JP5809010B2 - 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法 - Google Patents
検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法 Download PDFInfo
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Description
本発明者らは、作用電極本体を透過した励起光を作用電極本体上の検出物質に向けて反射させることによって、検出物質に起因しない光電流を増加させることなく、検出物質に起因する光電流を増加できることを見出し、本発明を完成させた。
〔1〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するための検出装置であって、
前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
対極と、
前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する光源と、
前記光源から照射され、かつ前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている検出物質の検出装置、
〔2〕 前記反射層が、白金、アルミニウム、金、銀および銅からなる群より選択された少なくとも一つからなる前記〔1〕に記載の装置、
〔3〕 前記作用電極本体が、導電層と電子受容層とからなる前記〔1〕または〔2〕に記載の装置、
〔4〕 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面側に配置されており、
前記反射部が、前記電子受容面とは反対面側に設けられている前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の装置、
〔5〕 前記反射部が、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている前記〔4〕に記載の装置、
〔6〕 前記反射部が、光透過性を有する絶縁層を介して前記作用電極本体と一体に形成されている前記〔4〕に記載の装置、
〔7〕 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている前記〔6〕に記載の装置、
〔8〕 前記絶縁層が、作用電極本体の形態を保持するための基板本体である前記〔6〕または〔7〕に記載の装置、
〔9〕 前記反射部が、作用電極本体の形態を保持する基板本体上に形成されている前記〔4〕に記載の装置、
〔10〕 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面の反対側に配置されており、
前記反射部が、前記電子受容面側において、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の装置、
〔11〕 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている前記〔10〕に記載の装置、
〔12〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる電極基板であって、
基板本体と、
前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている電極基板、
〔13〕 前記基板本体上に、対極が形成されている前記〔12〕に記載の電極基板、
〔14〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる作用電極であって、
前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている作用電極、
〔15〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するための検査チップであって、
基板本体と、前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部とを備えた電極基板と、
対極と
を備えている検査チップ、
〔16〕 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出する検出物質の検出方法であって、
前記作用電極本体上に、検出物質を存在させる工程、
前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する工程、
前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる工程、および
前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む検出物質の検出方法、ならびに
〔17〕 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、被検物質を光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
被検物質と、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質とを接触させ、被検物質と標識結合物質との複合体を形成する工程、
前記作用電極本体上に、少なくとも標識物質を存在させる工程、
前記作用電極本体上の標識物質に、励起光を照射する工程、
前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の標識物質に向けて反射させる工程、および
前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む被検物質の検出方法
に関する。
