JP5478109B2 - 蓄光材配合成形品の製造方法、並びに蓄光材配合成形品 - Google Patents
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Description
熱硬化性樹脂からなる、FRP(繊維強化プラスチック)補強層、隠蔽層、蓄光配合層、透明層を順次成形して積層する繊維強化プラスチック、及びその製造方法(特許文献1)。
熱可塑性樹脂からなる、基体樹脂と、隠蔽層と、蓄光材配合樹脂層と、透明層とをそれぞれ押し出して圧延した後、それらを接着することにより積層する方法により得られる発光性複合シート(特許文献2)。
透明樹脂板に、模様層、蓄光材配合熱硬化性樹脂層、隠蔽層を順次積層する蓄光表示板の製造方法(特許文献3)。
熱硬化性樹脂からなる、蓄光材配合樹脂層、隠蔽層、補強層が形成された強化プラスチック成形品(特許文献4)。
また、特許文献2の発光性複合シートは熱可塑性樹脂からなるため、熱硬化性樹脂を用いたものと比較して熱や摩耗に対する耐久性が低い。そのため、床材等の摩擦の大きい場所に使用するには、その表面に硬質層を設ける必要がある。
また、特許文献3の蓄光機能を有する表示板及びその製造方法では、特許文献1と同様に複数層を順に積層していくため、その成形に長時間を要する。
また、特許文献1〜4の方法はいずれも、成形品の中で蓄光材を有する模様を局所的に形成する場合、マスキングや版の必要なスクリーン印刷等で対応する必要があり、コストが嵩むことが懸念される。
また、積層や吹付による製造方法は、樹脂中の気泡が抜けきらずに、成形品表面に穴が空くピンホール不良が生じることもある。
[1] 未硬化であり可視光線透過性が5%以上の熱硬化性樹脂に硬化剤と前記熱硬化性樹脂に比べて比重の大きな蓄光材を配合したものを第1のフィルム上に載置し、第2のフィルムを押し当てて前記熱硬化性樹脂を前記第1のフィルム上に押し広げ、前記各々のフィルムで挟まれたシート状の樹脂シートを得る樹脂シート製造工程と、
前記熱硬化性樹脂に配合された前記蓄光材を一方のフィルム側に沈降させ、前記熱硬化性樹脂の内部において前記蓄光材が沈降した蓄光材部とその反対側に透明樹脂部を形成する工程と、
前記樹脂シートを加熱して半硬化させ前記蓄光材が沈降した状態を維持する半硬化工程と、により製造された蓄光材配合半硬化樹脂シートを用意し、
前記蓄光材配合半硬化樹脂シートの各々のフィルムの内少なくとも前記蓄光材部側のフィルムを除去し前記蓄光材部側に熱硬化性繊維強化成形材料を配置し、成形型にて加熱加圧成形して一体化することを特徴とする蓄光材配合成形品の製造方法。
[2] 前記第2のフィルムの前記熱硬化性樹脂に押し当てるフィルム面に、予め前記熱硬化性樹脂に接合可能なインキにより模様層を形成し、前記樹脂シートを半硬化すると共に前記模様層を前記樹脂シートの表面に転写する、[1]に記載の蓄光材配合成形品の製造方法。
[3] 前記蓄光材配合半硬化樹脂シートを所定の形状に切断し、その切断した蓄光材配合半硬化樹脂シートと、熱硬化性繊維強化成形材料とを、成形型にて加熱加圧成形して一体化する[1]又は[2]に記載の蓄光材配合成形品の製造方法。
[4] 前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の蓄光材配合成形品の製造方法により製造された蓄光材配合成形品。
また、本発明の蓄光材配合樹脂シートの製造方法は、前記蓄光材配合成形品の製造方法に好適に使用できる蓄光材配合樹脂シートを製造できる。
また、本発明の蓄光材配合成形品は、摩耗への耐久性に優れている。
以下、本成形品の製造方法について実施形態の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態の本成形品の製造方法は、図1(A)及び(B)に示すように、本半硬化物10Aと、本成形材料20とを成形型50の下型52に載置し、成形型50により加熱加圧成形することにより一体化する方法である。
この成形型50による加熱加圧成形により、本半硬化物10Aが硬化して形成される蓄光部30Aと、本成形材料20が硬化して形成される補強部40とを有する本成形品1が得られる(図2)。
