JPH0453205B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は盛土荷重を最小とし軟弱地盤にあつて
も盛土部に沈下を招かない地滑り箇所、軟弱地盤
箇所等の軽量盛土工法に関するものである。

＜従来の技術＞ 従来、軟弱地盤の盛土としては、旧くは軟弱層
上にシートを敷設し、この支持力をもつて上面の
覆土を受ける所謂シート工法や杭打ち工法等の多
数の工法があり、、新しくは新素材の開発、即ち
軽量部材となる発泡ポリスチレンブロツクを単に
積み重ねた軽量盛土工法が知られている。

＜発明が解決しようとする問題点＞ この場合、単なる平坦面となる軟弱地盤地域の
盛土に当つては、前記シートの敷設面積や支点調
整とが、発泡ポリスチレンブロツクの敷設幅等の
選定にて盛土荷重を分散、軽減がなされ沈下を阻
止する。また、自然土を掘削し盛土と掘削土の重
量を調整することによつて、盛土荷重の平衡交換
による沈下防止しうるが、例えば、片側が地滑り
を起し易い斜面で盛土部が軟弱地盤となる悪条件
においては、単に今までの工法を適用しただけで
は間隙水、湧水が抜けず、斜面の地滑り土圧が盛
土部に及び安定支持力が得られない。

本発明は上記実情に鑑み、盛土荷重を最小とす
る発泡スチロールを主体とすると共に、周縁に発
泡ポリスチレン粒体を固めた粒体排水板を適宜埋
設介在する効果的排水手段を組合せたことによ
り、地滑り箇所を含む軟弱地盤にあつても間隙
水、湧水を排水せしめ、全体として沈下を招かな
い地滑り箇所、軟弱地盤箇所等の軽量盛土工法を
提供することを目的とする。

＜問題点を解決するための手段＞ 本発明は、所定の軟弱地盤の上面に、発泡ポリ
スチレン等よりなる球状粒体をアスフアルトと接
着剤でおこし状に固めた透水性の粒体排水板を適
宜間隔で埋設し排水手段とし、この上に単位体積
質量が小となる所定大の発泡スチロール板を所定
高さに積み重ねると共に、この積み重ねた発泡ス
チロール板の積層端面と、コンクリート、矢板等
の擁壁又は側部盛土の境目に前記粒体排水板と同
等構造をもつ裏込め材となる粒体排水板を介在
し、発泡スチロール板と擁壁又は側部盛土とを密
接し、且つ前記発泡スチロール板の最上位置に表
層覆土を施すものである。

この場合、表層覆土は、剪断、圧縮力大なる薄
板の耐圧発泡プラスチツク板、砂、路盤土、表層
等よりなる舗装構造とかコンクリート床盤をもつ
てなす。

また、第二の発明は、前記第一の発明において
発泡スチロール板の積み重ね時に、該発泡スチロ
ール板の各段又は適宜段ごとに支持補強用シート
を敷設介在したものである。

＜作用＞ 上記のような工法のため、軟弱地盤にあつての
盛土荷重は、盛土主体を単位体積質量の小さい発
泡スチロール板のために激減し、且つこの盛土材
と盛土及び軟弱地盤間に透水性の粒体排水板を配
してなるため、間隙水、湧水の排水を良好とする
ことと相俟つて沈下を招かない。特に、このこと
は片側が地滑り地域となる既設斜面であつても、
湧水を集水しえるために地滑り自体阻止し得、軟
弱地盤部への流動圧も及ぼさない。また、表層覆
土は、薄板の耐圧発泡プラスチツク板やコンクリ
ート床盤等の敷設をもつてなすため、上載荷重が
分散しこの点からも偏つた沈下をみない。更に、
軟弱度が大きくとも発泡スチロール板の積層間に
適宜シートを敷設介在することにより十分対処し
得る。

