実施の形態1
ここでは、SOI(Silicon On Insulator)構造のnチャネル型の横型IGBTについて説明する。図1および図2に示すように、シリコンの支持基板2の上に埋め込み酸化膜3を介在させてN-エピタキシャル層4が形成されている。そのN-エピタキシャル層4の所定の領域(素子形成領域)を取り囲むように、トレンチ分離絶縁膜5aが形成されている。トレンチ分離絶縁膜5aは、N-エピタキシャル層4の表面から埋め込み酸化膜3にまで達するように形成されている。
その素子形成領域にnチャネル型の横型IGBT10が形成されている。素子形成領域の中央付近には、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、横型IGBT10のコレクタ領域としてのP+拡散層14が形成されている。P+拡散層14とN-エピタキシャル層4との接合面はpn接合面となる。そのP+拡散層14を周方向から取り囲むように、N-エピタキシャル層4の表面にLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜5bが形成されている。
素子形成領域の外周には、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、横型IGBTのエミッタ領域としてのN+拡散層13が形成されている。また、N+拡散層13と隣接するように、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりP+拡散層12が形成されている。N+拡散層13とP+拡散層12は、P+拡散層14およびLOCOS酸化膜5bを周方向から取り囲むように形成されている。
そのN+拡散層13とP+拡散層12を側方と下方から取り囲むように、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりpベース11が形成されている。pベース11は、LOCOS酸化膜5bとの間にN-エピタキシャル層4の表面が露出するように、トレンチ分離絶縁膜5aの内壁面に沿って形成されている。こうして、P+拡散層12とエミッタ領域としてのN+拡散層13は、pベース11を介在させてN-エピタキシャル層4とは隔てられている。
N+拡散層13とN-エピタキシャル層4とによって挟まれたpベース11の領域上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極15が形成されている。ゲート電極15は、そのpベース11の領域からN-エピタキシャル層4の領域を経てLOCOS酸化膜5bの外周部分を覆うように形成されている。
素子形成領域のN-エピタキシャル層4およびフィールド絶縁膜5bを覆うように、層間絶縁膜110が形成されている。その層間絶縁膜110の上には、P+拡散層14と電気的に接続されるコレクタ電極17が形成されている。また、N+拡散層13およびP+拡散層14と電気的に接続されるエミッタ電極16が形成されている。
そして、このnチャネル型の横型IGBT10では、N-エピタキシャル層4とはpベース11を介在させて隔てられているP+拡散層12と、エミッタ領域としてのN+拡散層13とには、金属シリサイド層9aが形成されている。一方、N-エピタキシャル層4との接合面がpn接合面となるコレクタ領域としてのP+拡散層14には、金属シリサイド層は形成されていない。本実施の形態に係る横型IGBT10は、以上のように構成される。
この横型IGBT10では、ゲート電極15に所定のしきい値電圧以上の電圧を印加することにより、ゲート電極15の直下に位置するpベース11の領域にチャネルが形成されて、エミッタ領域としてのN+拡散層13からチャネルを経て、N-エピタキシャル層4へ電子が注入される。N-エピタキシャル層4に電子が注入されて蓄積されると、コレクタ領域としてのP+拡散層14とN-エピタキシャル層4とのpn接合面に順方向にバイアスが作用して、P+拡散層14からN-エピタキシャル層4へ、少数キャリアとしてのホール(正孔)が注入される。これにより、N-エピタキシャル層4では、電導度変調と称される現象が生じてN-エピタキシャル層4の抵抗値が下がり、N+拡散層(エミッタ領域)13とP+拡散層(コレクタ領域)14との間の導通が可能なオン状態になる。
上述した横型IGBT10では、P+拡散層(コレクタ領域)14に金属シリサイド層が形成されていない。これにより、コレクタ領域に金属シリサイド層が形成されている場合と比較して次のような効果が得られる。
まず、P+拡散層14からpn接合面を介してN-エピタキシャル層4に注入される正孔(少数キャリア)は、ライフタイムに応じて減衰する。N-エピタキシャル層4では、正孔が減衰するまで少数キャリアと多数キャリア(電子)が存在して電気的に中和状態となり、電導度変調が発現してN-エピタキシャル層4の抵抗が極めて低い状態となる。
横型IGBTにおいて、P+拡散層(コレクタ領域)に金属シリサイド層が形成されると、金属シリサイド層の応力に起因して、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層の領域に結晶欠陥が発生しやすくなる。このような結晶欠陥等が存在すると、pn接合面を介してN-エピタキシャル層に注入される正孔のライフタイムが短くなって、正孔はより早く減衰することになる。