熱硬化性樹脂は、蓄光材を配合した成形品の製造に通常用いられるものを使用することができ、例えば、透明又は半透明の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂が挙げられる。
ここで、透明とは、可視光線透過性が70%以上であることを意味する。また、半透明とは、可視光線透過性が5%以上70%未満であることを意味する。樹脂膜厚により可視光線透過性は変化するため、目的の樹脂膜厚において前記条件を満たすものを指す。
蓄光材12としては、例えば、蓄光顔料単体からなる蓄光材、蓄光顔料の表面にガラスや樹脂等を被覆したビーズ状の蓄光材、前記蓄光顔料単体からなる蓄光材とビーズ状の蓄光材とが混合された蓄光材、熱硬化性樹脂に蓄光顔料を配合して硬化させたものを粉砕したもの等、蓄光顔料が配合された物質が挙げられる。
硫化物系の蓄光顔料としては、例えば、硫化カルシウム/ビスマス系(CaS/Bi)、硫化カルシウム・ストロンチウム/ビスマス系((Ca,Sr)S/Bi)、硫化亜鉛/銅系(ZnS/Cu)、硫化亜鉛・カドミウム/銅系((Zn,Cd)S/Cu)が挙げられる。
酸化物系の蓄光顔料としては、例えば、アルミナ、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化セリウム等の金属酸化物と、Eu(ユウロピウム)、Dy(ディスプロシウム)、Lu(ルテチウム)、Tb(テルビウム)等の希土類元素との混合物を焼成してなるものが挙げられる。
蓄光顔料としては、環境面に加え、蓄光輝度及び蓄光時間等の蓄光性能に優れている点から、酸化物系が好ましい。
シランカップリング剤は、蓄光材12表面を処理するタイプと、熱硬化性樹脂に蓄光材12と共に配合しておくタイプとがあり、どちらでも使用できる。
蓄光材12の平均粒径は、1μm〜10mmが好ましく、10μm〜5mmがより好ましい。蓄光材12の平均粒径が1μm以上であれば、充分な燐光輝度が得られやすい。また、蓄光材12の平均粒径が10mm以下であれば、蓄光材12を熱硬化性樹脂に分散、混合する際に蓄光材12が破壊する等の取り扱い上の問題が生じることを抑制しやすい。
ここで、蓄光材12の平均粒径とは、各々の蓄光材12の最長径の数平均を意味する。
充填材としては、例えば、ガラスビーズ、シリカ等が挙げられる。充填材は、半硬化樹脂層11中の蓄光材12に到達する光量が多くなる点から、透明なものが好ましい。
充填材の配合量は、熱硬化性樹脂に対する蓄光材12の前記好ましい配合量の上限値(300質量部)から、実際に配合する蓄光材12の量を差し引いた減量体積分に相当する量が好ましい。例えば、熱硬化性樹脂に配合する蓄光材12を250質量部とする場合、50質量部の蓄光材12が有する体積と同等の体積を有する充填材量を配合することが好ましい。
このように、熱硬化性樹脂の比率を低下させすぎないように充填材を配合することにより、硬化収縮によって本成形品に変形や割れが生じることを抑制しやすくなる。また、加熱加圧成形時に、本半硬化物の発熱による温度上昇によって成形型が劣化したり、変形したりすることも抑制しやすくなる。
また、本半硬化物10Aの製造における熱硬化性樹脂の半硬化では、熱硬化性樹脂に配合した硬化剤の全てを消費しないようにする。すなわち、半硬化した本半硬化物10A中に硬化剤が残存するようにする。そして、成形型50による本半硬化物10Aと本成形材料20の加熱加圧成形において、残存する硬化剤により本半硬化物10Aを完全に硬化する。そのため、有機過酸化物は、後述する本半硬化物10Aと本成形材料20の加熱加圧成形の条件も考慮して選択する。
有機過酸化物の10時間半減期温度が90℃以上であれば、本半硬化物10Aと本成形材料20とを加熱加圧成形する際、高温の成形型50に本半硬化物10Aを載置した直後に本半硬化物10Aに含まれる残存分の硬化剤が熱による分解作用を受けて本半硬化物10Aの硬化反応が進行し、硬化速度が速くなって加熱加圧成形の初期に本半硬化物10Aが硬くなりすぎることを防止しやすい。これにより、成形型50の表面に凹凸、艶消し形状等の形状を設けている場合に、本半硬化物10Aの成形型50表面の形状への追随性が向上し、所望の表面形状を付与した本成形品1が得られやすくなる。
