JP5449754B2 - エンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法 - Google Patents

エンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法 Download PDF

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本発明は、エンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法に関する。
内燃機関(エンジン)用ピストンは燃焼室内における燃焼エネルギーを動力に変換するための運動部品であり、コンプレッサー用ピストンは回転力を利用して圧縮空気を作るための運動部品である。前記ピストンは、いずれも運動部品であるので、軽量であると共に、優れた耐熱性、耐摩耗性、疲労強度特性及び耐久性を備えていることが必要とされる。そこで、前記ピストンとして、アルミニウム合金製の鍛造ピストンを用いることが検討されている。
鍛造に用いられるアルミニウムとして、例えば、JISに規定されているA4032合金、A2618合金等が知られている。
前記A4032合金は、全量に対し、11〜13.5重量%の範囲のケイ素と、1.0重量%以下の鉄と、0.5〜1.3重量%の範囲の銅と、0.8〜1.3重量%の範囲のマグネシウムと、0.6〜1.2重量%の範囲のマンガンと、0.1重量%以下のクロムと、0.25重量%以下の亜鉛と、0.5〜1.3重量%の範囲のニッケルと、不可避的不純物とを含み、残部アルミニウムからなる組成を備えるものである。しかし、前記A4032合金は、析出強化を企図した材料であるため、ピストンを鍛造した場合、該ピストンが高温に晒されると強度が低下するという問題がある。
また、前記A2618合金は、全量に対し、0.1〜0.25重量%の範囲のケイ素と、0.9〜1.3重量%の範囲の鉄と、1.9〜2.7重量%の範囲の銅と、1.3〜1.8重量%の範囲のマグネシウムと、0.1重量%以下の亜鉛と、0.04〜0.1重量%の範囲のチタンと、0.9〜1.2重量%の範囲のニッケルと、不可避的不純物とを含み、残部アルミニウムからなる組成を備えるものである。しかし、前記A2618合金は、ケイ素の含有量が0.1〜0.25重量%と少ないため熱膨張率が大となり、ピストンの摺動性が低くなるという問題がある。
前記A4032合金または前記A2618合金の前記問題点を改良するために、種々の提案がなされている。例えば、全量に対し、10.0〜14.0重量%の範囲のケイ素と、3.0〜6.0重量%の範囲の銅と、0.1〜1.0重量%の範囲のマグネシウムと、0.6〜1.8重量%の範囲の鉄と、0.8〜3.0重量%の範囲のニッケルと、0.1〜0.7重量%の範囲のマンガンと、0.1〜0.7重量%の範囲のチタンと、0.05〜0.3重量%の範囲のジルコニウムと、0.05〜0.5重量%の範囲のバナジウムと、不可避的不純物とを含み、残部アルミニウムからなる組成を備えるアルミニウム合金が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このアルミニウム合金では、200℃以上の温度では強度を向上する効果が得られず、ピストンを鍛造した場合、高温条件下では該ピストンの天井部で十分な強度を得ることができないとの不都合がある。
また、全量に対し、12〜14重量%の範囲のケイ素と、3.0〜10.0重量%の範囲の銅と、0.7〜1.3重量%の範囲のマグネシウムと、1.5〜3.0重量%の範囲のニッケルと、0.1重量%以下の鉄と、0.5〜1.0重量%の範囲のマンガンと、0.05〜0.3重量%の範囲のバナジウムと、不可避的不純物とを含み、残部アルミニウムからなる組成を備え、鋳造による晶出物の最大長を200μm以下に制御して分散強化したアルミニウム合金が知られている。このアルミニウム合金は、溶湯を、樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が20〜30μm相当の範囲となる冷却速度で鋳造することにより得られる、とされている(特許文献2参照)。しかしながら、このアルミニウム合金では、金属間化合物を晶出させる遷移元素金属を多量に添加するため、比重が大きくなり軽量化を妨げるばかりでなく、使用時の動的応力に対して粗大晶出物が原因となって切欠が発生するので、十分な強度が得られないとの不都合がある。
特開平7−216487号公報 特開2000−54053号公報
本発明は、かかる不都合を解消して、優れた高温強度を備えるエンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法を提供することを目的とする。
金属または合金では、結晶粒を微細化すれば、強度、靭性等の機械的特性が向上することが知られている。また、結晶粒の微細化は、金属材料の異方性を打ち消す上でも有効である。そこで、従来、加工熱処理により結晶粒を微細化する方法が知られている。前記加工熱処理は、強加工または繰り返し加工により歪みを導入することによって結晶粒を微細化するものである。
