JP2006090893A - 増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液 - Google Patents
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Abstract
【課題】 増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において被検物質の検出感度を飛躍的に向上できる、作用電極処理用の緩衝溶液の提供。
【解決手段】 増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液として、カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない緩衝剤と、溶媒とを含んでなる緩衝溶液を用いる。これにより、被検物質の検出感度が飛躍的に向上する。
【選択図】 なし
【解決手段】 増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液として、カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない緩衝剤と、溶媒とを含んでなる緩衝溶液を用いる。これにより、被検物質の検出感度が飛躍的に向上する。
【選択図】 なし
Description
発明の分野
本発明は、光電流を用いて、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を特異的に検出する方法に用いられる作用電極の各種処理に使用される緩衝溶液に関する。
本発明は、光電流を用いて、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を特異的に検出する方法に用いられる作用電極の各種処理に使用される緩衝溶液に関する。
背景技術
生体試料中のDNAを解析する遺伝子診断法が、各種病気の新たな予防および診断法として、有望視されている。このようなDNA解析を簡便かつ正確に行う技術として、以下のものが提案されている。
生体試料中のDNAを解析する遺伝子診断法が、各種病気の新たな予防および診断法として、有望視されている。このようなDNA解析を簡便かつ正確に行う技術として、以下のものが提案されている。
被検体DNAを、これと相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光物質を標識されたDNAプローブとハイブリダイズさせ、その際の蛍光シグナルを検出する、DNAの分析方法が知られている(例えば、特許文献1(特開平7−107999号公報)および特許文献2(特開平11−315095号公報)参照)。この方法にあっては、ハイブリダイゼーションによる二本鎖DNAの形成を色素の蛍光により検出する。
また、一本鎖に変性された遺伝子サンプルを、これに相補性を有する一本鎖の核酸プローブとハイブリダイゼーションさせた後、インターカレータ等の二本鎖認識体を添加して電気化学的に検出する方法が知られている(例えば、特許文献3(特許公報第2573443号)および非特許文献1(表面科学Vol. 24, No. 11. Pp. 671-676, 2003)参照)。このような電気化学的検出方法にあっては、核酸プローブの電極への固定化等の各種工程において、生体物質を安定に存在させるため一般的に生化学分野で使用されるリン酸緩衝液(PBS)等の緩衝溶液が用いられている(例えば、特許文献3(特許公報第2573443号)。
ところで、増感色素を用いて光から電気エネルギーを発生させる太陽電池が知られている(例えば、特許文献4(特開平1−220380号公報)参照)。この太陽電池は、多結晶の金属酸化物半導体を有し、かつその表面積に広範囲にわたり増感色素の層が形成されてなるものである。しかしながら、このような電極を生物化学的な分析に応用しようとする試みは未だなされていない。
特開平7−107999号公報
特開平11−315095号公報
特許公報第2573443号
特開平1−220380号公報
表面科学Vol. 24, No. 11. Pp. 671-676, 2003
本発明者らは、被検物質とプローブ物質との直接または間接的な特異的結合を介して作用電極に増感色素を固定させ、この増感色素を光励起させて発生する光電流を検出することにより、被検物質を高感度で簡便かつ正確に検出および定量出来るとの知見を得ている。そして、本発明者らは、今般、上記測定に用いる作用電極の各種処理液として、カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない緩衝剤を含む緩衝溶液を使用することにより、測定対象物および作用電極の特性を阻害することなく、光電流による被検物質の検出感度が飛躍的に向上するとの知見を得た。
したがって、本発明は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において被検物質の検出感度を飛躍的に向上できる、作用電極処理用の緩衝溶液を提供することを目的としている。
そして、本発明による、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液は、
カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない緩衝剤と、
溶媒と
を含んでなるものである。
カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない緩衝剤と、
溶媒と
を含んでなるものである。
作用電極との接触下で使用される緩衝溶液
本発明による緩衝溶液は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液である。増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出の詳細については後述するが、作用電極との接触下で使用の例としては、プローブ物質を作用電極に固定化させる処理、被検物質をプローブ物質を介して作用電極に固定化させる処理、被検物質の固定化後の作用電極を洗浄する処理、作用電極を用いて光電流を検出する工程等が挙げられる。
本発明による緩衝溶液は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液である。増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出の詳細については後述するが、作用電極との接触下で使用の例としては、プローブ物質を作用電極に固定化させる処理、被検物質をプローブ物質を介して作用電極に固定化させる処理、被検物質の固定化後の作用電極を洗浄する処理、作用電極を用いて光電流を検出する工程等が挙げられる。
本発明による緩衝溶液は、緩衝剤と溶媒とを含んでなる。そして、緩衝剤として、カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まないものを用いる。このような緩衝剤を含む緩衝溶液を用いることにより、測定対象物および作用電極の特性を阻害することなく、光電流による被検物質の検出感度を飛躍的に向上させることができる。この傾向は、作用電極の表面が酸化チタンやチタン酸ストロンチウムからなる場合において、特に顕著である。
本発明の緩衝溶液を使用すると検出感度が飛躍的に向上する理由は定かではないが、一般的な生化学分野で使用される、リン酸緩衝液、およびアミンもしくはカルボン酸を主成分とする緩衝溶液と異なり、作用電極との相互作用が起こりにくいためではないか、と考えられる。すなわち、緩衝剤がカルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含むと、これらの基が作用電極に対して何らかの相互作用をして、作用電極上のプローブ物質の剥離や色素から作用電極への電子注入の阻害を引き起こし、その結果検出電流値の値を低下を招くのではないかと考えられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に用いる緩衝剤は、カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない化学構造を有し、かつ緩衝作用を有するものである限り限定されないが、好ましい緩衝剤としては、下記式(I):
(式中、R1はヒドロキシル基で置換されていてもよい、炭素数が1〜4のアルキレン基であり、Xはスルホン酸基またはその塩であり、AはOまたはYR2−N(ここで、R2はR1と同義であり、Yはスルホン酸基もしくはその塩またはヒドロキシル基である))
で表される化合物が挙げられる。これらの緩衝剤は、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を安定に保持させて測定精度を向上させるといった利点を有する。
で表される化合物が挙げられる。これらの緩衝剤は、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を安定に保持させて測定精度を向上させるといった利点を有する。
本発明の好ましい態様によれば、アルキレン基がエチレン基であるのが好ましい。このような緩衝剤の具体例としては、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)、セスキナトリウム塩(PIPES sesquisodium)、および2−モルフォリノエタンスルホン酸(MES)が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、アルキレン基がプロピレン基であるのが好ましい。このような緩衝剤の具体例としては、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(EPPS)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−モルフォリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルフォリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、およびピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシル−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、緩衝剤の濃度を1〜200mMとするのが好ましく、より好ましくは1〜100mM、さらに好ましくは10〜50mMである。