本明細書において、「光励起により電子を生じる検出物質」は、作用電極上で光電気化学的に検出される対象となる物質であり、標識物質を含むものである。ここで、標識物質は、金属錯体、有機蛍光体、量子ドットおよび無機蛍光体からなる群より選択された少なくとも1つであればよい。前記標識物質の具体例としては、金属フタロシアニン、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素、クロロフィル系色素、エオシン系色素、マーキュロクロム系色素、インジゴ系色素、BODIPY系色素、CALFluor系色素、オレゴングリーン系色素、ロードル(Rhodol)グリーン、テキサスレッド、カスケードブルー、核酸(DNA、RNAなど)、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、Ln2O3:Re、Ln2O2S:Re、ZnO、CaWO4、MO・xAl2O3:Eu、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce、Tb、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5およびCy9(いずれも、アマシャムバイオサイエンス社製);Alexa Fluor 355、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750およびAlexa Fluor 790(いずれも、モレキュラープローブ社製);DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−636、EVOblue10、EVOblue30、DY−647、DY−650、DY−651、DY―800、DYQ−660およびDYQ−661(いずれも、Dyomics社製);Atto425、Atto465、Atto488、Atto495、Atto520、Atto532、Atto550、Atto565、Atto590、Atto594、Atto610、Atto611X、Atto620、Atto633、Atto635、Atto637、Atto647、Atto655、Atto680、Atto700、Atto725およびAtto740(いずれも、Atto−TEC GmbH社製);VivoTagS680、VivoTag680およびVivoTagS750(いずれも、VisEnMedical社製)などが挙げられる。なお、前記LnはLa、Gd、LuまたはYを示し、Reはランタニド族元素を示し、Mはアルカリ土類金属元素を示し、xは0.5〜1.5の数を示す。標識物質の他の例については、例えば、特許第4086090号公報、特開平7−83927号公報、特願2008?154179号公報などを参照することができる。
また、本明細書において、「誘引用修飾物質」とは、検出物質、標識物質などを作用電極の近傍に誘引させるための物質をいう。
まず、本発明の検出物質の検出装置の一例を添付図面により説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出装置を示す斜視説明図である。この検出装置1は、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いる検出装置である。
検出装置1は、検査チップ20が挿入されるチップ受入部11と、検出結果を表示するディスプレイ12とを備えている。
光源13は、検査チップ20の作用電極上に存在させた検出物質に光を照射して当該検出物質を励起させる。かかる光源13は、後述の検査チップ20の作用電極の電子受容面側に配置されていてもよい。また、光源13は、後述の検査チップ20の作用電極の電子受容面の反対側に配置されていてもよい。光源13は、励起光を発生する光源であればよい。かかる光源としては、例えば、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色LED、青色LED、緑色LED、赤色LEDなど)、レーザー(炭酸ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光などが挙げられる。前記光源のなかでは、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED、レーザーまたは太陽光が好ましい。前記光源のなかでは、レーザーがより好ましい。前記光源は、必要に応じて、分光器やバンドパスフィルタにより、特定波長領域の光のみが放出されるものであってもよい。
電流計14は、励起された検出物質から放出される電子に起因して検査チップ10内を流れる電流を測定する。
電源15は、検査チップ20に設けられた電極に対して所定の電位を印加する。
A/D変換部16は、電流計14によって測定された光電流値をデジタル変換する。
制御部17は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、ディスプレイ12、光源13、電流計14および電源15の動作を制御する。また、制御部17は、A/D変換部16でデジタル変換された光電流値を、予め作成された光電流値と検出物質の量との関係を示す検量線に基づき、検出物質の量を概算する。
ディスプレイ12は、制御部17で概算された検出物質の量を表示する。
上記実施形態における作用電極61は、図7(a)及び(b)に示すように、基板本体40aの表面に反射層を備えているが、これに限らず、基板本体40aが反射層を兼ねることもできる。このとき、基板本体40aの材料として、例えば金属などの無機材料を用いることができる。
なお、本発明においては、反射部が、検出装置において、前記作用電極本体から離れた位置に設けられていてもよい。具体的には、例えば、図8に示されるように、反射部としての反射層81が、基板本体40aにおける作用電極61が形成された面とは反対面側に設けられていてもよい。この場合、図9(a)に示されるように、絶縁層としての基板本体40aの一方の面に反射層81が形成され、かつ他方の面に、順に、導電層63および電子受容層64が形成されていてもよい。また、図9(b)に示されるように、絶縁層としての基板本体40aの一方の面に反射層81が形成され、かつ他方の面に電子受容層64が形成されていてもよい。なお、図9(a)及び(b)の構成では、基板本体40aとして、ガラス、プラスチック類など透明性を有する絶縁性材料を用いることができる。
また、本発明においては、絶縁層65が基板本体としての機能を兼ね備えていてもよい。この場合、基板本体を省略することができる。