前記強加工によって、結晶粒を微細化する方法としては、圧縮ねじり法、ECAP(Equal Channel Angular Pressing)法、繰り返し圧延法等がある。前記圧縮ねじり法は、円柱状のコンテナに金属試料を装填し、パンチを用いて該金属試料の一端部に圧縮力、ねじり力を加えることにより強歪みを該金属試料に導入して、結晶粒を微細化するものである。また、前記ECAP法は、L型孔を有する金型内に棒状の金属試料を押し通すことにより、断面形状を変えることなく該金属試料を強歪み加工して、結晶粒を微細化するものである。また、前記繰り返し圧延法は、板材金属材料を圧延し、折り重ねた後で再度圧延を繰り返すことにより強歪みを該金属試料に導入して、結晶粒を微細化するものである。
ところが、前記従来の加工熱処理により結晶粒を微細化する方法は、いずれも、デンドライトアーム間隔等の加工前の素材の組織因子を考慮することなく、強加工により結晶粒を微細化するものであるので、大きな加工歪みを加えなければならず、しかも十分な効果が得られない。また、前記ECAP法は、原理的に装置の大型化が困難であり、前記繰り返し圧延法は、素材が薄板に限定されるので、ピストン用素材を製造することが難しいとの問題がある。
そこで、前記目的を達成するために、本発明のエンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法は、全量に対し、7〜17重量%の範囲のケイ素と、0.5〜3重量%の範囲の銅と、0.4〜1.5重量%の範囲のマグネシウムと、0.6〜1.2重量%の範囲のマンガンと、0.8〜3重量%の範囲のニッケルと、0.05〜0.3重量%の範囲のジルコニウムと、0.15〜1.0重量%の範囲の鉄と、残部アルミニウム及び不可避的不純物とからなるアルミニウム合金を、12〜50℃/秒の範囲の冷却速度で冷却して凝固させ、樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲である鋳造体を得る工程と、前記鋳造体に対して、200〜240℃の範囲の温度で、20〜45%の範囲の加工率の予備加工を施し、鍛造用アルミニウム合金素材を形成する工程と、前記鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える温度で鍛造加工を施す工程とを備えることを特徴とする。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、7〜17重量%の範囲のケイ素を含有することにより、ピストンの高温使用時における線膨張係数を抑制し、その寸法変化を小さくすると共に、高速での摺動に耐えるようにするという効果を得ることができる。ケイ素の含有量が全量に対し7重量%未満では、前記効果を十分に得ることができず、17重量%を超えると、初晶Siが多量に晶出し、鍛造性及び強度特性を劣化させ、ピストンとして十分な靭性及び加工性を得ることができない。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.5〜3重量%の範囲の銅を含有することにより、銅がアルミニウムに固溶して200℃程度までの材料強度を向上させることができる。銅の含有量が全量に対し0.5重量%未満では強度特性が著しく劣化し、3重量%を超えると、Al−Ni系金属間化合物の晶出を妨げ250℃以上での材料強度の向上を妨げると共に比重が増大し鍛造性が劣化する。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.4〜1.5重量%の範囲のマグネシウムを含有することにより、マグネシウムがアルミニウムに固溶して生地を強化すことができると共に、Siと結びつきMgSiを晶出して強度及び耐摩耗性を向上させるとの効果を得ることができる。マグネシウムの含有量が全量に対し0.4重量%未満では、前記効果を十分に得ることができず、1.5重量%を超えると靭性が低下する。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.6〜1.2重量%の範囲のマンガンを含有することにより、マンガンがアルミニウムに固溶して生地を強化することができると共に、Mn−Fe系の金属間化合物を形成する一方、Al−Feの針状金属間化合物の形成を抑制して靭性の低下を防止するとの効果を得ることができる。マンガンの含有量が全量に対し0.6重量%未満では、前記効果を十分に得ることができず、1.2重量%を超えると、Al−Mn−Fe系の粗大金属化合物が生成し、強度及び靭性を向上する効果が乏しくなる。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.8〜3重量%の範囲のニッケルを含有することにより、Al−Ni系金属間化合物または共存する銅とのAl−Cu−Ni系3元金属間化合物を形成して高温強度を向上するとの効果を得ることができる。