JP5809010B2 - 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法 - Google Patents

検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5809010B2
JP5809010B2 JP2011225926A JP2011225926A JP5809010B2 JP 5809010 B2 JP5809010 B2 JP 5809010B2 JP 2011225926 A JP2011225926 A JP 2011225926A JP 2011225926 A JP2011225926 A JP 2011225926A JP 5809010 B2 JP5809010 B2 JP 5809010B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
working electrode
substance
detection
electrode body
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011225926A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012108108A (ja
Inventor
信康 堀
信康 堀
浩哉 桐村
浩哉 桐村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sysmex Corp
Original Assignee
Sysmex Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sysmex Corp filed Critical Sysmex Corp
Priority to JP2011225926A priority Critical patent/JP5809010B2/ja
Priority to US13/277,712 priority patent/US9057688B2/en
Priority to CN201110333157.2A priority patent/CN102539741B/zh
Publication of JP2012108108A publication Critical patent/JP2012108108A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5809010B2 publication Critical patent/JP5809010B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N27/00Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means
    • G01N27/26Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating electrochemical variables; by using electrolysis or electrophoresis
    • G01N27/28Electrolytic cell components
    • G01N27/30Electrodes, e.g. test electrodes; Half-cells
    • G01N27/305Electrodes, e.g. test electrodes; Half-cells optically transparent or photoresponsive electrodes
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/543Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with an insoluble carrier for immobilising immunochemicals
    • G01N33/54366Apparatus specially adapted for solid-phase testing
    • G01N33/54373Apparatus specially adapted for solid-phase testing involving physiochemical end-point determination, e.g. wave-guides, FETS, gratings
    • G01N33/5438Electrodes

