JP5480105B2 - 電極基板、作用電極および検査チップ - Google Patents

電極基板、作用電極および検査チップ Download PDF

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Description

本発明は、電極基板、作用電極および検査チップに関する。より詳しくは、微量な被検物質の検出または定量などや、これらを利用する疾病の臨床検査、診断などに有用な、電極基板、作用電極および検査チップに関する。
疾病の臨床検査や診断は、生体試料中に含まれる前記疾病に関連する遺伝子、タンパク質などの指標の存在の有無やそれらの存在量(発現量)を調べることなどにより行なわれている。かかる臨床検査や診断として、前記疾病に関連する指標を電気化学的または光電気化学的に検出する方法が知られている。電気化学的な検出方法では、前記指標となる物質を捕捉する捕捉物質が固定された導電体からなる電極を用いて、前記指標を検出する(特許文献1および2を参照)。一方、光電気化学的な検出方法は、前記指標となる物質を捕捉する捕捉物質が固定された半導体からなる電極を用いて、前記指標を検出する(特許文献3を参照)。
ここで、特許文献1および2には、導電体からなる電極を用いた電気化学的な検出方法において、電極を構成する導電体の表面を絶縁体で被覆することが記載されている。また、前記特許文献には、絶縁体の一部に前記導電体が露出する開口部を設けることが記載されている。これらの特許文献に記載の電極では、前記開口部の大きさを調節することにより、電極本体上の核酸(捕捉物質)の固定量が正確に制御されている。したがって、前記電極によれば、良好な再現性および定量性を確保することができる。また、前記特許文献1および2には、前記開口部の大きさを小さくして電極における捕捉物質の量を減らすことにより、当該捕捉物質に非特異的に結合する挿入剤、標識物質などの量を相対的に低減させることが記載されている。したがって、前記電極によれば、挿入剤、標識物質などに基づく非特異的な信号を抑制することができる。
特許第4309942号公報 特許第4309943号公報 特許第4086090号公報
ここで、光電気化学的な検出方法では、前記半導体からなる電極を用いて、光励起により電子を生じる検出物質を検出する。この際、光により半導体も励起し電子を生じる場合があり、この電子がノイズ電流となることがある。そのため、検出物質が微量である場合、ノイズ電流の影響により検出物質を十分に検出できない場合があった。よって、微量な検出物質を検出するためには、さらなる検出感度の向上が望まれていた。
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、検出物質を高い感度で検出することができる、電極基板、作用電極および検査チップを提供することを目的とする。
光電気化学的な検出物質の検出では、電極に固定化された捕捉物質に捕捉された検出物質に光を照射することにより、検出物質から生じた電子を検出する。すなわち、光が照射された電極部分の捕捉物質に捕捉された検出物質から電子が生じる。したがって、通常、電極として半導体を用いた光電気化学的な検出方法では、電極として導電体を用いた電気化学的な検出方法と異なり、半導体電極の面積を調節して、電極に固定化される捕捉物質の固定量を制御する必要がない。なぜなら、電極に照射する光の面積を制御することで、再現性および定量性を確保できるからである。
しかしながら、本発明者らは、半導体からなる作用電極本体上の光照射位置(すなわち、作用電極上の検出物質を存在させる領域)以外の領域を非導電層で被覆した場合、驚くべきことに暗電流および白色ノイズが抑制され、検出感度が著しく向上することを見出した。本発明は、かかる本発明者らの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、
〔1〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる電極基板であって、
基板本体と、
前記基板本体上に形成され、励起光が照射されることにより前記検出物質から生じた電子を受容する半導体からなる作用電極本体および当該作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域以外に形成された非導電層を有する作用電極と
を備えている電極基板、
〔2〕 前記基板本体上に、対極が形成されている前記〔1〕に記載の電極基板、
〔3〕 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていない領域であって、前記検出物質を誘引させる領域である前記〔1〕または〔2〕に記載の電極基板、
〔4〕 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定された領域である前記〔1〕または〔2〕に記載の電極基板、
〔5〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる作用電極であって、
励起光が照射されることにより前記検出物質から生じた電子を受容する半導体からなる作用電極本体と、
この作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域以外に形成された非導電層と
を有していることを特徴とする作用電極、
〔6〕 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていない領域であって、前記検出物質を誘引させる領域である前記〔5〕に記載の作用電極、
〔7〕 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化された領域である前記〔5〕に記載の作用電極、
〔8〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するための検査チップであって、
基板本体と、前記基板本体上に形成され、励起光が照射されることにより前記検出物質から生じた電子を受容する半導体からなる作用電極本体および当該作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域以外に形成された非導電層を有する作用電極とを備えた電極基板と、
対極と
を備えている検査チップ、
〔9〕 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていない領域であって、前記検出物質を誘引させる領域である前記〔8〕に記載の検査チップ、ならびに
〔10〕 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化された領域である前記〔8〕に記載の検査チップ
に関する。
本発明の電極基板、作用電極および検査チップそれぞれを用いることにより、検出物質や被検物質を高い感度で検出することができる。
本発明の一実施の形態に係る検査チップを用いた検出物質の検出に用いられる検出物質の検出装置の構成を示す斜視説明図である。 図1に示される検出装置の構成を示すブロック図である。 本発明の一実施の形態に係る検査チップを示す斜視説明図である。 図3に示される検査チップのAA線での断面説明図である。 (A)は図3に示される検査チップに含まれる上基板の平面説明図である。(B)は図3に示される検査チップに含まれる下基板(電極基板)の平面説明図である。 (A)は図5(B)に示される電極基板の作用電極を含む部分のBB線での断面説明図である。(B)は(A)に示される電極基板の作用電極を含む部分の変形例の断面説明図である。 図3に示される検査チップの作用電極を含む部分を模式的に表した平面説明図である。 (A)は図5(A)に示される電極基板の作用電極を含む部分の変形例の断面説明図である。(B)は図5(A)に示される電極基板の作用電極を含む部分の変形例の断面説明図である。 (A)は上基板の変形例の平面説明図である。(B)は下基板の変形例の平面説明図である。 (A)は上基板の変形例の平面説明図である。(B)は下基板の変形例の平面説明図である。 (A)は上基板の変形例の平面説明図である。(B)は下基板の変形例の平面説明図である。(C)は間隔保持部材の変形例の斜視説明図である。 本発明の一実施の形態に係る検査チップを用いた被検物質の検出方法の処理手順を示す工程図である。 図12に示される被検物質の検出方法の各工程のうち、被検物質捕捉工程から分離工程を示す概略説明図である。 図12に示される被検物質の検出方法の各工程のうち、捕捉工程から検出工程を示す概略説明図である。 本発明の他の実施の形態に係る検査チップを用いた被検物質の検出方法の処理手順を示す工程図である。 図15に示される被検物質の検出方法の各工程のうち、誘引工程から検出工程を示す概略説明図である。 (A)は実施例1で得られた電極基板の要部の構成を示す平面説明図である。(B)は実施例1で得られた電極基板の作用電極を含む部分を模式的に表した断面説明図である。 (A)は比較例1で得られた電極基板の要部の構成を示す平面説明図である。(B)は比較例1で得られた電極基板の作用電極を含む部分を模式的に表した断面説明図である。 試験例1において、電流の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。 (A)は試験例1において、経過時間15〜20秒の範囲での電流の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。(B)は試験例1において、ホワイトノイズの大きさを算出した結果を示すグラフである。 試験例2において、実施例2で得られた電極基板43を用い、光照射位置と光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例2において、比較例2の電極基板を用い、光照射位置と光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例3において、被検物質(DNA)量と、光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 (A)は比較例4で得られた電極基板を示す要部説明図である。(B)は(A)に示された電極基板の作用電極を含む部分のCC線での断面説明図である。 試験例4において、電流の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
