JPWO2003041116A1 - 質量分析方法及びイオントラップ質量分析計 - Google Patents

質量分析方法及びイオントラップ質量分析計 Download PDF

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Abstract

本発明は、リング電極と一対のエンドキャップ電極を備えた質量分析部を有し、三次元四重極電界によって一時的にイオンをトラップして質量分析を行うイオントラップ質量分析計を用い、1価と多価イオンの識別を容易に行うことができる分析方法を提供する。リング状電極に主高周波電圧を印可して、三次元四重極電界を生成する第1のステップと、質量分析部内でイオンを生成するかまたは外部からイオンを注入し、質量対電荷比が所定の範囲内にあるイオンを前記質量分析部内にトラップする第2のステップと、エンドギャップ電極間に複数の成分で構成される補助交流電圧を印可し、当該補助交流電圧の周波数成分を走査する第3のステップと、前記主高周波電圧を走査してイオンを前記質量分析部から排出し、検出する第4のステップとを有する。

Description

技術分野
本発明は、イオントラップ質量分析計および、その質量分析方法に関する。
技術背景
質量分析計は、物質の質量を直接、高感度,高精度に測定できる装置である。そのため、宇宙物理からバイオ技術分野まで多くの分野で使用されている。
質量分析計には、測定原理を異にする多くの装置がある。この中でイオントラップ質量分析計は、小型でありながら多くの機能を有することから、最近多くの分野に普及してきた。イオントラップ質量分析計は、1950年代にDr.Paulにより発明され、基本的概念は米国特許第2,939,952号に開示されている。
その後、多くの研究者により、装置や手法の改良がなされてきた。例えば、イオントラップ質量分析計によるマススペクトルの取得の基本的手法は、米国特許4,540,884号に示されている。更に米国特許第4,736,101号のように、補助交流電圧を印加し、イオンを共鳴的に放出検出する方法が開発された。また、米国特許第5,466,931号に開示されたように、補助交流電圧が、単一の周波数によらずに複数の周波数成分(広帯域ノイズ)であることを利用して、イオントラップ内のイオンの放出,単離を自由に行う方法が開発された。この手法は、イオンの固有振動数と補助交流電圧の共鳴を利用したもので、多くのイオンを一度に共鳴放出する方法を示している。ここで示された広帯域ノイズ信号は、広範囲のイオンを同時に放出する事を目的としているため、同一の電圧である。ただし、イオントラップ内に残すイオンの周波数に相当する周波数成分はノッチ(切り込み)としてある。ノッチの周波数に相当するイオンは、共鳴することなく、イオントラップ内に安定にトラップされる。
近年、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix−assisted laser desorption(MALDI))やエレクトロスプレイイオン化(ESI)などのイオン化技術が開発され、タンパクやDNAなど生体高分子も質量分析の対象となった。特にESIは、熱分解しやすい生体高分子を溶液の状態から直接気相状態の安定なイオンとして取り出すことが可能なイオン化法である。
ESIでは、タンパク,タンパクを消化したペプチド,DNAなどの生体高分子は、多くの電荷を持つ多価イオンを与える。多価イオンは、一つの分子(m)に複数の電荷(n価)を持つイオンである。質量分析計(MS)は、質量対電荷比(m/z)に従いイオンを質量分析するため、質量mでn価のイオンは、m/nの質量対電荷比のイオンとして質量分析される。例えば、質量30,000のタンパクが30価の多価イオンを与えるとき、この多価イオンのm/zは、30,000/30=1,000となり、質量1,000の1価のイオンと同等に質量分析できる。そのため、四重極質量分析計(QMS)やイオントラップ質量分析計などの小形の質量分析計でも、容易に分子量が10,000を超えるタンパクなどの測定が可能になった。
血液や生体組織中の極微量成分を分析する時には、質量分析の前に大量に存在する妨害成分(挟雑物)を取り除く前処理やクリーンアップが必要である。この前処理やクリーンアップには、多くの時間と人手を必要とされる。しかし、複雑な前処理によっても挟雑物を取り除くことは困難で、これら妨害物が生体試料成分の信号に重畳する。この妨害を化学ノイズと言う。妨害物の除去や分離のため、液体クロマトグラフィー(LC)が質量分析計(MS)の前段に結合した液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)が開発された。第25図に従来技術のLC/MSの模式図を示す。LCの移動相32はポンプ33で送り出され、注入口34から試料溶液が注入される。分析カラム35により分析対象の生体試料成分は妨害成分から分離され、オンラインでESIイオン源36に送り込まれる。ESIイオン源36において、LCから送られた試料溶液は、高電圧が印加された噴霧キャピラリ37に送り込まれる。試料溶液は、キャピラリ37の先端から極微細な(〜μm)帯電した液滴となり、大気中に噴霧される。帯電した液滴は、ESIのイオン源の大気分子との衝突により機械的に破砕され、更に微細な液滴となる。液滴の微細化を繰り返し、最終的にイオンが大気中に放出される。これがエレクトロスプレイイオン化(ESI)である。イオンは、複数の真空ポンプ30,31により真空排気された中間圧力室38,高真空室39を経て質量分析計40に取り込まれ質量分析される。結果は、データ処理装置41によりマススペクトルとして与えられる。
