JP5472173B2 - シリコンウェーハ中のCu濃度評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高集積デバイスを作製するための半導体用のシリコンウェーハの評価方法に関し、特にそのシリコンウェーハ中のCu濃度の評価方法に関する。
主に半導体集積回路等の電気デバイスを作製する材料として、古くからシリコン単結晶ウェーハが用いられている。このシリコン単結晶ウェーハは半導体としての優れた特性を持ちながら、他の半導体材料、例えばGaAsなどの化合物半導体と比べて、安価に大量生産できることから、広い範囲で使用されている。これらの半導体材料では、シリコンであることのみならず、電気デバイス動作に最も重要な電子、正孔の流れを極力妨害しないように単結晶を用いることが多い。
そのため、単結晶を得られる手法として、チョクラルスキー法(CZ法)や浮遊帯溶融法(FZ法)などが用いられている。こうして作製されたシリコン単結晶は、ウェーハに加工するため、種々の手法にて、厚さ1mm以下程度まで切断され、また表面を鏡面にするため研磨された後、半導体デバイスは、このシリコンウェーハ上に作製されていく。
これら一連の半導体デバイス作製工程において、様々な熱処理工程を経ることになるが、これらの工程で金属元素が半導体シリコンウェーハ中に汚染、拡散することはよく知られている。これらの金属元素はデバイス動作に悪影響を及ぼすことから、極力、不純物汚染を受けない工程を用いることが望ましく、その不純物金属の除去法としてのゲッタリング技術が数多く提案されている。しかし、現実的には、完全に汚染を防止したり、除去することは困難であり、精密測定技術を用いた残存した金属種の同定と濃度把握の方がむしろ重要である。
シリコンウェーハ中の金属濃度を測定する手法は各元素によって数多く提案されている。その手法は、破壊評価法と非破壊評価法に大別できる。
後者は、その評価を実施しても、影響が全く残らない評価法であり、最も好ましいと言える。しかし、検出下限値や測定条件などの制限から、必ずしも非破壊評価法が実施できる場合ばかりではないことが一般的である。TXRF法(Total X−Ray Reflection Fluorescence(全反射蛍光X線法))は非破壊評価の代表的手法であり、シリコンウェーハ表面上の金属濃度を高感度に測定することができる。
しかし、TXRF法は、シリコンウェーハ表面上の元素の同定と定量であることから、シリコンウェーハの内部(バルク領域)に存在する金属濃度を定量している訳ではない。そのため、対象工程中の全汚染量を把握したい場合などでは、必ずしも有用性が高いとは言えないという問題があった。
このTXRF法の欠点を補う方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1に示された、X線をシリコンウェーハ表面に照射して、バルク領域中のCu原子を表面に凝集させる方法がある。また、特許文献2に示された、ウェーハ表面にコロナチャージを施し、同様にCu原子を表面に凝集させる方法がある。このようにしてCu原子を表面に凝集させた上でTXRF法により該表面におけるCu濃度を定量していた。
このような表面に凝集させる方法でなければバルク領域中のCu濃度を評価できないが、一方で、このような方法はいずれも対象ウェーハに付加的な処理を加えるため、ウェーハ中のCuの存在状態(分布状態)を変化させてしまい、実質的には非破壊評価法とは言い難い。また、その付加的な処理工程のために時間とコストがかかるという欠点があった。
特開平11−101755号公報 特開平11−201880号公報
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、シリコンウェーハの表面におけるCuの濃度を測定するTXRF法を用いるにもかかわらず、シリコンウェーハ中に固溶しているCuの全量、ひいてはバルク領域中のCu濃度を評価することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、シリコンウェーハ中のCu濃度を評価する方法であって、熱処理が施されたシリコンウェーハの表面でのCu濃度をTXRF法により測定し、前記熱処理においてシリコンウェーハを熱処理炉から取り出すときの温度又は熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度と、前記測定された表面でのCu濃度の測定値とから、シリコンウェーハのバルク領域中のCu濃度を評価することを特徴とするシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法を提供する。