[用語の定義]
本明細書において、「光励起により電子を生じる検出物質」は、作用電極上で電気化学的に検出される対象となる物質であり、標識物質を含むものである。ここで、標識物質は、金属錯体、有機蛍光体、量子ドットおよび無機蛍光体からなる群より選択された少なくとも1つであればよい。前記標識物質の具体例としては、金属フタロシアニン、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素、クロロフィル系色素、エオシン系色素、マーキュロクロム系色素、インジゴ系色素、BODIPY系色素、CALFluor系色素、オレゴングリーン系色素、ロードル(Rhodol)グリーン、テキサスレッド、カスケードブルー、核酸(DNA、RNAなど)、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、Ln23:Re、Ln22S:Re、ZnO、CaWO4、MO・xAl23:Eu、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce、Tb、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5およびCy9(いずれも、アマシャムバイオサイエンス社製);Alexa Fluor 355、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750およびAlexa Fluor 790(いずれも、モレキュラープローブ社製);DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−636、EVOblue10、EVOblue30、DY−647、DY−650、DY−651、DY―800、DYQ−660およびDYQ−661(いずれも、Dyomics社製);Atto425、Atto465、Atto488、Atto495、Atto520、Atto532、Atto550、Atto565、Atto590、Atto594、Atto610、Atto611X、Atto620、Atto633、Atto635、Atto637、Atto647、Atto655、Atto680、Atto700、Atto725およびAtto740(いずれも、Atto−TEC GmbH社製);VivoTagS680、VivoTag680およびVivoTagS750(いずれも、VisEnMedical社製)などが挙げられる。なお、前記LnはLa、Gd、LuまたはYを示し、Reはランタニド族元素を示し、Mはアルカリ土類金属元素を示し、xは0.5〜1.5の数を示す。標識物質の他の例については、例えば、特許第4086090号公報、特開平7−83927号公報、特願2008?154179号公報などを参照することができる。
本明細書においては、前記検出物質は、被検物質に直接的に標識物質が結合した複合体であってもよい。また、前記検出物質は、被検物質を固相上で捕捉した後、捕捉された被検物質の量に応じて存在させた物質に標識物質を結合させた複合体であってもよい。ここで、前記固相とは、例えば、二酸化ケイ素(ガラス)、金属などの無機素材、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などのプラスチック類からなる基板またはこれらのうち少なくとも1つを含む基板;チューブ;繊維;メンブレン;ナノ構造体(例えば、メソポーラスシリカなどのシリカ系ナノ構造体、ポーラスアルミナなど);ガラスビーズ、磁性ビーズ、金属粒子、プラスチックビーズなどの粒子またはこれらのうち少なくとも1つを含む粒子などをいう。
また、本明細書において、「検出物質を存在させる領域」とは、作用電極本体上において、光励起により検出物質から生じた電子を受容する領域をいう。「検出物質を存在させる領域」は、電極露出部に対応する。
さらに、本明細書において、「誘引用修飾物質」とは、検出物質などを作用電極の近傍に誘引させるための物質をいう。
[検出装置の構成]
まず、本発明の一実施の形態に係る検査チップを用いた検出物質の検出に用いられる検出物質の検出装置の一例を添付図面により説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る検査チップを用いた検出物質の検出に用いられる検出物質の検出装置の構成を示す斜視説明図である。この検出装置1は、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いる検出装置である。
検出装置1は、検査チップ20が挿入されるチップ受入部11と、検出結果を表示するディスプレイ12とを備えている。
図2は、図1に示される検出装置1の構成を示すブロック図である。検出装置1は、ディスプレイ12と、光源13と、電流計14と、電源15と、A/D変換部16と、制御部17とを備えている。
光源13は、検査チップ20の作用電極上に存在させた検出物質に光を照射して当該検出物質を励起させる。光源13は、励起光を発生する光源であればよい。かかる光源としては、例えば、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色LED、青色LED、緑色LED、赤色LEDなど)、レーザー(炭酸ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光などが挙げられる。前記光源のなかでは、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED、レーザーまたは太陽光が好ましい。前記光源のなかでは、レーザーがより好ましい。前記光源は、必要に応じて、分光器やバンドパスフィルタにより、特定波長領域の光のみが放出されるものであってもよい。
電流計14は、励起された検出物質から放出される電子に起因して検査チップ10内を流れる電流を測定する。
電源15は、検査チップ20に設けられた電極に対して所定の電位を印加する。
A/D変換部16は、電流計14によって測定された光電流値をデジタル変換する。
制御部17は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、ディスプレイ12、光源13、電流計14および電源15の動作を制御する。また、制御部17は、A/D変換部16でデジタル変換された光電流値を、予め作成された光電流値と検出物質の量との関係を示す検量線に基づき、検出物質の量を概算する。
ディスプレイ12は、制御部17で概算された検出物質の量などの情報を表示する。
[検査チップの構成]
つぎに、本発明の一実施の形態に係る検査チップの構成を説明する。図3は、本発明の一実施の形態に係る検査チップ20を示す斜視説明図である。また、図4は、図3に示される検査チップ20のAA線での断面説明図である。
検査チップ20は、上基板30と、上基板30の下方に設けられた下基板(電極基板)40と、上基板30と下基板40とに挟まれた間隔保持部材50とを備えている。検査チップ20では、上基板30と下基板40とは、一側部において重複して配置されている。そして、上基板30と下基板40とが重複する部分には、間隔保持部材50が介在している。
上基板30は、図5(A)に示されるように、基板本体30aから構成されている。この基板本体30aには、検出物質を含む試料などを内部に注入するための試料注入口30bが設けられている。この試料注入口30bは、基板本体30aにおいて、間隔保持部材50が介装される部分よりも内側に設けられている。
