JP4958267B2 - マグネシウム合金材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネシウム合金材およびその製造方法に係るもので、より詳しくは内燃機関用ピストンのような高温雰囲気で使用される自動車用部品に適したマグネシウム合金材およびその製造方法に関するものである。
一般に、マグネシウム合金材は、実用化されている合金の中で最も密度が低く軽量で強度も高いため、電気製品の筐体や、自動車のホイールや、足回り部品、あるいは、エンジン回り部品等への適用が進められている。
特に、自動車に関連する用途の部品においては、高い機械的性質が要求されるため、特許文献1、特許文献2、非特許文献1では、MgにGdやZn等の元素を添加し、片ロール法、急速凝固法により特定の形態のマグネシウム合金材を製造することが行われている。
しかし、前記した特許文献1、特許文献2、非特許文献1に記載されたマグネシウム合金材の製造方法においては、高い機械的性質が得られるものの特殊な設備が必要であり生産性も低いという問題があり、更に適用できる部材が限られるという問題がある。
そこで、特許文献3、特許文献4では、マグネシウム合金材を製造する場合、前記特許文献1、特許文献2、非特許文献1に記載された特殊な設備あるいはプロセスを用いずに、生産性の高い通常の溶解鋳造から塑性加工(押出)を実施しても実用上有用な機械的性質が得られるものが提案されている。特許文献3、4に開示されているマグネシウム合金材は、組織中に長周期積層構造を有しており、高い機械的性質が得られることが知られている。
特開平06−041701号公報 特開2002−256370号公報 国際公開第2005/052204号パンフレット 国際公開第2005/052203号パンフレット 山崎倫昭、他3名,「高温熱処理法により長周期積層構造が形成する新規Mg−Zn−Gd合金」,軽金属学会第108回春期大会講演概要(2005),社団法人軽金属学会,2005年,p.43−44
従来のマグネシウム合金材(Mg−Zn−Gd系合金材)は、機械的性質が高く、エンジンのピストン部品のような高温雰囲気での使用に耐え得る強度を有している。しかしながら、使用温度条件によっては、MgGdや長周期積層構造が複雑に晶出ないし析出する。そして、これに伴い、大きな素材寸法変化が生じる場合がある。従って、高温雰囲気での寸法精度が要求される用途には適用できないという問題がある。
本発明は、前記問題を解決するためになされたもので、その目的は、機械的性質に優れ、高温雰囲気での寸法精度に優れたマグネシウム合金材およびその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明に係るマグネシウム合金材は、Zn:0.5〜3原子%、Gd:1〜5原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg-Zn-Gd系合金から構成され、組織中にMg5Gdおよび/またはMg7Gdを有し、粒界に晶出または析出したMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率が30%以上であることを特徴とする構成とした。
このような構成によれば、マグネシウム合金材のZnおよびGdの成分が所定の範囲であることによって、Mg5Gdおよび/またはMg7Gdが析出し易くなり、マグネシウム合金材の機械的性質(引張強さ並びに0.2%耐力)が高くなる。また、マグネシウム合金材のMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率が所定値以上であることによって、Mg3Gdおよび長周期積層構造がマグネシウム合金材の粒界に予め一定量以上晶出または析出して安定化していることとなり、マグネシウム合金材が高温雰囲気に晒された際、Mg3Gdおよび長周期積層構造(LPO)の粒界への晶出または析出が抑制される。その結果、マグネシウム合金材の高温雰囲気での寸法変動が大幅に減少する。さらに、マグネシウム合金材がMg5Gdおよび/またはMg7Gdと併せてMg3Gdおよび長周期積層構造を有することによって、マグネシウム合金材の機械的性質が実用上問題のないレベルとなる。