このような評価方法であれば、操作性が良く使い易いTXRF法を用いて、シリコンウェーハ表面だけでなく、バルク領域中のCu濃度まで評価を行うことが可能である。しかも、従来方法のように、TXRF法で測定する前に、バルク領域中のCuを表面に凝集させるための特別な前処理(X線照射、電圧印加など)をわざわざ施す必要もない。したがって、その前処理のための余計な時間や手間を省くことができる。さらには、前処理によりシリコンウェーハ中のCuの存在状態を大きく変化させることもなく、実質的に非破壊で評価を行うことができる。
そして、前記シリコンウェーハ中のCu濃度を評価するとき、予め、熱処理が施され、Cu汚染量が既知の予備試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度をTXRF法により測定し、該予備試験用のシリコンウェーハに関して、前記熱処理の熱処理炉から取り出すときの温度又は熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度と、前記測定された表面でのCu濃度の測定値と、前記既知のCu汚染量とから相関関係を求めておき、該相関関係を用いて、前記評価するシリコンウェーハのバルク領域中のCu濃度を算出して評価することができる。
このような予備試験を行って求めた相関関係を用いることによって、簡便にシリコンウェーハのバルク領域中のCu濃度を算出することができる。
以上のように、本発明によれば、バルク領域中のCuを表面に凝集させるための特別な前処理を施す必要もなく、しかも、シリコンウェーハ中のCuの存在状態を大きく変化させることもなく、TXRF法を用いて、シリコンウェーハ表面だけでなく、バルク領域中のCu濃度まで評価を行うことが可能である。
本発明のシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法の工程の一例を説明するためのフロー図である。 初期汚染濃度、TXRF法で測定された表面でのCu濃度、熱処理炉からの取り出し温度の相関関係を示す。 取り出し温度に対する、初期汚染濃度とTXRF法で測定された表面でのCu濃度との比を示すグラフである。 冷却速度に対する、初期汚染濃度とTXRF法で測定された表面でのCu濃度との比を示すグラフである。
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本発明者が本発明を完成させるに至った経緯について述べる。
不純物濃度そのものではなく、不純物濃度と相関する間接的な因子を求める方法には、少数キャリアのライフタイム測定などがあり、非汚染の場合と比べて測定されたライフタイム値が低下している部分に何らかの不純物の存在を疑うことができると考えられる。それに対し、シリコンウェーハの不純物濃度を非破壊で測定する方法には、例えば、SPV(Surface Photo Voltage)法によるFe−B対濃度測定などがあるが、一般に非破壊で不純物濃度を直接測定できる手法は少ない。
TXRF法は非破壊でウェーハ表面に付着している不純物元素の濃度を求められる手法としてよく知られている。シリコンウェーハのバルク領域中に何らかの不純物が存在している場合、その汚染開始時点において表面に不純物が付着し、内部に拡散したと考えられることが多い。
この場合、どの段階においても、ある程度の割合で表面に不純物元素が残存していることが予想され、この表面をTXRF法で測定すれば、少なからず、不純物原子の存在は確認でき、表面上に存在している原子数を知ることができる。
しかし、TXRF法で評価できる原子は、あくまで表面上に存在している原子のみであり、バルク領域に固溶している成分については全く評価していない。従って、TXRF法で、ウェーハ表面及びバルク領域中に固溶している全原子濃度を評価したいと考えるならば、すでに述べたようにX線照射や電圧印加など、何らかの方法でバルク領域中に固溶している全成分を表面に凝集させる特別な前処理が必要である。
ここで、Cuは他の金属元素に比べて拡散が速いため、比較的、表面に凝集させやすいが、それでも全量に近い割合で表面に凝集させることは困難である。また、特別な前処理を行わなければならず、手間や時間がかかる上、前処理を行うとシリコンウェーハ中のCuの存在状態に変化が生じてしまい、実質的には非破壊評価法とは言えない。
そこで、本発明者は、TXRF法で、ウェーハ表面及びバルク領域中に固溶している全シリコンウェーハ中のCu濃度を評価するにあたり、あらゆる条件下において、全シリコンウェーハ中と表面におけるCuの存在割合を割り出し、その数値からバルク領域の濃度を求める方法を考えた。これまで、所定の条件下におけるその表面とバルク領域での存在割合については、検討されてこなかった。