基板本体30aは、矩形状に形成されている。なお、かかる基板本体30aの形状は、特に限定されるものではなく、多角形形状、円盤状などであってもよい。基板の作製および取り扱いの簡便性の観点から、好ましくは矩形状である。基板本体30aを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などのプラスチック類、金属などの無機材料などが挙げられる。これらのなかでは、光の透過性、十分な耐熱性、耐久性、平滑性などを確保し、かつ材料に要するコストを低減させる観点から、好ましくはガラスである。基板本体30aの厚さは、十分な耐久性を確保する観点から、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.1〜0.7mm、さらに好ましくは約0.5mmである。また、基板本体30aの大きさは、特に限定されないが、多種類の検出物質や被検物質の検出(多項目)を前提とした場合には項目数によるが、通常、20mm×20mm程度の大きさである。
下基板40は、図5(B)に示されるように、基板本体40aと、作用電極61と、対極68と、参照電極69とを備えている。基板本体40aは、上基板30の基板本体30aと略同寸法の矩形状に形成されている。この基板本体40aの表面には、作用電極61と、この作用電極61に接続されている電極リード71と、対極68と、この対極68に接続された電極リード72と、参照電極69、この参照電極69に接続された電極リード73とが形成されている。
基板本体40aを構成する材料は、光の透過性を有する材料であればよい。かかる材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などのプラスチック類、金属などの無機材料などが挙げられる。これらのなかでは、十分な光の透過性、耐熱性、耐久性、平滑性などを確保し、かつ材料に要するコストを低減させる観点から、好ましくはガラスである。基板本体40aの厚さおよび大きさは、前記上基板30の基板本体30aを構成する材料、基板本体30aの厚さおよび大きさと同様である。
下基板40においては、作用電極61は、基板本体40aの一側部〔図5(B)の右側〕に配置されている。電極リード71は、作用電極61から基板本体40aの他側部〔図5(B)の左側〕に向けて延びている。また、対極68は、基板本体40a上において、作用電極61よりも外側〔図5(B)において、作用電極61の右側〕に配置されている。電極リード72は、対極68から、作用電極61を迂回して、基板本体40aの他側部〔図5(B)の左側〕に向けて延びている。さらに、参照電極69は、作用電極61を挟んで、対極66と対向する位置に配置されている。電極リード73は、参照電極69から基板本体40aの他側部〔図5(B)の左側〕に向けて延びている。そして、作用電極61の電極リード71と、対極66の電極リード72と参照電極69の電極リード73とは、基板本体40aの他側部において互いに並列するように配置されている。
作用電極61は、ほぼ四角形状に形成されている。作用電極61は、図6(A)に示されるように、基板本体40a側から順に、絶縁層66と作用電極本体62と非導電層63とから構成されている。
非導電層63は、作用電極本体62の表面上において、検出物質を存在させる領域以外に形成されている。すなわち、この非導電層63は、作用電極本体62の一部(電極露出部62a)が露出するように構成されている。これにより、暗電流および白色ノイズの発生が抑制される。
非導電層63は、非金属性の材料で構成されている。非金属性の材料としては、例えば絶縁体材料を用いることができる。前記絶縁体材料として、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉛、カドミウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニッケルなどの酸化物、窒化物または炭化物;フッ素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。
かかる非導電層63は、絶縁体材料の種類に応じた手法により形成させることができる。前記手法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、スクリーン印刷法、インプリント法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
電極露出部62aの大きさは、図7に示されるように、電極露出部62aが略正方形であるとき、一辺の長さlが光照射部分101の直径mと同じか、それよりも大きくなるように設定されている。これにより、非導電層63が光励起される材料から構成されている場合であっても、材料の光励起に基づくノイズを抑制することができる。
なお、本発明においては、非導電層63が光励起されない材料から構成されている場合、非導電層63に光が照射されても、材料の光励起に基づくノイズが生じない。したがって、この場合には、電極露出部62aの大きさは、電極露出部62aが略正方形であるとき、一辺の長さlが光照射部分101の直径mよりも小さくなるように設定されていてもよい。
電極露出部62aの表面には、検出物質またはその一部を捕捉する捕捉物質210が固定化されている〔図6(A)および図6(B)参照〕。これにより、検出物質またはその一部を作用電極61の作用電極本体62の近傍に存在させることができるようになっている。かかる捕捉物質210は、検出物質の種類に応じて、適宜選択することができる。前記捕捉物質210としては、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、糖鎖、抗体、特異的な認識能を持つナノ構造体などが挙げられる。電極露出部62a上における捕捉物質210の固定量は、特に限定されるものではない。電極露出部62a上における捕捉物質210の固定量は、例えば、用途および目的に応じて設定してもよい。電極露出部62aへの捕捉物質210の固定は、作用電極本体62に化学吸着する結合基などを介して行うことができる。前記結合基としては、例えば、チオール基、ヒドロキシル基、リン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ基などが挙げられる。また、電極露出部62aへの捕捉物質210の固定は、光硬化性樹脂を用いた捕捉物質210の固定や物理吸着による捕捉物質210の固定でもよい。
作用電極本体62は、導電層64と、この導電層64の表面に形成された電子受容層65とからなる〔図6(A)および図6(B)参照〕。
導電層64は、導電性材料からなる。前記導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、カーボン、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ニッケルなどの金属またはこれらの少なくとも1つを含む合金;酸化インジウム、スズをドーパントとして含む酸化インジウムなどの酸化インジウム系材料;酸化スズ、アンチモンをドーパントとして含む酸化スズ(ATO)、フッ素をドーパントとして含む酸化スズ(FTO)などの酸化スズ系材料;チタン、酸化チタン、窒化チタンなどのチタン系材料;グラファイト、グラシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンペースト、カーボンファイバーなどからなる炭素系材料などが挙げられる。
導電層64の厚さは、好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは10〜200nmである。
なお、導電性材料は、ガラス、プラスチックなどの非導電性物質からなる非導電性基材の表面に導電性を有する材料からなる導電材層が設けられた複合基材であってもよい。かかる導電材層の形状は、薄膜状およびスポット状のいずれであってもよい。導電材層を構成する材料としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)などが挙げられる。
導電層64は、例えば、当該導電層64を構成する材料の種類に応じた膜形成方法により形成させることができる。膜形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、インプリント法、スクリーン印刷法、めっき処理法、ゾルゲル法、スピンコート法、浸漬法、気相蒸着法などが挙げられる。
電子受容層65は、電子を受容可能な物質(電子受容物質)を含んでいる。前記電子受容物質は、光励起により検出物質から生じた電子の注入が可能なエネルギー準位をとり得る物質であればよい。ここで、「光励起により検出物質から生じた電子の注入が可能なエネルギー準位」とは、例えば、電子受容性物質として半導体を用いる場合には、伝導帯(コンダクションバンド)を意味する。すなわち、前記電子受容物質は、標識物質(後述)の最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位よりも低いエネルギー順位を有すればよい。前記電子受容物質としては、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体;チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの酸化物を含む酸化物半導体;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バナジウム、ニオブ酸カリウムなどのペロブスカイト型半導体;カドニウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスなどの硫化物を含む硫化物半導体;ガリウム、チタンなどの窒化物を含む半導体;カドミウム、鉛のセレン化物からなる半導体(例えば、カドミウムセレナイドなど);カドミウムのテルル化物を含む半導体;亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウムなどのリン化合物からなる半導体;ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物などの化合物を含む半導体;カーボンなどの化合物半導体または有機物半導体などが挙げられる。なお、前記半導体は、真性半導体および不純物半導体のいずれであってもよい。