本発明の緩衝溶液に用いる溶媒は、被検物質および作用電極の特性を阻害しないものであれば限定されないが、好ましい例としては、水およびアルコールが挙げられ、より好ましくは水である。
本発明の好ましい態様によれば、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を安定に保持させて測定精度を向上させるためには、緩衝溶液のpHを5,0〜9.0とするのが好ましく、より好ましくは6.0〜8.0、さらに好ましくは6.5〜7.5とする。
光電流を用いた被検物質の特異的検出
前述の通り、本発明の緩衝溶液は増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極の各種処理に使用されるものである。この増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出方法について、以下に具体的に説明する。
前述の通り、本発明の緩衝溶液は増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極の各種処理に使用されるものである。この増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出方法について、以下に具体的に説明する。
この方法にあっては、まず、被検物質を含む試料液と、作用電極と、対電極とを用意する。この試料液の溶媒としては本発明の緩衝溶液を用いるのが好ましい。本発明に用いる作用電極は、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を表面に備えた電極である。すなわち、プローブ物質は、被検物質と直接、特異的に結合する物質のみならず、被検物質を受容体蛋白質分子等の媒介物質に特異的に結合させて得られる結合体と特異的に結合可能な物質であってよい。次いで、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を作用電極に固定させる。増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、被検物質あるいは媒介物質に予め標識させておくか、あるいは被検物質およびプローブ物質の結合体にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には試料液に単に添加すればよい。
そして、作用電極と対電極とを電解質媒体に接触させた後、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させると、光励起された増感色素から電子受容物質へ電子移動が起こる。この電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することにより、被検物質を高い感度で検出することができる。また、この検出電流は試料液中の被検試料濃度との高い相関関係を有しているので、測定された電流量または電気量に基づき被検試料の定量測定を行うことができる。
被検物質およびプローブ物質
本発明における被検物質としては、特異的な結合性を有する物質であれば限定されず、種々の物質であってよい。このような被検物質であれば、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を作用電極表面に担持させておくことにより、被検物質をプローブ物質に直接または間接的に特異的に結合させて検出することが可能となる。
本発明における被検物質としては、特異的な結合性を有する物質であれば限定されず、種々の物質であってよい。このような被検物質であれば、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を作用電極表面に担持させておくことにより、被検物質をプローブ物質に直接または間接的に特異的に結合させて検出することが可能となる。
すなわち、本発明にあっては、被検物質およびプローブ物質として互いに特異的に結合可能なものを選択することができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、被検物質と特異的に結合する物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、作用電極上に被検物質を直接、特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、一本鎖の核酸および核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸の組合せ、ならびに抗原および抗体の組合せが挙げられる。
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質を一本鎖の核酸とし、プローブ物質を核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸とするのが好ましい。プローブ物質は核酸に対して15bp以上の相補性部分を有するのがより好ましい。この態様における被検物質の作用電極への特異的結合の工程を図1(a)および(b)に示す。これらの図に示されるように、被検物質としての一本鎖の核酸1は、作用電極3上に担持されたプローブ物質としての相補性を有する一本鎖の核酸4とハイブリダイズされて、二本鎖の核酸7を形成する。
被検物質としての一本鎖の核酸を含む試料液は、末梢静脈血のような血液、白血球、血清、尿、糞便、精液、唾液、培養細胞、各種臓器細胞のような組織細胞等の、核酸を含有する各種検体試料から、公知の方法により核酸を抽出して作製することができる。このとき、検体試料中の細胞の破壊は、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて担体を振動させることにより行なうことができる。また、核酸抽出溶液を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。核酸溶出溶液の例としては、SDS、Triton-X、Tween-20のような界面活性剤、サポニン、EDTA、プロテア−ゼ等を含む溶液が挙げられる。これらの溶液を用いて核酸を溶出する場合、37℃以上の温度でインキュベ−トすることにより反応を促進することができる。
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質とする遺伝子の含有量が微量である場合には、公知の方法により遺伝子を増幅した後検出を行なうのが好ましい。遺伝子を増幅する方法としては、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR)等の酵素を用いる方法が代表的であろう。ここで、遺伝子増幅法に用いられる酵素の例としては、DNAポリメラ−ゼ、Taqポリメラ−ゼのようなDNA依存型DNAポリメラ−ゼ、RNAポリメラ−ゼIのようなDNA依存型RNAポリメラ−ゼ、Qβレプリカ−ゼのようなRNA依存型RNAポリメラ−ゼが挙げられ、好ましくは温度を調節するだけで連続して増幅を繰り返すことができる点で、Taqポリメラ−ゼを用いるPCR法である。
本発明の好ましい態様によれば、上記増幅時に特異的に核酸を増感色素で標識することが出来る。一般的には、DNAにアミノアリル修飾dUTPを取り込ませることにより行うことができる。この分子は未修飾の dUTP と同じ効率で取り込まれる。次のカップリング段階において、N−ヒドロキシサクシンアミド(N-hydroxysuccinimide)により活性化された蛍光色素が修飾 dUTP と特異的に反応し、均一に増感色素で標識された被検物質が得られる。
本発明の好ましい態様によれば、上記のようにして得られた核酸の粗抽出液あるいは精製した核酸溶液をまず90〜98℃、好ましくは95℃以上の温度で熱変性を施し、一本鎖核酸を調製することができる。
本発明にあっては、被検物質とプローブ物質が間接的に特異的に結合するものであってもよい。すなわち、本発明の別の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、この被検物質と特異的に結合する物質を媒介物質として共存させ、この媒介物質と特異的に結合可能な物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、プローブ物質に特異的に結合できない物質であっても、媒介物質を介して作用電極上に間接的に特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質、媒介物質、およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、リガンド、このリガンドを受容可能な受容体蛋白質分子、およびこの受容体蛋白質分子と特異的に結合可能な二本鎖の核酸の組合せが挙げられる。リガンドの好ましい例としては、外因性内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が挙げられる。外因性内分泌撹乱物質とは、受容体蛋白質分子を介してDNAに結合し、その遺伝子発現に影響して毒性を生じる物質であるが、本発明の方法によれば、被検物質によりもたらされる受容体等のタンパク質のDNAに対する結合性を簡便にモニタリングすることができる。この態様における被検物質の作用電極への特異的結合の工程を図2に示す。図2に示されるように、被検物質としてのリガンド10は、まず、媒介物質である受容体蛋白質分子11に特異的に結合する。そして、リガンドが結合された受容体蛋白質分子13が、プローブ物質としての二本鎖の核酸14に特異的に結合する。
本発明の好ましい態様によれば、被検物質は二種以上であることができる。本発明の方法によれば、複数の増感色素を用いて、各増感色素毎に異なる励起波長の光を照射することにより、複数種類の被検物質を個別に検出することが可能である。
増感色素