Description

本発明は、検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法に関する。より詳しくは、被検物質の検出または定量などや、これらを利用する疾病の臨床検査、診断などに有用な、検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法に関する。
疾病の臨床検査や診断は、生体試料中に含まれる前記疾病に関連する遺伝子やタンパク質などを、遺伝子検出法や免疫学的検出法などの方法によって検出することにより行なわれている。かかる臨床検査や診断として、光化学的に活性な標識物質を光励起させることにより生じる電流を、遺伝子やタンパク質などの被検物質の検出に利用する方法(光電気化学的検出方法)が提案されている(例えば、特許文献1などを参照)。
特許文献1には、光化学的に活性な増感色素などの検出物質を用い、この検出物質の光励起により生じる電流に基づいて、被検物質を検出することが開示されている。この特許文献1に記載の方法では、まず、光化学的に活性な検出物質で被検物質を標識する。つぎに、標識被検物質に光を照射し、標識被検物質中に含まれる増感色素を光励起させる。そして、光励起により生じた電流を測定する。この電流の測定結果に基づいて、被検物質を高感度に検出することができる。しかしながら、さらに微量な被検物質を検出するために、検出感度の向上が望まれていた。
特許第4086090号公報
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、検出物質を高感度に検出することが可能な、検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップおよび被検物質の検出方法を提供することを目的とする。
光電気化学的検出法における被検物質の検出感度を向上させる方法として、光源から照射される励起光の強度を増加させ、検出物質などに起因する光電流を相対的に増加させる方法が知られている。ところが、この方法では、検出物質などに起因しない光電流までも相対的に増加するため、S/N比が悪くなるおそれがある。
本発明者らは、作用電極本体を透過した励起光を作用電極本体上の検出物質に向けて反射させることによって、検出物質に起因しない光電流を増加させることなく、検出物質に起因する光電流を増加できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
〔1〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するための検出装置であって、
前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
対極と、
前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する光源と、
前記光源から照射され、かつ前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている検出物質の検出装置、
〔2〕 前記反射層が、白金、アルミニウム、金、銀および銅からなる群より選択された少なくとも一つからなる前記〔1〕に記載の装置、
〔3〕 前記作用電極本体が、導電層と電子受容層とからなる前記〔1〕または〔2〕に記載の装置、
〔4〕 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面側に配置されており、
前記反射部が、前記電子受容面とは反対面側に設けられている前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の装置、
〔5〕 前記反射部が、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている前記〔4〕に記載の装置、
〔6〕 前記反射部が、光透過性を有する絶縁層を介して前記作用電極本体と一体に形成されている前記〔4〕に記載の装置、
〔7〕 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている前記〔6〕に記載の装置、
〔8〕 前記絶縁層が、作用電極本体の形態を保持するための基板本体である前記〔6〕または〔7〕に記載の装置、
〔9〕 前記反射部が、作用電極本体の形態を保持する基板本体上に形成されている前記〔4〕に記載の装置、
〔10〕 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面の反対側に配置されており、
前記反射部が、前記電子受容面側において、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の装置、
〔11〕 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている前記〔10〕に記載の装置、
〔12〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる電極基板であって、
基板本体と、
前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている電極基板、
〔13〕 前記基板本体上に、対極が形成されている前記〔12〕に記載の電極基板、
〔14〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いられる作用電極であって、
前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
を備えている作用電極、
〔15〕 光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するための検査チップであって、
基板本体と、前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部とを備えた電極基板と、
対極と
を備えている検査チップ、
〔16〕 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出する検出物質の検出方法であって、
前記作用電極本体上に、検出物質を存在させる工程、
前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する工程、
前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる工程、および
前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む検出物質の検出方法、ならびに
〔17〕 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、被検物質を光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
被検物質と、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質とを接触させ、被検物質と標識結合物質との複合体を形成する工程、
前記作用電極本体上に、少なくとも標識物質を存在させる工程、
前記作用電極本体上の標識物質に、励起光を照射する工程、
前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の標識物質に向けて反射させる工程、および
前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む被検物質の検出方法
に関する。
本発明の検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップおよび被検物質の検出方法によれば、検出物質や被検物質を高い感度で検出することができる。
本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出装置の構成を示す斜視説明図である。 図1に示される検出装置の構成を示すブロック図である。 本発明の他の実施の形態に係る検出物質の検出装置の構成を示すブロック図である。 本発明の一実施の形態に係る検査チップを示す斜視説明図である。 図4に示される検査チップのAA線での断面説明図である。 (A)は図4に示される検査チップに含まれる上基板の平面説明図である。(B)は図4に示される検査チップに含まれる下基板の平面説明図である。 (a)は図4に示される検査チップの作用電極を含む部分を模式的に表した概略図である。(b)は図4に示される検査チップの作用電極を含む部分の変形例を模式的に表した概略図である。 本発明の他の実施の形態に係る検査チップの断面説明図である。 (a)は図8に示される検査チップの作用電極を含む部分を模式的に表した概略図である。(b)は図8に示される検査チップの作用電極を含む部分の変形例を模式的に表した概略図である。 (A)は上基板の変形例の平面説明図である。(B)は下基板の変形例の平面説明図である。 (A)は上基板の変形例の平面説明図である。(B)は下基板の変形例の平面説明図である。 (A)は上基板の変形例の平面説明図である。(B)は下基板の変形例の平面説明図である。(C)は間隔保持部材の変形例の斜視説明図である。 本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法の各工程を示す概略説明図である。 励起光照射工程および励起光反射工程における光源および反射部の配置の変形例の概略説明図である。 励起光照射工程および励起光反射工程における光源および反射部の配置の変形例の概略説明図である。 励起光照射工程および励起光反射工程における光源および反射部の配置の変形例の概略説明図である。 励起光照射工程および励起光反射工程における光源および反射部の配置の変形例の概略説明図である。 本発明の他の実施の形態に係る検出物質の検出方法の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の他の実施の形態に係る検出物質の検出方法の各工程を示す概略説明図である。 本発明の一実施の形態に係る被検物質の検出方法の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態に係る被検物質の検出方法の各工程のうち、被検物質捕捉工程から分離工程を示す概略説明図である。 本発明の他の実施の形態に係る被検物質の検出方法の処理手順を示すフローチャートである。 本発明のさらに他の実施の形態に係る被検物質の検出方法の処理手順を示すフローチャートである。 本発明のよりさらに他の実施の形態に係る被検物質の検出方法の処理手順を示すフローチャートである。 (A)製造例1で得られた電極基板の作用電極の構成を示す概略説明図である。(B)(A)に示される電極基板のBB線での断面説明図である。(C)(A)に示される電極基板のCC線での断面説明図である。 試験例1において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 (A)試験例2において、用いられた電極の種類および励起光強度と光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。(B)試験例2において、用いられた電極の種類および励起光強度とS/N比との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例3において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 (A)製造例4で得られた電極基板の作用電極の構成を示す概略説明図である。(B)(A)に示される電極基板のBB線での断面説明図である。(C)(A)に示される電極基板のCC線での断面説明図である。 試験例4において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を示すグラフである。
[用語の定義]
本明細書において、「光励起により電子を生じる検出物質」は、作用電極上で光電気化学的に検出される対象となる物質であり、標識物質を含むものである。ここで、標識物質は、金属錯体、有機蛍光体、量子ドットおよび無機蛍光体からなる群より選択された少なくとも1つであればよい。前記標識物質の具体例としては、金属フタロシアニン、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素、クロロフィル系色素、エオシン系色素、マーキュロクロム系色素、インジゴ系色素、BODIPY系色素、CALFluor系色素、オレゴングリーン系色素、ロードル(Rhodol)グリーン、テキサスレッド、カスケードブルー、核酸(DNA、RNAなど)、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、Ln23:Re、Ln22S:Re、ZnO、CaWO4、MO・xAl23:Eu、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce、Tb、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5およびCy9(いずれも、アマシャムバイオサイエンス社製);Alexa Fluor 355、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750およびAlexa Fluor 790(いずれも、モレキュラープローブ社製);DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−636、EVOblue10、EVOblue30、DY−647、DY−650、DY−651、DY―800、DYQ−660およびDYQ−661(いずれも、Dyomics社製);Atto425、Atto465、Atto488、Atto495、Atto520、Atto532、Atto550、Atto565、Atto590、Atto594、Atto610、Atto611X、Atto620、Atto633、Atto635、Atto637、Atto647、Atto655、Atto680、Atto700、Atto725およびAtto740(いずれも、Atto−TEC GmbH社製);VivoTagS680、VivoTag680およびVivoTagS750(いずれも、VisEnMedical社製)などが挙げられる。なお、前記LnはLa、Gd、LuまたはYを示し、Reはランタニド族元素を示し、Mはアルカリ土類金属元素を示し、xは0.5〜1.5の数を示す。標識物質の他の例については、例えば、特許第4086090号公報、特開平7−83927号公報、特願2008?154179号公報などを参照することができる。
本明細書においては、検出物質は、被検物質に直接的に標識物質が結合した複合体であってもよい。また、検出物質は、被検物質を固相上で捕捉した後、捕捉された被検物質の量に応じて存在させた物質に標識物質を結合させた複合体であってもよい。ここで、前記固相とは、例えば、二酸化ケイ素(ガラス)、金属などの無機素材、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などのプラスチック類からなる基板またはこれらのうち少なくとも1つを含む基板;チューブ;繊維;メンブレン;ナノ構造体(例えば、メソポーラスシリカなどのシリカ系ナノ構造体、ポーラスアルミナなど);ガラスビーズ、磁性ビーズ、金属粒子、プラスチックビーズなどの粒子またはこれらのうち少なくとも1つを含む粒子などをいう。
また、本明細書において、「誘引用修飾物質」とは、検出物質、標識物質などを作用電極の近傍に誘引させるための物質をいう。
[検出装置の構成]
まず、本発明の検出物質の検出装置の一例を添付図面により説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出装置を示す斜視説明図である。この検出装置1は、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出するのに用いる検出装置である。
検出装置1は、検査チップ20が挿入されるチップ受入部11と、検出結果を表示するディスプレイ12とを備えている。
図2は、図1に示される検出装置1の構成を示すブロック図である。検出装置1は、ディスプレイ12と、光源13と、電流計(電流測定部)14と、電源(電位印加部)15と、A/D変換部16と、制御部17とを備えている。
