JP5455878B2 - 被検物質の電気化学的検出方法 - Google Patents
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Description
(1)作用電極上に、被検物質に結合する結合物質と標識物質を含有する修飾標識物質とが結合した溶解性担体を有する標識結合物質と、被検物質とを含む複合体を形成すること、(2)この複合体中の標識結合物質に含まれる溶解性担体を溶解させること、及び
(3)作用電極上に修飾標識物質を誘引させること
により、上記課題を解決することができることを見出した。すなわち、本発明者らは、被検物質の電気化学的な検出に際して、前記(1)〜(3)の操作を行なうことにより、被検物質の大きさ等によらず、被検物質の量に応じた標識物質に基づくシグナルを効率よく得ることができ、高感度で被検物質を電気化学的に検出することができることを見出した。
本発明は、かかる本発明者らの知見に基づいてなされたものである。
被検物質を含む試料を、作用電極に接触させて、作用電極上に捕捉する捕捉工程、
前記被検物質が捕捉された作用電極に、被検物質に結合する結合物質と標識物質を含有する修飾標識物質とが結合した溶解性担体を有する標識結合物質を接触させて、前記作用電極上に、前記被検物質と前記標識結合物質とを含む複合体を形成させる形成工程、
前記作用電極上に形成された複合体に含まれる前記溶解性担体を溶解させ、前記修飾標識物質を遊離させる遊離工程、
前記修飾標識物質を作用電極上に誘引する誘引工程、及び
前記修飾標識物質中の標識物質を電気化学的に検出する検出工程
を含む被検物質の電気化学的検出方法に関する。
本発明の実施の形態を説明するにあたり、まず、本明細書で用いられる用語の定義を示す。
本明細書において、捕捉物質(図1中、「10」)とは、被検物質Sを捕捉する物質であって、作用電極161上に固定化されている物質をいう。
標識結合物質(図1中、「20」)とは、溶解性担体(図1中、「21」)と、修飾標識物質(図1中、「23」)と、結合物質(図1中、「22」)とを含む物質をいう。図1に示される標識結合物質20においては、溶解性担体21上に修飾標識物質23と、結合物質22とが固定化されている。
結合物質22は、被検物質Sを捕捉する物質であって、溶解性担体21上に固定化されている物質である。
また、修飾標識物質(図1中、「23」)とは、標識物質(図1中、「24」)を含み、作用電極へ誘引可能な物質をいう。かかる「修飾標識物質」の用語の概念には、標識物質(図1中、「24」)と誘引用修飾物質(図1中、「25」)とからなる物質が包含される。また、標識物質(図1中、「24」)が、そのままの状態で作用電極へ誘引可能である場合には、「修飾標識物質」の用語の概念には、当該標識物質単独のものが包含される。
つぎに、本発明の被検物質の電気化学的検出方法に用いられる検出装置の一例を添付図面により説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る被検物質の電気化学的検出方法に用いられる検出装置を示す斜視図である。この検出装置101は、光化学的に活性な物質を標識物質として用い、光電気化学的に被検物質を検出する電気化学的検出方法に用いる検出装置である。
光源113は、検査チップ120の作用電極上に存在させた標識物質に光を照射して当該標識物質を励起させる。光源113は、励起光を発生する光源であればよい。かかる光源としては、例えば、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色LED、青色LED、緑色LED、赤色LED等)、レーザー(炭酸ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光等が挙げられる。前記光源のなかでは、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED、レーザーまたは太陽光が好ましい。前記光源のなかでは、レーザーがより好ましい。前記光源は、必要に応じて、分光器やバンドパスフィルタにより、特定波長領域の光のみが放出されるものであってもよい。
電流計114は、励起された検出物質から放出される電子に起因して検査チップ120内を流れる電流を測定する。
電源115は、検査チップ120に設けられた電極に対して所定の電位を印加する。
A/D変換部116は、電流計114によって測定された光電流値をデジタル変換する。
制御部117は、CPU、ROM、RAM等から構成され、ディスプレイ112、光源113、電流計114及び電源115の動作を制御する。また、制御部117は、A/D変換部16でデジタル変換された光電流値から、予め作成された光電流値と標識物質の量との関係を示す検量線に基づき、標識物質の量を概算し、被検物質の量を算出する。
ディスプレイ112は、制御部117で概算された検出物質の量等の情報を表示する。
前記標識物質を含む検出物質を電気化学発光により検出する場合、検出装置は、標識物質から生じる光等を検出するためのセンサをさらに備えていればよい。
