JP7276761B2 - 硬質・軟質積層構造材料及びその製造方法 - Google Patents

硬質・軟質積層構造材料及びその製造方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 日本金属学会講演概要集DVD,2018年(第162回)春期講演大会(平成30年3月5日発行、発行者:公益社団法人日本金属学会)S7.1にて発表。 日本金属学会講演概要集DVD,2018年(第162回)春期講演大会(平成30年3月5日発行、発行者:公益社団法人日本金属学会)S7.11にて発表。 日本金属学会講演概要集DVD,2018年(第162回)春期講演大会(平成30年3月5日発行、発行者:公益社団法人日本金属学会)S7.2にて発表。 軽金属学会 第134回春期大会講演概要(平成30年4月26日発行、発行者:一般社団法人軽金属学会)にて発表。
本発明は、硬質・軟質積層構造材料及びその製造方法に関する。
マグネシウム合金は、携帯電話やノート型パソコンの筐体あるいは自動車用部品などに急速に普及している。これらの用途に使用するためにはマグネシウム合金には高強度が要求される。
KUMADAIマグネシウム合金は従来の常識を覆す機械的強度と耐熱性を有するとともに高い発火温度を持つことから次世代の高強度マグネシウム合金として注目され、輸送機器材料や医療機器材料として研究開発が進められている。KUMADAI 耐熱マグネシウム合金の強化の源は、長周期積層構造(LPSO構造)とそのキンク形成である。これらは、KUMADAI マグネシウム合金で初めて見出された構造と材料強化法である。
LPSO型マグネシウム合金の「LPSO構造」は、硬質層と軟質積層がアトミックオーダーで密にしかも秩序的に積層した構造を持っている。硬質層(重い添加元素で構成)が密に積層しているので、添加元素が増えるために、LPSO型マグネシウム合金の比重は比較的に重くなる(例えば特許文献1,2参照)。
上記のKUMADAIマグネシウム合金のような強化法が見出されると、その材料の用途範囲が広がり、産業の飛躍的な発展に貢献するため、元の材料より強度を高くできる材料の新しい強化法は常に求められている。
WO2005/052203号公報 WO2005/052204号公報
本発明の一態様は、元の材料より強度が高くされた硬質・軟質積層構造材料またはその製造方法を提供することを課題とする。
以下に本発明の種々の態様について説明する。
[1]硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有する材料であり、
前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
前記軟質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[2]上記[1]において、
前記材料は、キンク変形する物質であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[3]上記[1]または[2]において、
前記硬質層及び前記軟質層にキンクが形成されていることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[4]上記[3]に記載の硬質・軟質積層構造材料は、前記キンクが形成されていない上記[1]に記載の硬質・軟質積層構造材料より強度が高いことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれか一項において、
前記硬質層の相互間に前記軟質層が隙間なく充填されており、
前記材料を塑性変形させる際の前記軟質層のすべり変形もしくはせん断変形が、前記軟質層の層面に限定されていることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれか一項において、
前記材料は、金属系、セラミックス系及び高分子系のいずれかの材料であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[7]上記[1]乃至[6]のいずれか一項において、
前記硬質層の厚さが100nm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[8]上記[1]乃至[7]のいずれか一項において、
前記硬質層の厚さが前記軟質層の厚さの1/2以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[9]上記[1]乃至[8]のいずれか一項において、
前記硬質層は、薄い軟質層と薄い硬質層が交互に積層した板状層で構成されていることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[10]上記[9]において、
前記薄い軟質層及び前記薄い硬質層それぞれの厚さが10nm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[11]上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は金属系の材料であり、
前記硬質層の結晶構造が、前記軟質層の結晶構造と異なることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[12]上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は金属系の材料であり、
前記硬質層と前記軟質層の結晶構造が同じであり、
前記硬質層の溶質元素濃度が、前記軟質層の溶質元素濃度と異なることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
前記硬質層の溶質元素濃度が、前記軟質層の溶質元素濃度と異なることにより、結晶構造が同じで、濃度変調が無い金属系の材料は除外される。
[13]上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は金属系の材料であり、
前記硬質層がhcp構造及びbcc構造の一方を有し、
前記軟質層がhcp構造及びbcc構造の他方を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[14]上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は金属系の材料であり、
前記硬質層がhcp構造及びfcc構造の一方を有し、
前記軟質層がhcp構造及びfcc構造の他方を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[15]上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は金属系の材料であり、
前記硬質層がfcc構造及びbcc構造の一方を有し、
前記軟質層がfcc構造及びbcc構造の他方を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[16]上記[14]に記載の硬質・軟質積層構造材料はMg合金であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[17]上記[16]において、
前記Mg合金は、Mg-Zn-Y合金、Mg-Zn-Gd合金、Mg-Zn-(Y-Gd)合金、Mg-Zn-Y-X-Z合金、Mg-Zn-Gd-X-Z合金、及びMg-Zn-Y-Gd-X-Z合金のいずれかであり、
前記Xは、Al、Ca及びLiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
前記Zは、希土類元素、Mn、Si、Zr、Ti、Hf、Nb、Sn、Ag、Sr、Sc、Sb、B、C及びBeからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
前記Znの含有量をa原子%、前記Yの含有量をb原子%、前記Gdの含有量をb原子%、前記Y及びGdの合計含有量をb原子%、前記Xの含有量をc原子%、前記Zの含有量をd原子%とすると、下記(式1)~(式6)を満たすことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
(式1)0.1≦a≦3.0
(式2)0.1≦b≦3.0
(式3)c≦3.0
(式4)d≦1.0
(式5)b≦a+2
(式6)b≧a-1
なお、前記希土類元素は全ての希土類元素を含む意味である。
[18]金属を鋳造する工程を有し、
前記鋳造後の金属は、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有し、
前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