＜実施例＞ 以下、本発明を実施例の図面に基づいて説明す
れば、次の通りである。

第１図は、盛土すべき軟弱地盤Ａと片側をこれ
に連続せる地滑りを起し易い既設斜面Ｂ地域とし
た場合で、且つ他側の盛土を擁壁としたものであ
る。先ず、この擁壁１をコンクリート壁１ａと
し、これを斜面Ｂより所定の盛土幅ｌを隔てた位
置で所定の盛土高さl′をもつて構築する。次に、
この斜面Ｂに一定間隔をもつて掘削した細幅溝２
に粒体排水板３を落し込み埋設し排水壁３′を形
成する。この場合、粒体排水板３の構成は、発泡
ポリスチレンビーズを加熱し30〜60倍発泡した独
立気泡となる粒径２〜６mm程度の球状の発泡粒体
４群に、粘性、耐水性をもつアスフアルト５とポ
リマー系接着剤６をまぶすよう混ぜて所謂おこし
状の板体に固め透水基板７（例えば、北日本化学
工業株式会社製スチロドレン）よりなり、該透水
基板７には必要に応じ合成繊維製平織地で袋状と
なる透水生地８を被せる。この粒体排水板３の大
きさは、一般建築板材程度、例えば３×６（３尺
×６尺）の面積で厚さ200mmである。また、この
粒体排水板３の縦埋設に当つては、先ず第５図Ａ
に示すように偏平矩形の外枠９を、バイブレータ
等の土木機械（図示せず）の震動押圧で表面に直
交状となるよう縦打込みする工程と、この状態で
外枠９内の土砂Baをオーガー等の土木機械で掘
出し細幅溝２を形成する掘削工程を経て、該外枠
９内に粒体排水板３を落し込むセツト工程と外枠
９の抜き取り工程をもつてなすか、又は粒体排水
板３の下面にＵ字形集水管１０を埋設するとき
は、前記掘削工程後に、外枠９内に、下端にＵ字
形集水管１０を着脱自在に取付けた中子枠体１１
を挿入し、この集水管１０を細幅溝２の底面に少
し滅込ます管セツト工程を行ない（第５図Ｃ参
照）、この状態下で集水管１０を係止してなるボ
ルト軸杆１２を緩め、その下端のフツク１３を止
ピン１４から離反し（第６図参照）、この後中子
枠体１１を引上げる中子枠体抜き工程を経れば、
底部に集水管１０が敷設された状態となる。次
に、前記同様に外枠９内に粒体排水板３を落し込
めば、該粒体排水板３は集水管１０上に載置され
る。最後に、外枠９を引抜き周囲間隙を埋め戻す
工程を経れば、粒体排水板３は斜面Ｂに縦埋設と
なる。実際には、細幅溝２は粒体排水板３が落し
込み可能な最小間隙となつているため、外枠９の
引抜き時に周囲の土圧で自然と埋め戻される。ま
た、この細幅溝２は前記のように最小間隙の溝掘
削でよく、従つて斜面Ｂ部の全体の圧密状態に変
化を来たさない。尚、細幅溝２の形成に当つて
は、所定間隔を隔てた両側に矢板（図示せず）を
単に打込み、この中をオーガー等で掘削してもよ
い。

而して、斜面Ｂに粒体排水板３群配列で排水壁
３′を形成した後、擁壁１までの盛土空間Ｃに軽
量盛土材を積み重ねる。即ち、この軽量盛土材と
なる発泡プラスチツク板は、単位体積質量の小さ
な発泡スチロール板１５を用いる。この発泡スチ
ロール板１５の大きさは、例えば３×６（３尺×
６尺）の面積で厚さ420mmの板体を呈す。この場
合、先ず擁壁１の内側に前記同様な構成をもつ裏
込め材となる粒体排水板１６を並べ、また盛土空
間Ｃの底となる軟弱地盤Ａの上面に前記同様な構
成をもつ流水路用粒体排水板１７を所定間隔で敷
設する。但し、この流水路用粒体排水板１７は滲
透水の流れを良くするために傾斜ａを付ける。こ
の状態で発泡スチロール板１５を水平状態として
順次突き合せ位置が上下、左右にあつて交互とな
るよう積み重ねる。更に、この発泡スチロール板
１５の積層に当つては中間に積層板間の水抜きと
なる流水路用粒体排水板１８を介在させる。勿
論、これら粒体排水板１８，１７の基端は斜面Ｂ
部の粒体排水板３端に、先端を裏込め材となる粒
体排水板１６端に臨ませ、擁壁１部に設けた放水
路１９より外方へ排水する構成としてなる。

このように、積層された発泡スチロール板１５
の上面に表層覆土２０を施す。この表層覆土２０
は、第１図にあつては下側より圧縮性、剪断力の
大となる耐圧発泡プラスチツク板２１（例えば、
三菱油化株式会社製ユカフオーム）と砂２２と路
盤土２３及び最上面に表層２４を配設する舗装構
造である。但し、この耐圧発泡プラスチツク板２
１は圧縮強度2.5〜4.0Kg／cm²、剪断力15〜30Kg／
cm²の耐圧タイプであり、例えば圧縮強度4.0Kg／
cm²以上の値をとれば更に強度は増すが高価となり
実用的でなく、また2.5Kg／cm²以下の値では強度
的に弱く採用できない。