つぎに、本発明の一実施の形態に係る被検物質の電気化学的検出方法に用いられる検査チップ120の構成を説明する。図4は、本発明の一実施の形態に係る被検物質の電気化学的検出方法に用いられる検査チップを示す斜視図である。図5は、図4に示される検査チップのAA線での断面図である。
図7(a)は、光電気化学検出法に用いられる下基板の作用電極を含む部分の一例を模式的に表した断面説明図である。
図7(a)に示される作用電極161は、基板本体140aと、この基板本体140a上に形成された作用電極本体162とから構成されている。そして、この作用電極本体162の表面には、捕捉物質10が固定化されている。
導電層163の厚さは、好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは10〜200nmである。
なお、導電性材料は、ガラス、プラスチック等の非導電性物質からなる非導電性基材の表面に導電性を有する材料からなる導電材層が設けられた複合基材であってもよい。かかる導電材層の形状は、薄膜状及びスポット状のいずれであってもよい。導電材層を構成する材料としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)等が挙げられる。
導電層163は、例えば、当該導電層163を構成する材料の種類に応じた膜形成方法により形成させることができる。膜形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、インプリント法、スクリーン印刷法、めっき処理法、ゾルゲル法、スピンコート法、浸漬法、気相蒸着法等が挙げられる。
前記電子受容物質としては、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の単体半導体;チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物を含む酸化物半導体;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バナジウム、ニオブ酸カリウム等のペロブスカイト型半導体;カドニウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物を含む硫化物半導体;ガリウム、チタン等の窒化物を含む半導体;カドミウム、鉛のセレン化物からなる半導体(例えば、カドミウムセレナイド等);カドミウムのテルル化物を含む半導体;亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化合物からなる半導体;ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等の化合物を含む半導体;カーボン等の化合物半導体または有機物半導体等が挙げられる。なお、前記半導体は、真性半導体及び不純物半導体のいずれであってもよい。
電子受容層164の厚さは、通常、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜10nmである。
かかる電子受容層164は、電子受容層164を構成する材料の種類に応じて、導電層163の形成に用いられる手法と同様の手法により形成させることができる。
導電層163が前記複合基材である場合、電子受容層164は、前記導電材層上に形成される。
かかる捕捉物質10は、被検物質Sの種類に応じて、適宜選択することができる。前記捕捉物質10としては、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、糖鎖、抗体、特異的な認識能を持つナノ構造体等が挙げられる。
作用電極本体162の表面上における捕捉物質10の固定量は、特に限定されるものではない。作用電極本体162の表面上における捕捉物質10の固定量は、例えば、用途及び目的に応じて設定してもよい。
作用電極本体162の表面への捕捉物質10の固定は、作用電極本体162に化学吸着する結合基等を介して行うことができる。前記結合基としては、例えば、チオール基、ヒドロキシル基、リン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ基等が挙げられる。また、作用電極本体162の表面への捕捉物質10の固定は、光硬化性樹脂や物理吸着により行なわれていてもよい。
本発明においては、図7(b)に示されるように、導電層163は、基板本体140aの表面に形成された絶縁層165上に形成されていてもよい。この場合、基板本体140aの表面に、順に、絶縁層165、導電層163、電子受容層164が形成されている。