このため、N-エピタキシャル層において、電導度変調が発現する領域の割合が低くなる一方で、N-エピタキシャル層が抵抗として作用する領域の割合が高くなる。その結果、P+拡散層(コレクタ領域)を流れるコレクタ電流が下がり、横型IGBTとしての電流駆動能力が低下することになる。
これに対して、上述した横型IGBTでは、P+拡散層(コレクタ領域)14に金属シリサイド層を形成しないため、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層の領域に結晶欠陥が発生することはなく、pn接合面を介して注入された少数キャリアのライフタイムが短くなるのが阻止される。また、N+拡散層(エミッタ領域)13とP+拡散層(pベース領域)12では、金属シリサイド層9aを形成することで、N+拡散層の抵抗とP+拡散層の抵抗が低く抑えられる。
これにより、P+拡散層(コレクタ領域)に金属シリサイド層を形成した横型IGBTと比較して、コレクタ電流を増やすことができる。その結果、横型IGBTとしての電流駆動能力を向上させることができ、ひいては、横型IGBTを適用した回路の性能を向上させることができる。
このように、本横型IGBT10では、少数キャリア(正孔)が注入されるN-エピタキシャル層4とpn接合面が形成されるP+拡散層14には金属シリサイド層を形成せず、N+拡散層13とP+拡散層12には金属シリサイド層9aを形成することで、コレクタ電流を増やして、横型IGBTとしての電流駆動能力を向上させることができる。
なお、上述したSOI構造の横型IGBTでは、nチャネル型の横型IGBTを例に挙げて説明したが、pチャネル型の横型IGBTにも適用することができる。
実施の形態2
ここでは、埋め込み拡散構造のnチャネル型の横型IGBTについて説明する。図3および図4に示すように、P型のシリコン基板101上にN-エピタキシャル層4が形成されている。そのN-エピタキシャル層4の所定の領域(素子形成領域)を取り囲むように、P+埋め込み層51およびP+分離拡散層52が形成されている。P+埋め込み層51およびP+分離拡散層52は、N-エピタキシャル層4の表面から、シリコン基板101にまで達するように形成されている。なお、これ以外の構成については、図1および図2に示す横型IGBTの構成と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
この横型IGBT50においても、P+拡散層(コレクタ領域)14には金属シリサイド層は形成されず、N+拡散層(エミッタ領域)13には金属シリサイド層9aが形成されている。P+拡散層(コレクタ領域)14に金属シリサイド層を形成しないことで、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層4の領域に結晶欠陥が発生することはなく、pn接合面を介して注入された少数キャリアのライフタイムが短くなるのが阻止される。また、N+拡散層(エミッタ領域)13とP+拡散層(pベース領域)12に金属シリサイド層9aを形成することで、N+拡散層13の抵抗とP+拡散層12の抵抗が低く抑えられる。
これにより、P+拡散層(コレクタ領域)に金属シリサイド層を形成した横型IGBTと比較して、コレクタ電流を増やすことができる。その結果、横型IGBTとしての電流駆動能力を向上させることができ、ひいては、横型IGBTを適用した回路の性能を向上させることができる。
なお、上述した埋め込み拡散構造の横型IGBTでは、nチャネル型の横型IGBTを例に挙げて説明したが、pチャネル型の横型IGBTにも適用することができる。
実施の形態3
ここでは、SOI構造の高圧ダイオードについて説明する。図5および図6に示すように、シリコンの支持基板2の上に埋め込み酸化膜3を介在させてN-エピタキシャル層4が形成されている。そのN-エピタキシャル層4の所定の領域(素子形成領域)を取り囲むように、トレンチ分離絶縁膜5aが形成されている。トレンチ分離絶縁膜5aは、N-エピタキシャル層4の表面から埋め込み酸化膜3にまで達するように形成されている。
その素子形成領域に高圧ダイオード20が形成されている。素子形成領域の中央付近には、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、高圧ダイオード20のカソード領域としてのN+拡散層22が形成されている。そのN+拡散層22を周方向から取り囲むように、N-エピタキシャル層4の表面にLOCOS酸化膜5bが形成されている。
素子形成領域の外周には、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、高圧ダイオードのアノード領域としてのP+拡散層21が形成されている。P+拡散層21とN-エピタキシャル層4との接合面はpn接合面となる。P+拡散層21は、N+拡散層22およびLOCOS酸化膜5bを周方向から取り囲むように形成されている。
