しかしながら、非特許文献1に開示された上記従来の地下水排除構造は、掘削孔2が埋土6で埋め戻されているため、暗渠配水管4の維持管理のために暗渠配水管4の状態を確認するには、再度、埋土6を掘り返さなければならない。このため、上記従来の地下水排除構造は、暗渠配水管4の維持管理に多大な労力および費用が必要とされた。
また、上記従来の地下水排除構造は、年月の経過に伴い、地下水と共に流入する土粒子によって暗渠配水管4の周囲の砂利等5や埋土6が目詰まりし、地下水の暗渠配水管4への集水機能が低下した。
また、上記従来の地下水排除構造は、埋土6から砂利等5を介して暗渠配水管4に単に浸透して来る地下水を集める構造になっているため、効率よく確実に地下水を集めることができず、排水性能が低かった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、コンクリートで構築されている、または、土に固化材または固化剤が混合されて形成された改良土で構築されている、または、土またはその代替物が拘束されて成る資材が積み上げられて構築されている、または、盛土中に補強材が敷設されて補強された盛土補強土壁によって構築されている、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体と、この壁体間で盛土の深さ方向に形成された通水空間と、この通水空間に通じる流路を有した暗渠とを備えて地下水排除構造を構成した。
この構成によれば、盛土中の山側から谷側に向かう地下水の流れは、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体間の通水空間によって断ち切られ、地下水は、盛土中に形成されて確保された通水空間を通って暗渠に導かれる。このため、本構造は、広い範囲の地下水を面状で集水することが可能で、高い排水性能を呈する。
また、地下水と共に流入する土粒子は、山側の壁体によって遮断され、通水空間へ侵入しなくなるので、目詰まりを起こすことはなく、暗渠の集水機能が低下することはない。従って、特に、目詰まりしやすい土質の盛土地盤に対して有効に適用できる。
また、例えば、地下水の水量が多い地盤では、地下水排除構造の通水空間を大きく設計し、地下水の水量が少ない地盤では、地下水排除構造の通水空間を狭く設計することにより、地下水の水量に応じて、盛土の上下および敷設延長方向に自由に連続した通水空間を形成することでき、地下水の集排水の効率が向上する。また、施工場所の地下水の状況また土質、および壁体の高さに応じて壁体の様々な構造を適用することができる。
また、本発明は、通水空間に盛土より透水性が高い透水性物体が敷設されていることを特徴とする。
この構成によれば、地盤内の応力によって壁体に変形が生じた場合においても、通水空間に盛土より透水性が高い透水性物体が敷設されているため、通水空間の容積が確実に確保されて地下水排除構造の形状保持性能はより高くなる。また、盛土の上下方向および敷設延長方向への連続性を維持できるため、多少通水空間が深さ方向に垂直な左右方向などに変形した場合でも、通水空間の地下水を確実に暗渠へ導くことが可能となり、地下水の集排水の効率が向上する。
また、本発明は、コンクリートで構築されている、または、土に固化材または固化剤が混合されて形成された改良土で構築されている、または、土またはその代替物が拘束されて成る資材が積み上げられて構築されている、または、盛土中に補強材が敷設されて補強された盛土補強土壁によって構築されている、盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体と、この壁体によって堰き止められた地下水が流入する流路を有した暗渠とを備えて地下水排除構造を構成した。
この構成によれば、盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体を設けずに、地下水が流入する流路を有した暗渠のみで構成された地下水排除構造に比べて、壁体が山側から谷川へ向けて流れる地下水の流れを堰き止めて、この堰き止められた地下水が暗渠に流入するため、効率よく確実に地下水を集排水することができる。
また、暗渠の流末の排水処理能力の都合により集水された地下水を一度に多く排水出来ない場合、このように意図的に、壁体の壁面に盛土より透水性が高い透水性物体を配置させずに集水能力を低下させて、壁体により盛土地盤内に地下水を貯留して排水量の調整を図ることができる。
また、山側の壁体と谷側の壁体とによって通水空間を形成する構成に比べてより安価に構築できる。また、目詰まりしやすい土質の盛土地盤に対しては、山側の壁体と谷側の壁体とによって通水空間を形成する上記の構成を地下水排除構造として適用し、目詰まりする恐れのない透水性の高い盛土地盤に対しては、盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体を備えた本構成を地下水排除構造として適用できるので、この2つの構造を使い分けることにより、より効率的で経済的な地下水排除構造を提供できる。
また、本発明は、壁体の壁面に盛土より透水性が高い透水性物体が取り付けられ、透水性物体を経た地下水を流路に流入させることを特徴とする。
この構成によれば、壁体の壁面に盛土より透水性が高い透水性物体が取り付けられていない構造に比べて、盛土より透水性が高い透水性物体が取り付けられている壁体の壁面全体から、より効率的に広い範囲で地下水を集水できる。
また、透水性物体が壁体の壁面に取り付けられるため、壁体を用いずに透水性物体を単独で盛土中に埋設して地下水排除構造を構成する場合に比べて、透水性物体が敷設しやすいため、地下水排除構造を施工する作業効率が向上する。また、透水性物体は、長期間の使用時に地盤の圧力により変形することも少なく、地下水伝達経路の耐久性が増し、経済的で信頼性の高い地下水排除構造が提供される。
また、暗渠の流末の排水処理能力の都合により集水された地下水を一度に多く排水出来ない場合、意図的に、壁体の壁面に配置された、盛土より透水性が高い透水性物体の量を調整して意図的に集水能力を低下させて、壁体により盛土地盤内に地下水を貯留して排水量の調整を図ることができる。
また、本発明は、流路の近傍に盛土より透水性が高い透水性物体を備え、壁体により堰き止められた地下水を透水性物体によって集水して流路に流入させることを特徴とする。
この構成によれば、壁体の壁面によって堰き止められた地下水は、盛土より透水性が高い透水性物体により広範囲に吸収されて暗渠へ流される。このため、例えば、地下水の水位が低い場合、または、地山の傾斜が緩い場合、または暗渠付近の地山が部分的に平地・窪地となっているような場合、特に効率よく地下水を集排水することが可能になる。
また、本発明は、壁体および暗渠が、壁体と暗渠とが一体成型されて構成されている、または別々に製作された壁体と暗渠とが一体化させられて構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、壁体と暗渠とが一体となって形成されているので、壁体と暗渠とを別々に埋設して地下水排除構造を作成する場合に比べて作業時間を短くすることができ、速やかに地下水排除構造を構成することができる。また、壁体と暗渠とが一体となって形成されているので、地盤の圧密沈下や地震時などの地盤内に応力が発生した場合に壁体と暗渠とが分離せず、この地下水排除構造の耐久性が増す。