かかる絶縁層165は、絶縁体材料から構成されている。前記絶縁体材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック類やフッ化物樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。かかる絶縁層165は、絶縁体材料の種類に応じた手法により形成させることができる。前記手法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、スクリーン印刷、インプリント法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法等が挙げられる。
検査チップを酸化還元電流・電気化学発光検出法に用いる場合、作用電極161は、用いられる溶液等に対して安定であり、かつ導電性を有する材料からなる電極であればよい〔図9(a)及び(b)参照〕。かかる電極としては、例えば、グラファイト、グラシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンペースト、カーボンファイバー等からなる炭素電極、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム等からなる貴金属電極、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉛等からなる酸化物電極、電子受容物質としてのケイ素、ゲルマニウム、酸化亜鉛、硫化カドミウム、二酸化チタン、ヒ化ガリウム等からなる半導体電極、チタンからなるチタン電極等が挙げられる。
本発明においては、作用電極161、対極166及び参照電極169は、各電極が他の電極と接触しないように間隔保持部材150の枠内に配置されていればよい。したがって、作用電極161、対極166及び参照電極169は、異なる基板本体上に形成されてもよい。すなわち、検査チップは、基板本体131aに試料注入口131b及び参照電極169が形成された上基板131〔図10(A)参照〕と、基板本体141aに作用電極161及び対極166が形成された下基板141〔図10(B)参照〕とを有するものであってもよい。また、検査チップは、基板本体132aに試料注入口132b、対極166及び参照電極169が形成された上基板132〔図11(A)参照〕と、基板本体142aに作用電極161が形成された下基板142〔図11(B)参照〕とを有するものであってもよい。
本発明の被検物質の電気化学的検出方法は、
(A)被検物質を含む試料を、作用電極に接触させて、作用電極上に捕捉する捕捉工程、(B)前記被検物質が捕捉された作用電極に、被検物質に結合する結合物質と標識物質を含有する修飾標識物質とが結合した溶解性担体を有する標識結合物質を接触させて、前記作用電極上に、前記被検物質と前記標識結合物質とを含む複合体を形成させる形成工程、
(C)前記作用電極上に形成された複合体に含まれる前記溶解性担体を溶解させ、前記修飾標識物質を遊離させる遊離工程、
(D)前記修飾標識物質を作用電極上に誘引する誘引工程、
及び
(E)前記修飾標識物質中の標識物質を電気化学的に検出する検出工程
を含むことを特徴とする。
(1)作用電極上における被検物質と標識結合物質とを含む複合体の形成、
(2)この複合体中の標識結合物質に含まれる溶解性担体の溶解、及び
(3)作用電極上への修飾標識物質の誘引
まず、光電気化学検出方法について説明する。図13は、本発明の一実施の形態に係る被検物質の電気化学的検出方法(光電気化学検出法)の処理手順を示す工程説明図である。光電気化学検出方法には、上述した図1に示される検出装置及び図4に示される検査チップを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
以下、図4に示される検査チップを用いる場合を例としてあげて説明する。
前記標識物質の具体例としては、金属フタロシアン、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素、クロロフィル系色素、エオシン系色素、マーキュロクロム系色素、インジゴ系色素、BODIPY系色素、CALFluor系色素、オレゴングリーン系色素、ロードル(Rhodol)グリーン、テキサスレッド、カスケードブルー、核酸(DNA、RNA等)、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、Ln2O3:Re、Ln2O2S:Re、ZnO、CaWO4、MO・xAl2O3:Eu、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce、Tb、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5及びCy9(いずれも、アマシャムバイオサイエンス社製);Alexa Fluor 355、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750及びAlexa Fluor 790(いずれも、モレキュラープローブ社製);DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−636、EVOblue10、EVOblue30、DY−647、DY−650、DY−651、DY―800、DYQ−660及びDYQ−661(いずれも、Dyomics社製);Atto425、Atto465、Atto488、Atto495、Atto520、Atto532、Atto550、Atto565、Atto590、Atto594、Atto610、Atto611X、Atto620、Atto633、Atto635、Atto637、Atto647、Atto655、Atto680、Atto700、Atto725及びAtto740(いずれも、Atto−TEC GmbH社製);VivoTagS680、VivoTag680及びVivoTagS750(いずれも、VisEnMedical社製)等が挙げられる。