前記軟質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[19]上記[18]において、
前記鋳造時の冷却速度は10万℃/秒未満であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[20]上記[19]において、
前記鋳造工程の後に、前記鋳造後の金属を融点(絶対温度)の50%以上の温度に加熱する工程を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[21]上記[19]または[20]において、
前記鋳造時の冷却速度は100℃/秒以上であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[22]上記[18]乃至[21]のいずれか一項において、
前記金属は、Mg-Zn-Y合金、Mg-Zn-Gd合金、Mg-Zn-(Y-Gd)合金、Mg-Zn-Y-X-Z合金、Mg-Zn-Gd-X-Z合金、及びMg-Zn-Y-Gd-X-Z合金のいずれかであり、
前記Xは、Al、Ca及びLiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
前記Zは、希土類元素、Mn、Si、Zr、Ti、Hf、Nb、Sn、Ag、Sr、Sc、Sb、B、C及びBeからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
前記Znの含有量をa原子%、前記Yの含有量をb原子%、前記Gdの含有量をb原子%、前記Y及びGdの合計含有量をb原子%、前記Xの含有量をc原子%、前記Zの含有量をd原子%とすると、下記(式1)~(式6)を満たすことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
(式1)0.1≦a≦3.0
(式2)0.1≦b≦3.0
(式3)c≦3.0
(式4)d≦1.0
(式5)b≦a+2
(式6)b≧a-1
[23]上記[18]乃至[22]のいずれか一項において、
前記硬質層の相互間に前記軟質層が隙間なく充填されており、
前記材料を塑性変形させる際の前記軟質層のすべり変形もしくはせん断変形が、前記軟質層の層面に限定されていることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[24]上記[18]乃至[23]のいずれか一項において、
前記マグネシウム合金鋳造物を作る際の冷却速度は、1000K/秒以下(好ましくは100K/秒以下)であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[25]上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は高分子系の材料であり、
前記硬質層が結晶層であり、前記軟質層が非晶層であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[26]上記[25]において、
前記高分子系の材料は、結晶性高分子、第1の結晶性高分子に第2の結晶性高分子を混ぜたブレンド物、結晶性高分子にポリマーを混ぜたブレンド物、第1のポリマーに第2のポリマーを混ぜたブレンド物のいずれかであることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[27]上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は高分子系の材料であり、
前記硬質層が非晶層であり、前記軟質層が非晶層であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[28]上記[27]において、
前記高分子系の材料は、ポリマー、第1のポリマーに第2のポリマーを混ぜたブレンド物、弾性率の高い成分高分子と弾性率の低い成分高分子とが相分離したポリマーブレンド物のいずれかであることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[29]上記[25]乃至[28]のいずれか一項において、
前記高分子系の材料の構成成分になる高分子は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン1、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエチレンオキサイド、ポリ乳酸、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルとその共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、ポリエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレンーポリブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルーポリスチレン共重合体、及び、ポリアクリロニトリルーポリブタジエン共重合体の少なくとも一つを含むことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
[30]結晶性高分子、第1の結晶性高分子に第2の結晶性高分子を混ぜたブレンド物、結晶性高分子にポリマーを混ぜたブレンド物、第1のポリマーに第2のポリマーを混ぜたブレンド物、ポリマー、弾性率の高い成分高分子と弾性率の低い成分高分子とが相分離したポリマーブレンド物のいずれかの高分子系の材料を準備する工程(a)と、
前記高分子系の材料に室温より高い温度で塑性加工を行う工程(b)と、
を具備し、
前記工程(b)の後の材料は、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有し、
前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
前記軟質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[31]上記[30]において、
前記工程(b)は、前記高分子系の材料に200%以上のひずみを加える熱延伸を行う工程であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[32]上記[30]または[31]において、
前記硬質層は、配向した分子鎖を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[33]上記[30]乃至[32]のいずれか一項において、
前記工程(b)の後に、室温で前記材料に塑性加工を行う工程(c)を含むことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[34]上記[33]において、
前記工程(c)は、室温で前記材料に10%以上のひずみを加える延伸を行う工程であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[35]上記[33]または[34]において、
前記工程(c)の後の前記硬質層及び前記軟質層にキンクが形成されていることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
[36]上記[30]乃至[35]のいずれか一項において、
前記硬質層及び前記軟質層それぞれの長軸方向は、前記工程(b)における延伸方向に交差する方向であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
本発明の一態様によれば元の材料より強度が高くされた硬質・軟質積層構造材料またはその製造方法を提供することができる。
本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法を説明するための図である。 本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法を説明するための図である。 Mg93.5Ni3.5合金からなる硬質・軟質積層構造材料のTEM写真である。 Mg93.5Ni3.5合金からなる硬質・軟質積層構造材料の引張試験の結果を示す図である。 本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料がマグネシウム合金である場合の一例を模式的に示す断面図である。 実施例(■)、比較例1(◆)及び比較例2(●)それぞれのMg97ZnGd合金展伸材の押出比と機械的特性(0.2%耐力)の関係を示す図である。 (A),(B)は、実施例による高分子系の硬質・軟質積層構造材料を説明するための図である。