また、有機過酸化物の10時間半減期温度が130℃以下であれば、本半硬化物10Aと本成形材料20とを加熱加圧成形する際、所定の成形時間内に本半硬化物10Aを完全に硬化させることが容易になるため生産性が向上し、また強度、耐水性等の性能に優れた本成形品1が得られやすくなる。
有機過酸化物の具体例としては、例えば、商品名「パーロイルTCP」、「パーブチルE」(以上、日本油脂社製)が挙げられる。
また、促進剤としてコバルトを使用すると、硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パーメックN)が使用でき、この場合常温でも硬化することが可能である。
本半硬化物10Aの硬化度は、60〜90%が好ましい。本半硬化物10Aの硬化度が60%以上であれば、本半硬化物10Aがその形状を保持し、表面がべとつかず、本成形材料20と共に加熱加圧成形を行う時に成形型50から流出したり、クラック破壊が起きたりしない程度の強度が得られやすい。また、本半硬化物10Aの硬化度が90%以下であれば、加熱加圧成形による硬化によって本成形材料20と結合するための反応基が充分に残存しており、また加熱加圧成形においてクラック破壊が起きない程度の柔軟性が得られやすい。
ただし、硬化剤と共に促進剤としてコバルトを使用すれば、硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイドを使用することにより、常温で硬化反応を行うこともできる。
例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して硬化剤としてパーロイルTCPを1質量部使用する場合、60〜80℃で20〜60分加熱することにより、該熱硬化性樹脂を硬化度60〜90%で半硬化した本半硬化物を得ることができる。
方法(1):硬化剤、蓄光材及び必要に応じて充填材(以下、これらをまとめて「硬化剤等」という。)を配合した熱硬化性樹脂を凹型に流し込み、該熱硬化性樹脂を半硬化した後に脱型する方法。
方法(2):スプレー等により、硬化剤等を配合した熱硬化性樹脂からなる樹脂膜を型上に成膜し、半硬化した後に脱型する方法。
方法(3):硬化剤等を配合した熱硬化性樹脂をフィルム等で挟み込み、シート状に半硬化した後にフィルム等を除去する方法。
方法(4):プリプレグ状態の熱硬化性樹脂に硬化剤等を配合して加熱成形する方法。
前記方法(1)〜(4)のなかでも、方法(3)が好ましい。方法(3)によれば、蓄光材配合半硬化樹脂シート(以下、「本半硬化シート」という。)を容易に製造することができる。本半硬化シートとは、本半硬化物のうち、特にシート状に形成されたものを意味する。
樹脂シート製造工程では、第1のフィルム61上に、硬化剤及び蓄光材12を配合した未硬化の熱硬化性樹脂11aを載置し(図4(A))、ローラ63により第2のフィルム62を押し当てて熱硬化性樹脂11aを押し広げ(図4(B))、シート状の熱硬化性樹脂11a(樹脂シート)を第1のフィルム61と第2のフィルム62で挟んだ状態とする(図4(C))。ただし、熱硬化性樹脂11aを押し広げる方法は、ローラ63を用いる方法には限定されない。
半硬化工程では、第1のフィルム61と第2のフィルム62に挟まれた状態でシート状に押し広げられた熱硬化性樹脂11aを加熱して半硬化する。これにより、第1のフィルム61と第2のフィルム62に挟まれたシート状の本半硬化物10A(本半硬化シート)が得られる(図4(D))。
また、前記方法では、第2のフィルム62を押し当てながら熱硬化性樹脂11aを押し広げていくことにより、熱硬化性樹脂11aに含まれている気泡を除くことができる。これにより、硬化時にピンホール等が発生することを低減できる。