なお、前記LnはLa、Gd、Lu又はYを示し、Reはランタニド族元素を示し、Mはアルカリ土類金属元素を示し、xは0.5〜1.5の数を示す。標識物質の他の例については、例えば、特許第4086090号公報、特開平7−83927号公報、特願2008−154179号公報等を参照することができる。
ここで、誘引用修飾物質として、核酸を用いる場合、後述する修飾標識物質23aを作用電極161に誘引する観点および溶解性担体への結合効率の観点から、当該核酸の長さは1塩基以上10000塩基以下、より具体的には10塩基〜40塩基が好ましい。
前記溶解性担体21のなかでは、取り扱いが容易であることから、金ナノ粒子(金微粒子)が好ましい。
なお、溶解性担体21は、修飾標識物質を固定する表面部分のみを溶解させることで、修飾標識物質を遊離させることができるのであれば、異なる材料からなる複数の層を有する担体であってもよい。例えば、酸化鉄(磁性)ナノ粒子周囲に金ナノ粒子を結合させた金−酸化鉄(磁性)ナノ粒子のうち金ナノ粒子のみが溶解される担体等が挙げられる。
溶解性担体21が前記金属微粒子である場合、検査チップ120を構成する基板本体の材料や電極(作用電極、対極及び参照電極)の材料を劣化させない条件下に、金属の酸化溶解を行なうことにより、溶解性担体21を溶解させることができる。金属微粒子の溶解には、水酸化アルカリを含む液体、シアン化アルカリを含む液体、フェロシアン化塩を含む液体、ハロゲンとハロゲン化物との混合物を含む液体等を用いることができる。水酸化アルカリを含む液体としては、例えば、水酸化カリウム等の溶解液が挙げられる。また、シアン化アルカリを含む液体としては、例えば、シアン化ナトリウム(NaCN)と水酸化ナトリウムとを含む水溶液等が挙げられる。フェロシアン化塩を含む液体としては、例えば、フェロシアン化カリウムとシアン化カリウムとの混合物等が挙げられる。ハロゲン単体とハロゲン化塩との混合物としては、ヨウ素とヨウ化アルカリ(例えば、ヨウ化アンモニウム等)との混合物、臭素と臭化アルカリ(例えば、臭化アンモニウム)との混合物等が挙げられる。これらの溶解液に用いる溶媒としては、例えば、アセトニトリル等の有機溶媒、また、純水等が挙げられる。例えば、溶解性担体21として、金微粒子を用いた場合、金の剥離液やエッチング液として知られる液体を用いることができる。
溶解性担体21が前記ポリマー微粒子である場合、検査チップ120を構成する基板本体の材料や電極(作用電極、対極及び参照電極)の材料を劣化させない条件下に、有機溶媒を当該溶解性担体21に接触させること;当該溶解性担体21を構成するポリマーの融点よりも高い温度に前記溶解性担体21を加熱すること等により、溶解性担体21を溶解させることができる。前記有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、エーテル化合物、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、アセトン、塩化メチレン、シクロペンタノン等が挙げられる。
溶解性担体21が前記高分子ミセルやリポソームである場合、ミセル構造を崩壊させる超音波処理や水による希釈等により、溶解性担体21を溶解させることができる。
溶解性担体21が前記多孔性微粒子である場合、当該溶解性担体21を構成する多糖類のゲルの融点以上の温度に前記溶解性担体21を加熱すること等により、溶解性担体21を溶解させることができる。
溶解性担体21が金ナノ粒子(金微粒子)である場合、ヨウ化物イオンとアセトニトリルとを含有する液体を用いることにより、当該溶解性担体21を容易に溶解させることができる。
1) 誘引液の疎水性・親水性を変更することにより、修飾標識物質23aと作用電極161との間の疎水性相互作用若しくは親水性相互作用を大きくすること〔すなわち、修飾標識物質23aを、極性の違いによって、作用電極161に誘引すること〕(誘引方法1)、
2) 修飾標識物質23aの電荷に応じて、正又は負の電圧を作用電極161に印加することにより、電気泳動効果を大きくすること〔すなわち、修飾標識物質23aを、電気泳動効果を利用することによって、作用電極161)に誘引すること〕(誘引方法2)等によって行なうことができる。前記の誘引方法1及び誘引方法2は、それぞれ単独で行なってもよく、両者を組み合わせて行なってもよい。