また、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法は、Zn:0.5〜3原子%、Gd:1〜5原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg-Zn-Gd系合金を溶解、鋳造して鋳造材を得る溶解鋳造工程と、前記鋳造材を塑性加工して加工材を製造する塑性加工工程と、前記加工材に200〜300℃で20時間以上保持する熱処理を施す熱処理工程とを含む手順とした。
このような手順によれば、所定範囲の熱処理を施す熱処理工程を含むことによって、マグネシウム合金材にMg5Gdおよび/またはMg7Gdが形成される共に、Mg3Gdおよび長周期積層構造が所定量形成され、マグネシウム合金材の機械的性質が高くなると共に、高温雰囲気での寸法精度が安定化する。また、塑性加工工程を含むことによって、マグネシウム合金材に歪みを与えることができ、機械的性質が向上する。
さらに、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法は、前記塑性加工が押出加工および/または鍛造加工である手順とした。このような手順によれば、自動車部品等の所定の形状を有し、機械的性質および高温雰囲気での寸法精度に優れたマグネシウム合金材が容易に製造される。
本発明に係るマグネシウム合金材によれば、組織中にMg5Gdおよび/またはMg7Gdを有し、かつ、粒界に晶出または析出するMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率を所定値以上としたことよって、機械的性質および高温雰囲気での寸法精度が優れたものとなる。
従って、本発明に係るマグネシウム合金材は、自動車用部品、特に、ピストン、バルブ、タペット、スプロケットのような軽量で、かつ、優れた機械的性質および寸法精度を必要とする用途に適用することができる。
本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法によれば、所定範囲の熱処理工程および塑性加工工程を含むことによって、機械的性質および高温雰囲気での寸法精度に優れたマグネシウム合金材を製造することができる。また、塑性加工として、押出加工、鍛造加工等を用いることによって、機械的性質に優れたマグネシウム合金材を効率よく製造することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1(a)、(b)は、マグネシウム合金材の合金組織中にMg5GdおよびMg7Gdが出現している状態を示すTEM写真、図2(a)は、熱処理前のマグネシウム合金材にMgGdおよび長周期積層構造が出現している状態を示す顕微鏡写真、(b)は、熱処理後のマグネシウム合金材にMg3Gdおよび長周期積層構造が出現している状態を示す顕微鏡写真、図3は、図2のマグネシウム合金材として均熱処理を施した合金材を使用したもので、(a)は、熱処理前のマグネシウム合金材にMgGdが出現している状態を示す顕微鏡写真、(b)は、熱処理後のマグネシウム合金材にMg3Gdおよび長周期積層構造が出現している状態を示す顕微鏡写真、図4は、熱処理保持時間と、MGGdおよび長周期積層構造の面積率との関係を示す図である。
<マグネシウム合金材>
まず、本発明に係るマグネシウム合金材について説明する。
本発明に係るマグネシウム合金材は、高温雰囲気で使用される部品、例えば、自動車用部品、特に、内燃機関用ピストン、バルブ、タペット、スプロケット等に適した材料である。なお、マグネシウム合金材の形状は、例えば、板状、棒状等であって、使用される部品の形状によって適宜選択される。
そして、マグネシウム合金材は、所定量のZnおよびGdを含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg-Zn-Gd系合金から構成され、組織中にMg5Gdおよび/またはMg7Gdを有し、粒界に晶出または析出したMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率が所定値以上である構成を備えている。以下、具体的に説明する。
(合金組成)
[Zn:0.5〜3原子%]
Znが0.5原子%未満であると、MgGdを得ることができず、マグネシウム合金材の機械的性質(引張強さ並びに0.2%耐力)が低下する。また、Znが3原子%を超えると、Zn添加量に見合った機械的性質の向上が得られず、鋳造組織の粒界において、Mg−Zn−Gd金属間化合物の析出が多くなり、マグネシウム合金材の伸びが低下する(脆化する)。したがって、Znの含有量は、ここでは、0.5〜3原子%の範囲としている。