いまこの作用を説明すると、先ずこの盛土主体
となる発泡スチロール板１５は単位体積質量が小
さいため、軟弱地盤Ａに加わる応力が極小となる
ため、沈下をみない。また、この軟弱地盤Ａに溜
る飽和間隙水は、発泡スチロール板１５との境目
に位置する流水路用粒体排水板１７内に滲透流入
し、該粒体排水板１７自体のもつ透水性により順
次流下し放水路１９より擁壁１外に排水される。
ここにおける粒体排水板３，１６，１７，１８
は、内部構造が粒径２〜６mmの球状発泡粒体４を
固めた空孔溶接が約30％をもつてなるため、該排
水板内は一種の水路を構成し得る。但し、外周は
透水生地８で覆うフイルター作用をもち土砂等の
流入をみない。

また、地滑りの発生し易い斜面Ａ部にあつて
は、一定間隔をもつて粒体排水板３よりなる排水
壁３′が埋設形成されているため、地滑り要因の
一つとなる湧水を集水し、該排水壁３′自体が一
種の水路を呈し順次流下し前記軟弱地盤Ａとの境
目の前記流水路用粒体排水板１７を排水路として
擁壁１外へ導かれ、且つ斜面Ｂ上に直接接する盛
土材も発泡スチロール板１５の軽量盛土材のた
め、滑動となるほどの荷重がなく、これら全体に
て斜面Ｂ部に地滑りを発生させない。

更に、このことは表層覆土２０の構成を、薄板
でも十分な圧縮、剪断力をもつ耐圧発泡プラスチ
ツク板２１より砂２２、路盤土２３、表層２４の
舗装構造とし、上載荷重を分散し、発泡スチロー
ル板１５に対し垂直荷重を与えることと相俟つて
側方流動圧等の外力を招かず擁壁１の保護をも兼
ねる。

第７図は表層覆土をコンクリート床盤とした他
の実施例を示すもので、これは表層覆土２０の構
成をあまり厚くしたくなく且つ更に軽量を狙つた
ものである。

この場合の実施例にあつては、擁壁１の構成を
Ｈ鋼１ｂとその中間に矢板１ｃを配設してなり、
盛土空間ｃには前記同様下方より流水路用粒体排
水板１７、発泡スチロール板１５、流水路用粒体
排水板１８、発泡スチロール板１５と順次積層
し、この上面に所定形状のコンクリート床盤２５
を載置し覆土としたものである。また、この実施
例では斜面Ｂの粒体排水板３の下端にＵ字形集水
管１０を設け、該集水管１０に連通するＵ字形集
水管１０′を流水路用粒体排水板１７の所定位置
に配設し、この先端を擁壁１外に導き、側溝２６
に直接排水させる如くしてなる。

ここにあつも、コンクリート床盤２５の表層覆
土２０と発泡スチロール板１５の軽量盛土材が軽
く軟弱地盤Ａ内で応力が増さないために沈下を招
かない。勿論、斜面Ｂ自体に地滑りもみない。

第８図は軟弱地盤に所定高さをもつ道路盛土を
行なう他の実施例を示すものである。これは盛土
すべき所定の軟弱地盤Ａの上面に、前途同様な粒
体排水板１７を適宜間隔をもつて埋設した後に所
定大の発泡スチロール板１５群を、この重ね継部
が交互に位置するよう順次積み重ね所定高さの積
層とすると共に、この階段状となる積層端面１５
ａに前記構成をもつ粒体排水板１６を連続して配
設し、該粒体排水板１６の外側に一般の土砂より
なる側部盛土２７を行ない、且つ最上の発泡スチ
ロール板１５上に前記同様耐圧発泡プラスチツク
板２１、砂２２、路盤土２３、アスフアルト等の
表層２４を設け道路盛土とする。勿論、この場合
にあつても粒体排水板１６一端に側部盛土２７外
となる側溝２６に臨む粒体排水板１７よりなる排
水路を備える。

この道路盛土にあつても、盛土荷重の主体は発
泡スチロール板１５となる発泡プラチツク板より
なるため、盛土荷重は激減し沈下を招かず、且つ
該発泡スチロール板１５と側部盛土２７間にも粒
体排水板１６となる排水手段を介在してなるた
め、盛土接続が確実で亀裂を生じない。

第９図は軟弱度が大なる軟弱地盤上に道路盛土
を行なう他の実施例を示すものである。これは前
記盛土工程中にあつて、発泡スチロール板１５の
敷設に当つて各段又は適宜段ごとにメツシユタイ
プ、フラツトヤーンタイプ、ポリプロピレン平織
タイプ等よりなる透水性のシート２８を敷設介在
し支持補強としたものである。即ち、発泡スチロ
ール板１５の積層時に支持補強となるシート２８
を各段又は適宜段の全域（全面）に敷設の組合せ
としたことにより、支持力が向上し軟弱度の大な
る箇所にあつての盛土に十分対処し得、沈下をみ
ない。

