JP5460884B2 - 車両用回転電機およびそれに用いられる巻線アッセンブリの製造方法 - Google Patents

車両用回転電機およびそれに用いられる巻線アッセンブリの製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、例えば車両用交流発電機などの回転電機およびそれに用いられる巻線アッセンブリの製造方法に関し、特に固定子巻線の巻回構造に関するものである。
従来の車両用交流発電機では、電気角で120度の位相の異なる3つの相巻線をY結線して固定子巻線を構成していた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、固定子巻線が電気角で120度の位相の異なる3つの相巻線をY結線して構成されているので、線間には1相誘起電圧の√3倍の電圧しか発生されず、低速の回転速度における発電要求に応えられないという課題があった。
これを解決するために、各相巻線を電気角で120度の位相の異なる2つの巻線を直列に結線、いわゆる千鳥結線して構成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2によれば、各相巻線を千鳥結線により構成することで、線間に1相誘起電圧の2倍の電圧が発生されるので、無負荷起電力が大きくなり、発電開始回転速度を低くすることができ、低速の回転速度における発電要求に応えられるようになる、としている。
しかし、特許文献2では、異なるスロット群に巻装された2つの巻線の端部同士を結線する必要があるので、結線箇所が増大するという課題があった。
ここで、従来、1本の導体線で電気的に千鳥結線と等価の巻線を構成できる巻線構造が提案されていた(例えば、特許文献3参照)。特許文献3によれば、1本の導体線を短節巻きと長節巻きとが交互になるように配置することにより、1本の導体線で電気的に千鳥結線と等価の巻線が構成できるので、結線箇所の増大を抑えることができる。
特開平04−26345号公報 特開2001−327137号公報 特開平05−227688号公報
特許文献3には、具体的な導体線の巻装方法が記載されていないが、例えば、導体線を1本ずつ、5スロット離れたスロットと7スロット離れたスロットとに交互に入るように円環状の固定子鉄心に巻装するものと推考される。
しかし、近年、エンジンルームが狭小化する中で、車両負荷の増大による更なる出力向上が求められており、導体線の断面積を大きくして巻線の低抵抗化を図る必要があった。そして、導体線は太くなるほど曲げにくくなるので、太い導体線を1本ずつ5スロット離れたスロットと7スロット離れたスロットとに交互に入るように円環状の固定子鉄心に巻装することは、量産には適さない。
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、所定本数の導体線を曲げ成形して作製された巻線アッセンブリを固定子鉄心に装着することにより、1本の導体線で電気的に千鳥結線と等価の巻線を構成できるようにして、煩雑な結線作業を簡素化できる車両用回転電機およびそれに用いられる巻線アッセンブリの製造方法を得ることを目的とする。
この発明による車両用回転電機は、フロントブラケットとリヤブラケットとからなる金属製のハウジングと、上記フロントブラケットと上記リヤブラケットとに軸支されたシャフトに固着されて上記ハウジング内に回転自在に配設された回転子と、内周側に開口するスロットが周方向に所定のピッチで複数配設され、上記フロントブラケットと上記リヤブラケットとに挟持されて上記回転子を囲繞するように配設された円環状の固定子鉄心、および上記固定子鉄心に装着された固定子巻線を有する固定子と、を備えている。上記固定子巻線は、(N−M)スロットピッチと(N+M)スロットピッチとの交互のスロットピッチの複数の波巻き巻線により構成され(但し、Nは2以上の整数、Mは1以上、N未満の整数)、上記複数の波巻き巻線は、上記固定子鉄心に装着された少なくとも1つの巻線アッセンブリにより構成されている。上記巻線アッセンブリは、2N本の連続線からなる素線を巻回して作製され、上記固定子鉄心の各スロット内にスロット深さ方向に関して内層と外層とに並んで対となって収納されたスロット収納部と、上記固定子鉄心の軸方向一端側で各スロット内の内層と外層との一方に収納されている上記スロット収納部の端部と(N−M)スロット離れたスロット内の内層と外層との他方に収納されている上記スロット収納部の端部とを連結する第1ターン部と、上記固定子鉄心の軸方向他端側で各スロット内の内層と外層との他方に収納されている上記スロット収納部の端部と(N+M)スロット離れたスロット内の内層と外層との一方に収納されている上記スロット収納部の端部とを連結する第2ターン部とを有し、(N−M)本の上記素線の両端が上記固定子鉄心の軸方向一端側に延出し、(N+M)本の上記素線の両端が上記固定子鉄心の軸方向他端側に延出している。
この発明によれば、予め2N本の素線を巻回して作製された巻線アッセンブリを固定子鉄心に装着しているので、素線の大断面積化が可能となり、出力向上の要求に対応することができる。
また、巻線アッセンブリが、1本の導体線で電気的に千鳥結線と等価の巻線を構成できるように構成されているので、煩雑な結線作業が簡素化される。
この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の構成を説明する断面図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の固定子を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明するリヤ側端面図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における相巻線の構成を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の回路構成図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される巻線アッセンブリを構成する素線を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される巻線アッセンブリを構成する素線対を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す平面図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法を説明する工程図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における素線の巻回工程により作製された巻線組立体を示す平面図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における巻線組立体の変位工程を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における積層鉄心を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における積層鉄心の曲げ工程を説明する斜視図である。 比較例の巻線組立体を示す平面図である。 この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明するリヤ側端面図である。 この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における素線の巻回工程により作製された巻線組立体を示す平面図である。 この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における巻線組立体の変位工程により作製された巻線アッセンブリを構成する素線を示す斜視図である。 この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す平面図である。 この発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機の構成を説明する断面図である。