素子形成領域のN-エピタキシャル層4およびフィールド絶縁膜5bを覆うように、層間絶縁膜110が形成されている。その層間絶縁膜110の上には、P+拡散層21と電気的に接続されるアノード電極24が形成されている。また、N+拡散層22と電気的に接続されるカソード電極23が形成されている。
そして、この高圧ダイオード20では、N-エピタキシャル層4との接合面がpn接合面とはならないカソード領域としてのN+拡散層22には、金属シリサイド層9bが形成されている。一方、N-エピタキシャル層4との接合面がpn接合面となるアノード領域としてのP+拡散層21には、金属シリサイド層は形成されていない。また、P+拡散層21の不純物濃度は、N-エピタキシャル層4の不純物濃度よりも高く設定されている。本実施の形態に係る高圧ダイオード20は、以上のように構成される。
この高圧ダイオード20では、順方向に電圧を印加すると、P+拡散層21からN-エピタキシャル層4へ、少数キャリアとしてのホール(正孔)が注入される。一方、N+拡散層22からN-エピタキシャル層4へ電子が注入される。これにより、N-エピタキシャル層4では、電導度変調と称される現象が生じてN-エピタキシャル層4の抵抗値が下がり、N+拡散層(カソード領域)22とP+拡散層(アノード領域)21との間の導通が可能なオン状態になる。
上述した高圧ダイオード20では、P+拡散層(アノード領域)21に金属シリサイド層が形成されていない。これにより、アノード領域に金属シリサイド層が形成されている場合と比較して次のような効果が得られる。
P+拡散層21からpn接合面を介してN-エピタキシャル層4に注入される正孔(少数キャリア)は、ライフタイムに応じて減衰する。N-エピタキシャル層4では、正孔が減衰するまで少数キャリアと多数キャリア(電子)が存在して電気的に中和状態となり、電導度変調が発現してN-エピタキシャル層4の抵抗が極めて低い状態となる。
このとき、図7に示すように、高圧ダイオードにおいて、P+拡散層(アノード領域)202に金属シリサイド層204が形成されると、金属シリサイド層204の応力に起因して、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層201の領域に結晶欠陥205等が発生しやすくなる。このような結晶欠陥205等が存在すると、pn接合面を介してN-エピタキシャル層201に注入される正孔のライフタイムが短くなって、正孔はより早く減衰することになる。
このため、少数キャリアの密度分布のグラフに示されるように、N-エピタキシャル層201において、電導度変調が発現する領域の割合が低くなる一方で、N-エピタキシャル層201が抵抗として作用する領域(高抵抗層領域)の割合が高くなる。その結果、高圧ダイオードを順方向に流れる順方向電流が下がり、高圧ダイオードとしての順方向特性が低下することになる。
これに対して、上述した高圧ダイオード20では、図8に示すように、P+拡散層(アノード領域)202に金属シリサイド層を形成しないため、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層201の領域に結晶欠陥が発生することはない。このため、少数キャリアの密度分布のグラフに示されるように、P+拡散層(アノード領域)に金属シリサイド層を形成した高圧ダイオードと比較して、N-エピタキシャル層201が抵抗として作用する領域(高抵抗層領域)に対して、電導度変調が発現する領域の割合が高くなる。これにより、高圧ダイオードを順方向に流れる順方向電流を増やすことができる。
また、図6に示すように、上述した高圧ダイオード20では、N-エピタキシャル層4とはpn接合面が形成されないN+拡散層(カソード領域)22では、金属シリサイド層9bを形成することで、N+拡散層22の抵抗が低く抑えられる。
ここで、高圧ダイオードの順方向電流の順方向電圧の依存性について説明する。図9に、高圧ダイオードの電流-電圧特性として、グラフAとグラフBを示す。グラフAは、カソード領域とアノード領域の双方の領域に金属シリサイド層を形成した高圧ダイオードの電流-電圧特性である。グラフBは、その双方の領域に金属シリサイド層を形成しない高圧ダイオードの電流-電圧特性である。
図9に示すように、グラフAでは、グラフBに対して、アノード領域に形成される金属シリサイド層に起因する結晶欠陥等によって、同じ順方向電圧に対して順方向電流が低いことがわかる。
グラフAでは、カソード領域とアノード領域の双方の領域に金属シリサイド層が形成され、グラフBでは、その双方の領域に金属シリサイド層が形成されていないことから、P+拡散層(アノード領域)に金属シリサイド層を形成せず、N+拡散層(カソード領域)に金属シリサイド層を形成した上述した高圧ダイオード20では、グラフAとグラフBによって挟まれた領域に電流-電圧特性を有すると考えられる。したがって、上述した高圧ダイオードでは、双方の領域に金属シリサイド層を形成した高圧ダイオードと比較して、同じ順方向電圧に対して順方向電流が増えて、高圧ダイオードとしての順方向特性を向上することができる。
変形例
