JP5471084B2 - 光硬化性材料の製造方法、光硬化性材料および物品 - Google Patents
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Description
[1]下記の工程(i)〜(iii)を有する、光硬化性材料の製造方法。
(i)複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(A)の1種以上と、メルカプト基およびカルボキシ基を有する化合物(B)とを反応させて、前記化合物に由来するカルボキシ基を末端に有する表面修飾剤(C)を得る工程。
(ii)無機微粒子(D)の表面を前記表面修飾剤(C)で修飾して、表面修飾無機微粒子(E)を得る工程。
(iii)前記表面修飾無機微粒子(E)と、下記硬化性成分(F)と、光重合開始剤(G)とを含む光硬化性材料を得る工程。
硬化性成分(F):複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(f1)の1種以上と、複数のメルカプト基を有しカルボキシル基を有しない化合物(f2)の1種以上とからなる硬化性成分。
[3]前記工程(ii)における無機微粒子(D)の質量が、前記工程(i)で用いた化合物(B)の質量の0.2〜30倍である、[1]または[2]に記載の光硬化性材料の製造方法。
[5]前記化合物(B)が、下記の条件(α)〜(γ)を満足する、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
条件(α):メルカプト基を1つ以上有する、条件(β):カルボキシ基を1つ以上有する、条件(γ):1級アミノ基を有していない。
[6]前記化合物(B)の分子量が、600以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
[8]前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化ランタンおよび酸化ガドリニウムからなる群から選ばれる1種以上である、[7]に記載の光硬化性材料の製造方法。
[9]前記無機微粒子(D)の平均一次粒子径が、2〜100nmである、[1]〜[8]のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
[11][1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法で得られた、光硬化性材料。
[12]溶媒を含まない、[11]に記載の光硬化性材料。
[13][11]または[12]に記載の光硬化性材料を硬化してなる、物品。
[14]基材の表面に、[11]または[12]に記載の光硬化性材料を硬化してなる硬化膜を有する、物品。
本発明の光硬化性材料の製造方法は、下記の工程(i)〜(iii)を有する方法である。
(i)複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(A)の1種以上と、メルカプト基およびカルボキシ基を有する化合物(B)とを反応させて、前記化合物に由来するカルボキシ基を末端に有する表面修飾剤(C)を得る工程。
(ii)無機微粒子(D)の表面を前記表面修飾剤(C)で修飾して、表面修飾無機微粒子(E)を得る工程。
(iii)前記表面修飾無機微粒子(E)と、下記硬化性成分(F)と、光重合開始剤(G)とを含む光硬化性材料を得る工程。
硬化性成分(F):複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(f1)の1種以上と、複数のメルカプト基を有しカルボキシル基を有しない化合物(f2)の1種以上とからなる重合性成分。
工程(i)は、複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(A)の1種以上と、メルカプト基およびカルボキシ基を有する化合物(B)とを反応させて、前記化合物に由来するカルボキシ基を末端に有する表面修飾剤(C)を得る工程である。
(化合物(A))
化合物(A)は、複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物であり、後述する化合物(f1)として例示するものと同様のものが挙げられる。
化合物(A)としては、表面修飾無機微粒子(E)の硬化性成分(F)への分散性の点から、後述する硬化性成分(F)を構成する化合物(f1)と同一の化合物を用いることが好ましい。
化合物(B)は、メルカプト基およびカルボキシ基を有する化合物である。