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
[第1の実施形態]
マグネシウム合金において、秩序・無秩序に関係なく硬質層と軟質層がサブミクロンオーダーで積層した硬質・軟質積層構造がキンク形成により強くなることを見出した。
このサブミクロンオーダーで無秩序な硬質・軟質積層構造のキンク強化は、希土類元素を含む系マグネシウム合金のみならず、希土類元素を含まない系マグネシウム合金あるいはチタン合金やアルミニウム合金などの他の金属系材料、セラミックス系材料、高分子系材料及び後部新材料にも適用することが可能である。
まず、KUMADAIマグネシウム合金について説明する。
KUMADAIマグネシウム合金の強化の源は、長周期積層構造(図1に示すLPSO構造)とそのキンク形成である。この長周期積層構造は、図1に示す4原子面からなるクラスター配列層(硬質層)と1~4原子面からなるhcpマグネシウム層(軟質層)が相互に秩序積層した構造、すなわち、硬質層と軟質層が密に秩序積層した構造を持っている。そして、このような積層構造を持つことが原因で、塑性加工によりキンクが形成されて強化される。このようにKUMADAIマグネシウム合金は、硬質層と軟質層が交互に秩序積層された結晶構造を有する材料である。
これに対し、本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料は、硬質層と軟質層が交互に無秩序に複数積層された構造を有する材料である。この材料は、例えばマグネシウム合金、チタン合金、アルミニウム合金などの金属系材料、セラミックス系材料及び高分子系材料で作製することができる。「無秩序に積層された」とは、秩序積層された構造を除くことを意味する。
前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、前記軟質層の厚さは1μm以下であるとよい。軟質層の厚さが硬質層の厚さより厚いため、4原子層の硬質層と1~4原子層の軟質層が周期的・規則的に積層するLPSO構造は含まれない。
また、上記の硬質・軟質積層構造材料は、キンク変形する物質であるとよい。また、前記硬質層及び前記軟質層にキンクが形成されているとよい。また、上記の硬質・軟質積層構造材料は、キンクが形成されていない硬質・軟質積層構造材料より強度が高くなる。
「キンク」とは、強加工された硬質層が折れ曲がり(bent)を生じることであり、硬質層に塑性変形を加えることで硬質層内に導入される屈曲・湾曲した部分である。
また、前記硬質層の相互間に前記軟質層が隙間なく充填されている。詳細には、材料を強加工することで硬質層にキンクを形成した時に硬質層が軟質層から剥離する層間剥離が生じない。そのため、硬質層と硬質層の間に空隙が形成されず、キンクが形成された硬質層の相互間に軟質層が隙間なく充填される。つまり、硬質層は軟質層から剥離されていない。
また、前記材料を塑性変形させる際の前記軟質層のすべり変形もしくはせん断変形が、前記軟質層の層面に限定されているとよい。別言すれば、前記材料を塑性変形させる際の結晶の容易すべり系が、前記軟質層の層面に限定されているとよい。
また、前記硬質層の厚さが100nm以下であることが好ましい。また、前記硬質層の厚さが前記軟質層の厚さの1/2以下であることが好ましい。なお、軟質層の厚さは、硬質層の層間距離(硬質層と硬質層との間の距離)である。
また、本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料は、硬質層が、薄い軟質層と薄い硬質層が交互に積層した板状層で構成されているとよい。ここでいう硬質層の一例としては、マグネシウム合金の場合、LPSO相である。その場合、薄い軟質層は1~4原子面からなるhcpマグネシウム層であり、薄い硬質層は4原子面からなるクラスター配列層(硬質層)である。
また、前記薄い軟質層及び前記薄い硬質層それぞれの厚さは10nm以下であるとよい。また、この硬質・軟質積層構造材料が金属系の材料である場合、前記硬質層の結晶構造が、前記軟質層の結晶構造と異なることが好ましい。
また、上記の硬質・軟質積層構造材料が金属系の材料である場合、前記硬質層と前記軟質層の結晶構造が同じであり、前記硬質層の溶質元素濃度が、前記軟質層の溶質元素濃度と異なることが好ましい。これにより、結晶構造が同じで、濃度変調が無い金属系の材料は除外される。なお、濃度変調とは、溶質元素濃度が数原子層毎に周期的に変化する事をいう。
また、上記の硬質・軟質積層構造材料が金属系の材料である場合、前記硬質層がhcp構造及びbcc構造の一方を有し、前記軟質層がhcp構造及びbcc構造の他方を有するとよい。
また、上記の硬質・軟質積層構造材料が金属系の材料である場合、前記硬質層がhcp構造及びfcc構造の一方を有し、前記軟質層がhcp構造及びfcc構造の他方を有するとよい。
また、上記の硬質・軟質積層構造材料が金属系の材料である場合、前記硬質層がfcc構造及びbcc構造の一方を有し、前記軟質層がfcc構造及びbcc構造の他方を有するとよい。
上記の硬質・軟質積層構造材料はMg合金であってもよい。このMg合金は、Mg-Zn-Y合金、Mg-Zn-Gd合金、Mg-Zn-(Y-Gd)合金、Mg-Zn-Y-X-Z合金、Mg-Zn-Gd-X-Z合金、及びMg-Zn-Y-Gd-X-Z合金のいずれかであるとよい。前記Xは、Al、Ca及びLiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、前記Zは、希土類元素、Mn、Si、Zr、Ti、Hf、Nb、Sn、Ag、Sr、Sc、Sb、B、C及びBeからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。前記Znの含有量をa原子%、前記Yの含有量をb原子%、前記Gdの含有量をb原子%、前記Y及びGdの合計含有量をb原子%、前記Xの含有量をc原子%、前記Zの含有量をd原子%とすると、下記(式1)~(式6)を満たすとよい。
(式1)0.1≦a≦3.0
(式2)0.1≦b≦3.0
(式3)c≦3.0
(式4)d≦1.0
(式5)b≦a+2
(式6)b≧a-1
なお、前記希土類元素は全ての希土類元素を含む意味である。
また、上記のMg合金は、その合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
本実施形態による硬質・軟質積層構造材料では、元の材料より強度を高くすることができる。なお、元の材料とは、組成が同一の材料であって従来から一般的に使用されている材料を意味する。
上記の硬質・軟質積層構造材料がマグネシウム合金である場合は、図1に示す単一のクラスター配列層(4原子面からなる硬質層)が軟質のhcpマグネシウム母相中にまばらに無秩序に析出した硬質・軟質積層構造にキンクが形成されることで、マグネシウム合金が強化される。このような硬質層であるクラスター配列層がまばらに積層した構造であると、KUMADAIマグネシウム合金のようなLPSO構造に比べて、マグネシウムへの添加元素量を低減できるので、合金の軽量化と低コスト化を図ることができる。
つまり、KUMADAIマグネシウム合金と同一の組成のマグネシウム合金に、単一のクラスター配列層(4原子面からなる硬質層)を軟質のhcpマグネシウム母相中にまばらに無秩序に析出させた硬質・軟質積層構造においてキンクを形成すると、同一の組成のKUMADAIマグネシウム合金より強度を高くすることができる(これについては図2を用いて後述する)。そのため、KUMADAIマグネシウム合金より添加元素量を低減したマグネシウム合金に、単一のクラスター配列層を軟質のhcpマグネシウム母相中にまばらに無秩序に析出させた硬質・軟質積層構造においてキンクを形成しても、添加元素量が多いKUMADAIマグネシウム合金とほぼ同じ強度を発現させることが可能となる。従って、合金の軽量化と低コスト化を図ることができる。
図5は、上記の硬質・軟質積層構造材料がマグネシウム合金である場合の一例を模式的に示す断面図である。図5に示すマグネシウム合金は、クラスター配列層SFが軟質のα-Mg中にまばらに無秩序に積層した硬質・軟質積層構造にキンクが形成されたものである。
[第2の実施形態]
本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法について説明する。この硬質・軟質積層構造材料は金属系材料である。
