JP5451868B2 - 連続鋳造装置の浸漬ノズル - Google Patents
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Description
また、浸漬ノズルからモールド内に吐出した溶鋼の流動は鋳片品質に影響する。例えば、ブルーム、ビレット等の矩形のモールドにおいては、各モールド面に出来るだけ均等に吐出流を供給することが鋳片割れを防止するうえで重要である。一方、溶鋼をモールド内で旋回・攪拌させることで介在物や気泡が凝固シェルに捕捉されにくくなるため鋳片の表面品質も向上する。
前記モールド内で溶鋼を攪拌するために、例えばモールド近傍に電磁撹拌装置を設置し、電磁力を利用して溶鋼を撹拌させる方法が知られている。しかし、この電磁撹拌装置は極めて高価であるため、これに代わる安価なシステムで撹拌することが求められてきた。
その方法として、浸漬ノズルからの吐出流によってモールド内で旋回流を作り、これによって溶鋼を攪拌する試みがなされてきた。
また、特許文献2には、吐出孔の内壁の一部がノズル内周の接線と一致するノズルが提案されている。
また、特許文献3には、吐出孔の吐出方向をその中心からの放射方向に対して周方向に角度を持たせて形成したノズルを利用し、溶鋼が吐出するときの反作用の力を浸漬ノズルが受けるようにして、浸漬ノズル自体を鉛直軸に回転させることによって溶鋼流を旋回させる方法が提案されている。
さらに、特許文献4には、吐出孔を放射方向に対して傾けて設置し、浸漬ノズルを上下2つのパーツとし、下側のノズルが鉛直軸に回転させる構造をとる方法が提案されている。
すなわち、前述の特許文献1及び2の場合、実験の結果、旋回流は得られるものの安定した旋回流は得られず、旋回流の発生/消失を繰り返すことになっていた。
また、前述の特許文献3の構成の場合、浸漬ノズルが容易に回転するように、金属部品を介してベアリングと接触する構造となっており、接続する耐火物とのシール性に問題があった。
また、前述の特許文献1から4の何れ場合も、こうした従来の提案構造では旋回する流れが不安定で且つ流速が遅く、介在物や気泡が凝固シェルに捕捉されるのを防ぐには充分な効果が得られていなかった。また、丸ビレットのような円形断面をもつ鋳造に対しては更に効果が得られなかった。
0.2≦(a-ri)/t かつ (b-ri)/t ≦0.9
t:浸漬ノズル(3)の厚み、ri:ノズル孔(1)の半径
a:ノズル孔(1)の孔中心(P)から内側屈折点(5)までの距離
b:ノズル孔(1)の孔中心(P)から外側屈折点(9)までの距離
また、前記浸漬ノズルのノズル底に円形或いは多角形の底孔を有し、前記底孔の開孔面積をSbとし、底孔も含めた全ての開孔部の面積の総和をStとした際、前記吐出孔流路の開孔面積と前記底孔の開孔面積を合計した総開孔面積をStとした際、前記Sb/Stが0〜0.4とした構成である。
すなわち、ノズル孔を有する浸漬ノズルの円筒側面に2つ以上の吐出孔流路を持ち、前記浸漬ノズル使用時の水平断面における前記吐出孔流路の第1、第2内面側壁及び第1、第2外面側壁が、内側屈折点及び外側屈折点によって屈折して形成された直線によって構成され、以下の関係式を満たす構成であることにより、
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b:ノズル孔(1)の孔中心(P)から外側屈折点(9)までの距離
他の設備に変更を加えることなく、浸漬ノズルの吐出孔流路の形状改善のみによってモールド内に安定した溶鋼の旋回流を発生させ、鋳片品質の向上に寄与することができる。
尚、本発明による溶融金属連続鋳造用の浸漬ノズルを開発するまでの課程を含めて、まず、説明する。
