JP5451398B2 - 新規なatp:クエン酸リアーゼ遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明は新規なATP:クエン酸リアーゼ遺伝子に関する。
脂肪酸は、リン脂質やトリアシルグリセロール等脂質を構成する重要な成分である。不飽和結合を2箇所以上含有する脂肪酸は、高度不飽和脂肪酸(PUFA)と総称され、アラキドン酸やジホモγリノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が知られており、様々な生理活性が報告されている(非特許文献1)。この高度不飽和脂肪酸は様々な分野での利用が期待されているが、動物体内で合成できないものも含まれている。そこで、種々の微生物を培養して高度不飽和脂肪酸を獲得する方法が開発されてきた。また、植物で高度不飽和脂肪酸を生産させる試みもなされている。こうした場合、高度不飽和脂肪酸は、例えばトリアシルグリセロール等の脂質の構成成分として、微生物の菌体内又は植物種子中に蓄積されることが知られている。
こうした動物、植物及び微生物における新規脂肪酸合成は、アセチルCoAからアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)によって生成されたマロニルCoAと、アセチルCoAから、脂肪酸合成酵素によってなされる。これらの反応は、動物や微生物等では細胞質、植物では葉緑体で行われることが知られている。
これら細胞質で新規合成される脂肪酸やコレステロールの原料となるアセチルCoAはクエン酸からATP:クエン酸リアーゼ(E.C. 2.3.3.8、以下、ACLと記載する場合もある)の働きで供給される。
ACLは、以下の反応を触媒する酵素である。
Figure 0005451398
本酵素は、真核生物では、動物、植物、カビなどに広く分布しており、その細胞内局在は細胞質である(非特許文献2)。ACL遺伝子はこれまでにいくつかの生物で報告されている。例えば、動物ではHomo sapiens及びRattus norvegicus由来の遺伝子としてACL遺伝子がクローン化されている(非特許文献3、非特許文献4)。植物では、Arabidopsis(ecotype Columbia)由来の遺伝子としてACLA−1、−2、−3とACLB−1、−2がクローン化されている(非特許文献5)。糸状菌では、Sordaria macrospora由来の遺伝子としてACLAとACLB遺伝子がクローン化されている(非特許文献6)。
脂質生産菌であるMortierella alpina(以下、「M. alpina」と記載する場合もある)については、細胞質画分にATP:クエン酸リアーゼ活性があることが報告されている(非特許文献7)。
これまでに、これら既知ACL遺伝子を用いて、Sordaria macrospora由来のACL遺伝子を脂肪酸合成酵素(FAS)と共に酵母で高発現させて宿主の総脂肪酸量を高めたり(特許文献1)、Rattus norvegicus由来のACL遺伝子を植物で高発現させて宿主の総脂肪酸量を増加させる(非特許文献8)という試みが成されている。
米国特許公報第2006/0051847 Lipids., 39, pp1147 (2004) Adv Appl Microbiol., 51,pp1-51 (2002) Eur J Bio Chem., 204, pp491-499 (1992) J Bio chem., 265, pp1430-1435 (1990) Plant Physiology., 130, pp740-756 (2002) Curr. genet., 37, pp189-93 (2000) Microbiology., 146, pp2325-2331 (2000) Plant Physiology., 122, pp1231-1238 (2000)
しかしながら、これまでに報告されているACL遺伝子は、宿主細胞に導入して発現させても、単独で効果が確認できていないことや、発現させられる宿主が限られているなどの観点から不十分なものであった。そこで、これまでとは異なる宿主の総脂肪酸量又は脂質量を増加しうる、新規な遺伝子を同定することが求められている。
本発明の目的は、宿主細胞で発現又は導入することで、脂肪酸や脂質の含有量を増加させることができるようなタンパク質及び核酸を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。まず、脂質生産菌Mortierella alpinaのEST解析を行い、そのなかから既知のACL遺伝子と同一性の高い配列を抽出した。さらに、ACLをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)全長を取得するため、cDNAライブラリーのスクリーニングあるいはPCRにより遺伝子をクローニングした。それをACL遺伝子が存在しないSaccharomyces cerevisiaeに発現させた後、ACL活性を測定することで、前記遺伝子のACL活性を確認した。
そして、脂質生産菌であるMortierella alpina等の宿主細胞に導入し、高発現させることで総脂肪酸量の高産生を試みた発明者は、従来量のACLが発現した宿主と比較して総脂肪酸量を増加できる、新規なACLに関する遺伝子のクローニングに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(d)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(e)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(2) 以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、(2)に記載の核酸。
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(3) 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載の塩基配列又はそのフラグメントを含む核酸。
(a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列。