光源13は、検査チップ20の作用電極上に存在させた検出物質に光を照射して当該検出物質を励起させる。かかる光源13は、後述の検査チップ20の作用電極の電子受容面側に配置されていてもよい。また、光源13は、後述の検査チップ20の作用電極の電子受容面の反対側に配置されていてもよい。光源13は、励起光を発生する光源であればよい。かかる光源としては、例えば、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色LED、青色LED、緑色LED、赤色LEDなど)、レーザー(炭酸ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光などが挙げられる。前記光源のなかでは、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED、レーザーまたは太陽光が好ましい。前記光源のなかでは、レーザーがより好ましい。前記光源は、必要に応じて、分光器やバンドパスフィルタにより、特定波長領域の光のみが放出されるものであってもよい。
電流計14は、励起された検出物質から放出される電子に起因して検査チップ10内を流れる電流を測定する。
電源15は、検査チップ20に設けられた電極に対して所定の電位を印加する。
A/D変換部16は、電流計14によって測定された光電流値をデジタル変換する。
制御部17は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、ディスプレイ12、光源13、電流計14および電源15の動作を制御する。また、制御部17は、A/D変換部16でデジタル変換された光電流値を、予め作成された光電流値と検出物質の量との関係を示す検量線に基づき、検出物質の量を概算する。
ディスプレイ12は、制御部17で概算された検出物質の量を表示する。
なお、検出装置1においては、検査チップとして、反射部としての反射層を有しない検査チップが用いられている場合には、光源13に対して、検査チップを介して向かいあう位置に反射部18が設置されていてもよい(図3参照)。かかる反射部18は、励起光を反射することができる材料から構成されている。かかる材料としては、特に限定されないが、例えば、白金、アルミニウム、金、銀、銅などの金属、合金または金属化合物などが挙げられる。
つぎに、本発明の一実施の形態に係る検査チップの構成を説明する。図4は、本発明の一実施の形態に係る検査チップ20を示す斜視説明図である。また、図5は、図4に示される検査チップ20のAA線での断面説明図である。
検査チップ20は、上基板30と、上基板30の下方に設けられた下基板40と、上基板30と下基板40とに挟まれた間隔保持部材50とを備えている。検査チップ20では、上基板30と下基板40とは、一側部において重複して配置されている。そして、上基板30と下基板40とが重複する部分には、間隔保持部材50が介在している。
上基板30は、図6(A)に示されるように、基板本体30aから構成されている。この基板本体30aには、検出物質を含む試料などを内部に注入するための試料注入口30bが設けられている。この試料注入口30bは、基板本体30aにおいて、間隔保持部材50が介装される部分よりも内側に設けられている。
基板本体30aは、矩形状に形成されている。なお、かかる基板本体30aの形状は、特に限定されるものではなく、多角形形状、円盤状などであってもよい。基板の作製および取り扱いの簡便性の観点から、好ましくは矩形状である。基板本体30aを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などのプラスチック類、金属などの無機材料などが挙げられる。これらのなかでは、光の透過性、十分な耐熱性、耐久性、平滑性などを確保し、かつ材料に要するコストを低減させる観点から、好ましくはガラスである。基板本体30aの厚さは、十分な耐久性を確保する観点から、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.1〜0.7mm、さらに好ましくは約0.5mmである。また、基板本体30aの大きさは、特に限定されないが、多種類の検出物質や被検物質の検出(多項目)を前提とした場合には項目数によるが、通常、20mm×20mm程度の大きさである。
下基板40は、図6(B)に示されるように、基板本体40aと、作用電極61と、対極66と、参照電極69とを備えている。基板本体40aは、上基板30の基板本体30aと略同寸法の矩形状に形成されている。この基板本体40aの表面には、作用電極61と、この作用電極61に接続されている電極リード71と、対極66と、この対極66に接続された電極リード72と、参照電極69と、この参照電極69に接続された電極リード73とが形成されている。
基板本体40aを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などのプラスチック類、金属などの無機材料などが挙げられる。これらのなかでは、十分な光の透過性、耐熱性、耐久性、平滑性などを確保し、かつ材料に要するコストを低減させる観点から、好ましくはガラスである。
基板本体40aの厚さおよび大きさは、前記上基板30の基板本体30aを構成する材料、基板本体30aの厚さおよび大きさと同様である。
作用電極61は、ほぼ四角形状に形成されている。作用電極61は、基板本体40aの一側部〔図6(B)の右側〕に配置されている。電極リード71は、作用電極61から基板本体40aの他側部〔図6(B)の左側〕に向けて延びている。また、対極66は、基板本体40a上において、作用電極61よりも外側〔図6(B)において、作用電極61の右側〕に配置されている。電極リード72は、対極66から、作用電極61を迂回して、基板本体40aの他側部〔図6(B)の左側〕に向けて延びている。さらに、参照電極69は、作用電極61を挟んで、対極66と対向する位置に配置されている。電極リード73は、参照電極69から基板本体40aの他側部〔図6(B)の左側〕に向けて延びている。そして、作用電極61の電極リード71と、対極66の電極リード72と参照電極69の電極リード73とは、基板本体40aの他側部において互いに並列するように配置されている。
作用電極61は、図7(a)に示されるように、作用電極本体62と、絶縁層65と、反射層80とから構成されている。作用電極61においては、基板本体40aの表面に、順に、反射部としての反射層80、絶縁層65および作用電極本体62が形成されている。
作用電極本体62は、導電層63と、この導電層63の表面に形成された電子受容層64とからなる。
導電層63は、励起光を透過する導電性材料〔以下、「作用電極材料(A)」ともいう〕からなる。前記作用電極材料(A)としては、例えば、周期表12族元素、13族元素または14族元素の原子を含み、かつ光透過性および導電性を示す材料などが挙げられる。前記材料としては、特に限定されないが、ホウ素をドーパントとして含む酸化亜鉛、アルミニウムをドーパントとして含む酸化亜鉛、ガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛、インジウムをドーパントとして含む酸化亜鉛などの酸化亜鉛系材料;酸化インジウム、スズをドーパントとして含む酸化インジウムなどの酸化インジウム系材料;酸化スズ、アンチモンをドーパントとして含む酸化スズ(ATO)、フッ素をドーパントとして含む酸化スズ(FTO)などの酸化スズ系材料;タンタルをドーパントとして含む酸化チタン、ニオブをドーパントとして含む酸化チタンなどの酸化チタン系材料などが挙げられる。前記導電層63の厚さは、好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは10〜200nmである。
なお、前記導電層63は、光透過性および導電性を有するのであれば、ガラス、プラスチックなどの光透過性の非導電性物質からなる非導電性基材の表面に導電性を有する材料からなる導電材層が設けられた複合基材であってもよい。前記導電材層の形状は、薄膜状およびスポット状のいずれであってもよい。この場合、作用電極61の厚さは、好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは10〜200nmである。導電材層を構成する導電性を有する材料としては、例えば、スズをドーパントとして含む酸化インジウム、フッ素をドーパントとして含む酸化スズ、アンチモンをドーパントとして含む酸化スズ、ガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛、アルミニウムをドーパントとして含む酸化亜鉛などが挙げられる。これらのなかでは、好ましくはスズを含む酸化インジウムおよびフッ素を含む酸化スズである。
導電層63は、例えば、当該導電層63を構成する材料の種類に応じた膜形成方法により形成させることができる。膜形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、インプリント法、スクリーン印刷法、めっき処理法、ゾルゲル法、スピンコート法、浸漬法、気相蒸着法などが挙げられる。
電子受容層64は、光透過性を有している。また、電子受容層64は、電子を受容可能な物質(電子受容物質)を含んでいる。前記電子受容物質は、光励起された標識物質(後述)からの電子注入が可能なエネルギー準位をとり得る物質であればよい。ここで、「光励起された標識物質からの電子注入が可能なエネルギー準位」とは、例えば、電子受容性物質として半導体を用いる場合には、伝導帯(コンダクションバンド)を意味する。すなわち、前記電子受容物質は、標識物質(後述)の最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位よりも低いエネルギー順位を有すればよい。前記電子受容物質としては、特に限定されないが、例えば、酸化インジウム、スズをドーパントとして含む酸化インジウムなどの酸化インジウム系材料;酸化スズ、アンチモンをドーパントとして含む酸化スズ(ATO)、フッ素をドーパントとして含む酸化スズ(FTO)などの酸化スズ系材料などが挙げられる。これらのうち、スズをドーパントとして含む酸化インジウムまたはフッ素をドーパントとして含む酸化スズは、電子受容物質としてのみならず導電性基材としても機能する性質を有する。そのため、これらの材料を使用することにより導電性基材を用いることなく電子受容層のみで作用電極として機能させることができる。なお、導電層63が前記複合基材である場合、電子受容層64は、前記導電材層上に形成される。電子受容層64の厚さは、通常、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜10nmである。かかる電子受容層64は、電子受容層64を構成する材料の種類に応じて、導電層63の形成に用いられる手法と同様の手法により形成させることができる。
絶縁層65は、絶縁体材料から構成されている。前記絶縁体材料としては、透明性を有する絶縁体材料であれば特に限定されない。例えば、ガラス、二酸化ケイ素(SiO2)、フッ化物樹脂などの合成樹脂、プラスチック類などが挙げられる。かかる絶縁層65は、絶縁体材料の種類に応じた手法により形成させることができる。前記手法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、スクリーン印刷法、スピンコート法、インプリント法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
反射層80は、励起光を反射することができる材料から構成されている。かかる材料としては、特に限定されないが、例えば、白金、アルミニウム、金、銀、鉛、鈴、ニッケル、ロジウムなどの金属、合金、または金属化合物などが挙げられる。反射層80は、作用電極本体62と同じ形状および大きさを有していてもよい。また、反射層80は、作用電極本体62を透過した励起光を反射することができるのであればよい。したがって、反射層80の大きさは、作用電極本体62上の光照射位置の大きさと同じであるかそれ以上の大きさであってもよい。反射層80は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、スクリーン印刷、メッキ処理法、インプリント法、スピンコート法などにより形成させることができる。反射層80の表面は、作用電極本体62を透過した励起光を効率よく反射させる観点から、平坦であることが望ましい。
なお、本発明においては、図7(b)に示されるように、作用電極61は、電子受容層64と、絶縁層65と、反射層80とから構成されていてもよい。この場合、作用電極61においては、基板本体40aの表面に、順に、反射層80、絶縁層65および電子受容層64が形成されている。
上記実施形態における作用電極61は、図7(a)及び(b)に示すように、基板本体40aの表面に反射層を備えているが、これに限らず、基板本体40aが反射層を兼ねることもできる。このとき、基板本体40aの材料として、例えば金属などの無機材料を用いることができる。
作用電極61には、シランカップリング剤などを用いた表面処理が施されていてもよい。かかる表面処理により、作用電極61の表面を親水性または疎水性を有するように適宜調節することができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)などのカチオン性シランカップリング剤などが挙げられる。
また、作用電極61の作用電極本体62の電子受容面62a上には捕捉物質が固定化されていてもよい。前記捕捉物質は、検出物質を捕捉することができる物質であればよい。捕捉物質としては、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、糖鎖、抗体、特異的な認識能を持つナノ構造体などが挙げられる。かかる捕捉物質は、検出物質の種類に応じて、適宜選択することができる。電子受容面62a上における捕捉物質の量は、用途および目的に応じて適宜設定することが好ましい。電子受容面62aへの捕捉物質の固定は、作用電極本体62に化学吸着する結合基などを介して行うことができる。前記結合基としては、例えば、チオール基、ヒドロキシル基、リン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ基などが挙げられる。また、光硬化性樹脂を用いた方法や、物理吸着により、捕捉物質を固定することもできる。
対極66は、導電性材料からなる金属層からなる。前記導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、カーボン、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ニッケルなどの金属またはこれらの少なくとも1つを含む合金、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、ATO、FTOなどの金属酸化物、チタン、酸化チタン、窒化チタンなどのチタン化合物などが挙げられる。前記金属層の厚さは、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは10〜200nmである。
参照電極69は、導電性材料からなる金属層からなる。前記導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、カーボン、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ニッケルなどの金属またはこれらの少なくとも1つを含む合金、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、ATO、FTOなどの金属酸化物、チタン、酸化チタン、窒化チタンなどのチタン化合物などが挙げられる。前記金属層の厚さは、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは10〜200nmである。なお、本実施の形態では、参照電極69を設けているが、本発明においては、参照電極69を設けなくてもよい。対極66に用いる電極の種類、膜厚にもよるが、電圧降下の影響が僅かな小さな電流(例えば、1μA以下)を測定する場合は、対極66が参照電極69を兼ねていてもよい。一方、大きな電流を測定する場合、電圧降下の影響を抑制し、作用電極61に印加する電圧を安定化させる観点から、参照電極69を設けることが好ましい。
間隔保持部材50は、矩形の環状体形状に形成され、絶縁体であるシリコーンゴムからなっている。この間隔保持部材50は、作用電極61、対極66および参照電極69が互いに対向する領域を取り囲むように配置されている(図5および図6参照)。上基板30と下基板40との間には間隔保持部材50の厚さに相当する間隔が形成されている。これにより、各電極61,66,69の間には試料や電解液を収容するための空間20aが形成されている(図5参照)。間隔保持部材50の厚さは、通常、0.2〜300μmである。本発明においては、間隔保持部材50を構成する材料として、シリコーンゴムの代わりに、例えば、ポリエステルフィルム製両面テープなどを用いることもできる。