本発明の検出物質の検出方法は、光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出する検出物質の検出方法であって、
(1−1) 前記作用電極本体上に、検出物質を存在させる工程、
(1−2) 前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する工程、
(1−3) 前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる工程、および
(1−4) 前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む方法である。方法1には、上述した検出装置および検査チップを用いることができるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
通常、作用電極本体を透過した励起光を反射させずに、励起光強度を大きくした場合、シグナルの増加とともに、ノイズの著しい増加を招く。そのため、検出感度が著しく低下する。
しかしながら、透過した励起光を反射させる方法1では、作用電極本体を透過した励起光を反射させない場合と比べて、予想外にもノイズの増加を抑制しつつ、シグナルを増加させることができる。したがって、方法1によれば、高い検出感度を確保することができる。
そこで、まず、方法1−1について、図面を参照して、説明する。図13は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法(方法1−1)の処理手順を示すフローチャートである。また、図14は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法(方法1−1)の各工程の概略説明図である。ここでは、上述した検査チップ20を用い、検出装置1により検出物質を検出する場合を例として挙げて説明する。
電解液の電解質濃度は、好ましくは0.001〜15Mである。
プロトン性極性溶媒として、水、水を主体に緩衝液成分を混合した極性溶媒などを用いることができる。非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル(CH3CN)などのニトリル類;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリノン、ジアルキルイミダゾリウム塩などの複素環化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。非プロトン性極性溶媒のなかでは、アセトニトリルが好ましい。プロトン性極性溶媒および非プロトン性極性溶媒は、単独で、または両者を混合して用いることができる。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物は、水とアセトニトリルとの混合物が好ましい。
しかしながら、本発明においては、反射部および光源の配置は、特に限定されるものではない。図15〜図18に、励起光照射工程および励起光反射工程における光源および反射部の配置の変形例の概略説明図を示す。
1) 誘引液の疎水性・親水性を変更することにより、検出物質201と作用電極61との間の疎水性相互作用若しくは親水性相互作用を大きくすること(誘引方法1)、
2) 修飾検出物質201の電荷に応じて、正または負の電圧を作用電極61に印加することにより、電気泳動効果を大きくすること(誘引方法2)
などによって行なうことができる。前記の誘引方法1および誘引方法2は、それぞれ単独で行なってもよく、両者を組み合わせて行なってもよい。
そこで、検出物質201が、核酸を含む場合、前記核酸抽出・精製方法に用いられる溶媒を誘引液として用いることにより、検出物質201を作用電極61の近傍に誘引させることができる。この場合、カオトロピックイオンとして、グアニジンイオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、チオシアン酸イオンまたはこれらの任意の組み合わせを用い、作用電極として核酸を結合する電極(例えば、スズを含む酸化インジウムなど)を用いることが好ましい。
なお、方法1−2では、検出物質を捕捉する捕捉物質が存在しない作用電極が用いられている。したがって、作用電極61を簡便な処理で洗浄することができ、再利用することができる。作用電極61の洗浄は、紫外線―オゾン洗浄(UV-O3洗浄)などにより行なうことができる。前記UV-O3洗浄では、紫外線による有機化合物の分解とO3の生成および分解の過程における強力な酸化作用により有機化合物が分解され、電極の表面から除去される。
また、検出物質が核酸を含む場合、適切な溶液中で、作用電極上にマイナスの電圧を印加することで、修飾検出物質240aを作用電極61から解離させることもできる。これは、核酸がマイナスに帯電しているからである。前記溶液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)、TEB〔組成:10mMトリス塩酸緩衝液、1mM EDTA〕水などが挙げられる。
つぎに、本発明の被検物質の検出方法を説明する。
本発明の被検物質の検出方法は、光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、被検物質を光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
(2−1) 被検物質と、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質とを接触させ、被検物質と標識結合物質との複合体を形成する工程、
(2−2) 前記作用電極本体上に、少なくとも標識物質を存在させる工程、
(2−3) 前記作用電極本体上の標識物質に、励起光を照射する工程、
(2−4) 前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の標識物質に向けて反射させる工程、および
(2−5) 前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む方法である。本発明の一実施の形態に係る被検物質の検出方法〔「方法2」という〕の処理手順を図21に示す。方法2には、上述した検出装置、検査チップおよび検出セットを用いることができるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