そこで、修飾標識物質23aが、標識物質24a又は誘引用修飾物質25として核酸を含む場合、前記核酸抽出・精製方法に用いられる溶媒を誘引液として用いることにより、修飾標識物質23aを作用電極161の近傍に誘引させることができる。この場合、カオトロピックイオンとして、グアニジンイオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、チオシアン酸イオン又はこれらの任意の組み合わせを用い、作用電極161として核酸を結合する電極(例えば、スズをドープした酸化インジウム等)を用いることが好ましい。
なお、誘引液が、酸化された状態の標識物質24aに電子を供給する性質を有し、標識物質24aの電気化学的な検出が可能である場合、工程(E)において、この誘引液をそのまま用いてもよい。
非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル(CH3CN)等のニトリル類;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート類、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリノン、ジアルキルイミダゾリウム塩等の複素環化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒のなかでは、アセトニトリルが好ましい。プロトン性極性溶媒及び非プロトン性極性溶媒は、単独で、又は両者を混合して用いることができる。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物は、水とアセトニトリルとの混合物が好ましい。
かかる工程(E)では、光電流を定量することにより、被検物質の量を調べることができる。
つぎに、酸化還元電流・電気化学発光検出法について説明する。図14は、本発明の他の実施の形態に係る被検物質の電気化学的検出方法(酸化還元電流・電気化学発光検出法)の処理手順を示す工程説明図である。
標識物質24bは、電圧を印加することにより酸化還元電流を生じる標識物質又は電圧を印加することにより発光する標識物質である。
電圧を印加することにより酸化還元電流を生じる標識物質としては、例えば、電気的に可逆的な酸化還元反応を起こす金属を中心金属として含む金属錯体等が挙げられる。このような金属錯体としては、例えば、トリス(フェナントロリン)亜鉛錯体、トリス(フェナントロリン)ルテニュウム錯体、トリス(フェナントロリン)コバルト錯体、ジ(フェナントロリン)亜鉛錯体、ジ(フェナントロリン)ルテニュウム錯体、ジ(フェナントロリン)コバルト錯体、ビピリジンプラチナ錯体、ターピリジンプラチナ錯体、フェナントロリンプラチナ錯体、トリス(ビピリジル)亜鉛錯体、トリス(ビピリジル)ルテニュウム錯体、トリス(ビピリジル)コバルト錯体、ジ(ビピリジル)亜鉛錯体、ジ(ビピリジル)ルテニュウム錯体、ジ(ビピリジル)コバルト錯体等が挙げられる。
また、酸化還元電流・電気化学発光検出法においても、誘引用修飾物質としても利用可能な核酸を標識物質として用いてもよい。標識物質23bとして核酸を用いた場合、核酸由来の酸化還元電流として、アデニン、チミン、グアニン、シトシン又はウラシルに由来する酸化還元電流を利用することができる。
電圧を印加することにより発光する標識物質としては、例えば、ルミノール、ルシゲニン、ピレン、ジフェニルアントラセン、ルブレン等が挙げられる。
これらの標識物質の発光は、例えば、ホタルルシフェリン、デヒドロルシフェリンのようなルシフェリン誘導体、フェニルフェノール、クロロフェノールのようなフェノ−ル類若しくはナフトール類のようなエンハンサ−を用いることにより増強することが可能である。
なお、誘引用修飾物質25及び結合物質22は、光電気化学検出法における誘引用修飾物質25及び結合物質22と同様である。
この場合、酸化還元電流を定量することにより、被検物質Sの量を調べることができる。
スパッタリング法により、二酸化ケイ素(SiO2)からなる基板本体上に、スズをドープした酸化インジウムの薄膜(厚さ200nm)からなる作用電極本体を形成した。前記薄膜は、導電層と電子受容層とを兼ねている。つぎに、前記作用電極本体に、電流計と接続するための作用電極リードを接続した。
スパッタリング法により、二酸化ケイ素(SiO2)からなる基板本体上に、厚さ200nmの白金薄膜(導電層)からなる対極を形成し、対極基板を得た。前記対極部には電流計と接続するための対極リードを接続した。これにより、対極基板を得た。
修飾標識物質として、3’末端をチオール化した24ヌクレオチド長のDNA〔図15(A)(d)中の「25」;以下、「誘引用修飾物質25」という。〕と、AlexaFluor750(インビトロジェン社製)〔図15(A)(d)中の「24a」;以下、「標識物質24a」という〕とからなる複合体〔図15(A)(d)中、「23a」〕を使用した。