前記半導体のなかでは、酸化物半導体が好ましい。前記酸化物半導体のうち、真性半導体のなかでは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化タンタルおよびチタン酸ストロンチウムが好ましい。また、前記酸化物半導体のうち、不純物半導体のなかでは、スズをドーパントとして含む酸化インジウムおよびフッ素をドーパントとして含む酸化スズが好ましい。スズをドーパントとして含む酸化インジウムおよびフッ素をドーパントとして含む酸化スズは、電子受容物質および導電性材料の両方の性質を兼ね備えている。そのため、これらの材料は、それぞれ単独で、作用電極本体を構成する材料として用いることができる。
なお、導電層64が前記複合基材である場合、電子受容層65は、前記導電材層上に形成される。電子受容層65の厚さは、通常、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜10nmである。かかる電子受容層65は、電子受容層65を構成する材料の種類に応じて、導電層64の形成に用いられる手法と同様の手法により形成させることができる。
絶縁層66は、絶縁体材料から構成されている。前記絶縁体材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック類やフッ化物樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。かかる絶縁層66は、絶縁体材料の種類に応じた手法により形成させることができる。前記手法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、スクリーン印刷、インプリント法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
なお、本発明においては、図6(B)に示されるように、作用電極61は、非導電層63と、電子受容層65と、絶縁層66とから構成されていてもよい。この場合、作用電極61においては、基板本体40aの表面に、順に、絶縁層66、電子受容層65および非導電層63が形成されている。
また、図6(A)および図6(B)において、基板本体40a上に絶縁層66が形成されているが、これに限らず、例えば、絶縁性材料からなる基板本体40aを用いることにより、絶縁層66を省略することができる。
作用電極本体62には、シランカップリング剤などを用いた表面処理が施されていてもよい。かかる表面処理により、作用電極本体62の表面を親水性または疎水性を有するように適宜調節することができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)などのカチオン性シランカップリング剤などが挙げられる。
対極68は、導電性材料からなる薄膜からなる。前記導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、カーボン、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ニッケルなどの金属またはこれらの少なくとも1つを含む合金、酸化インジウムスズ、酸化インジウムなどの導電性セラミックス、ATO、FTOなどの金属酸化物、チタン、酸化チタン、窒化チタンなどのチタン化合物などが挙げられる。前記薄膜の厚さは、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは10〜200nmである。
参照電極69は、導電性材料からなる薄膜からなる。前記導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、カーボン、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ニッケルなどの金属またはこれらの少なくとも1つを含む合金、酸化インジウムスズ、酸化インジウムなどの導電性セラミックス、ATO、FTOなどの金属酸化物、チタン、酸化チタン、窒化チタンなどのチタン化合物などが挙げられる。前記薄膜の厚さは、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは10〜200nmである。なお、本実施の形態では、参照電極69を設けているが、本発明においては、参照電極69を設けなくてもよい。対極68に用いる電極の種類、膜厚にもよるが、電圧降下の影響が僅かな小さな電流(例えば、1μA以下)を測定する場合は、対極68が参照電極69を兼ねていてもよい。一方、大きな電流を測定する場合、電圧降下の影響を抑制し、作用電極61に印加する電圧を安定化させる観点から、参照電極69を設けることが好ましい。
間隔保持部材50は、矩形の環状体形状に形成され、絶縁体であるシリコーンゴムからなっている。この間隔保持部材50は、作用電極61、対極68および参照電極69を取り囲むように配置されている(図4および図5参照)。上基板30と下基板40との間には間隔保持部材50の厚さに相当する間隔が形成されている。これにより、各電極61,68,69の間には試料や電解液を収容するための空間20aが形成されている(図4参照)。間隔保持部材50の厚さは、通常、0.2〜300μmである。本発明においては、間隔保持部材50を構成する材料として、シリコーンゴムの代わりに、例えば、ポリエステルフィルム製両面テープなどを用いることもできる。
[検査チップの変形例]
なお、本発明においては、電極露出部62aの表面に、検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていなくてもよい〔図8(A)および(B)参照〕。かかる検査チップは、後述のように、検出物質を作用電極本体上に誘引して検出する方法に用いられる。
また、本発明においては、作用電極61、対極68および参照電極69は、各電極が他の電極と接触しないように間隔保持部材50の枠内に配置されていればよい。したがって、作用電極61、対極68および参照電極69は、異なる基板本体上に形成されてもよい。すなわち、検査チップは、基板本体31a上に試料注入口31bおよび参照電極69が形成された上基板31〔図9(A)参照〕と、基板本体41a上に作用電極61および対極68が形成された下基板41〔図9(B)参照〕とを有するものであってもよい。また、検査チップは、基板本体32a上に試料注入口32b、対極68および参照電極69が形成された上基板32〔図10(A)参照〕と、基板本体42a上に作用電極61が形成された下基板42〔図10(B)参照〕とを有するものであってもよい。
さらに、本発明においては、対極68および参照電極69は、基板本体上に形成された薄膜状の電極でなくてもよい。すなわち、検査チップは、基板本体33aに試料注入口33bが形成された上基板33〔図11(A)参照〕と、基板本体43aに作用電極61が形成された下基板43〔図11(B)参照〕と、部材本体51aに対極68および参照電極69が設けられた間隔保持部材51〔図11(C)参照〕とを有するものであってもよい。この場合、対極68および参照電極69の少なくともいずれかが間隔保持部材の部材本体に設けられていればよい。そして、上基板および下基板のいずれかに、部材本体に設けた電極以外の電極が設けられていればよい。
また、本発明においては、絶縁層66が基板本体としての機能を兼ね備えていてもよい。この場合、基板本体を省略することができる。
[検査チップの使用方法]
つぎに、本発明の一実施の形態に係る検査チップの使用方法として、前記検査チップを用いて、被検物質を検出する方法を説明する。図12は、本発明の一実施の形態に係る検査チップを用いた被検物質の検出方法の処理手順を示す工程図である。
まず、工程S1−1において、ユーザーは、被検物質Sと、被検物質Sを捕捉する固相220とを接触させる〔図13(A)参照〕。これにより、被検物質Sを、固相220に捕捉させる〔被検物質捕捉工程、図13(B)参照〕。
固相220は、被検物質Sを捕捉する捕捉物質221が固定化された固相本体222からなる。捕捉物質221は、被検物質Sの種類に応じて適宜選択される。例えば、被検物質Sが核酸である場合、捕捉物質221は、かかる核酸にハイブリダイズする核酸プローブまたは前記核酸に対する抗体であればよい。また、被検物質221がタンパク質またはペプチドである場合、捕捉物質221は、かかるタンパク質またはペプチドに対する抗体、タンパク質に対するリガンド、ペプチドに対するレセプタータンパク質などであればよい。なお、固相220に用いる捕捉物質221と、後述の捕捉工程(工程S1−5)で用いられる捕捉物質とは、互いに異なる種類の物質であるか、または被検物質における認識部位が互いに異なる物質である。