以下、本発明の車両用回転電機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の構成を説明する断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の固定子を示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明するリヤ側端面図、図4はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における相巻線の構成を説明する図、図5はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の回路構成図である。なお、図2では、口出し線などが省略されている。また、図3中、実線がフロント側配線を示し、点線がリヤ側配線を示している。
図1において、車両用回転電機としての車両用交流発電機1は、それぞれ略椀形状のアルミニウム製のフロントブラケット2とリヤブラケット3とからなるハウジング4と、このハウジング4に一対の軸受5を介して回転可能に支持されたシャフト6と、ハウジング4のフロント側に延出するシャフト6の端部に固着されたプーリ7と、シャフト6に固定されてハウジング4内に配設された回転子8と、回転子8を囲繞するようにハウジング4に固定された固定子20と、ハウジング4のリヤ側に延出するシャフト6の延出部に固定され、回転子8に電流を供給する一対のスリップリング12と、略C字形に作製され、スリップリング12の外周側に、シャフト6の軸心と直交する平面上にシャフト6を中心とする扇状に配置され、固定子20で生じる交流電圧を直流電圧に整流する整流装置13と、一対のスリップリング12の外周側に、かつ整流装置13の略C字形の先端間に配設されたブラシホルダ14内に、各スリップリング12に摺動するように収納された一対のブラシ15と、ブラシホルダ14に装着されて固定子20で生じる交流電圧の大きさを調整する電圧調整器16と、整流装置13、ブラシホルダ14および電圧調整器16を覆うようにリヤブラケット3に装着された樹脂製の保護カバー17と、を備えている。
回転子8は、ランデル型回転子であり、励磁電流が流されて磁束を発生する界磁巻線9と、界磁巻線9を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成されるポールコア10と、を備えている。そして、ファン11が、ポールコア10の軸方向の両端面に溶接などにより固定されている。
固定子20は、図2に示されるように、内周側に開口するスロット21aが周方向に所定ピッチで配列された円筒状の固定子鉄心21と、固定子鉄心21に巻装され、回転子8の回転に伴い、界磁巻線9からの磁束の変化で交流が生じる固定子巻線22と、を備えている。そして、固定子巻線22は、後述するように、1本の素線30が、固定子鉄心21の端面側のスロット21a外で折り返されて、5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの交互のスロット21a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互にとるように波巻きされて巻装された巻線を複数備えている。
ここでは、回転子8の磁極数16に対応して、2つの3相交流巻線を収納するように、96本のスロット21aが固定子鉄心21に等角ピッチ(電気角で30°のピッチ)に形成されている。即ち、スロット21aは毎極毎相当たり2の割合で形成されている。また、図示していないが、インシュレータが各スロット21aに装着され、固定子巻線22と固定子鉄心21とを電気的に絶縁している。
このように構成された固定子20は、固定子鉄心21の軸方向両端面をフロントブラケット2およびリヤブラケット3に軸方向両側から挟持されて、ポールコア10の外周面との間に均一なギャップを確保してポールコア10を囲繞するように配設されている。
つぎに、1相分の相巻線24の巻線構造について図3を参照して具体的に説明する。
固定子鉄心21は、所定形状に成形された磁性鋼板を積層して作製され、円環状のコアバック21bと、それぞれコアバック21bの内周面から径方向内方に延出して、周方向に等角ピッチに配列されているティース21cと、を有し、内周側に開口するスロット21aがコアバック21bと周方向に隣り合うティース21cとにより画成されている。
相巻線24は、それぞれ1本の素線30からなる第1乃至第6巻線31〜36から構成されている。素線30は、例えば絶縁被覆された断面円形の銅からなる連続線で構成される。
第1巻線31は、1本の素線30を、スロット番号の1番から92番まで7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の外周側から1番目の位置(以下、1番地という)と外周側から2番目の位置(以下、2番地という)とを交互にとるように波巻きして構成されている。第2巻線32は、素線30を、スロット番号の2番から91番まで5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の2番地と1番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第3巻線33は、1本の素線30を、スロット番号の1番から92番まで7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の外周側から3番目の位置(以下、3番地という)と外周側から4番目の位置(以下、4番地という)とを交互にとるように波巻きして構成されている。第4巻線34は、素線30を、スロット番号の2番から91番まで5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の4番地と3番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第5巻線35は、1本の素線30を、スロット番号の1番から92番まで7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の外周側から5番目の位置(以下、5番地という)と外周側から6番目の位置(以下、6番地という)とを交互にとるように波巻きして構成されている。第6巻線36は、素線30を、スロット番号の2番から91番まで5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の6番地と5番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。
そして、固定子鉄心21の一端側(フロント側)において、スロット番号の1番から延出する第1巻線31の端部31aと、スロット番号の92番から延出する第5巻線35の端部35bとが接合され、スロット番号の1番から延出する第3巻線33の端部33aと、スロット番号の92番から延出する第1巻線31の端部31bとが接合され、さらにスロット番号の1番から延出する第5巻線35の端部35aと、スロット番号の92番から延出する第3巻線33の端部33bとが接合されて、3ターンの巻線が形成されている。
