JP4887041B2 - 高耐久性を有する断熱金型 - Google Patents
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Description
以下にその具体例を示す。
出願人は特許文献1に記載の“光ディスク基板成形用スタンパの製造装置及び製造方法”で提案した如く、鋭意研究の成果として新たな断熱スタンパの構造とその製造方法を確立して光ディスク基板の生産に反映した。しかし成形量産ラインで本断熱スタンパを使用した結果、5万ショット近傍から急速に断熱機能層(高分子層)とスタンパ母材層(Ni層)との界面で剥離が進行することが判明してきた。従来の断熱機能を持たない通常スタンパに対し、本断熱スタンパを使用することで、生産性や成形品の品質は格段に向上したものの、耐久性という点では十分とは言えない状態にあった。このため、更なる技術革新が求められていた。
即ち、結論として従来の断熱金型構造、例えば特許文献1に示された断熱スタンパの構造では、高分子層(断熱機能層)とNi層(金型母材層)との界面の密着性が、熱サイクルや荷重サイクルに対して十分な耐久性を有していない。
<初期品質>
図2に従来の断熱スタンパ構造を示した。図2から分かるように2次メッキ層(2)、導電膜層(3)、断熱樹脂層(4)、1次メッキ層(5)の4層構造を持つ断熱スタンパでは、スタンパ内縁部と外周端部では断熱機能を有する樹脂層(4)が露出している。これらの部分は、精密打ち抜きプレス装置にて所定の寸法ならびに記録された情報パターンとの位置精度を得られるよう、せん断加工で仕上げられた部分である。硬い層・柔らかい層・硬い層からなるサンドイッチ構造体をせん断加工する場合、各層のヤング率に違いがあると一般的には加工後は段差が発生しやすいことは公知である。即ち、加工後は樹脂層(4)が僅かに凹部になる。このような鍔形状では外力に対して応力集中を招き、剥離の起点となり易い。事実、生産現場では、従来型断熱スタンパの剥離現象は、この内縁部付近あるいは外周端部付近から発生する場合が多く見受けられる。
初期的なスタンパ寿命を左右する重要な要因の一つである。
射出成形におけるプロセスは、金型内のキャビティー表面を形成するスタンパに対し極めて過酷な環境を与えている。図3に、金型内に載置された断熱スタンパと成形プロセス中の模式図を示した。断熱スタンパは成形プロセスが開始されると、金型内に充填される300℃前後の成形材料(溶融樹脂)との接触により瞬時に昇温され、その後数秒間でおよそ100℃まで一気に冷却される。このヒートサイクルが繰り返される。しかも瞬間的には、おおよそ100MPaの面圧がスタンパ全面に対し負荷・除荷行程を繰り返す。この温度・圧力の複合サイクルが、最長でも10秒間隔で繰り返される環境である。
断熱作用を得るため設けられた高分子層とNi層との界面では、熱膨張差と圧力サイクルに起因する“ずれ応力”が発生し、熱的ならびに機械的な疲労が蓄積される。そして、最終的には界面剥離に至るのである。
つまり、Ni−高分子−Niという不連続な構造体では、不可避の現象と考えられる。
従来型断熱スタンパでは異種材料が接する界面が2箇所存在する。
界面(A) 導電皮膜(3)と断熱樹脂層(4)との接触面
界面(B) 断熱樹脂層(4)と1次メッキ層(5)との接触面
上記2箇所は、いずれも金属(例えばNi)と高分子(例えばポリイミド樹脂)との接触面である。図3に示したように300℃以上の溶融成形樹脂(6)がキャビティー内に充填されると、薄いスタンパ1次メッキ層(5)は熱容量が小さいため溶融樹脂からの吸熱エネルギーで短時間に昇温される。と同時に界面(B)を介して断熱樹脂層(4)へも熱伝導が行われる。
表1に物性比較を示す。
(A)断熱樹脂に回転能を与えるべく不完全キュアー条件(200℃より低い温度域)で硬化させることにより密着力を辛うじて維持している。
(B)導電皮膜(3)と断熱樹脂層(4)との接触面をArイオン等で逆スパッタ処理を行い、接触面の面粗しによるアンカー効果で密着力の改善を図る。