上述した高圧ダイオードでは、基板2の上に埋め込み酸化膜3を介在させてN-エピタキシャル層4が形成され、アノード領域としてのP+拡散層21の不純物濃度が、N-エピタキシャル層4の不純物濃度よりも高く設定されている場合を例に挙げて説明した。ここでは、その変形例に係る高圧ダイオードについて説明する。
図10に示すように、基板2の上に埋め込み酸化膜3を介在させてP-エピタキシャル層71が形成されている。素子形成領域には、高圧ダイオード70のN+拡散層(カソード領域)73と、P+拡散層(アノード領域)72とがそれぞれ形成されている。N+拡散層73とP-エピタキシャル層71との接合面はpn接合面となる。N+拡散層73の不純物濃度は、P-エピタキシャル層71の不純物濃度よりも高く設定されている。
この高圧ダイオード70では、P-エピタキシャル層71との接合面がpn接合面とはならないP+拡散層(アノード領域)72には、金属シリサイド層9bが形成されている。一方、P-エピタキシャル層71との接合面がpn接合面となるN+拡散層(カソード領域)73には、金属シリサイド層は形成されていない。
上述した変形例に係る高圧ダイオードにおいても、N+拡散層(カソード領域)73に金属シリサイド層を形成しないことで、pn接合面の近傍のP-エピタキシャル層71の領域に結晶欠陥が発生することはなく、pn接合面を介して注入された少数キャリアのライフタイムが短くなるのが阻止される。また、P+拡散層(アノード領域)72に金属シリサイド層9bを形成することで、P+拡散層72の抵抗が低く抑えられる。
これにより、N+拡散層(カソード領域)に金属シリサイド層を形成した高圧ダイオードと比較して、順方向電流を増やすことができる。その結果、高圧ダイオードとしての順方向特性を向上させることができ、ひいては、高圧ダイオードを適用した回路の性能を向上させることができる。
実施の形態4
ここでは、埋め込み拡散構造の高圧ダイオードについて説明する。図11および図12に示すように、P型のシリコン基板101上にN-エピタキシャル層4が形成されている。そのN-エピタキシャル層4の所定の領域(素子形成領域)を取り囲むように、P+埋め込み層61およびP+分離拡散層63が形成されている。P+埋め込み層61およびP+分離拡散層62は、N-エピタキシャル層4の表面から、シリコン基板101にまで達するように形成されている。
また、シリコン基板101とN-エピタキシャル層4との間に、N+埋め込み層62が形成されている。さらに、P+拡散層21の直下のN-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりp-層64が形成されている。p-層64は、トレンチ分離絶縁膜5aの内壁面に沿って形成されている。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す高圧ダイオードの構成と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
この高圧ダイオード60においても、P+拡散層(アノード領域)21には金属シリサイド層は形成されず、N+拡散層(カソード領域)22には金属シリサイド層9bが形成されている。P+拡散層(アノード領域)21に金属シリサイド層を形成しないことで、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層4の領域に結晶欠陥が発生することはなく、pn接合面を介して注入された少数キャリアのライフタイムが短くなるのが阻止される。また、N+拡散層(カソード領域)22に金属シリサイド層9bを形成することで、N+拡散層22の抵抗が低く抑えられる。
これにより、P+拡散層(アノード領域)に金属シリサイド層を形成した高圧ダイオードと比較して、順方向電流を増やすことができる。その結果、高圧ダイオードとしての順方向特性を向上させることができ、ひいては、高圧ダイオードを適用した回路の性能を向上させることができる。
実施の形態5
ここでは、SOI構造のCMOSダイオードについて説明する。図13および図14に示すように、素子形成領域に位置するN-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりPウェル91が形成されている。その素子形成領域にCMOSダイオード90が形成されている。
素子形成領域の中央付近には、Pウェル91の表面から所定の深さにわたり、CMOSダイオード90のカソード領域としてのN+拡散層22が形成されている。そのN+拡散層22と距離を隔てて、Pウェル91の表面から所定の深さにわたり、アノード領域としてのP+拡散層21が形成されている。
そして、このCMOSダイオード90では、Pウェル91との接合面がpn接合面とはならないアノード領域としてのP+拡散層21には、金属シリサイド層9bが形成されている。一方、Pウェル91との接合面がpn接合面となるカソード領域としてのN+拡散層22には、金属シリサイド層は形成されていない。
