JP5462935B2 - イオン分離方法および質量分析装置 - Google Patents

イオン分離方法および質量分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、生体関連物質などの分析に用いられるイオントラップ型質量分析計に関する。特に、イオントラップが他質量分析計における、イオントラップ内に特定の質量電荷比m/z範囲のイオンだけを残す技術に関する。
四重極イオントラップ質量分析計では、Rf電界により一定時間だけイオンをトラップし、濃縮されたイオンをその質量電荷比(m/z)に応じてイオントラップから順次排出し、検出器で検出することができる。このことにより、質量分析が実現する。
さらに、特定のイオンを対象に解離イオン(フラグメントイオン)の質量スペクトルを取得するタンデム質量分析も実施することができる。すなわち、複数種類のイオンをイオントラップ内部で蓄積し、タンデム質量分析の対象とする前駆体イオンを蓄積されたイオンの中から選定する。
そして、選定された前駆体イオン以外のイオンをイオントラップから排出し、前駆体イオンだけをイオントラップに残すアイソレーションが実施される。
アイソレーションされた前駆体イオンは、衝突誘起解離(CID: Collision-Induced Dissociation)や赤外多光子解離(IRMPD: Infrared Multiphoton Dissociation)、電子捕獲解離(ECD: Electron Capture Dissociation)、電子移動解離(ETD: Electron Transfer Dissociation)などの解離手段により解離され、生成された解離イオンはイオントラップに蓄積される。
そして、解離イオンがm/zに応じてイオントラップから送出されて検出器で検出されることにより、解離イオンのm/zを決定することができる。さらに、特定の解離イオンを前駆体イオンとして残留させるようにアイソレーションを実施し、更なる解離を実施するMS分析(MS/MS/MS,MS/MS/MS/MS)も実施することができる。
以下では、四重極イオントラップにおける既知のアイソレーション方法について述べる。
四重極イオントラップには、リング型電極と一対のお椀型電極から構成される三次元四重極イオントラップ(3DQ)や、平行なポール電極から構成されるリニアイオントラップ(LIT)が存在するが、原理は同様である。
四重極イオントラップにおけるイオンは、対向する電極間に印加されるRf電圧によりRf周波数と同一の周波数で微振動(マイクロモーション)するとともに、Rf周波数より低い周波数でも振動(永年モーション)しながら、特定の空間内にトラップされる。
そして、永年モーションの周波数は、イオンのm/zに依存する性質を有する。そこで、特定のm/zイオンに対応する永年モーションの周波数を持つ交流電界(サプリメンタルAC)をイオンがトラップされた空間に加えると、そのイオンの運動は、共鳴により永年モーションの振幅が増大する。
そして、サプリメンタルACの電圧を高く設定すればするほど、共鳴するイオンの振幅は増加し、最後にはイオンが電極に衝突したり、残留ガスとの衝突により解離したりするなどによりイオントラップから排出される。
また、イオンがサプリメンタルACへ暴露される時間を長くすればするほど、残留ガスとの衝突により解離するなどによりイオントラップから排出される。
イオンのアイソレーションには、上記の原理が利用される。
四重極イオントラップにトラップされた複数種のイオンに対し、前駆体イオンだけを残して他のイオンを排出するには、他のイオンのm/zに対応する周波数のサプリメンタルACを印加して共鳴排出することによりアイソレーションは実現する。
しかし、他のイオンの種類が非常に多い場合やそれらのm/zが不明の場合には、前駆体イオンとは共鳴しない範囲で、他のイオン全てが順次共鳴排出されるようにサプリメンタルACの周波数をスイープする(ある範囲で変化させる)ことが有効である。この場合、前駆体イオンが100%保存され、他のイオンが完全に排出されることが理想である。
そのためには、Rf電圧を増加させ、前駆体イオンをトラップする際の永年モーションの安定性を高くする必要がある。この安定性に関係する指標として、次のa値およびq−値が知られている。
Figure 0005462935
Figure 0005462935
ここで、eは素電荷、Uはイオントラップに印加する直流電圧、rはイオントラップ電極内半径、mはイオンのm/z、FはRf周波数、VRFはRfの電圧である。
通常、直流電圧Uは0とするので、aは0となり、結局、永年モーションの安定性はq−値で表わされる。
この場合、安定性があるのは、qが0.908付近までであり、この数値が高いほど永年モーションの安定性が高く、共鳴排出が起こりやすいことが知られている。
ただ、四重極イオントラップの構造や前駆体イオンのm/zに依存するが、Rf電圧を発生させる電源などの制約で、サプリメンタルACの周波数を変化させることが困難となる場合がある。
ところが、次の式(3)に示すように、q−値とイオンに共鳴排出が起こる共鳴周波数fには次の関係式があることが知られている。
Figure 0005462935
よって、式(2)および式(3)を組み合わせると、同様の共鳴排出は、サプリメンタルACの周波数を固定し、Rf電圧(VRF)をスイープ(特許文献1)することによっても実現出来ることがわかる。
例えば、所定のサプリメンタルACを印加し、最初に前駆体イオンより低いm/zのイオンを共鳴排出するようにRf電圧をスイープし、次に、前駆体イオンより高いm/zのイオンを共鳴排出するようにRf電圧をスイープすればアイソレーションは完了する。
さらに、周波数の異なるサプリメンタルACを合成すると、同時に複数種のm/zを有するイオンを共鳴排出することができ、分析のスループット向上に有利である。
すなわち、前駆体イオン以外のイオンが同時に排出されるように様々な周波数を有するサプリメンタルACを発生させることができると、短時間にアイソレーションが完了する。この原理を活用したのがFNF(Filtered Noise Field)(特許文献3)やSWIFT(Stored Waveform Inverse Fourier Transform)などと呼ばれる方式である。発生される波形は、典型的なブロードバンドだが、アイソレーション範囲でイオンと共鳴する周波数成分だけは振幅がゼロとなるように構成する。
実際に発生される波形は、規則的な周波数間隔を有する多数のサプリメンタルACが合成されたものである。そのため、隣接する周波数の中間で共鳴するイオンでは、ACの振幅が相対的に低いため、共鳴排出の効率が必ずしも高くない。
このような事情があり、比較的高い電圧のブロードバンド波形を一定時間印加するか、先述のようにRf電圧(q−値)をスイープすることが有効である。
また、前駆体イオンのm/zよりも低いm/zのイオンに対しては固定されたサプリメンタルACを印加しながらRf電圧をスイープすることにより低m/z領域のイオンを排出し、高m/z領域のイオンに対しては対応する周波数領域においてブロードバンド波形を比較的短時間だけ印加することによってもアイソレーションを実施することができる。
このような方式を用いると、ブロードバンド波形から発生する高調波の影響を回避することができる。一方、幅が1Da(ダルトン)以下の狭いm/z範囲をアイソレーションする場合には、アイソレーションの中心m/zに対応する共鳴周波数に近いACの周波数を考慮し、Rf電圧(q−値)のスイープを実施することが有効である。
このように、状況に応じて、ある周波数のみのサプリメンタルAC、周波数の異なるサプリメンタルACを合成したもの、もしくは、様々な周波数を合成したブロードバンドACなど、永年モーションの振幅を大きくし、共鳴排出を起こさせるために、元のRfに加えて補助的な高周波(補助Rf)を用いる。
また、三次元四重極イオントラップにおいては、曲面で構成される電極にイオン排出用の穴が設けられているため、イオントラップ内部の四重極電界に歪が生じる。そこで、外部に電極を設置して電界の歪を補正することにより、精度の高いアイソレーションを実現することができる。
アイソレーションを行う際には、測定の目的によって、スループットを高める、前駆体イオン以外のイオンの十分に排除する、前駆体イオンの排出や解離を最小限に留める、アイソレーション幅をより精密にする(特許文献4)などのチューニングを行う必要がある。
米国特許第4736101号明細書 米国特許第4749860号明細書 米国特許第5134286号明細書 米国特許第7456396号明細書 米国特許第5640011号明細書 米国特許第7285773号明細書
K.R. Jonscher and J.R. Yates, III, The Whys and Wherefores of Quadrupole Ion Trap Mass Spectrometry, ABRF News. 7, 1-15 (1996). M. H. Soni and G. R. Cooks, Selective injection and isolation of ions in quadrupole ion trap mass spectrometry using notched waveforms created using the inverse Fourier transform, Analytical Chemistry 66, 2488-2496 (1994).