化合物(B)としては、表面修飾剤(C)の無機微粒子(D)への結合性、表面修飾無機微粒子(E)の重合性成分(F)への分散性の点から、下記の条件(α)〜(γ)を満足する化合物が好ましい。
条件(α):メルカプト基を1つ以上有する。
条件(β):カルボキシ基を1つ以上有する。
条件(γ):1級アミノ基を有していない。
メルカプト基は、保護基によって保護されていてもよい。該場合、保護基を外してから化合物(A)と反応させてもよく、脱保護条件下で化合物(A)と反応させてもよい。保護基としては、トリチル基、ベンジル基、ジスルフィド結合等の既知の保護基が挙げられる。
N−アセチルアミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、イミノ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、ホルミル基、ケト基、カルボキシ基、酸塩化物、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトロソ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、フェニル基、シクロアルキル基、複素環基、チオエーテル基、メルカプト基、スルホニル基、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)基等。
なお、置換基が、メルカプト基の場合、該メルカプト基をもって条件(α)も同時に満たしているとしてもよい。
N−アセチルシステイン(163.2)、
N−プロピオニルシステイン(177.2)、
N−ブタノイルシステイン(191.3)、
N−ヘキサノイルシステイン(219.3)、
N−オクタノイルシステイン(247.4)、
N−デカノイルシステイン(275.4)、
N−ドデカノイルシステイン(303.5)、
N−テトラデカノイルシステイン(331.5)、
N−ヘキサデカノイルシステイン(359.6)、
N−オクタデカノイルシステイン(387.6)、
N−アセチルホモシステイン(177.2)、
アセチルアミノメルカプト酢酸(149.2)、
Fmoc−システイン(343.4)、
Fmoc−S−トリチルシステイン(585.7)、
Fmoc−S−ベンジルシステイン(433.5)、
N−メチルシステイン(135.2)、
N,N−ジメチルシステイン(149.2)、
2−エチルアミノ−3−メルカプトプロピオン酸(149.2)、
2−プロピルアミノ−3−メルカプトプロピオン酸(163.2)、
システインベタイン(163.2)、
チオグリコール酸(92.1)、
2−メルカプトプロピオン酸(106.1)、
2−メルカプト酪酸(120.2)、
2−メルカプト−3−メチル酪酸(134.2)、
2−メルカプトペンタン酸(134.2)、
2−メルカプト−3−メチルペンタン酸(148.2)、
2−メルカプト−4−メチルペンタン酸(148.2)、
2−メルカプトヘキサン酸(148.2)、
2−メルカプト−3−メチルヘキサン酸(162.3)、
2−メルカプトヘプタン酸(162.3)、
2−メルカプトオクタン酸(176.3)、
2−メルカプトノナン酸(190.3)、
2−メルカプトデカン酸(204.3)、
2−メルカプトウンデカン酸(218.4)、
2−メルカプトドデカン酸(232.4)、
2−メルカプトテトラデカン酸(260.4)、
2−メルカプトヘキサデカン酸(288.5)、
2−メルカプトオクタデカン酸(316.5)、
2,3−ジメルカプトプロピオン酸(138.2)、
2,3−ジメルカプトコハク酸(188.2)、
2−フルオロ−3−メルカプトプロピオン酸(124.1)、
2−クロロ−3−メルカプトプロピオン酸(140.6)、
2−ブロモ−3−メルカプトプロピオン酸(185.0)、
2−アイオド−3−メルカプトプロピオン酸(232)、
2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロピオン酸(122.1)、
2−ヒドロキシ−4−メルカプトプロピオン酸(136.2)、
2−ヒドロキシアミノ−3−メルカプトプロピオン酸(137.2)、
2−フェニル−3−メルカプトプロピオン酸(182.2)、
メルカプトフェニル酢酸(168.2)、
メルカプトトリル酢酸(182.2)、
3−アセチルアミノ−3−メルカプトプロピオン酸(163.2)、
N−メトキシカルボニルシステイン(179.2)、
N−エトキシカルボニルシステイン(193.2)、
N−カルボキシシステイン(165.2)、
3−メルカプトプロピオン酸(106.1)、