(b)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号5又は配列番号6で示される塩基配列。
(4) 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号11又は配列番号12において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
(b)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
(5)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(6)(1)〜(3)のいずれか1項記載の核酸を含有する組換えベクター。
(7)(1)〜(3)のいずれか1項記載の核酸が導入された形質転換体。
(8)(6)記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
(9)(6)に記載のベクターを導入することによって、脂肪酸生産能が向上した(8)に記載の形質転換体。
(10)形質転換体が、脂質生産菌であることを特徴とする(7)〜(9)いずれか記載の形質転換体。
(11)脂質生産菌が、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)であることを特徴とする(10)記載の形質転換体。
(12)(7)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体を培養して得られる培養物から、脂肪酸又は脂質を採取することを特徴とする、前記脂肪酸又は脂質の製造方法。
(13)(12)に記載の製造方法を用いて得られる脂肪酸又は脂質。
(14)(13)記載の脂肪酸又は脂質を含む食品。
本発明のACLは、脂肪酸や脂質の生産能の向上を図ることができるため、微生物や植物中での高度不飽和脂肪酸の生産性を向上させるものとして、好ましい。それにより、従来よりも安価に有用な脂質を提供できるため、食品、化粧料、医薬品、石鹸等に適用できるものとして有用である。
図1は、本発明のMaACL1のcDNA配列と推定アミノ酸配列を示す。 図1は、本発明のMaACL1のcDNA配列と推定アミノ酸配列を示す。 図2は、本発明のMaACL2のcDNA配列と推定アミノ酸配列を示す。 図2は、本発明のMaACL2のcDNA配列と推定アミノ酸配列を示す。 図3は、MaACL1とMaACL2のCDS部分のDNA配列を比較した図である。 図3は、MaACL1とMaACL2のCDS部分のDNA配列を比較した図である。 図4は、MaACL1とMaACL2の推定アミノ酸配列を比較した図である。 図5は、MaACL1p及びMaACL2pの推定アミノ酸配列を既知のアミノ酸配列と比較した図である。 図5は、MaACL1p及びMaACL2pの推定アミノ酸配列を既知のアミノ酸配列と比較した図である。 図6は、MaACL1のMg2+濃度依存性を示すグラフである。 図7は、培養中のMaACL1形質転換体(MaACL1−1,−2)と未形質転換体(Ctrl−1、−2)との菌体内油脂含有率を経時的に比較した図である。
本発明は、ATP、クエン酸及びCoAからアセチルCoA、オキサロ酢酸、ADP及びPiを生成させることを特徴とする、Mortierella属由来の新規なATP:クエン酸リアーゼ遺伝子に関する。
本発明に関するアセチルCoA は真核生物のように細胞内が小器官により仕切られている場合、ピルビン酸デヒドロゲナーゼやβ−酸化によって、主にミトコンドリア内で生成する。しかし、アセチルCoA はミトコンドリア膜を透過することができず,クエン酸として細胞質内に供給される。このクエン酸からACLの働きで細胞質に供給されるアセチルCoA は、細胞質内で新規合成される脂肪酸やコレステロールなどの原料となる。
本発明のATP:クエン酸リアーゼをコードする核酸
本発明のATP:クエン酸リアーゼ(ACL)には、MaACL1及びMaACL2が含まれる。MaACL1及びMaACL2をコードする核酸のcDNA、CDS、ORF及びアミノ酸配列の対応関係を以下の表1に整理して記載した。
Figure 0005451398
つまり、本発明のMaACL1に関連する配列としては、MaACL1のアミノ酸配列である配列番号11、MaACL1のORFの領域を示す配列である配列番号9、そして、そのCDSの領域を示す配列である配列番号7、及びそのcDNAの塩基配列である配列番号5があげられる。このうち、配列番号7は配列番号5の第178〜3717番目の塩基配列に相当し、配列番号9は配列番号5の第178〜3714番目の塩基配列、及び、配列番号7の第1〜3537番目の塩基配列に相当する。
同様に、MaACL2に関連する配列としては、MaACL2のアミノ酸配列である配列番号12、MaACL2のORFの領域を示す配列である配列番号10、そして、そのCDSの領域を示す配列である配列番号8、及びそのcDNAの塩基配列である配列番号6があげられる。ここで、配列番号8は配列番号6の第21〜3545番目の塩基配列に相当し、配列番号10は、配列番号6の第21〜3542番目の塩基配列、及び、配列番号8の第1〜3522番目の塩基配列に相当する。
本発明の核酸とは、一本鎖及び二本鎖のDNAのほか、そのRNA相補体も含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。DNAには、例えば、ゲノムDNAや、前記ゲノムDNAに対応するcDNA、化学的に合成されたDNA、PCRにより増幅されたDNA、及びそれらの組み合わせや、DNAとRNAのハイブリッドがあげられるがこれらに限定されない。
本発明の核酸の好ましい態様としては、(a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列、(b)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、(c)配列番号5又は6で示される塩基配列等があげられる。
配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列及び配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、及び、配列番号5又は6で示される塩基配列は、表1に記載したとおりである。