また、固定子鉄心21の他端側(リヤ側)において、スロット番号の2番から延出する第2巻線32の端部32aと、スロット番号の91番から延出する第6巻線36の端部36bとが接合され、スロット番号の2番から延出する第4巻線34の端部34aと、スロット番号の91番から延出する第2巻線32の端部32bとが接合され、さらにスロット番号の2番から延出する第6巻線36の端部36aと、スロット番号の91番から延出する第4巻線34の端部34bとが接合されて、3ターンの巻線が形成されている。
さらに、スロット番号の43番と50番とから固定子鉄心21の他端側に延出する第2巻線32の素線30の部分が切断され、スロット番号の49番と56番とから固定子鉄心21の他端側に延出する第1巻線31の素線30の部分が切断される。そして、第1巻線31の切断端31cと第2巻線32の切断端32cとが接合されて、第1乃至第6巻線31〜36を直列接続してなる6ターンの相巻線24が形成されている。また、第1巻線31の切断端31dと第2巻線32の切断端32dとがそれぞれ口出し線(O)および中性点(N)となる。
ここで、第1巻線31は、素線30をスロット番号の1番から92番まで7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとに交互に収納されるように巻回して構成されている。そこで、第1巻線31は、図4の(a)に示されるように、電気角でθの位相差を有する巻線部37a,37bをジグザグに連結して構成されている。このように構成された第1巻線31は、図4の(b)に示されように、素線30を7スロット毎のスロット21aに収納されるように巻回して構成される巻線28Aと5スロット毎のスロット21aに収納されるように巻回して構成される巻線28Bとを直列に接続した千鳥結線の巻線と電気的に等価となる。即ち、第1巻線31は、電気角でθ(=30°)の位相差を有する2つの巻線38A,38Bを直列に接続した千鳥結線の巻線と電気的に等価となる。なお、第2乃至第6巻線32〜36も、第1巻線31と同様に、電気角で30°の位相差を有する2つの巻線38A,38Bを直列に接続した千鳥結線の巻線と電気的に等価となる。
同様にして、素線30が巻装されるスロット21aを1つずつずらして6つの相巻線24が形成されている。そして、図5に示されるように、それぞれ3つの相巻線24がY結線されて2つの3相交流巻線23が構成されている。Y結線された相巻線24の端部により構成される口出し線Oが、リヤ側コイルエンド群22rから引き出され整流装置13の端子に接続される。これにより、各3相交流巻線23がそれぞれ整流装置13に接続され、各整流装置13の直流出力が並列に接続されて合成される。
また、スロット21aから固定子鉄心21の端面側に延出して折り返された素線30のターン部30aがコイルエンドを形成している。そして、固定子鉄心21の両端において、ターン部30aが、周方向に互いに離間して、かつ径方向に3列となって周方向に整然と配列されてフロント側およびリヤ側のコイルエンド群22f,22rを形成している。7スロット離れたスロット21a内に収納されているスロット収納部30b間を連結する第2ターン部としてのターン部30aの頂部の固定子鉄心21の端面からの高さは、5スロット離れたスロット21a内に収納されているスロット収納部30b間を連結する第1ターン部としてのターン部30aの頂部の固定子鉄心21の端面からの高さより高くなっている。そして、図1に示されるように、リヤ側コイルエンド群22rが、7スロット離れたスロット21a内に収納されているスロット収納部30b間を連結するターン部30aにより構成されている。
第1、第3および第5巻線31,33,35を構成するそれぞれの素線30は、1つのスロット21aから固定子鉄心21の端面側に延出し、折り返されて7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとに交互に入るように波巻きに巻装されている。そして、それぞれの素線30は、7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとの交互のスロット21a毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外層とを交互にとるように巻装されている。
第2、第4および第6巻線32,34,36は、1つのスロット21aから固定子鉄心21の端面側に延出し、折り返されて5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとに交互に入るように波巻きに巻装されている。そして、それぞれの素線30は、5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの交互のスロット21a毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外層とを交互にとるように巻装されている。
そこで、固定子巻線22は、第1巻線31を1スロットピッチで6本配列して構成される第1巻線群と第2巻線32を1スロットピッチで6本配列して構成される第2巻線群との対を、径方向に3対並べて配設したものと等価となる。この第1巻線群と第2巻線群との対は、12本の素線30を波状に成形しつつ作製した巻線アッセンブリ40で提供される。
つぎに、巻線アッセンブリ40の構造について説明する。
図6はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される巻線アッセンブリを構成する素線を示す斜視図、図7はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される巻線アッセンブリを構成する素線対を示す斜視図、図8はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す平面図である。
素線30は、図6に示されるように、ターン部30aにより連結されたスロット収納部30bが、7スロットピッチ(7P)と5スロットピッチ(5P)との交互のピッチで配列された平面状パターンに折り曲げ成形されている。そして、隣り合うスロット収納部30bは、ターン部30aにより、スロット収納部30bの配列方向とスロット収納部30bの軸方向とに直交する方向(以下、スロット収納部30bの厚み方向とする)に交互に所定量(W)ずらされている。
このようなパターンに形成された素線30は、図7に示されるように、反転した素線30に、1スロットピッチずらして、スロット収納部30bの厚み方向に重ねて配置されて素線対41を構成している。この素線対41が、上述の第1および第2巻線31,32の対に相当する。
素線対41が、1スロットピッチずつずらされて6対配列されて、図8に示される巻線アッセンブリ40が構成される。ここで、スロット収納部30bの対の配列方向、スロット収納部30bの軸方向、およびスロット収納部30bの厚み方向を、巻線アッセンブリ40の長さ方向、幅方向および厚み方向とする。
このように構成された巻線アッセンブリ40では、厚み方向に重ねられたスロット収納部30bの対が、1スロットピッチで96対配列されている。そして、厚み方向の一側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向一側の端部が、5スロットピッチ(5P)離れた厚み方向の他側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向一側の端部にターン部30aにより連結されている。さらに、厚み方向の他側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向他側の端部が、7スロットピッチ(7P)離れた厚み方向の一側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向他側の端部にターン部30aにより連結されている。