3−メルカプト酪酸(120.2)、
3−メルカプト−2−メチル酪酸(134.2)、
3−メルカプトペンタン酸(134.2)、
3−メルカプト−4−メチルペンタン酸(148.2)、
3−メルカプトヘキサン酸(148.2)、
3−メルカプトノナン酸(190.3)、
3−メルカプトデカン酸(204.3)、
2−メルカプトコハク酸(150.2)、
2−メルカプトメチルコハク酸(164.2)、
2−メルカプトマロン酸(136.1)、
3−ヒドロキシ−4−メルカプト酪酸(136.2)、
2−メルカプト安息香酸(154.2)、
3−メルカプト安息香酸(154.2)、
4−メルカプト安息香酸(154.2)、
テトラフルオロ−4−メルカプト安息香酸(226.15)、
2−メルカプトメチル安息香酸(168.2)、
3−メルカプトメチル安息香酸(168.2)、
4−メルカプトメチル安息香酸(168.2)、
2−メルカプトフェニル酢酸(168.2)、
3−メルカプトフェニル酢酸(168.2)、
4−メルカプトフェニル酢酸(168.2)、
2−メルカプトメチルフェニル酢酸(182.2)、
3−メルカプトメチルフェニル酢酸(182.2)、
4−メルカプトメチルフェニル酢酸(182.2)、
α−メルカプトメチルフェニル酢酸(182.2)、
α−メルカプト−α−フェニルフェニル酢酸(244.3)、
α−メルカプトメチル−α−フェニルフェニル酢酸(258.3)、
α−メルカプトメチル−α−エチルフェニル酢酸(210.3)等。
表面修飾剤(C)は、複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(A)の1種以上と、メルカプト基およびカルボキシ基を有する化合物(B)とを反応させて得られる。
化合物(A)の1種以上と化合物(B)との反応は、化合物(A)の有する炭素−炭素不飽和二重結合と化合物(B)の有するメルカプト基との反応、すなわちエン−チオール反応である。化合物(A)と化合物(B)とを反応させる理由は、下記の通りである。
有機物に対して親和性のない無機物を、有機物中に安定して分散させるためには、該有機物で無機物の表面を修飾することが理想的である。工程(i)においては、該理想的な状態に近づけるべく、無機微粒子(D)を分散させる硬化性成分(F)を構成する化合物(f1)と同種の化合物(A)に、化合物(B)を反応させることによって、無機微粒子(D)と結合できるカルボキシ基を導入する。これにより、工程(ii)において、重合性成分(F)と親和性が高い構造を、化合物(A)および無機微粒子(D)以外の第3成分の存在を極力減らした状態で、無機微粒子(D)の表面に導入できる。
該反応は、完全に行う必要はなく、未反応物が残存していてもよい。また、化合物(A)の一部が重合して得られた重合物の末端に化合物(B)が反応してもよい。
光重合開始剤の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。
光の種類は、光重合開始剤に応じて適宜選択すればよく、たとえば、365nmに主波長を有する紫外線が挙げられる。光の照射時間は、たとえば、10mWの照射密度であれば、1分〜3時間である。
工程(ii)は、無機微粒子(D)の表面を表面修飾剤(C)で修飾して、表面修飾無機微粒子(E)を得る工程である。
無機微粒子(D)としては、金属酸化物の微粒子が好ましい。
金属酸化物としては、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、および周期表14族に属する金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。
周期表4族に属する金属としては、Ti、Zr、Hf等が挙げられる。
周期表13族に属する金属としては、Al、Ga、In等が挙げられる。
周期表14族に属する金属としては、Si、Ge、Sn、Pb等が挙げられる。
無機微粒子(D)の平均一次粒子径は、分散液の状態にて動的散乱法で測定される。
無機微粒子(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上から構成される複合金属酸化物の微粒子であってもよい。
水系分散液中の無機微粒子(D)の濃度は、1〜35質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。濃度が薄すぎると、水系分散液からの表面修飾無機微粒子(E)の抽出効率が悪くなる。濃度が濃すぎると、水系分散液から表面修飾無機微粒子(E)を抽出する際にかかる機械的ストレスにより、水系分散液中で無機微粒子(D)が凝集を起こしてしまう。