[Gd:1〜5原子%]
Gdは、鋳造(鋳造および鍛造)のみでは、十分な量の後記する長周期積層構造を出現させないが、鋳造(鋳造および鍛造)後に所定の条件で熱処理をすることにより、所定値以上の長周期積層構造を粒界に析出させると共に、後記するMg5Gdおよび/またはMg7Gdを組織中に析出させるものである。マグネシウム合金材では、熱処理によって、長周期積層構造を粒界に析出させ、機械的性質の向上を図ることができるが、より高い機械的性質を得るためには、熱処理によって、後記するMgGdを粒界に晶出または析出させると共に、Mg5Gdおよび/またはMg7Gdを組織中に析出させる必要がある。
そのため、マグネシウム合金材において、Gdは所定量を必要とする。Gdが1原子%未満であると、MgGd、および、Mg5Gdおよび/またはMg7Gdを析出させることができず、マグネシウム合金材の機械的性質が低下する。また、Gdが5原子%を超えると、Gd添加量に見合った機械的性質の向上が得られず、鋳造組織の粒界において、Mg3GdおよびMg−Zn−Gd金属間化合物の析出が多くなり、マグネシウム合金材の伸びが低下する。したがって、Gdの含有量は、ここでは、1〜5原子%の範囲としている。
なお、本発明において、前記した成分以外にも、本発明のマグネシウム合金材の効果に影響を与えない範囲において、例えば、母相となるα−Mgの微細化に寄与するZrを2原子%程度含んでいても構わない。
(Mg5Gdおよび/またはMg7Gd)
Mg5Gdおよび/またはMg7Gdは、所定の温度条件下で、マグネシウム合金材の合金組織中に析出する。このMg5Gdおよび/またはMg7Gdの析出によって、マグネシウム合金材の機械的性質(引張強さ並びに0.2%耐力)が向上する。なお、図1(a)、(b)は、250℃×60時間の熱処理を行ったマグネシウム合金材1の合金組織を示すTEM写真で、マグネシウム合金材1の合金組織中にMg5GdおよびMg7Gdが出現している。
このMg5GdおよびMg7Gdは、細長い微細な針状または板状であり、小さすぎると機械的性質の向上に寄与せず、また、大きすぎると析出物が破壊の起点となって、マグネシウム合金材1の伸びの低下につながる。そのため、Mg5GdおよびMg7Gdは、それぞれの大きさ(長さ)が0.1〜20μmの範囲であることが好ましく、また、0.2〜10μmの範囲であることがさらに好ましく、そして、0.3〜7μmの範囲であることがより好ましい。なお、このMg5Gdおよび/またはMg7Gdは、後記するマグネシウム合金材の製造方法における熱処理条件を制御することによって得ることが可能となる。
(長周期積層構造)
図2(a)、(b)、図3(b)に示すように、長周期積層構造(Long Period Ordered Structure 略してLPO)3とは、マグネシウム合金材1の粒内および粒界に析出する析出物であって、特に粒界には濃度の高いLPOがラメラー状にMgGd化合物とともに存在し、この長周期積層構造3の析出によって、マグネシウム合金材1の機械的性質(引張強さ並びに0.2%耐力)が向上する。なお、図2は、鋳造材を鍛造温度:420℃、圧下率:78.2%で鍛造加工して作製したマグネシウム合金材1の合金組織を示す顕微鏡写真であって、(a)が250℃×40時間の熱処理を行う前、(b)が熱処理を行なった後の合金組織である。また、図3は、鋳造材を均熱処理した後、鍛造温度:402℃、圧下率:79.4%で鍛造加工して作製したマグネシウム合金材1の合金組織を示す顕微鏡写真であって、(a)が250℃×40時間の熱処理を行う前、(b)が熱処理を行なった後の合金組織である。
また、長周期積層構造3とは、例えば、規則格子が14個並び逆位相のずれを介して再び規則格子が14個並び、元の格子の数倍から10数倍の単位の構造が作られ、その周期が長い構造のものをいう。さらに、この相(長周期積層構造3)は、規則相と不規則相の間のわずかな温度範囲に出現し、電子回折した図には規則相の反射が分裂して、10倍の周期に対応する位置に回折斑点が現れる。なお、この長周期積層構造3は、金属間化合物等にも表れることが知られている。