そして、本発明者は、熱処理が施されたシリコンウェーハにおいて、種々の条件下において、表面と全シリコンウェーハ中におけるCuの存在割合について鋭意調査を行った。その結果、全シリコンウェーハ中のCu濃度に関して、該熱処理の熱処理炉からの取り出し温度が、表面と全シリコンウェーハ中におけるCuの存在割合を決定していることを突き止めた。なお、ここでいう熱処理炉からの取り出し温度とは、熱処理炉内でのシリコンウェーハの熱処理が完了し、ウェーハを炉外に取り出す時のウェーハの温度を意味する。
バルク領域中のCu量は、全シリコンウェーハ中のCu量から、表裏面のCu量(たとえば表面のCu量の2倍)を差し引くことにより得ることができる。
すなわち、取り出し温度をあらかじめ把握していれば、TXRF法で求めた表面のCu量から、全シリコンウェーハ中のCu量、さらにはバルク領域中のCu量を求めることができる。
また、使用する熱処理炉の環境によっては、冷却速度は熱処理炉からの取り出し温度と直接関係する場合が多数ある。
この場合は冷却速度をあらかじめ把握しておくことで同様の方法でバルク領域中のCu量を求めることができることを本発明者は見出した。
このようにして本発明を完成させた。
このように、従来法ではシリコンウェーハのバルク領域中に存在するCu濃度を非破壊で評価することは極めて困難な状況にあったが、本発明を用いれば、表面におけるTXRF測定と、熱処理炉からの取り出し温度、あるいは熱処理の冷却速度からバルク領域中に存在しているCu濃度を一義的に求めることができる。
以下、熱処理炉からの取り出し温度(または冷却速度)と、表面と全シリコンウェーハ中のCuの存在割合の相関関係について、より具体的に説明する。
まず、シリコンウェーハの裏面にCuを1011〜1014atoms/cmの濃度で塗布し(初期汚染)、700〜1000℃の各温度において、シリコンウェーハの厚みを考慮し、十分にCuが拡散でき、均一に分布できる時間だけ熱処理を施した後、シリコンウェーハを熱処理炉から取り出し、室温まで冷却した。
このとき、室温までの冷却にかかる時間をこの条件においてあらかじめ測定しておいたところ、その時間から求めた結果、取り出し温度から室温までの冷却速度(平均)は、取り出し温度が1000℃で90℃/分、900℃で80℃/分、800℃で70℃/分、700℃で60℃/分であった。
また、こうして取り出した各シリコンウェーハの表面をTXRF法で測定すると、熱処理後の表面におけるCu濃度が得られる。
ここで、この実験におけるCu汚染量(ここでは、上記のように裏面に塗布したCuの初期汚染濃度で表す)、TXRF法で測定された表面でのCu濃度、熱処理炉からの取り出し温度の関係を図2に示す。この図2では、700〜1000℃の各取り出し温度における初期汚染濃度と表面Cu濃度の相関関係が示されているが、各温度とも、初期汚染濃度が高いほど、表面濃度が高くなっていることがわかる。
また、取り出し温度が高い程、すなわち、上記のように室温までの冷却速度が高いほど、表面に凝集できるCu濃度が低いことがわかる。加えて、この存在割合は、初期汚染濃度に依存することなく、取り出し温度のみに依存していることがわかる。
取り出し温度のみに依存していることをより直接的に示すために、図2に示す相関関係を、取り出し温度を横軸にとり、初期汚染濃度とTXRF法で測定された表面でのCu濃度との比を縦軸にとったものを図3に示す。
図3からわかるように、取り出し温度を規定すると、初期汚染濃度とTXRF測定値の比が直ちに決定できる。すなわち、図3に示す相関関係を用いて、熱処理後のシリコンウェーハのTXRF測定による表面Cu濃度値から、初期汚染濃度を求めることができ、さらにはバルク領域中の濃度を求めることができる。
また、図2に示す相関関係を、冷却速度を横軸にとり、初期汚染濃度とTXRF法で測定された表面でのCu濃度との比を縦軸にとったものを図4に示す。
この場合も同様に、冷却速度を規定すると、初期汚染濃度とTXRF測定値の比が直ちに決定でき、初期汚染濃度、さらにはバルク領域中の濃度を求めることができる。
以下、本発明のシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明のシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法の工程の一例を示す。図1に示すように、ここでは、半導体デバイス作製工程又は半導体シリコンウェーハ作製工程に熱処理が施されたシリコンウェーハ中のCu濃度の評価を実際に行う本試験の前に、熱処理炉から取り出すときの温度又は熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度と、TXRF法で測定した表面でのCu濃度の測定値と、既知のCu汚染量(ここでは、Cuをウェーハ裏面に塗布することにより意図的に汚染した、裏面における単位面積あたりのCu量(初期汚染濃度)とする)との相関関係を求める為の予備試験を行う例について説明するが、予め、過去のデータ等から、上記相関関係について判明している場合には省略することも可能である。