ニッケルの含有量が全量に対し0.8重量%未満では、前記効果を十分に得ることができず、3重量%を超えると晶出物が粗大化し、靭性が低下すると共に鍛造時に割れや欠陥等が発生する。また、銅に対するニッケルの比率をNi/Cu>1以上となるようにすることが好ましい。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.05〜0.3重量%の範囲のジルコニウムを含有することにより、結晶粒を微細化すると共に耐熱性を向上するとの効果を得ることができる。ジルコニウムの含有量が全量に対し0.05重量%未満では前記効果を十分に得ることができず、0.3重量%を超えると粗大なAl−Zr系金属間化合物を晶出し、高温での強度特性や鍛造性が低下する。ジルコニウムの含有量は、高温強度特性及び鍛造性を良好にするために、0.1〜0.2重量%の範囲とすることが好ましい。
前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.15〜1.0重量%の範囲の鉄を含有することにより、Al−Fe系金属間化合物または共存する銅とのAl−Cu−Fe系3元金属間化合物を形成して高温強度を向上するとの効果を得ることができる。鉄の含有量が全量に対し0.15重量%未満では、前記効果を十分に得ることができず、1.0重量%を超えると晶出物が粗大化し、靭性が低下すると共に鍛造時に割れや欠陥等が発生する。
また、鉄の含有量は、ニッケルの含有量との合計が4重量%以下の範囲とすることが好ましい。鉄は、ニッケルと共にAl−Ni−Fe系金属間化合物を形成するが、鉄とニッケルとの含有量の合計が4重量%を超えると、晶出する前記金属間化合物が粗大化し、強度及び鍛造性を阻害することがある。
前記アルミニウム合金は、前記組成を備えるアルミニウム合金を12〜50℃/秒の範囲の冷却速度で冷却して凝固させることにより、樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲の鋳造体となる。前記鋳造体は、前記アルミニウム合金の冷却速度が12℃/秒未満では、前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔を18μm以下とすることができない。また、前記冷却速度を50℃/秒を超えるものとすることは、技術的に困難である。
前記アルミニウム合金は、前記鋳造体において前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲であることにより、優れた鍛造性を得ることができ、しかも鍛造したときに高温において優れた強度を得ることができる。前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔を2μm未満とすることは、技術的に困難である。また、前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が18μmを超えると、十分な鍛造性と、高温における十分な強度特性とを得ることができない。
前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲である前記鋳造体に対し、200〜240℃の範囲の温度で、20〜45%の範囲の加工率の予備加工を施して圧縮負荷を付与することにより、結晶粒及びデンドライトアーム間隔がさらに微細化された鍛造用アルミニウム合金素材を形成することができる。そこで、前記鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える温度で鍛造加工を施すことにより、エンジンまたはコンプレッサーのピストンにおいて優れた高温強度を得ることができる。
また、前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.01〜0.3重量%の範囲のチタンを含むことが好ましい。前記アルミニウム合金は、さらに、全量に対し、0.01〜0.3重量%の範囲のチタンを含有することにより、結晶粒を微細化すると共に耐熱性を向上するとの効果を得ることができる。チタンの含有量が全量に対し0.01重量%未満では前記効果を十分に得ることができないことがあり、0.3重量%を超えると粗大なAl−Ti系金属間化合物を晶出し、高温での強度特性や鍛造性が低下することがある。チタンの含有量は、高温強度特性及び鍛造性を良好にするために、0.1〜0.2重量%の範囲とすることがさらに好ましい。
また、前記アルミニウム合金は、全量に対し、0.01〜0.3重量%の範囲のアンチモンまたは0.005〜0.1重量%の範囲のベリリウムを含むことが好ましい。
とすることがさらに好ましい。