イオントラップを用いた質量分析方法において、分析全体のスループットや感度を上げるためには、アイソレーションを高速に行う必要がある。イオントラップに導入されるイオンの量に依存するが、イオンが導入されるアキュミュレーション時間は数ミリ秒程度の場合がしばしば起こる。このような短時間のアキュミュレーションに対し、アイソレーションに要する時間は同等以下であることが望ましい。典型的には、アイソレーションが5ミリ秒以下で完了することが望ましい。
また、高スループット化のためには、単一周波数の補助Rfを印加して周波数やRF電圧をスイープする方式ではなく、周波数を多数重ね合わせ、ある質量範囲に相当する周波数成分を低減し窓を設けるようにして合成したブロードバンドの補助Rfを用いる必要がある。このとき、アイソレーション対象の低質量側と高質量側でイオンの共鳴排出のされ易さに違いがあるため、一様に共鳴排出を行う時間を短くしただけでは高質量側が十分に排出されないという問題がある。
また、窓の部分の周波数成分を完全に無くすことが出来ないため、不安定なイオンの場合、解離を起こしてしまう問題があった。即ち、ソフトなイオン化技術の発展に伴い、非常に不安定なイオンが分析の対象になってきた。典型例は、糖鎖修飾ペプチドや一部の低分子化合物のプロトン付加分子などである。ところが、このような不安定なイオンが前駆体に選定された場合に、イオントラップでのアイソレーション過程において、前駆体イオンが著しく損失し、分析感度を損なうことがある。そのため、比較的安定なイオンだけでなく、比較的不安定なイオンのアイソレーションにおいても、アイソレーション過程におけるイオン損失を回避することが、高スループット分析や高感度分析の観点から重要である。
本願は、イオントラップを用いた質量分析方法において、残したいイオンの感度を十分に保ったままで、不要なイオンを十分に排出し、かつ高速にアイソレーションを行うための方法を提供することにある。
本発明の一例は、複数のイオンを複数の電極を持つイオントラップに導入する導入工程と、複数の電極のうち少なくとも1つの電極に第1の電圧で複数のイオンをイオントラップにトラップするようにRF電圧を印加するトラップ工程と、補助RF電圧をRF電圧が印加されている電極に印加しながら、RF電圧を第1の電圧よりも大きくして第1の時間印加してイオン分離する第1分離工程と、補助RF電圧をRF電圧が印加されている電極に印加しながら、RF電圧を前記第1の電圧よりも小さくして第1の時間より大きい第2の時間印加してイオン分離する第2分離工程と、イオントラップに残存しているイオンを排出する排出工程と、を有するイオン分離方法を用いる。
また、本発明の別の例は、試料をイオン化した複数のイオンを生成するイオン源部と、複数の電極を持つイオントラップと前記複数の電極に交流電場を印加する交流電源と交流電源を制御する制御器と、からなるイオントラップ部と、質量電荷比毎に複数のイオンを検出する検出部と、を有し、制御器は、交流電源を制御し、第1の電圧でRF電圧を複数の電極のうち少なくとも1つの電極に複数のイオンをイオントラップするように印加し、補助RF電圧をRF電圧が印加されている電極に印加しながら、RF電圧を第1の電圧よりも大きい電圧として第1の時間印加し、さらにRF電圧を第1の電圧よりも小さい電圧として第1の時間より大きい第2の時間印加してイオン分離することを特徴とする質量分析装置を用いる。
本願で開示している一例の質量分析方法では、非常に短時間で前駆体イオンのアイソレーションを完了させることができる。
その際には、低質量側に比べて、高質量側が排出されにくいという問題を解決している。また、本発明の別の例の質量分析法では、前駆体イオンに安定なイオンを選定した場合だけでなく比較的不安定なイオンを選定した場合にも、アイソレーション過程におけるイオン損失を極めて低く保持することができる。
上記の結果、糖鎖修飾ペプチドのような比較的不安定なイオンを含む試料に対しても、高スループットで高感度なタンデム質量分析を実施することが可能になる。
本発明の一例の質量分析方法を実現した質量分析装置の装置構成を示した説明図。 リニアイオントラップおよび周辺部分に送る信号のシーケンスを示した図。 図1におけるイオントラップ部が、リニアイオントラップの場合の、イオントラップ部分の構成と、交流および直流信号の接続方法、およびイオンの流れを示した説明図。 リニアイオントラップ部分をイオンが通過する軸方向から見た説明図。 図1におけるイオントラップ部が、3次元四重極イオントラップの場合のイオントラップ部分の構成を示した説明図。 3次元四重極イオントラップの断面図と、交流および直流信号の接続方法を示した説明図。 イオントラップ内で共鳴排出によりイオンが排出される原理を説明した模式図。 トラップされたイオンの安定性を示す指標である、a-値とq-値の関係を示した図。 補助RfとしてFNFを用いた場合のパワースペクトルと、多数の周波数が重ね合わされている部分において、実際には各周波数成分の間にすきまが存在することを示した図。 壊れにくいイオンのアイソレーション方法として適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 スイープを行う場合のアイソレーション方法として適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 補助RfとしてFNFを用いた場合のパワースペクトルと、目的とするイオンに対応する周波数付近を拡大して示した図。 壊れやすいイオンのアイソレーション方法として適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 図13において、スループット向上が必要な場合に適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 図13において、高質量側にアイソレーションしにくいイオンが存在する場合に適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 図15において、さらにアイソレーションしにくいイオンが存在する場合に適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 Rf電圧のスイープの傾きを変える場合に、回路の実現方法での差を示した図。 非常に壊れやすいイオンのアイソレーション方法として適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 前駆体イオンの低質量側のすぐ近くに排除したいイオンがある場合に適用可能なRf電圧のシーケンスの実現例。 図19において、高質量側のアイソレーション時間を短かく設定したRf電圧のシーケンスの実現例。 補助Rfとして周波数を1つだけ用いる場合のRf電圧のシーケンスの実現例。 補助Rfとして周波数を2つ用いる場合のRf電圧のシーケンスの実現例。 実際に、Substance P(RPKPQQFFGLM)の3価イオンをアイソレーションした際のスペクトルの例。 図23のアイソレーションを実行する直前の、アイソレーションを行わない状態でのスペクトルの例。 異なるイオン分離の方法である複数のモードを選ぶ一例。
イオントラップの形式にかかわらず、補助Rfを印加し、Rf電圧(q−値)をスイープするという構成を実現した。