血液や組織中の生体成分の分析において、極微量成分の高感度測定は、前処理、クリーンアップや液体クロマトグラフィー(LC)の助けによっても容易に達成できない。これは、分析対象が多くの場合、極微量(10−12g以下)であり、妨害成分が圧倒的に多く、前処理や液体クロマトグラフィー(LC)でも試料成分に重畳する妨害成分を十分に除去できないことに由来する。
一つの解決策として、例えば米国特許6,166,378号に示されるように、質量分析による妨害成分(化学ノイズ)と分析対象成分を識別しようとする試みが提案された。生体関連試料の場合、妨害成分の多くは脂質,炭水化物など、分子量1,000以下の比較的分子量が小さいものが多い。これらが、タンパク,ペプチド,DNAなど、分子量2,000以上の生体高分子のマススペクトル上において重畳してくる。それは、生体高分子が多価イオンとなるため、見かけ上低質量領域にマスピークが出現するためである。ESIのイオン化において、比較的低分子量の妨害物質の多くは1価のイオンを与える。これに対し、タンパクやペプチドなど、生体高分子の多くはESIにより多価イオンを与える。
1価のイオンと多価イオンは、生成した1価のイオンと多価イオンを一緒に1Torr程度の圧力下で加速することにより識別できる。イオンは、1Torr程度の圧力下で加速されることにより、ガス分子と衝突を繰り返す。この際、衝突ガス分子のプロトン親和力(PA)がイオンのそれを上回ると、イオンからプロトンが奪われイオンの電荷が一つ減少する。多価イオンは、このイオン分子反応が起こりやすく、容易にプロトンを水などの中性分子に手渡してしまう。一方、電荷が少なくなると、イオンは、このイオン分子反応が比較的おきにくくなる。即ち、1価のイオンは電荷の減少反応はおきにくく、一方、多価イオンは電荷の減少反応が起きやすい。
上記米国特許6,166,378号は、この差を利用し、3つの質量分析計を直列に連結したタンデム質量分析計によりマススペクトル信号の識別を図ったものである。
発明の開示
タンデム質量分析計を用いて1価のイオンと多価イオンを識別する試みは、多くの問題点を有している。タンデム質量分析計に導入したイオンの内、ごく一部のイオンのみが検出器に到着する。すなわち、イオンの透過率が悪く(〜%)、そのため、生体高分子化合物で要求される高感度測定は困難である。また、多価イオンと1価のイオンの識別、即ち第1のMSと第3のMSの連携した掃引は、一つのマススペクトルでは一度しか出来ない。そのため、信号/ノイズのフィルタリングの効果も限定的なものであった。さらに、この手法は、3台のMSを連結する必要があり、非常に高価であるなど問題が多かった。
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、安価な質量分析計であるイオントラップ質量分析計を用いて、1価と多価イオンの識別を容易に行うことが出来る分析方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、リング電極と一対のエンドキャップ電極を備えた質量分析部を有し、三次元四重極電界によって一時的にイオンをトラップして質量分析を行うイオントラップ質量分析計を用いた質量分析方法であって、前記リング電極に主高周波電圧を印加して、三次元四重極電界を生成する第1のステップと、前記質量分析部内でイオンを生成するかまたは外部からイオンを注入し、質量対電荷比が所定の範囲内にあるイオンを前記質量分析部内にトラップする第2のステップと、前記エンドキャップ電極間に複数の周波数成分で構成される補助交流電圧を印加し、当該補助交流電圧の周波数成分を走査する第3のステップと、前記主高周波電圧を走査してイオンを前記質量分析部から排出し、検出する第4のステップとを有することである。
また、更には、リング電極と一対のエンドキャップ電極を備えた質量分析部を有し、三次元四重極電界によって一時的にイオンをトラップして質量分析を行うイオントラップ質量分析計を用いた質量分析方法であって、前記リング電極に主高周波電圧を印加して、三次元四重極電界を生成する第1のステップと、前記質量分析部内でイオンを生成するかまたは外部からイオンを注入し、質量対電荷比が所定の範囲内にあるイオンを前記質量分析部内にトラップする第2のステップと、前記エンドキャップ電極間に複数の周波数成分で構成される補助交流電圧を印加し、前記主高周波電圧を走査する第3のステップと、前記主高周波電圧を走査してイオンを前記質量分析部から排出し、検出する第4のステップとを有することである。
発明を実施するための最良の形態
第1図に本発明の装置構成を示す。
液体クロマトグラム(LC)から送り出された試料溶液は、ESIイオン源1で大気中に帯電した微細な液滴として噴霧され、イオン化される。生成したイオン2は隔壁21に設けられた加熱されたキャピラリ3を経て、真空ポンプ6で排気された中間圧力室4に導入される。イオンは隔壁22上に設けられたスキマー23を経て、ターボ分子ポンプ7により排気された高真空室に送られる。イオンは高周波の印加された多重極イオンガイド5を経てイオンゲート9に到達する。イオンゲート9は、イオントラップ質量分析計へのイオンの導入のON/OFFを行う電極である。