本発明の鍛造方法によれば、前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲である前記鋳造体に対し、200〜240℃の範囲の温度で、20〜45%の範囲の加工率の予備加工を施して圧縮負荷を付与することにより、結晶粒及びデンドライトアーム間隔がさらに微細化された鍛造用アルミニウム合金素材を形成することができる。そこで、前記鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える温度で鍛造加工を施すことにより、優れた精度でエンジンまたはコンプレッサーのピストンを鍛造することができ、得られたピストンにおいて優れた高温強度を得ることができる。
また、本発明の鍛造方法では、前記鍛造用アルミニウム合金素材を形成する工程と、該鍛造用アルミニウム合金素材に対して鍛造加工を施す工程とを、鍛造プレス内で一挙動で行うことにより、前記エンジンまたはコンプレッサーのピストンを効率よく鍛造することができるので好ましい。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態のアルミニウム合金における冷却速度と樹枝状晶のデンドライトアーム間隔との関係を示すグラフ、図2は本実施形態のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンと現用のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンとの疲労強度を示すグラフである。
本実施形態のエンジンまたはコンプレッサーのピストン用アルミニウム合金は、全量に対し、7〜17重量%の範囲のケイ素と、0.5〜3重量%の範囲の銅と、0.4〜1.5重量%の範囲のマグネシウムと、0.6〜1.2重量%の範囲のマンガンと、0.8〜3重量%の範囲のニッケルと、0.05〜0.3重量%の範囲のジルコニウムと、0.15〜1.0重量%の範囲の鉄と、不可避的不純物とを含むアルミニウム合金を、12〜50℃/秒の範囲の冷却速度で冷却して凝固させた鋳造体であって、樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲である。
本実施形態のエンジンまたはコンプレッサーのピストン用アルミニウム合金において、前記ケイ素は、例えば、全量に対し8〜16重量%の範囲とすることができ、前記銅は、例えば、全量に対し1〜2.8重量%の範囲とすることができ、前記マグネシウムは、例えば、全量に対し0.8〜1重量%の範囲とすることができ、前記マンガンは、例えば、全量に対し0.6〜1重量%の範囲とすることができ、前記ニッケルは、例えば、全量に対し0.5〜2重量%の範囲とすることができ、前記ジルコニウムは、例えば、全量に対し0.1〜0.2重量%の範囲とすることができ、前記鉄は、例えば、全量に対し0.15〜0.8重量%の範囲とすることができる。
ここで、前記鉄は任意に添加してもよく、リサイクル材を使用することにより不可避的に混入するものであってもよい。本実施形態のアルミニウム合金において、鉄の含有量が少ないと、高温における強度特性に及ぼす効果が少ないが、リサイクル材を使用する場合には、多ければ多いほどリサイクル材の品位を落として使えるメリットがある。
また、本実施形態のアルミニウム合金は、全量に対し、0.01〜0.3重量%の範囲のチタンを含んでいてもよい。本実施形態のアルミニウム合金において、前記チタンは、例えば、全量に対し0.01〜0.25重量%の範囲とすることができる。
さらに、本実施形態のアルミニウム合金は、全量に対し、0.01〜0.3重量%の範囲のアンチモンまたは0.005〜0.1重量%の範囲のベリリウムを含んでいてもよい。本実施形態のアルミニウム合金は、前記範囲のアンチモンと、前記範囲のベリリウムとを両方とも含んでいてもよく、どちらか一方のみを含んでいてもよい。本実施形態のアルミニウム合金において、前記アンチモンは、例えば、全量に対し0.008〜0.01重量%の範囲とすることができ、前記ベリリウムは、例えば、全量に対し0.006〜0.01重量%の範囲とすることができる。
次に、本実施形態のアルミニウム合金の一例における冷却速度と前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔(DAS)との関係を図1に示す。図1に示すアルミニウム合金は、全量に対し、12重量%のケイ素と、2.5重量%の銅と、1重量%のマグネシウムと、1重量%の範囲のマンガンと、2重量%のニッケルと、0.13重量%のジルコニウムと、0.2重量%の鉄と不可避的不純物とを含む鋳造体である。
図1から、前記組成のアルミニウム合金を、12〜50℃/秒の範囲の冷却速度で冷却して凝固させることにより、前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲である鋳造体を得ることができることが明らかである。ここで、前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔は、試料をミクロ研磨した後、金属顕微鏡で100〜200倍に拡大して写真撮影し、撮影された画像から樹枝状晶の二次枝の間隔を測定し、その実測値に顕微鏡の倍率を乗じることにより算出した。