本発明にあっては、被検物質の存在を光電流で検出するために、増感色素の共存下、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させて、該結合により増感色素を作用電極に固定させる。そのために、本発明にあっては、図1(a)および図2に示されるように被検物質1あるいは媒介物質11に予め増感色素2,12で標識しておくことができる。また、図1(b)に示されるように被検物質およびプローブ物質の結合体7(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素8を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより、プローブ物質に増感色素を固定させることができる。
本発明にあっては、被検物質の存在を光電流で検出するために、増感色素の共存下、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させて、該結合により増感色素を作用電極に固定させる。そのために、本発明にあっては、図1(a)および図2に示されるように被検物質1あるいは媒介物質11に予め増感色素2,12で標識しておくことができる。また、図1(b)に示されるように被検物質およびプローブ物質の結合体7(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素8を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより、プローブ物質に増感色素を固定させることができる。
本発明に用いる増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、光源の照射による光励起状態への遷移が可能であり、かつ励起状態から作用電極に電子注入できる電子状態を採りうるものであればよい。したがって、用いる増感色素は、作用電極、特に電子受容層との間において上記電子状態をとることができるものであればよいことから、多種の増感色素が使用可能であり、高価な色素を使用する必要がない。
増感色素の具体例としては、金属錯体や有機色素が挙げられる。金属錯体の好ましい例としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン;クロロフィルまたはその誘導体;ヘミン、特開平1−220380 号公報や特表平5−504023 号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えばシス−ジシアネート−ビス(2、2 ’−ビピリジル−4、4 ’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))があげられる。有機色素の好ましい例としては、メタルフリーフタロシアニン、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、インジゴ系色素等が挙げられる。
二本鎖核酸にインターカレーション可能な増感色素の好ましい例としては、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイドが挙げられる。このような増感色素を用いる場合、核酸のハイブリダイゼーション後に試料液に添加するだけで増感色素で標識された二本鎖核酸が形成されるので、予め一本鎖の核酸を標識する必要が無い。
作用電極およびその製造
本発明に用いる作用電極は、上記プローブ物質を表面に備えた電極であり、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電極である。したがって、作用電極の構成および材料は、使用される増感色素との間で上記電子移動が生じるものであれば限定されず、種々の構成および材料であってよい。
本発明に用いる作用電極は、上記プローブ物質を表面に備えた電極であり、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電極である。したがって、作用電極の構成および材料は、使用される増感色素との間で上記電子移動が生じるものであれば限定されず、種々の構成および材料であってよい。
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、この電子受容層の表面にプローブ物質が備えられてなるのが好ましい。また、本発明のより好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、この導電性基材上に電子受容層が形成されてなるのが好ましい。この態様の電極は図1および2に示される。図1および2に示される作用電極4は、導電性基材5と、この導電性基材上に形成され、電子受容物質を含んで成る電子受容層6とを備えてなる。そして、電子受容層6の表面にプローブ物質が担持される。
本発明における電子受容層は、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる。すなわち、電子受容物質は、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位を取り得る物質であることができる。ここで、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位(A)とは、例えば、電子受容性材料として半導体を用いる場合には、伝導体(コンダクションバンド:CB)を意味し、電子受容性材料として金属を用いる場合には、フェルミ準位を意味し、電子受容性材料として有機物もしくはC60等の分子状無機物を用いる場合には、最低非占有分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)を意味する。すなわち、本発明に用いる電子受容物質は、このAの準位が、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも卑な準位、換言すれば、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも低いエネルギー準位を有するものであればよい。
電子受容物質の好ましい例としては、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体;チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物半導体;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等のペロブスカイト型半導体;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物半導体;カドミウム、鉛のセレン化物半導体;カドミウムのテルル化物半導体;亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物半導体;ガリウムヒ素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物の化合物半導体;金、白金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、ニッケル等の金属;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール等の有機物ポリマー;C60、C70等の分子状無機物が挙げられ、より好ましくは、シリコン、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、チタン酸ストロンチウム、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe、C60であり、さらに好ましくは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、チタン酸ストロンチウム、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2であり、最も好ましくはTiO2である。
電子受容物質として半導体または金属を用いる場合、その半導体または金属は単結晶および多結晶のいずれであってもよいが、多結晶体が好ましく、さらに緻密なものよりも多孔性を有するものが好ましい。これにより、比表面積が大きくなり、被検物質および増感色素を多く吸着させて、より高い感度で被検物質を検出することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が多孔性を有しており、各孔の径が3〜1000nmであるのが好ましく、より好ましくは、10〜100nmである。
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層を導電性基材上に形成した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この表面積の上限には特に限定されないが、通常1000倍程度であろう。電子受容層を構成する電子受容物質の微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で一次粒子として5〜200nmであることが好ましく、特に8〜100nmであることが好ましい。また、分散物中の電子受容性物質の微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μmであることが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒子サイズの大きな、例えば300nm程度の電子受容物質の微粒子を併用して、電子受容層を形成してもよい。