また、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体、または盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体がコンクリートで構築されている場合、壁体の壁面によって堰き止められた地下水を透過させることがない、透水性の低い、つまり遮水性の高い壁体が提供される。
また、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体、または盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体が、土に固化材または固化剤が混合されて形成された改良土で構築されている場合、壁体の壁面によって堰き止められた地下水を透過させることがない、透水性の低い壁体が提供される。
また、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体、または盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体が、土またはその代替物が拘束されて成る資材が積み上げられて構築されている場合、暗渠や通水空間の状態を確認するには、積み上げた資材を一時的に退かすことで行える。このため、従来のように暗渠の周辺の盛土を掘り返したり、埋め戻す作業が不要になり、暗渠や通水空間の維持管理が容易にかつ安価に行えるようになる。
また、地盤の圧密沈下や地震時などの地盤内に応力が発生した場合、資材が積み上げられた壁体は、地盤と同様に動くため追従性に優れ、局所的に応力が集中せず耐震性能に優れた地下水排除構造が提供される。また、資材が積み上げられて壁体が構築されるので、壁体の曲線施工も容易に可能である。
また、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体、または盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体が、盛土中に補強材が敷設されて補強された盛土補強土壁によって構築されている場合、壁体の壁面を水平方向に引き抜こうと作用する土圧に、盛土内に配置した補強材の引き抜き抵抗力が対向して釣り合いが保たれ、土留め効果が発揮されて壁体が維持形成される。また、盛土を補強材の敷設によって補強して壁体を構成できるので、効率的により高い壁体を構築することができる。
また、地盤の圧密沈下や地震などによって地盤内に応力が発生した場合、盛土中に補強材が敷設されて補強された盛土補強土壁からなる壁体は、地盤と同様に動くために追従性に優れ、局所的に応力が集中せず、耐震性能に優れた地下水排除構造が提供される。
また、本発明は、流路が、暗渠の表面に形成された開口、または暗渠を形成する材料の透水性によって構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、地下水は、暗渠の表面に形成された開口を介して暗渠内に流入し、または暗渠を形成する材料の透水性によって暗渠内に流入するので、様々な方向から地下水を吸収して排水することができ、地下水の集排水の効率が向上する。
また、本発明は、暗渠が、上面に突出部を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、壁体が柔軟性を有する場合、壁体の底面に、暗渠の上面に立設された突出部が食い込む。このため、壁体の低部は、暗渠の上面から水平方向に移動し難くなる。よって、壁体全体も、水平方向に移動し難くなり、壁体の設置位置は水平方向にずれることなく固定される。
また、通水空間を下方に伝って落下してきた地下水、または壁体によって堰き止められた地下水は、暗渠の上面に突出した突出部によって暗渠の上面から流出するのが堰き止められ、暗渠の内部に確実に集められて排水される。
また、本発明は、暗渠の上面に透水性物体の下端部を係止する係止手段を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、透水性物体の下端部は、係止手段によって暗渠の上部に確実に支持される。このため、透水性物体の下端部が暗渠の上部からずれてしまうことが防止され、透水性物体を伝ってくる地下水は確実に暗渠の流路に導かれる。
また、本発明は、地下水排除構造を土中に埋設する際に掘削された掘削土が改良土または資材または盛土に用いられていることを特徴とする。
この構成によれば、壁体を埋設する際に掘削された盛土の掘削土が、壁体を構成する改良土または資材または盛土に利用されるため、地下水排除構造を形成する際に、排出土が出ることが無く、また、改良土または資材または盛土に用いる材料を新たに用意する必要がない。このため、安価でしかも環境に優しい地下水排除構造が提供される。また、周囲の地盤と同じ材料で構成されているので、壁体を囲む地盤全体の圧力に不均衡が生じることもなく、壁体を囲む地盤全体の安定度が増す。
また、本発明は、資材が、土またはその代替物が包装体で拘束補強されて形成され、包装体を構成する材料の引っ張り強さに応じて包装体から受ける最大拘束応力に基づいて圧縮耐力が求められ、求められたこの圧縮耐力に基づいて圧縮耐力に関する性能表示が行われていることを特徴とする。また、資材が、土またはその代替物が包装体で拘束補強されて形成され、包装体を構成する材料の引っ張り強さに応じて包装体から受ける最大拘束応力に基づいて発現する最大剪断強度が求められ、求められたこの最大剪断強度に基づいて剪断耐力に関する性能表示が行われていることを特徴とする。
この構成によれば、圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示が行われている資材が用いられて、壁体が形成される。このため、地下水排除構造の圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示が行われ、地下水排除構造が地中に形成された道路の強度がどの程度のものであるか、性能表示することが可能になる。従って、例えば、どの程度の重量までの車両が、地下水排除構造が地中に形成された道路上を通行可能かを表示することが出来、安全が確保されるようになる。
また、本発明は、壁体が、暗渠の下方の部分が遮水性を有している、または、上方の部分より透水性が低いことを特徴とする。
この構成によれば、遮水性を有しているまたは透水性が低い暗渠の下方の部分により、暗渠の下方に地下水を溜めて地下水の流下を止めつつ、遮水性を有しているまたは透水性が低い暗渠の下方の部分の高さを変えて、暗渠の勾配を自由に設計することができる。このため、所望の向きに、例えば、暗渠の敷設延長方向の地山が上がる勾配であっても、その勾配に逆らって下る向きに、つまり、地山の勾配に左右されずに暗渠の勾配が付けられ、地形に左右されない排水計画が可能となる。特に、既存の宅地造成地において計画する場合、地形や、既設の住宅、道路等の地上構造物により暗渠を配置する構成が制約されるが、この制約に応じて暗渠の勾配を自由に設計することができる。また、暗渠の延長方向の途中に窪地が発生しても、この窪地における遮水性を有するまたは透水性が低い暗渠の下方の部分を高くすることにより、窪地における地下水を壁体の下方へ流下させずに、暗渠の勾配を窪地に左右されずに設計できる。
本発明によれば、上記のように、盛土中の山側から谷側に向かう地下水の流れは、所定の間隔を設けて盛土中に埋設された壁体間の通水空間によって断ち切られ、地下水は、盛土中に形成されて確保された通水空間を通って暗渠に導かれる。このため、本構造は、広い範囲の地下水を面状で集水することが可能で、高い排水性能を呈する。