また、5本の素線30の端部が、巻線アッセンブリ40の長さ方向の両端の幅方向一側のそれぞれから延出し、7本の素線30の端部が、巻線アッセンブリ40の長さ方向の両端の幅方向他側のそれぞれから延出している。また、5スロット離れたスロット収納部30bを連結するターン部30aが巻線アッセンブリ40の幅方向一側に整列されて配列され、7スロット離れたスロット収納部30bを連結するターン部30aが巻線アッセンブリ40の幅方向他側に整列されて配列されている。そして、7スロット離れたスロット収納部30bを連結するターン部30aにより構成されるリヤ側コイルエンド群22rの高さhaは5スロット離れたスロット収納部30bを連結するターン部30aにより構成されるフロント側コイルエンド群22fの高さhbより高くなっている。
つぎに、このように構成された車両用交流発電機1の動作について説明する。
まず、電流がブラシ15およびスリップリング12を介して回転子8の界磁巻線9に供給され、磁束が発生される。この磁束により、N極とS極とがポールコア10の外周部に周方向に交互に形成される。
一方、エンジン(図示せず)の回転トルクがベルト(図示せず)およびプーリ7を介してシャフト6に伝達され、回転子8が回転される。そこで、回転磁界が固定子20の固定子巻線22に与えられ、起電力が固定子巻線22に発生する。この交流の起電力が、整流装置13で直流電流に整流され、車載負荷やバッテリに供給される。これにより、車載負荷が駆動され、バッテリが充電される。
この実施の形態1によれば、各相巻線24が素線30を5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとに交互に入るように巻回して構成されている。そこで、各相巻線24が5スロットピッチで巻回された短節巻き巻線と7スロットピッチで巻回された長節巻き巻線とを直列に結線して構成された千鳥結線の巻線と電気的に等価となるので、線間に大きな電圧を発生することができ、低速の回転速度における発電要求に応えることができる。また、各相巻線24を構成する第1乃至第6巻線31〜36が、1本の素線30により千鳥結線の巻線と電気的に等価の巻線に構成されているので、結線箇所の増大を抑えることができ、工作性を向上させることができる。
12本の素線30を折り曲げ成形して作製した巻線アッセンブリ40を固定子鉄心21に装着して固定子巻線22を構成しているので、素線30を1本ずつ固定子鉄心21に巻装する必要がない。そこで、素線30の大断面積化が可能となり、固定子巻線22の低抵抗化が図られ、車両用交流発電機1の出力向上の要求に応えられる。
固定子20は、リヤ側コイルエンド群22rが7スロット離れたスロット21aに収納されているスロット収納部30bの端部を連結する第2ターン部としてのターン部30aにより構成されているので、コイルエンド高さが高くなる。そこで、リヤブラケット3の軸方向外方に配設されている整流装置13に接続される固定子巻線22の口出し線Oの長さが短くなり、耐振性が向上される。
つぎに、固定子20の製造方法について説明する。
図9はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法を説明する工程図、図10はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における素線の巻回工程により作製された巻線組立体を示す平面図、図11はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における巻線組立体の変位工程を説明する図、図12はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における積層鉄心を示す斜視図、図13はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における積層鉄心の曲げ工程を説明する斜視図である。
以下、図9に示される工程図に基づいて固定子の製造方法を説明する。
まず、例えば国際公開第2005/074105号パンフレットの第23図乃至第25図で説明した素線の巻回工程S100により、図10に示される巻線組立体50を作製する。この巻線組立体50は、12本の素線30に引き出し端部52a,52bを形成し、12本の素線30を同時に複数回繰り返して巻回し、その後引き出し端部52c,52dを形成して作製される。なお、引き出し端部52a,52cは5本の素線30の端部であり、引き出し端部52b,52dは7本の素線30の端部である。
巻線組立体50の各素線30は、図10および図11に示されるように、複数の第1曲げ部53a、複数の第2曲げ部53b、複数の第1直線部53cおよび複数の第2直線部53dを有する。第1曲げ部53aと第2曲げ部53bは、図11中、上下に分かれて、互いに半ピッチずれて、等ピッチに配列されている。そして、第1直線部53cが第2曲げ部53bから第1曲げ部53aに向って斜めに延びてそれらを連結し、第2直線部53dが第1曲げ部53aから第2曲げ部53bに向って斜めに延びてそれらを連結している。素線30は、第2曲げ部53bから第1直線部53cを経て第1曲げ部53aに至り、さらに第1曲げ部53aから第2直線部53dを経て第2曲げ部53bに至る単位ループを繰り返すように巻回されている。なお、図11には、1本の素線30のみが示されているが、実際には、図10に示されるように、同じ形状の12本の素線30が並列するように巻回されている。
ついで、巻線組立体50の変位工程について説明する。
巻線組立体50の変位工程S101では、図11に示されるように、第1および第2規制部材54a,54bが第1および第2曲げ部53a,53bに当接するように配置され、同一形状に作製された第1および第2ブレード55a,55bが第1および第2直線部53c,53dのそれぞれを把持するように配置される。
ここで、第1ブレード55aは、第1直線部53cの長さ方向の中央点を結ぶ線分から第1曲げ部53a側に距離d1だけシフトした位置が回動中心P1となるように第1直線部53cを把持する。同様に、第2ブレード55bは、第2直線部53dの長さ方向の中央点を結ぶ線分から第1曲げ部53a側に距離d1だけシフトした位置が回動中心P2となるように第2直線部53dを把持する。なお、回動中心P1,P2は、図10の紙面と直交する方向から見て、巻線組立体50の長さ方向の一端部に位置する引き出し端部52a,52bの交差部と他端部に位置する引き出し端部52c,52dの交差部とを結ぶ線分上に位置している。そして、回動中心P1,P2は、第1および第2ブレード55a,55bによる第1および第2直線部53c,53dの把持領域の長さ方向中央部に一致する。
ついで、第1直線部53cを把持する第1ブレード55aが、図11中、回動中心P1周りに反時計回りに回動し、第2直線部53dを把持する第2ブレード55bが、回動中心P2周りに時計回りに回動する。この第1および第2ブレード55a,55bの回動により、第1および第2直線部53c、53dの第1および第2ブレード55a,55bに把持された領域が、回動中心P1,P2を含む平面と直交するように変位する。この第1および第2ブレード55a,55bの回動動作に同期して、第1および第2規制部材54a,54bが回動中心P1,P2を含む平面と平行な姿勢を維持しつつ間隔を狭めるように駆動される。