〔検出装置および検査チップの変形例〕
なお、本発明においては、反射部が、検出装置において、前記作用電極本体から離れた位置に設けられていてもよい。具体的には、例えば、図8に示されるように、反射部としての反射層81が、基板本体40aにおける作用電極61が形成された面とは反対面側に設けられていてもよい。この場合、図9(a)に示されるように、絶縁層としての基板本体40aの一方の面に反射層81が形成され、かつ他方の面に、順に、導電層63および電子受容層64が形成されていてもよい。また、図9(b)に示されるように、絶縁層としての基板本体40aの一方の面に反射層81が形成され、かつ他方の面に電子受容層64が形成されていてもよい。なお、図9(a)及び(b)の構成では、基板本体40aとして、ガラス、プラスチック類など透明性を有する絶縁性材料を用いることができる。
また、本発明においては、作用電極61、対極66および参照電極69は、各電極が他の電極と接触しないように間隔保持部材50の枠内に配置されていればよい。したがって、作用電極61、対極66および参照電極69は、異なる基板本体上に形成されてもよい。すなわち、検査チップは、基板本体31aに試料注入口31bおよび参照電極73が形成された上基板31〔図10(A)参照〕と、基板本体41aに作用電極61および対極66が形成された下基板41〔図10(B)参照〕とを有するものであってもよい。また、検査チップは、基板本体32aに試料注入口32b、対極66および参照電極69が形成された上基板32〔図11(A)参照〕と、基板本体42aに作用電極61が形成された下基板42〔図11(B)参照〕とを有するものであってもよい。
さらに、本発明においては、対極66および参照電極69は、基板本体上に形成された薄膜状の電極でなくてもよい。すなわち、検査チップは、基板本体33aに試料注入口33bが形成された上基板33〔図12(A)参照〕と、基板本体43aに作用電極61が形成された下基板43〔図12(B)参照〕と、部材本体51aに対極66および参照電極69が設けられた間隔保持部材51とを有するものであってもよい。この場合、対極66および参照電極69の少なくともいずれかが間隔保持部材の部材本体に設けられていればよい。そして、上基板および下基板のいずれかに、部材本体に設けた電極以外の電極が設けられていればよい。
また、本発明においては、絶縁層65が基板本体としての機能を兼ね備えていてもよい。この場合、基板本体を省略することができる。
[検出物質の検出方法]
本発明の検出物質の検出方法は、光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光励起により電子を生じる検出物質を光電気化学的に検出する検出物質の検出方法であって、
(1−1) 前記作用電極本体上に、検出物質を存在させる工程、
(1−2) 前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する工程、
(1−3) 前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる工程、および
(1−4) 前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む方法である。方法1には、上述した検出装置および検査チップを用いることができるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
方法1は、検出物質の検出に際して、作用電極本体を透過した励起光を作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる点に1つの大きな特徴がある。
通常、作用電極本体を透過した励起光を反射させずに、励起光強度を大きくした場合、シグナルの増加とともに、ノイズの著しい増加を招く。そのため、検出感度が著しく低下する。
しかしながら、透過した励起光を反射させる方法1では、作用電極本体を透過した励起光を反射させない場合と比べて、予想外にもノイズの増加を抑制しつつ、シグナルを増加させることができる。したがって、方法1によれば、高い検出感度を確保することができる。
方法1は、前記工程(1−1)を行なう手法の種類により、下記方法1−1と、方法1−2とに大別することができる。方法1−1は、検出物質を捕捉する捕捉物質を用いる方法である(図13および図14参照)。また、方法1−2は、検出物質を作用電極本体に誘引させる方法である(図19および図20参照)。
そこで、まず、方法1−1について、図面を参照して、説明する。図13は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法(方法1−1)の処理手順を示すフローチャートである。また、図14は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法(方法1−1)の各工程の概略説明図である。ここでは、上述した検査チップ20を用い、検出装置1により検出物質を検出する場合を例として挙げて説明する。
方法1−1では、まず、ユーザーは、検査チップ20の試料注入口30bから検出物質を含む液体試料を注入する。これにより、捕捉物質210が固定された作用電極本体62と、検出物質201とが接触する。そして、作用電極本体62上の捕捉物質210に、検出物質201が捕捉される〔前記工程(1−1)に対応、図13中、「検出物質捕捉工程(工程S1−1)」および図14中、(A)および(B)を参照〕。かかる工程により、作用電極本体62上に、検出物質201を存在させることができる。
かかる工程S1−1では、検出物質の捕捉は、捕捉物質210と検出物質201とが結合する条件下で行なうことができる。前記条件は、検出物質201の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、検出物質201が核酸を含む場合、捕捉物質210による検出物質201の捕捉は、リン酸緩衝生理的食塩水などの溶液の存在下で行なうことができる。
ここで、捕捉物質210は、検出物質201の種類に応じて適宜選択される。例えば、検出物質201が核酸を含む場合、捕捉物質210は、かかる核酸にハイブリダイズする核酸プローブまたは前記核酸に対する抗体であればよい。また、検出物質201がタンパク質またはペプチドを含む場合、捕捉物質210は、かかるタンパク質またはペプチドに対する抗体、タンパク質に対するリガンド、ペプチドに対するレセプタータンパク質などであればよい。
なお、かかる工程S1−1では、検出物質201が結合した被検物質を捕捉物質210により捕捉しているが、これに限らず、捕捉物質210により被検物質を捕捉した後に、検出物質201で捕捉物質210と被検物質との複合体を修飾するようにしてもよい。
かかる工程S1−1では、ユーザーは、必要に応じて、作用電極61を洗浄してもよい。これにより、検出物質201以外の物質(夾雑物質)を除去することができる。前記洗浄は、捕捉物質210および検出物質201の種類に応じた手法などにより行なうことができる。例えば、捕捉物質210および検出物質201がいずれも核酸を含む場合、洗浄液としては、SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)と界面活性剤とを含む溶液などが挙げられる。この場合、かかる洗浄液は、SSCの濃度がより低く、かつ界面活性剤の濃度がより高いほど、夾雑物質を高い効率で除去することができる。
つぎに、ユーザーは、検出装置1のチップ受入部11に、工程S1−1後の検査チップ20をセットする。そして、ユーザーは、検出装置1の動作を開始させる。このとき、まず、検出装置1の光源13によって、作用電極本体62上の検出物質201に向けて励起光が照射される〔前記工程(1−2)に対応、図13中、「励起光照射工程(工程S1−2)」および図14(C)中の「励起光」参照〕。そして、作用電極61の反射層80によって、作用電極本体62を透過した励起光が、作用電極本体62上の検出物質201に向けて反射される〔前記工程(1−3)に対応、図13中、「励起光反射工程(工程S1−3)」および図14(C)中の「反射光」参照〕。その後、検出物質201の光励起により生じた光電流が、電流計14で測定される〔前記工程(1−4)に対応、図13中、電流測定工程(工程S1−4)参照〕。
かかる工程S1−2〜工程S1−4は、電解液の存在下に行なわれる。なお、本明細書では、工程S1−2〜工程S1−4の一連の工程を便宜上別個に説明している。しかし、実際には、これらの工程S1−2〜工程S1−4は、実質的に同時に行なわれる。
前記電解液として、酸化された状態の標識物質に電子を供給しうる塩からなる電解質と、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒または非プロトン性極性溶媒とプロトン性極性溶媒との混合物とを含む溶液を用いることができる。この電解液は、所望により、他の成分をさらに含んでいてもよい。前記電解質としては、例えば、ヨウ化物、臭化物、金属錯体、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、これらの混合物などが挙げられる。前記電解質の具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウムなどの金属ヨウ化物;テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド、イミダゾリウムヨージドなどの4級アンモニウム化合物のヨウ素塩;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウムなどの金属臭化物;テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなどの4級アンモニウム化合物の臭素塩;フェロシアン酸塩、フェリシニウムイオンなどの金属錯体;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウムなどのチオ硫酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カルシウムなどの亜硫酸塩;およびこれらの混合物などが挙げられる。これらのなかでは、テトラプロピルアンモニウムヨージドが好ましい。
電解液の電解質濃度は、好ましくは0.001〜15Mである。
プロトン性極性溶媒として、水、水を主体に緩衝液成分を混合した極性溶媒などを用いることができる。非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル(CHCN)などのニトリル類;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリノン、ジアルキルイミダゾリウム塩などの複素環化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。非プロトン性極性溶媒のなかでは、アセトニトリルが好ましい。プロトン性極性溶媒および非プロトン性極性溶媒は、単独で、または両者を混合して用いることができる。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物は、水とアセトニトリルとの混合物が好ましい。
工程S1−2においては、励起光は、電子受容面62a側の光源13から、作用電極本体62上の検出物質201に対して照射される。励起光の種類は、検出物質に含まれる標識物質の種類などに応じて、適宜選択することができる。励起光の照射量は、ノイズの発生を抑制することができる範囲で適宜設定することが好ましい。
また、工程S1−3においては、透過した励起光が反射層80によって反射される。そして、反射光が作用電極本体62上の検出物質201に照射される。これにより、検出物質201が光励起される。
そして、工程S1−4においては、上述した検出装置1の電流計14により、光電流が測定される。工程S1−4では、光電流の測定値は、さらに種々の演算処理に供される。まず、A/D変換部16は、光電流の測定値(光電流値)をデジタル変換する。そして、デジタル変換された光電流値が制御部17に入力される。つぎに、制御部17は、予め作成された光電流値と検出物質の量との関係を示す検量線に基づき、デジタル変換された光電流値から検出物質の量を概算する。そして、制御部17は、概算された検出物質の量をディスプレイ2に表示するための検出結果画面を作成する。その後、制御部8によって作成された検出結果画面がディスプレイ2上に送信される。そして、ディスプレイ2は、検出結果画面を表示する。その後、処理が終了する。
なお、本実施の形態で用いられる検出装置1では、光源13が検査チップ20の電子受容面62a側に配置されている。また、本実施の形態で用いられる検査チップ20では、反射層80が絶縁層65を介して作用電極本体62と一体に形成されている。
しかしながら、本発明においては、反射部および光源の配置は、特に限定されるものではない。図15〜図18に、励起光照射工程および励起光反射工程における光源および反射部の配置の変形例の概略説明図を示す。
図15に示される変形例に用いられる検出装置では、光源13は、電子受容面62a側に配置されている。そして、かかる検出装置では、光源13は、作用電極本体62から離れた位置に設けられている。また、図15に示される変形例に用いられる検査チップでは、反射部18は、電子受容面62aとは反対面側に設けられている。そして、かかる反射部18は、作用電極本体62から離れた位置に設けられている。なお、かかる変形例においても、作用電極本体62における電子受容面62aとは反対側の表面には、絶縁層65が形成されていてもよい(図16参照)。
図17に示される変形例に用いられる検出装置では、光源13は、電子受容面62aの反対側に配置されている。また、検査チップでは、反射部18は、電子受容面62a側において、作用電極本体62とは離れた位置に設けられている。かかる変形例においても、作用電極本体62における電子受容面62aとは反対側の表面には、絶縁層65が形成されていてもよい(図18参照)。
つぎに、方法1−2について、図面を参照して、説明する。図19は、本発明の他の実施の形態に係る検出物質の検出方法(方法1−2)の処理手順を示すフローチャートである。また、図20は、本発明の一実施の形態に係る検出物質の検出方法(方法1−2)の各工程の概略説明図である。
方法1−2では、まず、ユーザーは、前述した検査チップ20の試料注入口30bから検出物質を含む液体試料を注入する。これにより、捕捉物質が存在しない作用電極本体62上に、検出物質201が誘引される〔前記工程(1−1)に対応、図19中、「検出物質誘引工程(工程S2−1)」および図20中、(A)および(B)を参照〕。工程S2−1により、作用電極本体62上に、検出物質201を存在させることができる。
かかる工程S2−1では、例えば、ユーザーは、前述した検査チップ20の試料注入口30bから、検出物質201と、前記検出物質を作用電極本体62上に誘引するための誘引液とを注入する。これにより、検出物質201が、その捕捉物質が存在しない作用電極61との間で電子輸送が可能な領域に誘引される。
ここで、「捕捉物質が存在しない作用電極61との間で電子輸送が可能な領域」は、通常、作用電極61から0〜10nmの範囲の領域である。また、本明細書において、「捕捉物質が存在しない」とは、「捕捉物質が実質的に存在しないこと」をいう。すなわち、「捕捉物質が存在しない」という概念には、作用電極上において目的物質の実質的な捕捉に寄与しない程度に僅かに捕捉物質が存在することをも含む概念である。
作用電極61への検出物質201の誘引は、検出物質201、誘引液および作用電極61との間の疎水性相互作用若しくは親水性相互作用、または、作用電極61または対極66に電圧を印加することによる電気泳動効果を利用することなどにより行なうことができる。
本誘引工程は、例えば、
1) 誘引液の疎水性・親水性を変更することにより、検出物質201と作用電極61との間の疎水性相互作用若しくは親水性相互作用を大きくすること(誘引方法1)、
2) 修飾検出物質201の電荷に応じて、正または負の電圧を作用電極61に印加することにより、電気泳動効果を大きくすること(誘引方法2)
などによって行なうことができる。前記の誘引方法1および誘引方法2は、それぞれ単独で行なってもよく、両者を組み合わせて行なってもよい。