また、N+拡散層22の不純物濃度は、Pウェル91の不純物濃度よりも高く設定されている。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す高圧ダイオードと同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。本実施の形態に係るCMOSダイオード90は、以上のように構成される。
上述したCMOSダイオード90においても、N+拡散層(カソード領域)22に金属シリサイド層を形成しないことで、pn接合面の近傍のPウェル91の領域に結晶欠陥が発生することはなく、pn接合面を介して注入された少数キャリアのライフタイムが短くなるのが阻止される。また、P+拡散層(アノード領域)21に金属シリサイド層9bを形成することで、P+拡散層21の抵抗が低く抑えられる。
これにより、N+拡散層(カソード領域)に金属シリサイド層を形成したCMOSダイオードと比較して、順方向電流を増やすことができる。その結果、CMOSダイオードとしての順方向特性を向上させることができ、ひいては、CMOSダイオードを適用した回路の性能を向上させることができる。
実施の形態6
ここでは、SOI構造のツェナーダイオードについて説明する。図15および図16に示すように、素子形成領域に位置するN-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりP-拡散層81が形成されている。その素子形成領域にCMOSダイオード90が形成されている。
素子形成領域の中央付近には、P-拡散層81の表面から所定の深さにわたり、ツェナーダイオード80のカソード領域としてのN+拡散層22が形成されている。また、そのN+拡散層22の直下にp型のベース層82が形成されている。N+拡散層22と距離を隔てて、P-拡散層81の表面から所定の深さにわたり、アノード領域としてのP+拡散層21が形成されている。
そして、このツェナーダイオード80では、P-拡散層81との接合面がpn接合面とはならないアノード領域としてのP+拡散層21には、金属シリサイド層9bが形成されている。一方、P-拡散層81との接合面がpn接合面となるカソード領域としてのN+拡散層22には、金属シリサイド層は形成されていない。
また、N+拡散層22の不純物濃度は、p型のベース層82の不純物濃度よりも高く設定されている。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す高圧ダイオードと同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。本実施の形態に係るツェナーダイオード80は、以上のように構成される。
上述したツェナーダイオード80においても、N+拡散層(カソード領域)22に金属シリサイド層を形成しないことで、pn接合面の近傍のP-拡散層81の領域に結晶欠陥が発生することはなく、pn接合面を介して注入された少数キャリアのライフタイムが短くなるのが阻止される。また、P+拡散層(アノード領域)21に金属シリサイド層9bを形成することで、P+拡散層21の抵抗が低く抑えられる。
これにより、N+拡散層(カソード領域)に金属シリサイド層を形成したツェナーダイオードと比較して、順方向電流を増やすことができる。その結果、ツェナーダイオードとしての順方向特性を向上させることができ、ひいては、ツェナーダイオードを適用した回路の性能を向上させることができる。
実施の形態7
ここでは、上述したIGBTやダイオードを適用した、プラズマディスプレイパネルを駆動させるドライバICについて説明する。
図17に示すように、ドライバICには、スキャンドライバIC302とアドレスドライバIC303がある。スキャンドライバIC302はプラズマディスプレイパネル301の水平方向の電極に接続されて走査線を選択する機能を有し、パネル内部の放電セルを一括して制御する。一方、アドレスドライバIC303は、プラズマディスプレイパネル301の縦方向の電極に接続されて、データを選択する機能を有している。
図18に示すように、ドライバICは高電圧の出力回路を備えたICであり、高圧電源(VH)の電圧を出力端子へ出力するためのスイッチング素子として、たとえば、横型IGBT10とDMOSトランジスタ30とが形成されている。DMOSトランジスタ30のドレインに高圧電源が接続され、DMOSトランジスタ30のソースに横型IGBT10のコレクタが接続されている。DMOSトランジスタ30のソースと横型IGBT10のコレクタとの接続点に出力端子が接続されている。横型IGBT10のエミッタは接地電位(GND)に接続されている。また、接地電位(GND)と出力端子との間にはダイオード20が接続されている。
DMOSトランジスタ30と横型IGBT10とは交互にオンオフされ、DMOSトランジスタ30がオンで横型IGBT10がオフの状態で、出力端子から高圧電源の電圧が出力される。一方、DMOSトランジスタ30がオフで横型IGBT10がオンの状態で、出力端子は接地電位となる。また、ドライバICでは、DMOSトランジスタ30のスイッチング動作を制御する高圧側ゲート駆動回路401と、横型IGBT10のスイッチング動作を制御する低圧側ゲート駆動回路402とが設けられている。さらに、ドライバICでは、この高圧側ゲート駆動回路401と低圧側ゲート駆動回路402の動作を制御するロジック回路403が設けられている。