また、地下水と共に流入する土粒子は、山側の壁体によって遮断され、通水空間へ侵入しなくなるので、目詰まりを起こすことはなく、暗渠の集水機能が低下することはない。従って、特に、目詰まりしやすい土質の盛土地盤に対して有効に適用できる。
また、盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体を設けた構成の場合、壁面が山側から谷川へ向けて流れる地下水の流れを堰き止めて、この堰き止められた地下水が暗渠に流入するため、地下水が流入する流路を有した暗渠のみで構成された地下水排除構造に比べて、効率よく確実に地下水を集排水することができる。
また、山側の壁体と谷側の壁体とによって通水空間を形成する構成に比べてより安価に構築できる。また、目詰まりしやすい土質の盛土地盤に対しては、山側の壁体と谷側の壁体とによって通水空間を形成する構成を地下水排除構造として適用し、目詰まりする恐れのない透水性の高い盛土地盤に対しては、盛土中に埋設された地下水を堰き止める壁体を備えた本構成を地下水排除構造として適用できるので、この2つの構造を使い分けることにより、より効率的で経済的な地下水排除構造を提供できる。
次に、本発明の実施の形態による地下水排除構造について説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態による地下水排除構造の構成の概略を示す断面図である。
この地下水排除構造は、原地盤面11の上に埋め立てられた山側盛土12と谷側盛土13の間に、山側土のう壁16、谷側土のう壁17、および暗渠配水管19が設置されて構成されいる。山側盛土12と谷側盛土13の上には路床14が形成され、この路床14が舗装15で覆われて、造成地内道路が形成されている。
山側土のう壁16は、山側盛土12に接して複数の土のう18が積層されて、盛土中に道路の延設方向に沿って埋設されている。なお、周辺の地山から流下する地下水を面で受けるように埋設されている構成であってもよい。谷側土のう壁17は、この山側土のう壁16から所定の間隔をあけて複数の土のう18が積層されて、盛土中に道路の延設方向に沿って埋設されている。山側土のう壁16と谷側土のう壁17との間には、盛土の深さ方向に通水空間20が形成されており、この通水空間20には透水マット21が敷設されている。透水マット21は、長辺が道路の延設方向に沿った長方形状をしており、盛土の深さ方向に積み上げられている。なお、土のう18が積層された山側土のう壁16、谷側土のう壁17は一列に限らず、複数列から成る構成であってもよい。
暗渠配水管19は、図3に斜視図が示され、通水空間20の下方に設けられて、通水空間20に通じる開口部19aを上面に有する。この暗渠配水管19には、開口部19aを挟む上面に、図2に示すように、透水マット21の下端部を両側から支持する一対のアングル22がボルト23によって立設されている。また、暗渠配水管19には、開口部19aを挟む上面に一対の突出部19bが立設され、一方の突出部19bは山側土のう壁16の底面に接し、他方の突出部19bは谷側土のう壁17の底面に接している。
図4(a)は、山側土のう壁16および山側土のう壁17を構成する土のう18に用いられる土のう袋18aの斜視図であり、同図(b)は、山側土のう壁16および谷側土のう壁17を埋設する際に掘削された盛土の掘削土を収納してほぼ箱状に成形された土のう18の斜視図である。なお、土のう18に収納するものは、この掘削土に限定されることはなく、その他の土や、廃材、プラスチック、その他の代替物であっても構わない。
土のう袋18aは織布または不織布製の袋であり、本実施形態ではこの土のう袋18aの中におよそ16リットルの掘削土が詰め込まれ、同図(b)に示すように、ほぼ箱状に成形されて袋の口が締められている。同図(c)は土のう18の平面、正面および側面を示す三面図である。この正面図および側面図に示すように、土のう18の周縁部はその高さHの1/2がかまぼこ状に突出している。また、土のう18を多層に垂直方向に載荷した際、土のう18にかかる圧縮力Fは、同図(b)に示す、長さがLで幅がBの面状の受圧部で支持される。
このように掘削土を土のう袋18aに詰め、この土のう袋18aにかける圧縮力Fを最大圧縮力にすると、土のう袋18aを構成する布材の引っ張り強さTによって土のう袋18aの内部の掘削土は土のう袋18aから反力を受け、土のう袋18aの内部の掘削土には最大拘束応力σ’が発生する。この際、最大拘束応力σ’と引っ張り強さTとの間には次の関係式が成立する。
σ’=(T/H)・tan2(45°+φ/2)−T/B …(1)
ここで、H、Bは上述した土のう18の高さH、その受圧部の幅Bであり、φは掘削土の内部摩擦角である。
このとき、土のう18の受圧部全体による極限圧縮耐力Quは次式によって求まる。
Qu=2・σ’・B・L …(2)
ここで、B、Lは上述した土のう18の受圧部の幅B、長さLである。
土のう18の載荷方向の投影面積は(B+H)・(L+H)であるから、単位面積当たりの極限圧縮耐力quは次式によって求まる。
qu=Qu/{(B+H)・(L+H)}
=2・σ’・B・L/{(B+H)・(L+H)} …(3)
例えば、土のう袋18aの布材の引っ張り強さT=30[KN/m]で、掘削土の内部摩擦角φ=30°、受圧部の幅B=0.32[m]、長さL=0.32[m]、高さH=0.1[m]の土のう18の場合、その極限圧縮耐力quは次のようにして求められる。まず、最大拘束応力σ’は式(1)から次のように求まる。
σ’=(T/H)・tan2(45°+φ/2)−T/B
=(30/0.1)×(1.73)2−30/0.32
=804[KN/m2] …(4)
極限圧縮耐力Quは(2)式にこの(4)式を代入することにより、次のように求まる。
Qu=2・σ’・B・L
=2×804×0.32×0.32
=165[KN] …(5)
従って、極限圧縮耐力quは(3)式にこの(5)式を代入することによって次のように求まる。
qu=Qu/{(B+H)・(L+H)}
=165/(0.42×0.42)
=935[KN/m2] …(6)
このように、土のう18は、堀削土が土のう袋18aで拘束補強されて形成され、土のう袋18aを構成する布材の引っ張り強さに応じて土のう袋18aから受ける最大拘束応力σ’に基づいて圧縮耐力が求められ、求められたこの圧縮耐力に基づいて圧縮耐力に関する性能表示が行われている。
具体的には、土のう18の圧縮耐力に関する性能表示として、例えば、極限圧縮耐力が935[KN/m2]として表示される。また、求めたこの極限圧縮耐力935[KN/m2]に所定割合を掛けて安全率を見込んだ値、例えば、4割を掛けて6割の安全率を見込んだ374[KN/m2]が許容圧縮耐力として表示される。
また、土のう袋18a内の掘削土の最大拘束応力σ’によって土のう18に発現する最大剪断強度τfは次式によって表される。
τf=σ’・cosφ …(7)
土のう18に発現する最大剪断強度τfはこの(7)式に(4)式および掘削土の内部摩擦角φの値を代入することにより、次のように求まる。
τf=σ’・cos30°
=804×0.866
=696[KN/m2] …(8)
このように、土のう18は、堀削土が土のう袋18aで拘束補強されて形成され、土のう袋18aを構成する布材の引っ張り強さに応じて土のう袋18aから受ける最大拘束応力σ’に基づいて発現する最大剪断強度τfが求められ、求められたこの最大剪断強度τfに基づいて剪断耐力に関する性能表示が行われている。