一般に、電磁撹拌装置をはじめとして、製造設備に特に変更を加えずにモールド内に安定した旋回流を得るためには、浸漬ノズルから吐出孔を通って流出する吐出流が、(1)浸漬ノズルの中心軸から見て放射方向に対して一定量傾くこと、(2)上記吐出流の状態が安定して継続されること、の2点が重要である。このような視点から様々な吐出孔形状を考案し、水モデル実験を実施して各孔形状の評価を行い、本発明による浸漬ノズルの開発に至ったものである。
まず、図11のように、文献1〜4にあるようなノズル孔1の接線方向に吐出孔流路2を設けた形状、図12の文献1と3にあるようなノズル孔1の接線方向に吐出孔流路2を設けて湾曲させた形状を用いて旋回流が生じるかどうかを検討したが、旋回流は得られるものの、安定した旋回流は得られず、旋回流の発生/消失を繰り返した。
そこで、様々な形状を検討し、図2に示したように、吐出孔流路2を途中でくの字型に屈折させ鍵型に曲げた場合、モールド全体に浸漬ノズル3を中心軸とした旋回流が安定的に形成されることを発見した。
さらに、図13のように吐出孔流路2の内側のみを屈折した場合と、図14のように外側のみを屈折させた場合について実験を行ったが、この場合は十分な旋回流が得られなかった。
図9は、十分な旋回流が得られた図2の吐出孔流路2の断面の場合の吐出流速測定結果である。横軸は、時間変化を示し、縦軸は10秒間毎の平均流速の相対値を示し、上で高く、下で低い状態を示す。前記吐出孔流路2の上下方向での流速を比較すると、下側のBとDで大きいが、これは浸漬ノズル3内を上方から下方へ流下する流れの影響による。一方、流速には時間変化が見られるが、浸漬ノズル3直上にある周知のスライディングプレートで流量制御するため、浸漬ノズル3内で少し偏った流れとなり、また、流速が変化することによる。吐出孔流路2の同一水平面上(DとB, CとA)の流速値を比較すると、屈折の内側B、A側の方が、外側C、D側と比べて常に遅くなっていた。
それに対し図10は、十分な旋回流が得られなかった図12の吐出孔流路2の断面の場合の吐出流速測定結果である。吐出孔流路2の同一水平面上(DとB, CとA)の流速値を比較すると吐出孔流路2の外側の流速D、Cと内側の流速B、Aとの差が殆どなく、時折湾曲の内側(B、A)の方が流速が速くなる逆転現象が認められた。計測中のモールド内は、旋回流の発生/消失を繰り返す不安定な状態であった。
本発明による溶融金属連続鋳造用の浸漬ノズルは、前述の発見と解析によって得られたものである。
尚、吐出孔流路2は浸漬ノズル3下部で回転対称の位置に設置することが好ましい。こうすることで吐出孔流路2からの流れによって旋回運動を継続させることができる。また、吐出孔流路2の設置個数は2〜4が好ましいが、それ以上とすることも可能である。
本発明において技術的に最も重要な点は内側屈折点5で吐出孔流路2が湾曲ではなく屈折した構造を持ち、流れが壁面から剥離して澱み部が発生する点にある。このため浸漬ノズル3使用時の水平断面におけるその吐出孔流路2の両側面は、実質的に屈折した直線によって構成されていることが望ましい。内面側の第1、第2内面側壁6、7を屈折させることで内側屈折点5より下流側で渦6aを作り出し、また流路外側の流速を上昇させることができる。また、外面側の第1、第2外面側壁10,11を屈折させることで、流れの方向をノズル孔1の中心から見た放射方向に対して傾いた方向に向けることができ、旋回流ができる。これらを組み合わせることで、安定した旋回流を生むものである。