特に、図4(B)に示すように、熱硬化性樹脂11aの一方の端部から第2のフィルム62を押し当てていき、熱硬化性樹脂11aを一方向に押し広げていく方法が、簡便かつ高効率に気泡の除去が行えるために好ましい。熱硬化性樹脂11aを押し広げる方法は、第1のフィルム61の中央部に熱硬化性樹脂11aを載置し、該熱硬化性樹脂11aの中央部から放射状に複数回にわたって押し広げる方法であってもよい。
第1のフィルム61の厚さは、10〜100μmであることが好ましい。
第2のフィルム62の厚さは、取り扱い性、コスト、及び熱硬化性樹脂を均一に延伸することが容易である点などから、10〜100μmであることが好ましい。
本半硬化シートの厚みを調整することで、蓄光部30Aからの発光量を調整することができ、また最低限必要な蓄光材量で広い面積の発光を実現することもでき、歩留まりも良好になる。蓄光材の添加量はコストと輝度により選定される。
また、1000μm以下のシート状の本半硬化物10A(本半硬化シート)であれば、所望の形状に切断することが容易になる。そのため、フィルムで挟んだ状態で本半硬化シートを保存しておき、使用時に所望の形状に切断して用いることで、所望の形状の蓄光部30Aを有する本成形品1を簡便かつ高効率に生産できる。
また、隠蔽層は、本成形品1において蓄光部30Aの蓄光材12からの燐光が反射して燐光輝度が向上する点から、白色が好ましい。
また、本半硬化物10Aに隠蔽層を形成せずに、本半硬化物10Aと一体化する本成形材料20に所望のトナー等を混入させ、本成形材料20が硬化して形成される補強部40自体を隠蔽色としてもよい。
例えば、本成形材料20の使用量は、本半硬化物10Aに対して体積比で0.2〜150とすることができるが、成形品形状や用途により、限度はない。
本実施形態の成形型1は、図1に示すように、上型51と下型52とを有する。成形型50のような密閉系で加熱加圧成形が行える成形型は、本半硬化物10Aや本成形材料20に含まれる溶剤が成形中に揮発して拡散し、環境に悪影響を与えることを抑制しやすい点で好ましい。
成形型50の形状、寸法は、特に限定されず、所望の形状及び寸法の本成形品1が得られるものであればよい。また、成形型50の内面、すなわち成形型50における半硬化物10A及び本成形材料20と接触する面には、凹凸形状が形成されていてもよい。これにより、本成形品1の表面に前記凹凸形状に対応する形状を付与することができる。
また、成形型も前記成形型50には限定されない。例えば、本半硬化物10Aが本半硬化シートであり、シート状の本成形品1を製造する場合には、成形型として平型を用いることが好ましい。また、一つの型上に別の型を重ねた成形型を使用することもでき、例えば、第1の型である鉄板上に、第2の型として凹凸フィルムを載置したものを成形型としてもよい。この場合、フィルムの凹凸形状が表面に付与された本成形品1が得られる。
本実施形態の本成形品の製造方法は、図6に示す本半硬化物10Bと本成形材料20とを一体化する方法である。本実施形態の製造方法は、本半硬化物10Bを用いる以外は第1実施形態と同じ方法を用いることができ、好ましい態様も同じである。本半硬化物10Bにおいて本半硬化物10Aと同じ部分については同符号を付して説明を省略する。
本半硬化物10Bは、図6(A)に示すように、半硬化樹脂層11と、蓄光材12と、模様層13とを有する。本半硬化物10Bは、模様層13を有する以外は本半硬化物10Aと同じであり、好ましい態様も同じである。
模様層13の模様は特に限定されず、用途に応じて任意の模様を選定することができ、この例では雪の結晶絵柄が浮き出る模様である(図6(B))。模様層13は、雪の結晶絵柄以外の部分を、光を遮断するインキで形成しており、蓄光材12からの燐光により雪の結晶絵柄が見えるようになっている。
方法(3)では、模様層13を形成する場合、第1のフィルム61上に、硬化剤及び蓄光材12を配合した未硬化の熱硬化性樹脂11aを載置し(図8(A))、熱硬化性樹脂11aに押し当てるフィルム面62aに、熱硬化性樹脂11aに接合可能なインキにより模様層13を形成した第2のフィルム62を用いて熱硬化性樹脂11aを押し広げ(図8(B))、シート状の熱硬化性樹脂11a(樹脂シート)を第1のフィルム61と第2のフィルム62で挟んだ状態とする(図8(C))。そして、この状態で熱硬化性樹脂11aを半硬化する。