但し上記の対応策は、あくまで初期段階の不良を改善するだけの対処療法的な手法であり、上記で説明したキャビティー内で繰り返し発生する圧力と温度の環境変化によって発生する断熱樹脂層自身の膨張・収縮を原因とする経時的な密着性の劣化という根本的な課題は残存していた。
断熱機能を付加した従来の金型構造も、基本的には断熱機能を有する層を独立した形態で金型表面、あるいは金型内部に設けていた。つまり上記の光ディスク断熱スタンパで問題となった現象は、従来構造の断熱金型でも同様に生じることが理解される。
以下にそれら発明の例を示す。
特許文献2には、傾斜型ポリイミド被膜形成方法並びに成形用金型及びその作製方法が開示されており、この方法では、金型表面へ断熱機能層となるポリイミド被膜を、真空処理室で蒸着重合により形成している。この成膜処理にあたり、重合反応の材料となる第1原料モノマーと第2原料モノマーとの比率を調整することにより、金属である金型表面とポリイミド被膜との密着力を向上している。
また、特許文献3では、断熱金型の作製法について開示されており、この技術では、金型表面へ断熱機能層を形成するにあたり、直鎖型ポリイミドの前駆体を該金型表面に塗布してイミド化した後に、表面処理を行うことによって、表面を活性化した後に、断熱層となる芳香族系重合体の前駆体を塗布することで金属である金型表面と断熱機能層との密着力を向上している。
また、特許文献4には、サイクル時間の短い高温表面成形用の多層金型構造物について開示されている。この技術は、金型内部に断熱機能層を形成するものである。断熱機能層は、金型内部に低密度層を形成することで確保されている。この断熱層すなわち低密度層は、化学蒸着、金属溶射(例えば、高周波スパッタリング、電子ビーム溶)等の被覆技術を用いて、金属から形成するとしている。
但し、いずれの断熱構造も、断熱機能を有する断熱層は独立した「層」として金型表面あるいは金型内部に存在する構造であり、明確な界面が存在する構造においては従来と何ら違いはなかった。つまり、両者間の密着力を改善する提案に過ぎなかった。従って、潜在的に界面剥離を起こす可能性は、残存したままであった。また、断熱機能層を形成するためには断続的な複数の工程を経なければならず、金型作製の生産性において不利な面もあった。
加えて上記の金型構造は連続した工程で形成することが可能で、金型の作製においても十分な生産性を有する製造法である。
(2)「前記金属材料と前記低熱伝導物質との複合領域は、微細粒子の前記低熱伝導物質が前記金属材料中に分散した状態で構成されたものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の成形用金型」、
(3)「前記低熱伝導物質が、耐熱性樹脂または耐熱性無機材料であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の成形用金型」、
(4)「前記耐熱性樹脂が、フッ素系樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン、PFA:パーフロロアルコキシ樹脂、ETFE:テトラフオロエチレン、PVDF:ポリビニリデンフルオライド)微粒子、あるいは芳香族ポリイミド微粒子、芳香族ポリアミド微粒子、シリコン系樹脂の微粒子であることを特徴とする前記第(3)項に記載の成形用金型」、
(5)「前記耐熱性無機材料が、ジルコニア系あるいはアルミナ系、炭化珪素系、窒化珪素系であることを特徴とする前記第(3)項に記載の成形用金型」、
(6)「前記金属材料が、Niであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の成形用金型」により達成される。
また、上記課題は、本発明の(7)「前記成形金型が、光ディスクを製造するためのスタンパであることを特徴とする前記第(1)乃至第(6)のいずれかに記載の成形用金型」により達成される。