これにより、各素線30は、図6に示される平面状パターン、即ち、ターン部30aにより連結されたスロット収納部30bが7スロットピッチ(7P)と5スロットピッチ(5P)との交互のピッチで配列された平面状パターンに折り曲げ成形される。
この巻線組立体50の変位工程では、全ての第1および第2直線部53c、53dが同時に変位され、図8に示される巻線アッセンブリ40が作製される(S102)。
積層鉄心39の作製工程S103では、磁性鋼板から打ち抜かれた鉄心片を積層一体化して直方体の積層鉄心39が作製される(S104)。積層鉄心39は、図12に示されるように、ティース39cがコアバック39bの一側に等ピッチに配列されて形成され、スロット39aがコアバック39bと隣り合うティース39cとにより画成されている。
ついで、巻線アッセンブリ40の装着工程S105では、巻線アッセンブリ40が、スロット収納部30bの対を各スロット39a内に挿入して、スロット深さ方向に3層に重ねて積層鉄心39に装着される。
ついで、積層鉄心39の曲げ工程S106では、図13に示されるように、積層鉄心39が、巻線アッセンブリ40が装着された状態で円環状に丸められる。そして、丸められた積層鉄心39の端面同士を突き合わせ、溶接などにより一体化し、円環状の固定子鉄心21が作製される。ついで、巻線の結線工程S107では、図3に示される結線方法に基づいて各素線30の端部を結線して固定子巻線22が形成され、固定子20が作製される。
この実施の形態1では、巻線組立体50の変位工程において、回動中心P1,P2を結ぶ線分が、それぞれ第1および第2直線部53c,53dの長さ方向の中央点を結ぶ線分に対して、第1曲げ部53a側にd1だけ変位するように、第1および第2ブレード55a,55bの第1および第2直線部53c,53dに対する把持位置が調整されている。そこで、第1および第2ブレード55a,55bを回動中心P1,P2周りに逆向きに回動させることで、スロット収納部30bに相当する直線部が5スロットピッチと7スロットピッチとの交互のピッチに配列するパターンに素線30を曲げ成形できる。
つぎに、12本の素線30を巻回して作製された巻線組立体50が、5本ずつの引き出し端部52a,52cと、7本ずつの引き出し端部52b,52dを有するように構成されていることによる効果について説明する。図14は比較例としての巻線組立体を示す平面図である。
まず、比較例としての巻線組立体60は、12本の素線30を巻回して作製され、図14に示されるように、6本ずつの引き出し端部61a〜61dを有している。この巻線組立体60において、第1および第2直線部62c,62dをその長さ方向の中央点を回動中心P1,P2とすると、同軸の回動中心P1,P2の対が等ピッチで96対配列されている。そこで、全ての第1および第2直線部62c,62dを把持するには、96対の第1および第2ブレード55a,55b(図示せず)の対を備えたツイスト成形機(以下、汎用のツイスト成形機という)が必要となる。これにより、素線30は、スロット収納部に相当する直線部が6スロットピッチで配列されるパターンに成形される。
ついで、巻線組立体60において、回動中心P1,P2を結ぶ線分が、第1および第2直線部62c,62dの長さ方向の中央点を結ぶ線分(中心線A)に対して、第1曲げ部62a側にd1だけシフトする場合について説明する。この場合、図14に示されるように、回動中心P1と回動中心P2とが、等ピッチで配列された95対の回動中心P1,P2の対群の両側に分かれて形成される。そこで、96対の第1および第2ブレード55a,55b(図示せず)の対を備えた汎用のツイスト成形機は使用できず、新たなツイスト成形機が必要となる。
ここで、図14に示される巻線組立体60において、左上端に引き出されている6本の引き出し端部61aの右端の1本を折り返して左下端に引き出し、右上端に引き出されている6本の引き出し端部61cの右端の1本を第2曲げ部62bでの折り返しをやめて右下端に引き出すと、図10に示される巻線組立体50と等価の構造となる。
そして、図14に示される巻線組立体60において、左上端に引き出されている6本の引き出し端部61aの右端の1本を折り返して左下端に引き出すことで、等ピッチで配列された95対の回動中心P1,P2の対群の左に回動中心P1,P2の対が形成される。また、右上端に引き出されている6本の引き出し端部61cの右端の1本を第2曲げ部62bで折り返すのをやめて右下端に引き出すことにより、等ピッチで配列された95対の回動中心P1,P2の対群の右に形成されていた回動中心P1が消滅する。
このことから、5本ずつの引き出し端部52a,52cと、7本ずつの引き出し端部52b,52dを有する図10に示される巻線組立体50は、回動中心P1,P2の対が等ピッチで96対配列されており、96対の第1および第2ブレード55a,55b(図示せず)の対を備えた汎用のツイスト成形機が使用でき、新たなツイスト成形機を作製する必要がない。
また、巻線組立体60において、回動中心P1,P2を結ぶ線分を、中心線Aに対して、第1曲げ部62a側にd1だけシフトさせた場合でも、専用のツイスト成形機を用いれば、直線部が5スロットピッチと7スロットピッチとの交互のスロットピッチの波巻き巻線が得られる。しかし、このように作製された巻線アッセンブリにおいては、スロット収納部が巻線アッセンブリの長さ方向の両端に1本ずつ形成される。そこで、このように作製された巻線アッセンブリを積層鉄心39に装着すると、巻線アッセンブリの長さ方向の一端に形成される1本のスロット収納部は積層鉄心39のスロット39aに挿入されず、積層鉄心39を円環状に曲げた後、1本のスロット収納部のみが挿入されているスロット39aに挿入される。したがって、スロット39aに挿入されていないスロット収納部が邪魔して積層鉄心39の曲げ工程が煩雑となるとともに、曲げ工程の後工程も煩雑となる。
一方、図10に示される巻線組立体50において、回動中心P1,P2を結ぶ線分を、中心線Aに対して、第1曲げ部62a側にd1だけシフトさせて、汎用のツイスト成形機を用いれば、直線部が5スロットピッチと7スロットピッチとの交互のスロットピッチの波巻き巻線が得られる。このように作製された巻線アッセンブリ40においては、厚み方向に重なるスロット収納部30bの対が1スロットピッチで96対配列されている。そこで、巻線アッセンブリ40を積層鉄心39に装着すると、スロット収納部30bの全対が積層鉄心39のスロット39aに挿入される。したがって、スロット39aに挿入されていないスロット収納部30bが邪魔して積層鉄心39の曲げ工程が煩雑となるという不具合がない。さらに、積層鉄心39を円環状に曲げた後、スロット39aに挿入されていないスロット収納部30bを1本のスロット収納部30bのみが挿入されているスロット39aに挿入するという煩雑な後工程も不要となる。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、1本の素線により5スロットピッチと7スロットピッチとの交互のスロットピッチの波巻き巻線を構成するものとして説明しているが、この実施の形態2では、1本の素線により4スロットピッチと8スロットピッチとの交互のスロットピッチの波巻き巻線を構成するものである。