図4に示すように、この長周期積層構造3の析出量は、鋳造(鋳造および鍛造)時には少量の析出量であるが、所定の温度で所定の時間熱処理を施すことによって、析出量が増加する(図4では析出量を面積率で表している)。そして、熱処理に伴う長周期積層構造3の析出量の増加率が大きいと、マグネシウム合金材1の寸法変化も大きくなる。したがって、長周期積層構造の析出量(面積率)は、高温雰囲気でのマグネシウム合金材1の寸法精度に大きな影響を与える。
(MgGd)
図2(a)、図3(a)に示すように、MgGdは、鋳造されて凝固してくるときに、マグネシウム合金材1の粒界に晶出してくる晶出物である。このMgGdの晶出によって、マグネシウム合金材1の機械的性質(引張強さ並びに0.2%耐力)が向上する。また、このMgGdは、所定の熱処理に伴い、一部が長周期積層構造に変化するため、前記の長周期積層構造3と同様に、高温雰囲気でのマグネシウム合金材1の寸法精度に影響を与える。
(Mg3Gdおよび長周期積層構造の面積率:30%以上)
Mg合金材のMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率は、前記したとおり、高温雰囲気でのマグネシウム合金材の寸法精度に大きく影響する。すなわち、マグネシウム合金材を一定温度以上で使用していると、Mg3Gdおよび長周期積層構造がマグネシウム合金材の粒界に晶出または析出してくる。このMg3Gdおよび長周期積層構造の晶出または析出によって、マグネシウム合金材の寸法が大きく変化する。このため、ピストン部品のような高温雰囲気で使用され、かつ、優れた寸法精度が要求される用途においては、マグネシウム合金材におけるMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率が重要なものとなる。
従って、マグネシウム合金材のMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率を予め30%以上、すなわち、図4に示すように飽和値に近い面積率としておくことによって、マグネシウム合金材が高温に晒された際、Mg3Gdおよび長周期積層構造の粒界への晶出または析出を抑えることが可能となる。逆に、面積率が30%未満であると、マグネシウム合金材が高温に晒された際、粒界にMg3Gdおよび長周期積層構造が晶出または析出し、寸法が大きく変化する。また、前記の30%以上の面積率は、後記するマグネシウム合金材の製造方法における熱処理条件を制御することによって得ることが可能となる。ここで、面積率とは、合金組織の全組織に対してMg3Gdおよび長周期積層構造の占める面積の割合をいう。
つぎに、本発明のマグネシウム合金材の製造方法について説明する。
<マグネシウム合金材の製造方法>
本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法は、溶解鋳造工程と、塑性加工工程と、熱処理工程とを含むものである。以下、各工程について説明する。
(1)溶解鋳造工程
溶解鋳造工程では、Mg−Zn−Gd系合金を溶解、鋳造して鋳造材を製造する。溶解、鋳造方法は、常法に従って行う。
(溶解)
Mg基材に、前記した組成範囲となるように、所定量のGd、Znを添加して、溶解炉内で溶解する。Mg系合金は酸化燃焼により酸化物を形成しやすいので、溶解炉内の溶湯に、窒素、アルゴン等の不活性ガス、フラックスを投入し、溶湯と酸化物を分離させることにより、酸化物除去を行うことが好ましい。また、SF6を混合したガスなどの保護ガス雰囲気で溶湯面を覆いながら溶解することにより、溶湯の酸化を防止することがさらに好ましい。
(鋳造)
溶解炉内で溶解したMg系合金の溶湯を鋳型内に注入して、鋳造材を製造する。ここで、鋳型は、砂型および金型のいずれを使用してもよい。また、鋳造材に所定の均熱処理を施すことが好ましい。
(均熱処理)
均熱処理によって、鋳造組織の粒界に存在するラメラー組織である濃度の高い長周期積層構造が消失し、マグネシウム合金材の機械的性質(引張強さおよび伸び)が高くなる。この際、均熱処理の温度は480℃以上、保持時間1時間以上が好ましい。均熱温度が480℃未満または保持時間が1時間未満であると、ラメラー組織の固溶が進行し難くなり、ラメラー組織が鋳造組織の粒界に残存しやすくなる。そのため、マグネシウム合金材の機械的性質が向上し難くなる。
(2)塑性加工工程