上記塩基配列を得るためには、ATP:クエン酸リアーゼ活性(以下、ACL活性と記載する場合もある)を有する生物のESTやゲノムDNAの塩基配列データから、既知のACL活性を有するタンパク質と同一性の高いタンパク質をコードする塩基配列を探索することもできる。ACL活性を有する生物としては、脂質生産菌が好ましく、脂質生産菌としてはM. alpinaがあげられるが、これに限定されない。
EST解析を行う場合には、まず、cDNAライブラリーを作製する。cDNAライブラリーの作製方法については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー作製キットを用いてもよい。本発明に適するcDNAライブラリーの作製方法としては、例えば以下のような方法があげられる。すなわち、脂質生産菌であるM. alpinaの適当な株を適当な培地に植菌し、適当な期間前培養する。この前培養に適する培養条件としては、例えば、培地組成としては、1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0があげられ、培養期間は3日間、培養温度は28℃である条件があげられる。その後、前培養物を適当な条件にて本培養に供する。本培養に適する培地組成としては、例えば、1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1% NaSO、0.05% CaCl・2HO、0.05% MgCl・6HO、pH6.0があげられる。本培養に適する培養条件としては、例えば、300rpm、1vvm、26℃で8日間通気攪拌培養する条件があげられる。培養期間中に適当量のグルコースを添加してもよい。本培養中に適時培養物を採取し、そこから菌体を回収して、全RNAを調製する。全RNAの調製には、塩酸グアニジン/CsCl法等の公知の方法を用いることができる。得られた全RNAから市販のキットを用いてpoly(A) RNAを精製することができる。さらに、市販のキットを用いてcDNAライブラリーを作製することができる。その後、作製したcDNAライブラリーの任意のクローンの塩基配列を、ベクター上にインサート部分の塩基配列を決定できるように設計されたプライマーを用いて決定し、ESTを得ることができる。例えば、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE)でcDNAライブラリーを作製した場合は、ディレクショナルクローニングを行うことができる。
本発明のMaACL1及びMaACL2のCDS間の塩基配列の同一性は79.1%である。また、MaACL1とMaACL2との間のアミノ酸配列の同一性は87.1%である。なお、本発明のMaACL1のアミノ酸配列及びMaACL2のアミノ酸配列をそれぞれBLASTP解析した結果、最もE-valueの低かったUstilago maydis 521由来の推定タンパク質(図5)(UM01005.1, GB accession No. EAK82015, gi 46096782)との同一性はMaACL1が61.6%、MaACL2が61.9%である。
本発明はまた、上記配列番号9及び10で示される塩基配列(「本発明の塩基配列」と記載する場合もある)、並びに、配列番号11及び12で示されるアミノ酸配列(「本発明のアミノ酸配列」と記載する場合もある)からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸と同等の機能を有する核酸を含む。「同等の機能を有する」とは、本発明の塩基配列がコードするタンパク質及び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質が、ACL活性を有すること、又は、ACL活性を有し、かつ本発明の塩基配列がコードするタンパク質及び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の酵素活性の特性を有すること、を意味する。酵素活性の特性には、酵素反応条件における温度、pH、塩濃度、又は基質濃度等の変化に応じた活性の変化、Km値、基質特異性など、あらゆる特性がこれに含まれる。
本発明のACLはATP、クエン酸及びCoAからアセチルCoA、オキサロ酢酸、ADP及びPiを生成する反応を触媒するものであり、その「ACL活性」は、公知の方法を用いて測定することが可能である。例えば、以下の文献:Plant Physiol., 2002, 130, 740-56を参照することが出来る。
例えば、本発明の「ACL活性」は以下の通り測定してもよい。本発明のMaACL1又はMaACL2を発現させた酵母(内在性のACL遺伝子を持っていないもの)からPlant Physiol., 2002, 130, 740-56に記載の方法等により細胞質画分を調製する。そして反応液である、10mM Tris−HCl(pH8.4)、20mM MgCl、1mM DTT、10mM ATP、10mM クエン酸、0.2mM CoA、6ユニット リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、0.1mM NADHに上記細胞質画分を添加し、28℃で適当な時間反応させ、吸光度計にてA340の変化(NADH量の減少)を測定することによって「ACL活性」を定量することができる。
本明細書において「ACL活性を有する」とは、上記アッセイにおいてNADH量の減少が認められる限り特に限定されないが、好ましくは1.0nmol・min−1・mg−1以上の活性を有することを意味する。
また、本発明のMaACL1(配列番号11)のACL活性はMg2+濃度依存性があることが確認された。具体的には、Mg2+濃度が5〜10mMのとき、活性が極大となり、Mg2+濃度が上昇するに従ってACL活性が減少した(図6)。また、MaACL1はATP:クエン酸:Mg2+の比がおおむね1:1:1の時に最大活性を示すことも見出された。
このような本発明の核酸と同等の機能を有する核酸としては、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸があげられる。なお、以下にあげる塩基配列の記載において、「本発明の上記活性」とは、上記の「ACL活性及び/又は本発明の塩基配列がコードするタンパク質及び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の酵素活性の特性を有すること」を意味する。