表面修飾無機微粒子(E)は、無機微粒子(D)の表面を表面修飾剤(C)で修飾して得られる。
該修飾は、たとえば、水への溶解度の低い有機溶媒に表面修飾剤(C)を溶解した溶液と、無機微粒子(D)の水系ゾルとを混合し、表面修飾無機微粒子(E)を有機溶媒に抽出することによって行われる。
該抽出液が水を含む場合、ヘキサン等の疎水性の高い有機溶媒を、該抽出液に添加することで、該抽出液に溶け込んだ水をさらに除去できる。
硬化性成分(F)と親和性の高い化合物(A)に由来する構造を無機微粒子(D)の表面に導入したわけであるから、多少なりとも親和性の劣る溶媒は、できるだけ残存していないほうが、表面修飾無機微粒子(E)の抽出液の一時保管する際、または、工程(iii)にて硬化性成分(F)を混合する際に、相分離や表面修飾無機微粒子(E)の凝集を抑制できる。減圧留去の際に、メタノール、エタノール等のアルコールを少量添加すると水が共沸するため、さらに好ましい。
工程(iii)は、表面修飾無機微粒子(E)と硬化性成分(F)と光重合開始剤(G)とを含む光硬化性材料を得る工程である。
硬化性成分(F)は、複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(f1)の1種以上と、複数のメルカプト基を有しカルボキシル基を有しない化合物(f2)の1種以上とからなる硬化性成分である。
CH2=CHCH2−O−COO−CH2CH=CH2、
CH2=CH−COO−(CH2)6−OCO−CH=CH2、
CH2=C(CH3)−COO(CH2CH2O)3−CO−C(CH3)=CH2、
CH2=CH−CH2−O−COO(CH2CH2O)2−COO−CH2−CH=CH2、
CH2=CHCH2−O−CONH(CH2)6NHCOO−CH2−CH=CH2。
トリメチロールエタン トリス(2−メルカプトプロピオネート)、
トリメチロールエタン トリス(2−メルカプトブタネート)
トリメチロールプロパン トリス(2−メルカプトアセテート)、
トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)、
ペンタエリスリトール テトラキス(2−メルカプトプロピオネート)、
ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、
ジエチレングリコール ビス(2−メルカプトアセテート)、
N,N−ビス(2−ヒドロキシメチル)ジメチルヒダントイン ビス(3−メルカプトプロピオネート)。
光重合開始剤(G)としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられ、感度および相溶性の点から、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましい。
アセトフェノン、p−(tert−ブチル)1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等。
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等。
α−アミノケトン系光重合開始剤としては、下記の化合物が挙げられる。
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン等。
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等。
光重合開始剤(G)の量は、化合物(A)および硬化性成分(F)の合計量に対して、0.05〜5質量%であることが好ましい。
光硬化性材料は、表面修飾無機微粒子(E)、硬化性成分(F)および光重合開始剤(G)を除く、添加剤(H)を含んでいてもよい。
添加剤(H)としては、界面活性剤、光増感剤、他の樹脂、炭素化合物、金属微粒子、他の有機化合物等が挙げられる。
他の樹脂としては、ポリスチレン、ポリチオフェン、ポリエステルオリゴマー、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素化合物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
金属微粒子としては、銅、白金等が挙げられる。
他の有機化合物としては、ポルフィリン、金属内包ポリフィリン等が挙げられる。
添加剤(H)を添加するタイミングは、工程(i)〜工程(iii)、または工程(iii)の後のいずれであってもよく、工程(iii)の後が好ましい。
