JP5451561B2 - ホゾパイプ - Google Patents

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本発明は、各種木造構造において、土台と柱や柱と横架材など、部材同士を連結するためのホゾパイプに関する。
住宅などの建築方法として普及している木造軸組構法は、土台や柱や横架材などの部材を組み合わせて建物の骨格を構築している。この骨格の強度を確保するには、隣接する部材同士を強固に連結する必要があり、古くからホゾとホゾ溝を組み合わせるなどの対策が講じられている。しかしホゾは、部材の断面欠損が大きくなりやすく、しかも施工時に微調整を伴う場合も多く、強度やコストの面で課題がある。そこで近年は、ホゾの代用として各種金物を使用することも多い。各種金物は、強度を得やすいほか、プレカット技術と組み合わせることで、現地での施工時間を短縮することもできる。
各種金物の一例としては、ホゾパイプが挙げられる。ホゾパイプは、従来のホゾの代用となるもので、金属製の丸パイプを所定の長さに切り出して製造され、連結される二部材の境界を貫くように埋め込まれる。さらに各部材の側面からホゾパイプに向けてドリフトピンを打ち込むと、ホゾパイプを介して二部材が連結される。なお各部材には、ホゾパイプと同径の下穴や、ドリフトピンを打ち込むための横孔を事前に加工しておく必要がある。
本願発明と関連のある技術の例としては、下記の特許文献1や特許文献2が挙げられる。特許文献1は、ホゾパイプに関する発明で、接合される二部材が交角を有する場合にも使用できるよう、ホゾパイプを二分割して回転自在に連結したことを特徴とする。また特許文献2は、木構造において地震時の揺れを速やかに減衰できることを目的とした発明で、柱と梁を板バネ状の接合金具で接合したことを特徴としている。
特開2008−163662号公報 特開平4−261935号公報
木材は、外力に対する粘り強さに乏しく、作用する荷重が限度を超えると急速にヒビ割れが発達して、一気に破壊してしまう脆性的な性質がある。また木材は天然由来であり、節の有無や含水量などの様々な要因で強度にバラツキがある。このような木材固有の特徴に対応するには、先の特許文献2のように、部材同士の連結部に金属製の部品を組み込み、その弾塑性変形を利用して、木材に作用する衝撃を緩和する方法が有効である。
従来のホゾパイプは、二部材を強固に連結することを目的としており、地震などで衝撃荷重が作用した際の対策は考慮されていなかった。しかしホゾパイプについても、特許文献2のように弾塑性変形を引き起こしやすい構造とすることで、地震の際の衝撃を緩和でき、柱などの部材の破壊を回避して、建物に及ぶ被害を軽減することが期待できる。
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、引張荷重に対して弾塑性変形を引き起こしやすい構造として、地震などによる衝撃荷重を緩和可能なホゾパイプの提供を目的としている。
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一方材と他方材を連結するために用い、中空の棒状で且つ前記一方材と前記他方材との境界を貫くように埋め込まれ、側周面には、前記一方材から打ち込まれるドリフトピンやボルトなどを挿通するための第一ピン孔と、前記他方材から打ち込まれるドリフトピンやボルトなどを挿通するための第二ピン孔と、を備え、前記第一ピン孔と前記第二ピン孔との間には、全周を半径方向に湾曲させた拡張部を設けたことを特徴とするホゾパイプである。
本発明によるホゾパイプは、各種木造構造において、土台と柱や、柱と横架材など、隣接する二部材をT字状やL字状に連結するために用いられ、金属製で中空の円断面を基調としている。なおホゾパイプは、様々な箇所で使用できるため、連結される二部材の一方を一方材、残る一方を他方材と称するものとする。
ホゾパイプは、一方材と他方材が接触している境界面を貫くように埋め込まれる。そしてホゾパイプを一方材や他方材と一体化するため、一方材や他方材の側面からホゾパイプの側周面を貫くようにドリフトピンを打ち込む。そのためホゾパイプの側周面には、ドリフトピンを通過させるためのピン孔を設ける必要がある。なおピン孔は、一方材に打ち込まれるドリフトピンを通過させる方を第一ピン孔、他方材に打ち込まれるドリフトピンを通過させる方を第二ピン孔と称するものとする。また第一ピン孔と第二ピン孔のいずれとも、その個数や間隔や方向などは自在である。