まず、金属を準備する。この金属は、Mg-Zn-Y合金、Mg-Zn-Gd合金、Mg-Zn-(Y-Gd)合金、Mg-Zn-Y-X-Z合金、Mg-Zn-Gd-X-Z合金、及びMg-Zn-Y-Gd-X-Z合金のいずれかである。前記Xは、Al、Ca及びLiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、前記Zは、希土類元素、Mn、Si、Zr、Ti、Hf、Nb、Sn、Ag、Sr、Sc、Sb、B、C及びBeからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。前記Znの含有量をa原子%、前記Yの含有量をb原子%、前記Gdの含有量をb原子%、前記Y及びGdの合計含有量をb原子%、前記Xの含有量をc原子%、前記Zの含有量をd原子%とすると、下記(式1)~(式6)を満たす。
(式1)0.1≦a≦3.0
(式2)0.1≦b≦3.0
(式3)c≦3.0
(式4)d≦1.0
(式5)b≦a+2
(式6)b≧a-1
次に、前記金属を鋳造する。この鋳造後の金属は、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有し、前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、前記軟質層の厚さは1μm以下である。
上記の鋳造後の金属が上記の構造を有さない場合でも、上記の鋳造後に、この金属を融点(絶対温度)の50%以上の温度に加熱することで、上記の構造を有する金属が形成される。硬質層はクラスター配列層であり、軟質層はhcpマグネシウム層である。
上記の鋳造時の冷却速度は、10万℃/秒未満であるとよく、好ましくは100℃/秒以上10万℃/秒未満である。また、上記の鋳造時の冷却速度は、1000K/秒以下であってもよい。
上記の製造方法で製造された金属は、第1の実施形態で説明した特徴を有する。
[第3の実施形態]
図1及び図2は、本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法を説明するための図である。
まず、Mg97ZnGd合金材料を準備する。本実施形態では、Mg97ZnGd合金を用いるが、この合金に限定されるものではなく、以下の[1]~[11]のいずれかの組成のマグネシウム合金を用いることも可能である。これらのマグネシウム合金はKUMADAIマグネシウム合金の「Type-II」と呼ばれるものである。
[1]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であり、aとbは下記の(式41)~(式43)または(式44)~(式46)を満たすとよい。
(式41)0.1≦a≦5.0
(式42)0.25≦b≦5.0
(式43)0.5a-0.5≦b
(式44)0.1≦a≦3.0
(式45)0.25≦b≦5.0
(式46)2a-3≦b
尚、Gdのさらに好ましい上限含有量は、経済性及び比重の増加を考慮すると、3原子%未満である。
[2]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であり、aとbは下記の(式41')、(式42')及び(式43)または(式44')、(式45')及び(式46)を満たすとよい。
(式41')0.2≦a≦5.0
(式42')0.5≦b≦5.0
(式43)0.5a-0.5≦b
(式44')0.2≦a≦3.0
(式45')0.5≦b≦5.0
(式46)2a-3≦b
[3]上記の[1]または[2]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式47)及び(式48)を満たすとよい。
(式47)0≦c≦3.0
(式48)0.25(0.5)≦b+c≦6.0
[4]上記の[1]または[2]に記載のマグネシウム合金は、さらにLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記(式49)及び(式50)を満たすとよい。
(式49)0≦c≦2.0
(式50)0.25(0.5)≦b+c≦6.0
[5]上記の[1]または[2]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記(式51)~(式53)を満たすとよい。
(式51)0≦c≦3.0
(式52)0≦d≦2.0
(式53)0.25(0.5)≦b+c+d≦6.0
[6]上記の[1]乃至[5]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにDy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超1.5原子%以下含有するとよい。
[7]上記の[1]乃至[5]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにYを0原子%超1.0原子%以下含有するとよい。
[8]上記の[1]乃至[7]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにGd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で3原子%未満含有するとよい。
[9]上記の[1]乃至[8]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有するとよい。
[10]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、GdおよびTbの少なくとも一つの元素を合計でb原子%含有し、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でc原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbとcは下記の(式81)~(式84)を満たすとよい。
(式81)0.2≦a≦5.0
(式82)0.2≦b≦5.0
(式83)2a-3≦b
(式84)0.05b≦c<0.75b
[11]マグネシウム合金ワイヤは、Alをa原子%含有し、Gdをb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbが下記の(式91)および(式92)を満たすとよい。
(式91)0.01≦a≦2.0
(式92)0.2≦b≦5.0
次に、Mg97ZnGd合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であるとよく、100K/秒以下であってもよい。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。このマグネシウム合金鋳造物はα-MgとMgGdを有するが、クラスター配列層は形成されていない。そのため、図2に示すように、マグネシウム合金鋳造物の降伏強度(0.2%耐力)は290MPa程度である。
次に、マグネシウム合金鋳造物に溶体化処理を施す。次いで、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は、図1に示すT-T-T Diagramの「S.F.」の範囲とするとよい。具体的には、熱処理条件は、温度が300℃以上(好ましくは350℃以上)で融点より20℃低い温度以下、処理時間が0.1時間以上100時間以下とするとよい。この熱処理によってマグネシウム合金にクラスター配列層(硬質層)とhcpマグネシウム層(軟質層)が交互に複数積層された結晶構造が形成される。軟質層の厚さは硬質層の厚さより厚く、軟質層の厚さは1μm以下であるとよい。
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に300℃以上450℃以下の温度で塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal-channel-angular-extrusion)加工法、圧延、引抜加工、鍛造、プレス、転造、曲げ、FSW(friction stir welding;摩擦撹拌溶接)加工、これらの繰り返し加工などを用いる。
上記の塑性加工によって硬質層及び軟質層にキンクが形成される。つまり、塑性加工を行った塑性加工物は、キンク変形を有する。
上記塑性加工物は、硬質層であるクラスター配列層と軟質層であるhcpマグネシウム層が無秩序に積層され、クラスター配列層がキンク変形を有する。別言すれば、硬質のクラスター配列層が軟質のhcpマグネシウム母相中にまばらに無秩序に析出した硬質・軟質積層構造にキンクが形成される。これにより、図2に示すようにマグネシウム合金(塑性加工物)の降伏強度を380MPa程度と高くすることができる。なお、この塑性加工物が硬質層と軟質層が無秩序に積層された構造を有していれば、この塑性加工物に長周期積層構造相(LPSO)が形成されていてもよい。また、図2に示す380MPaの降伏強度が得られた塑性加工物は、623Kの温度で押出比10の押出加工が施されたものである。