フィルム面62aに形成された模様層13が押し付けられた状態で熱硬化性樹脂11aを半硬化することにより、半硬化とともに模様層13が熱硬化性樹脂11a側に転写され、表面11cに模様層13を有する本半硬化物10B(本半硬化シート)が得られる(図6(A)及び図8(D))。
前記インキを用いることにより、半硬化する際、該インキによりフィルム面62aに形成した模様層13と熱硬化性樹脂11aとが接合しながら硬化し、半硬化樹脂層11の表面11c部分に模様層13が固定されることで転写が行われる。
また、第1実施形態と同様に、半硬化樹脂層11の表面11bに隠蔽層を設け、本成形品2の蓄光部30Bの内面30aに隠蔽層を形成してもよく、隠蔽層を設けずに補強部40自体を隠蔽色にしてもよい。
本実施形態の本成形品の製造方法は、図9に示す本半硬化物10Cと本成形材料20とを一体化する方法である。本実施形態の製造方法は、本半硬化物10Cを用いる以外は第1実施形態と同じ方法を用いることができ、好ましい態様も同じである。本半硬化物10Cにおいて本半硬化物10Aと同じ部分については同符号を付して説明を省略する。
本半硬化物10Cは、図9(A)に示すように、半硬化樹脂層11と、蓄光材12と、透明半硬化樹脂層14とを有する。本半硬化物10Cは、透明半硬化樹脂層14を有する以外は本半硬化物10Aと同じである。
透明半硬化樹脂層14を形成する熱硬化性樹脂としては、例えば、透明又は半透明の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。透明半硬化樹脂層14の形成に使用する熱硬化性樹脂は、半硬化樹脂層11と透明半硬化樹脂層14の接着性の点から、半硬化樹脂層11の形成に使用する熱硬化性樹脂と同じ樹脂か、共通する成分を有する樹脂を用いることが好ましい。
透明半硬化樹脂層14は、硬化度が60〜90%であることが好ましい。これにより、本成形材料20との加熱加圧成形において、本半硬化物10Cと本成形材料20との接着性が向上するうえ、半硬化樹脂層11と透明半硬化樹脂層14との接着性も向上する。
また、方法(3)により、両面をフィルムで挟まれた本半硬化シート10Aを製造し(図4(D))、第2のフィルム62を剥離して、半硬化樹脂層11上に透明で未硬化の熱硬化性樹脂を載置し、該熱硬化性樹脂をローラ等により押し広げた後に半硬化することにより透明半硬化樹脂層14を形成する方法であってもよい。
本成形品3を耐摩耗性を有する部品として使用する場合、本成形品3の透明又は半透明の透明樹脂層32は、JIS K7204プラスチック−摩耗輪による摩耗試験方法(準拠)において、摩耗輪CS17使用、荷重1kg載荷、摩耗輪1000回転(70回転/min(周波数60Hz))における摩耗量が、100mg以下であることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂に接着可能な樹脂シートを方法(3)における第2のフィルム62の代わりに使用し、該樹脂シートをそのまま剥離せずに用いて透明樹脂層32としてもよい。
また、第1実施形態と同様に、半硬化樹脂層11の表面11bに隠蔽層を設け、本成形品3の蓄光部30Cの内面30aに隠蔽層を形成してもよく、隠蔽層を設けずに補強部40自体を隠蔽色にしてもよい。
本実施形態の本成形品の製造方法は、図11に示す本半硬化物10Dと本成形材料20とを一体化する方法である。本実施形態の製造方法は、本半硬化物10Dを用いる以外は第1実施形態と同じ方法を用いることができ、好ましい態様も同じである。本半硬化物10Dにおいて本半硬化物10Aと同じ部分については同符号を付して説明を省略する。
本半硬化物10Dは、図11(A)に示すように、半硬化樹脂層11と、蓄光材12とを有する。また、本半硬化物10Dの半硬化樹脂層11内は、蓄光材12が存在する蓄光材部15と、蓄光材12が存在しない透明樹脂部16とに分かれている。
具体的には、熱硬化性樹脂に蓄光材12を配合した後、一定時間静置、又は揺動等による振動を付加することにより蓄光材12を沈降させ、その後に熱硬化性樹脂を半硬化することにより、表面に透明樹脂部16を形成することができる。