図1に、本発明の一例の質量分析方法を実現した、質量分析装置1の構成図を示す。質量分析装置1は、ユーザーインターフェイス部2と、制御部3と、パラメータ記憶部7と、交流回路8と、直流回路9と、質量分析部10からなる。そして、制御部3は、内部パラメータ計算部4と、シーケンス生成部5と、シーケンス実行部6を有している。また、質量分析部10は、イオン源部11と、イオントラップ部12と、検出部13とを有している。この例では、イオン源部11とイオントラップ部12の間や、イオントラップ部12の間と検出部13の間は直接つながっているが、タンデム質量分析のために、これらの間に別の装置が入っても良い。
まず、質量分析装置1のユーザーはユーザーインターフェイス部2から、アイソレーション時のパラメータを入力する。このユーザーインターフェイス部2では、特定のイオンを対象にする場合と、データ依存分析のような、自動的に前駆体イオンを選択し分析する場合の双方のパラメータを指定出来る。
特定のイオンを対象にする場合、対象のイオンは複数設定することが出来、それに応じてパラメータも複数設定することが出来る。
自動的に分析する場合には、パラメータ記憶部7に保存された情報をもとに、特定のイオンを対象にした過去の実績を参照したり、あらかじめ設定した表を用いたり、あらかじめ設定したm/zや電荷に関する関数を用いたり、それらを組み合わせたりすることが出来る。
ユーザーインターフェイス部2では、具体的なパラメータとして、前駆体イオンのm/z、補助Rfのパラメータ、アイソレーションの際に補助Rfを何Da分だけ近づけるかのパラメータ、低質量側と高質量側それぞれで、スイープ時のパラメータを入力する。
補助Rfのパラメータとしては、補助Rfが1つから複数の周波数の合成波形の場合はその周波数を、補助Rfが多数合成したブロードバンド波形の場合は前駆体イオンのm/zを含む窓の範囲の幅を、それぞれ指定する。
また、前駆体イオンの低質量側と高質量側それぞれ独立に、補助Rfのパラメータを設定することが出来る。
スイープ時のパラメータとしては、モード1の時は、補助Rfをどの程度の質量範囲まで近づけるかのパラメータ、そこからどの程度の範囲だけRf電圧をスイープするかのパラメータ、スイープの際のRf電圧の傾きのパラメータを指定する。スイープ時のパラメータとして、モード2の時は、任意のRf電圧の関数を設定する。この関数は、時間の関数として記述する。また、全てのパラメータは、パラメータ記憶部7に保存することが出来、ユーザーインターフェイス部2から呼び出して指定したり、呼び出したパラメータを複数組み合わせて新しいパラメータを作成したりすることが出来る。
さらに、前駆体イオンのm/zの代わりに、前駆体イオンのm/zのリスト、前駆体イオンの価数のリスト、前駆体イオンのm/zと価数の組み合わせのリスト、前駆体イオンの範囲、前駆体イオンの範囲と価数の組み合わせのリストや、それらリストの組み合わせのリスト指定することによって、自動分析のパラメータとすることが出来る。もし、イオン源部11に液体クロマトグラフィーを含めて使用する場合、前駆体イオンのm/z、もしくは前駆体イオンのm/zと価数と組になる形で、そのイオンの液体クロマトグラフィー内での保持時間(Retention Time:RTと略す)を指定することも出来る。
このRTを指定する場合、m/zのみを指定した場合はm/zが、m/zと価数を指定した場合はその両方が一致したとしても、RTが別であると判断される場合には、別のイオンとして扱われる。
また、前駆体イオンのm/zを無指定とすることによって、指定された前駆体イオンのm/zや指定されたリストに該当しないイオンに対するパラメータ(規定のパラメータ)とすることが出来る。
さらには、糖鎖修飾を受けたタンパク質もしくはペプチドなどのように、あらかじめ試料に含まれるイオンの性質に傾向がある場合には、その性質に合わせたパラメータや、イオンの電荷や質量電荷比に応じて設定出来る計算方法により、自動的にパラメータを設定するための計算式を作成、編集および保存したり、その式を呼び出してパラメータ設定したりすることが出来る。
具体的には、前駆体イオンのm/zおよび価数と、そのイオンが壊れやすさの選択、前駆体イオンを中心として何Daの幅以内のイオンを残すかの指定を行うと、補助Rfのパラメータ、アイソレーションの際に補助Rfを何Da分だけ近づけるかのパラメータ、低質量側と高質量側それぞれのスイープ時のパラメータが自動的に設定される。
自動的に設定されたパラメータは、一部または全部を手動で設定変更することも出来る。
イオンの壊れやすさは、壊れやすいか、壊れにくいかといった2段階の設定を基本とし、段階を増やすことが可能であり、その段階に合わせてパラメータが設定される。
制御部3では、質量分析部10、イオン源部11、イオントラップ部12および検出部13との信号の送受信や、交流回路8や直流回路9に信号を送り、また、それらを制御する。
この制御部3では、入力されたパラメータをもとに、特定のイオンのみを対象としてそのイオンに設定されたパラメータに従った分析も行えるし、自動的にイオンを選択し自動的にパラメータを設定して分析することも出来るし、特定のイオンが出現した場合にはそのイオンに設定したパラメータで、それ以外の場合は自動的にパラメータを設定して分析を行うような、特定イオンの指定と自動パラメータ設定を組み合わせた分析も行えるし、分析中に検出部13で得た情報をもとに実時間でパラメータを設定して実行することも出来る。
特に、イオン源部11の構成の中に、液体クロマトグラフィーを含めて分析を行う際には、典型的には、各イオンはある時間幅を持って観測されるため、時間帯の始めの部分で、規定のパラメータによる分析を行い、検出部13で得られる、イオンのm/z、価数、タンデム質量分析の場合の開裂パターンなどの情報をもとに、制御部3でパラメータを再設定して、より良い条件で分析を行うことも出来る。
さらに、検出部13で得られる情報が、あらかじめユーザーインターフェイス部2で設定したリストに該当する場合には、その設定値に従って分析を行うことで、過去の実績を生かすことも出来る。
ユーザーインターフェイス部2で入力された情報をもとに、内部パラメータ計算部4では、入力された情報や、過去の事例、検出情報からのフィードバックの情報などを、必要に応じてパラメータ記憶部7を参照するなどして、イオントラップ制御用のシーケンスを生成するための内部パラメータを計算する。
シーケンス生成部5では、内部パラメータ計算部4で計算された内部パラメータをもとに、図2に示すような時間に沿ったイオントラップ制御用のシーケンスを計算する。
シーケンス実行部6では、シーケンス生成5で生成されたイオントラップ制御用のシーケンスをもとに、交流回路8および直流回路9を制御する。
パラメータ記憶部7は、パラメータ入力時に利用する、あらかじめ設定された情報や、過去の事例や、自動的に内部パラメータを計算するための方法を格納する。
交流回路8および直流回路9は、シーケンス実行部6の制御を受け、イオントラップ部10に信号を送る。
検出部11では、イオントラップから送り出されたイオンを検出するとともに、検出されたイオンの情報を制御部3に送る。
図3に、質量分析装置1のイオントラップ部12が、リニアイオントラップの場合のイオントラップの構成例を示す。
全てのイオンは、ゲート14を通って、リニアイオントラップ15に導入される。リニアイオントラップ15内で必要な操作を行ったあと、イオンはエンドキャップ16からイオントラップ外に送出される。
ゲート14は、直流回路9からの信号によって、イオントラップ外部からイオンを取り入れるかどうかを制御し、エンドキャップ16は、直流回路9からの信号によって、イオントラップ外部へイオンを送出するかどうかを制御する。
また、リニアイオントラップ15内のイオンの挙動は、交流回路8からの信号によって制御される。この例では、外部の装置で質量分析が行われる。