即ち、我々は、従来型断熱スタンパに係る発明を10数件提案(特許出願)しており、すべてポリイミド膜で断熱層を形成しているが、いずれもNi/ポリイミドという表面エネルギ−的に不安定な界面問題から回避できない問題点があった。これに対し、本発明では、断熱領域としてNiのような金属材料とポリイミドのような低熱伝導物質との複合材料(電気メッキあるいは無電解メッキで形成)を採用し、金属(例えばNi)母材と低熱伝導物質との不連続界面を形成しないという点で、従来にはない全く新規な構造である。
また、(1)断熱機能を有するスタンパの作製工程に連続性があり、複雑な工程から解放され、例えば厚塗り高分子層の欠陥管理、ベ−ク状態の管理、表面改質工程、樹脂剤のロット間差、温湿度管理等の管理が不要となり、さらに、出荷前の耐久性検査は不要であり、確実な品質の作り込みが可能となるという極めて優れた効果が発揮される。
また、(2)断熱機能を有するスタンパの作製工程の自由度が向上し、このため成形工程とのマッチングを図る際に、断熱層の厚みを変更するだけで対応可能となり、更には、1次メッキ領域の薄膜化も可能となり、更なるタクト短縮も図れるという極めて優れた効果が発揮される。
更に、(3)環境負荷の大幅に低減できる。ベーク処理やスパッタ処理やエッチング処理が不要となり、熱エネルギーゼロ化が図れた。また断熱機能を持つ樹脂層の均膜化のためには、スピンコート法では80%以上の材料が無駄になっていたが(公知)、本発明ではこの問題点を解消できるという極めて優れた効果が発揮される。
光ディスクの断熱スタンパに対する本発明の展開では、スタンパ表面に対して金属マトリックス中に微細粒子を分散した複合メッキを施すものである。
従来型断熱スタンパが金属Ni単体スタンパより機械的強度において劣る理由は、図2、3を基に説明済みである。ここでは図4で、従来型断熱スタンパ構造の製作面での制約条件とその制約による弊害を説明する。
(a)マザースタンパからサンスタンパを複製する工程でしか作製できない欠点を有していた。
熱硬化性樹脂ポリイミドを塗布して150〜200℃以上の炉内でキュアーする必要がある。ガラス原盤から作製するマスタースタンパに断熱層を形成することは好ましくない。何故ならば、凹凸パタ−ンを形成されたレジスト層はそのキュアー条件下では大きく変質して除去が困難になることが知られている。故に、レジスト層を有するマスタースタンパへの適用は基本的に不可である。
(b)断熱樹脂(4)は金属に比べて機械的かつ熱的に弱いため、1次メッキ層(5)の厚みを熱設計上の理想値以上に厚くしなければならなかった。
特許3378840号公報記載の発明では断熱層の厚みを規定している。しかし成形工程のタクトアップを図るには、1次メッキ層(5)の厚みを充分に薄くすることが望ましい。なぜなら1次メッキ層(5)を薄くすることで同部の熱容量が下りスタンパの表面温度を速やかに昇温させることができる。さらに転写完了まで、高い樹脂温度状態を維持できるからである。
しかしながら、柔らかい単一樹脂層を断熱層に採用した従来型断熱スタンパでは、表面強度を確保しなければならないため、機能面(昇温され易さ)で要求される値より厚い30μm以上の1次メッキ層(5)を設けざるを得なかった。
本発明の目的は、従来型の断熱スタンパ構成では、高分子層(断熱機能層)とNi層(金型母材層)との界面の密着性が熱サイクルと荷重サイクルに対して充分な耐久性が得られていない。今後メディアの大容量化に伴いますます過酷な使用環境に曝される点を鑑み、本発明では断熱機能を維持したまま剥離界面が発生しない新規かつ優れた金型断熱構造を提供する。
我々は、既に、従来型断熱スタンパに係る発明を十数件、提案(特許出願)しているが、これらは全て、ポリイミド単体膜で断熱層を形成している。いずれもNi/ポリイミドという表面エネルギー的に不安定な界面問題から回避できない問題を含んでいる。本発明では断熱領域として、金属(例えばNi)をマトリックスとして、低熱伝導物質(例えばポリイミド)の微粒子を分散させた複合材料を採用することで、不連続界面を形成しないという従来にはない、新規な断熱構造である。このような複合材料は、低熱伝導性微粒子を分散した鍍金浴を用いた電気メッキあるいは無電解メッキ等の手段により、形成することができる。メッキ中、鍍金浴の熱対流により低熱伝導性微粒子は浴中で分散され得るが、所望により、攪拌手段で鍍金浴を緩やかに攪拌してもよい。
