JP5471527B2 - リチウム二次電池及びリチウム二次電池用電極 - Google Patents
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Description
ガーネット型酸化物Li5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)は、Li2CO3、La(OH)3、ZrO2、およびNb2O5を出発原料に用いて合成を行った。ここで、実験例1〜7のXの値は、それぞれX=0,1.0,1.5,1.625,1.75,1.875,2.0とした(表1参照)。はじめに、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離したのち、Al2O3製のるつぼ中にて、950℃、10時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後、本焼結でのLiの欠損を補う目的で、仮焼した粉末に、Li5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の組成中のLi量に対して Li換算で10at.%になるようにLi2CO3を過剰添加した。この混合粉末を、混合のためエタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間処理した。得られた粉末を再び950℃、10時間大気雰囲気の条件下で再度仮焼して仮焼体を得た。その後、この仮焼体を成型したのち、1200℃、36時間大気中の条件下で本焼結を行い、ガーネット型酸化物(実験例1〜7)を作製した。
1.相対密度
電子天秤にて測定した乾燥重量をノギスを用いて測定した実寸から求めた体積で除算することにより、各試料の測定密度を算出した。また、理論密度を算出し、測定密度を理論密度で除算し100を乗算した値を相対密度(%)とした。実験例1〜7の相対密度は、88〜92%であった。
各試料の相及び格子定数は、XRDの測定結果から求めた。XRDの測定は、XRD測定器(ブルカー(Bruker)製、D8ADVANCE)を用いて、試料粉末をCuKα、2θ:10〜120°,0.01°step/1sec.の条件で測定した。結晶構造解析は、結晶構造解析用プログラム:Rietan−2000(Mater. Sci. Forum, p321−324(2000),198)を用いて解析を行った。代表例として実験例1,3,5,7つまりLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0,1.5,1.75,2)のXRDパターンを図3に示す。図3から、各試料は不純物を含まず単相であることがわかる。また、実験例1〜3,5〜7につき、XRDパターンより求めた格子定数のX値依存性を図4に示す。図4から、Zrの割合が増えるほど格子定数が増大することがわかる。これは、Zr4+のイオン半径(rZr4+=0.79Å)がNb5+のイオン半径(rNb5+=0.69Å)よりも大きいためである。格子定数が連続的に変化していることから、NbはZrサイトに置換されていると考えられる(全率固溶が可能と考えられる)。
リチウムイオン伝導度は、恒温槽中にてACインピーダンスアナライザーを用い(周波数:0.1Hz〜1MHz、振幅電圧:100mV)、ナイキストプロットの円弧より抵抗値を求め、この抵抗値から算出した。ACインピーダンスアナライザーで測定する際のブロッキング電極にはAu電極を用いた。Au電極は市販のAuペーストを850℃、30分の条件で焼き付けることで形成した。実験例1〜7つまりLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)の25℃でのリチウムイオン伝導度のX値依存性を図5に示す。図5から、リチウムイオン伝導度は、Xが1.4≦X<2のとき、公知のLi7La3Zr2O12(つまりX=2、実験例7)に比べて高くなり、Xが1.6≦X≦1.95のとき、実験例7に比べて一段と高くなり、Xが1.65≦X≦1.9の範囲のとき、ほぼ極大値(6×10-4Scm-1以上)を取ることがわかる。上記1.で述べたとおり、各試料の相対密度は88〜92%であったことから、リチウムイオン伝導度がX値に応じて変化するのは、密度による影響ではないと考えられる。
活性化エネルギー(Ea)はアレニウス(Arrhenius)の式:σ=Aexp(−Ea/kT)(σ:伝導度、A:頻度因子、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)を用い、アレニウスプロットの傾きより求めた。代表例として実験例1〜7のLi5+XLa3(ZrX,Nb2-X)O12(X=0〜2)のリチウムイオン伝導度の温度依存性(アレニウスプロット)を図11に示す。図11には、併せてLiイオン伝導性酸化物の中でも特に高いリチウムイオン伝導度を示すガラスセラミックスLi1+XTi2SiXP3-XO12・AlPO4(オハラ電解質、X=0.4)とLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(LAGP)のリチウムイオン伝導度の温度依存性(いずれも文献値)を示す。実験例1〜7につき、アレニウスプロットより求めた活性化エネルギーEa(25℃)のX値依存性を図12に示す。図12から、Xが1.4≦X<2のとき、Li7La3Zr2O12(つまりX=2、実験例7)より低い活性化エネルギーEa(つまり0.34eV未満)を示すことから、広い温度域でリチウムイオン伝導度が安定した値をとるといえる。また、Xが1.5≦X≦1.9のときには活性化エネルギーが0.32eV以下となり、特にXが1.75のときに極小値0.3eVとなった。0.3eVという値は既存のLiイオン伝導性酸化物中で最も低い値と同等の値である(オハラ電解質:0.3eV、LAGP:0.31eV)。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)の室温大気中での化学的安定性を調べた。具体的には、大気中に放置したLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12のリチウムイオン伝導度の経時変化(0〜7日)の有無を確認することで行った。その結果を図13に示す。バルクの抵抗成分が大気中に放置していた時間によらず一定であることから、ガーネット型酸化物は室温大気中でも安定といえる。
ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)の電位窓を調べた。電位窓は、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12のバルクペレットの片面に金を、もう片面にLiメタルを貼り付け、0〜5.5V(対Li+)および−0.5V〜9.5V(対Li+)の範囲で電位をスイープ(1mV/sec.)させることで調べた。その測定結果を図14に示す。電位を0〜5.5Vの範囲で走査しても、電流は全く流れなかった。このことからLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12は0〜5.5Vの範囲で安定といえる。走査する電位を−0.5 〜9Vに広げると、0Vを境にして、酸化・還元電流が流れた。これはリチウムの酸化・還元に起因すると思われる。また、約7V以上でわずかに酸化電流が流れ始めた。しかし、流れる酸化電流量が非常に微弱であること、目視で色に変化が無いことなどから、流れる酸化電流は電解質の分解ではなく、セラミックス中に含まれている微量の不純物や粒界の分解が原因だと考えている。