具体的には、土のう18の剪断耐力に関する性能表示として、この最大剪断強度τfに基づいて算出した極限剪断耐力Qsとして表示されたり、また、求めたこの極限剪断耐力Qsに所定割合を掛けて安全率を見込んだ値が許容剪断耐力として表示される。
次に、上述した構成を持つ本実施形態による地下水排除構造の作用について説明する。
周辺の地山から流下する地下水は、原地盤面11と山側盛土12との境界を流れ、山側盛土12内に流入し、山側土のう壁16に到達する。この地下水は、山側土のう壁16を浸透して、山側土のう壁16と谷側土のう壁17との間で、盛土の深さ方向に形成された通水空間20に敷設されている透水マット21に流れ込む。なお、地下水と共に流入する土粒子は、山側土のう壁16によって遮断され、通水空間20および透水マット21へ侵入しない。
透水マット21に流れ込んだ地下水は、透水マット21を下方に伝って暗渠配水管19の上面にある開口部19aに落下し、開口部19aを介して暗渠配水管19の内部に集められて排水される。この際、暗渠配水管19に落下しきた地下水は、暗渠配水管19の上面に突出した一対の突出部19bによって暗渠配水管19の上面の両側に流出するのがせき止められ、一対の突出部19b間に形成された開口部19aを介して暗渠配水管19の内部に確実に集められて排水される。
このような本実施形態による地下水排除構造によれば、地下水が、盛土中に形成されて確保された通水空間20を通って暗渠配水管19に導かれるため、高い排水性能を呈する。また、盛土中の山側と谷側とに土のう18が積層されて構成されるため、暗渠配水管19や通水空間20の維持管理のためにそれらの状態を確認するには、積み上げた土のう18を一時的に退かすことで行える。このため、従来のように暗渠配水管19の周辺の盛土を掘り返したり、埋め戻す作業が不要になり、暗渠配水管19や通水空間20の維持管理が容易にかつ安価に行えるようになる。
また、地下水と共に流入する土粒子は、山側土のう壁16によって遮断され、通水空間20へ侵入しなくなるので、目詰まりを起こすことはなく、暗渠配水管19の集水機能が低下することはない。また、地下水を暗渠配水管19に導く通水空間20は、盛土中に積層されて自立する山側土のう壁16と谷側土のう壁17とによって形成されるため、地盤内に生じる応力によって潰れ難く、その形状の保持性能が高い。
また、本実施形態では、通水空間20に透水マット21が敷設されているので、通水空間20を透水マット21が占めることにより、通水空間20の容積は透水マット21によって確実に確保される。この結果、地下水排除構造の形状保持性能はより高くなる。
また、本実施形態では、透水マット21の下端部が、一対のアングル22によって暗渠配水管19の開口部19aの上部に確実に支持される。このため、透水マット21の下端部が暗渠配水管19の開口部19aの上部からずれてしまうことが防止され、透水マット21を伝ってくる地下水は確実に暗渠配水管19の開口部19aに導かれる。
また、本実施形態では、山側土のう壁16の最下部および谷側土のう壁17の各最下部に位置する土のう18は、それらの底面に、暗渠配水管19の上面に立設された一方の突出部19bおよび他方の突出部19bが食い込む。このため、山側土のう壁16および谷側土のう壁17の各最下部に位置する土のう18は、暗渠配水管19の上面から水平方向に移動し難くなる。よって、これら各土のう18に積層された山側土のう壁16および谷側土のう壁17を構成する各土のう18も、水平方向に移動し難くなり、山側土のう壁16および谷側土のう壁17の設置位置は水平方向にずれることなく固定される。
また、通水空間20を下方に伝って落下してきた地下水は、暗渠配水管19の上面に突出した一対の突出部19bによって暗渠配水管19の上面の両側に流出するのがせき止められ、一対の突出部19b間に形成された開口部19aを介して暗渠配水管19の内部に確実に集められて排水される。
また、本実施形態では、山側土のう壁16および谷側土のう壁17を埋設する際に掘削された盛土の掘削土が、山側土のう壁16および谷側土のう壁17を構成する土のう18に収納されるため、地下水排除構造を形成する際に、排出土が出ることが無く、また、土のう18に収納する材料を新たに用意する必要がない。このため、安価でしかも環境に優しい地下水排除構造が提供される。
また、本実施形態では、圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示が行われている土のう18が用いられて、山側土のう壁16および谷側土のう壁17が形成されている。このため、地下水排除構造の圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示が行われ、地下水排除構造が地中に形成された道路の強度がどの程度のものであるか、性能表示することが可能になる。従って、例えば、どの程度の重量までの車両が、地下水排除構造が地中に形成された道路上を通行可能かを表示することが出来、安全が確保されるようになる。
図5は、本発明の第2の本実施の形態による地下水排除構造が適用される地盤内の構成の概略を示す断面図である。
この地下水排除構造は、原地盤面である地山30の上に埋め立てられた盛土31の中に、土のうなどで構成される壁体32、透水性物体33および暗渠34が設置されて構成されている。盛土31上には、家屋37や道路38などが構築されている。仮にこの地下水排除構造がない場合、地山30にそって流れる地下水は、盛土31内に蓄積し、地下水位線35まで溜まってしまう。一方、同図のように盛土31中にこの地下水排除構造を設置した場合、山側に貯留した地下水をこの地下水排除構造が吸収し、暗渠34へ流すため、地下水位線36に示すように、地下水排除構造の谷側にほとんど地下水は溜まらない。
図6および図7は、上記の第2の実施の形態による地下水排除構造の様々な構成例の概略を示す断面図である。なお、同図において図5と同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。
これらの地下水排除構造は、所定の間隔を設けて地山30上の盛土31中に埋設された壁体32と、この壁体32間で盛土31の深さ方向に形成された、透水性物体33が除かれた通水空間41と、この通水空間41に通じる流路39を有した暗渠40とを備えて構成されている。
図6(a)の一対の壁体32aは、袋の中に土またはその代替物を詰め込み拘束補強した袋詰め補強土壁体、例えば土のうが積み上げられて構築されている。ここで、地下水位線42および43は、盛土31および暗渠40中の地下水の水位を示している。図6(b)の一対の壁体32bは、土またはその代替物をシートまたはネット状の材料で包み込み拘束補強した包み込み補強土壁体が積み上げられて構築されている。図6(c)の一対の壁体32cは、土またはその代替物をかご枠の中に詰め込み拘束補強したかご枠詰め補強土壁体が積み上げられて構築されている。図6(a)、(b)、(c)の各壁体32a、32b、32cは、土またはその代替物が拘束されて成る資材を構成単位とする。図6(d)の山側の壁体32aは袋詰め補強土壁体が積み上げられて構築されており、谷側の壁体32dはブロック状のコンクリートが積み上げられて構築されている。図6(e)の壁体32aは、両側の盛土31、31から地下水が集まる谷部に、袋詰め補強土壁体が積み上げられて構築されている。図6(f)の壁体32aは、盛土31の上下、敷設延長方向で壁体32a同士が部分的にくっついて構築されている。壁体32の構成は、例えば通水空間41が延長方向に通らないように盛土31の下から上まで全部くっつけたり、盛土31の延長方向はつながるようにランダムにくっつけたりする積み方であってもよい。