イオントラップ質量分析計は、一つのドーナツ状のリング電極10とそれを挟むように配置された2つのエンドキャップ電極8,11とで構成される。リング電極10には周波数Ωの主高周波電圧が印加されている。その結果、3つの電極により形づくられたイオントラップ空間25内に3次元四重極場が形成される。また、2つのエンドキャップ電極8,11には補助交流電源16からコイル24を経て逆位相の補助交流電圧が印加され、トラップ空間25内に四重極場に重畳して2極子場が形成される。イオントラップ空間で生成または導入されたイオンは四重極場の働きにより安定にトラップされる。
次に、トラップされたイオンは、主高周波電圧の振幅(電圧)の掃引により、イオントラップ空間25から質量順に放出され検出器12により検出される。イオン電流は、直流増幅器13で増幅され、データ処理装置14に送り込まれる。データ処理装置14は、イオントラップの主高周波電源15,補助交流電源16やイオンゲート電源17などを制御してマススペクトルを収集する。
イオントラップ空間25内に形成される四重極場におけるイオンの挙動は、数学的かつグラフ的に、第24図に示されるMathieu安定曲線として表される。
あるイオンの質量mと四重極場との関連は下記の式(1),(2)で求められる。イオンごとに定められるa値とq値の2つのパラメータとして求められる。
=−(8eU)/(mr Ω) (1)
=(4eV)/(mr Ω) (2)
ここで、Uは主高周波電圧の直流電圧、mはイオンの質量、rはイオントラップの半径、Ωは主高周波電圧の周波数、Vは主高周波電圧の電圧である。
イオンは、式(1),(2)に従い、あるa値とq値を持つ。若し、これらa値とq値が共に第24図のMathieu安定曲線の中42に位置するなら、イオンはイオントラップ内に安定にトラップされる。逆にMathiru安定曲線の外の部分43に、イオンのa,q値のどちらか、または両方共に位置する場合、イオンは不安定となりイオントラップの壁に衝突して消滅するか、イオントラップの外に放出される。第24図は、主高周波電圧の直流成分Uを印加しない場合にイオンがトラップされる状態を示す模式図である。U=0であるから、(1)式において、a=0となる。質量m1>m2>m3の3つのイオンは、3つのイオンに対応したq値が(2)式に従いq<q<qとなるため、q軸上に左から右の順にq軸上に位置するようになる。
イオントラップ内にトラップされたイオンは、その質量や主高周波電圧などのトラッピングパラメータ(V,r,Ω)に基づいた固有の周波数で振動しながらイオントラップ内にトラップされる。イオンのこの運動は、イオンの質量やトラッピングパラメータに従った軌道を保っている。イオンの軌道上の運動は固有振動(Secular Motion)と呼ばれている。また、この運動の振動数は固有振動数ω(Secular Frequency)と呼ばれている。この固有振動数ωは以下の式で表される。
ω=√2eV/mr Ω (3)
これから固有振動数は、主高周波電圧Vに比例し、イオンの質量数mに反比例することがわかる。第24図に示した3つのイオンの固有振動数をω,ω,ωとすると、(3)式からω<ω<ωの関係が成立つ。また、トラッピングパラメータが同じで、同じ質量のイオンは同じ固有振動数を持つ。逆に異なった質量のイオンは、異なった固有振動数で運動している。もし、イオンの固有振動数と補助交流電圧の振動数が一致すると、両者は共鳴し、イオンは補助交流電圧からエネルギーを吸収する。この運動エネルギーの吸収により,イオンの軌道の振幅は急激に拡大する。補助交流電圧が数V以上になると、イオンの軌道はイオントラップ空間25を越えてしまう。即ち、この場合イオントラップ外に排出される。
補助交流電圧を1V以下にすると、イオンはイオントラップから放出されないが、イオン軌道は共鳴により大きくなる。そのためイオントラップ内のHeガスや残留ガス分子と頻繁に衝突するようになる。この過程において生じるイオンの開裂(娘イオンの生成)を解析する手法がMS/MS法である。共鳴によりエネルギーを与えられたイオンと中性分子が衝突を繰り返すことにより、イオンの開裂の他に、イオンと分子間での反応(イオン分子反応)が起きる。H(プロトン)の交換反応はイオン分子反応の一種である。正の多価イオンの場合、多価イオンからプロトンが引き抜かれる反応が良く観察される。これがプロトン引き抜き反応である。
(実施例1)
第2図に、本発明に用いる補助交流電圧のパワースペクトルを示す。横軸(X軸)が周波数、縦軸(Y軸)が電圧を示す。エンドキャップ8,11に印加する補助交流電圧は、複数の周波数成分で構成される。周波数ω1で電圧がV1の周波数成分と、電圧がV2で周波数ω1からω2の広帯域の周波数成分を持つ広帯域ノイズ信号により補助交流電圧は構成される。一般的には、V1は3V程度、V2は0.2V程度である。ω1の周波数の補助交流電圧は、共鳴によりイオンを放出するに十分なものである。また、ω1からω2の広帯域ノイズ信号は、イオンを励起し、プロトン引き抜き反応を促進させるためのものである。ここでω1<ω2である。
第2図に示した広帯域ノイズ成分の電圧はV2と一定としたが、第3図に示すようにω1からω2に向け、電圧を直線的または曲線的に低下するようにノイズ信号を印加することも出来る。また、広帯域ノイズ信号は必ずしも連続である必要はなく、第4図に示したように不連続であっても良い。またイオン放出用の信号ω1を第2図,第3図,第4図のように単一な周波数成分でなく、第5図のように広帯域周波数成分(ω1からω3)にすることも出来る。ここで3つの周波数はω1ω3<ω2である。