また、本発明の顕著な特質として、(1)断熱機能を有するスタンパの作製工程に連続性があり、複雑な工程から解放され、例えば厚塗り高分子層の欠陥管理、ベーク状態の管理、表面改質工程、樹脂剤のロット間差、温湿度管理等の工程管理が不要となり、さらに、出荷前の耐久性検査は不要であり、確実な品質の作り込みが可能となる点;
(2)断熱機能を有するスタンパの作製工程の自由度が向上し、このため成形工程とのマッチングを図る際に、断熱領域の厚みを変更するだけで対応可能となり、更には、1次メッキ領域の薄膜化も可能となり、更なるタクト短縮や成形品の品質向上も図れるようになった点;
(3)環境負荷の大幅に低減でき、ベ−ク処理やスパッタ処理、あるいはエッチング処理が不要となり熱エネルギーゼロ化が図れ、また断熱機能を持つ樹脂層の均膜化のためには、スピンコート法では80%以上の材料が無駄(公知)になっていたが、本発明ではこの問題とは無縁である点、が挙げられる。
図7が従来型断熱スタンパ構造を示した図である。最低4層構造をとる。1次メッキ層(5)/ポリイミド層(4)/導電膜層(3)/2次メッキ層(2)(厚付けメッキ層)から構成されている。
また、本発明の複合領域において、このような断熱性微粒子は、複合材料100容量部中に、通常0.5〜90容量部、好ましくは1.0〜80容量部、より好ましくは3.0〜70容量部、存在させることができる。0.5容量部未満では、断熱効果が充分でなく、90容量部を超えると、鍍金浴中での均一分散が難かしいことがあり、また、形成された金型の耐性に問題を生じることがある。
(参考例1):構造と層仕様
図8:参考例1のスタンパでは金属Ni主体で構成されているため、強度的な問題は解消される。従って1次メッキ領域の領域厚は、熱容量にのみ着目した決定が可能となり、結果として十分薄く出来る。また、図8の複合Niメッキ領域(8)の厚みは、同メッキ層が持つ熱伝導率により決定される。
金属Niは、テフロン(登録商標)やポリアミド等の樹脂に比べて10倍以上の熱伝導率を有する。従って、1次メッキ領域(5)の厚みを従来型断熱スタンパの1/10に設定すれば、従来型断熱スタンパと同じ全厚で複合材料系の断熱領域を用いた本発明の断熱スタンパであっても、従来型断熱スタンパと同等の断熱能力を得ることができた。また、1次メッキ領域(5)の厚みを薄くしたことで、タクトアップを図ることもできた。(図7に示す従来型の1次メッキ層(5)の厚みに比べて、図8の1次メッキ領域(5)が極端に薄く出来ることが特徴的である。)
複合メッキの樹脂体積比率が40%、1次メッキ領域(5)の厚みを3μm、複合Niメッキ領域(8)の厚みを35μm、スタンパ全厚み300μmの構成を採用して成形条件を決定した。(図5、6に模式図を示した。)
従来型断熱スタンパでは成形耐久ショット数が0.2〜5万ショットと大きく変動していたが、この断熱スタンパでは、安定して10万ショット以上耐えることが確認できた、と同時に、成形タクトの短縮と成形基板の品質向上も確認された。
図11は成形工程中の金型表面の温度変遷を示した概念図である。金型表面すなわちスタンパ表面温度は、樹脂の充填時から上昇を始める。熱源は溶けた樹脂である。溶融樹脂は自身が持つ熱量を金型に与えながら金型表面温度を上昇させる。この熱の収支により、溶融樹脂の温度は低下を始める。溶融樹脂は、温度が高いほど粘度が低くなり転写の能力が向上し、ある温度以下では粘度が高くなり転写が困難となる。図中「転写可能温度域」とは、その転写の下限域を意味する。但しその温度はあくまで下限であって、高ければ高いほど転写能力は向上する。
