JP5458290B2 - マグネシウム合金 - Google Patents
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Description
特に、自動車に関連する用途の部品においては、高い機械的特性が要求されるため、GdやZn等の元素を添加したマグネシウム合金として、片ロール法、急速凝固法により特定の形態の材料を製造することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
ここで、化合物と共に積層構造を構成しているLPSOの厚さが薄いということは、LPSOの体積分率が小さいということを意味する。そして、LPSOの厚さが0.5μm未満である場合には、LPSOの体積分率が少なすぎるために、Mg−Zn−Y−RE系合金の降伏強度が、従来のマグネシウム合金の降伏強度(一例として、Mg97Zn1Y2の降伏強度は350.4MPaである。)よりも低下してしまう。同様に、LPSOの厚さが0.5μm未満である場合には、LPSOの体積分率が少なすぎるために、Mg−Zn−Y−RE系合金の引張強度が、従来のマグネシウム合金の引張強度(一例として、Mg97Zn1Y2の引張強度は397.2MPaである。)よりも低下してしまう。
従って、従来のマグネシウム合金の降伏強度よりも高い降伏強度を実現すると共に、従来のマグネシウム合金の引張強度よりも高い引張強度を実現するために、LPSOの厚さを0.5μm以上としているのである。
ここで、化合物と共に積層構造を構成しているLPSOの厚さが厚いということは、LPSOの体積分率が大きいことを意味する。そして、LPSOの厚さが5μmを超えた場合には、LPSOの体積分率が大きすぎるために、Mg−Zn−Y−RE系合金の延性が低下してしまう。
従って、高い降伏強度と高い引張強度を実現すると共に、延性の著しい低下を回避するために、LPSOの厚さを5μm以下としているのである。
ここで、LPSOと共に積層構造を構成している化合物の厚さが薄いということは化合物の体積分率が小さいということを意味し、化合物の厚さが厚いということは化合物の体積分率が大きいということを意味する。そして、化合物の厚さが0.01μm以上2μm以下である場合には、概ね図3中符号Aで示す範囲に該当することとなる。
従って、化合物の厚さが0.01μm〜2μmとすると、更に確実に高い降伏強度を実現することができると共に、高い引張強度を実現することができるのである。
図1はMg97Zn1Y1Yb1合金の結晶組織を示す顕微鏡写真である。
先ず、本発明のマグネシウム合金は、αMg相を有している。
ここで、αMg相は、溶解鋳造工程において、Mg−Zn−Y−RE系合金のセル構造(概ね平均粒径50μm以上)内で、後述するLPSOとラメラ相を形成する。なお、αMg相は、高温雰囲気下(熱間)で行われる塑性加工工程において、Mg−Zn−Y−RE系合金の合金組織中の少なくとも一部(LPSOの分断部)が、平均粒径2μm以下に微細化した(微細αMg相が析出した)方が好ましい。
また、本発明のマグネシウム合金は、LPSOを有している。
ここで、LPSOとは、マグネシウム合金の粒内及び粒界に析出する析出物であって、HCP構造における底面原子層の並びが底面法線方向に長周期規則をもって繰り返される構造、即ち、長周期構造をいう。更に詳細には、LPSOは、例えば、規則格子が複数個並び、逆位相のズレを介して再び規則格子が複数個並びといった具合に、元の格子の数倍から10数倍の単位の構造が作られ、その周期が長い構造のものをいう。そして、LPSOは、規則相と不規則相との間のわずかな温度範囲に出現し、電子回折した図には規則相の反射が分裂して、数倍から10数倍の周期に対応する位置に回折斑点が現れることとなる。
こうしたLPSOの析出によって、マグネシウム合金の機械的特性(引張強度、降伏強度及び伸び)が向上することとなる。
また、本発明のマグネシウム合金は、Mg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物を有している。具体的には、例えば、Mg41Sm5、Mg12Ce、Mg17La2、Mg12Pr、Mg12Ndといった化合物を有している。
そして、こうした化合物の分散度合いが高いことによって、高い降伏強度と高い引張強度が実現することとなる。
本発明のマグネシウム合金では、LPSOの厚さが0.5〜5μmとなる様に組織制御を行っている。
ここで、LPSOの厚さが0.5μm以上となる様に組織制御を行うことによって、従来のマグネシウム合金の降伏強度(一例として、Mg97Zn1Y2の降伏強度は350.4MPaである。)よりも高い降伏強度を実現すると共に、従来のマグネシウム合金の引張強度(一例として、Mg97Zn1Y2の引張強度は397.2MPaである。)よりも高い引張強度を実現することとなる。また、LPSOの厚さが5μm以下となる様に組織制御を行うことによって、延性の著しい低下を回避している。
本発明のマグネシウム合金では、化合物(Mg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物)の厚さが0.01μm〜2μmとなる様に組織制御を行っている。
この様な組織制御を行うことによって、確実に高い降伏強度を実現することができると共に、高い引張強度を実現することができることとなる。
本発明のマグネシウム合金では、Znの成分範囲が2.5at%未満となる様に組織制御を行っている。この様な組織制御を行うことによって、延性の著しい低下を回避することができるためである。
なお、LPSOと金属間化合物をより多く存在させるためには、より多くの添加元素を含有させる必要があるとも考えられる。しかし、多くの添加元素を含有させた場合にはコスト面で不利となってしまうために、添加元素量はできる限り制限したいといった要求がある。したがって、Znの成分範囲を2at%以下に組織制御することがより好ましく、こうした組織制御を行うことによって、上記の要求にも応じることができ、更には、延性比も約40%を確保することができる。