誘引方法1では、例えば、検出物質201が核酸(DNA、RNAなど)を含む場合、誘引液は、検出物質201と作用電極61との間の疎水性相互作用または親水性相互作用を大きくして、作用電極61の近傍に検出物質を誘引しやすくする観点から、カオトロピックイオンを含有することが好ましい。
前記カオトロピックイオンとしては、例えば、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、グアニジンイオン、チオシアン酸イオン、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンなどが挙げられる。
誘引液がカオトロピックイオンを含有する場合、誘引液中におけるカオトロピックイオンの濃度は、用いられるカオトロピックイオンの種類により異なる。前記濃度は、通常1.0〜8.0mol/Lである。カオトロピックイオンがグアニジンイオンである場合、誘引液中におけるカオトロピックイオンの濃度は、通常、4.0〜7.5mol/Lである。また、チオシアン酸イオンである場合、誘引液中におけるカオトロピックイオンの濃度は、通常、3.0〜5.5mol/Lである。
なお、検出物質201が核酸を含む場合、慣用の核酸抽出・精製方法を利用して、検出物質201を、作用電極61の近傍に誘引させることができる。
前記核酸抽出・精製方法としては、液相を用いる方法、核酸結合用担体を用いる方法などが挙げられる。液相を用いる方法としては、例えば、フェノール/クロロホルム抽出法(Biochimica et Biophysica acta、1963年発行、第72巻、pp.619−629)、アルカリSDS法(Nucleic Acid Research、1979年発行、第7巻、pp.1513−1523)、塩酸グアニジンを含有する緩衝液にエタノールを加え核酸を沈降させる方法(Analytical Biochemistry、162、1987、463)などが挙げられる。核酸結合用担体を用いる方法としては、ガラス粒子とヨウ化ナトリウム溶液とを用いて核酸をガラス粒子に吸着させ、単離する方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、76−2:615−619,1979)や、シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いる方法〔例えば、J.Clinical.Microbiology、1990年発行、第28巻、pp.495−503、特許第2680462号公報などを参照〕などが挙げられる。シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いる方法では、まず、核酸が結合するシリカ粒子と試料中の核酸を遊離する能力を有するカオトロピックイオンを含む溶液とを試料と混合して核酸をシリカ粒子に結合させる。つぎに、夾雑物質を洗浄により除去する。その後、シリカ粒子に結合した核酸を回収する。前記方法によれば、簡便、かつ迅速に核酸を抽出することができる。しかも、かかる方法は、DNAの抽出だけではなく、より不安定であるRNAの抽出にも好適であり、純度の高い核酸が得られるという点で非常に優れている。
そこで、検出物質201が、核酸を含む場合、前記核酸抽出・精製方法に用いられる溶媒を誘引液として用いることにより、検出物質201を作用電極61の近傍に誘引させることができる。この場合、カオトロピックイオンとして、グアニジンイオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、チオシアン酸イオンまたはこれらの任意の組み合わせを用い、作用電極として核酸を結合する電極(例えば、スズを含む酸化インジウムなど)を用いることが好ましい。
また、検出物質201が、核酸を含む場合、誘引液は、必要に応じて、緩衝液を含有していてもよい。前記緩衝液は、核酸を安定に保持するために一般に用いられる緩衝液であればよい。前記緩衝液は、核酸を安定に保持する観点から、中性付近、すなわちpH5.0〜9.0において緩衝能を有することが好ましい。前記緩衝液としては、例えば、トリス−塩酸塩、四ホウ酸ナトリウム−塩酸、リン酸二水素カリウム−四ホウ酸ナトリウム緩衝液などが挙げられる。緩衝液の濃度は、1〜500mmol/Lであることが好ましい。
一方、誘引方法2では、検出物質201の電荷に応じて、正または負の電圧を作用電極に印加する。例えば、検出物質201が、核酸を含む場合、当該検出物質201における核酸部分は負に荷電している。したがって、作用電極61に正の電圧を印加することにより、検出物質201を作用電極61の近傍に誘引させることができる。
つぎに、ユーザーは、検出装置1のチップ受入部11に、工程S2−1後の検査チップ20をセットする。そして、ユーザーは、検出装置1の動作を開始させる。このとき、まず、検出装置1の光源13によって、作用電極本体62上の検出物質201に励起光が照射される〔前記工程(1−2)に対応、図19中、「励起光照射工程(工程S2−2)」および図20(C)中の「励起光」参照〕。そして、作用電極61の反射層80によって、作用電極本体62を透過した励起光が、作用電極本体62上の検出物質201に向けて反射される〔前記工程(1−3)に対応、図19中、「励起光反射工程(工程S2−3)」および図20(C)中の「反射光」参照〕。その後、検出装置1の電流計14によって、検出物質201の光励起により生じた光電流が測定される〔前記工程(1−4)に対応、図19中、電流測定工程(工程S2−4)参照〕。
かかる工程S2−2〜工程S2−4は、電解液の存在下に行なわれる。したがって、前記工程S2−1において誘引液を用いた場合には、必要に応じて、当該誘引液を電解液に置換する。なお、誘引液が、酸化された状態の標識物質に電子を供給する性質を有し、検出物質の光電気化学的な検出が可能である場合、検出工程において、この誘引液をそのまま用いてもよい。
工程S2−2〜工程S2−4は、前記方法1−1の工程S1−2〜工程S1−4と同様に実施することができる。
なお、方法1−2では、検出物質を捕捉する捕捉物質が存在しない作用電極が用いられている。したがって、作用電極61を簡便な処理で洗浄することができ、再利用することができる。作用電極61の洗浄は、紫外線―オゾン洗浄(UV-O3洗浄)などにより行なうことができる。前記UV-O3洗浄では、紫外線による有機化合物の分解とO3の生成および分解の過程における強力な酸化作用により有機化合物が分解され、電極の表面から除去される。
また、検出物質が核酸を含む場合、適切な溶液中で、作用電極上にマイナスの電圧を印加することで、修飾検出物質240aを作用電極61から解離させることもできる。これは、核酸がマイナスに帯電しているからである。前記溶液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)、TEB〔組成:10mMトリス塩酸緩衝液、1mM EDTA〕水などが挙げられる。
なお、方法1−2では、工程S2−1において、検出物質201に誘引用修飾物質を付加して、得られた修飾検出物質を用いてもよい。前記誘引用修飾物質としては、例えば、DNA、RNAなどの核酸などが挙げられる。
[被検物質の検出方法]
つぎに、本発明の被検物質の検出方法を説明する。
本発明の被検物質の検出方法は、光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、被検物質を光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
(2−1) 被検物質と、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質とを接触させ、被検物質と標識結合物質との複合体を形成する工程、
(2−2) 前記作用電極本体上に、少なくとも標識物質を存在させる工程、
(2−3) 前記作用電極本体上の標識物質に、励起光を照射する工程、
(2−4) 前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の標識物質に向けて反射させる工程、および
(2−5) 前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む方法である。本発明の一実施の形態に係る被検物質の検出方法〔「方法2」という〕の処理手順を図21に示す。方法2には、上述した検出装置、検査チップおよび検出セットを用いることができるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
方法2は、前記工程(2−2)を行なう手法の種類により、下記方法2−1と、方法2−2とに大別することができる。方法2−1は、検出物質を捕捉する捕捉物質を用いる方法である(図21参照)。また、方法2−2は、検出物質を作用電極本体に誘引させる方法である(図23参照)。
そこで、まず、方法2−1について、図面を参照して、説明する。図21は、本発明の一実施の形態に係る被検物質の検出方法(方法2−1)の処理手順を示すフローチャートである。また、図22は、本発明の一実施の形態に係る被検物質の検出方法(方法21−1)の各工程の概略説明図である。
方法2−1は、前記方法1−1に対応する方法である。方法2−1は、以下の工程が含まれている点で、方法1−1と異なっている。
− 被検物質を、この被検物質を捕捉する固相で捕捉する工程〔図21中、被検物質捕捉工程(工程S3−1)〕、
− 前記被検物質に、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質を付加する工程〔図21中、標識結合物質付加工程(工程S3−2)〕、
− 被検物質を含む固相を単離する工程〔図21中、単離工程(工程S3−3)〕、および
− 被検物質の量に応じて、固相から少なくとも標識物質を分離する工程〔図21中、分離工程(工程S3−4)〕。ここでは、上述した検査チップ20を用い、検出装置1により被検物質を検出する場合を例として挙げて説明する。
方法2−1では、まず、ユーザーは、被検物質Sと、被検物質Sを捕捉する固相220とを接触させる〔工程S3−1、図22(A)参照〕。これにより、被検物質Sを、固相220に捕捉させる〔図22(B)参照〕。
固相220は、被検物質Sを捕捉する捕捉物質221が固定化された固相本体222からなる。捕捉物質221としては、前記方法1−1で用いられた捕捉物質210と同様の物質が挙げられる。なお、固相220に用いる捕捉物質221と、後述の捕捉工程(工程S3−5)で用いられる捕捉物質とは、互いに異なる種類の物質であるか、または被検物質における認識部位が互いに異なる物質である。
被検物質Sと、固相220との接触は、例えば、容器内で行なうことができる。被検物質Sと、固相220との接触は、被検物質Sと捕捉物質221とが結合する条件下でおこなうことができる。前記条件は、被検物質Sおよび捕捉物質221の種類などに応じて適宜選択することができる。
その後、ユーザーは、被検物質Sを捕捉した固相230に標識結合物質(検出物質201)を付加する〔工程S3−2〕。これにより、標識結合物質(検出物質201)と被検物質Sとの複合体を含む固相231が得られる〔図22(C)参照〕。
固相230への標識結合物質(検出物質201)の付加は、被検物質Sと標識結合物質(検出物質201)とが結合する条件下で行なうことができる。前記条件は、被検物質Sおよび標識結合物質(検出物質201)の種類などに応じて適宜選択することができる。
つぎに、ユーザーは、標識結合物質(検出物質201)と被検物質Sとの複合体を含む固相231を単離する〔工程S3−3〕。
工程S3−3において、固相231の単離方法は、固相本体222の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、固相本体222が磁気ビーズである場合、磁石に固相231が引き寄せられる。この場合、磁石を用いることにより、固相231を簡単に単離することができる。また、固相本体222が基板である場合、基板上の溶液を新しい溶液に置換することにより、被検物質S以外の成分を除去することができる。この場合、溶液の置換により、固相231を簡単に単離することができる。
つぎに、ユーザーは、固相231から、被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)を分離する〔工程S3−4、図22の(D)参照〕。
工程S3−4では、ユーザーは、前記工程S3−2で用いられた標識結合物質(検出物質201)の種類に応じた分離方法により被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)を分離する。例えば、被検物質Sが核酸であり、被検物質Sと相補的な配列を有する核酸を含む標識結合物質(検出物質)が用いられる場合、固相本体222上に形成された複合体を含む溶液を加熱することにより、被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)を簡単に固相231から分離することができる。また、標識結合物質(検出物質201)と被検物質Sとの複合体が切断可能な核酸を含む場合、制限酵素で前記切断可能な核酸中の認識配列を切断することにより、被検物質の量に応じた標識結合物質(検出物質201)またはその一部を得ることができる。
その後、ユーザーは、工程S3−4で分離された標識結合物質(検出物質201)を検査チップ20の試料注入口30bから注入する。そして、ユーザーは、検出装置1のチップ受入部11に、検査チップ20をセットする。そして、ユーザーは、検出装置1の動作を開始させる。捕捉工程(工程S3−5)、励起光照射工程(工程S3−6)、励起光反射工程(工程S3−7)および電流測定工程(工程S3−8)は、方法1−1における検出物質捕捉工程(工程S1−1)、励起光照射工程(工程S1−2)、励起光反射工程(工程S1−3)および電流測定工程(工程S1−4)と同様に実施することができる。なお、方法2−1では、単離工程の後に、標識結合物質付加工程を行なってもよい。また、工程S3−1〜工程S3−4を、全て、検査チップ20内で行なってもよい。
一方、方法2−2は、前記方法1−2に対応する方法である。方法2−2は、以下の工程が含まれている点で、方法1−2と異なっている。
− 被検物質を、この被検物質を捕捉する固相で捕捉する工程〔図23中、被検物質捕捉工程(工程S4−1)〕、
− 前記被検物質に、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質を付加する工程〔図23中、標識結合物質付加工程(工程S4−2)〕、
− 被検物質を含む固相を単離する工程〔図23中、単離工程(工程S4−3)〕、および
− 被検物質の量に応じて、固相から少なくとも標識物質を分離する工程〔図23中、分離工程(工程S4−4)〕。これらの工程S4−1〜工程S4−4は、前記方法2−1における工程S3−1〜工程S3−4と同様に実施することができる。
その後、誘引工程(工程S4−5)、励起光照射工程(工程S4−6)、励起光反射工程(工程S4−7)および電流測定工程(工程S4−8)を、方法1−2における検出物質誘引工程(工程S2−1)、励起光照射工程(工程S2−2)、励起光反射工程(工程S2−3)および電流測定工程(工程S2−4)と同様に実施する。なお、方法2−2においても、単離工程の後に、標識結合物質付加工程を行なってもよい。
さらに、本発明の被検物質の検出方法には、光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光電気化学的に活性な被検物質を光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
(3−1) 前記作用電極本体上に、前記被検物質を存在させる工程、
(3−2) 前記作用電極本体上の前記被検物質に、励起光を照射する工程、
(3−3) 前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の前記被検物質に向けて反射させる工程、および
(3−4) 前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
を含む被検物質の検出方法も含まれる〔方法3という〕。
方法3は、前記工程(3−1)を行なう手法の種類により、下記方法3−1と、方法3−2とに大別することができる。方法3−1は、被検物質を捕捉する捕捉物質を用いる方法である(図24参照)。また、方法3−2は、被検物質を作用電極本体に誘引させる方法である(図25参照)。