図から明らかなように、通常スタンパ(金属Ni単体スタンパ)では到達する最高温度と転写可能温度域の持続時間が、断熱スタンパのそれらより低くかつ短い。これは溶融樹脂が持つ熱量に対して「通常スタンパ+金型」が持つ熱容量と「断熱スタンパの1次メッキ領域」が持つそれとの大きさの相違から、容易に理解できる。当然通常スタンパにおいても金型設定温度を高温に設定すれば、到達温度を高くかつ持続時間も長くすることは可能である。ただその設定は、タクトの延長と基板の機械特性すなわち平坦性の悪化(後述)を招く。つまり転写とは、「転写可能温度域」以上の温度とその持続時間を、どれだけ高くかつ長く持続できるかにより決定される。その意味で、断熱スタンパ使用時の到達表面温度と「転写可能温度域」の持続時間は、有効に機能する。
次に基板取出しにおいて金型表面温度は、「取出し可能温度域」以下にあることが要求される。図中に記述されているが、通常スタンパと断熱スタンパとでは金型の設定温度が異なる。これは、断熱スタンパでは自身の断熱機能による保温効果で、通常スタンパで成形する場合より低い温度に設定することが可能となるためである。これが基板の取出しにとって有効に機能する。通常スタンパでは転写を少しでも向上させるため、金型温度を「取出し可能温度域」の限界近傍に設定する。この設定では、金型温度と「取出し可能温度域」が近いため、「取出し可能温度域」に到達するまでより長い時間を要する。転写能力向上のため本来は「取出し可能温度域」以上に設定が望ましいが、それでは基板に十分な剛性が確保できず、基板取出し時に塑性変形を与えてしまう危険性を回避できない。これが機械特性の悪化を招く原因となる。一方断熱スタンパでは、金型の設定温度が「取出し可能温度域」より十分低く設定されているため、断熱効果が完了し温度が降下し始めると、一気に「取出し可能温度域」以下に到達する。このため通常スタンパより早いタイミングでの基板取出しが可能となった。この現象が、サイクル短縮として機能する。
従来型断熱スタンパでは、断熱層(4)をポリイミドなどの有機材料を前提にしているので、高温環境での機械的強度は無機材料に比べて、遥かに低い。このため、1次メッキ層(5)の厚みに下限値を設ける必要があった。最低30μm程度は必要とされる。光ディスクメディアの大容量化に伴い、基板品質確保のためには成形中の型締め力は増加せざるを得ないので、従来の構造では1次メッキ層(5)は厚くせざるを得ないという新たな問題点も浮上していた。
更に、断熱層(4)内部の気泡や異物混入は表面である1次メッキ層(5)に直接的に関与することも知られている。通常、メディアでは微細な凹凸や光学特性面でロ−カルな欠陥として認識される。スピンコ−ト方式で断熱層を形成する従来方式では、材料起因の微小なガス混入・残留や、プロセス環境起因の厚みの不均一性が発生しやすかった。
また、導電膜(3)の形成に先立ち、樹脂表面をイオンスパッタ等で粗す工程も必須であった。しかも条件がばらつくと樹脂表面にWBL層(Weak Boundary Layer)と呼ばれる脆化層が発生し、使用時の界面剥離を誘起することも知られている。
以上述べてきた如く従来型断熱スタンパは、異種材料の積層構造であるが故に、様々な細かい制約条件を解消しなければならなかった。しかし本発明による複合メッキ工法では、一貫した工法ですべて完了するため上述の諸々の制約条件から解放されており、欠陥問題でも大幅な改良効果が得られたものである。
電気メッキの浴組成は下記の構成を用いた。
スルファミン酸Ni水溶液(1モル/L),塩化Ni水溶液(0.2モル/L),硼酸(0.5モル/L)
スルファミン酸Ni(280g/L),塩化Ni(45g/L),硼酸(40g/L):ワット浴
PTFE及びポリイミドの微細粒子(10〜40g/L)を分散助剤と共に入れ、所定の時間をかけて混合撹拌ならびに空電解を行い、建浴を実施する。液温は、40℃を選択することができる。
電鋳条件は、通電の電流密度500〜1000A/m2 で行う。
特開2001−273685号公報(光ディスク基板成形用スタンパの製造装置及び製造方法)で開示された工程フローを図12に示した。
該工程中で、“5.サンスタンパ作製:1次メッキ/高分子層形成/導電化処理〈2〉/2次メッキ形成”が従来型断熱サンスタンパに関わる部分である。