− 被検物質を、この被検物質を捕捉する固相で捕捉する工程〔図21中、被検物質捕捉工程(工程S3−1)〕、
− 前記被検物質に、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質を付加する工程〔図21中、標識結合物質付加工程(工程S3−2)〕、
− 被検物質を含む固相を単離する工程〔図21中、単離工程(工程S3−3)〕、および
− 被検物質の量に応じて、固相から少なくとも標識物質を分離する工程〔図21中、分離工程(工程S3−4)〕。ここでは、上述した検査チップ20を用い、検出装置1により被検物質を検出する場合を例として挙げて説明する。
固相230への標識結合物質(検出物質201)の付加は、被検物質Sと標識結合物質(検出物質201)とが結合する条件下で行なうことができる。前記条件は、被検物質Sおよび標識結合物質(検出物質201)の種類などに応じて適宜選択することができる。
工程S3−3において、固相231の単離方法は、固相本体222の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、固相本体222が磁気ビーズである場合、磁石に固相231が引き寄せられる。この場合、磁石を用いることにより、固相231を簡単に単離することができる。また、固相本体222が基板である場合、基板上の溶液を新しい溶液に置換することにより、被検物質S以外の成分を除去することができる。この場合、溶液の置換により、固相231を簡単に単離することができる。
工程S3−4では、ユーザーは、前記工程S3−2で用いられた標識結合物質(検出物質201)の種類に応じた分離方法により被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)を分離する。例えば、被検物質Sが核酸であり、被検物質Sと相補的な配列を有する核酸を含む標識結合物質(検出物質)が用いられる場合、固相本体222上に形成された複合体を含む溶液を加熱することにより、被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)を簡単に固相231から分離することができる。また、標識結合物質(検出物質201)と被検物質Sとの複合体が切断可能な核酸を含む場合、制限酵素で前記切断可能な核酸中の認識配列を切断することにより、被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)またはその一部を得ることができる。
− 被検物質を、この被検物質を捕捉する固相で捕捉する工程〔図23中、被検物質捕捉工程(工程S4−1)〕、
− 前記被検物質に、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質を付加する工程〔図23中、標識結合物質付加工程(工程S4−2)〕、
− 被検物質を含む固相を単離する工程〔図23中、単離工程(工程S4−3)〕、および
− 被検物質の量に応じて、固相から少なくとも標識物質を分離する工程〔図23中、分離工程(工程S4−4)〕。これらの工程S4−1〜工程S4−4は、前記方法2−1における工程S3−1〜工程S3−4と同様に実施することができる。
(3−1) 前記作用電極本体上に、前記被検物質を存在させる工程、
(3−2) 前記作用電極本体上の前記被検物質に、励起光を照射する工程、
(3−3) 前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の前記被検物質に向けて反射させる工程、および
(3−4) 前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む被検物質の検出方法も含まれる〔方法3という〕。
(1)電極および反射部の形成
スパッタリング法により、二酸化ケイ素(ガラス)からなる基板本体141aの表面に、スズをドープした酸化インジウムからなる薄膜(厚さ約200nm)からなる作用電極161を形成させた〔図26(A)参照〕。前記薄膜は、導電層と電子受容層とを兼ねている。なお、便宜上、作用電極161を第1の領域161aと第2の領域161bに分けた。つぎに、スパッタリング法により、基板本体141aにおける作用電極161と同一表面(以下、「電極面」という)上に、白金薄膜からなる対極166と、白金薄膜からなる参照電極169を形成させた〔図26(A)参照〕。その後、スパッタリング法により、前記基板本体141aの電極面とは反対側の面に、白金薄膜からなる反射層181を形成させた〔図26(C)参照〕。前記反射層181は、作用電極161の第2の領域161bに対応する位置に、作用電極161の第2の領域161bと同じ大きさになるように形成させた。作用電極161の第1の領域161aでは、励起光が通過する〔図26(B)参照〕。一方、作用電極161の第2の領域161bでは、作用電極161を通過した励起光が反射層181によって、作用電極161の第2の領域161b上の検出物質に向けて反射される〔図26(C)参照〕。
前記(1)で得られた基板本体141aを、シランカップリング剤溶液〔1体積%APTES含有トルエン溶液)中に1時間浸漬させた。つぎに、基板本体141aを取り出し、トルエン中で2回洗浄した。その後、基板を110℃で10分間加熱し、APTESを基板本体141aの表面に結合させた。基板本体141aを、トルエン中に浸漬させ、5分間超音波洗浄を行なった。超音波洗浄は、3回行なった。その後、脱水エタノールで基板本体141aを流し、未結合のAPTESを基板の表面に結合させた。残存するエタノールを、ブロアで除去した。