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、電子受容層が導電性基材上に形成されてなるのが好ましい。本発明に使用可能な導電性基板としては、チタン等の金属のように支持体そのものに導電性があるもののみならず、ガラスもしくはプラスチックの支持体の表面に導電材層を有するものであってよい。この導電材層を有する導電性基板を使用する場合、電子受容層はその導電層上に形成される。導電材層を構成する導電材の例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属;炭素、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス;およびインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの、酸化スズにアンチモンをドープしたもの、酸化亜鉛にガリウムをドープしたもの、または酸化亜鉛にアルミニウムをドープしたもの等の導電性の金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、インジウム-スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物である。
本発明の好ましい態様によれば、導電性基材が実質的に透明、具体的には、光の透過率が10%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。また、本発明の好ましい態様によれば、導電材層の厚みは、0.02〜10μm程度であるのが好ましい。さらに、本発明の好ましい態様によれば、導電性基材の表面抵抗が100Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは40Ω/cm2以下であるのが好ましい。導電性基材の表面抵抗の下限は特に限定されないが、通常0.1Ω/cm2程度であろう。
導電性基材上への電子受容層の好ましい形成方法の例としては、電子受容物質の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して微粒子膜を得る方法(ゾル−ゲル法)、スパッタリング法、CVD法、PVD法、蒸着法などが挙げられる。電子受容物質としての半導体微粒子の分散液を作成する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。このときの分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として使用してもよい。
電子受容物質の分散液またはコロイド溶液の塗布方法の好ましい例としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分でできるものとして、特公昭58−4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が半導体微粒子からなる場合、電子受容層の膜厚が0.1〜200μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜100μmであり、さらに好ましくは1〜30μm、最も好ましくは2〜25μmである。これにより、単位投影面積当たりのプローブ物質および固定される増感色素量を増加して光電流量を多くするとともに、電荷再結合による生成した電子の損失をも低減することができる。また、導電性基材1m2当たりの半導体微粒子の塗布量は0.5〜400gであるのが好ましく、より好ましくは5〜100gである。
本発明の好ましい態様によれば、半導体微粒子を導電性基材上に塗布した後に加熱処理を施すのが好ましい。これにより、粒子同士を電気的に接触させ、また、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させることができる。好ましい加熱処理温度は、40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また、好ましい加熱処理時間は10分〜10時間程度である。
また、本発明の別の好ましい態様によれば、ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い導電性基材を用いる場合にあっては、熱による劣化を防止するため、高温処理を用いない方法により膜形成を行うのが好ましく、そのような膜形成方法の例として、プレス、低温加熱、電子線照射、マイクロ波照射、電気泳動、スパッタリング、CVD、PVD、蒸着等の方法が挙げられる。
こうして得られた作用電極の電子受容層の表面にはプローブ物質が担持される。作用電極へのプローブ物質の担持は公知の方法に従い行うことができる。本発明の好ましい態様によれば、プローブ物質として一本鎖の核酸を用いる場合には、作用電極表面に酸化層を形成させておき、この酸化層を介して核酸プロ−ブと作用電極とを結合させることにより行うことができる。このとき、核酸プローブの作用電極への固定化は、核酸の末端に官能基を導入することにより行うことができる。これにより、官能基が導入された核酸プロ−ブはそのまま固定化反応により担体上に固定化されることができる。核酸末端への官能基の導入は、酵素反応もしくはDNA合成機を用いて行なうことができる。酵素反応において用いられる酵素としては、例えば、タ−ミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラ−ゼ、ポリAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドカイネ−ス、DNAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドアデニルトランスフェラ−ゼ、RNAリガ−ゼを挙げることができる。また、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR法)、ニックトランスレ−ション、ランダムプライマ−法により官能基を導入することもできる。官能基は、核酸のどの部分に導入されてもよく、3'末端、5'末端もしくはランダムな位置に導入することができる。
本発明の好ましい態様によれば、核酸プローブの作用電極への固定化のため官能基として、アミン、カルボン酸、スルホン酸、チオール、水酸基、リン酸等が好適に使用できる。また、本発明の好ましい態様によれば、核酸プローブを作用電極に強固に固定化するためには、作用電極と核酸プローブの間を架橋する材料を使用することも可能である。そのような架橋材料の好ましい例としては、シランカップリング剤や、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性ポリマーが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、核酸プロ−ブの固定化を物理吸着という、より簡単な操作で効率よく行うことも可能である。電極表面への核酸プロ−ブの物理吸着は、例えば、以下のように行なうことができる。まず、電極表面を、超音波洗浄器を用いて蒸留水およびアルコ−ルで洗浄する。その後、電極を核酸プロ−ブを含有する緩衝液に挿入して核酸プロ−ブを担体表面に吸着させる。この緩衝液として本発明の緩衝溶液を用いることにより、作用電極による被検物質の検出感度を向上させることができる。また、核酸プローブの吸着後、ブロッキング剤を添加することにより、非特異的な吸着を抑制することができる。そのようなブロッキング剤の例としては、カルボン酸、核酸、アミン、脂肪酸、界面活性剤等が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が互いに分離された複数の領域毎に区分されて担持されてなり、光源による光照射が各領域に対して個別に行われるのが好ましい。これにより、複数の試料を一枚の作用電極上で測定することができるので、DNAチップの集積化等が可能となる。本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が互いに分離された複数の領域がパターニングされており、光源から照射される光でスキャニングしながら、各領域の試料について被検物質の検出または定量を一度の操作で連続的に行うことが好ましい。
対電極
本発明に用いる対電極は、電解質媒体に接触させた場合に作用電極との間に電流が流れることができるものであれば特に限定されず、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、セラミックス等が使用可能である。また、対電極としての金属薄膜を5μm以下、好ましくは3nm〜3μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成して作成することもできる。対電極に使用可能な材料の好ましい例としては、白金、金、パラジウム、ニッケル、カーボン、ポリチオフェン等の導電性ポリマー、酸化物、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス等が挙げられ、より好ましくは、白金、カーボンであり、最も好ましくは白金である。
本発明に用いる対電極は、電解質媒体に接触させた場合に作用電極との間に電流が流れることができるものであれば特に限定されず、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、セラミックス等が使用可能である。また、対電極としての金属薄膜を5μm以下、好ましくは3nm〜3μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成して作成することもできる。対電極に使用可能な材料の好ましい例としては、白金、金、パラジウム、ニッケル、カーボン、ポリチオフェン等の導電性ポリマー、酸化物、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス等が挙げられ、より好ましくは、白金、カーボンであり、最も好ましくは白金である。
測定方法および装置
本発明にあっては、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を前記作用電極に固定させる。このとき、試料液の溶媒として本発明の緩衝溶液を用いることにより、作用電極による被検物質の検出感度を向上させることができる。
本発明にあっては、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を前記作用電極に固定させる。このとき、試料液の溶媒として本発明の緩衝溶液を用いることにより、作用電極による被検物質の検出感度を向上させることができる。
本発明の好ましい態様によれば、増感色素で予め標識された一本鎖の核酸を被検物質とする場合、プローブ物質である一本鎖核酸との間でハイブリダイゼーション反応を行なうことができる。ハイブリダイゼーション反応の好ましい温度は37〜72℃の範囲であるが、その最適温度は使用するプロ−ブの塩基配列や長さ等により異なる。