この例のリニアイオントラップは、イオンはトラップの軸方向に沿って導入および送出が行われるが、それらは軸方向に沿った方向でなくとも良い。
図4はリニアイオントラップを、イオン導入方向から見たものである。向い合うロッドは組になっており、片方の組には、Rf信号と補助Rf信号を合わせた信号が、もう片方には、逆相のRf信号が印加されている。
ここでは、リニアイオントラップ断面17は円形となっているが、Rf信号によるイオンのトラップや、補助Rfによる共鳴排出が行える限り、どのような断面形状でも構わないし、途中にイオン導入もしくは送出用の穴があっても構わないし、タンデム質量分析用の付加装置が付いていても構わない。
図5は、質量分析装置1のイオントラップ部12が、三次元四重極の場合のイオントラップの構成を示している。
全てのイオンは、エンドキャップA18の中心から導入され、リング電極19と、エンドキャップB20で囲まれた部分で構成されるイオントラップで必要な操作を行ったあと、エンドキャップB20の中心から送出される。
図6は、図5の三次元四重極イオントラップの断面図である。外形などの形態は、リニアイオントラップとは違うものの、トラップされる原理やイオンのトラップ状態の安定性を示す数値に関係する物理的な性質は同じである。
ここでは、エンドキャップA断面21、リング電極断面22、エンドキャップB断面23の形状は、Rf信号によるイオンのトラップや、補助Rfによる共鳴排出が行える限り、どのような断面形状でも構わないし、途中にイオン導入もしくは送出用の穴があっても構わないし、タンデム質量分析用の付加装置が付いていても構わない。
その他、タンデム質量分析を行えるように、イオントラップの他に、その前後に四重極フィルター、TOF、オービトラップ、FTICRなどの様々な装置を連結して利用する場合があるが、その際でも同様に本発明の各例は利用出来る。(図3の説明を参照)
図2は、シーケンス生成部5で生成されるシーケンスの例である。シーケンスは、時間に沿って生成され、各時間帯は、T1 イオン導入時間、T2 アイソレーション前時間、T3 アイソレーション時間、T4 アイソレーション後時間、T5 イオン排出時間に分けることが出来る。
T2 アイソレーション前時間は、その時間幅を0にすることによって、無いものとしても良い。また、T4 アイソレーション後時間は、CIDなどのタンデム質量分析を行う時間や、イオンに与えられた熱的なエネルギーを冷却するための時間を含むことが出来るし、その時間幅を0にすることによって測定のスループットを向上させることが出来る。
図2において、S1 ゲート電圧は、イオントラップ入口側のイオン導入を制御する役割を持ち、電圧を下げることでイオンがイオントラップ内に導入され、電圧を上げることで、イオンの導入が止まる。
イオン導入のタイミングは、イオントラップ内の空間電荷効果を考慮した導入時間を設定することが出来る。すなわち、イオントラップ内にトラップされるイオンの総量を、パラメータ記憶部7に蓄えられた過去の実績や、検出部13から得られるイオンの検出量などのフィードバック情報をもとに実時間で推定し、空間電荷効果が起こらないように導入時間を設定することが出来る。
S2 Rf電圧は、イオントラップ内に導入されたイオン全体のq-値を制御し、それによって、イオントラップ内のイオンに対する、補助Rfへの暴露方法を制御する。
S3 エンドキャップ電圧は、イオントラップ出口側のイオン送出を制御する役割を持ち、電圧を下げることでイオントラップからイオンが送出され、電圧を上げることで、イオンの送出が止まる。
S4 補助Rf電圧は、T3 イオントラップ時間における、イオントラップ内のイオンに対する、補助Rfへの暴露を制御する。S5 補助Rfは、実際にイオンに暴露される補助Rfである。
これらのS1からS5までが質量分析装置でどのように実施されているかは、質量分析装置1の、制御部3から、交流回路8や直流回路9への信号線、もしくは、それらから質量分析部10への配線をオシロスコープなどの装置を用いることで容易に確認することが出来る。
通常は、低電圧で信号を作成し、それを増幅装置で増幅してイオントラップなどへ送るため、そのような場合は増幅装置で増幅する前の信号線を確認することとなる。
図7は、S2 Rf電圧の制御に対応する、補助Rfとイオントラップ内のイオンとの関係を模式図で示したものである。なお、符号25は時間軸を、符号26は前駆体イオンを示す。
イオンの質量が大きいほどq−値は小さくなり、イオンの質量が小さいほどq−値は大きくなるので、図7において、トラップされたイオン群31は、高質量ほど大きい円で、低質量ほど小さい円で表わされている。
補助Rfを印加する前のトラップされたイオン群27に対して、まず、低質量側から、補助Rfを、目的とする前駆体イオンから離れたところに設定する(28)。Rf電圧を徐々に上げてゆくスイープ操作29を行うことによって、q−値がスイープされ、設定した補助Rfの周波数が共鳴周波数となったイオンが順次共鳴排出される(30)。
同様に、補助Rfを、目的とする前駆体イオンの高質量側の離れたところに設定し(32)、Rf電圧を徐々に下げてゆくスイープ操作を行うことによって、q−値がスイープされ、設定した補助Rfの周波数が共鳴周波数となったイオンが順次共鳴射出される(33)。最後には、トラップされたイオン群から目的のイオンのみが残される(34)。
イオントラップ内では、イオンが過剰量導入された際に、見かけの質量が増加する空間電荷効果という現象が知られている。
この空間電荷効果が起こると、正確なアイソレーションを妨げることになるが、アイソレーションの際に、図7で説明したように低質量側から行うことによって、高質量側のアイソレーションを行う前にイオントラップ内のイオンを減らし、空間電荷効果を低減することが出来、結果として、空間電荷効果の悪影響を避けてアイソレーションが出来るようになる効果がある。
この例では、低質量側と高質量側それぞれのアイソレーションの際に1つだけ周波数を含む補助Rfを使用している例を示したが、低質量側と高質量側の周波数を合成したり、複数の周波数を合成して組み合わせたり、ブロードバンドを低質量側のみ、もしくは高質量側のみ、もしくは低質量側と高質量側の両方に用いたりしたとしても、この原理は基本的には変わらない。
図8には、q−値とイオントラップ内のイオンの安定および不安定の関係を示した。本実施例では、イオントラップは、図のa=0の領域で利用しているため、図に示すように、q−値は、0から0.908までの値を取り得る。
また、重要な性質として、式(2)の定義からわかるように、低質量側に比べて、高質量側のq−値が相対的に低くなる点が挙げられる。
なお、本実施例ではa=0の場合を扱っているが、a≠0であったとしても、q−値がイオンの安定性を表すことに変わりはなく、q−値をaの値に応じた曲線で評価することによって、同様に実施出来る。
図9は、質量分析装置1で補助Rfとして使用しているFNFのパワースペクトルの例である。図8のアイソレーションの説明では、簡単のため、補助Rfとして低質量側、高質量側それぞれある1つの周波数を使う例を示したが、そこで説明したように、広い範囲のスイープ操作が必要になってしまうため、本実施例ではFNFを利用することによってアイソレーション効率を上げている。
ただし、FNFによる前駆体イオンへの悪影響が認められる場合に、1つ、もしくは複数の周波数を合成した補助Rfを使うこととしても良い。
制御部3内にある、シーケンス実行部6は、図2のようなシーケンスを実行するが、S2 Rf電圧が、実際に図7で説明したようなアイソレーション操作に直接関係がある。
図10に、S2 Rf電圧の実施例を示す。