また、本実施形態のエンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法は、前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲であるアルミニウム合金の鋳造体を得たのち、該鋳造体に対して、200〜240℃の範囲の温度で、20〜45%の範囲の加工率の予備加工を施して、鍛造用アルミニウム合金素材を形成し、さらに該鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える温度、例えば400℃の温度で鍛造加工を施すものである。前記鍛造方法において、前記鍛造用アルミニウム合金素材を形成する工程と、該鍛造用アルミニウム合金素材に対して鍛造加工を施す工程とは、鍛造プレス内で一挙動で行うようにしてもよい。
次に、本発明の実施例、比較例及び参考例を示す。
まず、それぞれ表1に示す組成を備えるアルミニウム合金を鋳造し、12〜50℃/秒の冷却速度で凝固させて、試料1〜15の鋳造体を製造した。次に、各アルミニウム合金鋳造体の前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔(DAS)及び晶出物の粒子径を測定した。前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔は図1の場合と同一の方法で測定した。また、前記晶出物の粒子径は、例えば200〜400倍のミクロ写真の画像に任意の直線を引き、該直線にかかった晶出物の粒子径をスケールで測定し、その実測値に該画像の倍率を乗じることにより算出した。結果を、各アルミニウム合金の比重と共に表2に示す。
Figure 0005449754
Figure 0005449754
表1及び表2において、試料1〜11は本発明の実施例であり、アルミニウム合金に含まれる成分のうち、ケイ素は全量に対し8〜16重量%の範囲、銅は全量に対し1〜2.8重量%の範囲、マグネシウムは全量に対し0.8〜1重量%の範囲、マンガンは全量に対し0.6〜1重量%の範囲、ニッケルは全量に対し0.5〜2重量%の範囲、ジルコニウムは全量に対し0.1〜0.2重量%の範囲、鉄は全量に対し0.15〜0.8重量%の範囲である。また、試料1〜11は、チタン、アンチモン、ベリリウムを含む場合には、チタンは全量に対し0.01〜0.25重量%の範囲、アンチモンは全量に対し0.008〜0.01重量%の範囲、ベリリウムは全量に対し0.006〜0.01重量%の範囲である。さらに、試料1〜11は樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜16μmの範囲であり、晶出物の粒子径が2〜40μmの範囲である。
表1及び表2において、試料12〜17は本発明の比較例であり、マンガン、ジルコニウムまたは鉄を全く含まない。また、試料12〜17は樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が18μmより大きく、25〜40μmの範囲である。
表1及び表2において、試料18、19は参考例である。試料18はJISのA4032合金であり、試料19はJISのAC8A合金である。また、試料18、19は樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が18μmより大きく、38〜42μmの範囲である。
次に、試料1〜19のアルミニウム合金の鋳造体をピストンの形状に鍛造して、機械的特性及び鍛造性を評価した。結果を表3に示す。
前記機械的特性は、試料1〜19のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造された各ピストンから試験片を切り出し、各試験片を300℃の温度に100時間保持した後、300℃の温度で引張試験を行い、引張張力及び伸びを測定した。
また、前記鍛造性は、試料1〜19のアルミニウム合金の鋳造体を350℃に加熱してピストン形状に鍛造したときの割れの有無により評価した。表3において、○は割れが発生しなかったものを、×は割れが発生したものを、△は寸法または形状に不都合を生じたものを、それぞれ示す。
Figure 0005449754
表3から、試料1〜11のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンは、JISのA4032合金(試料18)の鋳造体から鍛造されたピストンに比較して引張強度において優れており、JISのAC8A合金(試料19)の鋳造体から鍛造されたピストンに比較しても、引張強度及び伸びにおいて良好な結果を示すことが明らかである。
また、表3から、試料1〜11のアルミニウム合金の鋳造体は、試料12〜19のアルミニウム合金の鋳造体に比較して、優れた鍛造性を備えていることが明らかである。