製造装置としては、電鋳装置→(洗浄・乾燥)→樹脂調合装置→スピナー(樹脂塗布)→高温炉(樹脂キュアー)→エッチング装置(面粗し)→スパッタ装置(導電膜形成)→電鋳装置を使用している。
一方、参考例3では、電鋳装置1(Niメッキ浴および複合分散メッキ浴)のみで完結する。電力消費量として概算50%の削減が可能となった。
図13は、参考例4の説明図であり、図14は、本発明の実施例の説明図である。
図13の右のグラフは、断熱スタンパの表面側(成形材料と接する面)から裏面(金型に接する面)へ向かうに従って微粒子の分散密度(体積比率%)をプロットしたグラフである。本実施例では1次メッキ領域直下の部分では分散物質が低密度で分散し、分散領域の中心部に向かうに従ってその密度を高め、分散領域の中心部から裏面へ向かうに従い再び分散密度が低下して、最終的には純Niのみになるよう制御された例である。また、図14a)は、1次メッキ領域直下の部分では分散物質が高密度で分散し、裏面に向かうに従ってその密度を低下させ裏面は純Niのみになるよう制御された実施例である。一方、図14b)は、前述した図14a)の密度傾斜に加えて、分布領域の厚さも同時に傾斜させた(t1<t2<t3)実施例である。
これらの実施例、参考例は、断熱性も含め目的とする熱特性を得るために設計された傾斜構造である。例えば、図13と図14a)とでは、スタンパ表面の昇温速度に相違が出る。図14a)の構造の方が図13より急速に昇温する。転写すべきパターンにより急速な昇温を必要とする場合には図14a)の構造を採用し、複屈折等の光学特性の関係から比較的緩やかな昇温速度を求められる場合には図13の構造を採用する。このように要求される熱特性に応じて、分散物質の分散密度を制御する。また分布厚の制御は、以下の状況に適応される。成形品によっては、金型は比較的高温の環境で使用されることがある。このような場合は、金型母材内に分散する分散物質には耐熱性が求められ、結果として選択可能な分散物質は限定されてしまう。例えば、断熱機能だけに注目すれば高分子系の分散物質が望ましいが、金型が使用される環境が高温のため耐熱性に優れるセラミックス系の分散物質を採用せざるを得ないような場合である。この時、採用したセラミックス系分散物質の、金型母材に対する最大分散密度が十分に高められない場合には、高分子系の分散物質と同等の熱特性を得るために、その分散領域の分布厚を厚くして同等の熱特性を確保する。このように、選択できる分散物質が限定され、かつ十分な分散密度が確保できない場合には、所望の熱特性を確保するため分散領域の分布厚を制御する。
なお上記の分布厚さとは、分散物質が、ある所定の密度で存在する厚さ方向の領域幅を意味している。具体的には、例えば以下に記述した作製プロセスで、所定の分散密度で析出した厚さとなる。また、実施例で示している光ディスクのスタンパのような板状の金型(入れ子)では、断面を板厚方向に元素分析することで、ある一定の分散密度を有する領域の厚さを計測・把握することができる。
図15は、複合メッキ漕(T4)に3つのタンク(T1),(T2),(T3)を連結している。(T1)と(T3)にはスルファミン酸Ni電鋳液が格納されている。タンク(T2)には断熱性微粒子が所望の密度で分散されている。図中(P12)はワーク電極、(P1)はNiペレットを配置したアノードバック電極である。この対向する両電極間には電源(S)により電位勾配を形成させる。Niイオンならびに微粒子は該電気力線に従ってワーク表面に逐次、析出するものである。複合膜中への微粒子の取り込み量の制御は電流密度コントロ−ルにより実施される。本実施例では電流密度4A/dm2が極大点であることを確認して実施した。即ち、メッキ初期は1A/dm2から処理を開始し(Step1)、10秒後から4A/dm2で電析(Step2)を開始し、約30分経過後順次6A/dm2を経て10A/dm2でNi厚付けメッキ(Step3)を行った。