本発明の別の好ましい態様によれば、被検物質およびプローブ物質の結合体(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより結合体を特異的に増感色素で標識することができる。
本発明の好ましい態様によれば、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させた作用電極を洗浄液で洗浄することにより、作用電極に結合しなかった被検物質を除去するのが好ましい。このときの洗浄液として、本発明の緩衝溶液を用いることにより、作用電極による被検物質の検出感度を向上させることができる。また、この洗浄液は、界面活性剤をさらに含むものであってよい。
本発明にあっては、被検物質が増感色素と共に固定された作用電極を、対電極と共に電解質媒体に接触させ、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させ、光励起された増感色素から作用電極への電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出する。
このような測定セルの一例を図3に示す。図3に示される測定セル21は、作用電極22と対電極23とにより挟まれて形成された空隙内に電解液24が充填されてなる。作用電極22は、導電性基材26と電子受容層27とを備えてなり、電子受容層27側を電解液24に接触させるように配置される。作用電極22と対電極23との間には絶縁スペーサ25が挿入されることにより、電解液24を収容する空間が確保されている。電極間の距離は酸化還元のサイクルを効率良く行わせるためには短い方が好ましく、工作的な精度との兼ね合いから数十μm であることが望ましい。また、いわゆるMEMS 的な製造方法を利用するのであれば、より近接した電極間距離とすることも可能である。
本発明において用いる電解質媒体は、電解質、溶媒、および所望により添加物を含んでなるものであることができる。電解質の好ましい例としては、I2とヨウ化物の組み合わせ(ヨウ化物としてはLiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩など)、Br2と臭化物の組み合わせ(臭化物としてはLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩など)のほか、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられ、より好ましくは、I2とLiIやピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩を組み合わせた電解質である。上述した電解質は混合して用いてもよい。
本発明の好ましい態様によれば、電解液の電解質濃度は0.1〜15Mであるのが好ましく、より好ましくは0.2〜10Mである。また、電解質にヨウ素を添加する場合における、好ましいヨウ素の添加濃度は0.01〜0.5Mである。
電解質媒体の溶媒として本発明の緩衝溶液を用いることにより、作用電極による被検物質の検出感度を向上させることができる。もっとも、本発明の緩衝溶液は必ずしもこの工程で使用する必要はなく、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノール等)、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリルなどのニトリル類、炭酸プロピレンや炭酸エチレンなどのカーボネート類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノンや3−メチルオキサゾリジノン、ジアルキルイミダゾリウム塩などの複素環化合物、等)を使用してもよい。
本発明の好ましい態様によれば、電解質媒体はゲル化(固体化)させて使用することもできる。ゲル化の方法の例としては、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法により行うことができる。ゲル電解質のマトリクスに使用されるポリマーの例としては、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。
図3に示されるように作用電極21の上方には光源28が光源カバー29を介して配置される。本発明に用いる光源としては、標識色素を光励起できる波長の光を照射できるものであれば限定されず、好ましい例としては、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、レーザー光、太陽光を用いることができ、より好ましくは、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、太陽光等を挙げることができる。また、必要に応じて、分光器やバンドパスフィルターを用いて特定波長領域の光のみを照射してもよい。
本発明の好ましい態様によれば、互いに異なる光波長で励起可能な二種以上の増感色素を用いて複数種類の被検物質を個別に検出する場合、光源から波長選択手段を介して特定波長の光を照射することにより、複数の色素を個別に励起することが可能である。波長選択手段の例としては、分光器、色ガラスフィルター、干渉フィルター、バンドパスフィルター等が挙げられる。また、増感色素の種類に応じて異なる波長の光を照射可能な複数の光源を用いてもよく、この場合の好ましい光源の例としては、特定波長の光が照射されるレーザー光やLEDを用いてもよい。また、作用極に光を効率よく照射するため、石英、ガラス、液体ライトガイドを用いて導光してもよい。
図4に示されるように、作用電極21および対電極22間には電流計30が接続され、光照射により系内を流れる光電流が電流計により測定される。これにより、被検物質を検出することができる。その際の電流値は作用電極上にトラップされた増感色素の量を反映する。例えば、被検物質が核酸の場合、相補性のある核酸間で形成された二本鎖の量が、電流値となり反映される。したがって、得られた電流値から被検物質を定量することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電流計が、得られた電流量または電気量から試料液中の被検物質濃度を算出する手段をさらに備えてなるのが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、光電流を検出する工程が、電流値を測定し、得られた電流値または電気量から試料液中の被検物質濃度を算出することができる。この被検物質濃度の算出は、予め作成された被検物質濃度と電流値または電気量との検量線と、得られた電流値または電気量とを対比することにより行うことができる。本発明の方法にあっては、電流値は作用電極上にトラップされた増感色素の量が反映されるので、被検物質濃度に対応した正確な電流値が得られるため、定量測定に適する。
本発明の別の好ましい態様によれば、予め増感色素で標識された被検物質を競合物質として用いて、増感色素で標識されていない、プローブ物質に特異的に結合可能な第二の被検物質を定量することができる。第二の被検物質はプローブ物質に標識済被検物質よりも特異的に結合しやすい性質を有するのが好ましい。これら二種類の被検物質を競合させてプローブ物質に特異的に結合させると、検出される電流値と第二の被検物質の濃度との間に相関関係が得られる。つまり、色素標識されていない第二の被検物質の数が増加するにつれ、プローブ物質に特異的に結合する競合物質の数が減少するため、第二の被検物質濃度の増加につれて、検出電流値が減少する検量線を得ることができる。したがって、増感色素で標識されていない第二の被検物質の検出および定量が可能となる。
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質および第二の被検物質が抗原であり、プローブ物質が抗体であるのが好ましい。この態様における被検物質および第二の被検物質のプローブ物質への固定化工程を図5に示す。図5に示されるように、増感色素で標識された抗原41と、色素標識されていない抗原42とが競合して抗体43に特異的に結合する。したがって、色素標識されていない抗原42が増加するにつれ、抗体に特異的に結合する色素標識された抗原43が減少するため、第二の被検物質濃度の増加につれて、検出電流値が減少する検量線を得ることができる。
緩衝溶液の用途
本発明の緩衝溶液の用途は、上述の光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される溶液であれば限定されないが、好ましい用途としては、上述の通り、被検物質を含有する試料液の溶媒、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を含む溶液の溶媒、電解質媒体の溶媒、および作用電極ないし測定用セルの洗浄液等が挙げられる。
本発明の緩衝溶液の用途は、上述の光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される溶液であれば限定されないが、好ましい用途としては、上述の通り、被検物質を含有する試料液の溶媒、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を含む溶液の溶媒、電解質媒体の溶媒、および作用電極ないし測定用セルの洗浄液等が挙げられる。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
例1:作用電極の作製
まず、以下の配合を有する原料を自動乳鉢を用いて充分に混合した後、150℃で6時間乾燥させて混合物を得た。
α−テルピネオール 60重量%
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール 15重量%
エチルセルロース 25重量%
まず、以下の配合を有する原料を自動乳鉢を用いて充分に混合した後、150℃で6時間乾燥させて混合物を得た。
α−テルピネオール 60重量%
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール 15重量%
エチルセルロース 25重量%
