作業を行うが、作業性を改善して工程速度を向上させるためには、前述したように、コア金型板及びキャビティ金型板の熱伝導率が高くなければならない。このために、前記モールドマックスHHなどのベリリウム系銅合金を使用する場合、焼付き性の面ではCENA1などの鋼材に比べて不利である。
しかし、前述したようにCrNコーティング層を表面に形成すると、高い熱伝導特性を維持しながらも焼き付き性を改善することができる。
ここで、CrNコーティングは、銀灰色を帯び、Crめっきの環境問題を解決すると共に、耐摩耗性、耐焼き付き性、耐熱性及び潤滑性に優れた特性を有する。これに類似した特性を有するコーティングとしてTiNコーティングがあるが、これは母材材質が超硬、高速度工具鋼、ダイス鋼、ステンレス鋼などの高硬度材質である場合に適し、前述したように、鋼材に比べて相対的に軟質のベリリウム系銅合金である場合は適さない。
図18は、金型の表面に様々な表面処理を行った場合の、それによる付着力の変化を示すグラフである。図18を参照すると、50〜200℃の全領域において、TiNコーティング層を有する場合より、CrNコーティング層を有する場合の方が低い付着力を示すことが分かる。従って、上記実施形態のように、モールドマックス系の母材を使用する高温射出金型においては、前記CrNコーティング層が最高の性能を示すことが分かる。
前記CrNコーティングは、物理気相蒸着法(以下、PVD)を利用して形成することができる。前記PVD以外では、化学気相蒸着法(以下、CVD)を利用してもよいが、均一かつ高品質の薄膜を得るにはPVDの方が有利である。すなわち、PVDは、アーク、熱、電子ビームなどで蒸発させた金属物質を高真空のプラズマ雰囲気内で活性化させ、さらに数十〜数千evの加速エネルギーで対象材料に衝突させることにより、スパッタリング、浸透拡散、イオンミキシング、化学反応などの表面反応で高硬度かつ高密着力の被膜層を形成することができ、本願のように長期間にわたって繰り返し使用される金型の被膜形成に適した特徴を有する。特に、PVDは、処理温度が500℃以下と低く、化学的に安定しているのでほとんど腐食しないという利点を有する。
100 キャビティ金型
110 キャビティ金型板
120 キャビティ
130 冷却板
140 ベース
150 収容空間
160 冷却板移送手段
200 コア金型
210 コア金型板
220 コアベース
300 射出物

Claims (15)

  1. 前面にキャビティが形成されて内部に加熱手段が備えられたキャビティ金型板、及び前記キャビティ金型板の背面に接離して内部に第1冷却手段が備えられた冷却板を含むキャビティ金型と、
    前記冷却板が前記キャビティ金型板に接離するように移送する冷却板移送手段と、
    前記キャビティ金型板と共に前記キャビティを定めるコア金型とを含み、
    前記冷却板は少なくとも2つ備えられ
    前記冷却板移送手段は、前記少なくとも2つの冷却板をそれぞれ移送することを特徴とする金型装置。
  2. 前記キャビティ金型は、
    前記キャビティ金型板が装着されるベースをさらに含み
    前記冷却板移送手段は、前記キャビティ金型板と前記ベース間で前記冷却板が前記キャビティ金型板に接離可能に移送することを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
  3. 一側面が前記ベースに結合され、他側面が前記キャビティ金型板の背面に結合される支持部材をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の金型装置。
  4. 前記冷却板は前記支持部材が貫通する貫通孔を含み、
    前記支持部材は前記貫通孔に挿入された状態で配置されることを特徴とする請求項3に記載の金型装置。
  5. 前記支持部材は前記キャビティ金型板との結合部位に断熱板を備えることを特徴とする請求項3に記載の金型装置。
  6. 前記支持部材は内部に冷却水流路が形成されることを特徴とする請求項3に記載の金型装置。
  7. 前記それぞれの冷却板は異なる材質からなることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
  8. 前記第1冷却手段は前記冷却板の内部に形成された冷却水流路を含むことを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
  9. 前記それぞれの冷却板と前記ベースとの間に装着される弾性体をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の金型装置。
  10. 前記キャビティ金型板は、重量比でBe:1.9%、Co+Ni:0.25%を含み、テンパリング処理されたベリリウム系銅合金からなることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
  11. 前記テンパリング処理は、キャビティ金型板を400〜500℃に加熱し、加熱炉内で冷却することにより行われることを特徴とする請求項10に記載の金型装置。
  12. 前記キャビティ金型板と前記コア金型の少なくとも一方の表面にCrNコーティング層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
  13. 前記コア金型板に備えられる第2冷却手段と、
    前記キャビティ金型板に備えられる第3冷却手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
  14. 前記第3冷却手段の冷却能力は前記第1冷却手段の冷却能力より小さいことを特徴とする請求項13に記載の金型装置。
  15. 前記第2冷却手段及び前記第3冷却手段は、前記冷却板が前記キャビティ金型板と接触する前から作動することを特徴とする請求項13に記載の金型装置。
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