前記溶解鋳造工程で製造された鋳造材、または、鋳造後に均熱処理が施された鋳造材を塑性加工して加工材を製造する。この塑性加工によって、マグネシウム合金材に良好な機械的性質を与えることが可能となる。また、この塑性加工によって最終塑性加工前に歪みを与えることができ、最終塑性加工のみで十分な歪みを付与できない場合に機械的性質を向上させるのに有効である。
塑性加工は、鍛造加工、押出加工、または、押出加工後に鍛造加工することが好ましい。ここで、鍛造加工は、自由鍛造または型鍛造のいずれでもよい。また、押出加工は、直接押出、間接押出、静水圧押出またはコンフォーム押出のいずれでもよい。なお、塑性加工は、自動車用部品、例えば、内燃機関用ピストン、バルブ、タペット、スプロケット等の所定の形状に加工するものであってもよい。
(3)熱処理工程
Mg−Zn−Gd系合金からなるマグネシウム合金材は高温に晒されると経時的な寸法変化が生じる。以下の表1に、マグネシウム合金材に所定の熱処理を行なった際の寸法変化の調査結果を示す。なお、マグネシウム合金材としては、Mg−Zn(1原子%)−Gd(2原子%)系合金で鋳造、鍛造により作製したマグネシウム合金板を使用した。また、マグネシウム合金板の変化率は、250℃で所定時間熱処理し、その後、24時間室温で冷却した後、マグネシウム合金板の長さを測定し、下式(1)にて初期状態または直前状態からの長さの変化率を算出した。
変化率(%)=(L1−L0)/L0×100・・・(1)
ここで、L0は初期状態または直前状態での合金板の長さ、L1は熱処理後の合金板の長さである。
表1の結果から、保持時間が5時間程度までは、マグネシウム合金板の寸法変化が大きく、保持時間が20時間以上で、マグネシウム合金板の寸法変動が安定化し、寸法変化率(直前からの変化率)が自動車用部品等で要求される0.02%に収まっている。すなわち、所定の温度条件(ここでは、250℃×20時間)以上では、熱負荷がかかっても、マグネシウム合金板の寸法が大きく変化しないことが確認された。このことは、図4に示すように、マグネシウム合金材のMg3Gdおよび長周期積層構造の面積率が飽和値に近いことに起因している。この結果から、マグネシウム合金材の製造工程において、所定の熱処理を行なったマグネシウム合金材は、高温雰囲気(製品使用環境下)に晒された際の寸法変動を小さくできることが確認された。
したがって、本発明においては、前記塑性加工工程で製造された加工材に所定の熱処理を施す熱処理工程を設けることとした。そして、所定の熱処理として、200〜300℃で20時間以上保持する熱処理条件とした。そして、熱処理条件は、200〜300℃で20時間以上保持する必要がある。保持温度が200℃未満では、高温雰囲気に晒された際のマグネシウム合金材の寸法変化が大きく、300℃を超えると寸法変化はこれ以上小さくならず、逆に生産性が悪く、マグネシウム合金材の機械的性質も低下する。保持時間は20時間以上が必要であるが、生産性、マグネシウム合金材の機械的性質が低下することから、40時間以下とすることが好ましい。また、この熱処理条件を前記範囲内に制御することによって、Mg5Gdおよび/またはMg7Gdが析出すると共に、Mg3Gdおよび長周期積層構造の面積率が30%以上のマグネシウム合金材を得ることが可能となる。
本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
<実施例>
まず、Mg−Zn1原子%−Gd2原子%のMg合金組成となるように各材料を秤量し、溶解炉に装入し、フラックス精錬により溶解を行った。続いて、以下の方法で試料A〜Eを作製した。なお、図5は自由鍛造プレス装置の構成を示す模式図である。
(試料A)
Mg合金溶湯を金型(φ50mm)で鋳造しインゴットを製造した。続いて、図5に示すように、インゴット10を自由鍛造プレス装置100の上下金型101a、101b間に装入し、鍛圧(油圧)1500tで、鍛造温度(打ち上がり温度)420℃および加工率(圧下率)を約80%で自由鍛造して鍛造材10aを作製し、試料Aとした。
(試料B)
インゴット10を自由鍛造する前に500℃×12hrの均熱処理を施すこと以外は、試料Aと同様にして鍛造材10aを作製し、試料Bとした。