捕捉物質であるキャプチャーDNAプローブを含む水溶液〔100μM DNA〕とUVクロスリンキング試薬〔ジーイー・ヘルスケア・ユーケー・リミテッド(GE Healthcare UK Limited)社製、商品名::Microarray crosslinking reagent D〕とを1:9(体積比)の割合で混合し、10μMプローブ溶液を得た。得られたプローブ溶液6μLを作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面上に滴下した。その後、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bに対し、UV照射装置〔商品名:UVクロスリンカー〕を用いて160mJ/cm2の紫外線光を照射した。これにより、キャプチャーDNAプローブを作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面上に固定した。つぎに、超純水で作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面を洗い流した。その後、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面に残存する超純水をブロアで除去した。
前記(3)の操作だけでは、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面上に、固定されていないキャプチャーDNAプローブが残存している可能性がある。そこで、固定されていないキャプチャーDNAプローブを除去するために、以下の工程を実施した。
アセトニトリル(AN)と、エチレンカーボネート(EC)とを、2:3〔AN:EC(体積比)〕となるように混合した。得られた混合液に、電解質塩としてテトラプロピルアンモニウムヨージドを、その濃度が0.6Mとなるように溶解させた。その後、得られた混合液に、電解質としてヨウ素を、その濃度が0.06Mとなるように溶解させた。これにより、電解液を得た。
(1)検出物質の捕捉
製造例1で得られた電極基板141の作用電極161の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.2mm)を配置した。その後、この電極基板141に、ハイブリダイゼーション用チャンバーを装着した。シリコーンゴムを介して、チャンバーと電極基板141とで形成された空間に、ハイブリダイゼーション用溶液20μLを注入した。なお、前記ハイブリダイゼーション用溶液は、標識物質Alexa Flour750で標識されたターゲットDNA(検出物質)を、その濃度が0nMまたは1nMとなるように、ハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2x Hybridization buffer〕に添加した溶液である。溶液が蒸発しないように、チャンバーの注入口を蓋で押さえた。ハイブリダイゼーションは、チャンバーを45℃で1時間静置することにより行なった。つぎに、洗浄用バッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:Wash buffer A〕と超純水とを用いて、電極基板141を洗浄した。その後、電極基板141の表面に残存する超純水をブロアで除去した。
前記(1)を行なった後の電極基板141の作用電極161の周囲を間隔保持部材であるシリコーンゴム(厚さ0.2mm)で囲んだ。つぎに、前記シリコーンゴムによって形成された空間に、製造例2で得られた電解液12.5μLを注入した。これにより、作用電極、対極および参照電極を前記電解液に接触させた。
試験例1において、作用電極161の第1の領域161aに対して、励起光強度5.67mWまたは10.91mWの励起光(レーザー光)を照射したことおよび作用電極161の第2の領域161bに対して、励起光強度5.67mWの励起光(レーザー光)を照射したことを除き、試験例1と同様に操作を行ない、光電流を測定した。そして、S/N比を算出した。なお、S/N比は、下記式(I)に基づいて算出した。
製造例1(1)において、スパッタリング法により、白金薄膜からなる反射層181を形成させる代わりに、蒸着法により、金薄膜(膜厚50.9nm)からなる反射層182を形成させたことを除き、製造例1(1)と同様の操作を行ない、電極および反射部を形成させた。その後、製造例1(2)〜(4)と同様の操作を行なうことにより、シランカップリング剤のコーティング、捕捉物質の固定、および未固定のDNAプローブの除去を行ない、電極基板142を得た(図26(A)参照)。
試験例1において、製造例1で得られた電極基板141の代わりに、製造例3で得られた電極基板142を用いたこと、およびハイブリダイゼーション用溶液として、標識物質Alexa Flour750で標識されたターゲットDNA(検出物質)を、その濃度が0nMまたは10nMとなるように、ハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2x Hybridization buffer〕に添加した溶液を用いたことを除き、試験例1(1)および(2)と同様の操作を行なうことにより、検出物質の捕捉および光電流の測定を行なった。試験例3において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を図29に示す。
製造例1(1)において、スパッタリング法により、基板本体141aの電極面とは反対側の面に白金薄膜からなる反射層181を形成させる代わりに、アルミホイルを、基板本体143aの電極面とは反対側の面に接着させることによりアルミニウムからなる反射層183を形成したことを除き、製造例1(1)と同様の操作を行ない、電極および反射部を形成させた。つぎに、製造例1(2)〜(4)のシランカップリング剤のコーティング、捕捉物質の固定および未固定のDNAプローブの除去を行なう代わりに、紫外線/オゾン洗浄装置〔サムコ(株)製、商品名:UV−1〕を用いて電極表面を紫外線およびオゾンで10分間洗浄することにより、電極基板143を得た(図30(A)参照)。
製造例4で得られた電極基板143の作用電極161の周囲を間隔保持部材であるシリコーンゴム(厚さ:0.2mm)で囲んだ。つぎに、シリコーンゴムによって形成された空間に、溶液A12.5μLを注入した。なお、前記溶液Aは、製造例2で得られた電解液に、標識物質Alexa Flour750で標識されたターゲットDNA(検出物質)を、その濃度が0nMまたは1nMとなるように添加することによって得られる溶液である。これにより、作用電極、対極および参照電極を前記電解液に接触させた。つぎに、電極基板143の上方から、前記空間を、カバーガラスで蓋をして密封した。これにより、光電流測定中の電解液の漏れや乾燥を防ぐようにした。