また、温度に対して粘度変化が大きい熱硬化性樹脂を使用する場合は、硬化剤の種類及び量を選定することにより、熱硬化性樹脂を加熱したときに、樹脂粘度が低くなって蓄光材12の沈降が完了した後に硬化反応が進行するようにすることもできる。
また、方法(3)によりシート状の本半硬化物10D(本半硬化シート)を製造する場合は、蓄光材を配合した熱硬化性樹脂をフィルム間に挟んでシート状にした後に、前記と同様の方法で蓄光材を沈降させて半硬化を行うことができる。
増粘剤としては、例えば、シリカ、ガラス等からなる粉末状のものが挙げられる。
本成形品4は、硬化樹脂層31内に蓄光材12が存在しない透明樹脂部33が形成されているため、本成形品3と同様に、蓄光材12が蓄光部30Dの表面30bに露出して磨耗により劣化することを防止することができ、耐久性がより優れている。また、蓄光材12が水と接触することを防止できるため、本成形品4は水に対する耐久性も高くなる。
また、第1実施形態と同様に、半硬化樹脂層11の表面11bに隠蔽層を設け、本成形品4の蓄光部30Dの内面30aに隠蔽層を形成してもよく、隠蔽層を設けずに補強部40自体を隠蔽色にしてもよい。
本成形品の製造方法では、前述の方法には限定されない。例えば、模様層と透明半硬化樹脂層の両方を形成した本半硬化物を用いる方法であってもよい。この場合、半硬化樹脂層11上に模様層を形成し、該模様層上に透明半硬化樹脂層を形成してもよく、半硬化樹脂層11上に透明半硬化樹脂層を形成し、該透明半硬化樹脂層上に模様層を形成してもよい。
また、第2実施形態において、加熱加圧成形時に成形型50に載置する本半硬化物10Bの向きを逆にし、蓄光部30Bの内面30a側に模様層13を形成してもよい。
複数の本半硬化物を積層する場合、本成形品の内部側の蓄光部部分となる本半硬化物は、有色不透明の熱硬化性樹脂を半硬化した半硬化物であってもよい。例えば、下型12上に本半硬化物10Aを載置し、該本半硬化物10A上に有色不透明の熱硬化性樹脂を半硬化した半硬化物を載置し、該半硬化物上に本成形材料20を載置し、加熱加圧成形によりそれらを一体化してもよい。これにより、蓄光材が配合された蓄光部の内部側に、隠蔽層となる有色不透明の硬化樹脂層が形成された本成形品が得られる。
例えば、方法(3)により製造した模様層が形成された本半硬化シートのフィルムを剥がし、その半硬化樹脂層の表面に、蓄光材が配合されていない透明又は半透明の未硬化樹脂を塊状に載置し、所望の色の転写フィルム、又は前記模様層とは別の模様層が形成されたフィルムにより前記未硬化樹脂を押し広げて半硬化する工程を繰返し行うことで、模様を多層化することができる。さらに、この模様の多層化を、透明、半透明、有色不透明の半硬化樹脂層を多層化しながら行うことで、模様に立体感、鮮明感、隠蔽効果を持たせてもよい。前記転写フィルムとしては、無地、柄入り、有色不透明インキ付きのもの等が使用できる。
本半硬化シート(i):加熱加圧成形時に本成形材料と接触させる面に模様層を形成した本半硬化シート(本成形品としたとき、蓄光部の内部側に模様層が形成される。該模様層又は補強部の色が蓄光部の背景色となる。)
本半硬化シート(ii):本半硬化シート(i)の模様層が形成されていない側に、さらにインキを有さないフィルムで形成した透明半硬化樹脂層を積層したもの(本成形品としたとき、模様層又は補強部の色が背景色となり、蓄光部に透明樹脂層が形成される。)。
本半硬化シート(iii):本半硬化シート(i)の模様層上に、有色不透明な半硬化樹脂層を形成したもの(本成形品としたとき、補強部の色に左右されず、有色不透明な硬化樹脂層を背景色にして隠蔽効果を持たせる。)。
本半硬化シート(iv):本半硬化シート(i)の模様層上に、表面に有色不透明インキを付与した透明半硬化樹脂層を形成したもの(本成形品としたとき、透明樹脂層で立体感を持たせつつ、有色不透明インキで隠蔽効果を持たせる。)。