図7(g)〜(j)の壁体32は、盛土31中に補強材45が敷設されて補強された盛土補強土壁によって構築されている。図7(g)の壁体32gは、盛土31内にパネル44を引っ張る鋼製のアンカー補強材45aが層状に配置されて、アンカー補強土壁体を構築している。図7(h)の壁体32hは、盛土31内にパネル44を引っ張る面状のジオテキスタイルからなる補強材45bが層状に敷設されて、ジオテキスタイル補強土壁体を構築している。図7(i)の壁体32iは、盛土31内にパネル44を引っ張る帯鋼補強材45cが層状に配置されて、帯鋼補強土壁体を構築している。図7(j)の壁体32jは、盛土31内にパネル44を引っ張る格子状鉄筋補強材45dが層状に敷設され、格子状鉄筋補強土壁体を構築している。地下水排除構造を構成する壁体32の組み合わせ、および山側、谷川の壁体32の組み合わせは、上述した形態に限定されず、様々な形態が考えられる。なお、パネル44は、コンクリート製、ポーラスコンクリート製、合成樹脂製、鋼製、格子状鉄筋金網製などで構成され、これらの材料はパネル44に止水性または透水性を持たせるかにより使い分けられる。
このような本実施形態による地下水排除構造によれば、盛土31中の山側から谷側に向かう地下水の流れは、所定の間隔を設けて盛土31中に埋設された壁体32間の通水空間41によって断ち切られ、地下水は、盛土31中に形成されて確保された通水空間41を通って暗渠40に導かれる。このため、本構造は、広い範囲の地下水を面状で集水することが可能で、高い排水性能を呈する。
また、地下水と共に流入する土粒子は、山側の壁体32によって遮断され、通水空間41へ侵入しなくなるので、目詰まりを起こすことはなく、暗渠40の集水機能が低下することはない。従って、特に、目詰まりしやすい土質の盛土地盤に対して有効に適用できる。
また、例えば、地下水の水量が多い地盤では、地下水排除構造の通水空間41を大きく設計し、地下水の水量が少ない地盤では、地下水排除構造の通水空間41を狭く設計することにより、地下水の水量に応じて、盛土31の上下および敷設延長方向に自由に連続した通水空間41を形成することでき、地下水の集排水の効率が向上する。また、施工場所の地下水の状況また土質、および壁体32の高さに応じて、上述したように壁体32の様々な構造を適用することができる。ここで、所定の間隔を設けて盛土31中に埋設された壁体32は、壁体32間の通水空間41を確保するため、その壁面に加わる土圧に対抗できるように壁体32の幅や厚みを大きくして、自立した構造である必要がある。
また、図6(d)に示す地下水排除構造のように、壁体32dがコンクリートで構築されている場合、壁体32dの壁面によって堰き止められた地下水を透過させることがない、透水性の低い、つまり遮水性の高い壁体32dが提供される。
また、図6(a)〜(f)に示す各地下水排除構造によれば、壁体32a、32b、32cが、土またはその代替物が拘束されて成る資材、例えば袋詰め体、包み込み体やかご枠詰め体が積み上げられて構築されているので、暗渠40や通水空間41の状態を確認するには、積み上げた資材を一時的に退かすことで行える。ブロック状のコンクリートからなる壁体32dも、同様に、積み上げたコンクリートを一時的に退かすことで行える。このため、従来のように暗渠40の周辺の盛土31を掘り返したり、埋め戻す作業が不要になり、暗渠40や通水空間41の維持管理が容易にかつ安価に行えるようになる。
また、積み上げた資材を一時的に退かすと、周囲の盛土31が崩れる恐れがあるような高い高さの壁体32である場合には、壁体32の上部の浅い箇所の資材のみを取り除いて、通水空間41を確認することができる。また、後述する図10に示すように、壁体32間に透水性物体33を備える構成の場合には、壁体32の上部の浅い箇所の資材のみを取り除いて、通水空間41に敷設された透水性物体33を引き上げて透水性物体33が正常か否かを確認することができる。また、壁体32の山側に土留め用の壁体を予め構築しておき、壁体32を取り除いても盛土31が崩れないようにすることにより、最も深い所にある暗渠40が正常か否かを確認することができる。
また、地盤の圧密沈下や地震時などの地盤内に応力が発生した場合、資材またはブロックが積み上げられた壁体32a、32b、32c、32dは、地盤と同様に動くため追従性に優れ、局所的に応力が集中せず耐震性能に優れた地下水排除構造が提供される。また、資材またはブロックが積み上げられて壁体32が構築されるので、壁体32の曲線施工も容易に可能である。
また、図7(g)〜(j)に示す地下水排除構造によれば、壁体32g、32h、32i、32jのパネル44からなる壁面を水平方向に引き抜こうと作用する土圧に、盛土31内に配置した補強材45a、45b、45c、45dの引き抜き抵抗力が対向して釣り合いが保たれ、土留め効果が発揮されて壁体32g、32h、32i、32jが維持形成される。また、盛土31を補強材45の敷設によって補強して壁体32を構成できるので、効率的により高い壁体32を構築することができる。
また、地盤の圧密沈下や地震などによって地盤内に応力が発生した場合、盛土31中に補強材45a、45b、45c、45dが敷設されて補強された盛土補強土壁からなる壁体32g、32h、32i、32jは、地盤と同様に動くために追従性に優れ、局所的に応力が集中せず、耐震性能に優れた地下水排除構造が提供される。
図8は、上記の第2の実施の形態による各地下水排除構造に用いられる様々な暗渠40の構成の概略を、壁体32aからなる地下水排除構造を例にして示す断面図である。図9(a)〜(f)はこれら各暗渠40の構成例の平面図、正面図および側面図をそれぞれ示している。
図8(a)の暗渠40aは、図9(a)に示す、上面および側面に開口からなる流路39が形成された箱型コンクリート暗渠である。図8(b)の暗渠40bは、図9(b)に示す、周囲に開口穴からなる流路39が形成されたヒューム管である。図8(c)の暗渠40cは、図9(c)に示す、周囲に開口穴からなる流路39が形成された塩化ビニル管である。なお、この暗渠40cの材料は、半径の小さい曲線施工時に好適な柔軟性に優れた合成樹脂管であってもよい。図8(d)の暗渠40dは、図9(d)に示す、多孔質で透水性の高いポーラスコンクリート管である。例えば、盛土31部分だけではなく、地山30にも地下水を含んでいるような場所においては、透水性の高い、このポーラスコンクリート管や合成樹脂製のネット管が用いられる。図8(e)の暗渠40eは、図9(e)に示す、スリットが流路39として多数形成された集水蓋47が乗っているU字溝から成る暗渠や、図9(f)に示す、流路39が多数形成されて最も集水性に優れた鋼製蓋(グレーチング)46が乗っているU字溝から成る暗渠である。特に局所的に地下水が多い場所には、集水性に優れた、これらの集水蓋47や鋼製蓋46を用いた暗渠が好適である。このように、暗渠40に備えられている流路39は、暗渠40の表面に形成された開口、スリット、または暗渠40を形成するポーラスコンクリート材料や合成樹脂製のネット材料の透水性によって構成されている。