13 光源
18 反射部
20 検査チップ
40 電極基板(下基板)
41 電極基板(下基板)
42 電極基板(下基板)
43 電極基板(下基板)
40a 基板本体
41a 基板本体
42a 基板本体
43a 基板本体
51 間隔保持部材
51a 部材本体
61 作用電極
62 作用電極本体
63 導電層
64 電子受容層
65 絶縁層
66 対極
69 参照電極
80 反射部(反射層)
81 反射部(反射層)
201 検出物質
S 被検物質
Claims (17)
- 光励起により電子を生じる検出物質を、作用電極本体と対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するための検出装置であって、
前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
対極と、
前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する光源と、
前記光源から照射され、かつ前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている検出物質の検出装置。 - 前記反射部が、白金、アルミニウム、金、銀および銅からなる群より選択された少なくとも一つからなる請求項1に記載の装置。
- 前記作用電極本体が、導電層と電子受容層とからなる請求項1または2に記載の装置。
- 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面側に配置されており、
前記反射部が、前記電子受容面とは反対面側に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の装置。 - 前記反射部が、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている請求項4に記載の装置。
- 前記反射部が、光透過性を有する絶縁層を介して前記作用電極本体と一体に形成されている請求項4に記載の装置。
- 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている請求項6に記載の装置。
- 前記絶縁層が、作用電極本体の形態を保持するための基板本体である請求項6または7に記載の装置。
- 前記反射部が、作用電極本体の形態を保持する基板本体上に形成されている請求項4に記載の装置。
- 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面の反対側に配置されており、
前記反射部が、前記電子受容面側において、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の装置。 - 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている請求項10に記載の装置。
- 光励起により電子を生じる検出物質を、作用電極本体と対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するのに用いられる電極基板であって、
基板本体と、
前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている電極基板。 - 前記基板本体上に、対極が形成されている請求項12に記載の電極基板。
- 光励起により電子を生じる検出物質を、対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するのに用いられる作用電極であって、
前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている作用電極。 - 光励起により電子を生じる検出物質を、作用電極本体と対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するための検査チップであって、
基板本体と、前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部とを備えた電極基板と、
対極と
を備えている検査チップ。 - 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光励起により電子を生じる検出物質を、前記作用電極本体と前記対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出する検出物質の検出方法であって、
前記作用電極本体上に、検出物質を存在させる工程、
前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する工程、
前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる工程、および
前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む検出物質の検出方法。 - 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、被検物質を、前記作用電極と前記対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
被検物質と、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質とを接触させ、被検物質と標識結合物質との複合体を形成する工程、
前記作用電極本体上に、少なくとも標識物質を存在させる工程、
前記作用電極本体上の標識物質に、励起光を照射する工程、
前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の標識物質に向けて反射させる工程、および
前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む被検物質の検出方法。
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