今、ESIによりn価と(n+1)価の多価イオンが生成され、イオントラップ空間に導入されたとする。同時に、1価のイオンm も生成されてイオントラップ空間25に導入されトラップされたとする。第2図のような、複数の周波数,電圧で構成される補助交流電圧が、補助交流電圧電源16から両エンドキャップ電極8,11に印加される。第6図に示すように、はじめ、補助交流電圧の周波数(ωsupp)は、n価のイオンの固有振動数ω11より低い周波数に設定される。印加された補助交流電圧の形状(ω1からω2までの複数の周波数成分)をそのままに、補助交流電圧の周波数を低周波数から高周波数に向け周波数掃引を開始する。第7図のように、補助交流電圧のω2がn価の多価イオンの固有振動数ω11に達すると、n価の多価イオンが選択的に励起され振動が大きくなる。しかし、励起の電圧が十分に小さいため、n価の多価イオン軌道はイオントラップ空間を越えることはない。さらに、補助交流電圧の周波数の掃引は続けられ、ω1からω2に至る間、連続的にn価の多価イオンは励起が続けられる。この間に、n価の多価イオンは中性分子と頻繁に衝突し、(4)式のように多価イオンからプロトンが引き抜かれる。ここでn価の多価イオンを(M+nH)+nと表す。この(M+nH)+nは、分子量mの分子Mにn個のプロトン(H)が付加したn価の多価イオンであることを表している。
(M+nH)+n+S →{M+(n−1)H}+(n−1)+(S+H) (4)
ここで、Sはトラップ空間に微量に存在するプロトン親和力の大きな分子、例えば、水,メタノール,アミン類などである。
イオン(M+nH)+nの質量は(m+n)であるから、イオン(M+nH)+nのm/zは、(m+n)/n=m/n+1となる。イオン分子反応(4)式が起きた後の生成した娘イオン{M+(n−1)H}+(n−1)のm/zは、(m+n−1)/(n−1)=m/(n−1)+1となる。即ち、式(4)のイオン分子反応が起きる前後の親イオンから娘イオンのm/zの変化は次のようになる。
m/n+1→m/(n−1)+1 (5)
親イオンと娘イオンの質量差Δmは、以下のように求まる。
Δm={m/(n−1)+1}−{m/n+1}=m/(n−1)−m/n
=m/(n−1)・n (6)
ここで、m,n−1,n、共に正の値をとることから、(6)式は、
Δm>0 (7)
となる。即ち、
{m/(n−1)+1}>{m/n+1} (8)
以上から、励起中にプロトン引き抜きにあったn価の多価イオン(親イオン)の質量対電荷比(m/z)は、突然変化し、更に、生成された(n−1)価の娘イオンのm/zは、n価の親イオンのm/zより大きくなることがわかる。更に、イオンの固有振動数は、(3)式からイオンの質量に反比例することから、生成した(n−1)価の娘イオンの固有振動数ω10は、n価の親イオンの固有振動数ω11より小さくなる。
ω10<ω11 (9)
第7図のように、この(n−1)価の娘イオンはMathieu安定曲線において、イオン排除用の補助交流電圧ω1や弱励起補助交流の領域(ω1〜ω2)を飛び越えて高質量領域に位置するようになる。その結果、もはや補助交流電圧の影響を受けなくなる。
更に、補助交流電圧の周波数掃引を継続すると、ω1は1価のイオンm2の固有振動数ω12と一致するようになる(第8図)。1価のイオンm は励起され、トラップ内の中性分子Sと衝突し最終的に開裂する。開裂すると、娘イオン(m−n)が生成する。娘イオン(m−n)のm/zはmより小さいため、イオンは見かけ上Mathieu安定曲線の右方向にシフトする(第8図)。
+S →(m−n)+n+S (10)
補助交流電圧の周波数掃引を更に続けると、補助交流は先ほど生成した娘イオン(m−n)の固有振動数ω22に一致するようになる。ここで娘イオンは励起され、衝突誘起解離(CID)により、次世代のイオンを作ることもある。もはや開裂しないイオンはω2からω1まで弱い励起を受けた後、ω1の強い励起を受けることになる。ここで、1価のイオンは一気に固有振動数の振幅が増大し、イオントラップの外に放出される。1価のイオンはこのように最終的にイオントラップ外に排出されてしまう(第9図)。
補助交流電圧を更に周波数掃引を続けると、補助交流は別の(n+1)価の多価イオンの固有振動数ω13に到達する(第10図)。弱い励起により、多価イオンからプロトンが引き抜かれ、電荷の一つ減少したn価の多価イオンが生成する。この多価イオンも、補助交流電圧(ω1〜ω2)を飛び越えて、左の高質量領域に移動する。
補助交流電圧の周波数を低周波数から高周波数に向け掃引を続けると、質量の高い方から低い方に向け順にイオンは励起される。多価イオンは、電荷を減じて高m/z領域にジャンプする。
最終的に、イオントラップ空間には、多価イオンが優先的にトラップされるようになる(第11図)。
共鳴励起により電荷が一つ減少した多価イオンの固有振動数が、補助交流電圧のω1とω2の間の値をとるなら、生成したイオンは再び補助交流電圧により励起されて、更なるプロトン引き抜き反応が起きる可能性がある。これを防ぐには、生成したイオンの固有振動数ω10がω1とω2の間に位置しないことが必要である。固有振動数ω10は物理的に定まる値であるから、ω10<ω1<ω2の関係が成立つようにω1とω2を定める必要がある。そのためにも、ω1とω2の間隔を不必要に広げないことが重要である。
ここで、印加する補助交流電圧の周波数ω1に対する広帯域ノイズ信号の範囲(ω1〜ω2)の比rは、以下のように定まる。イオントラップ内にトラップされるイオンの固有振動数は、式(3)のように、イオンの質量mに反比例している。またプロトン引き抜き反応で電荷が少なくなったイオンと元のイオンの質量差は、式(6)に示される。質量mのn価のイオンの固有振動数をω11とし、それからプロトン引き抜きで出来た(n−1)価のイオンの固有振動数をω10とすると、比rは、