得られた混合物0.5gに粒状酸化チタン(日本エアロゾル社製P25、平均粒径20〜25nm)1gを添加して混合した後、先に得られた混合物0.5gをさらに添加して混合した。その後、α−テルピネオールを加えて再度混合して、ペーストを得た。これら一連の混合は自動乳鉢を用いて合計3時間行った。
フッ素ドープされたSnO2膜が形成されたガラス基板(旭硝子製)の縁枠を幅約63μmのテープでマスキングし、上記ペーストをスキージ印刷した後、60℃で2時間乾燥させた。得られたガラス基板を焼成炉内に入れ、約17分間かけて500℃まで炉内温度を上昇させ、この温度で30分間保持した後、放冷した。炉内温度が100℃に達した時点でガラス基板をエタノールに浸漬した。こうして、酸化チタンを含んでなる電子受容層が形成された作用電極を得た。
次いで、5’−NH2−AACGTCGTGACTGGGの塩基配列を有するNH2修飾DNAをバッファ(3X SSC)に溶解して、286μMのNH2修飾DNA溶液を調製した。この溶液を、予め95℃で3分間保持した後、氷上で冷却させることにより、変性させておいた。
先に得られた作用電極の電子受容層上に、5mm×5mm角の大きさの開口部が形成された、厚さ700μmのシリコンシールを載置した。この開口部に286μMのNH2修飾DNA溶液35μl注入した。このとき、ピペットチップの先端を用いて、シリコンシールの開口部の四隅まで充分にDNA溶液が行き渡るようにした。続いて、DNA溶液中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から覆い、湿らせた紙等で蒸気圧が調整されたプラスチック容器に収容した。この容器中に60℃で2時間保持して、NH2修飾DNAをインキュベートした。その後、DNA溶液を除去し、流水で軽く電極表面を洗浄した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。こうして、プローブ物質が担持された作用電極を得た。
例2:ローダミン修飾DNAの検出
5’−Rho−CCCAGTCACGACGTTの塩基配列を有するローダミン修飾DNAをバッファ(2X SSC、0.03% SDS)に溶解して、28.6μMおよび286μMの各濃度を有するローダミン修飾DNA溶液を作製した。
例1で使用したものと同様のシリコンシールを作用電極表面に載置し、各濃度のローダミン修飾DNA溶液を35μlずつ、開口部に注入した。溶液中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から覆い、湿らせた紙等で蒸気圧を調整したプラスチック容器に入れた。こうして、60℃で一晩(12時間)インキュベートさせて、ハイブリダイゼーションを行った。
5’−Rho−CCCAGTCACGACGTTの塩基配列を有するローダミン修飾DNAをバッファ(2X SSC、0.03% SDS)に溶解して、28.6μMおよび286μMの各濃度を有するローダミン修飾DNA溶液を作製した。
例1で使用したものと同様のシリコンシールを作用電極表面に載置し、各濃度のローダミン修飾DNA溶液を35μlずつ、開口部に注入した。溶液中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から覆い、湿らせた紙等で蒸気圧を調整したプラスチック容器に入れた。こうして、60℃で一晩(12時間)インキュベートさせて、ハイブリダイゼーションを行った。
こうしてハイブリダイゼーションが施された作用電極を洗浄液に浸し、ゆっくりと揺らしながら洗浄した。洗浄液としては下記表に示されるものを使用し、各洗浄液について下記表に示される洗浄時間、洗浄回数、および温度で洗浄を行った。なお、洗浄液を変更する毎に洗浄容器を交換した。
表 1
洗浄液 1回当たりの 洗浄回数 温度
洗浄時間
2X SSC、0.2% SDS 6分間 3回 室温
0.2X SSC、0.2% SDS 6分間 3回 室温
0.2X SSC、0.2% SDS 13分間 1回 60℃
0.2X SSC、0.2% SDS 6分間 2回 室温
0.2X SSC 6分間 1回 室温
注)2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液(pH7.0)
SDS:硫酸ドデシルナトリウム
表 1
洗浄液 1回当たりの 洗浄回数 温度
洗浄時間
2X SSC、0.2% SDS 6分間 3回 室温
0.2X SSC、0.2% SDS 6分間 3回 室温
0.2X SSC、0.2% SDS 13分間 1回 60℃
0.2X SSC、0.2% SDS 6分間 2回 室温
0.2X SSC 6分間 1回 室温
注)2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液(pH7.0)
SDS:硫酸ドデシルナトリウム
さらに、作用電極をエタノールで軽く液中で上下させることにより、2回洗浄を行った。2回目の洗浄後は紙等で拭き取らずに、素早く空気を吹き付けて残水を飛散させた。
こうして得られた作用電極と、対電極としての白金電極とを用いて、図3および図4に示されるような測定セルを以下のようにして組み立てた。
まず、白金電極として、ガラス基板上に白金薄膜をスパッタリングにより形成したものを用意した。白金電極の白金膜上に、厚さ500μmのシリコンシートを載置した。このシリコンシートは作用電極と対電極との接触による短絡を防ぐためのスペーサーである。このとき、白金電極の白金で被膜された端部にリード線を接続して、電流を取り出し可能に構成した。作用電極もリード線を介して電流計と接続した。
電解液として、体積比が8:2のエチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒にヨウ素0.05Mとテトラプロピルアンモニウムヨーダイド0.5Mを溶解した混合液を用意した。この電解液を白金電極に5μL滴下した後、作用電極をその電子受容層が白金電極と対向するように、載置した。こうして、スペーサーおよび電解液を作用電極および対電極とで挟持されてなる、サンドイッチ型の測定セルを得た。
まず、白金電極として、ガラス基板上に白金薄膜をスパッタリングにより形成したものを用意した。白金電極の白金膜上に、厚さ500μmのシリコンシートを載置した。このシリコンシートは作用電極と対電極との接触による短絡を防ぐためのスペーサーである。このとき、白金電極の白金で被膜された端部にリード線を接続して、電流を取り出し可能に構成した。作用電極もリード線を介して電流計と接続した。
電解液として、体積比が8:2のエチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒にヨウ素0.05Mとテトラプロピルアンモニウムヨーダイド0.5Mを溶解した混合液を用意した。この電解液を白金電極に5μL滴下した後、作用電極をその電子受容層が白金電極と対向するように、載置した。こうして、スペーサーおよび電解液を作用電極および対電極とで挟持されてなる、サンドイッチ型の測定セルを得た。
作用電極のリード線と対電極のリード線とを電流計(ALSモデル832A、ディアル電気化学アナライザー)に接続した。光源(林時計社製、LA−250XE)から液体ライトガイドを用いて導光し、紫外線カットフィルター(Y-43、旭テクノグラス)を介して作用電極表面の1.5cm上方から白色光を30秒間作用電極表面に照射した。このとき、作用電極と対電極との間に流れる電流値を電流計により経時的に測定した。
図6に28.6μMローダミン修飾DNA溶液を用いた場合の検出電流の経時変化を、図7に286μMローダミン修飾DNA溶液を用いた場合の検出電流の経時変化を示す。これらの図に示されるように、増感色素で標識づけられたDNAと、これと相補性を有するDNAとをハイブリダイゼーションさせると、光の照射により大きな電流が流れることが分かる。
また、28.6μMおよび286μMの各ローダミン修飾DNA溶液を用いた場合について、電流値が定常状態になった時点における電流値を別途測定したところ、図8に示される通りの結果が得られた。また、参照のため、ローダミン修飾DNAの固定化を行わなかった場合についても同様にして測定を行った。その結果も図8に併せて示す。図8に示されるように、ローダミン修飾DNAの濃度に依存して電流値が変化した。したがって、本発明の方法によれば定量分析が可能なことが分かる。
例3:プローブ物質を担持させない作用電極を使用した測定
また、比較のため、例1で作製された、NH2修飾DNAを担持させる前の、酸化チタンを含んでなる電子受容層のみが形成された作用電極を用いて測定セルを構成して、例2と同様に測定を行った。図6に28.6μMローダミン修飾DNA溶液を用いた場合の検出電流の経時変化を、図7に286μMローダミン修飾DNA溶液を用いた場合の検出電流の経時変化を示す。これらの図に示されるように、紫外線カットフィルターで除去できなかった若干量の紫外線によって酸化チタン自身が励起され、光電流が観測されるものの、ローダミン修飾DNA溶液を用いた例2の場合と比べて、光電流は著しく低かった。
また、比較のため、例1で作製された、NH2修飾DNAを担持させる前の、酸化チタンを含んでなる電子受容層のみが形成された作用電極を用いて測定セルを構成して、例2と同様に測定を行った。図6に28.6μMローダミン修飾DNA溶液を用いた場合の検出電流の経時変化を、図7に286μMローダミン修飾DNA溶液を用いた場合の検出電流の経時変化を示す。これらの図に示されるように、紫外線カットフィルターで除去できなかった若干量の紫外線によって酸化チタン自身が励起され、光電流が観測されるものの、ローダミン修飾DNA溶液を用いた例2の場合と比べて、光電流は著しく低かった。
例4:作用電極にブロッキングを施した場合の測定
例1と同様にして、プローブ物質が担持された作用電極を得た。この電極表面に例1で使用したものと同様のシリコンシールを再度載置して、開口部にブロッキング剤として10μMのジエタノールアミン35μlを注入した。ブロッキング剤中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から覆い、湿らせた紙等で蒸気圧を調整したプラスチック容器に入れた。そして、60℃で30分間保持して、ブロッキング剤をインキュベートした。電極表面を再度流水で軽く洗浄した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。