従って、モールド内での旋回流を生成させるためには、吐出孔流路2内流速に定常的な偏りを発生させることが必要であり、そのためには、流路2の両側の壁がそれぞれ同じ方向に屈折していること、屈折角度がある一定範囲の中であることが重要である。図13のように内側のみが屈折し、反対側が直線である場合、流れは直線の壁面に沿ってノズル孔1からほぼ放射状に吐出され、モールド内に旋回流を発生させることが出来ない。また図14のように外側のみが屈折している場合にもモールド内に充分な旋回流を発生させることが出来ない。
前記吐出孔流路2の内側屈折点5および外側の外側屈折点9では、製造上の便宜を図るために小さなRを付けても良い。但し特に内側においては、Rが大きすぎると屈折流路から湾曲流路に近付き、充分な旋回流が得られなくなる。具体的にはRは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、内側と外側のRは曲率が異なっても差し支えない。
前記(a-ri)/tが0.2未満の場合、浸漬ノズル3のノズル孔1から吐出孔流路2へ向かった流れが十分には発達せず、そのため、屈折点5,9より下流側での渦の成長も十分には起こらない。そのため、十分な旋回流が得られない。(a-ri)/tの最大値は特には規定されないが、後述の吐出孔流路2の形状によって決定される。
前述吐出孔流路2を浸漬ノズル3側面に設けるのに加えて、図15で示すように、ノズル底面に底孔17を設けても良い。
鋳型断面積と浸漬ノズル3内の溶鋼通過量との関係から、浸漬ノズル3内の溶鋼通過量が多くて側面に設けた吐出孔流路2からの吐出流が鋳型断面積との比較で多すぎる場合、旋回流を生む吐出流が強くなりすぎてメニスカス変動が大きくなり、鋳造が不安定になる場合がある。この場合、底孔17を設け、旋回流を与えるに必要な流量だけ側面の吐出孔流路2から流出させ、残りの溶鋼流を、前記底孔17からモールド下流へ導入させることで安定的な旋回状態とメニスカス変動の抑制の両立を図ることが出来る。
前記底孔17の開孔面積をSbとし、側面に設けた吐出孔流路2の開孔面積と、底孔17の開孔面積を合計した総開孔面積Stとした際、上記底孔17からの溶鋼流出量Sb/Stに関係し、その値が大きければ、ノズル内の溶鋼通過量に対する底孔17から流出する溶鋼量の比率も多くなる。また、Sb/Stは、0〜0.4とすることが望ましい。より好ましくは0.1〜0.35である。
前記底孔17の底孔壁17aに平行な方向の断面における形状は円形であることを基本とするが、多角形形状でも構わない。また、底孔壁17aに垂直な断面方向での形状は、直線をなす場合、曲線をなす場合、複数の直線または曲線を組み合わせる場合、中央部で凸となる形状などを選択できる。
更には、図示していないが、複数個の底孔17を開けることも可能である。この場合、前記Sbはその底孔17の面積の総和となる。また、複数個開けた底孔17の吐出方向をノズル軸に対して傾斜を持たせたり、さらに吐出方向がノズル軸と交わらないように設けることも可能である。
実際の設備と同様のスケールの水モデルシミュレーション設備を用い、表1に表わされる浸漬ノズル3を使用した際に、安定して旋回流の発生を実現できるか否かを評価した。
浸漬ノズル3の水モデルはφ200mmの丸ビレット連鋳機を想定した水モデルとし、浸漬ノズル3は内径35mm、外径75mm、ノズルの肉厚20mm、吐出孔の出口断面を24mm×22mm、吐出孔数2個、鋳込み引き抜き速度を1.5m/分とした条件で行った。
旋回流の評価は以下のように行った。すなわち、3分間実験し、その間モールド内に定常的に旋回流が発生していた場合を旋回流速と安定性の観点から評価した。旋回流速は、十分大きい場合は“良好”、旋回流はあるがあまり大きくない場合は“やや不十分”、発生しない場合は“発生せず”とした。また、安定については、安定して旋回流が得られた場合を“良好”とし、回流が発生/消失を繰り返す場合は“不安定”とし、発生しない場合は“発生せず”とした。