Rf電圧は、時間に関して連続関数であるだけではなく区分的連続関数をとってもよい。また、時間に対して線形に変化しても非線形に変化しても良いし、区分的に線形、非線形な部分が混在しても良い。
この例では、前駆体イオン付近まで、補助Rfを瞬時に近づけ、一定時間その状態を保っている。スループット向上のためには、出来るだけ一定に保つ時間を少なくするのが望ましいが、その際に、単純にアイソレーション時間を一様に短く設定すると、低質量側に対して高質量側のアイソレーションが不十分となる問題が発生する。
そのため、高質量側においては、低質量側に比較して、イオンが補助Rfへの暴露される時間(暴露時間)を長くし、十分に不必要なイオンを排除しつつ、必要最小限のスキャン時間を設定することが出来る。
また、高質量側が十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側と同じ時間でも良いし、高質量側にイオンが存在しない場合には、時間が0でも良い。その逆に、低質量側のイオン量が多く、十分に共鳴排出出来ない場合には、低質量側の時間を長くしても良いし、低質量側にイオンが無い場合には、低質量側の時間が0でも良い。
また、補助Rfについては、低質量側と高質量側の両方でブロードバンドを用いても良いし、イオンの種類が少ない場合など、十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側、高質量側のどちらか一方、もしくは両方を、1つもしくは複数の周波数の合成としても良い。
この例では、高質量側が共鳴排出されにくいという問題に対処出来るが、図9の拡大図に示したように、FNFを用いる場合、実際には各周波数成分の間に隙間が出来てしまうため、このような隙間に該当するイオンを含む試料では、アイソレーションが不十分であるという問題が起きる可能性がある。
しかし一方で、このような問題が起きない場合には、アイソレーションの時間をかなり短く、場合によっては1ms程度まで抑えることが出来るという利点がある。
アイソレーション前後には、補助Rfがかからない時間帯を設定しており、これによって、特にアイソレーション後の、イオンの熱的なエネルギーを減少させ、イオンを安定化させ、意図しない解離を防ぐ効果がある。
図11に、S2 Rf電圧の別の実施例を示す。この例では、Rf電圧のスイープを行うことで、図9の拡大図に示したような、FNFの隙間によるアイソレーション漏れを防ぐことが出来る。
また、アイソレーションのスイープ幅や、スイープの傾きを調整することによって、低質量側に比較して、高質量側のスイープ時間を長く取ることが出来、結果として高質量側の補助Rfへの暴露時間を長くすることが出来るため、図10の例と同様に、高質量側が共鳴排出されにくいという問題に対処出来る。
また、高質量側が十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側と同じ時間でも良いし、高質量側にイオンが存在しない場合には、時間が0でも良い。その逆に、低質量側のイオン量が多く、十分に共鳴排出出来ない場合には、低質量側の時間を長くしても良いし、低質量側にイオンが無い場合には、低質量側の時間が0でも良い。
補助Rfについては、低質量側と高質量側の両方でブロードバンドを用いても良いし、イオンの種類が少ない場合など、十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側、高質量側のどちらか一方、もしくは両方を、1つもしくは複数の周波数の合成としても良い。
ここで、図12と同様の、FNF波形の例を示す。この図の拡大図では、FNFの周波数成分が低い窓領域24を拡大して示している。FNFを作る原理上、ここで示したように、実際には窓領域24の周波数成分は0にはなっておらず、わずかながら周波数成分が存在する。
そのため、レセルピンなどの壊れにくいイオンに比較して、糖鎖修飾ペプチドや一部の低分子化合物のプロトン付加分子などの不安定なイオンは、このようなわずかに残る周波数成分によって、共鳴排出されたり、熱的なエネルギーを受けて解離されたりして、イオンが減少してしまうという現象が見られる。
特に周波数の窓の境界に近い部分は、窓の中心部分に比べて周波数成分の信号強度が強いため、この境界部分を目的とする前駆体イオンに近づける時間が長いと、前駆体イオンが共鳴排出もしくは解離する可能性を高める。
図13は、また別のS2 Rf電圧の実施例である。この例では、図11に比較して、ある範囲までは一度に補助Rfを近づけることで時間を短縮するとともに、ある範囲はスキャンを行うことで、前駆体イオン以外のイオンを十分に共鳴排出させるようにしている。また、高質量側は低質量側に比較して長い範囲を長い時間をかけてスキャンを行うことによって、q−値が低いことによって共鳴排出が起こりにくい問題点にも対処している。即ち、アイソレーションに要する時間を短く設定すると、前駆体イオンの高質量側と低質量側でアイソレーションに要する時間を同等にすることは困難となる。同等に設定すると、高質量側にあるイオンの排除が不完全になるためである。この原因は、イオンの永年モーションを調和振動子とみなすことが出来るため、次の関係により、q−値が低減することにより振動運動のポテンシャル深さP(4式)が浅くなるためと説明される。
Figure 0005462935
実際に、この方法によって、スキャンを行う方法で、かつ時間短縮することが出来、時間にして5ms程度で、十分なアイソレーション効率と、弱いイオンの感度向上を実現出来る。
実際の試料の模した試料として、アイソレーションの際の損失の度合いに応じて、レセルピン(損失し難い)、Substance P(RPKPQQFFGLM) (損失し易い)、質量分析マーカ(Ultramark)(中程度の損失のし易さ)を混合した試料を準備した。
理由は、実際の試料においては、中に含まれる分子によって、アイソレーションの際の損失のし易さに違いがあるため、その状況を再現するためである。また、実験の再現のし易さを考慮して、一般的に流通しており、入手が容易なものを使用した。
一般的に、生体分子の中でも、ペプチドや翻訳後修飾を受けたペプチドなどは、質量分析における損失のし易さに違いがあることが知られており、前記の3つのうちSubstance P, ここで具体的にアミノ酸配列を表記するとSubstance P(RPKPQQFFGLM)は、損失し易い分子の代表と考えることが出来る。また、アイソレーションの際に重視する点としては、より正確な分析を考慮してアイソレーション対象以外の分子の残存率を低減することを重視する場合と、アイソレーション対象以外の分子の残存率よりも、アイソレーション対象の分子の感度を重視する場合があり、目的によってアイソレーション時のパラメータを変更する必要がある。
一般的な状況では、MS/MSやMS/MS/MSなどの分析においては、アイソレーション後に他の分子が残存することで分析に悪影響を与えるため、他の分子の残存率を0%にすることは重要であるが、一方でアイソレーション対象が、アイソレーションによって損失し易い場合には、若干の他の分子を残してでも、感度向上のためにアイソレーション対象の残存率を上げる場合がある。
アイソレーションの際のパラメータとして、低質量側と比較した高質量側のスイープ時間について着目すると、前記3種の分子のそれぞれをアイソレーションする際に、高質量側のスイープ時間は低質量側に比較して1.2倍長く設定することにより、アイソレーション対象以外の分子の残存率を20%以下に抑えることが出来る。
さらに、アイソレーション対象の分子以外の分子の残存率を0%とするためには、高質量側のスイープ時間は低質量側に比較して1.4倍長く設定する必要があった。