被検物質Sと、固相220との接触は、例えば、容器内で行なうことができる。被検物質Sと、固相220との接触は、被検物質Sと捕捉物質221とが結合する条件下でおこなうことができる。前記条件は、被検物質Sおよび捕捉物質221の種類などに応じて適宜選択することができる。
その後、工程S1−2において、ユーザーは、被検物質Sを捕捉した固相230に検出物質201を付加する〔検出物質付加工程〕。これにより、検出物質201と被検物質Sとの複合体を含む固相231が得られる〔図13(C)参照〕。
固相230への検出物質201の付加は、被検物質Sと検出物質201とが結合する条件下で行なうことができる。前記条件は、被検物質Sおよび検出物質201の種類などに応じて適宜選択することができる。
つぎに、工程S1−3において、ユーザーは、検出物質201と被検物質Sとの複合体を含む固相231を単離する〔単離工程〕。
工程S1−3において、固相231の単離方法は、固相本体222の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、固相本体222が磁気ビーズである場合、磁石に固相231が引き寄せられる。この場合、磁石を用いることにより、固相231を簡単に単離することができる。また、固相本体222が基板である場合、基板上の溶液を新しい溶液に置換することにより、被検物質S以外の成分を除去することができる。この場合、溶液の置換により、固相231を簡単に単離することができる。
つぎに、工程S1−4において、ユーザーは、固相231から、被検物質の量に応じた量の検出物質201を分離する〔分離工程、図13(D)参照〕。
工程S1−4では、ユーザーは、前記工程S1−2で用いられた検出物質201の種類に応じた分離方法により被検物質の量に応じた量の検出物質201を分離する。例えば、被検物質Sが核酸であり、被検物質Sと相補的な配列を有する核酸を含む検出物質が用いられる場合、固相本体222上に形成された複合体を含む溶液を加熱することにより、被検物質の量に応じた量の検出物質201を簡単に固相231から分離することができる。また、検出物質201と被検物質Sとの複合体が切断可能な核酸を含む場合、制限酵素で前記切断可能な核酸中の認識配列を切断することにより、被検物質の量に応じた量の検出物質201またはその一部を得ることができる。
その後、工程S1−5において、ユーザーは、工程S1−4で分離された検出物質201を含む溶液を検査チップ20の試料注入口30bから注入する。これにより、捕捉物質210が固定された電極露出部62aと、検出物質201とが接触する〔図14(A)参照〕。そして、電極露出部62a上の捕捉物質210に、検出物質201が捕捉される〔捕捉工程、図14(B)参照〕。かかる工程により、電極露出部62a上に、検出物質201を存在させることができる。
かかる工程S1−5では、検出物質の捕捉は、捕捉物質210と検出物質201とが結合する条件下で行なうことができる。前記条件は、検出物質201の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、検出物質201が核酸を含む場合、捕捉物質210による検出物質201の捕捉は、リン酸緩衝生理的食塩水などの溶液の存在下で行なうことができる。捕捉物質210による検出物質201の捕捉は、例えば、マイクロチューブ(例えば、エッペンドルフチューブなど)中で行なうことができる。
なお、捕捉物質210は、検出物質201の種類に応じて適宜選択される。例えば、検出物質201が核酸を含む場合、捕捉物質210は、かかる核酸にハイブリダイズする核酸プローブまたは前記核酸に対する抗体であればよい。また、検出物質201がタンパク質またはペプチドを含む場合、捕捉物質210は、かかるタンパク質またはペプチドに対する抗体、タンパク質に対するリガンド、ペプチドに対するレセプタータンパク質などであればよい。
かかる工程S1−5では、ユーザーは、必要に応じて、作用電極61を洗浄してもよい。これにより、検出物質201以外の物質(夾雑物質)が存在していたとしても、かかる夾雑物質を除去することができる。前記洗浄は、捕捉物質210および検出物質201の種類に応じた手法などにより行なうことができる。例えば、捕捉物質210および検出物質201がいずれも核酸を含む場合、洗浄液としては、SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)と界面活性剤とを含む溶液などが挙げられる。この場合、かかる洗浄液は、SSCの濃度がより低く、かつ界面活性剤の濃度がより高いほど、夾雑物質を高い効率で除去することができる。
つぎに、ユーザーは、検出装置1のチップ受入部11に、検査チップ20をセットする。そして、ユーザーは、検出装置1の動作を開始させる。このとき、まず、検出装置1の光源13によって、電極露出部62a上の検出物質201に向けて励起光が照射される。そして、検出物質201の光励起により生じた光電流が、電流計14で測定される〔工程S1−6(検出工程)、図14(C)参照〕。
かかる工程S1−6は、電解液の存在下に行なわれる。前記電解液として、酸化された状態の標識物質に電子を供給しうる塩からなる電解質と、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒または非プロトン性極性溶媒とプロトン性極性溶媒との混合物とを含む溶液を用いることができる。この電解液は、所望により、他の成分をさらに含んでいてもよい。前記電解質としては、例えば、ヨウ化物、臭化物、金属錯体、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、これらの混合物などが挙げられる。前記電解質の具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウムなどの金属ヨウ化物;テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド、イミダゾリウムヨージドなどの4級アンモニウム化合物のヨウ素塩;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウムなどの金属臭化物;テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなどの4級アンモニウム化合物の臭素塩;フェロシアン酸塩、フェリシニウムイオンなどの金属錯体;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウムなどのチオ硫酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カルシウムなどの亜硫酸塩;およびこれらの混合物などが挙げられる。これらのなかでは、テトラプロピルアンモニウムヨージドが好ましい。
電解液の電解質濃度は、好ましくは0.001〜15Mである。
プロトン性極性溶媒として、水、水を主体に緩衝液成分を混合した極性溶媒などを用いることができる。非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル(CHCN)などのニトリル類;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリノン、ジアルキルイミダゾリウム塩などの複素環化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。非プロトン性極性溶媒のなかでは、アセトニトリルが好ましい。プロトン性極性溶媒および非プロトン性極性溶媒は、単独で、または両者を混合して用いることができる。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物は、水とアセトニトリルとの混合物が好ましい。
励起光の種類は、検出物質に含まれる標識物質の種類などに応じて、適宜選択することができる。励起光の照射量は、ノイズの発生を抑制することができる範囲で適宜設定することが好ましい。
工程S1−6においては、光電流の測定値は、さらに種々の演算処理に供される。まず、A/D変換部16は、光電流の測定値(光電流値)をデジタル変換する。そして、デジタル変換された光電流値が制御部17に入力される。つぎに、制御部17は、予め作成された光電流値と検出物質の量との関係を示す検量線に基づき、デジタル変換された光電流値から検出物質の量を概算する。そして、制御部17は、概算された検出物質の量をディスプレイ2に表示するための検出結果画面を作成する。その後、制御部8によって作成された検出結果画面がディスプレイ2上に送信される。そして、ディスプレイ2は、検出結果画面を表示する。その後、処理が終了する。
[検査チップの使用方法の変形例]