前記繊維の材質は特に制限はなく、例えば、ガラス、金属等の無機材質、紙類、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニロン等の有機材質等がある。前記繊維は、含浸させる樹脂の種類により選択する材質も異なるが、含浸させる樹脂がポリエステル樹脂の場合は、接着性や取り扱い性の点から、表面処理を施したガラス繊維が好ましい。また、前記繊維としては、マット状やシート状のものが好ましい。
繊維の形態は、特に限定されず、例えば、切断した繊維をバインダ等でつなぎ合わせた不織布として、フェルト状、マット状等がある。また、繊維を織った織布としては、例えば、平織り、綾織り等が挙げられる。
また、方法(3)は、型の占有がないため生産性が高く、またフィルムで覆うため作業時及び保管時において溶剤揮散等による環境への影響が低減される。
また、蓄光部に柄を作製しようとする場合は、本半硬化シートを任意の形状に切断して加熱加圧成形に用いることで、容易に所望の形状の蓄光部を形成できる。
また、本成形品は、本半硬化物が加熱加圧成形にて本成形材料と反応するため蓄光部と補強部の密着性が良好であり、また蓄光部は熱硬化性樹脂を硬化させた表面を有するため、硬度が高く耐摩耗性に優れており、配合された蓄光材が破損したり劣化したりし難い。また、表面に透明樹脂層が設けられることで摩耗や水等への耐久性がさらに向上する。そのため、床材等の耐摩耗性の要求される材料への適用も可能となる。
[実施例1]
熱硬化性樹脂11aである25℃の透明な未硬化のサンドーマ3717(商品名、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂ディー・エイチ・マテリアル社製)100質量部に、予め硬化剤としてパーロイルTCP(商品名、日本油脂社製)1質量部、蓄光材12であるルミノーバ(商品名、根本特殊化学社製)100質量部を配合したものを、縦150mm×横500mm×深さ5mmの矢印型の凹部54を有する金属製の凹型53に流し込んだ(図5(A)及び(B))。その後、5分間静置し、熱硬化性樹脂に比べて比重の大きい蓄光材12を沈降させ、次いでこれを70℃の硬化炉へ投入して30分間の硬化反応を行った後、硬化炉より取り出して脱型することにより、同一層内に蓄光材部15と透明樹脂部16を有する、縦150mm×横500mm×厚み5mmの矢印形状の本半硬化シート(本半硬化物10D)(図11(A))を得た。
その後、成形型50を開いて脱型することにより、矢印形状で、表面に透明樹脂部33が形成された蓄光部30Dを有する本成形品4を得た(図11(B))。
得られた本成形品4にはピンホール不良は生じていなかった。
熱硬化性樹脂11aである前記未硬化のサンドーマ3717(商品名、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、ディー・エイチ・マテリアル社製)100質量部に、硬化剤としてパーロイルTCP(商品名、日本油脂社製)1質量部、蓄光材12としてルミノーバ(商品名、根本特殊化学社製)100質量部を配合したものを、厚さ50μmのポリエステルフィルムからなる第1のフィルム61(ベースフィルム)の表面上の一端部に塊状に載置した(図8(A))。また、雪の結晶柄の模様層13(図6(B))を前記熱硬化性樹脂11aに接合可能なインキ(不飽和ポリエステル樹脂に顔料を混合したもの)によりフィルム面62aに形成した厚さ25μmの第2のフィルム62(ポリエステルフィルム;大日本印刷社製)を用意した。第2のフィルム62の端部側のフィルム面62aを塊状の熱硬化性樹脂11aに押し付け、ローラ63により第2のフィルム62を一方向に押し当てて熱硬化性樹脂11aを押し広げ(図8(B))、第2のフィルム62を重ね合せた状態にした(図8(C))。
次に、押し広げた熱硬化性樹脂11aを、フィルムで挟んだ状態のまま、60℃に保持した硬化炉内に60分間静置して硬化反応を進めて半硬化状態とした(図8(D))。この後、第1のフィルム61と第2のフィルム62を剥がしたところ、表面11aに雪の結晶絵柄の模様層13が形成された半硬化状態の本半硬化シート(本半硬化物10B)が得られた(図6(A)及び(B))。得られた本半硬化シートは、表面にべとつきがなく、また柔軟性があり、シート形状が保持されており、取扱いも容易であった。