r=(ω11−ω10)/ω11=1−ω10/ω11 (11)
となり、さらに (11)式は、
r=1−ω10/ω11=1−(n−1)/n (12)
となり、更に、
ω10/ω11=(n−1)/n (13)
が求まる。
即ち、プロトン引き抜き反応により多価イオンの電荷が減少した場合、それらイオンの固有振動数の比は、電荷の逆数の比になる。
これから、電荷の少ない多価イオンに較べて、電荷が比較的多い多価イオンからプロトン引き抜き反応が起きた場合、固有振動数の差が小さくなることがわかる。タンパクの場合、10から30価、ペプチドの場合、5価以下の多価イオンが良く観察される。例えば30価の多価イオンから29価の多価イオンが生成した場合、式(12)から、
1−ω10/ω11=1−29/30=1/30 (14)
となる。親イオンから娘イオンのm/zは、約3%のシフトが起きる。そのため、設定される補助交流電圧の幅(ω1からω2)は、ω2の約3%以下にする必要がある。
補助交流電圧の周波数を掃引する場合、厳密には補助交流電圧の幅を周波数に比例させることが必要である。しかし、実際にはタンパクの場合でも30価を超える多価イオンを与えるのはまれである。ペプチドでは5価から2価の多価イオンが観察される。そのため、補助交流の周波数の幅は、補助交流の周波数ωの3%程度に設定すれば、繰り返し起きるプロトン引き抜き反応を未然に防ぐことが出来る。
第12図に本実施例のタイムシーケンスを示す。
イオントラップの質量分析は、時間経過に従い測定モードが次々に変わり測定が進行する。
(1)イオン化ステップ(t〜t,t〜t,・・・)
イオンゲート電源17からイオンゲート9に−200Vが印加され、イオンがイオントラップ空間25に導入される。この時、主高周波電圧は低い電圧が設定されている。これにより、イオントラップ空間25に、広質量範囲のイオンがトラップされる。この状態では、多くの化学ノイズと試料成分の信号は同等にトラップされている。
(2)定められた質量範囲内のイオンの排除(t〜t,t〜t,・・・)
となりイオン導入時間が終了すると、イオンゲート9には+200Vが印加され、正イオンがイオントラップ空間25に侵入しないようにする。次に、広帯域ノイズを補助交流電圧として印加する。広帯域ノイズは、1kHzからω1まで連続した周波数成分を含んでいる。補助交流の電圧は3〜10V程度で良い。この広帯域ノイズをエンドキャップ電極に印加すると、周波数ω1に対応した固有振動数(secular motion)を持つ質量m1以上のイオンは、補助交流電圧との共鳴により励起されイオントラップ外に全て排除される。反対に、質量m1以下のイオンがイオントラップ内にトラップされる。
(3)補助交流電圧の周波数掃引(t〜t,t〜t,・・・)
つぎに、第2図から第5図の中のどれか一つのノイズ成分の補助交流を印加する。トラップした最大質量のイオンの固有振動数をω11とし、最小質量のイオンの固有振動数をω13とする。今、補助交流電圧を周波数ω1で振幅が数Vの補助交流電圧と、電圧0.2V程度のω1からω2の周波数成分を有するノイズ信号で構成されるようにして、両エンドキャップ間に印加する。主高周波電圧は一定のまま、補助交流電圧の周波数を低い方から高い方に向け掃引を開始する。イオンは、高質量のイオンから低質量のイオンに向け質量順に共鳴状態となり励起される。共鳴により、イオンの振幅が大きくなり、トラップ空間内のガス分子と衝突を頻繁に行う。この過程で、多価イオンの電荷の一部がガス分子に移り電荷の減少が起きる。
一方、電荷が一つである1価のイオンや付加イオンなどは、励起に誘起された衝突励起により、イオンは開裂して低質量の娘イオン(フラグメントイオン)となる。また、衝突励起でも開裂や電荷の喪失の無い1価のイオンは、そのままのm/zを保持している。
これらイオンは、イオン放出用の補助交流電圧の振動数ω1とイオンの固有振動が一致するようになると共鳴し、直ちにイオントラップ外に排出される。娘イオンでフラグメントイオンとなったイオンは、主高周波電圧の掃引により、再び共鳴励起を受けることになる。そして、イオンはイオン放出用の補助交流電圧との共鳴により外部に放出される。
最終的に、イオントラップ空間には、多価イオンが優先的にトラップされるようになる。この過程を以後、多価イオンフィルタリングと呼ぶ。
(4)質量分析(t〜t,t〜t,・・・)
イオンの励起の時間が終了すれば補助交流をoffとする。次に、データ処理装置14からの指示により主高周波電圧が掃引を開始し、質量順に排出されるイオンを検出器12で検出する。イオン電流は、直流増幅器13を経てデータ処理装置14に送られマススペクトルを収集する。
(5)リセット(t〜t,t〜t,・・・)
所定の質量まで掃引すれば、主高周波電源はリセットされ零となる。これにより、イオントラップ内に残っていたイオンは、全て排除される。
二回目のスキャンとなり、(1)に戻り、再びイオン化またはイオンの導入が開始される。この繰り返しを行いマススペクトルが取得される。
第13図に処理シーケンスを流れ図にして示してある。
イオントラップ質量分析計の場合、(1)から(3)のステップを行った後、(3)の多価イオンフィルタリングの過程を繰り返し行う事が可能である。その後(4)(5)のステップを行う。この多価イオンフィルタリングの繰り返しの回数は、化学ノイズと多価イオンの信号比を勘案して決定できる。
(実施例2)
第14図から第16図に別の実施例を示す。