このような暗渠40を備えた地下水排除構造によれば、地下水は、暗渠40の表面に形成された開口を介して暗渠40内に流入し、または暗渠40を形成する材料の透水性によって暗渠40内に流入するので、様々な方向から地下水を吸収して排水することができ、地下水の集排水の効率が向上する。
図10は、上記の第2の実施の形態による通水空間41に、盛土31より透水性が高い透水性物体33が敷設された地下水排除構造の構成の概略を示す断面図である。
図10(a)の透水性物体33aは透水マットであり、図10(b)の透水性物体33bは砕石であり、図10(c)の透水性物体33cは合成樹脂製の中空の箱体表面に開口が形成された中空箱積層体である。通水空間41に敷設される透水性物体33は、上記の透水マット、砕石、中空箱積層体の他に、排水性の高い粒状の材料等、盛土より透水性が高い材料であれば何であっても良い。また、単体では盛土31中に施工することが困難なシート状の物、粒子状の物、中空体の物等、多様な透水材物体33をその機能により使い分けて、通水空間41に敷設することができる。
このような通水空間41に透水性物体33を備えた地下水排除構造によれば、地盤内の応力によって壁体32に変形が生じた場合においても、通水空間41に盛土31より透水性が高い透水性物体33が敷設されているため、通水空間41の容積が確実に確保されて、地下水排除構造の形状保持性能はより高くなる。また、盛土31の上下方向および敷設延長方向への連続性を維持できるため、多少通水空間41が深さ方向に垂直な左右方向などに変形した場合でも、通水空間41の地下水を確実に暗渠40へ導くことが可能となり、地下水の集排水の効率が向上する。また、壁体32に変形が生じた場合においても、通水空間41の容積が透水性物体33によって確実に確保されため、壁体32自体は自立した構成である必要はなく、この壁体32の厚さをより薄く構成することも可能である。よって、通水空間41に透水性物体33を備えた地下水排除構造によれば、より安価に壁体32を構築することができる。
図11は、上記の第2の実施の形態による通水空間41に透水マット等の透水性物体33が2列敷設された地下水排除構造の構成の概略を示す断面図である。上記実施形態の図10では、通水空間41および通水空間41に敷設された透水性物体33は一列で構成されていたが、図11のように、壁体32に囲まれた通水空間41および、通水空間41に敷設された透水性物体33は複数列で構成されてもよい。
図12および図13は、本発明の第3の実施の形態による地下水排除構造の構成例の概略を示す断面図である。この地下水排除構造は、盛土31中に埋設された地下水を堰き止める壁体32と、この壁体32によって堰き止められた地下水が流入する流路39を有した暗渠40とを備えて構成される。
図12(a)の壁体32kは、コンクリート構造にて構築した壁体である。この壁体32kは、図14に示すように、壁体32kと暗渠40とが一体成型されて構成されている。図14(a)、(b)、(c)は、壁体32kの平面図、正面図、側面図である。なお、この壁体32kと暗渠40は一体化しておらず分離された構造であってもよい。壁体32kおよび暗渠40が一体成型された構成は、施工上の都合などにより短期間で施工を行わなければならない場合、または、大型の建設機械を使用できる場合などに用いられる。なお、壁体32kは、壁体32kおよび暗渠40が別々に製作され、接合材または連結材により一体化させられて構成されてもよい。
また、図12(b)の壁体32lは、コンクリート構造にて構築した壁体である。暗渠40は、壁体32lより谷側に設置されており、暗渠40の山側に開口した流路39に暗渠40の山側に溜まった地下水が流れることにより、地下水の集水が行われる。
図12(c)の壁体32dは、コンクリートをブロック構造で暗渠40の上方に構築した図6(d)と同様な壁体である。図12(d)の壁体32mは、暗渠40の上方にコンクリート構造にて暗渠40と一体もしくは分離して構築した壁体である。図12(e)の壁体32nは、土にセメント系の固化材または固化剤が混合されて形成された改良土で構築されている。壁体32nの下方山側に暗渠40が設けられている。なお、この壁体32nを構成する改良土は、セメント系固化材または固化剤の他に、石灰系の材料から形成される構成であってもよい。図12(f)の壁体32cは、図6(c)と同様なかご枠詰め補強土壁体にて構築されている。なお、このかご枠詰め補強土壁体32cの山側の壁面を遮水性のあるシートで覆って、遮水性能を高める構成としてもよい。図13(g)の壁体32gは、図7(g)と同様な盛土補強土構造にて構築されている。なお、図7(h)〜(j)に示す盛土補強土構造にて構築してもよい。図13(h)の壁体32pは、コンクリートをブロック構造で山側から谷川に向けて勾配を設けて構築されている。なお、この勾配は逆の勾配であってもよい。図13(i)の壁体32aは、図6(a)と同様な袋詰め補強土構造にて構築されている。なお、この壁体32aは、遮水性能を上げるために、袋を遮水性の材料で構成してもよい。
また、図12(a)の壁体32kの変形例として、図15(a)〜(f)の壁体構造がある。図15(e)の暗渠40を覆う蓋46は、図9(f)と同様な集水性の高い鋼製(グレーチング)の蓋である。また、図15(f)の蓋47は、図9(e)と同様なスリットが形成された集水蓋である。
このような本実施形態による地下水排除構造によれば、盛土31中に埋設された地下水を堰き止める壁体32を設けずに、地下水が流入する流路39を有した暗渠40のみで構成された地下水排除構造に比べて、壁体32が山側から谷川へ向けて流れる地下水の流れを堰き止めて、この堰き止められた地下水が暗渠40に流入するため、効率よく確実に地下水を集排水することができる。
また、暗渠40の流末の排水処理能力の都合により集水された地下水を一度に多く排水出来ない場合、このように意図的に、壁体32の壁面に盛土31より透水性が高い透水性物体33を配置させずに集水能力を低下させて、壁体32により盛土地盤内に地下水を貯留して排水量の調整を図ることができる。
また、山側の壁体32と谷側の壁体32とによって通水空間41を形成する図6および図7に示す構成に比べてより安価に構築できる。また、目詰まりしやすい土質の盛土地盤に対しては、山側の壁体32と谷側の壁体32とによって通水空間41を形成する図6および図7に示す構成を地下水排除構造として適用し、目詰まりする恐れのない透水性の高い盛土地盤に対しては、盛土32中に埋設された地下水を堰き止める壁体32を備えた図12および図13に示す本構成を地下水排除構造として適用できるので、この2つの構造を使い分けることにより、より効率的で経済的な地下水排除構造を提供できる。
また、図12(a)、(b)に示す地下水排除構造によれば、壁体32kと暗渠40とが一体となって形成されているので、壁体32kと暗渠40とを別々に埋設して地下水排除構造を作成する場合に比べて作業時間を短くすることができ、速やかに地下水排除構造を構成することができる。また、壁体32kと暗渠40とが一体となって形成されているので、地盤の圧密沈下や地震時などの地盤内に応力が発生した場合に壁体32kと暗渠40とが分離せず、この地下水排除構造の耐久性が増す。
また、図12(e)に示す地下水排除構造によれば、壁体32nが、土に固化材または固化剤が混合されて形成された改良土で構築されているので、壁体32nの壁面によって堰き止められた地下水を透過させることがない、透水性の低い壁体が提供される。