この条件、すなわち、アイソレーション対象の分子以外の分子の残存率を0%と出来る条件は、通常の測定モードとして、この設定を定常的に利用可能である。
また、損失し易い分子の代表であるSubstance P(RPKPQQFFGLM)においては、若干の他の分子を残してでも、感度向上のためにアイソレーション対象の残存率を上げるために、高質量側のスイープ時間は低質量側に比較して1.4倍より低く設定することによって、イオンの残存率を上げることが可能である。具体的には、Substance P(RPKPQQFFGLM)の2価イオン(674.86)に着目すると、前記の1.4倍設定の際には残存率が30%であったが、高質量側のスイープ時間を低質量側に比較して1.2倍に設定することによって、近接のイオン(685.90)の残存率は20%程度に増加するものの、Substance P(RPKPQQFFGLM)の2価イオンの残存率は、70%に増加するので、ソフトなイオン、すなわち損失し易いイオンの場合にはこの設定が有効である。
レセルピンでは、高質量側のスイープ時間は低質量側に比較して2.0倍でも、レセルピン自身の残存率を99%に保つことが出来るので、アイソレーション能力を優先する場合には、この設定が有効である。
また、高質量側のスイープ時間を2.0倍より長い任意の時間スイープすることは原理的には可能である。例えば、スループットは無視して、高質量側に存在するイオンを排除出来る必要な時間だけスイープすることは可能である。ただし、装置構成のうち、イオントラップ以外の部分からの制約を受ける場合がある。本実施例の場合、後段のECDによるMS/MS分析や、TOFによるタンデム質量分析のタイミング調整のため、アイソレーション全体の時間幅を100msに制限している。そのため、高質量側のスイープ時間は、低質量側に比較して50倍以内に制限している。これは、低質量側で2ms程度のスイープを行った際に、高質量側を50倍に設定すると、アイソレーション全体の時間幅が約100msになることに対応する。
アイソレーション時の影響の受けやすさ、すなわちアイソレーション時の損失度合いが比較的揃っているイオンを含む試料に関しては、その試料に合わせたスイープ時間に設定変更することにより、より感度を向上出来る。
また、補助Rfについては、低質量側と高質量側の両方でブロードバンドを用いても良いし、イオンの種類が少ない場合など、十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側、高質量側のどちらか一方、もしくは両方を、1つもしくは複数の周波数の合成としても良い。
ここで、図13にあらわされているRf電圧は、次にように印加して実現されても良い。すなわち、低質量側及び高質量側にRF電圧は極値を持ち、さらにRF電圧はトラップ電圧と極値との間に複数の異なる傾きを持ち、この複数の異なる傾きのうち極値に近い方の傾きの大きさが、複数の異なる傾きのうち極値に遠い方の傾きの大きさよりも小さくなるように印加してもよい。
また、別の例として次のように実現されてもよい。すなわち、低質量側を分離する際に、RF電圧は最大値を取り、最大値を取る時刻より前の時刻においてはRF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に正またはゼロであり、RF電圧が最大値を取る時刻より後の時刻においてはRF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に負またはゼロであり、高質量側を分離する際に、RF電圧は最小値を取り、最小値を取る時刻より前の時刻においては電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に負またはゼロでありRF電圧が最小値を取る時刻より後の時刻においてはRF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に正またはゼロであるようにRF電圧を印加しても良い。
図14は、図13において、アイソレーション前およびアイソレーション後の時間幅を0にした例である。
結果として、イオン導入後、急にRf電圧を変更され、結果としてイオンのq-値が急に変わることになるが、このような場合でもイオンの安定性に影響は無い。
図15は、図13のパラメータ設定のうち、高質量側のスイープの傾きをゆるやかに設定した例である。
この場合、図13に比較して時間はかかるものの、補助Rfへの暴露時間が長くなるため、高質量側が共鳴射出しにくい場合に対応出来、傾きを調整することで最小限の時間とすることが出来る。
図16は、図15のパラメータ設定のうち、高質量側を補助Rfに近づける距離を0とし、その代わりにスイープ範囲を広げたものである。
この例では、補助RfとしてFNFを用いている場合に、スキャン範囲が不十分で、ところどころにイオンが残る現象が起こる場合に有効である。
また、高質量側を補助Rfに近づける距離設定を0にせずに、スイープ範囲を広げることで、結果として補助Rfへの暴露時間が長くなるため、図13と同様に、高質量側が共鳴射出しにくいという問題に対処出来る。
図17は、スイープ時の電圧制御の波形生成に関する違いを示したものである。アナログ回路で実現した場合(43)には連続的に電圧が変化するが、デジタル回路で実現した場合(44)には、電圧の分解能に限界があるため、原理的に階段状となる。そのため、デジタル回路では、スイープ電圧の傾きの設定は、各階段のステップの持続時間の長さを設定することになる。その電圧の変化を滑らかな関数で近似するなどして本発明の実施例にて開示しているような線になればよい。
また、各電圧が一定時間持続されることを利用し、共鳴排出に用いられる周波数からその1周期にかかる時間を計算し、それに基づいて持続時間を設定することにより、効果的に共鳴排出を行うことが出来る。実際の例では、4周期ないし5周期程度の時間になるように、各電圧の持続時間が設定されるようにすることで、十分に共鳴排出を起こすことが出来る。
また、補助Rfについては、低質量側と高質量側の両方でブロードバンドを用いても良いし、イオンの種類が少ない場合など、十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側、高質量側のどちらか一方、もしくは両方を、1つもしくは複数の周波数の合成としても良い。
図18は、ユーザーインターフェイス部2において、S2 Rf電圧の関数を設定し、それを低質量側に適用した例である。関数の設定方法は、時間で表わされる数学的な関数でも良いし、時間と電圧を表にしたものでも良い。
この例の場合は、低質量側の補助Rfの近づけ方を変更し、出来る限り前駆体イオンの近くに補助Rfが近づいている時間を減らすとともに、必要な範囲のスキャンも実行している。
また、補助Rfについては、低質量側と高質量側の両方でブロードバンドを用いても良いし、イオンの種類が少ない場合など、十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側、高質量側のどちらか一方、もしくは両方を、1つもしくは複数の周波数の合成としても良い。
この場合は次のようにRF電圧を印加してもよい。すなわち、RF電圧は時間に対して極値を持ち、時間に対して非線形に変化させ、その変化率の大きさが極値に近いほど大きな値をとるように、RF電圧を印加しても良い。
図19は、ユーザーインターフェイス部2において、S2Rf電圧の別の関数を設定し、それを低質量側に適用した例である。