光硬化性材料の調製は、たとえば、表面修飾無機微粒子(E)に硬化性成分(F)を加え、よく撹拌し、ついで光重合開始剤(G)を加え、よく撹拌することによって行われる。
化合物(A)および硬化性成分(F)の合計の割合は、化合物(A)、無機微粒子(D)、および硬化性成分(F)の合計(100質量%)のうち、20〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。化合物(A)および硬化性成分(F)の合計の割合が20質量%以上であれば、光硬化性材料として、その光硬化性を充分有していられる。化合物(A)および硬化性成分(F)の合計の割合が90質量%以下であれば、各原料を均一に混合しやすくなる。
工程(i)にて化合物(A)と化合物(B)とを反応させて表面修飾剤(C)を得て、ついで工程(ii)にて無機微粒子(D)の表面を表面修飾剤(C)で修飾して表面修飾無機微粒子(E)を得ているため、硬化性成分(F)と親和性が高く、かつ反応点となる化合物(A)に由来する構造を、化合物(A)および無機微粒子(D)以外の第3成分の存在を極力減らした状態で、無機微粒子(D)の表面に簡便に導入できる。該表面修飾無機微粒子(E)は、硬化性成分(F)との親和性および反応点の両方を持ち合わせているため、工程(iii)にて得られる光硬化性材料およびその硬化時において表面修飾無機微粒子(E)の分散性が保たれる。また、無機微粒子(D)を修飾する化合物が嵩高くない。その結果、透明性の高い高屈折率の硬化物を形成できる。
本発明の光硬化性材料は、本発明の製造方法で得られた組成物であり、表面修飾無機微粒子(E)と重合性成分(F)と光重合開始剤(G)とを含む。
本発明の光硬化性材料は、実質的に溶媒を含まないことが好ましい。光硬化性材料が実質的に溶媒を含まなければ、光の照射を除く特別な操作(たとえば、光硬化性材料を高温に加熱して溶媒を除去する操作等)を行うことなく、光硬化性材料の硬化を容易に行える。
実質的に溶媒を含まないとは、溶媒を全く含まない、または光硬化性材料を調製する際に用いた溶媒を残存溶媒として含んでいてもよいことを意味する。ただし、残存溶媒は、極力除去されていることが好ましく、光硬化性材料(100質量%)中、10質量%以下がより好ましい。
硬化後の光硬化性材料の波長589nmにおける屈折率は、アッベ屈折率計を用い23℃にて測定する。
本発明の物品は、本発明の光硬化性材料を硬化してなるもの、または、基材の表面に、本発明の光硬化性材料を硬化してなる硬化膜を有するものである。
以下の各例において用いた化合物を示す。
化合物(B−1):N−アセチルシステイン
化合物(B−2):チオグリコール酸
化合物(B−3):3−メルカプトプロピオン酸
酸化ジルコニウム微粒子分散水溶液(D):日産化学製ZR−AL30(比重1.36、微粒子含量30.5質量%)
化合物(f1−1):イソシアヌル酸トリアリル
化合物(f2−1):トリメチロールプロパントリスチオグリコレートと推定される化合物
光重合開始剤(G):2−エトキシ−2−フェニルアセトフェノン
エン−チオール硬化性成分(F):化合物(f1−1)と化合物(f2−2)とを、質量比が249.3:356.5となるように混合し、エン−チオール硬化性組成物(F)を調製した。
メチルエチルケトン(MEK)の3mlをガラス製サンプル瓶にとり、化合物(B−1)の200mgと、化合物(f1−1)の639mgと、光重合開始剤(G)の2mgとを溶解し、365nm、10mWの紫外光を1時間照射し、表面修飾剤(C1)とした。
表面修飾剤(C1)の瓶に、エン−チオール硬化性成分(F)の684mgと、光重合開始剤(G)の2mgとを加え、365nm、10mWの紫外光を1時間照射した。
ついで、MEKを加えて20mlとし、ここへ、酸化ジルコニウム微粒子分散水溶液(D)の4ml(酸化ジルコニウムにして1659mg)を水で20mlに希釈した溶液を加えて、よく撹拌し、16時間静置した。瓶内の溶液は2相に分かれ、上が水相、下がMEK相となった。下がMEK相となったのは、MEK相が酸化ジルコニウム微粒子を含み、全体として水より比重が大きくなったためである。
光硬化性組成物(K1)を、バーコートによって、ソーダライムガラス基板上に、10μmの厚みになるよう展開し、365nm、10mWの紫外光を10分間照射し、硬化させ、透過率測定用試料(L1)とした。
メチルエチルケトン(MEK)の3mlをガラス製サンプル瓶にとり、化合物(B−2)の226mgと、化合物(f1−1)の639mgと、光重合開始剤(G)の2mgとを溶解し、365nm、10mWの紫外光を1時間照射し、表面修飾剤(C2)とした。