まず、予備試験について説明する。
(予備試験用のシリコンウェーハの用意)
予備試験用のシリコンウェーハを用意する。熱処理が施され、Cuの初期汚染濃度が既知のものであれば良い。これは例えば、シリコンウェーハの裏面に既知の濃度でCuを塗布して汚染し、熱処理を行って熱処理炉から取り出し、室温まで冷却することで用意することができる。
このとき、熱処理炉から取り出す温度や、冷却速度について測定しておく。
ここで、このCuの初期汚染濃度は特に限定されず、適宜決定することができる。例えば、後に行う本試験を考慮し、本試験で得られるであろう値付近に設定することができる。このようにすれば、本試験において、より正確にシリコンウェーハ中のCu濃度を得ることができる。
また、熱処理は特に限定されず、適宜決定することができるが、例えば、裏面に塗布したCuが十分に拡散でき、均一に分布する程度の熱処理を施すことができる。また、熱処理炉から取り出す温度や、熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度も適宜決定することができる。
これらは、例えば本試験における条件を考慮し、本試験での条件と似た条件とすることができる。
(TXRF法による予備試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度の測定)
次に、上記のようにして用意したシリコンウェーハの表面でのCu濃度をTXRF法により測定する。TXRF法での測定条件として、X線の入射角や照射時間等は適宜決定することができる。例えば従来と同様の測定器を用い、本試験での測定条件と同様にして行うことができる。
(取り出し温度又は冷却速度毎の表面でのCu濃度測定値と初期汚染濃度の相関関係を求める)
上記のようにして得た取り出し温度又は冷却速度、表面でのCu濃度測定値、初期汚染濃度から相関関係を求める。例えば、図2のように、初期汚染濃度を横軸に、表面でのCu濃度測定値を縦軸にとり、取り出し温度(又は冷却速度)ごとに表して、これらの相関関係を得ることができる。
なお、図3(図4)のように、取り出し温度(又は冷却速度)を横軸に、初期汚染濃度と表面でのCu濃度測定値との比を縦軸にとることもできる。
本試験で用いやすいように、相関関係を求めておけば良い。
次に、本試験について述べる。
(本試験用のシリコンウェーハの用意)
評価対象であるCuの汚染濃度が未知の本試験用のシリコンウェーハを用意する。すなわち、半導体デバイス作製工程又は半導体シリコンウェーハ作製工程で所定の熱処理が施されたシリコンウェーハを用意する。このとき、予備試験用のシリコンウェーハと同様に、Cuはシリコンウェーハ中に拡散しており、均一に分布しているものと考えられる。
また、熱処理炉からの取り出し温度や、熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度について測定しておく。
(TXRF法による本試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度の測定)
上記のようにして用意した本試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度をTXRF法により測定する。
(バルク領域中のCu濃度の評価)
まず、本試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度測定値と、取り出し温度(又は冷却速度)、予備試験で求めた相関関係から、本試験用のシリコンウェーハ中の汚染濃度を求める。例えば、取り出し温度が1000℃で、図3の相関関係を用いた場合について説明すると、図3において初期汚染濃度/TXRF法で測定された表面でのCu濃度が50であることから、本試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度測定値に50を乗じた値が本試験用のシリコンウェーハ中の汚染濃度となる。
また、取り出し温度が、900℃や800℃であれば、初期汚染濃度/TXRF法で測定された表面でのCu濃度がそれぞれ16、5であることから、本試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度測定値にそれぞれ16、5を乗じた値が本試験用のシリコンウェーハ中の汚染濃度となる。
なお、この例における、本試験用のシリコンウェーハ中の汚染濃度とは、仮に、シリコンウェーハ中の全てのCuを裏面(又は表面)に凝集した場合に得られる単位面積あたりのCu量を意味する。