かかる方法3−1および方法3−2は、被検物質が、光電気化学的に活性な物質である場合に実施することができる。前記被検物質は、それ自体が光励起されることにより電流を生じる。そのため、方法3−1および方法3−2は、方法2−1および2−2のように、標識結合物質を被検物質に付加しなくてもよい。したがって、方法3−1および方法3−2は、それぞれ、方法1−1および方法1−2における検出物質の代わりに被検物質を用いることにより、同様に実施することができる。すなわち、方法3−1の工程S5−1〜工程S5−4は、方法1−1における検出物質の代わりに被検物質を用いることを除き、方法1−1の工程S1−1〜S1−4と同様の操作を行なうことにより実施することができる。また、方法3−2の工程S6−1〜工程S6−4は、方法1−2における検出物質の代わりに被検物質を用いることを除き、方法1−2の工程S2−1〜S2−4と同様の操作を行なうことにより実施することができる。
以下、実施例などにより、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製造例1)
(1)電極および反射部の形成
スパッタリング法により、二酸化ケイ素(ガラス)からなる基板本体141aの表面に、スズをドープした酸化インジウムからなる薄膜(厚さ約200nm)からなる作用電極161を形成させた〔図26(A)参照〕。前記薄膜は、導電層と電子受容層とを兼ねている。なお、便宜上、作用電極161を第1の領域161aと第2の領域161bに分けた。つぎに、スパッタリング法により、基板本体141aにおける作用電極161と同一表面(以下、「電極面」という)上に、白金薄膜からなる対極166と、白金薄膜からなる参照電極169を形成させた〔図26(A)参照〕。その後、スパッタリング法により、前記基板本体141aの電極面とは反対側の面に、白金薄膜からなる反射層181を形成させた〔図26(C)参照〕。前記反射層181は、作用電極161の第2の領域161bに対応する位置に、作用電極161の第2の領域161bと同じ大きさになるように形成させた。作用電極161の第1の領域161aでは、励起光が通過する〔図26(B)参照〕。一方、作用電極161の第2の領域161bでは、作用電極161を通過した励起光が反射層181によって、作用電極161の第2の領域161b上の検出物質に向けて反射される〔図26(C)参照〕。
(2)シランカップリング剤のコーティング
前記(1)で得られた基板本体141aを、シランカップリング剤溶液〔1体積%APTES含有トルエン溶液)中に1時間浸漬させた。つぎに、基板本体141aを取り出し、トルエン中で2回洗浄した。その後、基板を110℃で10分間加熱し、APTESを基板本体141aの表面に結合させた。基板本体141aを、トルエン中に浸漬させ、5分間超音波洗浄を行なった。超音波洗浄は、3回行なった。その後、脱水エタノールで基板本体141aを流し、未結合のAPTESを基板の表面に結合させた。残存するエタノールを、ブロアで除去した。
(3)捕捉物質の固定
捕捉物質であるキャプチャーDNAプローブを含む水溶液〔100μM DNA〕とUVクロスリンキング試薬〔ジーイー・ヘルスケア・ユーケー・リミテッド(GE Healthcare UK Limited)社製、商品名::Microarray crosslinking reagent D〕とを1:9(体積比)の割合で混合し、10μMプローブ溶液を得た。得られたプローブ溶液6μLを作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面上に滴下した。その後、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bに対し、UV照射装置〔商品名:UVクロスリンカー〕を用いて160mJ/cm2の紫外線光を照射した。これにより、キャプチャーDNAプローブを作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面上に固定した。つぎに、超純水で作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面を洗い流した。その後、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面に残存する超純水をブロアで除去した。
(4)未固定のDNAプローブの除去
前記(3)の操作だけでは、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの表面上に、固定されていないキャプチャーDNAプローブが残存している可能性がある。そこで、固定されていないキャプチャーDNAプローブを除去するために、以下の工程を実施した。
まず、基板本体141aの周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.1mm)を配置した。シリコーンゴムで形成された空間に、ハイブリダイゼーション用溶液6μLを注入した。なお、前記ハイブリダイゼーション用溶液は、超純水とハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2x Hybridization buffer〕とを、1:1(体積比)の割合で混合した溶液である。つぎに、シリコーンゴム上にカバーガラスを被せ、溶液が蒸発しない状態とした。その後、基板本体141aを45℃で1時間静置した。つぎに、洗浄用バッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:Wash buffer A〕と超純水とを用いて、基板本体141aを洗浄した。その後、基板本体141aの表面に残存する超純水をブロアで除去した。
(製造例2)
アセトニトリル(AN)と、エチレンカーボネート(EC)とを、2:3〔AN:EC(体積比)〕となるように混合した。得られた混合液に、電解質塩としてテトラプロピルアンモニウムヨージドを、その濃度が0.6Mとなるように溶解させた。その後、得られた混合液に、電解質としてヨウ素を、その濃度が0.06Mとなるように溶解させた。これにより、電解液を得た。
(試験例1)
(1)検出物質の捕捉
製造例1で得られた電極基板141の作用電極161の周囲に、隔壁となるようにシリコーンゴム(厚さ0.2mm)を配置した。その後、この電極基板141に、ハイブリダイゼーション用チャンバーを装着した。シリコーンゴムを介して、チャンバーと電極基板141とで形成された空間に、ハイブリダイゼーション用溶液20μLを注入した。なお、前記ハイブリダイゼーション用溶液は、標識物質Alexa Flour750で標識されたターゲットDNA(検出物質)を、その濃度が0nMまたは1nMとなるように、ハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2x Hybridization buffer〕に添加した溶液である。溶液が蒸発しないように、チャンバーの注入口を蓋で押さえた。ハイブリダイゼーションは、チャンバーを45℃で1時間静置することにより行なった。つぎに、洗浄用バッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:Wash buffer A〕と超純水とを用いて、電極基板141を洗浄した。その後、電極基板141の表面に残存する超純水をブロアで除去した。
(2)光電流の測定
前記(1)を行なった後の電極基板141の作用電極161の周囲を間隔保持部材であるシリコーンゴム(厚さ0.2mm)で囲んだ。つぎに、前記シリコーンゴムによって形成された空間に、製造例2で得られた電解液12.5μLを注入した。これにより、作用電極、対極および参照電極を前記電解液に接触させた。
つぎに、電極基板141の上方から、前記空間を、カバーガラスで蓋をして密封した。これにより、電解液の漏れや蒸発を防ぐようにした。作用電極161の第1および第2の領域161a,161bに対し、参照電極を基準として0Vの電圧を印加した。これと同時に、作用電極161の第1および第2の領域161a,161bの所定の位置(図26中、光照射位置1〜4)に対して、励起光〔波長約781nm、励起光強度約13mWのレーザー光〕を照射した。レーザー光を所定の周期(1Hz)で点滅(on・off)させ、作用電極161の第1の領域161aまたは作用電極161の第2の領域161bと対極との間を流れる光電流を測定した。試験例1において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を図27に示す。なお、図27において、「透過型」は、作用電極161の第1の領域161aを示す。また、「反射型」は、作用電極161の第2の領域161bを示す。
図27に示された結果から、検出物質濃度が1nMである場合、実験番号3および4(反射型)それぞれの光電流は、実験番号1および2(透過型)それぞれの光電流と比べて、著しく増加していることがわかる。また、検出物質濃度が0nMである場合、実験番号3および4(反射型)それぞれの光電流は、実験番号1および2(透過型)それぞれの光電流と同程度であることがわかる。これらの結果から、作用電極を透過した光を作用電極上の検出物質に向けて反射させることにより、光電流を著しく増加させることができることがわかる。
(試験例2)
試験例1において、作用電極161の第1の領域161aに対して、励起光強度5.67mWまたは10.91mWの励起光(レーザー光)を照射したことおよび作用電極161の第2の領域161bに対して、励起光強度5.67mWの励起光(レーザー光)を照射したことを除き、試験例1と同様に操作を行ない、光電流を測定した。そして、S/N比を算出した。なお、S/N比は、下記式(I)に基づいて算出した。
Figure 0005809010
試験例2において、用いられた電極の種類および励起光強度と光電流との関係を調べた結果を図28(A)に示す。実験番号9は、作用電極161の第1の領域161a(透過型)に対して励起光強度5.67mWの励起光(レーザー光)を照射したときの光電流を測定した結果である。実験番号10は、作用電極161の第1の領域161a(透過型)に対して励起光強度10.91mWの励起光(レーザー光)を照射したときの光電流を測定した結果である。実験番号11は、作用電極161の第2の領域161b(反射型)に対して励起光強度5.67mWの励起光(レーザー光)を照射したときの光電流を測定した結果である。なお、図中、「ノイズ」は、検出物質濃度0nMのときの光電流(すなわち、検出物質に起因しないノイズ)である。また、「シグナル」は、検出物質濃度1nMのときの光電流(すなわち、検出物質に起因するシグナル)である。
図28(A)に示された結果から、実験番号10における「シグナル」の場合の光電流は、実験番号9における「シグナル」の場合の光電流の約2倍に増加していることがわかる。また、図28(A)に示された結果から、実験番号10における「ノイズ」の場合の光電流は、実験番号9における「ノイズ」の場合の光電流の約2倍に増加していることがわかる。これらの結果から、励起光強度を増加させた場合、検出物質に起因するシグナルとともに、検出物質に起因しないノイズまでもが増加することがわかる。
一方、図28(A)に示された結果から、実験番号11における「シグナル」の場合の光電流は、実験番号9における「シグナル」の場合の光電流の約2.6倍に増加していることがわかる。また、図28(A)に示された結果から、実験番号11における「ノイズ」の場合の光電流は、実験番号9における「ノイズ」の場合の光電流と同程度であることがわかる。これらの結果から、反射部を有する作用電極を用いた場合、検出物質に起因するシグナルを増加させることができるにもかかわらず、予想外にも、検出物質に起因しないノイズの発生を抑制することができることがわかる。
また、図28(A)に示された結果に基づき、S/N比を算出した。試験例2において、用いられた電極の種類および励起光強度とS/N比との関係を調べた結果を図28(B)に示す。
図28(B)に示された結果から、実験番号11の場合のS/N比は、実験番号9の場合のS/N比よりも大きくなっていることがわかる。ところが、実験番号10の場合のS/N比は、実験番号9の場合のS/N比よりも小さくなっていることがわかる。したがって、これらの結果から、反射部を有する作用電極を用いた場合、検出感度が向上することがわかる。
(製造例3)
製造例1(1)において、スパッタリング法により、白金薄膜からなる反射層181を形成させる代わりに、蒸着法により、金薄膜(膜厚50.9nm)からなる反射層182を形成させたことを除き、製造例1(1)と同様の操作を行ない、電極および反射部を形成させた。その後、製造例1(2)〜(4)と同様の操作を行なうことにより、シランカップリング剤のコーティング、捕捉物質の固定、および未固定のDNAプローブの除去を行ない、電極基板142を得た(図26(A)参照)。
(試験例3)
試験例1において、製造例1で得られた電極基板141の代わりに、製造例3で得られた電極基板142を用いたこと、およびハイブリダイゼーション用溶液として、標識物質Alexa Flour750で標識されたターゲットDNA(検出物質)を、その濃度が0nMまたは10nMとなるように、ハイブリダイゼーションバッファー〔アフィメトリックス社製、商品名:2x Hybridization buffer〕に添加した溶液を用いたことを除き、試験例1(1)および(2)と同様の操作を行なうことにより、検出物質の捕捉および光電流の測定を行なった。試験例3において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を図29に示す。
図29に示された結果から、検出物質濃度が10nMである場合、実験番号14および15(反射型)それぞれの光電流は、実験番号12および13(透過型)それぞれの光電流と比べて、著しく増加していることがわかる。検出物質濃度が0nMである場合、実験番号18および19(反射型)それぞれの光電流は、実験番号16および17(透過型)それぞれの光電流と同程度であることがわかる。これらの結果から、電極を反射型として、作用電極を透過した光を作用電極上の検出物質に向けて反射させることにより、色素由来の光電流のみを増大させることができることがわかる。
(製造例4)
製造例1(1)において、スパッタリング法により、基板本体141aの電極面とは反対側の面に白金薄膜からなる反射層181を形成させる代わりに、アルミホイルを、基板本体143aの電極面とは反対側の面に接着させることによりアルミニウムからなる反射層183を形成したことを除き、製造例1(1)と同様の操作を行ない、電極および反射部を形成させた。つぎに、製造例1(2)〜(4)のシランカップリング剤のコーティング、捕捉物質の固定および未固定のDNAプローブの除去を行なう代わりに、紫外線/オゾン洗浄装置〔サムコ(株)製、商品名:UV−1〕を用いて電極表面を紫外線およびオゾンで10分間洗浄することにより、電極基板143を得た(図30(A)参照)。
(試験例4)
製造例4で得られた電極基板143の作用電極161の周囲を間隔保持部材であるシリコーンゴム(厚さ:0.2mm)で囲んだ。つぎに、シリコーンゴムによって形成された空間に、溶液A12.5μLを注入した。なお、前記溶液Aは、製造例2で得られた電解液に、標識物質Alexa Flour750で標識されたターゲットDNA(検出物質)を、その濃度が0nMまたは1nMとなるように添加することによって得られる溶液である。これにより、作用電極、対極および参照電極を前記電解液に接触させた。つぎに、電極基板143の上方から、前記空間を、カバーガラスで蓋をして密封した。これにより、光電流測定中の電解液の漏れや乾燥を防ぐようにした。
その後、試験例1と同様の操作を行ない、光電流を測定した。試験例4において、用いられた電極の種類(透過型および反射型)と光電流との関係を調べた結果を図31に示す。
図31に示された結果から、検出物質濃度が1nMである場合、実験番号22および23(反射型)それぞれの光電流は、実験番号20および21(透過型)それぞれの光電流と比べて、著しく増加していることがわかる。検出物質濃度が0nMである場合、実験番号26および27(反射型)それぞれの光電流は、実験番号24および25(透過型)それぞれの光電流と同程度であることがわかる。これらの結果から、電極を反射型として、作用電極を透過した光を作用電極上の検出物質に向けて反射させることにより、色素由来の光電流のみを増大させることができることがわかる。
1 検出装置
13 光源
18 反射部
20 検査チップ
40 電極基板(下基板)
41 電極基板(下基板)
42 電極基板(下基板)
43 電極基板(下基板)
40a 基板本体
41a 基板本体
42a 基板本体
43a 基板本体
51 間隔保持部材
51a 部材本体
61 作用電極
62 作用電極本体
63 導電層
64 電子受容層
65 絶縁層
66 対極
69 参照電極
80 反射部(反射層)
81 反射部(反射層)
201 検出物質
S 被検物質