この例の場合は、前駆体イオンへ補助Rfを近づけ、さらにスイープの傾きをかなりゆるやかにすることで、前駆体の低質量側のすぐ近くにある別のイオンを十分に排除することが出来る。これにより、アイソレーション後に行うタンデム質量分析を精度良く行うことが出来る。
また、補助Rfについては、低質量側と高質量側の両方でブロードバンドを用いても良いし、イオンの種類が少ない場合など、十分に共鳴排出出来る場合には、低質量側、高質量側のどちらか一方、もしくは両方を、1つもしくは複数の周波数の合成としても良い。
この場合は次のようにRF電圧を印加してもよい。すなわち、RF電圧は時間に対して極値を持ち、時間に対して非線形に変化させ、その変化率の大きさが極値に近いほど小さな値をとるように、RF電圧を印加しても良い。
図20は、図19の例において、高質量側のスキャンをq−値の高い方から低い方への1方向のみ行った例である。この場合、高質量側は十分にアイソレーションが出来るために、このように設定し、アイソレーション時間を減らすことで、前駆体イオンが減少することを防ぎ、感度が向上出来るとともに、測定スループットも向上出来る。
図21は、目的とするイオン以外のイオンとして、低質量側で2つ、高質量側1つ存在する状況において、ユーザーインターフェイス部2において、補助Rfとして1つだけ周波数を含み、初期状態では低質量側の2つのイオンよりもq−値の高いところに補助Rfを指定した例である。
低質量側の2つのイオンのうち、目的のイオンから離れている方はイオン量が多いため長めに補助Rfへの暴露を行っている。また、低質量側のうち目的のイオンに近い方のイオンと、高質量側のイオンは、イオン量はほぼ同等であり、さらに、補助Rfが固定であり、共鳴排出を行う際のq-値は全て同じになるため、暴露時間は同じとしている。
図22は、目的とするイオン以外のイオンとして、低質量側で2つ、高質量側1つ存在する状況において、ユーザーインターフェイス部2において、補助Rfとして、初期状態で、低質量側の2つのイオンよりq−値の高いところに1つ、高質量側の1つのイオンよりq−値の低いところに1つだけ周波数を含むものを指定した例である。
低質量側の2つのイオンのうち、目的のイオンから離れている方はイオン量が多いため長めに補助Rfへの暴露を行っている。また、低質量側のうち目的のイオンに近い方のイオンと、高質量側のイオンは、イオン量はほぼ同等であるが、共鳴排出を行う際のq−値が高質量側の方が低いため、高質量側の暴露時間を長めに設定している。
図23は、本実施例のうち、図14に示したシーケンスに対応するシーケンスが実施されるようにユーザーインターフェイス部2のパラメータを調整し、Substance P(RPKPQQFFGLM)をアイソレーションした際に、検出部13で検出されたスペクトルの例である。ピーク40はSubstance P(450.4,3+,イオン強度2538)を示している。また、図24は、図23のアイソレーションを実行する直前に、検出部13で検出されたスペクトルの例である。ここでのピーク41はSubstance P(450.4,3+,イオン強度2624)を示している。
このSubstance P(RPKPQQFFGLM)は比較的壊れやすいイオンであるが、図23と図24のイオン強度の比から、本実施例の方法により、アイソレーション前に比較して、アイソレーション後も96%のイオンを残すことが出来ている。
また、図24で示した別のイオン42はm/zが458.4のものであり、図23では見えておらず、Substance P(RPKPQQFFGLM)以外のイオンは排除されていることがわかる。
壊れにくいイオンであるレセルピンにおいては99%のイオンを残すことが出来ていることから、壊れやすいイオンにおいても同等程度のアイソレーション効率を実現していることがわかる。
なお、Substance P(RPKPQQFFGLM)を測定する際の具体的なパラメータは、前駆体イオンのm/zが450.4、価数3価、補助RfはFNFを使用し窓領域は低質量側20Da、高質量側20Daの合計40Da、スイープはモード1で実行し、そのパラメータは、低質量側からは1.7Daまで近づけることとし、スイープ幅が5DaになるようにRf電圧の傾きを設定、高質量側からは3Daまで近づけることとし、スイープ幅は7DaになるようにRf電圧の傾きを設定した。
また、この実施例では、Rf電圧の制御はデジタルで行っており、図17に示した各電圧をキープする時間幅は12マイクロ秒であり、共鳴周波数は400kHz付近であることから、この周波数における振動運動の約4から5周期分程度の時間となっている。高質量側と低質量側のスイープ幅の比がそれぞれスイープ時間の比となっている。これは、スイープ幅を一定の時間幅で階段状にスイープすることによる。したがって、この場合は高質量側のスイープ時間は低質量側のスイープ時間の1.4倍となっている。以上のパラメータで、アイソレーション全体の時間は約5ミリ秒を実現した。
また、図25に示されるように、予め設定された高質量側のスイープ時間と低質量側のスイープ時間との組を複数ユーザーインターフェイス部2にて表示し、ユーザーが選択することによって簡易に分離効率とアイソレーション全体の時間を選ぶこともできる。ここでは一例として、アイソレーション方法の選択というタイトル35が表示され、高質量側のスイープ時間を低質量側のスイープ時間より大きくする通常モード36の他に、高質量側のスイープ時間を通常モード以上にさらに大きくするアイソレーション能力優先モード37や、またスイープ幅を少なくとり解析対象イオンの残存率向上を図るソフトイオンモード38を表示している。これらのモードから一つを選び、OKボタン39を押すことにより、その都度適切に選ばれたモードにてアイソレーションを実行することが出来る。
1 質量分析装置全体
2 ユーザーインターフェイス部
3 制御部
4 内部パラメータ計算部
5 シーケンス生成部
6 シーケンス実行部
7 パラメータ記憶部
8 交流回路
9 直流回路
10 質量分析部
11 イオン源部
12 イオントラップ部
13 検出部
14 ゲート
15 リニアイオントラップ
16 エンドキャップ
17 リニアイオントラップ断面
18 エンドキャップA
19 リング電極
20 エンドキャップB
21 エンドキャップA断面
22 リング電極断面
23 エンドキャップB断面
24 窓領域
25 時間軸
26 前駆体イオン
27 補助RFを印加する前のq軸上のトラップされたイオン群
28 q軸上で低質量側に補助Rfが印加された状態のトラップされたイオン群
29 Rf電圧を上げ全体的にq-値を上げてゆく際のトラップされたイオン群
30 低質量側においてトラップされたイオン群が順次共鳴排出される様子
31 トラップされたイオン群
32 高質量側に補助Rfを印加し徐々にRf電圧を下げ全体的にq-値を下げてゆく時のトラップされたイオン群
33 高質量側が順次共鳴排出されるトラップされたイオン群
34 トラップされたイオン群から残された目的のイオン
35 アイソレーション方法の選択画面タイトル
36 通常モード
37 アイソレーション能力優先モード
38 ソフトイオンモード
39 決定ボタン
40 Substance Pのアイソレーション後のイオン強度ピーク
41 Substance Pのアイソレーション前のイオン強度ピーク
42 Substance Pではない別のイオン
43 アナログ回路による実現方法
44 デジタル回路による実現方法。

Claims (20)

  1. 複数のイオンを複数の電極を持つイオントラップに導入する導入工程と、
    前記複数の電極のうち少なくとも1つの電極に第1の電圧で前記複数のイオンを前記イオントラップにトラップするようにRF電圧を印加するトラップ工程と、