例1と同様にして、プローブ物質が担持された作用電極を得た。この電極表面に例1で使用したものと同様のシリコンシールを再度載置して、開口部にブロッキング剤として10μMのジエタノールアミン35μlを注入した。ブロッキング剤中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から覆い、湿らせた紙等で蒸気圧を調整したプラスチック容器に入れた。そして、60℃で30分間保持して、ブロッキング剤をインキュベートした。電極表面を再度流水で軽く洗浄した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。
こうしてプローブ物質がブロッキングされた作用電極を用いて、例2と同様にして、ローダミン修飾DNAのインキュベーションによるハイブリダイゼーション、および光電流測定を行った。その結果は図6および図7に示される通りであった。これらの図に示されるように、ブロッキングが施された作用電極を用いた場合には、それが施されない例2の場合と比べて、著しく電流値が低下した。
例5:競合物質PNAとの共存下におけるローダミン修飾DNAの検出
5’−Rho−CCCAGTCACGACGTTの塩基配列を有するローダミン修飾DNAと、競合物質として5’−CCCAGTCACGACGTTTの塩基配列を有するPNAとをバッファ(2X SSC、0.03% SDS)に溶解して、28.6μMローダミン修飾および200μM PNA含有溶液と、286μMローダミン修飾および200μM PNA含有溶液とを作製した。
この試料溶液を用いたこと以外は、例2と同様にして、ローダミン修飾DNAのインキュベーションによるハイブリダイゼーション、および光電流測定を行った。その結果は図6および図7に示される通りであった。これらの図に示されるように、ハイブリダイゼーション時に競合すると考えられる塩基配列を有するPNAを共存させた場合、PNAが共存しない例2の場合と比べて、電流値が低下した。
5’−Rho−CCCAGTCACGACGTTの塩基配列を有するローダミン修飾DNAと、競合物質として5’−CCCAGTCACGACGTTTの塩基配列を有するPNAとをバッファ(2X SSC、0.03% SDS)に溶解して、28.6μMローダミン修飾および200μM PNA含有溶液と、286μMローダミン修飾および200μM PNA含有溶液とを作製した。
この試料溶液を用いたこと以外は、例2と同様にして、ローダミン修飾DNAのインキュベーションによるハイブリダイゼーション、および光電流測定を行った。その結果は図6および図7に示される通りであった。これらの図に示されるように、ハイブリダイゼーション時に競合すると考えられる塩基配列を有するPNAを共存させた場合、PNAが共存しない例2の場合と比べて、電流値が低下した。
例6:プローブ物質を作用電極表面に固定化する工程に用いる溶液の検討
まず、例1と同様にして酸化チタンを含んでなる電子受容層が形成された作用電極を得た。5’ NH2−AACGTCGTGACTGGG 3’Rhoの塩基配列を有する3’ローダミン修飾DNAを以下に示されるバッファ1または2に溶解して、200μMのローダミン修飾DNA溶液を調製した。この溶液を、予め95℃で3分間保持した後、氷上で冷却させることにより、変性させておいた。
バッファ1:50mM HEPES水溶液、pH7.0、本発明の緩衝溶液
バッファ2:2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液、pH7.0、化学構造中にカルボキシル基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
まず、例1と同様にして酸化チタンを含んでなる電子受容層が形成された作用電極を得た。5’ NH2−AACGTCGTGACTGGG 3’Rhoの塩基配列を有する3’ローダミン修飾DNAを以下に示されるバッファ1または2に溶解して、200μMのローダミン修飾DNA溶液を調製した。この溶液を、予め95℃で3分間保持した後、氷上で冷却させることにより、変性させておいた。
バッファ1:50mM HEPES水溶液、pH7.0、本発明の緩衝溶液
バッファ2:2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液、pH7.0、化学構造中にカルボキシル基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
先に得られた作用電極の電子受容層上に、5mm×5mm角の大きさの開口部が形成された、厚さ700μmのシリコンシールを載置した。この開口部に200μMのローダミン修飾DNA溶液を35μl注入した。このとき、ピペットチップの先端を用いて、シリコンシールの開口部の四隅まで充分にDNA溶液が行き渡るようにした。続いて、DNA溶液中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から覆い、湿らせた紙等で蒸気圧が調整されたプラスチック容器に収容した。この容器中に60℃で15時間保持して、ローダミン修飾DNAをインキュベートした。その後、DNA溶液を除去し、流水で軽く電極表面を洗浄した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。こうして、プローブ物質が担持された作用電極を得た。
上記プローブ物質が担持された作用電極に新たなシリコンシールを載置し、開口部にブロッキング剤として10μMのジエタノールアミン25μlを装填した。ブロッキング剤中に気泡が極力入らないようにガラス板で真上から蓋をして、湿らせた紙等で蒸気圧を調整したプラスチック容器に入れた。そして、60℃で30分間保持して、ブロッキング剤をインキュベートした。電極表面を再度流水で軽く2秒間洗浄した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。こうしてブロッキングが施された作用電極を得た。
ハイブリダイゼーションおよびその後の洗浄工程を行わなかったこと以外は、例2と同様にしてセルの作製および光電流の測定を行った。なお、光電流値の測定は、光照射時の安定化電流値と未照射時の安定化電流値とを測定して、これらの電流値の差を算出することにより行った。
また、ブランク試験として、プローブ物質(ローダミン修飾DNA)が固定化されていない作用電極についても光電流を測定した。
得られた光電流値と、ブランク試験の電流値との比からS/N比を算出した。その結果は表2に示される通りであった。
表 2
緩衝溶液 緩衝剤 S/N比
バッファ1 HEPES 6.76
バッファ2(比較例) SSC 1.06
表 2
緩衝溶液 緩衝剤 S/N比
バッファ1 HEPES 6.76
バッファ2(比較例) SSC 1.06
表2に示される結果から、プローブ物質を作用電極表面に固定化する工程に用いる溶液として、HEPES(バッファ1)を使用した場合、カルボキシル基を有するSSC(バッファ2)と比べて、S/N比が格段に高いことが分かる。したがって、本発明の緩衝溶液であるバッファ1は、プローブ物質の固定化および電流測定に有利であると言える。
例7:プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させる工程に使用される試料液の検討
プローブ物質として5’−NH2−AACGTCGTGACTGGGの塩基配列を有する5’アミノ修飾DNAを用いたこと以外は例6と同様にして、プローブ物質が担持され、かつ、ブロッキングが施された作用電極を得た。
プローブ物質として5’−NH2−AACGTCGTGACTGGGの塩基配列を有する5’アミノ修飾DNAを用いたこと以外は例6と同様にして、プローブ物質が担持され、かつ、ブロッキングが施された作用電極を得た。
次いで、試料液として5’ AACGTCGTGACTGGG 3’Rhoの塩基配列を有する3’ローダミン修飾DNAを以下に示されるバッファ1または2に溶解した200μMの溶液を用いたこと、および60℃で15時間インキュベーションを行ったこと以外は例2と同様にして、ハイブリダイゼーション、作用電極の洗浄、セルの作製、および光電流の測定を行った。なお、光電流値の測定は、光照射時の安定化電流値と未照射時の安定化電流値とを測定して、これらの電流値の差を算出することにより行った。
バッファ1:50mM HEPES水溶液、pH7.0、本発明の緩衝溶液
バッファ2:2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液、pH7.0、化学構造中にカルボキシル基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
バッファ1:50mM HEPES水溶液、pH7.0、本発明の緩衝溶液
バッファ2:2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液、pH7.0、化学構造中にカルボキシル基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
また、ブランク試験として、プローブ物質(5’アミノ修飾DNA)および被検物質(3’ローダミン修飾DNA)が固定化されていない作用電極についても光電流を測定した。
得られた光電流値と、ブランク試験の電流値との比からS/N比を算出した。その結果は表3に示される通りであった。
表 3
緩衝溶液 緩衝剤 S/N比
バッファ1 HEPES 5.76
バッファ2(比較例) SSC 2.07
表 3
緩衝溶液 緩衝剤 S/N比
バッファ1 HEPES 5.76
バッファ2(比較例) SSC 2.07
表2に示される結果から、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させる工程に使用される溶液として、HEPES(バッファ1)を使用した場合、カルボキシル基を有するSSC(バッファ2)と比べて、S/N比が格段に高いことが分かる。したがって、本発明の緩衝溶液であるバッファ1は、プローブ物質への被検物質の特異的結合および電流測定に有利であると言える。
例8:作用電極の洗浄液として使用される溶液の検討
ハイブリダイゼーション後の作用電極の洗浄を以下の通り行ったこと以外は、例7と同様にして実験を行った。
