JP5714436B2 - マグネシウム合金材の製造方法およびこれにより製造されたマグネシウム合金材 - Google Patents
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前記構成によれば、前記製造方法により製造されることによって、マグネシウム合金組織中に長周期積層構造が形成され、マグネシウム合金材の機械的性質が向上する。
本発明に係るマグネシウム合金材によれば、機械的性質が優れたものとなる。
図1に示すように、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法は、溶解工程S1と、鋳造工程S2とを含むものである。以下、各工程について説明する。
溶解工程S1は、所定の合金組成を有するマグネシウム合金を溶解して溶湯とする工程である。ここで、溶解方法および溶解装置は、従来公知の方法および装置を用いる。また、溶湯からの酸化物除去のために、溶解はフラックス精錬が好ましい。
マグネシウム合金は、RE:1〜6原子%、Zn:0.5〜5原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるものである。
REは、鋳造時に合金組織中に長周期積層構造を形成させると共に、Mg−RE系金属間化合物を析出させる元素である。そして、この長周期積層構造およびMg−RE系金属間化合物によって、マグネシウム合金の塑性加工後の0.2%耐力および伸びが向上する。REが1原子%未満であると、長周期積層構造の形成、および、Mg−RE系金属間化合物の析出がなされないため、塑性加工後の0.2%耐力が低下する。REが6原子%を超えると、粒界に析出するMg−RE系金属間化合物が多くなり塑性加工後の伸びが低下する。したがって、REは、ここでは、1〜6原子%とする。また、REは、2〜4原子%が好ましい。また、REは、Gd、Tb、Tmの少なくとも1種以上であることが好ましい。
Znは、鋳造時に合金組織中にMg−RE系金属間化合物を析出させる元素である。そして、このMg−RE系間化合物によって、マグネシウム合金の塑性加工後の0.2%耐力および伸びが向上する。Znが0.5原子%未満であると、Mg−RE系金属間化合物の析出がなされないため、塑性加工後の0.2%耐力が低下する。Znが5原子%を超えると、粒界に析出するMg−RE系金属間化合物が多くなり塑性加工後の伸びが低下する。したがって、Znは、ここでは、0.5〜5原子%とする。また、Znは、1〜4原子%が好ましい。
不可避的不純物としては、Fe、Ni、Cu、Si等が挙げられ、各々0.2原子%以下、含んでいても構わない。Fe等は、前記範囲内であれば、本発明に係るマグネシウム合金材の効果に影響を与えない。
(Zr)
Zrは、鋳造時に鋳造組織の微細化に寄与する元素である。Zrが0.05原子%未満であると、鋳造組織の微細化に寄与しないため、マグネシウム合金の塑性加工後の0.2%耐力の向上が得られ難くなる。Zrが2原子%を超えると、塑性加工後の伸びが低下する。したがって、Zrは、ここでは、0.05〜2原子%とする。また、Zrは、1〜2原子%が好ましい。
鋳造工程S2は、前記工程S1で得られたマグネシウム合金の溶湯を鋳造して鋳造材、すなわち、本発明に係るマグネシウム合金材を作製する工程である。また、鋳造後のマグネシウム合金材は、所定の形状に切削等により加工されて製品化される。ここで、鋳造方法および鋳造装置は、従来公知の方法および装置を用い、鋳造時の冷却を所定条件で行う。そして、鋳造時の冷却を所定条件で行うことによって、鋳造組織中に長周期積層構造が形成され、かつ、Mg−RE系金属間化合物が析出する。その長周期積層構造およびMg−RE系金属間化合物によって、鋳造材(マグネシウム合金材)の0.2%耐力が向上する。したがって、長周期積層構造の形成、および、Mg−RE系金属間化合物の析出のために従来の製造方法において行われていた鋳造後の熱処理に替えて、鋳造時の冷却速度の制御を行うこととなる。その結果、煩雑な熱処理が不要となるため、生産性が向上する。
鋳造工程S2において、鋳造時の冷却条件は、具体的には、LPSOが出現、かつ、Mg−RE系金属間化合物が析出する温度範囲であるマグネシウム合金の固相線温度未満から室温までの温度範囲の冷却を、400℃/時間以下の冷却速度で行なう。例えば、後記するDC鋳造法において、鋳塊16の温度が、固相線温度未満から室温になるまでは、冷却速度400℃/時間以下で冷却する。なお、鋳塊16の温度とは、鋳塊16の中央部の温度、すなわち、鋳造方向に垂直な面の中央部の温度である(図2参照)。
塑性加工工程S3は、前記工程S2で得られた鋳造材に塑性加工を施す工程である。ここで、塑性加工とは、例えば、押出加工、鍛造加工等である。ここで、塑性加工方法および装置は、従来公知の方法および装置を用いる。そして、塑性加工によって、鋳造材(マグネシウム合金材)の強度がさらに向上するため、マグネシウム合金材の用途に応じて行ってもよい。また、塑性加工後のマグネシウム合金材は、所定の形状に切削等により加工されて製品化される。
本発明に係るマグネシウム合金材は、前記製造方法により製造されるため、Mg−RE−Zn合金またはMg−RE−Zn−Zr合金からなり、その合金組織中にLPSOが形成され、かつ、Mg−RE系金属間化合物が析出して、機械的性質が優れたものとなる。具体的には、マグネシウム合金材は、塑性加工後の0.2%耐力(強度)が220MPa以上、伸びが3%以上となる。その結果、本発明に係るマグネシウム合金材は、自動車のホイールや、足回り部品や、あるいは、エンジン回り部品等の自動車に関連する部品に好適に使用される。
表1に示す組成のMg−Gd−Zn合金またはMg−Gd−Zn−Zr合金を溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。続いて、加熱溶解した溶湯を金型で鋳造して外径φ60mm×長さ80mmのインゴット(供試材No.1〜17)を製造した。なお、鋳造時におけるMg−Gd−Zn合金またはMg−Gd−Zn−Zr合金の固相線温度未満から室温までの冷却速度も合わせて表1に記載する。なお、供試材No.16、17については、鋳造後に熱処理(525℃で2時間保持後、80℃まで冷却し、再度400℃で1時間保持)を行った。
これに対し、本発明の要件を満たさない比較例(供試材No.11〜17)は、機械的性質が劣っていた。
S2 鋳造工程
S3 塑性加工工程
Claims (4)
- RE:1〜6原子%、Zn:0.5〜5原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるマグネシウム合金を溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で得られた溶湯を鋳造する鋳造工程とを含み、
前記鋳造工程における冷却は、前記マグネシウム合金の固相線温度未満から室温までを400℃/時間以下の冷却速度で行うことを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。 - RE:1〜6原子%、Zn:0.5〜5原子%、Zr:0.05〜2原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるマグネシウム合金を溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で得られた溶湯を鋳造する鋳造工程とを含み、
前記鋳造工程における冷却は、前記マグネシウム合金の固相線温度未満から室温までを400℃/時間以下の冷却速度で行うことを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。 - 前記REは、Gd、Tb、Tmの少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマグネシウム合金材の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のマグネシウム合金材の製造方法により製造されたことを特徴とするマグネシウム合金材。
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