リン酸緩衝食塩水(PBS)に、アスコルビン酸を電解質として、その濃度が0.6Mとなるように添加して、電解液を得た。
アセトニトリルとエチレンカーボネートとを体積比で2:3となるように混合し、非プロトン性極性溶媒を得た。前記非プロトン性極性溶媒に、電解質塩として、テトラプロピルアンモニウムヨーダイドをその濃度が0.6Mとなるように溶解させた。得られた溶液に、さらに電解質として、ヨウ素をその濃度が0.06Mとなるように溶解させ、溶解誘引電解液を得た。
製造例1で得られた作用電極基板の作用電極本体の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.1mm)を配置した。その後、この作用電極基板とシリコーンゴムとに囲まれた空間に、マウスIgG(被検物質S)を含有する試料〔組成:1μgマウスIgG/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕30μLを供し、前記作用電極基板を25℃で60分間静置した。これにより、作用電極本体162上の捕捉物質10に、被検物質Sを捕捉させた〔図15(A)(a)参照〕。
製造例1で得られた作用電極基板の作用電極本体の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.1mm)を配置した。その後、この作用電極基板とシリコーンゴムとに囲まれた空間に、マウスIgG(被検物質S)を含有する試料〔組成:1μgマウスIgG/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕30μLを供し、前記作用電極基板を25℃で60分間静置した。これにより、作用電極本体162上の捕捉物質10に、被検物質Sを捕捉させた〔図18(A)参照〕。
製造例1で得られた作用電極基板の作用電極本体の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.1mm)を配置した。その後、この作用電極基板とシリコーンゴムとに囲まれた空間に、マウスIgGを含有する試料〔組成:1μgマウスIgG/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕30μLを供し、前記作用電極基板を25℃で30分間静置した。
製造例5で得られた溶解誘引電解液(実験番号13)又は製造例4で得られた電解液(実験番号14)に、24ヌクレオチド長のAlexaFluor750標識DNAをその濃度が1nMとなるように溶解し、実験番号13の試料又は実験番号14の試料を得た。ここで、製造例5で得られた溶解誘引電解液は、AlexaFluor750標識DNAを作用電極に誘引する作用(誘引作用)を有する。一方、製造例4で得られた電解液は、誘引作用を有していない。
金ナノ粒子(溶解性担体21)に、第1結合物質22cと、修飾標識物質23aと、誘引用修飾物質25(3’末端をチオール化した24ヌクレオチド長のDNA)とを、第1結合物質22c:修飾標識物質23a:誘引用修飾物質25(モル比)が1:1:8(製造例6)、1:3:6(製造例7)、1:9:0(製造例8)となるように混合し、AlexaFluor750/ビオチン(数量比)が1/1の第1修飾結合物質〔図23(A)中、「20c2」参照;製造例6〕、3/1の第1修飾結合物質〔図23(B)中、「20c3」参照;製造例7〕又は9/1の第1修飾結合物質〔図23(C)中、「20c4」参照;製造例8〕を得た。得られた第1修飾結合物質20c2、第1修飾結合物質20c3又は第1修飾結合物質20c4を濃度が1nMとなるように0.1体積%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween−20)含有トリス緩衝溶液(TBS-T)に添加し、混合して溶液A2(製造例6)、溶液A3(製造例7)又は溶液A4(製造例8)を得た。
製造例1で得られた作用電極基板の作用電極本体の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.1mm)を配置した。その後、この作用電極基板とシリコーンゴムとに囲まれた空間に、試料1〔組成:1μgマウスIgG(被検物質S)/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕30μL又は試料2〔組成:0μgマウスIgG(被検物質S)/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕を供し、前記作用電極基板を25℃で60分間静置した。
製造例1で得られた作用電極基板の作用電極本体の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.1mm)を配置した。その後、この作用電極基板とシリコーンゴムとに囲まれた空間に、試料3〔組成:3ngマウスIgG(被検物質S)/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕30μL、試料4〔組成:30ngマウスIgG(被検物質S)/mL(1質量%ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝溶液(TBS-T))〕又は試料5〔300ngマウスIgG(被検物質S)/mLリン酸緩衝液〕を供し、前記作用電極基板を25℃で60分間静置した。