高圧側ゲート駆動回路401、低圧側ゲート駆動回路402およびロジック回路403には、高圧ダイオード、ツェナーダイオード、CMOSトランジスタ等の素子が形成されている。ドライバICでは、DMOSトランジスタ30と横型IGBT10のスイッチング動作を繰り返すことによって、プラズマディスプレイパネルの駆動が行われる。
次に、このドライバICの構造について具体的に説明する。図19に示すように、シリコンの支持基板2の上に埋め込み酸化膜3を介在させてN-エピタキシャル層4が形成されている。そのN-エピタキシャル層4には、トレンチ分離領域5aによって区画された複数の素子形成領域が形成されている。トレンチ分離絶縁膜5aは、N-エピタキシャル層4の表面から埋め込み酸化膜3にまで達するように形成されている。
スイッチングを行なう横型DMOSトランジスタ30、nチャネル型の横型IGBT10および高圧ダイオード20が、それぞれ所定の素子形成領域に形成されている。また、スイッチング動作を制御するロジック回路のCMOSトランジスタ40が所定の素子形成領域に形成されている。
これらの素子のうち、まず、横型IGBT10として、図1および図2に示す横型IGBT10と同じ素子が形成されている。横型IGBT10では、特に、N-エピタキシャル層4とはpn接合面が形成されるP+拡散層14には金属シリサイド層は形成されていない。一方、N+拡散層(エミッタ領域)13とP+拡散層(pベース領域)12には金属シリサイド層9aが形成されている。これ以外の構成については、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
また、高圧ダイオード20として、図5および図6に示す高圧ダイオード20と同じ素子が形成されている。高圧ダイオード20では、特に、N-エピタキシャル層4とはpn接合面が形成されるP+拡散層21には、金属シリサイド層は形成されていない。一方、N-エピタキシャル層4とはpn接合面が形成されるN+拡散層22には、金属シリサイド層9bが形成されている。これ以外の構成については、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
横型DMOSトランジスタ30が形成される素子形成領域では、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、横型DMOSトランジスタ30のドレイン領域としてのN+拡散層34が形成されている。そのN+拡散層14を取り囲むように、N-エピタキシャル層4の表面にLOCOS酸化膜5bが形成されている。N+拡散層14から距離を隔てられた素子形成領域の部分に、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、横型DMOSトランジスタ30のソース領域としてのN+拡散層33が形成されている。また、N+拡散層33と隣接するように、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりP+拡散層32が形成されている。
N+拡散層33とP+拡散層32を側方と下方から取り囲むように、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたりpベース31が形成されている。pベース31は、LOCOS酸化膜5bとの間にN-エピタキシャル層4の表面が露出するように形成されている。N+拡散層33とN-エピタキシャル層4とによって挟まれたpベース31の領域上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極35が形成されている。ゲート電極35は、そのpベース31の領域からN-エピタキシャル層4の領域を経てLOCOS酸化膜5bの外周部分を覆うように形成されている。
素子形成領域を覆う層間絶縁膜110の上には、N+拡散層34と電気的に接続されるドレイン電極37が形成されている。また、N+拡散層33およびP+拡散層34と電気的に接続されるソース電極36が形成されている。そして、横型DMOSトランジスタ30では、ドレイン領域としてのN+拡散層34とソース領域としてのN+拡散層33には、いずれも金属シリサイド層9c、9dが形成されている。ドライバICにおける横型DMOSトランジスタ30は、以上のように構成される。
CMOSトランジスタ40が形成される素子形成領域では、N-エピタキシャル層4の表面から所定の深さにわたり、Nウェル41とPウェル42が形成されている。Nウェル41には、Nウェル41の表面から所定の深さにわたり、ソース・ドレイン領域としての1対のP+拡散層43a,43bが形成されている。その1対のP+拡散層43a,43bによって挟まれたNウェル41の領域上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極45が形成されている。ゲート電極45および1対のP+拡散層43a,43bによって、pチャネル型のMOSトランジスタが構成される。