＜発明の効果＞ 上述のように本発明の地滑り箇所、軟弱地盤箇
所等の軽量盛土工法は、盛土材を単位体積質量の
小さい発泡スチロール板を主体とし適宜高さに積
層し、該発泡スチロール板の積層端面及び底面に
裏込め、流水路用となる粒体排水板を介在し、且
つ最上の発泡スチロール板上に表層覆土を施す工
程を採ることにより、軟弱地盤面に対する盛土荷
重を最小とし、且つ間隙水、湧水等を排水し得る
ために沈下を招かない。特に、片側が地滑り地域
となる斜面部にあつても粒体排水板を埋設し湧水
等を集水し得るため、地滑りをみず、延いては軟
弱地盤側に流動圧を与えず盛土バランスを崩すこ
ともない。また、側部盛土の接続も良好で軽量盛
土部材間に亀裂をみず、且つ最上の表層覆土を薄
板となる耐圧の発泡プラスチツク板を基材とした
舗装構造とか、コンクリート床盤の並べ等をもつ
てなすため、積層の発泡スチロール板に対し均等
荷重を与え、部分的な沈下を発生させる虞もな
い。更に、軟弱度の大なる軟弱地盤にあつては、
積層の発泡スチロール板の積層間に支持補強用シ
ートを適宜敷設介在することにより、支持力を増
し十分対処し得る等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので、第１図は
擁壁使用の要部縦断側面図、第２図は斜面部の粒
体排水板の埋設状態を示す正面図、第３図は粒体
排水板の一部切欠斜面図、第４図は集水管の斜面
図、第５図Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄは斜面部の粒体排水板
の埋設順を示す説明図、第６図は中子枠体の斜面
図、第７図は他の実施例を示す要部縦断側面図、
第８図は同道路盛土使用の要部縦断面図、第９図
は同シート使用の縦断面図である。 １……擁壁、３……粒体排水板、４……発泡粒
体、５……アスフアルト、６……接着剤、７……
透水基板、８……透水生地、１５……発泡スチロ
ール板、１６……裏込め材となる粒体排水板、１
７，１８……流水路用粒体排水板、２８……シー
ト。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 所定の軟弱地盤の上面に、発泡ポリスチレン
   等よりなる球状粒体をアスフアルトと接着剤でお
   こし状に固めた透水性の流水路用粒体排水板を適
   宜間隔で埋設してから発泡スチロール板を所定高
   さに積み重ねると共に、この積み重ねた発泡スチ
   ロール板の積層端面とコンクリート、矢板等の擁
   壁又は側部盛土の境目に、前記粒体排水板と同等
   構造をもつ裏込め材となる粒体排水板を介在して
   発泡スチロール板と擁壁又は側部盛土とを密接
   し、且つ前記積層の発泡スチロール板の最上位置
   に表層覆土を施すことを特徴とする地滑り箇所、
   軟弱地盤箇所等の軽量盛土工法。 ２ 表層覆土が、圧縮強度2.5〜4.0Kg／cm²、剪断
   力15〜30Kg／cm²の耐圧発泡プラスチツク板と砂と
   路盤土及び表層の舗装構造である特許請求の範囲
   １項記載の地滑り箇所、軟弱地盤箇所等の軽量盛
   土工法。 ３ 表層覆土が、コンクリートと床盤である特許
   請求の範囲第１項記載の地滑り箇所、軟弱地盤箇
   所等の軽量盛土工法。 ４ 所定の軟弱地盤の上面に、発泡ポリスチレン
   等よりなる球状粒体をアスフアルトと接着剤でお
   こし状に固めた透水性の流水路用粒体排水板を適
   宜間隔で埋設してから発泡スチロールを所定高さ
   に積み重ねると共に、該発泡スチロール板の適宜
   積層段ごとに支持補強用シートを敷設介在し、更
   にこの発泡スチロール板の積層端面とコンクリー
   ト、矢板等の擁壁又は側部盛土の堺目に、前記粒
   体排水板と同等構造をもつ粒体排水板を介在して
   発泡スチロール板と擁壁又は側部盛土とを密接
   し、且つ前記積層の発泡スチロール板の最上位置
   に表層覆土を施すことを特徴とする地滑り箇所、
   軟弱地盤箇所等の軽量盛土工法。