ホゾパイプを埋め込むため、一方材と他方材には、所定の位置にホゾパイプと同径の下穴をあらかじめ加工しておく。さらにドリフトピンを打ち込むため、一方材と他方材のいずれにも、ドリフトピンと同径の横孔をあらかじめ加工しておく。当然ながら横孔は、ホゾパイプを埋め込んだ際、第一ピン孔や第二ピン孔と同心にする必要がある。なおドリフトピンの代用として、ボルトを使用することもできる。この場合、ピン孔や横孔は、ボルトの軸部が無理なく通過できる内径とする。
本発明のホゾパイプは、全体が単純な円断面ではなく、その中央部分には、半径方向に膨らむように湾曲した拡張部を設けたことを特徴とする。拡張部は、ホゾパイプの中心に設ける必要はないが、必ず第一ピン孔と第二ピン孔との間に設けるものとする。そのため、ホゾパイプを一方材と他方材に埋め込んだ際、拡張部は、両材の境界付近に位置することになる。この拡張部を収容するため、一方材と他方材との境界には、下穴よりも直径の大きい座グリ穴を加工する。なお半径方向とは、ホゾパイプの軸線方向に対して直交する方向を意味する。
拡張部は、別途に製造した円盤状の物を溶接などで取り付ける訳ではなく、ホゾパイプを構成する鋼板を曲げ加工によって半径方向に押し広げて形成することを前提とする。なお拡張部の断面は、「く」の字状や半円形状など自在に選択できる。さらに拡張部は、全周を切れ目なく形成する必要はなく、曲げ加工を考慮して、半径方向に延びる複数のスリットを設けても構わない。
ホゾパイプに引張荷重が作用すると、拡張部には曲げモーメントやせん断荷重などが作用して、応力が局地的に増大する。そのためホゾパイプの変形量も増大して、バネのような挙動を示すようになり、一方材と他方材を引き離す方向に過大な荷重が作用した際、衝撃が緩和され、柱などに及ぶ被害を軽減できる。なお拡張部が塑性変形した後も、一方材と他方材との連結は維持され、連結部の強度低下を抑制できる。
請求項1記載の発明のように、ホゾパイプの中央部分を半径方向に膨らませた拡張部を設けることで、引張荷重が作用した際、拡張部の周辺で応力が局地的に増大して、弾塑性変形を引き起こしやすくなる。そのため地震などで二部材を引き離す方向に過大な荷重が作用した際、衝撃が緩和され、建物などに及ぶ被害を軽減できる。
本発明によるホゾパイプの形状例とその使用状態を示す斜視図である。 図1の各要素を組み上げた状態の縦断面図である。 ホゾパイプの製造方法の一例を示す斜視図である。 ホゾパイプの形状例を示す縦断面図である。
図1は、本発明によるホゾパイプ11の形状例とその使用状態を示している。この図のホゾパイプ11は、土台31(一方材)と柱41(他方材)を連結するために使用され、土台31と柱41の境界面を貫くように埋め込まれている。なお土台31は、コンクリート製の基礎21の上面に載置され、さらに基礎21から突出するアンカーボルト22の先端にナット23とワッシャ24を組み込み、土台31の浮き上がりを防止している。
ホゾパイプ11は鋼製であり、中空の円断面を基調としており、その下方は土台31に埋め込まれ、上方は柱41に埋め込まれる。そのため土台31と柱41のいずれにも、ホゾパイプ11と同径の下穴35、45を加工してある。またホゾパイプ11の下方には、土台31の側面から打ち込まれるドリフトピン36を通過させるため、第一ピン孔13を設けてあり、対するホゾパイプ11の上方には、柱41の側面から打ち込まれるドリフトピン46を通過させるため、第二ピン孔17を設けてある。
ドリフトピン36、46を打ち込むため、土台31と柱41の側面には、横孔32、42を加工してある。横孔32、42は、下穴35、45と直角に交差して反対面に達している。なお横孔32、42は、ホゾパイプ11を所定の位置に埋め込んだ際、ピン孔13、17と同心になるよう、加工位置を調整してある。そのほか横孔32、42の内径は、ドリフトピン36、46の外径に合わせてあり、打ち込まれたドリフトピン36、46は摩擦によって保持され、自然に抜け落ちることはない。
ホゾパイプ11の中央部分に形成された拡張部15は、ホゾパイプ11を構成する鋼板を半径方向に押し広げるように湾曲させた部位である。このような拡張部15を設けることで、ホゾパイプ11に引張荷重が作用した際、拡張部15の付け根付近などで応力が局地的に増大して、バネのように弾塑性変形を引き起こしやすくなる。そのため柱41などに過大な荷重が作用した場合でも、ホゾパイプ11が柔軟に変形することで衝撃が緩和され、柱41などのヒビ割れを防止できる。