一方、Pウェル42には、Pウェル42の表面から所定の深さにわたり、ソース・ドレイン領域としての1対のN+拡散層44a,44bが形成されている。その1対のN+拡散層44a,44bによって挟まれたPウェル42の領域上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極46が形成されている。ゲート電極46および1対のN+拡散層44a,44bによって、nチャネル型のMOSトランジスタが構成される。こうして、pチャネル型のMOSトランジスタとnチャネル型のMOSトランジスタによって、CMOSトランジスタ40が構成される。
素子形成領域を覆う層間絶縁膜110の上には、P+拡散層43a,43bのそれぞれと電気的に接続されるソース・ドレイン電極48が形成されている。また、N+拡散層44a,44bのそれぞれと電気的に接続されるソース・ドレイン電極49が形成されている。
そして、CMOSトランジスタ40では、pチャネル型のMOSトランジスタのP+拡散層(ソース・ドレイン領域)43a,43bには、金属シリサイド層9fが形成され、また、nチャネル型のMOSトランジスタのN+拡散層(ソース・ドレイン領域)44a,44bにも、金属シリサイド層9eが形成されている。ドライバICにおけるCMOSトランジスタ40は、以上のように構成される。
次に、上述したドライバICの製造方法の一例について簡単に説明する。まず、貼り合せによるSOIプロセスにより、支持基板の上に埋め込み酸化膜を介在させてN-エピタキシャル層が形成される。次に、図20に示すように、N-エピタキシャル層4に埋め込み酸化膜3を露出するトレンチが形成され、そのトレンチ内に所定のトレンチ分離絶縁膜5aが形成される。こうして、N−エピタキシャル層4では、トレンチ分離絶縁膜5aによって区画された素子形成領域が形成される。
また、N-エピタキシャル層4の所定の領域に、LOCOS酸化膜5bが形成される。次に、横型IGBTが形成される素子形成領域ではpベース11が形成される。また、横型DMOSトランジスタが形成される素子形成領域ではpベース31が形成される。そして、CMOSトランジスタ40が形成される素子形成領域では、Nウェル41およびPウェル42が形成される。
次に、横型IGBTが形成される素子形成領域では、所定のpベース11の領域上にゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極15が形成される。また、横型DMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、所定のpベース31の領域上にゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極35が形成される。
そして、CMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、所定のNウェル41の領域上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極45が形成される。また、所定のPウェル42の領域上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介在させてゲート電極46が形成される。さらに、Nウェル41には、ソース・ドレイン領域となるP-拡散層(図示せず)およびP+拡散層43a,43bが形成される。Pウェル42には、ソース・ドレイン領域となるN-拡散層(図示せず)およびN+拡散層44a,44bが形成される。
横型IGBTが形成される素子形成領域では、pベース11に、N+拡散層(エミッタ領域)13とP+拡散層12が形成される。また、N-エピタキシャル層4にP+拡散層(コレクタ領域)14が形成される。横型DMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、pベース31に、N+拡散層33とP+拡散層32が形成される。高圧ダイオード20が形成される素子形成領域では、N+拡散層(カソード領域)22とP+拡散層(アノード領域)21が形成される。
次に、所定の拡散層の表面に金属シリサイド層が形成される。まず、各素子形成領域に形成された素子を覆うように、マスク絶縁膜となる絶縁膜(図示せず)が形成される。その絶縁膜の上にレジストが塗布される。そのレジストに所定の写真製版処理を施すことにより、所定のレジストマスクが形成される。
横型IGBTが形成される素子形成領域では、N-エピタキシャル層4との接合面がpn接合面となるP+拡散層(コレクタ領域)14を覆うように、レジストマスク7bが形成される。また、高圧ダイオードが形成される素子形成領域では、N-エピタキシャル層4との接合面がpn接合面となるP+拡散層(アノード領域)21を覆うように、レジストマスク7aが形成される(図21参照)。