つぎに、本発明の他の実施の形態に係る検査チップを用いて、被検物質を検出する方法(検査チップの使用方法の変形例)を説明する。図15は、本発明の他の実施の形態に係る検査チップを用いた被検物質の検出方法の処理手順を示す工程図である。なお、図15において、工程S2−1(被検物質捕捉工程)〜工程S2−4(分離工程)は、前述した工程S1−1(被検物質捕捉工程)〜工程S1−4(分離工程)と同様の操作を行なうことにより実施することができる。
工程S2−5において、ユーザーは、前述した検査チップ20の試料注入口30bから検出物質を含む液体試料を注入する〔図16(A)参照〕。そして、捕捉物質が存在しない電極露出部62a上に、検出物質201を誘引させる〔誘引工程、図16(B)参照〕。工程S2−5により、電極露出部62a上に、検出物質201を存在させることができる。
かかる工程S2−5では、例えば、ユーザーは、前述した検査チップ20の試料注入口30bから、検出物質201と、前記検出物質を電極露出部62a上に誘引するための誘引液とを注入する。これにより、検出物質201が、その捕捉物質が存在しない電極露出部62aとの間で電子輸送が可能な領域に誘引される。
ここで、「捕捉物質が存在しない電極露出部62aとの間で電子輸送が可能な領域」は、通常、電極露出部62aから0〜10nmの範囲の領域である。また、本明細書において、「捕捉物質が存在しない」とは、「捕捉物質が実質的に存在しないこと」をいう。すなわち、「捕捉物質が存在しない」という概念には、電極露出部62a上において目的物質の実質的な捕捉に寄与しない程度に僅かに捕捉物質が存在することをも含む概念である。
電極露出部62aへの検出物質201の誘引は、検出物質201、誘引液および電極露出部62aとの間の疎水性相互作用若しくは親水性相互作用、または、作用電極61または対極66に電圧を印加することによる電気泳動効果を利用することなどにより行なうことができる。
本誘引工程は、例えば、
1) 誘引液の疎水性・親水性を変更することにより、検出物質201と電極露出部62aとの間の疎水性相互作用若しくは親水性相互作用を大きくすること(誘引方法1)、
2) 修飾検出物質201の電荷に応じて、正または負の電圧を作用電極61に印加することにより、電気泳動効果を大きくすること(誘引方法2)
などによって行なうことができる。前記の誘引方法1および誘引方法2は、それぞれ単独で行なってもよく、両者を組み合わせて行なってもよい。
誘引方法1では、例えば、検出物質201が核酸(DNA、RNAなど)を含む場合、誘引液は、検出物質201と電極露出部62aとの間の疎水性相互作用または親水性相互作用を大きくして、電極露出部62aの近傍に検出物質を誘引しやすくする観点から、カオトロピックイオンを含有することが好ましい。
前記カオトロピックイオンとしては、例えば、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、グアニジンイオン、チオシアン酸イオン、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンなどが挙げられる。
誘引液がカオトロピックイオンを含有する場合、誘引液中におけるカオトロピックイオンの濃度は、用いられるカオトロピックイオンの種類により異なる。前記濃度は、通常1.0〜8.0mol/Lである。カオトロピックイオンがグアニジンイオンである場合、誘引液中におけるカオトロピックイオンの濃度は、通常、4.0〜7.5mol/Lである。また、チオシアン酸イオンである場合、誘引液中におけるカオトロピックイオンの濃度は、通常、3.0〜5.5mol/Lである。
なお、検出物質201が核酸を含む場合、慣用の核酸抽出・精製方法を利用して、検出物質201を、電極露出部62aの近傍に誘引させることができる。
前記核酸抽出・精製方法としては、液相を用いる方法、核酸結合用担体を用いる方法などが挙げられる。液相を用いる方法としては、例えば、フェノール/クロロホルム抽出法(Biochimica et Biophysica acta、1963年発行、第72巻、pp.619−629)、アルカリSDS法(Nucleic Acid Research、1979年発行、第7巻、pp.1513−1523)、塩酸グアニジンを含有する緩衝液にエタノールを加え核酸を沈降させる方法(Analytical Biochemistry、162、1987、463)などが挙げられる。核酸結合用担体を用いる方法としては、ガラス粒子とヨウ化ナトリウム溶液とを用いて核酸をガラス粒子に吸着させ、単離する方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、76−2:615−619,1979)や、シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いる方法〔例えば、J.Clinical.Microbiology、1990年発行、第28巻、pp.495−503、特許第2680462号公報などを参照〕などが挙げられる。シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いる方法では、まず、核酸が結合するシリカ粒子と試料中の核酸を遊離する能力を有するカオトロピックイオンを含む溶液とを試料と混合して核酸をシリカ粒子に結合させる。つぎに、夾雑物質を洗浄により除去する。その後、シリカ粒子に結合した核酸を回収する。前記方法によれば、簡便、かつ迅速に核酸を抽出することができる。しかも、かかる方法は、DNAの抽出だけではなく、より不安定であるRNAの抽出にも好適であり、純度の高い核酸が得られるという点で非常に優れている。
そこで、検出物質201が、核酸を含む場合、前記核酸抽出・精製方法に用いられる溶媒を誘引液として用いることにより、検出物質201を電極露出部62aの近傍に誘引させることができる。この場合、カオトロピックイオンとして、グアニジンイオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、チオシアン酸イオンまたはこれらの任意の組み合わせを用い、作用電極として核酸を結合する電極(例えば、スズを含む酸化インジウムなど)を用いることが好ましい。
また、検出物質201が、核酸を含む場合、誘引液は、必要に応じて、緩衝液を含有していてもよい。前記緩衝液は、核酸を安定に保持するために一般に用いられる緩衝液であればよい。前記緩衝液は、核酸を安定に保持する観点から、中性付近、すなわちpH5.0〜9.0において緩衝能を有することが好ましい。前記緩衝液としては、例えば、トリス−塩酸塩、四ホウ酸ナトリウム−塩酸、リン酸二水素カリウム−四ホウ酸ナトリウム緩衝液などが挙げられる。緩衝液の濃度は、1〜500mmol/Lであることが好ましい。
一方、誘引方法2では、検出物質201の電荷に応じて、正または負の電圧を作用電極に印加する。例えば、検出物質201が、核酸を含む場合、当該検出物質201における核酸部分は負に荷電している。したがって、作用電極61に正の電圧を印加することにより、検出物質201を作用電極61の電極露出部62aの近傍に誘引させることができる。
つぎに、ユーザーは、検出装置1のチップ受入部11に、工程S2−5後の検査チップ20をセットする。そして、ユーザーは、検出装置1の動作を開始させる。このとき、まず、検出装置1の光源13によって、電極露出部62a上の検出物質201に励起光が照射される。そして、検出装置1の電流計14によって、検出物質201の光励起により生じた光電流が測定される〔検出工程(工程S2−6)、図16(C)参照〕。
かかる工程S2−6は、電解液の存在下に行なわれる。したがって、前記工程S2−5において誘引液を用いた場合には、必要に応じて、当該誘引液を電解液に置換する。なお、誘引液が、酸化された状態の標識物質に電子を供給する性質を有し、検出物質の電気化学的な検出が可能である場合、検出工程において、この誘引液をそのまま用いてもよい。
なお、本使用方法では、検出物質を捕捉する捕捉物質が存在しない作用電極が用いられている。したがって、作用電極61を簡便な処理で洗浄することができ、再利用することができる。作用電極61の洗浄は、紫外線―オゾン洗浄(UV-O3洗浄)などにより行なうことができる。前記UV-O3洗浄では、紫外線による有機化合物の分解とO3の生成および分解の過程における強力な酸化作用により有機化合物が分解され、電極の表面から除去される。
また、検出物質が核酸を含む場合、適切な溶液中で、作用電極上にマイナスの電圧を印加することで、修飾検出物質240aを作用電極51から解離させることもできる。これは、核酸がマイナスに帯電しているからである。前記溶液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)、TEB〔組成:10mMトリス塩酸緩衝液、1mM EDTA〕水などが挙げられる。
なお、本使用方法では、工程S2−5において、検出物質201に誘引用修飾物質を付加して得られた修飾検出物質を用いてもよい。前記誘引用修飾物質としては、例えば、DNA、RNAなどの核酸などが挙げられる。
以下、実施例などにより、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
以下のようにして、図17(A)に示される電極基板43を作製した。
(1)電極および非導電層の形成