拡張部15は、第一ピン孔13と第二ピン孔17との間に位置していれば、必ずしもホゾパイプ11のちょうど中心に位置していなくてもよい。また拡張部15を埋め込むため、土台31と柱41の境界には、下穴35、45よりも直径の大きい座グリ穴34を加工する必要がある。座グリ穴34は、土台31と柱41との境界を跨ぐように設けることもできるが、加工の手間を削減するため、土台31または柱41の一方だけに設けることが好ましい。
ホゾパイプ11は、二部材が面接触していれば、この図のような土台31と柱41との連結部のほか、柱と横架材との連結部などにも使用できる。またこの図では、ホゾパイプ11を固定するためにドリフトピン36、46を打ち込んでいるが、この代用としてボルトを使用することもできる。
図2は、図1の各要素を組み上げた状態の縦断面を示している。土台31はアンカーボルト22で基礎21に固定されており、また柱41は、ホゾパイプ11を介して土台31に連結されている。なおホゾパイプ11は、二本のドリフトピン36で土台31と一体化され、さらに三本のドリフトピン46で柱41と一体化されている。そのほか拡張部15は、土台31の上面に加工された座グリ穴34に収容されており、ホゾパイプ11は、全体が土台31と柱41の中に埋め込まれている。
地震などで柱41を土台31から引き抜く方向に荷重が作用した場合、下方の図のように、拡張部15が引き延ばされるように変形する。この変形によってエネルギーが吸収され、柱41などに及ぶ衝撃が緩和される。なお引き延ばされた拡張部15は、その後、反対方向の荷重が作用することで押し潰されて、当初の形状に復元する場合もある。
図3は、ホゾパイプ11の製造方法の一例を示している。本発明によるホゾパイプ11は、拡張部15を設けるため、単に鋼鉄製のパイプを切り出しただけでは製造できない。そこで平面状の鋼板を曲げ加工で所定の形状に仕上げることがある。この場合、まず鋼板を所定の大きさに切り出した後、その中央付近に曲げ加工を施して、「く」の字状の拡張部15を形成する。その後、加工性を確保するため、拡張部15に複数のスリット19を形成する。
次に、鋼板全体に曲げ加工を施して、筒状に変形させていく。この際、変形が進むに連れて、スリット19の間隔が徐々に広がっていく。そして鋼板が完全な筒状になると、鋼板の側端面同士の接触部を溶接で閉鎖して、さらに所定の位置に第一ピン孔13や第二ピン孔17を形成すると、ホゾパイプ11が完成する。
図4は、ホゾパイプ11の形状例を示している。拡張部15は、半径方向に張り出しているならば、その形状は自在であり、他の形状例1のような半円形断面や、他の形状例2のような扁平な矩形断面のほか、他の形状例3のような三角形断面などにすることもできる。なおホゾパイプ11の全長のほか、ピン孔13、17の個数や配置については、自在に決めることができる。そのほか、この図のホゾパイプ11についても、先の図3と同様、拡張部15にスリットを形成しても構わない。
11 ホゾパイプ
13 第一ピン孔
15 拡張部
17 第二ピン孔
19 スリット
21 基礎
22 アンカーボルト
23 ナット
24 ワッシャ
31 一方材(土台)
32 横孔(一方材側)
34 座グリ穴
35 下穴(一方材側)
36 ドリフトピン(一方材側)
41 他方材(柱)
42 横孔(他方材側)
45 下穴(他方材側)
46 ドリフトピン(他方材側)

Claims (1)

  1. 一方材(31)と他方材(41)を連結するために用い、
    中空の棒状で且つ前記一方材(31)と前記他方材(41)との境界を貫くように埋め込まれ、
    側周面には、前記一方材(31)から打ち込まれるドリフトピン(36)やボルトなどを挿通するための第一ピン孔(13)と、前記他方材(41)から打ち込まれるドリフトピン(46)やボルトなどを挿通するための第二ピン孔(17)と、を備え、
    前記第一ピン孔(13)と前記第二ピン孔(17)との間には、全周を半径方向に湾曲させた拡張部(15)を設けたことを特徴とするホゾパイプ。
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