Claims (17)

  1. 光励起により電子を生じる検出物質を、作用電極本体と対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するための検出装置であって、
    前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
    対極と、
    前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する光源と、
    前記光源から照射され、かつ前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
    を備えている検出物質の検出装置。
  2. 前記反射が、白金、アルミニウム、金、銀および銅からなる群より選択された少なくとも一つからなる請求項1に記載の装置。
  3. 前記作用電極本体が、導電層と電子受容層とからなる請求項1または2に記載の装置。
  4. 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面側に配置されており、
    前記反射部が、前記電子受容面とは反対面側に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
  5. 前記反射部が、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている請求項4に記載の装置。
  6. 前記反射部が、光透過性を有する絶縁層を介して前記作用電極本体と一体に形成されている請求項4に記載の装置。
  7. 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている請求項6に記載の装置。
  8. 前記絶縁層が、作用電極本体の形態を保持するための基板本体である請求項6または7に記載の装置。
  9. 前記反射部が、作用電極本体の形態を保持する基板本体上に形成されている請求項4に記載の装置。
  10. 前記光源が、前記作用電極本体上の検出物質からの電子を受容する電子受容面の反対側に配置されており、
    前記反射部が、前記電子受容面側において、前記作用電極本体から離れた位置に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
  11. 前記作用電極本体における前記電子受容面とは反対側の表面に、光透過性を有する絶縁層が形成されている請求項10に記載の装置。
  12. 光励起により電子を生じる検出物質を、作用電極本体と対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するのに用いられる電極基板であって、
    基板本体と、
    前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
    前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
    を備えている電極基板。
  13. 前記基板本体上に、対極が形成されている請求項12に記載の電極基板。
  14. 光励起により電子を生じる検出物質を、対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するのに用いられる作用電極であって、
    前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、
    前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部と
    を備えている作用電極。
  15. 光励起により電子を生じる検出物質を、作用電極本体と対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出するための検査チップであって、
    基板本体と、前記基板本体上に形成され、前記検出物質から生じた電子を受容可能であり、かつ光透過性を有する作用電極本体と、前記基板本体上に形成され、かつ光源から照射されて前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射する反射部とを備えた電極基板と、
    対極と
    を備えている検査チップ。
  16. 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、光励起により電子を生じる検出物質を、前記作用電極本体と前記対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出する検出物質の検出方法であって、
    前記作用電極本体上に、検出物質を存在させる工程、
    前記作用電極本体上の検出物質に、励起光を照射する工程、
    前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の検出物質に向けて反射させる工程、および
    前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
    を含む検出物質の検出方法。
  17. 光透過性を有する作用電極本体と、対極とを用い、被検物質を、前記作用電極と前記対極との間を流れる光電流を測定することにより光電気化学的に検出する被検物質の検出方法であって、
    被検物質と、この被検物質を捕捉する結合物質が標識物質で標識された標識結合物質とを接触させ、被検物質と標識結合物質との複合体を形成する工程、
    前記作用電極本体上に、少なくとも標識物質を存在させる工程、
    前記作用電極本体上の標識物質に、励起光を照射する工程、
    前記作用電極本体を透過した励起光を前記作用電極本体上の標識物質に向けて反射させる工程、および
    前記作用電極本体と対極との間に流れる電流を測定する工程
    を含む被検物質の検出方法。
JP2011225926A 2010-10-29 2011-10-13 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法 Active JP5809010B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011225926A JP5809010B2 (ja) 2010-10-29 2011-10-13 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法
US13/277,712 US9057688B2 (en) 2010-10-29 2011-10-20 Detection device for detecting a test substance
CN201110333157.2A CN102539741B (zh) 2010-10-29 2011-10-28 检测物的检测装置、电极、基板、检查芯片及检测方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010244606 2010-10-29
JP2010244606 2010-10-29
JP2011225926A JP5809010B2 (ja) 2010-10-29 2011-10-13 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012108108A JP2012108108A (ja) 2012-06-07
JP5809010B2 true JP5809010B2 (ja) 2015-11-10