また、図2に示すように、上記の塑性加工物と同一組成のKUMADAIマグネシウム合金(長周期積層構造とキンク形成)の降伏強度は350MPa程度である。このKUMADAIマグネシウム合金の製造方法が上記の塑性加工物と異なる点は、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す際の熱処理条件だけであり、この熱処理条件は図1に示すT-T-T Diagramの「14H-LPSO phase」の範囲とする条件である。
従って、上記の塑性加工物はKUMADAIマグネシウム合金より強度を高くすることができる。
図6は、実施例(■)、比較例1(◆)及び比較例2(●)それぞれのMg97ZnGd合金展伸材の押出比と機械的特性(0.2%耐力)の関係を示している。
比較例1(◆)は、Mg97ZnGd合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。次いで、この鋳造物に350℃の温度で押出加工を行った。その際の押出比を6、10、15とした。次に、押出比6、10、15それぞれの押出加工物に引張試験を行い、その結果を図6に示した。
比較例2(●)は、Mg97ZnGd合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。次いで、この鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は、温度が500℃で、処理時間が10時間である。この熱処理によって長周期積層構造相が形成され、KUMADAIマグネシウム合金が作製される。その後、この合金に350℃の温度で押出加工を行った。その際の押出比を6、10、15とした。次に、押出比6、10、15それぞれの押出加工物に引張試験を行い、その結果を図6に示した。
実施例(■)は、Mg97ZnGd合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。次いで、この鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は、温度が400℃で、処理時間が10時間である。この熱処理によって硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有する硬質・軟質積層構造材料が形成される。その後、この合金に350℃の温度で押出加工を行った。その際の押出比を6、10、15とした。次に、押出比6、10、15それぞれの押出加工物に引張試験を行い、その結果を図6に示した。
図6に示すように、実施例(■)の硬質・軟質積層構造材料からなる合金は、比較例2(●)のKUMADAIマグネシウム合金に比べて優れた機械的特性(0.2%耐力)を有することが確認された。
[第4の実施形態]
本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法について説明する。
まず、Mg93.5Ni3.5合金材料を準備する。本実施形態では、Mg93.5Ni3.5合金を用いるが、この合金に限定されるものではなく、以下の[12]~[18]のいずれかの組成のマグネシウム合金を用いることも可能である。これらのマグネシウム合金はKUMADAIマグネシウム合金の「Type-I」と呼ばれるものである。
[12]マグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbは下記の(式61)~(式63)を満たすとよい。
(式61)0.2≦a≦10
(式62)0.2≦b≦10
(式63)2/3a-2/3<b
[13]上記の[12]に記載のマグネシウム合金は、さらにZnをc原子%含有し、前記aとcは下記の(式64)を満たすとよい。
(式64)0.2<a+c≦15
[14]上記の[13]において、前記aとcはさらに下記の(式65)を満たすとよい。
(式65)c/a≦1/2
[15]上記の[12]乃至[14]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、前記bとdは下記の(式66)を満たすとよい。
(式66)0.2<b+d≦15
[16]上記の[15]において、前記bとdはさらに下記の(式67)を満たすとよい。
(式67)d/b≦1/2
[17]上記の[12]乃至[16]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにZr、Ti、Mn、Al、Ag、Sc、Sr、Ca、Si、Hf、Nb、B、C、Sn、Au、Ba、Ge、Bi、Ga、In、Ir、Li、Pd、Sb、V、Fe、Cr及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でe原子%含有し、eは下記の(式68)を満たすとよい。
(式68)0<e≦2.5
[18]上記の[17]において、前記eとaとbとdはさらに下記の(式69)を満たすとよい。
(式69)e/(a+b+c+d)≦1/2
次に、Mg93.5Ni3.5合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は0.05K/秒以上1000(10)K/秒以下であり、より好ましくは0.5K/秒以上1000(10)K/秒以下であり、さらに好ましくは0.5K/秒以上100K/秒以下である。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。このマグネシウム合金鋳造物にはクラスター配列層が形成されている。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は、温度が300℃以上(好ましくは350℃以上)で融点より20℃低い温度以下、処理時間が0.1時間以上100時間以下とするとよい。この熱処理によってマグネシウム合金にクラスター配列層(硬質層)とhcpマグネシウム層(軟質層)が交互に複数積層された結晶構造が形成される。軟質層の厚さは硬質層の厚さより厚く、軟質層の厚さは1μm以下であるとよい。
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の具体例は以下のとおりである。
押出しによる塑性加工を行う場合は、押出し温度を200℃以上500℃以下とし、押出しによる断面減少率を5%以上とすることが好ましい。
ECAE加工法は、試料に均一なひずみを導入するためにパス毎に試料長手方向を90°ずつ回転させる方法である。具体的には、断面形状がL字状の成形孔を形成した成形用ダイの前記成形孔に、成形用材料であるマグネシウム合金鋳造物を強制的に進入させて、特にL状成形孔の90°に曲げられた部分で前記マグネシウム合金鋳造物に応力を加えて強度及び靭性が優れた成形体を得る方法である。ECAEのパス回数としては1~8パスが好ましい。より好ましくは3~5パスである。ECAEの加工時の温度は200℃以上 500℃以下が好ましい。
圧延による塑性加工を行う場合は、圧延温度を200℃以上500℃以下とし、圧下率を5%以上とすることが好ましい。
引抜加工による塑性加工を行う場合は、引抜加工を行う際の温度が200℃以上500℃以下、前記引抜加工の断面減少率が5%以上であることが好ましい。
鍛造による塑性加工を行う場合は、鍛造加工を行う際の温度が200℃以上500℃以下、前記鍛造加工の加工率が5%以上であることが好ましい。
また、上記の塑性加工の繰り返し加工、FSW(摩擦攪拌溶接)などの塑性変形を伴う加工を用いてもよい。
上記の塑性加工によって硬質層及び軟質層にキンクが形成される。つまり、塑性加工を行った塑性加工物は、キンク変形を有する。
上記塑性加工物は、硬質層であるクラスター配列層と軟質層であるhcpマグネシウム層が無秩序に積層され、クラスター配列層がキンク帯を有する。別言すれば、硬質のクラスター配列層が軟質のhcpマグネシウム母相中にまばらに無秩序に析出した硬質・軟質積層構造にキンクが形成される(図3参照)。これにより、図4に示すようにマグネシウム合金(塑性加工物)の降伏強度(σ0.2)を512MPaと高くすることができ、伸び(δ)を8.9%とすることができる。なお、この塑性加工物が硬質層と軟質層が無秩序に積層された構造を有していれば、この塑性加工物に長周期積層構造相(LPSO)が形成されていてもよい。また、図3に示すTEM写真の組織及び図4に示す512MPaの降伏強度が得られた塑性加工物は、673Kの温度で押出比10の押出加工が施されたものである。
また、図4に示す試験が行われた塑性加工物と同一組成のKUMADAIマグネシウム合金(長周期積層構造とキンク形成)の降伏強度は、512MPaよりかなり低い。このKUMADAIマグネシウム合金の製造方法が上記の塑性加工物と異なる点は、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す際の熱処理条件だけである。
[第5の実施形態]