スパッタリング法により、二酸化ケイ素(ガラス)からなる基板本体43aの表面に、スズをドープした酸化インジウムからなる薄膜(厚さ:約200nm)からなる作用電極本体62を形成させた。なお、前記薄膜は、導電層と電子受容層とを兼ねている。つぎに、スパッタリング法により、作用電極本体62の表面における検出物質を存在させる領域〔光を照射する対象となる部分(図17(B)中、電極露出部62a)〕が露出するように、二酸化ケイ素からなる薄膜(厚さ:1μm)からなる非金属層63を形成させた〔図17(A)および(B)参照〕。なお、前記非導電層63は、電極露出部62aの大きさが1.0mm×1.0mmとなるように形成されている。また、スパッタリング法により、別の基板本体上に、白金薄膜からなる対極と、白金薄膜からなる参照電極とを形成させ、対極および参照電極を備えた基板を得た(図10参照)。
(2)シランカップリング剤のコーティング
前記(1)で得られた基板本体43aを、シランカップリング剤溶液〔1体積%APTES含有トルエン溶液〕中に1時間浸漬させた。つぎに、基板本体43aを、トルエン中で2回洗浄した。その後、基板本体43aを110℃で10分間加熱した。これにより、APTESを電極露出部62aの表面に結合させた。得られた基板本体43aを、トルエン中に浸漬させ、5分間超音波洗浄を行なった。超音波洗浄は、3回行なった。その後、脱水エタノールで基板本体43aを流した。これにより、未結合のAPTESを電極露出部62aの表面に結合させた。残存するエタノールを、ブロアで除去した。
(3)捕捉物質の固定
捕捉物質210であるキャプチャーDNAプローブ(24ヌクレオチド)を含む水溶液〔100μM DNA〕とUVクロスリンキング試薬〔ジーイー・ヘルスケア・ユーケー・リミテッド(GE healthcare UK Limited)社製、商品名:Microarray crosslinking reagent D〕とを1:9(体積比)の割合で混合し、10μMプローブ溶液を得た。得られたプローブ溶液69.0nLを電極露出部62aに滴下した。その後、電極露出部62aに対し、UV照射装置〔商品名:UVクロスリンカー〕を用いて160mJ/cm2の紫外線光を照射した。これにより、キャプチャーDNAプローブを電極露出部62aに固定した。つぎに、超純水で電極露出部62aの表面を洗い流した。その後、電極露出部62aの表面に残存する超純水をブロアで除去した。
(4)未固定のDNAプローブの除去
前記(3)の操作だけでは、電極露出部62aに、固定されていないキャプチャーDNAプローブが残存している可能性がある。そこで、固定されていないキャプチャーDNAプローブを除去するために、以下の工程を実施した。
まず、基板本体43aの電極面の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ:0.1mm)を配置した。シリコーンゴムで形成された空間に、ハイブリダイゼーション用溶液6μLを注入した。なお、前記ハイブリダイゼーション用溶液は、超純水とハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2×Hybridization Buffer〕とを、1:1(体積比)の割合で混合した溶液である。つぎに、シリコーンゴム上にカバーガラスを被せ、溶液が蒸発しない状態とした。その後、基板本体43aを45℃で1時間静置した。つぎに、洗浄用バッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:Wash buffer A〕と超純水とを用いて、基板本体43aを洗浄した。その後、電極露出部62aなどの表面に残存する超純水をブロアで除去した。これにより、電極基板43を得た。
(比較例1)
実施例1において、作用電極本体62の表面上に非導電層63を形成しなかったことおよび作用電極本体62に滴下するプローブ溶液の量を6μLとしたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、電極基板44を得た〔図18(A)および図18(B)参照〕。この電極基板44では、基板本体44aの表面上に、作用電極本体62が形成されている。そして、この作用電極本体62上に捕捉物質210が固定されている。
(製造例1)
アセトニトリル(AN)と、エチレンカーボネート(EC)とを、2:3〔AN:EC(体積比)〕となるように混合した。得られた混合液に、電解質塩としてテトラプロピルアンモニウムヨージドを、その濃度が0.6Mとなるように溶解させた。その後、得られた混合液に、電解質としてヨウ素を、その濃度が0.06Mとなるように溶解させた。これにより、電解液を得た。
(試験例1)
実施例1で得られた電極基板43の作用電極61の周囲を間隔保持部材であるシリコーンゴム(厚さ:0.1mm)で囲んだ。つぎに、前記シリコーンゴムによって形成された空間に、製造例1で得られた電解液12.5μLを注入した。
つぎに、電極基板43の上方から、前記空間を、対極および参照電極を有する基板(図10参照)を用いて密封した。これにより、作用電極61、対極および参照電極を同一電解液に接触させた。作用電極61に対し、参照電極を基準として0Vの電圧を印加した。そして、電流の経時的変化を測定した。また、実施例1で得られた電極基板43の代わりに比較例1で得られた電極基板44を用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、電流の経時的変化を測定した。試験例1において、電流の経時的変化を調べた結果を図19に示す。図19中、細実線、破線、一点鎖線および二点鎖線は、実施例1で得られた電極基板43を用いたときの電流の経時的変化を示す。また、太実線は、比較例1で得られた電極基板44を用いたときの電流の経時的変化を示す。
また、図19において、経過時間15〜20秒の範囲を拡大し、電流の経時的変化を調べた。これにより、ホワイトノイズを調べた。試験例1において、経過時間15〜20秒の範囲での電流の経時的変化を調べた結果を図20(A)に示す。また、試験例1において、ホワイトノイズの大きさを算出した結果を図20(B)に示す。なお、ホワイトノイズの大きさは各時間における電流量の差(0.15秒間の電流量の差の最大値の平均値)を求めることにより算出した。
図19に示された結果から、実施例1で得られた電極基板43を用いた場合、比較例1で得られた電極基板44を用いた場合と比べて、充電電流の解消が早く、かつ暗電流が抑制されていることがわかる。
また、図20(A)および(B)に示された結果から、実施例1で得られた電極基板43を用いた場合、比較例1で得られた電極基板44を用いた場合と比べて、ホワイトノイズが抑制されていることがわかる。
(実施例2)
実施例1において、電極露出部62aの大きさが0.7mm×0.7mmとなるように、作用電極本体62の表面に非導電層63を形成させ、作用電極と対極と参照電極とを同一基板(図5参照)に形成させたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、電極基板43を得た。
(試験例2)
(1)被検物質の捕捉処理
実施例1で得られた電極基板43の代わりに実施例2で得られた電極基板43を用いた。まず、作用電極61の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ:0.1mm)を配置した。その後、この電極基板43に、ハイブリダイゼーション用チャンバーを装着した。シリコーンゴムと前記チャンバーとで形成された空間に、ハイブリダイゼーション用溶液20μLを注入した。なお、前記ハイブリダイゼーション用溶液は、ハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2×Hybridization Buffer〕を用いた。溶液が蒸発しないように、チャンバーの注入口を蓋で押さえた。その後、ハイブリダイゼーションを行なった。ハイブリダイゼーションは、チャンバーを45℃で1時間静置することにより行なった。つぎに、洗浄用バッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:Wash buffer A〕と超純水とを用いて、電極基板43を洗浄した。その後、電極基板43の表面に残存する超純水をブロアで除去した。
(2)光電流の測定
前記(1)を行なった後の電極基板43の作用電極61、対極および参照電極の周囲を間隔保持部材であるシリコーンゴム(厚さ:0.2mm)で囲んだ。つぎに、前記シリコーンゴムによって形成された空間に、製造例1で得られた電解液12.5μLを注入した。これにより、作用電極61、対極および参照電極を前記電解液に接触させた。