Family

ID=45995452

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011225926A Active JP5809010B2 (ja) 2010-10-29 2011-10-13 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US9057688B2 (ja)
JP (1) JP5809010B2 (ja)
CN (1) CN102539741B (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5931788B2 (ja) * 2013-03-28 2016-06-08 シスメックス株式会社 被検物質の電気化学的検出方法
JP6461196B2 (ja) * 2014-12-26 2019-01-30 株式会社東芝 バイオセンサ
US20190351409A1 (en) * 2016-12-29 2019-11-21 Ador Diagnostics S.R.L. Cartridge for use in in-vitro diagnostics and method of use thereof
CN111812171B (zh) * 2020-07-15 2022-04-15 哈尔滨工业大学(深圳) 一种集成式光电化学传感电极及其应用

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4534099A (en) * 1982-10-15 1985-08-13 Standard Oil Company (Indiana) Method of making multilayer photoelectrodes and photovoltaic cells
JP3695041B2 (ja) * 1997-02-07 2005-09-14 東ソー株式会社 蛍光検出装置
JP2000162126A (ja) * 1998-11-25 2000-06-16 Fuji Photo Film Co Ltd 画像情報読取装置
WO2002071029A1 (en) * 2001-03-02 2002-09-12 Waters Investments Limited Fluorescence detector geometry
JP2006119111A (ja) * 2004-03-26 2006-05-11 Toto Ltd 光電流を用いた被検物質の特異的検出方法、それに用いられる電極、測定用セル、および測定装置
JP4919101B2 (ja) * 2004-09-24 2012-04-18 Toto株式会社 増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサセルおよび測定装置
CN100575954C (zh) * 2005-06-23 2009-12-30 中国科学院生态环境研究中心 一种光电化学检测核酸的方法
CN101317087B (zh) 2005-09-29 2013-01-02 Toto株式会社 使用光电流特异性检测被检测物质的方法、其中所使用的电极、测定池和测定装置
CN101393146A (zh) * 2007-09-19 2009-03-25 中国科学院生态环境研究中心 光电化学检测核酸现场损伤的方法及传感器
JP2009198416A (ja) * 2008-02-25 2009-09-03 Panasonic Corp 生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置
JP5172606B2 (ja) * 2008-10-30 2013-03-27 シスメックス株式会社 被検物質の特異的検出方法および装置、ならびに検査チップ
WO2010077765A1 (en) * 2008-12-17 2010-07-08 Hach Company Treatment system and method for removing challenge materials from a water stream
WO2010080327A1 (en) * 2008-12-19 2010-07-15 Hach Company Photo-electro-chemical oxygen demand sensor, fluid sensor system, and method for determining one or more characteristics of a foreign material in a fluid

Also Published As

Publication number Publication date
CN102539741A (zh) 2012-07-04
US20120103836A1 (en) 2012-05-03
CN102539741B (zh) 2014-12-24
JP2012108108A (ja) 2012-06-07
US9057688B2 (en) 2015-06-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2458383B1 (en) Method of electrochemically detecting a sample substance
US8092670B2 (en) Method for specifically detecting analyte using photocurrent, and electrode, measuring cell and measuring device for use therein
EP2515112B1 (en) Method for electrochemically detecting analyte
EP2472260A1 (en) Photocurrent detection electrode, manufacturing method, and working electrode substrate
JP5809010B2 (ja) 検出物質の検出装置、電極基板、作用電極、検査チップ、検出物質の検出方法および被検物質の検出方法
JP5856780B2 (ja) 検出物質の光電気化学的検出方法及び被検物質の光電気化学的検出方法
WO2013047624A1 (ja) 被検物質の特異的検出方法
EP2182358B1 (en) Method for detecting analyte, detection apparatus, and test chip
JP5502413B2 (ja) 検査チップ、被検物質検出装置および被検物質の特異的検出方法
JP5795184B2 (ja) 被検物質の電気化学的検出方法
JP5931788B2 (ja) 被検物質の電気化学的検出方法
JP5480105B2 (ja) 電極基板、作用電極および検査チップ
JP2012233878A (ja) 被検物質の電気化学的検出方法
JP2006284413A (ja) 色素増感型バイオセンサ用ブロッキング剤
EP2182359B1 (en) Method for detecting analyte
JP5806892B2 (ja) 検出物質の電気化学的検出方法および被検物質の電気化学的検出方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140926

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150526

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150527

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150727

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150825

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150910

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5809010

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250