本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法について説明する。
まず、以下の[19]~[40]のいずれかの組成のマグネシウム合金を準備する。これらのマグネシウム合金はKUMADAIマグネシウム合金の「Type-I」と呼ばれるものである。
[19]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbは下記の(式11)~(式13)または(式14)~(式16)を満たすとよい。
(式11)0.25≦a<5.0
(式12)0.5<b<5.0
(式13)2/3a-5/6≦b
(式14)0.25≦a≦5.0
(式15)0.5≦b≦5.0
(式16)0.5a≦b
[20]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbは下記の(式11')、(式12)及び(式13)を満たすとよい。
(式11')0.5≦a<5.0
(式12)0.5<b<5.0
(式13)2/3a-5/6≦b
[21]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式17)及び(式18)を満たすとよい。
(式17)0≦c≦3.0
(式18)0.1(0.2)≦b+c≦6.0
[22]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにLa、Ce、Pr、Eu、Mm及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式19)及び(式20)を満たすとよい。
(式19)0≦c<2.0
(式20)0.2≦b+c≦6.0
[23]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにLa、Ce、Pr、Eu、Mm及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式20)及び(式21)を満たすとよい。
(式20)0.2≦b+c≦6.0
(式21)c/b≦1.5
[24]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにLa、Ce、Pr、Eu、Mm及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式22)及び(式23)を満たすとよい。
(式22)0≦c≦3.0
(式23)0.1≦b+c≦6.0
[25]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu、Mm及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記の(式14)~(式16)を満たすとよい。
(式14)0≦c≦3.0
(式15)0≦d<2.0
(式16)0.2≦b+c+d≦6.0
[26]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu、Mm及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記の(式16)及び(式17)を満たすとよい。
(式16)0.2≦b+c+d≦6.0
(式17)d/b≦1.5
[27]上記の[19]または[20]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu、Mm及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記の(式18)~(式20)を満たすとよい。
(式18)0≦c≦3.0
(式19)0≦d≦3.0
(式20)0.1≦b+c+d≦6.0
[28]上記の[19]乃至[27]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B、C、Sn、Au、Ba、Ge、Bi、Ga、In、Ir、Li、Pd、Sb及びVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有するとよい。
[29]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbは下記の(式21)~(式23)または(式24)~(式26)を満たすとよい。
(式21)0.1≦a≦5.0
(式22)0.1≦b≦5.0
(式23)0.5a-0.5≦b
(式24)0.1≦a≦3.0
(式25)0.1≦b≦5.0
(式26)2a-3≦b
[30]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbは下記の(式21')、(式22')及び(式23)または(式24')、(式25')及び(式26)を満たすとよい。
(式21')0.2≦a≦5.0
(式22')0.2≦b≦5.0
(式23)0.5a-0.5≦b
(式24')0.2≦a≦3.0
(式25')0.2≦b≦5.0
(式26)2a-3≦b
[31]上記の[29]または[30]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式27)及び(式28)を満たすとよい。
(式27)0≦c≦3.0
(式28)0.1(0.2)≦b+c≦6.0
[32]上記の[29]または[30]に記載のマグネシウム合金は、さらにLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記の(式29)及び(式30)を満たすとよい。
(式29)0≦c≦3.0
(式30)0.1(0.2)≦b+c≦6.0
[33]上記の[29]または[30]に記載のマグネシウム合金は、さらにYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記の(式31)~(式33)を満たすとよい。
(式31)0≦c≦3.0
(式32)0≦d≦3.0
(式33)0.1(0.2)≦b+c+d≦6.0
[34]上記の[29]乃至[33]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにY及びGdの少なくとも一方を合計でy原子%含有し、yは下記の(式34)及び(式35)を満たすとよい。
(式34)0≦y≦4.9
(式35)0.1≦b+y≦5.0
[35]上記の[29]乃至[34]のいずれか一に記載のマグネシウム合金は、さらにAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B、C、Sn、Au、Ba、Ge、Bi、Ga、In、Ir、Li、Pd、Sb及びVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有するとよい。
[36]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Y、Dy、HoおよびErの少なくとも一つの元素を合計でb原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でc原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbとcは下記の(式71)~(式74)を満たすとよい。
(式71)0.2≦a≦5.0
(式72)0.2≦b≦5.0
(式73)2a-3≦b
(式74)0.05b≦c<0.75b
[37]上記の[36]に記載のマグネシウム合金は、さらにAlをd原子%含有し、下記の(式75)を満たすとよい。
(式75)0.05b≦d<0.75b
[38]上記の[36]または[37]に記載のマグネシウム合金は、前記Y、Dy、HoおよびErの少なくとも二つの元素を合計でb原子%含有するとよい。
[39]マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を合計でb原子%含有し、Alをc原子%含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなる合金であって、aとbとcは下記の(式101)~(式104)を満たすとよい。
(式101)0.2≦a≦5.0
(式102)0.2≦b≦5.0
(式103)2a-3≦b
(式104)0.05b≦c<0.75b
[40]上記の[39]に記載のマグネシウム合金は、さらにLi、Sn、Di、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Mm、Yb、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B、C、Ga及びGeからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を合計でd原子%含有し、dは下記の(式105)を満たすとよい。