次に、各試料から長さ100mm×幅15mm×厚さ5mmの板を加工し、各板に保持温度250℃で保持時間40hrの熱処理を施し、合金板A、Bとした。そして、合金板A、Bの表面をTEMで観察し、Mg5GdおよびMg7Gdの析出の有無を確認した。また、合金板A,Bの表面を顕微鏡(倍率400倍)で観察し、その顕微鏡画像を画像処理(2値化)して、黒色部(Mg3Gdおよび長周期積層構造)の面積率を算出した。その結果を表2に示す。また、合金板A、Bを製品使用環境下(高温雰囲気:250℃)に晒し、その後、24時間室温で冷却した後、各合金板A、Bの寸法測定を行い、製品使用環境下(高温雰囲気)に晒した後の長さの変化率を算出した。その結果を表2に示す。なお、変化率は下記式(2)にて算出した。
変化率(%)=(L2−L1)/L1×100・・・(2)
ここで、L1は製品使用環境下に晒す前の合金板の長さ、L2は製品使用環境下に晒した後の合金板の長さである。
<比較例>
試料A、Bを加工して作製した板に熱処理を施さなかったこと以外は実施例と同様にして、合金板C(試料Aを加工)、D(試料Bを加工)を作製した。この合金板C、Dを用いて、実施例と同様にして、Mg5GdおよびMg7Gdの析出の有無、Mg3Gdおよび長周期積層構造の面積率、および、製品使用環境下(高温雰囲気:250℃)に晒した後の長さの変化率を算出した。その結果を表2に示す。
表2の結果から、熱処理を施さない比較例においては、製品使用環境下(高温雰囲気)に晒した後に急激な長さの変化が発生した。しかしながら、熱処理を施した実施例においては、長さの変化率が自動車用部品等で要求されている0.02%に収まっていた。したがって、実施例は比較例に比して寸法精度が優れていることが確認された。
また、実施例の合金板A,Bについて、熱処理前後の機械的性質をJISZ2241に準じて測定した。その結果を図6、図7に示す。図6は熱処理前後の合金板の引張強さを示し、図7は熱処理前後の合金板の耐力(0.2%)を示したものである。
図6、図7に示すように、実施例の熱処理条件では、機械的性質(引張強さ、耐力)が若干低下するものの、実用上問題ない機械的性質が得られることが確認された。
(a)、(b)は、本発明に係るマグネシウム合金材の合金組織中にMg5GdおよびMg7Gdが出現している状態を示すTEM写真である。 (a)は、熱処理前のマグネシウム合金材にMgGdおよび長周期積層構造が出現している状態を示す顕微鏡写真、(b)は、熱処理後のマグネシウム合金材にMg3Gdおよび長周期積層構造が出現している状態を示す顕微鏡写真である。 図2のマグネシウム合金材として均熱処理を施した合金材を使用したもので、(a)は、熱処理前のマグネシウム合金材にMgGdが出現している状態を示す顕微鏡写真、(b)は、熱処理後のマグネシウム合金材にMg3Gdおよび長周期積層構造が出現している状態を示す顕微鏡写真である。 熱処理保持時間と、MgGdおよび長周期積層構造の面積率との関係を示す図である。 自由鍛造プレス装置の構成を示す模式図である。 熱処理前後の合金板の引張強さを示す図である。 熱処理前後の合金板の耐力を示す図である。
符号の説明
1 マグネシウム合金材
3 LPO(長周期積層構造)
10 インゴット
10a 鍛造材
100 自由鍛造プレス装置
101a 上金型
101b 下金型

Claims (3)

  1. Zn:0.5〜3原子%、Gd:1〜5原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Zn−Gd系合金から構成され、組織中にMg5Gdおよび/またはMg7Gdを有し、粒界に晶出または析出したMgGdおよび長周期積層構造の面積率が30%以上であることを特徴とするマグネシウム合金材。
  2. Zn:0.5〜3原子%、Gd:1〜5原子%を含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Zn−Gd系合金を溶解、鋳造して鋳造材を得る溶解鋳造工程と、
    前記鋳造材を塑性加工して加工材を製造する塑性加工工程と、
    前記加工材に200〜300℃で20時間以上保持する熱処理を施す熱処理工程とを含むことを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
  3. 前記塑性加工が押出加工および/または鍛造加工であることを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム合金材の製造方法。
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