また、図6(a)〜(f)および図13(i)に示す袋詰めまたは包み込み型の束縛補強土壁体を用いた地下水排除構造や、図7(g)〜(j)および図13(g)に示す盛土補強土壁体を用いた地下水排除構造、図12(e)に示す改良土壁体を用いた地下水排除構造それぞれを、土中に埋設する際に掘削された掘削土が、束縛補強土壁体の資材または盛土補強土壁体の盛土または改良土壁体の改良土に用いられる構成であってもよい。なお、図6(c)や図12(f)に示すかご枠詰め補強土壁体32cは、施工する際に発生する掘削土の粒径の大きい石などを多く含んで構成することができる。
この構成によれば、壁体32を埋設する際に掘削された盛土31の掘削土が、壁体32を構成する資材または盛土または改良土に利用されるため、地下水排除構造を形成する際に、排出土が出ることが無く、また、資材または盛土または改良土に用いる材料を新たに用意する必要がない。このため、安価でしかも環境に優しい地下水排除構造が提供される。また、周囲の地盤と同じ材料で構成されているので、壁体32を囲む地盤全体の圧力に不均衡が生じることもなく、壁体32を囲む地盤全体の安定度が増す。
図16および図17は、上記の第3の実施の形態による壁体32の壁面に盛土31より透水性が高い透水性物体33が取り付けられ、透水性物体33を経た地下水を流路39に流入させる地下水排除構造の構成の概略を示す断面図である。
図16(a)、(b)では、コンクリート構造にて構築された図12(a)、(d)に示す壁体32k、32mの壁面に透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。図16(a)の壁体32kは図18に示される。図18(a)、(b)、(c)は、壁体32kの正面図、側面図、平面図である。暗渠40の上面には、透水性物体33aの下端部を両側から支持して係止する係止手段を構成するアングル50およびボルト51を備えている。なお、透水性物体33aを係止する係止手段は、アングル50ではなく、図18(d)の側面図に示すような突出部52で構成し、突出部52と壁体32kとの間に透水性物体33aの下端部を挟持するようにしてもよい。また、暗渠40の上面の端部には、暗渠40の上面の地下水を堰き止める突出部53を備えている。なお、地下水を堰き止める構成は突出部53に限らず、これ以外の手段、例えば、鉄板などからなるアングルを用いてもよい。
図16(c)では、改良土構造にて構築した図12(e)に示す壁体32nの壁面に透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。図16(d)では、袋詰め補強土構造にて構築した図13(i)に示す壁体32aの壁面に透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。
図19(a)、(b)、(c)は、図16(d)で用いられる暗渠40aの正面図、側面図、平面図である。暗渠40aの上面には、透水性物体33aの下端部を両側から支持する係止手段を構成する一対のアングル54およびボルト55を備えている。また、暗渠40aの上面の両端部には、暗渠40aの上面の地下水を堰き止める一対の突出部56を備えている。係止手段は、アングル54ではなく、同図(d)の側面図に示すような一対の突出部57、57で構成し、突出部57、57の間に透水性物体33aの下端部を挟持するようにしてもよい。
図16(e)では、盛土補強土構造にて構築した図13(g)に示す壁体32gの壁面に透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。図16(f)では、コンクリートをブロック構造で構築した図12(c)に示す壁体32dの壁面に透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。図17(g)では、袋詰補強土構造にて構築した図13(i)に示す壁体32aの壁面に、図10(c)と同様な中空箱体からなる透水性物体33cが取り付けられている。図17(h)では、袋詰補強土構造にて構築した図13(i)に示す壁体32aの壁面に、図10(b)と同様な砕石からなる透水性物体33bが設けられている。図17(i)では、コンクリートをブロック構造で勾配を設けて構築した図13(h)に示す壁体32pの壁面に、透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。図17(j)では、コンクリート構造にて構築された図12(a)に示す壁体32kの谷側の壁面に、透水マットからなる透水性物体33aが取り付けられている。図17(k)では、コンクリートをブロック構造で構築した壁体32qの谷側壁面に、図10(c)と同様な合成樹脂製の中空箱体からなる透水性物体33cが取り付けられている。この透水性物体33cの下方に暗渠40が設けられている。
このような本実施形態による地下水排除構造によれば、壁体32の壁面に盛土31より透水性が高い透水性物体33が取り付けられていない構造に比べて、盛土31より透水性が高い透水性物体33が取り付けられている壁体32の壁面全体から、より効率的に広い範囲で地下水を集水できる。
また、透水性物体33が壁体32の壁面に取り付けられるため、壁体32を用いずに透水性物体33を単独で盛土31中に埋設して地下水排除構造を構成する場合に比べて、透水性物体33が敷設しやすいため、地下水排除構造を施工する作業効率が向上する。また、透水性物体33は、長期間の使用時に地盤の圧力により変形することも少なく、地下水伝達経路の耐久性が増し、経済的で信頼性の高い地下水排除構造が提供される。
また、暗渠40の流末の排水処理能力の都合により集水された地下水を一度に多く排水出来ない場合、意図的に、壁体32の壁面に配置された、盛土31より透水性が高い透水性物体33の量を調整して意図的に集水能力を低下させて、壁体32により盛土地盤内に地下水を貯留して排水量の調整を図ることができる。また、図17(j)、(k)に示すように谷側の壁面に透水性物体33が取り付けられている構成の場合、山側の地下水が溢れて壁体32を越え、谷川の暗渠40の流路39に透水性物体33を伝って流れることにより、壁体32の山側に地下水を貯留して排水量の調整を図ることができる。
また、図10、図13(i)、図16(d)、図17(g)、(h)に示す地下水排除構造によれば、壁体32aが柔軟性を有するので、壁体32aの底面に、暗渠40の上面に立設された突出部53、56が食い込む。このため、壁体32aの低部は、暗渠40の上面から水平方向に移動し難くなる。よって、壁体32a全体も、水平方向に移動し難くなり、壁体32aの設置位置は水平方向にずれることなく固定される。
また、通水空間41を下方に伝って落下してきた地下水、または壁体32によって堰き止められた地下水は、暗渠40の上面に突出した突出部53、56によって暗渠40の上面から流出するのが堰き止められ、暗渠40の内部に確実に集められて排水される。
また、図16(a)、(c)、(d)、(e)、(f)、図17(i)、(j)に示す地下水排除構造によれば、透水性物体33の下端部は、係止手段50、51、52、54、55、57によって暗渠40の上部に確実に支持される。このため、透水性物体33の下端部が暗渠40の上部からずれてしまうことが防止され、透水性物体33を伝ってくる地下水は確実に暗渠40の流路39に導かれる。なお透水性物体33の下端部を暗渠40に差し込んだりする構成であってもよい。
図20および図21は、上記の第3の実施の形態による地下水排除構造の暗渠40の流路39の近傍に、盛土31より透水性が高い透水性物体33を備え、壁体32により堰き止められた地下水を透水性物体33によって集水して流路39に流入させる地下水排除構造の構成の概略を示す断面図である。