実施例1では、多価イオンフィルタリングが、主高周波電圧を固定して補助交流電圧の周波数を掃引する方法を示した。
本実施例では、補助交流電圧を固定し、主高周波電圧の振幅(電圧)を掃引する方法を示す。以下に,そのステップを示す。
(1)イオンを外部で生成しイオントラップ空間25に導入するか、イオントラップ空間でイオンを生成する。
(2)高質量領域のイオンをイオントラップ空間から排除する。これには電圧3Vから10V程度の広帯域のノイズを両エンドキャップに印加する。この広帯域ノイズに相当する固有振動数を持つ全てのイオンがイオントラップ空間から排除される(第14図)。
(3)第2図から第5図の中のどれかの形の補助交流電圧を印加する(第15図)。
(4)主高周波電圧を高電圧から低電圧に向け掃引を開始する。
(5)主高周波電圧の所定の電圧に達したら掃引を停止する。
(6)必要なら(4)(5)を繰り返す。
(7)主高周波電圧を掃引してマススペクトルを収集する。
ここで、(4)では、第15図に示したような多価イオンフィルタリングが行われる。複数の周波数成分と電圧で構成される補助交流電圧が、両エンドキャップ電極に印加される。主高周波電圧が高電圧から低電圧に向け掃引が開始される。主高周波電圧の減少に伴い、n価の多価イオンの固有振動数ω11は次第に小さくなり、補助交流電圧の振動数ω2に一致するようになる。n価の多価イオンは、励起されプロトン引き抜き反応が起きる。プロトン引き抜き反応により生成した(n−1)価の多価イオンは、補助交流電圧(ω1からω2)を飛び越えて高質量領域に移動する。その間、基本高周波電圧の掃引され、固有振動数ω11は減少を続ける。固有振動数ω11が補助交流電圧ω1に達するまで共鳴励起される。共鳴励起により、プロトン引き抜き反応や開裂などしなかったイオンは、ω1の共鳴によりイオントラップ空間から排除される。即ち、多価イオンの内、プロトン引き抜き反応が起きたイオンのみが補助交流(ω1〜ω2)を飛び越えて高質量領域(補助交流電圧の左側)へ移動し、イオントラップ内にトラップされる。1価のイオンなどは補助交流電圧によりイオントラップ外に放出される。
第16図に、本実施例のタイムシーケンスを示す。
(1)時刻t0−t1: 所定の主高周波電圧を印加する。イオンをイオントラップ空間に導入。イオンをイオントラップ空間にトラップする。
(2)時刻t1−t2: 広帯域ノイズの補助交流電圧をエンドキャップ電極に印加する。高質量イオンをイオントラップ空間から排除する。
(3)時刻t2−t3: 異なった電圧の多周波数成分を持つ補助交流電圧を印加する。主高周波電圧を低電圧に向け掃引を開始する。
(4)時刻t3−t4: 主高周波電圧の掃引を停止する。次に、主高周波電圧を高電圧に向け掃引を開始してマススペクトルを取得する。
(5)時刻t4−t5: 最後に主高周波電圧をリセットしてマススペクトル収集を終了する。
本実施例では、実施例1と同様に(3)のステップを繰り返し、多価イオンのフィルタリングの効率をアップすることが出来る。
実施例1,2により得られるマススペクトルの改善例を第17図〜第19図で示す。
第17図は、生体組織から抽出されたタンパクのマススペクトルを示す。横軸が質量対電荷比(m/z)、縦軸が最強ピークを100%とした相対強度を示す。十分な前処理,クリーンアップを経て来た試料でも、マススペクトル上には多くの不純物ピークが出現している。p1からp5のマスピークは、試料のタンパクに由来する多価イオンである。それ以外の多くのマスピークは不純物由来のものである。不純物の1価のイオン,付加イオン等が広質量範囲に渡り出現している。特に、低質量(<m/z1,000)の領域は、信号のピークより不純物のピークが顕著に出現している。この不純物のピークの出現により、試料の解析が困難になる。特に微量な成分は、これら化学ノイズに埋没してしまう。
第18図は、本発明の多価イオンフィルタリングを1回実施した後のマススペクトルを示す。多くの化学ノイズが1/10以下に減少している。一方、多価イオンのマスピークは電荷の少ない方(高質量,マススペクトルの右方向)にシフトしているが、相対的に大きな変化はない。化学ノイズの大幅な減少により多価イオンが顕在化し、化学ノイズに埋もれていた多価イオンpが、第18図のマススペクトル上には明瞭に出現してきた。
第19図に、本発明の多価イオンフィルタリングを2回繰り返した時のマススペクトルを示す。第18図に比べ、更に化学ノイズが減少している。試料のタンパクに由来する多価イオン群P6からp0に加え、試料溶液中に共存していた別のタンパクに由来する多価イオンp9からp7も明確に出現している。
(実施例3)
第20図から第22図に、別の実施例を示す。
実施例1では、主高周波電圧を固定して補助交流電圧の周波数を掃引し、質量の高い方から質量の低い方に向け質量順にイオンを励起し、その際のイオン分子反応を利用して多価イオンをイオントラップ内に選択的に残す多価イオンフィルタリングを示した。
実施例2では、補助交流電圧を固定して主高周波電圧を掃引し、質量の高い方から質量の低い方に向け質量順にイオンを励起し、その際のイオン分子反応を利用して多価イオンをイオントラップ内に選択的に残す多価イオンフィルタリングを示した。
本実施例では、実施例1,2と異なる補助交流を印加する方法を示す。
第20図に本実施例に用いる補助交流電圧のパワースペクトル図を示す。第2図のミラーイメージ(鏡像)になっている。補助交流電圧は複数の高周波成分で構成される。ω2からω1の周波数成分を含む広帯域ノイズ信号で、その電圧はω2からω1がV2、ω1がV1である。補助交流電圧の周波数と電圧は、ω1>ω2,V2≪V1である。一般にV2は0.2V、V1は3V程度である。