(Step1)ではバルブ(V11)・(V12)・(V31)・(V32)が開状態、(V21)・(V22)は閉状態である。(T1)と(T3)からスルファミン酸Ni液が導入され純Ni膜が形成される。次に(Step2)ではバルブ(V11)・(V12)・(V31)・(V32)を所定の開度にしながら(V21)・(V22)を全開にする。(T4)内の両電極間隙領域には微粒子分散浴が充満され複合メッキが進行する。所望の厚みと分散密度に至った後は、(Step3)として導入バルブ(V21)を閉じる。排出バルブ(V22)の流量を急増させ、(P12)と(P1)間隙部の微粒子密度を低下させる。図16(装置平面図)には2箇所(太字点線表示)の隔壁部材を配置した。この隔壁部材はnmオーダの無数の微小な貫通穴が形成されている。Niイオンは自由に通過可能であるが、例えば100nm以上の粒子は通過不能である性質を有する特殊な膜である。これにより、微粒子が他のタンク(T1)や(T3)に混入して、同タンクのNi液を汚染することがないようにしている。なお図示はしないが、(T2)タンクではレーザ式パーティクルカウンターで常に微粒子密度をモニターしている。そして、(T4)タンク内で消費された微粒子が所定の密度に維持されるよう、高密度微粒子分散液を適宜補充する構成をとっている。
以上のように、(T1),(T3)および(T2)から複合メッキ漕本体(T4)へ導入するメッキ液や析出時間の調整により、任意の分散密度および分散厚が得られる。つまり1つのメッキ漕中で、なおかつ一連の工程として所定の傾斜構造が得られるのである。更には、(T2)相当のタンクを増設すれば、複数の分散物質で分散領域を形成することも可能となる。
2 2次メッキ層
3 導電膜層
4 断熱樹脂層(ポリイミド層)
5 1次メッキ層
6 溶融成形樹脂
7 固定金型
8 複合材領域
P1 アノードバック電極
P12 ワーク電極
S 電源
T1 タンク
T2 タンク
T3 タンク
T4 複合メッキ漕
V11・V12 バルブの開状態
V21・V22 バルブの閉状態
V31・V32 バルブの開状態
Claims (7)
- キャビティー表面に転写パターンを有する成形用金型において、前記キャビティー表面近傍を金属材料のみで形成したキャビティー表面近傍領域と、該キャビティー表面近傍領域の下に設けられ、前記金属材料と該金属材料より低い熱伝導率を有する低熱伝導物質との複合領域と、該複合領域の下に設けられ、金属材料のみから成る対向領域とを有し、前記複合領域における前記金属材料と前記低熱伝導物質との構成比率が、前記キャビティー表面側から前記対向領域の方向に向かうに従い、前記低熱伝導物質の比率が低くなるように傾斜していることを特徴とする成形用金型。
- 前記金属材料と前記低熱伝導物質との複合領域は、微細粒子の前記低熱伝導物質が前記金属材料中に分散した状態で構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
- 前記低熱伝導物質が、耐熱性樹脂または耐熱性無機材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形用金型。
- 前記耐熱性樹脂が、フッ素系樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン、PFA:パーフロロアルコキシ樹脂、ETFE:テトラフオロエチレン、PVDF:ポリビニリデンフルオライド)微粒子、あるいは芳香族ポリイミド微粒子、芳香族ポリアミド微粒子、シリコン系樹脂の微粒子であることを特徴とする請求項3に記載の成形用金型。
- 前記耐熱性無機材料が、ジルコニア系あるいはアルミナ系、炭化珪素系、窒化珪素系であることを特徴とする請求項3に記載の成形用金型。
- 前記金属材料が、Niであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成形用金型。
- 前記成形金型が、光ディスクを製造するためのスタンパであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の成形用金型。
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