したがって、バルク領域中の単位体積あたりのCu量を求めるのであれば、上記のようにして求めた本試験用のシリコンウェーハ中の汚染濃度(単位面積あたりのCu量)から、表裏面に存在するCuとして、2倍した本試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度測定値(単位面積あたりのCu量)を減じたものを、本試験用のシリコンウェーハの厚さで除せば、バルク領域中の濃度(この場合、単位体積あたりのCu量)を算出して評価することが可能である。
もちろん、単位体積あたりとするか、単位面積あたりとするか、濃度の単位に関しては、その都度適切なものを用いれば良い。
以上のようなシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法であれば、従来法のように特別な前処理を施す必要もなく、TXRF法を用いてシリコンウェーハ表面のCu濃度のみならず、バルク領域中のCu濃度までも評価することが可能である。このため、従来よりも手間や時間がかからずに済み、簡便であるし、コスト面でも有利である。
しかも、シリコンウェーハ中のCuの分布を大きく変化させることなくバルク領域中のCu濃度を評価できる。評価するにあたって物理的に破壊する必要がないだけでなく、Cuの分布状態等の面においても非破壊的な評価方法である。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
本発明のシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法を行った。
まず、予備試験を行った。
CZ法により、直径8インチ(200mm)、初期酸素濃度14ppma(JEIDA)、方位<100>のシリコン単結晶を引き上げた。このシリコン単結晶を加工して複数のシリコンウェーハを得た。
該複数のシリコンウェーハの裏面に対し、既知のCu汚染量として、種々の濃度でCuを塗布した(初期汚染濃度)。
その後、複数のシリコンウェーハに種々の温度で5分間の熱処理を施し、該温度で熱処理炉から取り出し、室温まで冷却した。
続いて、シリコンウェーハ表面におけるCu濃度をTXRF法にて求めた。
そして、このときの各々の取り出し温度(700〜1000℃)、表面でのCu濃度測定値、初期汚染濃度との相関関係をグラフにしたところ、図2と同様の関係が得られた。また、取り出し温度を横軸にとったとき図3と同様になった。なお、このとき、700℃以下では、外挿すると“初期汚染濃度/TXRF法で測定された表面でのCu濃度”の値が2未満となり、原理的にありえない事となるので一定の値としている。
また、取り出し温度の代わりに冷却速度をパラメータとした場合、図4と同様の関係が得られた。
次に、本試験を行った。
CZ法により、直径8インチ(200mm)、初期酸素濃度14ppma(JEIDA)、方位<100>のシリコン単結晶を引き上げ、これを加工してシリコンウェーハを得た。
なお、本来であれば、上記のようにして得たシリコンウェーハは、シリコンウェーハ作製工程等での熱処理が施され、該熱処理が施されたシリコンウェーハを評価対象とし、シリコンウェーハ中のCu濃度を評価するわけだが、ここでは、本発明の有効性を確かめるため、意図的に、シリコンウェーハ裏面に対し、1.0×1012atoms/cmのCuを塗布しておく。
その後、シリコンウェーハ作製工程等での熱処理として1000℃で5分の熱処理を施し、1000℃で熱処理炉から取り出し、室温まで冷却した。この室温までの平均冷却速度は90℃/分であった。
続いて、シリコンウェーハ表面におけるCu濃度をTXRF法にて求めたところ、1.8×1010atoms/cmの表面Cuの存在を確認した。
ここで、1000℃で取り出した場合の図3における初期汚染濃度とTXRF測定値との比は50である。1.8×1010atoms/cmを50倍すると9.0×1011atoms/cmとなり、予め意図的に汚染した上記Cu汚染濃度(1.0×1012atoms/cm)とほぼ一致した。
そして、バルク領域中のCu濃度(単位体積あたりのCu量)は、上記の9.0×1011atoms/cmから、TXRF法の表面でのCu濃度測定値を2倍した値(2×1.8×1010atoms/cm)(表裏面の分)を減じ、シリコンウェーハ厚(725μm)で除すことにより算出することができる。バルク領域中のCu濃度は1.2×1013atoms/cmと算出することができた。
なお、表裏面とバルク領域中に存在する全Cu濃度(上記の9.0×1011atoms/cmをシリコンウェーハ厚で除した値)は1.2×1013atoms/cmと求められた。
(実施例2)
熱処理炉からの取り出し温度の代わりに冷却速度をパラメータとして用い、また、図4を用いる他は、実施例1と同様にしてシリコンウェーハのバルク領域中のCu濃度を算出したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