(式105)0≦d≦b/2
次に、上記のいずれかのマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり、より好ましくは100K/秒以下である。鋳造プロセスとしては、種々のプロセスを用いることが可能であり、例えば、高圧鋳造、ロールキャスト、傾斜板鋳造、連続鋳造、チクソモールディング、ダイカストなどを用いることが可能である。また、マグネシウム合金鋳造物を所定形状に切り出したものを用いてもよい。このマグネシウム合金鋳造物にはクラスター配列層が形成されている。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は、温度が300℃以上(好ましくは350℃以上)で融点より20℃低い温度以下、処理時間が0.1時間以上100時間以下とするとよい。この熱処理によってマグネシウム合金にクラスター配列層(硬質層)とhcpマグネシウム層(軟質層)が交互に複数積層された結晶構造が形成される。軟質層の厚さは硬質層の厚さより厚く、軟質層の厚さは1μm以下であるとよい。
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal-channel-angular-extrusion)加工法、圧延、引抜加工、鍛造、プレス、転造、曲げ、FSW(friction stir welding;摩擦撹拌溶接)加工、これらの繰り返し加工などを用いる。
上記の塑性加工によって硬質層及び軟質層にキンクが形成される。つまり、塑性加工を行った塑性加工物は、キンク変形を有する。
上記塑性加工物は、硬質層であるクラスター配列層と軟質層であるhcpマグネシウム層が無秩序に積層され、クラスター配列層がキンク帯を有する。別言すれば、硬質のクラスター配列層が軟質のhcpマグネシウム母相中にまばらに無秩序に析出した硬質・軟質積層構造にキンクが形成される。これにより、上記の塑性加工物の強度を高くすることができる。なお、この塑性加工物が硬質層と軟質層が無秩序に積層された構造を有していれば、この塑性加工物に長周期積層構造相(LPSO)が形成されていてもよい。
[第6の実施形態]
本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法について説明する。
まず、結晶性高分子、第1の結晶性高分子に第2の結晶性高分子を混ぜたブレンド物、結晶性高分子にポリマーを混ぜたブレンド物、第1のポリマーに第2のポリマーを混ぜたブレンド物のいずれかの高分子系の材料を準備する。これらの高分子系の材料の構成成分となる高分子として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン1、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエチレンオキサイド、ポリ乳酸、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルとその共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、ポリエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレンーポリブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルーポリスチレン共重合体、及び、ポリアクリロニトリルーポリブタジエン共重合体の少なくとも一つを用いることができる。
次に、上記の高分子系の材料に室温より高い温度で塑性加工を行う。例えば、上記の高分子系の材料に200%以上(好ましくは300%以上、より好ましくは400%以上、さらに好ましくは500%以上)のひずみを加える熱延伸を行う。なお、熱延伸とは、室温より高く、高分子系の材料の融点より低い温度の範囲で延伸を行うことを意味する。
上記の熱延伸を行った材料は、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有し、硬質層は結晶層であり、軟質層は非晶層である。そして、軟質層の厚さは硬質層の厚さより厚く、軟質層の厚さが1μm以下となる。また、硬質層は、配向した分子鎖を有するとよい。また、この材料は、キンク変形する物質である。また、硬質層及び軟質層それぞれの長軸方向は、熱延伸方向に交差する方向(例えば熱延伸方向に対して垂直方向)であるとよい。
この後、この材料に室温で塑性加工を行う。例えば、この材料に室温で10%以上(好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上)の延伸を行う。この塑性加工中に硬質層及び軟質層にキンクが形成されるので、降伏後も応力(強度)の増加がへたることなく、金属の加工硬化で見られるような強度の増加が発現され、高強度と延性の両者が示される。そして、延伸後の材料における硬質層及び軟質層にキンクが形成されている。このキンクは、材料を加工硬化し、高強度化する。
つまり、低温でキンク形成することで、材料が加工硬化を示すことから、金属と同じように冷間加工により高強度化できる。そのため、この材料は、自動車の車体材料など金属の冷間加工で作られている材料用途に適用できる。
図7(A),(B)は、実施例による高分子系の硬質・軟質積層構造材料を説明するための図である。
試料として、50/50の組成のポリフッ化ビニリデン(PVDF)/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のブレンド物を用いた。なお、PVDFは結晶性、PMMAは非晶性の高分子である。
PVDF/PMMAブレンド試料をPVDFの融点以上で溶融した状態で熱プレスして、その後、急冷することで成分高分子のPVDFが結晶化したフィルム試料を得た(図7(B)の未処理試料)。
次に、PVDFの融点以下の100℃(PVDFの融点は約160℃)で、一軸の熱延伸(塑性加工)することでPVDF結晶層である硬質層とPVDF/PMMA非晶層である軟質層が交互に複数積層された層状構造を有する硬質・軟質積層構造材料が形成された。この熱延伸により300%以上のひずみを加えた。この熱延伸を行ったときのひずみ(%)と応力(MPa)の関係を図7(A)に示す。この層状構造における層の長軸方向は、延伸方向に対して垂直方向を向いている。これは、小角X線散乱測定において、子午線方向にブロードなアーク状の散乱像が観察されていることから確認できる。図7(A)に示す小角X線散乱像は、層状構造による散乱像を示している。また、PVDF結晶(硬質層)は延伸方向(SD方向)に分子鎖が配向している。
なお、本実施例では、一軸の熱延伸による塑性加工を行うことで硬質・軟質積層構造材料を作製したが、一軸の熱延伸だけではなく、汎用の射出成型機などによる塑性加工でも硬質・軟質積層構造材料を作製することが可能である。
この後、上記の未処理試料、ひずみ300%まで熱延伸した試料、限界に近いひずみ500%まで熱延伸した試料それぞれに対して室温での延伸(引張試験)を行った。その結果のひずみ(%)と応力(MPa)の関係を図7(B)に示す。
比較例としての未処理試料は、一般の高分子と同じように、ひずみが増加すると応力のへたりが生じて降伏後の強度の増加がなかった。
それに対し、ひずみ300%まで熱延伸した試料は、一般の高分子の応力―ひずみ挙動とは異なり、未処理試料に比べて4倍程度の破断強度を示した。
ひずみ500%まで熱延伸して得られた試料は、一般の高分子の応力―ひずみ挙動とは全く異なり、金属の加工硬化で見られるような応力の増加が発現して、未処理試料に比べて10倍の破断強度を示すことが見出された。
ひずみ500%の熱延伸の破断試料のSEM観察では明瞭なキンクの形成が見られたことから、500%熱延伸試料における劇的な破断応力の増加と特異な応力―ひずみ挙動は、室温での延伸中のキンク形成によるものと考えられる。
また、ひずみ300%の熱延伸の破断試料のSEM観察では明瞭なキンクの形成は見られなかったが、強度の増加からするとわずかにキンクが形成されていることも考えられる。
また、キンク強化された500%熱延伸試料では、延伸方向に裂けにくいこと、延伸方向に対して垂直方向への強度低下が抑制されることが分かった。このことから、キンク強化された高分子系の硬質・軟質積層構造材料は3次元的な構造材料に応用できることが期待される。
上述した材料の強化方法がポリプロピレン系に応用できれば成形加工法を工夫することで車や電化製品のボディなどへの応用が期待される。
[第7の実施形態]
本発明の一態様に係る硬質・軟質積層構造材料の製造方法について説明する。