    補助RF電圧を前記RF電圧が印加されている電極に印加しながら、前記RF電圧を前記第1の電圧よりも大きくして第1の時間印加してイオン分離する第1分離工程と、
    前記補助RF電圧を前記RF電圧が印加されている電極に印加しながら、前記RF電圧を前記第1の電圧よりも小さくして前記第1の時間より大きい第2の時間印加してイオン分離する第2分離工程と、
    前記イオントラップに残存しているイオンを排出する排出工程と、
    を有するイオン分離方法。
  2. 請求項1に記載のイオン分離方法であって、
    前記複数のイオンは、ペプチドもしくは翻訳後修飾を受けたペプチドを含むことを特徴とするイオン分離方法。
  3. 請求項1に記載のイオン分離方法であって、
    前記第2の時間を前記第1の時間で除した値は、1.2以上であることを特徴とするイオン分離方法。
  4. 請求項3に記載のイオン分離方法であって、
    前記第2の時間を前記第1の時間で除した値は、1.4以上であることを特徴とするイオン分離方法。
  5. 請求項4に記載のイオン分離方法であって、
    前記第2の時間を前記第1の時間で除した値は、2以上であり、前記複数のイオンは、レセルピンを含むことを特徴とするイオン分離方法。
  6. 請求項2に記載のイオン分離方法であって、
    前記第2の時間を前記第1の時間で除した値は、1.2以上1.4以下であり、前記複数のイオンは、Substance Pを含むことを特徴とするイオン分離方法。
  7. 請求項1に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧は、時間に対して極値を持つことを特徴とするイオン分離方法。
  8. 請求項7に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧を時間に対して線形に変化させることを特徴とするイオン分離方法。
  9. 請求項7に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧を時間に対して非線形に変化させることを特徴とするイオン分離方法。
  10. 請求項7に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧は前記第1の電圧と前記極値との間に複数の異なる傾きを持ち、前記複数の異なる傾きのうち前記極値に近い方の傾きの大きさが、前記複数の異なる傾きのうち前記極値に遠い方の傾きの大きさよりも小さいことを特徴とするイオン分離方法。
  11. 請求項8に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧は時間に対して傾きの大きさが前記極値の前後において異なることを特徴とするイオン分離方法。
  12. 請求項9に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧は時間に対する変化率の大きさが前記極値に近づくにつれて大きくなることを特徴とするイオン分離方法。
  13. 請求項9に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧は時間に対する変化率の大きさが前記極値に近づくにつれて小さくなることを特徴とするイオン分離方法。
  14. 請求項1に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程か前記第2分離工程のいずれか一つまたは両方において、前記RF電圧は時間に関して任意の区分的連続関数で表わされることを特徴とするイオン分離方法。
  15. 請求項14に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程において、前記RF電圧は最大値を取り、前記最大値を取る時刻より前の時刻においては前記RF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に正またはゼロであり、前記RF電圧が前記最大値を取る時刻より後の時刻においては前記RF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に負またはゼロであり、
    前記第2分離工程において前記RF電圧は最小値を取り、前記最小値を取る時刻より前の時刻においては前記RF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に負またはゼロであり前記RF電圧が前記最小値を取る時刻より後の時刻においては前記RF電圧が時間に対して取る曲線の不連続点以外の微分係数が常に正またはゼロであることを特徴とするイオン分離方法。
  16. 請求項14に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程において、前記RF電圧は最大値を取り、前記RF電圧が前記最大値を取る時刻の前後で時間に対して直線であり、
    前記第2分離工程において前記RF電圧は最小値を取り、前記RF電圧が前記最小値を取る時刻の前後で時間に対して直線であることを特徴とするイオン分離方法。
  17. 請求項16に記載のイオン分離方法であって、
    前記第1分離工程において、前記RF電圧は前記最大値を取る時刻の前後で時間に対して直線であり、前記最大値の前の前記直線の始点が、第1の不連続点でかつ前記第1の電圧よりも高くなっておりかつ前記第1の不連続点より時間的に前の部分は前記第1の電圧となっており、前記最大値の後の直線の終点は第2の不連続点で且つ前記第1の電圧よりも高くなっており、
    前記第2分離工程において、前記RF電圧が前記最小値を取る時刻の前後で時間に対して直線であり、前記最小値の前の直線の始点が第3の不連続点となっておりかつ前記第1の電圧よりも低くなっておりかつ前記最小値の後の直線の終点が第4の不連続点となっており、前記第1の電圧よりも低くなっておりかつ前記第4の不連続点の時間的に後の部分は前記第1の電圧となっていることを特徴とするイオン分離方法。
  18. 請求項1に記載のイオン分離方法であって、
    前記導入工程の前に、それぞれ異なる予め決められた第1の時間と第2の時間との組を持つ複数のモードからいずれか一つを選ぶ工程を有することを特徴とするイオン分離方法。
  19. 試料をイオン化した複数のイオンを生成するイオン源部と、複数の電極を持つイオントラップと前記複数の電極に交流電場を印加する交流電源と前記交流電源を制御する制御器と、からなるイオントラップ部と、
    質量電荷比毎に前記複数のイオンを検出する検出部と、を有し、
    前記制御器は、前記交流電源を制御し、第1の電圧でRF電圧を前記複数の電極のうち少なくとも1つの電極に前記複数のイオンをトラップするように印加し、補助RF電圧を前記RF電圧が印加されている電極に印加しながら、前記RF電圧を前記第1の電圧よりも大きい電圧として第1の時間印加し、さらに前記RF電圧を前記第1の電圧よりも小さい電圧として前記第1の時間より大きい第2の時間印加してイオン分離することを特徴とする質量分析装置。
  20. 請求項19に記載の質量分析装置であって、
    さらに前記制御部と接続されたユーザーインターフェイス部を備え、
    前記ユーザーインターフェイス部は、予め決められた第1の時間と第2の時間との組を持つ複数のモードを表示することを特徴とする質量分析装置。
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