次に、図21に示すように、レジストマスク7a,7bをマスクとして、絶縁膜に異方性エッチングを施すことにより、横型IGBTのP+拡散層(コレクタ領域)14を覆う絶縁膜の部分6bと、高圧ダイオードのP+拡散層(アノード領域)21を覆う絶縁膜の部分6aを残して、絶縁膜の他の部分が除去されて、横型IGBTが形成される素子形成領域では、N+拡散層(エミッタ領域)13およびP+拡散層(pベース領域)12が露出する。
また、高圧ダイオード20が形成される素子形成領域では、N+拡散層(カソード領域)22が露出する。横型DMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、N+拡散層(ソース領域)、P+拡散層32およびN+拡散層(ドレイン領域)34が露出する。CMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、P+拡散層(ソース・ドレイン領域)43a,43bと、N+拡散層(ソース・ドレイン領域)44a,44bが露出する。その後、レジストマスク7a,7bが除去することにより、絶縁膜マスク6a,6bが形成される。
次に、図22に示すように、スパッタ法によって、絶縁膜マスク6a,6b、露出したN+拡散層13,22,33,34,44a,44bおよびP+拡散層12,32,43a,43bを覆うように、たとえば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)等の金属膜8が形成される。次に、たとえば、ランプアニールにより、温度数百度のもとで熱処理を施して金属膜8とシリコンとを反応させることにより、金属シリサイド層が形成される。
横型IGBTが形成される素子形成領域では、N+拡散層(エミッタ領域)13とP+拡散層12の表面に金属シリサイド層9aが形成される。高圧ダイオードが形成される素子形成領域では、N+拡散層(カソード領域)22の表面に金属シリサイド層9bが形成される。
横型DMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、N+拡散層33とP+拡散層32の表面に金属シリサイド層9cが形成され、N+拡散層34の表面に金属シリサイド層9dが形成される。CMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、P+拡散層43a,43bの表面に金属シリサイド層9fが形成され、N+拡散層44a,44bの表面に金属シリサイド層9eが形成される。
次に、図23に示すように、所定のウェットエッチングを施すことにより、未反応の金属膜8が除去される。その後、絶縁膜マスク6a,6bが除去され、各素子形成領域を覆うように層間絶縁膜110が形成される。その層間絶縁膜110に所定のコンタクトホールとプラグ等が形成され、そして、横型IGBTが形成される素子形成領域では、エミッタ電極16およびコレクタ電極17が形成される。
高圧ダイオードが形成される素子形成領域では、カソード電極23およびアノード電極24が形成される。横型DMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、ソース電極36およびドレイン電極37が形成される。CMOSトランジスタが形成される素子形成領域では、ソース・ドレイン電極48,49が形成される。こうして、図19に示すドライバICの主要部分が完成する。
上述したドライバICでは、まず、横型IGBTにおいて、N-エピタキシャル層4との接合面がpn接合面となるP+拡散層14には金属シリサイド層を形成せず、N+拡散層13とP+拡散層12には金属シリサイド層9aを形成することで、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層4の領域に結晶欠陥が発生せず、しかも、N+拡散層13の抵抗とP+拡散層12の抵抗が低く抑えられる。これにより、コレクタ電流が増加して、横型IGBTとしての電流駆動能力が向上する。
また、高圧ダイオードにおいて、P+拡散層(アノード領域)21に金属シリサイド層を形成せず、N+拡散層(カソード領域)22に金属シリサイド層9bを形成することで、pn接合面の近傍のN-エピタキシャル層4の領域に結晶欠陥が発生せず、しかも、N+拡散層22の抵抗が低く抑えられる。これにより、高圧ダイオードの順方向電流が増加する。これらの結果、ドライバICでは、回路として性能を向上させることができる。
このように、上述したドライバICでは、N-エピタキシャル層4へのキャリアの注入によって動作が行われる素子(横型IGBT、高圧ダイオード)において、N-エピタキシャル層との接合面がpn接合面となる所定の拡散層には金属シリサイド層を形成せず、N-エピタキシャル層との接合面がpn接合面とはならない拡散層には金属シリサイド層を形成し、他の、キャリアの注入によらないで動作をするCMOSトランジスタやDMOSトランジスタについては各所定の拡散層に金属シリサイド層を形成することで、ドライバICとしての回路特性を向上させることができる。
なお、上述した各半導体装置は、プラズマディスプレイパネルのドライバICの他に、自動車用ICや電源IC等としても広く適用することができる。
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。