Znを2at%、Yを1at%、Laを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−La合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(1)では、LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmとなる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1at%、Ceを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Ce合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(2)では、LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmとなる様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを1at%、Laを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−La合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(3)では、LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmとなる様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを1at%、Ceを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Ce合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(4)では、LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmとなる様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを1at%、Prを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Pr合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(5)では、LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmとなる様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを1.5at%、Laを0.5at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−La合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(6)では、LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmとなる様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを2at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(7)では、LPSOと化合物とは積層構造(層状構造)をなさない様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1at%、Ndを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Nd合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(8)では、LPSOと化合物とは積層構造(層状構造)をなさない様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1at%、Smを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Sm合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(9)では、LPSOと化合物とは積層構造(層状構造)をなさない様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1at%、Ybを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Yb合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(10)では、LPSOと化合物とは積層構造(層状構造)をなさない様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを1at%、Ndを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Nd合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(11)では、LPSOと化合物とは積層構造(層状構造)をなさない様に組織制御を行った。
Znを1at%、Yを1at%、Smを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Sm合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(12)では、LPSOと化合物とは積層構造(層状構造)をなさない様に組織制御を行った。
ここで、表1の試験片(8)〜(12)の評価結果から明らかな様に、「LPSOと化合物とが積層構造(層状構造)をなし、LPSOの厚さが0.5〜5μmであり、化合物の厚さが0.01〜2μmである」といった条件を満たしていない場合には、3元系合金である試験片(7)よりも降伏強度若しくは引張強度のいずれか一方が低下していることが分かる。具体的には、試験片(8)の評価結果では、降伏強度が349.8MPa、引張強度が365.9MPaであり、試験片(7)よりも降伏強度及び引張強度が低下していることが分かる。また、試験片(9)の評価結果では、降伏強度が304.4MPa、引張強度が374.8MPaであり、試験片(7)よりも降伏強度及び引張強度が低下していることが分かる。また、試験片(10)の評価結果では、降伏強度が355.4MPa、引張強度が373.6MPaであり、試験片(7)よりも引張強度が低下していることが分かる。また、試験片(11)の評価結果では、降伏強度が337.2MPa、引張強度が369.1MPaであり、試験片(7)よりも降伏強度及び引張強度が低下していることが分かる。また、試験片(12)の評価結果では、降伏強度が325.6MPa、引張強度が364.6MPaであり、試験片(7)よりも降伏強度及び引張強度が低下していることが分かる。
2 LPSO
3 αMg相
4 化合物
Claims (2)
- 必須成分として1原子%以上2.5原子%未満のZn、及び1原子%以上1.5原子%以下のYを含有し、希土類元素(RE)としてLa、Ce、Pr、Ybのうち少なくとも1つ以上の元素を合計で0.5原子%以上1原子%以下含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Zn−Y−RE系合金から構成されるマグネシウム合金であって、
Mg−Zn−Y−RE系合金の合金組織中に、長周期積層構造相、αMg相、及び、Mg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物を有すると共に、
前記長周期積層構造相と前記化合物が積層構造を構成し、
更に、前記長周期積層構造相の厚さが0.5μm〜5μmであり、
前記化合物の厚さが0.01μm〜2μmである
マグネシウム合金。 - 前記Znは成分範囲が2原子%以下である
請求項1に記載のマグネシウム合金。
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