さらに、表2及び表3から、試料1〜11のアルミニウム合金の鋳造体は、いずれも比重が2.75以下であり、優れた高温強度及び鍛造性を維持しながら、比重の増加を抑えることにより、軽量化が可能であることが明らかである。
次に、試料3のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンと、試料18のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンとについて、250℃及び300℃で疲労強度試験を行った。結果を図2に示す。
図2から、試料3のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンは、250℃及び300℃で、現用の試料18のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンに比較して疲労強度が高いことが明らかである。特に、300℃では、試料3のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンは、現用の試料18のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンに比較して、35%以上高い疲労限強度を示しており、疲労限強度が大幅に向上していることが明らかである。
次に、試料4のアルミニウム合金の鋳造体に対して、240℃の温度で、32%の加工率の予備加工を施して鍛造用アルミニウム合金素材を形成した。また、試料6のアルミニウム合金の鋳造体に対して、220℃の温度で、44%の加工率の予備加工を施して鍛造用アルミニウム合金素材を形成した。次に、各鍛造用アルミニウム合金素材の前記樹枝状晶のデンドライトアーム間隔(DAS)及び晶出物の粒子径を、表1の場合と全く同一の方法により測定した。結果を各鍛造用アルミニウム合金素材の比重と共に表4に示す。
次に、前記各鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える400℃の温度で鍛造加工を施してピストンの形状に鍛造し、前記各ピストンの機械的特性及び鍛造性を、表3の場合と全く同一の方法により評価した。結果を表4に示す。
Figure 0005449754
表4から、試料4及び試料6のアルミニウム合金の鋳造体は、いずれも200〜240℃の範囲の温度で、20〜45%の範囲の加工率の予備加工を施して圧縮負荷を付与することにより、結晶粒及びデンドライトアーム間隔が、試料4及び試料6のアルミニウム合金の鋳造体に対してさらに微細化された鍛造用アルミニウム合金素材を形成することができることが明らかである。
また、表4から、前記鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える400℃の温度で鍛造加工を施すことにより、優れた精度でエンジンまたはコンプレッサーのピストンを鍛造することができ、得られたピストンにおいてさらに優れた高温強度を得ることができることが明らかである。
本発明に係る一実施形態のアルミニウム合金における冷却速度と樹枝状晶のデンドライトアーム間隔との関係を示すグラフ。 本発明に係る一実施形態のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンと現用のアルミニウム合金の鋳造体から鍛造されたピストンとの疲労強度を示すグラフ。
符号の説明
なし。

Claims (2)

  1. 全量に対し、7〜17重量%の範囲のケイ素と、0.5〜3重量%の範囲の銅と、0.4〜1.5重量%の範囲のマグネシウムと、0.6〜1.2重量%の範囲のマンガンと、0.8〜3重量%の範囲のニッケルと、0.05〜0.3重量%の範囲のジルコニウムと、0.15〜1.0重量%の範囲の鉄と、残部アルミニウム及び不可避的不純物とからなるアルミニウム合金を、12〜50℃/秒の範囲の冷却速度で冷却して凝固させ、樹枝状晶のデンドライトアーム間隔が2〜18μmの範囲である鋳造体を得る工程と、
    前記鋳造体に対して、200〜240℃の範囲の温度で、20〜45%の範囲の加工率の予備加工を施し、鍛造用アルミニウム合金素材を形成する工程と、
    前記鍛造用アルミニウム合金素材に対して該鍛造用アルミニウム合金の再結晶温度を超える温度で鍛造加工を施す工程とを備えることを特徴とするエンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法。
  2. 請求項記載の鍛造方法において、前記鍛造用アルミニウム合金素材を形成する工程と、該鍛造用アルミニウム合金素材に対して鍛造加工を施す工程とを、鍛造プレス内で一挙動で行うことを特徴とするエンジンまたはコンプレッサーのピストンの鍛造方法。
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