JP5458289B2 - マグネシウム合金 - Google Patents
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特に、自動車に関連する用途の部品においては、高い機械的特性が要求されるため、GdやZn等の元素を添加したマグネシウム合金として、片ロール法、急速凝固法により特定の形態の材料を製造することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
図3にMg−Zn−Y−RE系合金組織中のLPSOの体積分率と降伏強度(YS)との関係と、Mg−Zn−Y−RE系合金組織中のLPSOの体積分率と引張強度(UTS)との関係を示している。図3から明らかな様に、LPSOの体積分率が8%未満の場合には、Mg−Zn−Y−RE系合金の降伏強度が比較材料(従来のマグネシウム合金の一例)であるMg96Zn2Y2の降伏強度(394.5MPa)よりも低下してしまう。同様に、LPSOの体積分率が8%未満の場合には、Mg−Zn−Y−RE系合金の引張強度が比較材料(従来のマグネシウム合金の一例)であるMg96Zn2Y2の引張強度(426.7MPa)よりも低下してしまう。
従って、比較材料であるMg96Zn2Y2の降伏強度(394.5MPa)よりも高い降伏強度を実現すると共に、比較材料であるMg96Zn2Y2の引張強度(426.7MPa)よりも高い引張強度を実現するために、LPSOの体積分率を8%以上としている。
図1はMg96Zn2Y1.5Sm0.5合金の結晶組織を示す顕微鏡写真であり、図2はMg97Zn1Y1Yb1合金の結晶組織を示す顕微鏡写真である。
先ず、本発明のマグネシウム合金は、αMg相を有している。
ここで、αMg相は、溶解鋳造工程において、Mg−Zn−Y−RE系合金のセル構造(概ね平均粒径50μm以上)内で、後述するLPSOとラメラ相を形成する。なお、αMg相は、高温雰囲気下(熱間)で行われる塑性加工工程において、Mg−Zn−Y−RE系合金の合金組織中の少なくとも一部(LPSOの分断部)が、平均粒径2μm以下に微細化した(微細αMg相が析出した)方が好ましい。
また、本発明のマグネシウム合金は、LPSOを有している。
ここで、LPSOとは、マグネシウム合金の粒内及び粒界に析出する析出物であって、HCP構造における底面原子層の並びが底面法線方向に長周期規則をもって繰り返される構造、即ち、長周期構造をいう。更に詳細には、LPSOは、例えば、規則格子が複数個並び、逆位相のズレを介して再び規則格子が複数個並びといった具合に、元の格子の数倍から10数倍の単位の構造が作られ、その周期が長い構造のものをいう。そして、LPSOは、規則相と不規則相との間のわずかな温度範囲に出現し、電子回折した図には規則相の反射が分裂して、数倍から10数倍の周期に対応する位置に回折斑点が現れることとなる。
こうしたLPSOの析出によって、マグネシウム合金の機械的特性(引張強度、降伏強度及び伸び)が向上することとなる。
また、本発明のマグネシウム合金はMg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物を有している。具体的には、例えば、Mg41Sm5、Mg12Ce、Mg17La2、Mg12Pr、Mg12Ndといった化合物を有している。
そして、こうした化合物の分散度合いが高いことによって、高い降伏強度と高い引張強度が実現することとなる。
本発明のマグネシウム合金では、LPSOの体積分率が8%以上となる様に組織制御を行っている。
この様な組織制御を行うことによって、比較材料であるMg96Zn2Y2の降伏強度(394.5MPa)よりも高い降伏強度を実現すると共に、比較材料であるMg96Zn2Y2の引張強度(426.7MPa)よりも高い引張強度を実現することができるためである。
本発明のマグネシウム合金では、化合物(Mg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物)の体積分率が2.7〜12%となる様に組織制御を行っている。
この様な組織制御を行うことによって、概ね400MPa以上の降伏強度を実現することができると共に、概ね440MPa以上の引張強度を実現することができるためである。
本発明のマグネシウム合金では、Znの成分範囲を2.5at%未満となる様に組織制御を行っている。この様な組織制御を行うことによって、延性の著しい低下を回避することができるためである。
なお、LPSOと金属間化合物をより多く存在させるためには、より多くの添加元素を含有させる必要があるとも考えられる。しかし、多くの添加元素を含有させた場合にはコスト面で不利となってしまうために、添加元素量はできる限り制限したいといった要求がある。したがって、Znの成分範囲を2at%以下に組織制御することがより好ましく、こうした組織制御を行うことによって、上記の要求にも応じることができ、更には、延性比も約40%を確保することができる。
Znを2at%、Yを1.5at%、Ceを0.5at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Ce合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(1)では、αMg相の体積分率が69.75%、LPSOの体積分率が22.95%、化合物の体積分率が7.3%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1.25at%、Ndを0.75at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Nd合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(2)では、αMg相の体積分率が79.64%、LPSOの体積分率が8.8%、化合物の体積分率が11.56%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1.75at%、Prを0.25at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Pr合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(3)では、αMg相の体積分率が61.8%、LPSOの体積分率が35.46%、化合物の体積分率が2.74%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1.75at%、Smを0.25at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Sm合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(4)では、αMg相の体積分率が66.02%、LPSOの体積分率が30.87%、化合物の体積分率が3.11%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1.5at%、Smを0.5at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Sm合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(5)では、αMg相の体積分率が74.12%、LPSOの体積分率が19.89%、化合物の体積分率が5.99%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを2at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(6)では、αMg相の体積分率が73.97%、LPSOの体積分率が25.27%、化合物の体積分率が0.76%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1at%、Ceを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Ce合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(7)では、αMg相の体積分率が73.42%、LPSOの体積分率が5.21%、化合物の体積分率が21.37%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1.9at%、Laを0.1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−La合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(8)では、αMg相の体積分率が58.14%、LPSOの体積分率が39.43%、化合物の体積分率が2.43%となる様に組織制御を行った。
Znを2at%、Yを1at%、Smを1at%とし、残部がMgと不可避的不純物のMg−Zn−Y−Sm合金を真空溶解炉に投入し、フラックス精錬により溶解を行った。次に、加熱溶融した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作成した。続いて、押出温度350℃において押出比10として塑性加工(押出加工)を行ったものを製造した。なお、試験片(9)では、αMg相の体積分率が82.95%、LPSOの体積分率が0%、化合物の体積分率が17.05%となる様に組織制御を行った。
2 LPSO
3 αMg相
4 化合物
Claims (2)
- 必須成分として0.5原子%以上2.5原子%未満のZn、及び1.25原子%以上1.75原子%以下のYを含有し、希土類元素(RE)としてCe、Nd、Pr、Smのうち少なくとも1つ以上の元素を合計で0.25原子%以上0.75原子%以下含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Zn−Y−RE系合金から構成されるマグネシウム合金であって、
Mg−Zn−Y−RE系合金の合金組織中に、長周期積層構造相、αMg相、及び、Mg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物を有すると共に、
前記長周期積層構造相の体積分率の範囲が8%以上であり、
前記Mg−RE化合物若しくはMg−Zn−RE化合物の少なくとも1つ以上の化合物の体積分率の範囲が2.7〜12%である
マグネシウム合金。 - 前記Znは成分範囲が2原子%以下である
請求項1に記載のマグネシウム合金。
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