まず、ポリマー、第1のポリマーに第2のポリマーを混ぜたブレンド物、弾性率の高い成分高分子と弾性率の低い成分高分子とが相分離したポリマーブレンド物のいずれかの高分子系の材料を準備する。これらの高分子系の材料の構成成分となる高分子として、第6の実施形態と同様のものを用いることができる。
次に、上記の高分子系の材料に第6の実施形態と同様の方法で塑性加工を行う。
上記の塑性加工を行った材料は、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有し、硬質層は非晶層であり、軟質層は非晶層である。そして、軟質層の厚さは硬質層の厚さより厚く、軟質層の厚さが1μm以下となる。また、この材料は、キンク変形する物質である。また、硬質層及び軟質層それぞれの長軸方向は、第6の実施形態と同様に、熱延伸方向に交差する方向であるとよい。
この後、第6の実施形態と同様に、この材料に室温で塑性加工を行う。この塑性加工中に硬質層及び軟質層にキンクが形成されるので、降伏後も応力(強度)の増加がへたることなく、金属の加工硬化で見られるような強度の増加が発現され、高強度と延性の両者が示される。そして、塑性加工後の材料における硬質層及び軟質層にキンクが形成されている。このキンクは、材料を加工硬化し、高強度化する。
なお、上記第1~第7の実施形態を適宜組み合わせて実施することも可能である。

Claims (15)

  1. 硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有する材料であり、
    前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
    前記軟質層の厚さは1μm以下であり、
    前記硬質層にキンクが形成されており、
    前記硬質層がfcc構造を有し、
    前記軟質層がhcp構造を有し、
    前記材料は、Mg-Zn-Gd合金又はMg-Zn-Gd-X-Z合金であり、
    前記Xは、Al、Ca及びLiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
    前記Zは、希土類元素、Mn、Si、Zr、Ti、Hf、Nb、Sn、Ag、Sr、Sc、Sb、B、C及びBeからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
    前記Znの含有量をa原子%、前記Gdの含有量をb原子%、前記Xの含有量をc原子%、前記Zの含有量をd原子%とすると、下記(式1)~(式6)を満たすことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
    (式1)0.1≦a≦3.0
    (式2)0.1≦b≦3.0
    (式3)c≦3.0
    (式4)d≦1.0
    (式5)b≦a+2
    (式6)b≧a-1
  2. 請求項1において、
    前記硬質層の厚さが100nm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
  3. 請求項1または2において、
    前記硬質層の厚さが前記軟質層の厚さの1/2以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項において、
    前記硬質層は、薄い軟質層と薄い硬質層が交互に積層した板状層で構成されていることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
  5. 請求項4において、
    前記薄い軟質層及び前記薄い硬質層それぞれの厚さが10nm以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬質・軟質積層構造材料は金属系の材料であり、
    前記硬質層の結晶構造が、前記軟質層の結晶構造と異なることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
  7. 金属を鋳造することにより、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有する鋳造物を形成する工程と、
    前記鋳造物に塑性加工を行うことによって前記硬質層にキンクを形成する工程と、
    を有し、
    前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
    前記軟質層の厚さは1μm以下であり、
    前記金属は、Mg-Zn-Gd合金又はMg-Zn-Gd-X-Z合金であり、
    前記Xは、Al、Ca及びLiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
    前記Zは、希土類元素、Mn、Si、Zr、Ti、Hf、Nb、Sn、Ag、Sr、Sc、Sb、B、C及びBeからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
    前記Znの含有量をa原子%、前記Gdの含有量をb原子%、前記Xの含有量をc原子%、前記Zの含有量をd原子%とすると、下記(式1)~(式6)を満たすことを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
    (式1)0.1≦a≦3.0
    (式2)0.1≦b≦3.0
    (式3)c≦3.0
    (式4)d≦1.0
    (式5)b≦a+2
    (式6)b≧a-1
  8. 請求項7において、
    前記鋳造時の冷却速度は10万℃/秒未満であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
  9. 請求項8において、
    前記鋳造工程の後に、前記鋳造後の金属を融点(絶対温度)の50%以上の温度に加熱する工程を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
  10. 請求項8または9において、
    前記鋳造時の冷却速度は100℃/秒以上であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
  11. 請求項7乃至10のいずれか一項において、
    前記鋳造時の冷却速度は、1000K/秒以下であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
  12. 硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有する材料であり、
    前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
    前記軟質層の厚さは1μm以下であり、
    前記硬質層にキンクが形成されている硬質・軟質積層構造材料であり
    記硬質・軟質積層構造材料は高分子系の材料であり、
    前記高分子系の材料の構成成分になる高分子は、ポリフッ化ビニリデンとポリメタクリル酸メチルのブレンド物であり、
    前記硬質層がポリフッ化ビニリデン結晶層であり、前記軟質層がポリフッ化ビニリデン及びポリメタクリル酸メチルの非晶層であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料。
  13. ポリフッ化ビニリデンとポリメタクリル酸メチルのブレンド物を準備する工程(a)と、
    前記ブレンド物に室温より高く融点より低い温度で200%以上のひずみを加える熱延伸を行う工程(b)と、
    前記工程(b)の後に、室温で前記材料に塑性加工を行う工程(c)と、
    を具備し、
    前記工程(b)の後の材料は、硬質層と軟質層が交互に複数積層された構造を有し、
    前記軟質層の厚さは前記硬質層の厚さより厚く、
    前記軟質層の厚さは1μm以下であり、
    前記工程(c)の後の前記硬質層にキンクが形成されており、
    前記硬質層がポリフッ化ビニリデン結晶層であり、前記軟質層がポリフッ化ビニリデン及びポリメタクリル酸メチルの非晶層であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
  14. 請求項13において、
    前記硬質層は、配向した分子鎖を有することを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
  15. 請求項13または14において、
    前記工程(c)は、室温で前記材料に10%以上のひずみを加える延伸を行う工程であることを特徴とする硬質・軟質積層構造材料の製造方法。
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