ここでは主高周波電圧を固定し、補助交流電圧の周波数を高い方から低い方に向け掃引する方法を示す。
(1)イオンを外部で生成しイオントラップ空間25に導入するか、イオントラップ空間でイオンを生成する。
(2)低質量領域のイオンをイオントラップ空間から排除する。これには、電圧3Vから10V程度の広帯域のノイズを両エンドキャップに印加する(第21図)。この広帯域ノイズに相当する固有振動数を持つ全てのイオンが、イオントラップ空間25から排除される。
(3)第20図の補助交流電圧を低質量領域に相当する周波数にて印加する。なお、印加する補助交流電圧は、第3図〜第5図のミラーイメージでも良い。
(4)補助交流電圧の形を保ったまま周波数を高い方から低い方に向け掃引を開始する。
(5)補助交流電圧の周波数が、所定の値に達したら周波数の掃引を停止する。
(6)必要により(4)(5)を繰り返す。
(7)主高周波電圧を掃引してマススペクトルを収集する。
上記(4)では、プロトン引き抜き反応が起きた多価イオンは、m/zの増加により、q軸上を左にジャンプする。1価のイオンは、補助交流電圧との共鳴により衝突誘起解離(CID)が起き、低質量の娘イオン(フラグメントイオン)が生成する。娘イオンのm/zは親イオンのm/zより小さいため、娘イオンは補助交流電圧を飛び越えて低質量領域に位置する(第23図)。イオンの中でプロトン引き抜き反応も娘イオン生成もしないものは、補助交流電圧のω1により強く励起され、イオントラップの外に排除される。即ち、本実施例は実施例1,2と異なり、娘イオンが選択的にイオントラップ空間に残される。1価や多価のイオンは積極的にイオントラップ空間から排除される。本手法により、娘イオンのスクリーニングが行われる。
実施例3では、主高周波電圧を固定し、補助交流電圧の周波数を掃引した。逆に、補助交流電圧を固定し、主高周波電圧を掃引しても良い。この場合、主高周波の掃引は低電圧から高電圧に向かい掃引を行う。質量の低いイオンから順にイオンは弱励起され、イオン分子反応や開裂が起きる。イオン分子反応や開裂の起きないイオンは、次に起きる強い共鳴により、イオントラップ外に排除される。最終的に、イオントラップ内には開裂した娘イオンが選択的にトラップされている。次に慣用の方法により娘イオンのマススペクトルを得ることが出来る。
本発明の事例として正イオンについての説明を行ってきた。しかし、本発明は正イオンにのみ適用されるのではなく、負イオンにも適用できる。DNAなどは負イオンの多価イオンを与えるため、本発明の負イオンモードを適用できる。この場合、負の多価イオンは水などの極性分子からプロトンを引き抜き、負の電荷を一つ減少させる。
また、イオン化もESIに限定されるものでなく、他のイオン化、例えばソニックスプレイイオン化(SSI)などにも適用できる。イオンもイオントラップ空間外から導入される事に限定されない。イオントラップ空間内でイオンを生成させても良い。
上記各実施例においては、イオントラップ空間内の中性分子(残留ガス(水)やLCから導入された水,メタノール分子)と多価イオンとのイオン分子反応によるプロトン引き抜き反応の例を示した。これに加えて、正の多価イオンの場合にアミン類(アンモニアやアルキルアミンなど)、負の多価イオンの場合に酸(トリフロロ酢酸,蟻酸など)等を直接イオントラップ空間に導入しても良い。これらの導入により、プロトン引き抜き反応をより確実にすることができる。
以上、上記に示すように、本発明によれば、イオントラップ質量分析計を用いて化学ノイズの選択的な低減を行うことが出来る。その結果、微量のタンパク,ペプチド,DNAなど生体関連物質の高感度で信頼性の高い分析を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明で使用する装置の概略構成図である。
第2図は、本発明の補助交流電圧の一実施形態を示す図である。
第3図は、本発明の補助交流電圧の一実施形態を示す図である。
第4図は、本発明の補助交流電圧の一実施形態を示す図である。
第5図は、本発明の補助交流電圧の一実施形態を示す図である。
第6図は、第一の実施例の動作説明図である。
第7図は、第一の実施例の動作説明図である。
第8図は、第一の実施例の動作説明図である。
第9図は、第一の実施例の動作説明図である。
第10図は、第一の実施例の動作説明図である。
第11図は、第一の実施例の動作説明図である。
第12図は、第一の実施例のタイムシーケンスを示す図である。
第13図は、第一の実施例のフローチャートである。
第14図は、第二の実施例の動作説明図である。
第15図は、第一の実施例の動作説明図である。
第16図は、第一の実施例のタイムシーケンスを示す図である。
第17図は、本発明を用いない場合のマススペクトルである。
第18図は、本発明を用いた場合のマススペクトルである。
第19図は、本発明を用いた場合のマススペクトルである。
第20図は、本発明の補助交流電圧の一実施形態を示す図である。
第21図は、第三の実施例の動作説明図である。
第22図は、第三の実施例の動作説明図である。
第23図は、第三の実施例の動作説明図である。
第24図は、Mathieu安定曲線である。
第25図は、LC/MSの一般的な概略構成を示す図である。

Claims (17)

  1. リング電極と一対のエンドキャップ電極を備えた質量分析部を有し、三次元四重極電界によって一時的にイオンをトラップして質量分析を行うイオントラップ質量分析計を用いた質量分析方法であって、