20 標識結合物質
21 溶解性担体
22 結合物質
23 修飾標識物質
24 標識物質
25 誘引用修飾物質
101 検出装置
111 チップ受入部
112 ディスプレイ
113 光源
114 電流計
115 電源
116 A/D変換部
117 制御部
120 検査チップ
120a 空間
130 上基板
130a 基板本体
130b 試料注入口
131 上基板
131a 基板本体
131b 試料注入口
132 上基板
132a 基板本体
132b 試料注入口
133 上基板
133a 基板本体
133b 試料注入口
140 作用電極基板(下基板)
141 作用電極基板(下基板)
142 作用電極基板(下基板)
143 作用電極基板(下基板)
140a 基板本体
141a 基板本体
142a 基板本体
143a 基板本体
150 間隔保持部材
151 間隔保持部材
151a 部材本体
161 作用電極
162 作用電極本体
163 導電層
164 電子受容層
165 絶縁層
166 対極
169 参照電極
171 電極リード
172 電極リード
173 電極リード
S 被検物質
Claims (16)
- 被検物質を電気化学的に検出する方法であって、
被検物質を含む試料を、作用電極に接触させて、作用電極上に捕捉する捕捉工程、
前記被検物質が捕捉された作用電極に、被検物質に結合する結合物質と標識物質を含有する修飾標識物質とが結合した溶解性担体を有する標識結合物質を接触させて、前記作用電極上に、前記被検物質と前記標識結合物質とを含む複合体を形成させる形成工程、
前記作用電極上に形成された複合体に含まれる前記溶解性担体を溶解させ、前記修飾標識物質を遊離させる遊離工程、
前記修飾標識物質を作用電極上に誘引する誘引工程、
及び
前記修飾標識物質中の標識物質を電気化学的に検出する検出工程
を含む被検物質の電気化学的検出方法。 - 修飾標識物質が、さらに誘引用修飾物質を含む、請求項1に記載の方法。
- 誘引用修飾物質が、核酸である、請求項2に記載の方法。
- 核酸が、DNA又はRNAである、請求項3に記載の方法。
- 誘引工程が、前記修飾標識物質を、極性の違いによって作用電極上に誘引する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- カオトロピックイオンを含有する液体によって、前記極性の違いを生じさせる、請求項5に記載の方法。
- カオトロピックイオンが、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、グアニジンイオン、チオシアン酸イオン、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選択された少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
- 遊離工程が、溶解性担体を溶解する溶解液によって前記溶解性担体を溶解させる工程である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 溶解性担体が、溶解液に溶解する金属またはその合金からなる、請求項8に記載の方法。
- 溶解性担体が、金ナノ粒子である、請求項9に記載の方法。
- 溶解液が、ヨウ素またはヨウ化物を含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
- 溶解性担体が、熱により溶融する担体であり、
遊離工程が、当該溶解性担体を加熱することによって前記溶解性担体を溶解させる工程である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。 - 検出工程が、電解液の存在下において、修飾標識物質中の標識物質を電気化学的に検出する工程である、請求項1〜12いずれかに記載の方法。
- 遊離工程、誘引工程および検出工程が、ヨウ化物イオンとアセトニトリルとを含有する液体中で行なわれる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
- 形成工程の後に、遊離の標識結合物質を除去する洗浄工程をさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
- 前記作用電極が、作用電極本体と、この作用電極本体上に固定化され、前記被検物質を捕捉する捕捉物質とからなる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
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