すなわち、ハイブリダイゼーションが施された作用電極を洗浄液に浸し、ゆっくりと揺らしながら洗浄した。洗浄液としては以下に示されるバッファ1、2または3を下記表に基づく配合で使用し、各洗浄液について下記表に示される洗浄時間、洗浄回数、および温度で洗浄を行った。なお、洗浄液を変更する毎に洗浄容器を交換した。
バッファ1:50mM HEPES水溶液、pH7.0、本発明の緩衝溶液
バッファ2:2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液、pH7.0)、化学構造中にカルボキシル基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
バッファ3:150mM リン酸緩衝液(PBS)、pH7.0、化学構造中にリン酸基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
ハイブリダイゼーション後の作用電極の洗浄を以下の通り行ったこと以外は、例7と同様にして実験を行った。
すなわち、ハイブリダイゼーションが施された作用電極を洗浄液に浸し、ゆっくりと揺らしながら洗浄した。洗浄液としては以下に示されるバッファ1、2または3を下記表に基づく配合で使用し、各洗浄液について下記表に示される洗浄時間、洗浄回数、および温度で洗浄を行った。なお、洗浄液を変更する毎に洗浄容器を交換した。
バッファ1:50mM HEPES水溶液、pH7.0、本発明の緩衝溶液
バッファ2:2X SSC:0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム含有水溶液、pH7.0)、化学構造中にカルボキシル基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
バッファ3:150mM リン酸緩衝液(PBS)、pH7.0、化学構造中にリン酸基を有するため本発明の緩衝溶液ではない
表 4
洗浄液 1回当たりの 洗浄回数 温度
洗浄時間
界面活性剤0.1%を含むバッファ1〜3 6分間 6回 室温
界面活性剤0.1%を含むバッファ1〜3 13分間 1回 60℃
バッファ1〜3のみ 6分間 2回 室温
洗浄液 1回当たりの 洗浄回数 温度
洗浄時間
界面活性剤0.1%を含むバッファ1〜3 6分間 6回 室温
界面活性剤0.1%を含むバッファ1〜3 13分間 1回 60℃
バッファ1〜3のみ 6分間 2回 室温
また、比較のため、バッファ1〜3の代わりに水を使用して、上記同様の洗浄を行った電極についても光電流を測定した。
得られた光電流値は、図9に示される通りであった。図9に示される結果から、作用電極の洗浄液として、HEPES水溶液(バッファ1)を使用した場合、カルボキシル基を有するSSC水溶液(バッファ2)やリン酸基を有するPBS(バッファ3)の水溶液と比べて、光電流値が格段に高いことが分かる。したがって、本発明の緩衝溶液であるバッファ1は、電極の洗浄および電流測定に有利であると言える。
Claims (22)
- 増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる作用電極との接触下で使用される緩衝溶液であって、
カルボキシル基、リン酸基、およびアミノ基を含まない緩衝剤と、
溶媒と
を含んでなる緩衝溶液。 - 前記アルキレン基がエチレン基である、請求項2に記載の緩衝溶液。
- 前記緩衝剤が、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)、セスキナトリウム塩(PIPES sesquisodium)、および2−モルフォリノエタンスルホン酸(MES)からなる群から選択される一種以上である、請求項3に記載の緩衝溶液。
- 前記アルキレン基がプロピレン基である、請求項2に記載の緩衝溶液。
- 前記緩衝剤が、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(EPPS)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−モルフォリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルフォリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、およびピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシル−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)からなる群から選択される一種以上である、請求項5に記載の緩衝溶液。
- 前記緩衝剤の濃度が1〜200mMである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の緩衝溶液。
- 前記溶媒が水である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の緩衝溶液。
- pHが5〜9である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の緩衝溶液。
- 前記増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出が、
被検物質を含む試料液と、該被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を表面に備えた作用電極と、対電極とを用意し、
増感色素の共存下、前記試料液を前記作用電極に接触させて、前記プローブ物質に前記被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、該結合により前記増感色素を前記作用電極に固定させ、
前記作用電極を洗浄液で洗浄し、
前記作用電極と前記対電極とを電解質媒体に接触させ、そして、
前記作用電極に光を照射して前記増感色素を光励起させ、該光励起された増感色素から前記作用電極への電子移動に起因して前記作用電極と前記対電極との間に流れる光電流を検出すること
を含んでなる工程により行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の緩衝溶液。 - 前記増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出が、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を含む溶液を作用電極に接触させて、前記プローブ物質を表面に備えた作用電極を得る工程をさらに含んでなる、請求項10に記載の緩衝溶液。
- 光電流を用いた被検物質の特異的検出が、
被検物質が直接または間接的に特異的に結合したプローブ物質を表面に備え、かつ該結合により増感色素が固定されてなる作用電極と、対電極とを電解質媒体に接触させ、
前記作用電極に光を照射して前記増感色素を光励起させ、該光励起された増感色素から前記作用電極への電子移動に起因して前記作用電極と前記対電極との間に流れる光電流を検出すること
を含んでなる工程により行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の緩衝溶液。 - 前記光電流を用いた被検物質の特異的検出が、前記作用電極と対電極とを電解質媒体への接触の前に、前記作用電極を洗浄液で洗浄する工程をさらに含んでなる、請求項12に記載の緩衝溶液。
- 前記試料液の溶媒として使用される、請求項10または11に記載の緩衝溶液。
- 前記被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を含む溶液の溶媒として使用される、請求項11に記載の緩衝溶液。
- 電解質をさらに含んでなり、前記電解質媒体として使用される、請求項10〜15に記載の緩衝溶液。
- 前記洗浄液として使用される、請求項10、11、および13〜15のいずれか一項に記載の緩衝溶液。
- 前記作用電極が、前記増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、該電子受容層の表面に前記プローブ物質が担持されてなる、請求項10〜17のいずれか一項に記載の緩衝溶液。
- 前記電子受容物質が、前記増感色素の最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位よりも低いエネルギー準位を有する物質である、請求項18に記載の緩衝溶液。
- 前記電子受容物質が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、およびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項18または19に記載の緩衝溶液。
- 前記電子受容物質が、酸化チタンまたはチタン酸ストロンチウムである、請求項18または19に記載の緩衝溶液。
- 前記作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、前記電子受容層が該導電性基材上に形成されてなる、請求項10〜21のいずれか一項に記載の緩衝溶液。
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JP2007304091A (ja) * | 2006-04-10 | 2007-11-22 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 遺伝子検出方法 |
JP2009014605A (ja) * | 2007-07-06 | 2009-01-22 | Ibaraki Univ | バイオ光化学セルとその利用方法 |
WO2010024446A1 (ja) * | 2008-09-01 | 2010-03-04 | Toto株式会社 | 光電流による被検物質の特定的検出に用いられる電極部材 |
-
2004
- 2004-09-24 JP JP2004277869A patent/JP2006090893A/ja not_active Withdrawn
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