図15はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明するリヤ側端面図、図16はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における素線の巻回工程により作製された巻線組立体を示す平面図、図17はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における巻線組立体の変位工程により作製された巻線アッセンブリを構成する素線を示す斜視図、図18はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す平面図である。なお、図15中、実線がフロント側配線を示し、点線がリヤ側配線を示している。
まず、1相分の相巻線70の巻線構造について図15を参照して具体的に説明する。
相巻線70は、それぞれ1本の素線30からなる第1乃至第6巻線71〜76から構成されている。
第1巻線71は、1本の素線30を、スロット番号の1番から93番まで8スロット離れたスロット21aと4スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の1番地と2番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第2巻線72は、素線30を、スロット番号の3番から91番まで5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の2番地と1番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第3巻線73は、1本の素線30を、スロット番号の1番から93番まで7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の外周側から3番地と4番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第4巻線74は、素線30を、スロット番号の3番から91番まで5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の4番地と3番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第5巻線75は、1本の素線30を、スロット番号の1番から93番まで7スロット離れたスロット21aと5スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の外周側から5番地と6番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。第6巻線76は、素線30を、スロット番号の3番から91番まで5スロット離れたスロット21aと7スロット離れたスロット21aとの順番で、スロット21a内の6番地と5番地とを交互にとるように波巻きして構成されている。
そして、固定子鉄心21の一端側(フロント側)において、スロット番号の1番から延出する第1巻線71の端部71aと、スロット番号の93番から延出する第5巻線75の端部75bとが接合され、スロット番号の1番から延出する第3巻線73の端部73aと、スロット番号の93番から延出する第1巻線71の端部71bとが接合され、さらにスロット番号の1番から延出する第5巻線75の端部75aと、スロット番号の93番から延出する第3巻線73の端部73bとが接合されて、3ターンの巻線が形成されている。
また、固定子鉄心21の他端側(リヤ側)において、スロット番号の3番から延出する第2巻線72の端部72aと、スロット番号の91番から延出する第6巻線76の端部76bとが接合され、スロット番号の3番から延出する第4巻線74の端部74aと、スロット番号の91番から延出する第2巻線72の端部32bとが接合され、さらにスロット番号の3番から延出する第6巻線76の端部76aと、スロット番号の91番から延出する第4巻線74の端部74bとが接合されて、3ターンの巻線が形成されている。
さらに、スロット番号の43番と71番とから固定子鉄心21の他端側に延出する第2巻線72の素線30の部分が切断され、スロット番号の49番と57番とから固定子鉄心21の他端側に延出する第1巻線71の素線30の部分が切断される。そして、第1巻線71の切断端71cと第2巻線72の切断端72cとが接合されて、第1乃至第6巻線71〜76を直列接続してなる6ターンの相巻線70が形成されている。また、第1巻線71の切断端71dと第2巻線72の切断端72dとがそれぞれ口出し線(O)および中性点(N)となる。
ここで、第1巻線71は、素線30をスロット番号の1番から93番まで8スロット離れたスロット21aと4スロット離れたスロット21aとに交互に収納されるように巻回して構成されている。そこで、第1巻線71は、素線を8スロット毎のスロット21aに収納されるように巻回して構成される巻線と素線を4スロット毎のスロット21aに収納されるように巻回して構成される巻線とを直列に接続した千鳥結線の巻線と電気的に等価となる。即ち、第1巻線71は、電気角で60°の位相差を有する2つの巻線を直列に接続した千鳥結線野間基線と電気的に等価となる。なお、第2乃至第6巻線72〜76も、第1巻線71と同様に、電気角で60°の位相差を有する2つの巻線を直列に接続した千鳥結線の巻線と電気的に等価となる。
同様にして、素線30が巻装されるスロット21aを1つずつずらして6つの相巻線70が形成されている。そして、上記実施の形態1と同様に、それぞれ3つの相巻線70がY結線されて2つの3相交流巻線が構成されている。Y結線された相巻線70の端部により構成される口出し線Oが、整流装置13の端子に接続される。
また、スロット21aから固定子鉄心21の端面側に延出して折り返された素線30のターン部30aがコイルエンドを形成している。そして、固定子鉄心21の両端において、ターン部30aが、周方向に互いに離間して、かつ径方向に3列となって周方向に整然と配列されてフロント側およびリヤ側のコイルエンド群22f,22rを形成している。8スロット離れたスロット21a内に収納されているスロット収納部30b間を連結する第2ターン部としてのターン部30aの頂部の固定子鉄心21の端面からの高さは、4スロット離れたスロット21a内に収納されているスロット収納部30b間を連結する第1ターン部としてのターン部30aの頂部の固定子鉄心21の端面からの高さより高くなっている。そして、リヤ側のコイルエンド群22rが、8スロット離れたスロット21a内に収納されているスロット収納部30b間を連結するターン部30aにより構成されている。
第1、第3および第5巻線71,73,75を構成するそれぞれの素線30は、1つのスロット21aから固定子鉄心21の端面側に延出し、折り返されて8スロット離れたスロット21aと4スロット離れたスロット21aとに交互に入るように波巻きに巻装されている。そして、それぞれの素線30は、8スロット離れたスロット21aと4スロット離れたスロット21aとの交互のスロット21a毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外層とを交互にとるように巻装されている。
第2、第4および第6巻線72,74,76は、1つのスロット21aから固定子鉄心21の端面側に延出し、折り返されて4スロット離れたスロット21aと8スロット離れたスロット21aとに交互に入るように波巻きに巻装されている。そして、それぞれの素線30は、4スロット離れたスロット21aと8スロット離れたスロット21aとの交互のスロット21a毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外層とを交互にとるように巻装されている。