    前記リング電極に主高周波電圧を印加して、三次元四重極電界を生成する第1のステップと、
    前記質量分析部内でイオンを生成するかまたは外部からイオンを注入し、質量対電荷比が所定の範囲内にあるイオンを前記質量分析部内にトラップする第2のステップと、
    前記エンドキャップ電極間に複数の周波数成分で構成される補助交流電圧を印加し、当該補助交流電圧の周波数成分を走査する第3のステップと、
    前記主高周波電圧を走査してイオンを前記質量分析部から排出し、検出する第4のステップとを有することを特徴とする質量分析方法。
  2. リング電極と一対のエンドキャップ電極を備えた質量分析部を有し、三次元四重極電界によって一時的にイオンをトラップして質量分析を行うイオントラップ質量分析計を用いた質量分析方法であって、
    前記リング電極に主高周波電圧を印加して、三次元四重極電界を生成する第1のステップと、
    前記質量分析部内でイオンを生成するかまたは外部からイオンを注入し、質量対電荷比が所定の範囲内にあるイオンを前記質量分析部内にトラップする第2のステップと、
    前記エンドキャップ電極間に複数の周波数成分で構成される補助交流電圧を印加し、前記主高周波電圧を走査する第3のステップと、
    前記主高周波電圧を走査してイオンを前記質量分析部から排出し、検出する第4のステップとを有することを特徴とする質量分析方法。
  3. 請求項1及び2において、
    前記補助交流電圧は、所定の周波数帯域(ω1〜ω2)を有することを特徴とする質量分析方法。
  4. 請求項3において、
    前記補助交流電圧中で、任意の周波数成分の電圧値は、少なくともイオンを共鳴的に放出できるに十分な電圧(V1)を有し、その他の周波数成分の電圧値は、イオンを共鳴励起しうるがイオンを共鳴放出するには不十分である電圧(V2)を有するようにしたことを特徴とする質量分析方法。
  5. 請求項4において、
    前記補助交流電圧は、低周波数側が前記V1の電圧値を有することを特徴とする質量分析方法。
  6. 請求項5において、
    前記第3のステップの前記補助交流電圧は、低周波数から高周波数に向け周波数掃引することを特徴とする質量分析方法。
  7. 請求項5において、
    第2のステップと第3のステップの間に、前記エンドキャップ間に、広帯域ノイズ信号を印加して、高質量領域のイオンを排除するステップを有することを特徴とする質量分析方法。
  8. 請求項6において、
    前記第3のステップの前記補助交流電圧の周波数,電圧は固定され、前記主高周波電圧は高電圧から低電圧に向け掃引することを特徴とする質量分析方法。
  9. 請求項5において、
    第2のステップと第3のステップの間に、前記エンドキャップ間に、広帯域ノイズ信号を印加して、低質量領域のイオンを排除するステップを有することを特徴とする質量分析方法。
  10. 請求項9において、
    前記補助交流電圧は、高周波数側が前記V1の電圧値を有することを特徴とする質量分析方法。
  11. 請求項10において、
    前記第3のステップの前記主高周波電圧の電圧値は固定され、前記補助交流電圧は、高周波数から低周波数に向け周波数掃引することを特徴とする質量分析方法。
  12. リング電極と一対のエンドキャップ電極を備えた質量分析部と、当該質量分析部から放出されたイオンを検出する検出部と、前記質量分析部への印加電圧の制御を行う制御部とを備えたイオントラップ質量分析計において、
    前記制御部は、
    前記リング電極に主高周波電圧を印加して、三次元四重極電界を生成し、質量対電荷比が所定の範囲内にあるイオンを前記質量分析部内にトラップしている際に、前記エンドキャップ電極間に複数の電圧値成分で構成される補助交流電圧を印加することを特徴とするイオントラップ質量分析計。
  13. 請求項12において、
    前記補助交流電圧は、所定の周波数帯域(ω1〜ω2)を有し、当該補助交流電圧中で、任意の周波数成分の電圧値は、少なくともイオンを共鳴的に放出できるに十分な電圧(V1)を有し、その他の周波数成分の電圧値は、イオンを共鳴励起しうるがイオンを共鳴放出するには不十分である電圧(V2)を有するようにしたことを特徴とするイオントラップ質量分析計。
  14. 請求項13において、
    前記電圧V2の電圧値は、前記V1の電圧値を有する周波数側の電圧が高く、その反対側の電圧値が低くなるように設定されることを特徴とするイオントラップ質量分析計。
  15. 請求項13において、
    前記電圧V2となる周波数成分は、不連続であることを特徴とするイオントラップ質量分析計。
  16. リング電極と一対のエンドキャップ電極によってイオントラップ空間を形成する質量分析部と、当該質量分析部から放出されたイオンを検出する検出部と、前記質量分析部への印加電圧の制御を行う制御部とを備えたイオントラップ質量分析計において、
    前記イオントラップ空間内にトラップしているイオンから、1価のイオンを選択的にトラップ空間外に排出することを特徴とするイオントラップ質量分析計。
  17. 請求項16において、
    前記エンドキャップ電極間に複数の電圧値を有する周波数成分で構成される補助交流電圧を印加し、走査することを特徴とするイオントラップ質量分析計。
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