表面修飾剤(C2)の瓶に、エン−チオール硬化性成分(F)の684mgと、光重合開始剤(G)の2mgとを加え、365nm、10mWの紫外光を1時間照射した。
メチルエチルケトン(MEK)の3mlをガラス製サンプル瓶にとり、化合物(B−3)の130mgと、化合物(f1−1)の639mgと、光重合開始剤(G)の2mgとを溶解し、365nm、10mWの紫外光を1時間照射し、表面修飾剤(C3)とした。
メチルエチルケトン(MEK)の3mlをガラス製サンプル瓶にとり、化合物(f1−1)の639mgと、光重合開始剤(E)の2mgとを溶解し、365nm、10mWの紫外光を1時間照射し、表面修飾剤(C’−4)とした。
表面修飾剤(C‘−4)の瓶に、エン−チオール硬化性成分(F)の684mgと、光重合開始剤(G)の2mgとを加え、365nm、10mWの紫外光を1時間照射した。
メチルエチルケトン(MEK)の3mlをガラス製サンプル瓶にとり、化合物(B−1)の200mgと、化合物(f1−1)の639mgを溶解し、表面修飾剤(C’−5)とした。
Claims (14)
- 下記の工程(i)〜(iii)を有する、光硬化性材料の製造方法。
(i)複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(A)の1種以上と、メルカプト基およびカルボキシ基を有する化合物(B)とを反応させて、前記化合物に由来するカルボキシ基を末端に有する表面修飾剤(C)を得る工程。
(ii)無機微粒子(D)の表面を前記表面修飾剤(C)で修飾して、表面修飾無機微粒子(E)を得る工程。
(iii)前記表面修飾無機微粒子(E)と、下記硬化性成分(F)と、光重合開始剤(G)とを含む光硬化性材料を得る工程。
硬化性成分(F):複数の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物(f1)の1種以上と、複数のメルカプト基を有しカルボキシル基を有しない化合物(f2)の1種以上とからなる硬化性成分。 - 前記工程(i)における、前記化合物(B)のモル数が、前記化合物(A)のモル数の0.01〜2倍である、請求項1に記載の光硬化性材料の製造方法。
- 前記工程(ii)における無機微粒子(D)の質量が、前記工程(i)で用いた化合物(B)の質量の0.2〜30倍である、請求項1または2に記載の光硬化性材料の製造方法。
- 前記化合物(A)、前記無機微粒子(D)、および前記硬化性成分(F)の合計(100質量%)のうち、
前記化合物(A)および前記硬化性成分(F)の合計が、20〜90質量%であり、
前記無機微粒子(D)が、10〜80質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。 - 前記化合物(B)が、下記の条件(α)〜(γ)を満足する、請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
条件(α):メルカプト基を1つ以上有する。
条件(β):カルボキシ基を1つ以上有する。
条件(γ):1級アミノ基を有していない。 - 前記化合物(B)の分子量が、600以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
- 前記無機微粒子(D)が、金属酸化物の微粒子である、請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
- 前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化ランタンおよび酸化ガドリニウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項7に記載の光硬化性材料の製造方法。
- 前記無機微粒子(D)の平均一次粒子径が、2〜100nmである、請求項1〜8のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
- 前記化合物(A)が、前記硬化性成分(F)を構成する前記化合物(f1)のうちの1種以上からなる、請求項1〜9のいずれかに記載の光硬化性材料の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法で得られた、光硬化性材料。
- 溶媒を含まない、請求項11に記載の光硬化性材料。
- 請求項11または12に記載の光硬化性材料を硬化してなる、物品。
- 基材の表面に、請求項11または12に記載の光硬化性材料を硬化してなる硬化膜を有する、物品。
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