つぎに、電極基板43の上方から、前記空間を、カバーガラスで蓋をして密封した。これにより、電解液の漏れや蒸発を防ぐようにした。作用電極61に対し、参照電極を基準として0Vの電圧を印加した。これと同時に、作用電極61の所定の位置(図17中、光照射位置1〜6参照)に対して、励起光〔波長約785nm、励起光強度約13mWのレーザー光〕を照射した。このとき、レーザー光を所定の周期(1Hz)で点滅(on・off)させ、作用電極61と対極との間を流れる光電流を測定した。その後、光照射位置1〜6それぞれにレーザー光を照射したときの光電流およびこれらの平均値を算出した。また、実施例2で得られた電極基板43の代わりに、作用電極と対極と参照電極とを同一基板に形成させた以外は比較例1と同様に作成された電極基板(比較例2)を用いて、上記と同様に操作を行ない光照射位置1〜6それぞれにレーザー光を照射したときの光電流およびこれらの平均値を算出した。試験例2において、実施例2で得られた電極基板43を用い、光照射位置と光電流との関係を調べた結果を図21に示す。また、試験例2において、比較例2の電極基板を用い、光照射位置と光電流との関係を調べた結果を図22に示す。
図21に示された結果から、実施例2で得られた電極基板43を用いたときの光電流は、4.4〜6.1pA(平均5.4pA)であることがわかる。一方、図22に示された結果から、比較例2の電極基板を用いたときの光電流は、約27〜35pA(平均31.9pA)であることがわかる。
これらの結果から、作用電極本体62の表面に、非導電層63を設けることにより、ノイズ(被検物質量が0のときの光電流)を低減させることができることがわかる。したがって、作用電極本体62の表面に、非導電層63を設けることにより、検出感度を向上させることができることがわかる。
また、これらの結果から、電極露出部62aの大きさが0.7mm×0.7mmとなるように非導電層63を設けた場合であっても、検出感度を向上させることができることがわかる。
(試験例3)
試験例2の(1)において、実施例1で得られた電極基板43の代わりに実施例2で得られた電極基板43を用いたことおよびハイブリダイゼーション用溶液中にターゲットDNAを0〜1nM〔6.00×105〜6.00×108コピー/μL〕の濃度となるように添加したことを除き、試験例2と同様に操作を行ない、前記と同様に操作を行ない、光照射位置1〜6それぞれにレーザー光を照射したときの光電流の平均値を算出した。また、実施例2で得られた電極基板43の代わりに、作用電極と対極と参照電極とを同一基板に形成させた以外は比較例1と同様に作成された電極基板(比較例3)を用いて、上記と同様に操作を行ない、光照射位置1〜6それぞれにレーザー光を照射したときの光電流の平均値を算出した。そして、試験例3において、被検物質(DNA)量と、光電流との関係を調べた結果を図23に示す。図23中、黒四角は電極基板43を用いたときの光電流を示す。また、黒矩形は比較例3の電極基板を用いたときの光電流を示す。
図23に示された結果から、電極基板43を用いた場合には、被検物質量が0のときの光電流(ノイズ)が約0.0045nAであることがわかる。電極基板43を用いたときの光電流に対応するプロットから、光電流が約0.0045nAとなる被検物質量を算出した。その結果、光電流が約0.0045nAとなる被検物質量は、約500fM(約3×105コピー/μL)であった。
一方、比較例3の電極基板を用いた場合には、被検物質量が0のときの光電流が約0.03nAであることがわかる。比較例3の電極基板を用いたときの光電流に対応するプロットから、光電流が約0.03nAとなる被検物質量を算出した。その結果、光電流が約0.03nAとなる被検物質量は、約3pM(約2×106コピー/μL)であった。
したがって、これらの結果から、作用電極本体62の表面における検出物質を存在させる領域が露出するように、当該作用電極本体62の表面に非導電層63を設けることにより、検出感度を向上させることができることがわかる。
(比較例4)
実施例1において、作用電極本体62の表面上に、白金の薄膜からなる金属層81を、電極露出部62aの大きさが2mm×2mm(約4mm2)となるように形成させたことを除き、実施例2と同様に操作を行ない、電極基板45を得た〔図24(A)参照〕。この電極基板45では、基板本体45aの表面上に、作用電極本体62が形成されている〔図24(B)参照〕。そして、この作用電極本体62上に、金属層81が形成されている〔図24(B)参照〕。また、電極露出部62aの表面には、捕捉物質210が固定されている〔図24(B)参照〕。
(試験例4)
試験例1において、電極基板として、実施例2で得られた電極基板43、比較例1で得られた電極基板44または比較例4で得られた電極基板45を用いたことを除き、試験例1と同様に操作を行ない、電流(暗電流)の経時的変化を測定した。試験例5において、電流の経時的変化を調べた結果を図25に示す。図25中、実線は実施例1で得られた電極基板43を用いたときの電流の経時的変化を示す。破線は比較例1で得られた電極基板44を用いたときの電流の経時的変化を示す。また、一点鎖線は比較例4で得られた電極基板45を用いたときの電流の経時的変化を示す。
図25に示された結果から、実施例1で得られた電極基板43を用いたときの電流は、比較例1で得られた電極基板44または比較例4で得られた電極基板45を用いたときの電流と比べて、小さいことがわかる。かかる結果から、作用電極本体62の表面における光を照射する対象となる部分以外の部分を非導電層で覆った場合、暗電流が低減し、検出感度が向上することが示唆される。
また、比較例4で得られた電極基板45を用いたときの電流は、比較例1で得られた電極基板44を用いたときの電流と比べて、大きいことがわかる。かかる結果から、作用電極本体62の表面における光を照射する対象となる部分以外の部分を金属層で覆った場合、かえって暗電流が増加し、検出感度が低下することが示唆される。
したがって、これらの結果から、作用電極本体62の表面における検出物質を存在させる領域以外の部分を覆う層は、非導電層が適していることがわかる。
1 検出装置
13 光源
20 検査チップ
40 電極基板(下基板)
41 電極基板(下基板)
42 電極基板(下基板)
43 電極基板(下基板)
40a 基板本体
41a 基板本体
42a 基板本体
43a 基板本体
51 間隔保持部材
51a 部材本体
61 作用電極
62 作用電極本体
62a 電極露出部
63 非導電層
64 電子受容層
65 導電層
66 絶縁層
68 対極
69 参照電極
81 金属層
101 光照射部分
201 検出物質(被検物質)
S 被検物質

Claims (10)

  1. 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる電極基板であって、
    基板本体と、
    前記基板本体上に形成され、励起光が照射されることにより前記検出物質から生じた電子を受容する半導体からなる作用電極本体および当該作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域以外に形成された非導電層を有する作用電極と
    を備えている電極基板。
  2. 前記基板本体上に、対極が形成されている請求項1に記載の電極基板。
  3. 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていない領域であって、前記検出物質を誘引させる領域である請求項1または2に記載の電極基板。
  4. 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定された領域である請求項1または2に記載の電極基板。
  5. 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる作用電極であって、
    励起光が照射されることにより前記検出物質から生じた電子を受容する半導体からなる作用電極本体と、
    この作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域以外に形成された非導電層と
    を有していることを特徴とする作用電極。
  6. 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていない領域であって、前記検出物質を誘引させる領域である請求項5に記載の作用電極。
  7. 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化された領域である請求項5に記載の作用電極。
  8. 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するための検査チップであって、
    基板本体と、前記基板本体上に形成され、励起光が照射されることにより前記検出物質から生じた電子を受容する半導体からなる作用電極本体および当該作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域以外に形成された非導電層を有する作用電極とを備えた電極基板と、
    対極と
    を備えている検査チップ。
  9. 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化されていない領域であって、前記検出物質を誘引させる領域である請求項8に記載の検査チップ。
  10. 前記作用電極本体上の前記検出物質を存在させる領域が、前記検出物質を捕捉する捕捉物質が固定化された領域である請求項8に記載の検査チップ。
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