図20(a)は、コンクリートにて構築した図12(a)に示す壁体32kの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、透水性の優れた砕石またはその代替物の袋詰め体の集合体からなる透水性物体33dを備えている。図20(b)は、コンクリートにて構築した図15(d)に示す壁体32kの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、図10(b)と同様な砕石層からなる透水性物体33bを備えている。図20(c)は、コンクリートにて構築した壁体32rの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、図10(c)と同様な合成樹脂製の中空箱体からなる透水性物体33cを備えている。図20(d)は、コンクリートにて構築した壁体32rの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、表面に開口が形成されたコンクリート製の中空箱体からなる透水性物体33eを備えている。図20(e)は、盛土補強土壁によって構築されている図13(g)に示す壁体32gの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、図10(c)と同様な中空箱体からなる透水性物体33cを備えている。図20(f)は、かご枠詰め補強土壁体にて構築した図12(f)に示す壁体32cの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、透水性の高いポーラスコンクリートブロックからなる透水性物体33fを備えている。図21(g)は、コンクリートにて構築した図12(a)に示す壁体32kの下方における、暗渠40が有する流路39近傍に、地山30の斜面に沿って敷設された透水マットからなる透水性物体33aを備えている。
このような本実施形態による地下水排除構造によれば、壁体32の壁面によって堰き止められた地下水は、盛土31より透水性が高い透水性物体33により広範囲に吸収されて暗渠40へ流される。このため、例えば、地下水の水位が低い場合、または、地山30の傾斜が緩い場合、または暗渠40付近の地山30が部分的に平地・窪地となっているような場合、特に効率よく地下水を集排水することが可能になる。
図22(a)、(b)は、上記の第3の実施の形態によるコンクリート構造にて構築した壁体32m、32kにおいて、暗渠40、40の下方部分32m1、32k1が遮水性を有しているコンクリート構造からなる地下水排除構造の断面図である。なお、壁体32m、32kにおいて、下方部分32m1、32k1が上方の部分より透水性が低い構成であってもよい。
図22(c)は暗渠40の下方部分がコンクリート構造ではない壁体32の暗渠40を通常の地山30の勾配なりに施工した壁体構造の側面図である。この壁体構造における暗渠40は地山30の傾斜に沿って配置されている。一方、図23(d)は、図22(a)、(b)の壁体32m、32kの暗渠40の排水勾配を敷設延長方向に地山30の地形と逆方向に施工した壁体構造の側面図であり、地下水が地山30に沿って流れる方向と逆の矢印方向に暗渠40の排水勾配が設置してある。図23(e)は、図22(a)、(b)の壁体32m、32kの暗渠の排水勾配を敷設延長方向の地山30の窪地に左右されずに施工した壁体構造の側面図である。ここで、線60、61は、壁体32m、32kの下方部分32m1、32k1の下端部を示している。
図24(a)は、袋詰め補強土体を積み上げて構築した壁体32aにおいて、暗渠40の下方部分32a1を止水シート70で包み込んで止水している地下水排除構造の断面図である。図24(b)は、袋詰め補強土体を積み上げて構築した壁体32aにおいて、暗渠40の下方部分32a2がコンクリート構造である地下水排除構造の断面図である。なお、下方部分32a1、32a2は、袋詰め補強土体の袋が遮水性の袋から成る構成であってもよい。
図24(c)は図24(a)、(b)のように、暗渠40の下方部分が止水構造ではない壁体32aの暗渠40を通常の地山30の勾配なりに施工した壁体構造の側面図である。この暗渠40は地山30の傾斜に沿って配置されている。一方、図25(d)は、図24(a)、(b)の壁体32aの暗渠40の排水勾配を敷設延長方向に地山の地形30と逆方向に施工した壁体構造の側面図であり、地下水が地山30に沿って流れる方向と逆の矢印方向に暗渠40の排水勾配が設置してある。図25(e)は、図24(a)、(b)の壁体32aの暗渠40の排水勾配を敷設延長方向の地山30の窪地に左右されずに施工した壁体構造の側面図である。
このような地下水排除構造によれば、遮水性を有しているまたは透水性が低い暗渠40の下方部分32m1、32k1、32a1、32a2により、暗渠40の下方に地下水を溜めて地下水の流下を止めつつ、遮水性を有しているまたは透水性が低い暗渠40の下方部分32m1、32k1、32a1、32a2の高さを変えて、暗渠40の勾配を自由に設計することができる。このため、所望の向きに、例えば、暗渠40の敷設延長方向の地山30が上がる勾配であっても、その勾配に逆らって下る向きに、つまり、地山30の勾配に左右されずに暗渠40の勾配が付けられ、地山30の地形に左右されない排水計画が可能となる。特に、既存の宅地造成地において計画する場合、地形や、既設の住宅、道路等の地上構造物により暗渠を配置する構成が制約されるが、この制約に応じて暗渠40の勾配を自由に設計することができる。また、暗渠40の延長方向の途中に窪地が発生しても、この窪地における遮水性を有するまたは透水性が低い暗渠40の下方部分32m1、32k1、32a1、32a2を高くすることにより、窪地における地下水を壁体32の下方へ流下させずに、暗渠40の勾配を窪地に左右されずに設計できる。
なお、上記の第1の実施形態では、圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示を行うために土のう18が用いられていたが、土のう18に限らず、壁体32を構成する資材は、第2および第3の実施形態で説明したように土またはその代替物が包装体で拘束補強されて形成され、包装体を構成する材料の引っ張り強さに応じて包装体から受ける最大拘束応力σ’に基づいて圧縮耐力が求められ、求められたこの圧縮耐力に基づいて圧縮耐力に関する性能表示が行われている構成であってもよい。また、壁体32を構成する資材は、土またはその代替物が包装体で拘束補強されて形成され、包装体を構成する材料の引っ張り強さに応じて包装体から受ける最大拘束応力σ’に基づいて発現する最大剪断強度τfが求められ、求められたこの最大剪断強度τfに基づいて剪断耐力に関する性能表示が行われている構成であってもよい。
この構成によれば、圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示が行われている資材が用いられて、壁体32が形成される。このため、地下水排除構造の圧縮耐力または剪断耐力に関する性能表示が行われ、地下水排除構造が地中に形成された道路38の強度がどの程度のものであるか、性能表示することが可能になる。従って、例えば、どの程度の重量までの車両が、地下水排除構造が地中に形成された道路38上を通行可能かを表示することが出来、安全が確保されるようになる。