得られた本成形品2にはピンホール不良は生じていなかった。
模様層13の代わりに、グレーの濃淡からなる柄の模様層17(図12(A))が形成された第2のフィルム62を用いた以外は、実施例2と同様にして本半硬化シートを製造し、さらに実施例2と同様にして加熱加圧成形を行い、模様層17が設けられた蓄光部30及び補強部40を有する本成形品5を得た(図12(B)及び(C))。得られた本成形品5は、蓄光材の量を部分的には変更していないが、模様層17により、成形品表面から見て輝度が異なって見えるものであった。
得られた本成形品5にはピンホール不良は生じていなかった。
平滑なベース型71上に厚み50μmのポリエステルフィルム72を載置し、ベース型71とポリエステルフィルム72を両面テープで貼り付けて固定した(図13(A))。
次に、前記ポリエステルフィルム72の一端部に、硬化剤としてパーロイルTCP(商品名、日本油脂社製)0.5質量部、パーブチルE(商品名、日本油脂社製)0.5質量部を、熱硬化性樹脂14aである透明で未硬化のサンドーマ3717(商品名、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、ディー・エイチ・マテリアル社製)100質量部に配合したものを塊状に載置した(図13(B))。
次いで、コーター73により、0.3mmの厚みの熱硬化性樹脂膜14aを形成した(図13(C)及び(D))。次いで、これをベース型71ごと硬化炉へ投入し、温度60℃で60分間硬化反応を行った。硬化時間が完了した時点で硬化炉より取り出し、ポリエステルフィルム72上に0.3mm厚の半硬化状態の透明半硬化樹脂層14を形成した。
切り出したシートを、透明半硬化樹脂層14側を下型52側に向けて下型52上に配置し、本成形材料20であるSMC20質量部を載置し(図10(A))、成形型50を閉め、上型51を130℃、下型52を140℃として、圧力100kgf/cm2で加熱加圧成形を5分間行い(図10(B))、表面に透明樹脂層32が形成された所望の形状の蓄光部30Cを有する本成形品3(図9(B))を得た。
得られた2種類の本成形品3にはいずれもピンホール不良は生じていなかった。
Claims (4)
- 未硬化であり可視光線透過性が5%以上の熱硬化性樹脂に硬化剤と前記熱硬化性樹脂に比べて比重の大きな蓄光材を配合したものを第1のフィルム上に載置し、第2のフィルムを押し当てて前記熱硬化性樹脂を前記第1のフィルム上に押し広げ、前記各々のフィルムで挟まれたシート状の樹脂シートを得る樹脂シート製造工程と、
前記熱硬化性樹脂に配合された前記蓄光材を一方のフィルム側に沈降させ、前記熱硬化性樹脂の内部において前記蓄光材が沈降した蓄光材部とその反対側に透明樹脂部を形成する工程と、
前記樹脂シートを加熱して半硬化させ前記蓄光材が沈降した状態を維持する半硬化工程と、により製造された蓄光材配合半硬化樹脂シートを用意し、
前記蓄光材配合半硬化樹脂シートの各々のフィルムの内少なくとも前記蓄光材部側のフィルムを除去し前記蓄光材部側に熱硬化性繊維強化成形材料を配置し、成形型にて加熱加圧成形して一体化することを特徴とする蓄光材配合成形品の製造方法。 - 前記第2のフィルムの前記熱硬化性樹脂に押し当てるフィルム面に、予め前記熱硬化性樹脂に接合可能なインキにより模様層を形成し、前記樹脂シートを半硬化すると共に前記模様層を前記樹脂シートの表面に転写する、請求項1に記載の蓄光材配合成形品の製造方法。
- 前記蓄光材配合半硬化樹脂シートを所定の形状に切断し、その切断した蓄光材配合半硬化樹脂シートと、熱硬化性繊維強化成形材料とを、成形型にて加熱加圧成形して一体化する請求項1又は2に記載の蓄光材配合成形品の製造方法。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の蓄光材配合成形品の製造方法により製造された蓄光材配合成形品。
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