そこで、固定子巻線は、第1巻線71を1スロットピッチで6本配列して構成される第1巻線群と第2巻線72を1スロットピッチで6本配列して構成される第2巻線群との対を、径方向に3対並べて配設したものと等価となる。この第1巻線群と第2巻線群との対は、図18に示される巻線アッセンブリ40Aで提供される。
つぎに、巻線アッセンブリ40Aの製造方法について説明する。
まず、巻線組立体50Aは、図16に示されるように、12本の素線30に引き出し端部52a,52bを形成し、12本の素線30を同時に複数回繰り返して巻回し、その後引き出し端部52c,52dを形成して作製される。なお、引き出し端部52a,52cは4本の素線30の端部であり、引き出し端部52b,52dは8本の素線30の端部である。
このように構成された巻線組立体50Aは、96対の第1および第2ブレード55a,55bの対を有する汎用のツイスト成形機(図示せず)を用いて、第1および第2直線部53c、53dが中心線Aに対して距離d2だけ第1曲げ部53a側にシフトした回動中心P1,P2周りに回動される。
なお、回動中心P1,P2は、図16の紙面と直交する方向から見て、巻線組立体50Aの長さ方向の一端部に位置する引き出し端部52a,52bの交差部と他端部に位置する引き出し端部52c,52dの交差部とを結ぶ線分上に位置している。そして、回動中心P1,P2は、第1および第2ブレード55a,55bによる第1および第2直線部53c,53dの把持領域の長さ方向中央部に一致する。
これにより、各素線30は、図17に示される平面状パターン、即ち、ターン部30aにより連結されたスロット収納部30bが8スロットピッチ(8P)と4スロットピッチ(4P)との交互のピッチで配列された平面状パターンに折り曲げ成形される。この巻線組立体50Aの変位工程では、全ての第1および第2直線部53c、53dが同時に変位され、図18に示される巻線アッセンブリ40Aが作製される。
このように構成された巻線アッセンブリ40Aでは、厚み方向に重ねられたスロット収納部30bの対が、1スロットピッチで96対配列されている。そして、厚み方向の一側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向一側の端部が、4スロットピッチ(4P)離れた厚み方向の他側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向一側の端部にターン部30aにより連結されている。さらに、厚み方向の他側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向他側の端部が、8スロットピッチ(8P)離れた厚み方向の一側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向他側の端部にターン部30aにより連結されている。
また、4本の素線30の端部52a,52cが、巻線アッセンブリ40Aの長さ方向の両端の幅方向一側のそれぞれから延出し、8本の素線30の端部52b,52dが、巻線アッセンブリ40Aの長さ方向の両端の幅方向他側のそれぞれから延出している。また、4スロット離れたスロット収納部30bの端部を連結するターン部30aが巻線アッセンブリ40Aの幅方向一側に整列されて配列され、8スロット離れたスロット収納部30bの端部を連結するターン部30aが巻線アッセンブリ40Aの幅方向他側に整列されて配列されている。
したがって、この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
ここで、上記実施の形態1,2から、1磁極ピッチに相当するスロット数をNとしたときに、(N−M)本の素線30と(N+M)本の素線30とを同時に複数回繰り返して巻回して作製された巻線組立体を用いれば、変位工程により、(N−M)スロットピッチと(N+M)スロットピッチとの交互のスロットピッチの千鳥結線の波巻き巻線を1本の素線30で構成することができることがわかる。但し、Nは2以上の整数、Mは1以上、N未満の整数である。また、Nは毎極毎相当たりのスロット数と固定子巻線を構成する交流巻線の相数との積となる。
このようにして作製された巻線アッセンブリは、厚み方向に重ねられたスロット収納部30bの対が、1スロットピッチで96対配列されている。そして、厚み方向の一側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向一側の端部が、(N−M)スロットピッチ離れた厚み方向の他側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向一側の端部にターン部30aにより連結されている。さらに、厚み方向の他側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向他側の端部が、(N+M)スロットピッチ離れた厚み方向の一側に位置するスロット収納部30bのそれぞれの軸方向他側の端部にターン部30aにより連結されている。また、(N−M)本の素線30の端部が、巻線アッセンブリの長さ方向の両端の幅方向一側のそれぞれから延出し、(N+M)本の素線30の端部が、巻線アッセンブリの長さ方向の両端の幅方向他側のそれぞれから延出している。
なお、上記実施の形態1,2では、回転子の磁極数が16、毎極毎相当たりのスロット数が2、固定子巻線が3相交流巻線の場合について説明しているが、回転子の磁極数、毎極毎相当たりのスロット数、固定子巻線の交流巻線の相数はこれに限定されないことは言うまでもないことである。例えば、回転子の磁極数が12、毎極毎相当たりのスロット数が2、固定子巻線が3相交流巻線の場合、固定子鉄心のスロット数は72であり、巻線アッセンブリは12本の素線により作製され、72対のスロット収納部の対を有する。そして、(6−M)本の素線の端部が巻線アッセンブリの長さ方向の両端の幅方向一側のそれぞれから延出し、(6+M)本の素線の端部が巻線アッセンブリの長さ方向の両端の幅方向他側のそれぞれから延出している。また、回転子の磁極数が12、毎極毎相当たりのスロット数が1、固定子巻線が3相交流巻線の場合、固定子鉄心のスロット数は36であり、巻線アッセンブリは6本の素線により作製され、36対のスロット収納部の対を有する。そして、(3−M)本の素線の端部が巻線アッセンブリの長さ方向の両端の幅方向一側のそれぞれから延出し、(3+M)本の素線の端部が巻線アッセンブリの長さ方向の両端の幅方向他側のそれぞれから延出している。
また、上記実施の形態1,2では、整流装置、ブラシホルダおよび電圧調整器がリヤブラケットの軸方向外方に配設されているものとしているが、整流装置、ブラシホルダおよび電圧調整器はリヤブラケット内に配設されてもよい。この場合においても、リヤ側コイルエンドのコイルエンド高さが高いので、整流装置に接続される固定子巻線の口出し線の長さを短くでき、耐振性を向上できる。
実施の形態3.
図19はこの発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機の構成を説明する断面図である。
図19において、ハウジング4Aがそれぞれ略椀形状のアルミニウム製のフロントブラケット2とリヤブラケット3Aとから構成され、整流装置13、ブラシホルダ14および電圧調整器16がリヤ側ブラケット3A内に配設されている。さらに、リヤ側コイルエンド群22rが、5スロット離れたスロット21aに収納されているスロット収納部30bの端部を連結する第1ターン部としてのターン部30aにより構成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