上記作製したリチウムイオンを伝導するガーネット型酸化物を用いて絶縁層を形成したリチウム二次電池を作製した。正極活物質として、層状Ni系活物質である、平均粒径が10μm程度であるLiNi0.80Co0.15Al0.05O2を用いた。この正極活物質を85重量%、導電材としてのカーボンブラックを10重量%、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%混合し、正極合材を作製した。この正極合材をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で分散させてペーストとし、この正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔に塗工乾燥させ、ロールプレスして高密度化し、正極電極とした。なお、正極電極は30mm×30mmとし、正極活物質の付着量は片面あたり7mg/cm2程度とした。次に、人造黒鉛を負極活物質とした。この負極活物質を95重量%、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%混合し、負極合材を作製した。この負極合材をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で分散させてペーストとした。この負極合材ペーストを厚さ10μmの銅箔集電体に塗工乾燥させ、ロールプレスして高密度化し、負極電極とした。なお、負極電極は30mm×30mmとし、負極活物質の付着量は片面あたり5mg/cm2程度とした。次に、上記ガーネット型酸化物Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(つまりX=1.75、実験例5)を用いて板状体の多孔質絶縁層を作製した。上記ガーネット型酸化物の本焼結前の仮焼体を平均粒径が0.6μm程度になるよう粉砕した。この平均粒径は、電子顕微鏡を用いて観察した領域内にある各粒子の短径と長径とを計測し、この短径と長径との平均値を1つの粒径とし、全粒子の平均値を算出することにより求めた。このガーネット型酸化物の仮焼体粒子を用い、カーボン粒子(平均粒径40nm)をガーネット型酸化物に対して1重量%となるよう配合して、平板状(30mm×30mm)の成形型により成形した。この成形体を1200℃、36時間大気中の条件下で本焼結を行い、ガーネット型酸化物により形成された多孔質絶縁体を作製した。この多孔質絶縁体を負極電極表面(負極活物質層の表面)に圧着し、本発明のリチウム二次電池用電極を作製した。そして、負極電極、絶縁層、セパレータ(東燃タピルス製、PE25μm厚)、正極電極の順に積層し、電解液を満たして実験例8のリチウム二次電池を作製した。電解液は、LiPF6を、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7)に1mol/L濃度で溶解したものを用いた。
上記作製したリチウムイオンを伝導するガーネット型酸化物を含むスラリーを用い、絶縁層を負極活物質層の表面に塗布して形成した以外は、実験例8と同様の工程を経て得られたリチウム二次電池を実験例9とした。絶縁層の形成では、まず、平均粒径0.6μmのリチウムイオンを伝導するガーネット型酸化物を72重量部、ポリフッ化ビニリデンを3重量部、NMPを25重量部混合し、スラリーを調製した。このスラリーを負極活物質層の表面に厚さ20μmとなるように塗布し、乾燥することにより、負極活物質層の表面に絶縁層を形成した、本発明のリチウム二次電池用電極を作製した。
上記作製したリチウムイオンを伝導するガーネット型酸化物を含むスラリーを用い、負極活物質層の表面に静電塗装して6μmの絶縁層を形成した以外は、実験例8と同様の工程を経て得られたリチウム二次電池を実験例10とした。
作製した電池について、0.2C(100mA)の電流で、上限4.1V、下限3.0Vとして充放電を5サイクル実行するコンディショニングを行った。次に、20℃の温度条件下で電流密度0.2mA/cm2の定電流・低電圧充電方式で充電上限電圧である4.1Vまで7時間かけて充電した。次いで、電流密度0.1mA/cm2の定電流で放電下限電圧である3.0Vまで放電を実施した。実験例8〜10の電池は、いずれも良好に充放電し、良好な電池特性を有することがわかった。
Claims (5)
- リチウムを吸蔵・放出する正極活物質を有する正極と、
リチウムを吸蔵・放出する負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムを伝導する電解液と、
前記正極の表面、前記負極の表面及び前記電解液中のうち少なくとも1以上に存在し、Zrを含有しリチウムイオンを伝導するガーネット型酸化物により形成された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、組成式Li5+XLa3(ZrX,A2-X)O12(式中、AはSc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,Ga及びGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素、Xは1.4≦X≦1.875)で表されるガーネット型酸化物により形成されている、
リチウム二次電池。 - 前記絶縁層は、前記AがNbである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
- 前記絶縁層は、多孔質絶縁層である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
- リチウムを吸蔵・放出する活物質層と、Zrを含有しリチウムイオンを伝導するガーネット型酸化物により前記活物質層の表面に形成された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、組成式Li5+XLa3(ZrX,A2-X)O12(式中、AはSc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,Ga及びGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素、Xは1.4≦X≦1.875)で表されるガーネット型酸化物により形成されている、
リチウム二次電池用電極。 - 前記絶縁層は、多孔質絶縁層である、請求項4に記載のリチウム二次電池用電極。
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