種々の吐出孔流路2の形状を用いて水モデル試験を実施したが、その特徴は以下の通りである。
流路途中で屈折点がある場合、全てR5とした。試験結果について表1に示す。なお各吐出孔形状の特徴については、下記のように表現した。
1. 接線:吐出孔経路が内径の接線方向の直線で形成される図11の形状で文献1〜4に例示されている形状である。
2. 湾曲:使用時の鉛直方向から見た場合に吐出孔経路が屈曲している図12に示した形状で、文献1,3に例示されている形状である。
3. 内側のみ屈折: 吐出孔経路の側壁が内側のみ屈折し、反対側は直線で形成される、図13に示した形状である。
4. 外側のみ屈折: 吐出孔経路の側壁が外側のみ屈折し、反対側は直線で形成される、図14に示した形状である。
5. 屈折:吐出孔流路2の側壁が途中で両壁が同一方向へ屈折する図2に示した形状である。
文献1〜4に記載されているような接線形状、および文献1, 3に記載されている湾曲形状の場合、旋回流は流速が弱い上に発生と消失を繰り返し、モールドは不安定な状況であった(比較例1,2)。吐出孔経路の内側のみが屈折(比較例3〜5)、外側のみが屈折(比較例6〜9)の場合は、旋回流は発生しなかった。吐出孔流路2両側が同じ方向へ屈折している形状で、βが15〜85°であり、ノズル中心から屈折点5,9までの距離a,bがそれぞれ0.2≦(a-ri)/t, (b-ri)/t≦0.9の範囲内である場合には、充分な速度をもって、安定した旋回流が得られたが(発明品1〜7)、βが範囲内でも屈折点までの距離が範囲外である場合(比較例10,12,13)や、βが範囲外の場合(比較例11,14,15)は安定して旋回流は存在するものの、あまり大きくはなかった。
全てスループット条件において、旋回流は発生したが、スループット条件が0.2ton/minの場合は、旋回流速が遅く、不十分な状態であった。0.4、1.8ton/minの条件では、良好な旋回状態を得られたが、2.2ton/minの場合には、メニスカス変動が激しくなることで不安定な状態となった。
a,b 距離
α 第1角度
β 第2角度
ri ノズル孔の半径
t 厚み
1a 直線
1b ノズル孔内面
1c 外縁
2 吐出孔流路
3 浸漬ノズル
5 内側屈折点
6 第1内面側壁
6a 渦
6A 屈折部
7 第2内面側壁
7a 外側屈折点
9 外側屈折点
10 第1外面側壁
11 第2外面側壁
13 第1交点
14 第2交点
15 第1中心線
16 第2中心線
17 底孔
17a 底孔壁
P 孔中心
A〜D プロペラ流速計
Claims (2)
- ノズル孔(1)を有する浸漬ノズル(3)の円筒側面に2つ以上の吐出孔流路(2)を持ち、前記浸漬ノズル(3)使用時の水平断面における前記吐出孔流路(2)の第1、第2内面側壁(6,7)及び第1、第2外面側壁(10,11)が、内側屈折点(5)及び外側屈折点(9)によって屈折して形成された直線であり、以下の関係式を満たす構成を備えたことを特徴とする溶融金属連続鋳造用の浸漬ノズル。
0.2≦(a-ri)/t かつ (b-ri)/t ≦0.9
t:浸漬ノズル(3)の厚み、ri:ノズル孔(1)の半径
a:ノズル孔(1)の孔中心(P)から内側屈折点(5)までの距離
b:ノズル孔(1)の孔中心(P)から外側屈折点(9)までの距離 - 前記浸漬ノズル(3)のノズル底(17b)に円形或いは多角形の底孔(17)を有し、前記底孔(17)の開孔面積をSbとし、前記吐出孔流路(2)の開孔面積と前記底孔(17)の開孔面積を合計した総開孔面積をStとした際、前記Sb/Stが0〜0.4であることを特徴とする請求項1記載の溶融金属連続鋳造用の浸漬ノズル。
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