この実施の形態3によれば、5スロット離れたスロット21aに収納されているスロット収納部30bの端部を連結する第1ターン部としてのターン部30aにより構成されるコイルエンド群がリヤ側となるように固定子20を配設している。そこで、リヤ側コイルエンド群22rのコイルエンド高さが低くなり、リヤブラケット3Aを大きくすることなく、整流装置13、ブラシホルダ14および電圧調整器16をリヤブラケット3A内に設置できる。
7スロット離れたスロット21aに収納されているスロット収納部30bの端部を連結する第2ターン部としてのターン部30aにより構成されるコイルエンド群がフロント側となるように固定子20を配設している。そこで、フロント側コイルエンド群22fのコイルエンド高さが高くなるので、固定子巻線22での発熱がフロント側コイルエンド群22fを介してフロントブラケット2内を流通する冷却風に効率的に放熱され、固定子20の過度の温度上昇が抑えられる。
また、発熱部品である整流装置13、ブラシホルダ14および電圧調整器16がリヤブラケット3A内に設置されているので、フロントブラケット2内を流通する冷却風の通風抵抗が小さくなり、風量が増大するとともに、フロントブラケット2内に吸入された冷却風が発熱部品に暖められることなくフロント側コイルエンド群22fの冷却に供せられる。そこで、固定子巻線22での発熱がフロント側コイルエンド群22fを介して冷却風により効率的に放熱される。
なお、上記実施の形態3では、整流装置、ブラシホルダおよび電圧調整器がリヤブラケット内に配設されているものとしているが、整流装置、ブラシホルダおよび電圧調整器はリヤブラケットの軸方向外側に配設されてもよい。この場合においても、固定子巻線での発熱はコイルエンド高さの高いフロント側コイルエンド群から冷却風に効率的に放熱され、固定子の過度の温度上昇が抑えられる。
また、上記各実施の形態では、車両用交流発電機について説明しているが、本発明は、車両用交流発電電動機や車両用交流電動機などの車両用回転電機に適用しても、同様の効果を奏する。

Claims (6)

  1. フロントブラケットとリヤブラケットとからなる金属製のハウジングと、
    上記フロントブラケットと上記リヤブラケットとに軸支されたシャフトに固着されて上記ハウジング内に回転自在に配設された回転子と、
    内周側に開口するスロットが周方向に所定のピッチで複数配設され、上記フロントブラケットと上記リヤブラケットとに挟持されて上記回転子を囲繞するように配設された円環状の固定子鉄心、および上記固定子鉄心に装着された固定子巻線を有する固定子と、を備えた車両用回転電機において、
    上記固定子巻線は、(N−M)スロットピッチと(N+M)スロットピッチとの交互のスロットピッチの複数の波巻き巻線により構成され(但し、Nは2以上の整数、Mは1以上、N未満の整数)、
    上記複数の波巻き巻線は、上記固定子鉄心に装着された少なくとも1つの巻線アッセンブリにより構成され、
    上記巻線アッセンブリは、2N本の連続線からなる素線を巻回して作製され、上記固定子鉄心の各スロット内にスロット深さ方向に関して内層と外層とに並んで対となって収納されたスロット収納部と、上記固定子鉄心の軸方向一端側で各スロット内の内層と外層との一方に収納されている上記スロット収納部の端部と(N−M)スロット離れたスロット内の内層と外層との他方に収納されている上記スロット収納部の端部とを連結する第1ターン部と、上記固定子鉄心の軸方向他端側で各スロット内の内層と外層との他方に収納されている上記スロット収納部の端部と(N+M)スロット離れたスロット内の内層と外層との一方に収納されている上記スロット収納部の端部とを連結する第2ターン部とを有し、(N−M)本の上記素線の両端が上記固定子鉄心の軸方向一端側に延出し、(N+M)本の上記素線の両端が上記固定子鉄心の軸方向他端側に延出していることを特徴とする車両用回転電機。
  2. 上記回転子に対してリヤ側に配設され、上記固定子で生じる交流電圧を直流電圧に整流する整流装置と、
    上記回転子に対してリヤ側に配設され、上記固定子で生じる交流電圧の大きさを調整する電圧調整器と、をさらに備え、
    上記巻線アッセンブリは、上記第2ターン部が上記リヤブラケット側に向くように上記固定子鉄心に装着されていることを特徴とする請求項1記載の車両用回転電機。
  3. 上記整流装置および上記電圧調整器が、上記リヤブラケットの軸方向外側に配設されていることを特徴とする請求項2記載の車両用回転電機。
  4. 上記回転子に対してリヤ側に配設され、上記固定子で生じる交流電圧を直流電圧に整流する整流装置と、
    上記回転子に対してリヤ側に配設され、上記固定子で生じる交流電圧の大きさを調整する電圧調整器と、をさらに備え、
    上記巻線アッセンブリは、上記第2ターン部が上記フロントブラケット側に向くように上記固定子鉄心に装着されていることを特徴とする請求項1記載の車両用回転電機。
  5. 上記整流装置および上記電圧調整器が、上記リヤブラケット内に配設されていることを特徴とする請求項4記載の車両用回転電機。
  6. 2N本(但し、Nは2以上の整数)の連続線からなる素線を巻回して作製され、
    厚み方向に並んで互いに平行に配置された直線状のスロット収納部の対が、1スロットピッチで配列され、
    第1ターン部が、上記スロット収納部の対の厚み方向一側のスロット収納部の長さ方向の一端部と(N−M)本離れたスロット収納部の対の厚み方向他側のスロット収納部の長さ方向の一端部とをそれぞれ連結し(但し、Mは1以上、N未満の整数)、
    第2ターン部が、上記スロット収納部の対の厚み方向他側のスロット収納部の長さ方向の他端部と(N+M)本離れたスロット収納部の対の厚み方向一側のスロット収納部の長さ方向の他端部とをそれぞれ連結し、
    (N−M)本の上記素線の両端が、上記スロット収納部の対の配列方向の両側の上記第1ターン部側に延出し、
    (N+M)本の上記素線の両端が、上記スロット収納部の対の配列方向の両側の上記第2ターン部側に延出している車両用回転電機の巻線アッセンブリの製造方法であって、
    (N−M)本の上記素線と(N+M)本の上記素線とを同時に巻回して、第1曲げ部、第2曲げ部、該第2曲げ部から該第1曲げ部に向って斜めに延びて両者を連結する第1直線部、および該第1曲げ部から該第2曲げ部に向って斜めに延びて両者を連結する第2直線部からなるパターンを繰り返す屈曲形状に形成された素線が該パターンの繰り返し方向に等ピッチに配列され、(N−M)本の上記素線の両端が該素線の配列方向の両側の該第1曲げ部側にそれぞれ延出し、(N+M)本の上記素線の両端が該素線の配列方向の両側の該第2曲げ部側にそれぞれ延出する巻線組立体を作製する巻回工程と、
    第1ブレードによる上記第1直線部の把持領域および第2ブレードによる上記第2直線部の把持領域の長さ方向の中央部が上記巻線組立体の上記素線の配列方向の両端に位置する上記素線の交差部を結ぶ線分上に位置するように、該第1ブレードにより該第1直線部のそれぞれを把持し、かつ該第2ブレードにより該第2直線部のそれぞれを把持し、ついで、上記第1ブレードによる上記第1直線部の把持領域および上記第2ブレードによる上記第2直線部の把持領域の長さ方向の中央部を回動中心として、該第1ブレードと該第2ブレードとを互いに逆方向に回動させ、上記第1直線部の把持領域および上記第2直線部の把持領域を互いに平行に変位させる変位工程と、
    を有することを特徴とする車両用回転電機の巻線アッセンブリの製造方法。
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