(参考例)
実施例1と同様の予備試験を行った。
一方、本試験は以下のようにして行った。
CZ法により、直径8インチ(200mm)、初期酸素濃度14ppma(JEIDA)、方位<100>のシリコン単結晶を引き上げ、これを加工してシリコンウェーハを得た。
このシリコンウェーハの裏面に対し、1.0×1012atoms/cmのCuを塗布した。
その後、シリコンウェーハ作製工程等での熱処理として700℃で10分の熱処理を施し、700℃で熱処理炉から取り出し、室温まで冷却した。この室温までの平均冷却速度は、60℃/分であった。
続いて、シリコンウェーハ表面におけるCu濃度をTXRF法にて求めたところ、6.0×1011atoms/cmの表面Cuの存在を確認した。
700℃取り出しの場合の図3における表面とバルク領域中のCu濃度存在割合は2であることから、6×1011atoms/cmを2倍すると1.2×1012atoms/cmとなり、上記Cu汚染濃度(1.0×1012atoms/cm)とほぼ一致した。
この値を用いて、実施例1と同様にしてバルク領域中Cu濃度を求めると、バルク領域中の濃度は0となり、実質的にバルク領域中Cu濃度は0であることがわかる。
図3から700℃以下における図3における初期汚染濃度とTXRF測定値との比は2となっていることがわかるが、これは、700℃以下では、バルク領域中にCu原子がほとんど存在せず、冷却中に表面に凝集してしまった状態を示しており、本例でもその状態をとっていることがわかった。
(比較例)
従来法により、シリコンウェーハ中のCu濃度の評価を行った。
CZ法により、直径8インチ(200mm)、初期酸素濃度14ppma(JEIDA)、方位<100>のシリコン単結晶を引き上げ、これを加工してシリコンウェーハを得た。
このシリコンウェーハの裏面に対し、1.0×1012atoms/cmのCuを塗布しておく。
その後、シリコンウェーハ作製工程等での熱処理として1000℃で5分の熱処理を施し、1000℃で熱処理炉から取り出し、室温まで冷却した。
そして、このシリコンウェーハ中のCu濃度の評価を行うにあたって、まず、前処理として、シリコンウェーハを250℃に加熱保持しつつ、120分間、1秒間に1×1010c/cmのコロナ放電処理を行った。
その後、TXRF法でウェーハ表面Cu濃度を測定したところ、1.1×1012atoms/cmのCuを検出した。この濃度は初期汚染濃度とほぼ一致し、この方法でもバルク中に存在しているCu濃度を把握することができたが、実施例1、2に比較し、前処理工程を追加した分だけ、時間やコストが余計にかかった。
また、表面にCu原子を凝集させてしまったため、新たに表面をCuで汚染したのと同じことになった。前処理を施し評価を行ったシリコンウェーハの状態は、評価前のウェーハと同じとは言えない。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、かつ同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、実施例1、2では1000℃で90℃/分となる冷却方法を用いているが、条件によって、必ずしもこの取り出し温度と冷却速度の関係である必要はない。熱処理炉の環境等によって適宜設定することが可能である。

Claims (2)

  1. シリコンウェーハ中のCu濃度を評価する方法であって、
    熱処理が施されたシリコンウェーハの表面でのCu濃度をTXRF法により測定し、
    前記熱処理においてシリコンウェーハを熱処理炉から取り出すときの温度又は熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度と、前記測定された表面でのCu濃度の測定値とから、シリコンウェーハのバルク領域中のCu濃度を評価することを特徴とするシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法。
  2. 前記シリコンウェーハ中のCu濃度を評価するとき、
    予め、熱処理が施され、Cu汚染量が既知の予備試験用のシリコンウェーハの表面でのCu濃度をTXRF法により測定し、該予備試験用のシリコンウェーハに関して、前記熱処理の熱処理炉から取り出すときの温度又は熱処理炉から取り出して冷却するときの冷却速度と、前記測定された表面でのCu濃度の測定値と、前記既知のCu汚染量とから相関関係を求めておき、
    該相関関係を用いて、前記評価するシリコンウェーハのバルク領域中のCu濃度を算出して評価することを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハ中のCu濃度評価方法。
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