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
具体的には、
(i) 配列番号11又は12に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号11又は12に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換したアミノ酸配列、
(iii) 配列番号11又は12に示すアミノ酸配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
上記のうち、置換は、好ましくは保存的置換である。保存的置換とは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることであるが、もとの配列の構造に関する特徴を実質的に変化させなければいかなる置換であってもよく、例えば、置換アミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを破壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊したりしなければいかなる置換であってもよい。
保存的置換は、一般的には、生物学的系合成や化学的ペプチド合成で導入されるが、好ましくは、化学的ペプチド合成による。この場合、置換基には、非天然アミノ酸残基が含まれていてもよく、ペプチド模倣体や、アミノ酸配列のうち、置換されていない領域が逆転している逆転型又は同領域が反転している反転型も含まれる。
以下に、アミノ酸残基を置換可能な残基ごとに分類して例示するが、置換可能なアミノ酸残基は以下に記載されているものに限定されるものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン及びシクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸及び2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン及びグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸及び2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン及び4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン及びホモセリン
G群:フェニルアラニン及びチロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができるが、この場合は、本発明のタンパク質の生物学的機能を保持するために、アミノ酸のヒドロパシー指数(ヒドロパシーアミノ酸指数)を考慮することが好ましい(Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131(1982))。
また、非保存的置換の場合は、親水性に基づいてアミノ酸の置換を行うことができる。
本明細書及び図面において、塩基やアミノ酸及びその略語は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature に従うか、又は、例えば、Immunology -- A Synthesis(第2版, E.S. Golub及びD.R. Gren監修, Sinauer Associates,マサチューセッツ州サンダーランド(1991))等に記載されているような、当業界で慣用されている略語に基づく。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示す。
D−アミノ酸等の上記のアミノ酸の立体異性体、α,α−二置換アミノ酸等の非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、及びその他の非慣用的なアミノ酸もまた、本発明のタンパク質を構成する要素となりうる。
なお、本明細書で用いるタンパク質の表記法は、標準的用法及び当業界で慣用されている標記法に基づき、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。
同様に、一般的には、特に言及しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向を5’方向とする。
当業者であれば、当業界で公知の技術を用いて、本明細書に記載したタンパク質の適当な変異体を設計し、作製することができる。例えば、本発明のタンパク質の生物学的活性にさほど重要でないと考えられる領域をターゲティングすることにより、本発明のタンパク質の生物学的活性を損なうことなくその構造を変化させることができるタンパク質分子中の適切な領域を同定することができる。また、類似のタンパク質間で保存されている分子の残基及び領域を同定することもできる。さらに、本発明のタンパク質の生物学的活性又は構造に重要と考えられる領域中に、生物学的活性を損なわず、かつ、タンパク質のポリペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的アミノ酸置換を導入することもできる。
例えば、本発明のMaACL1及びMaACL2は担子菌U. maydis由来のACL様推定タンパク質(gi_46096782)と約62%のアミノ酸配列同一性を有し、マウス(gi_29293809)、ヒト(gi_38569421)、ショウジョウバエ(gi_28372804)、線虫(gi_17551266)など、動物由来のACLもしくはACL様推定タンパク質配列とも一定の同一性を有している(図5)。変異可能なアミノ酸残基の例として、図5に示した7つの配列すべてについて保存されている残基以外を変異可能なアミノ酸残基として判断してもよく、又は、当該7つの配列のうち少なくとも4、5もしくは6の配列で保存されている残基以外を変異可能なアミノ酸残基として判断してもよい。
あるいは、図5において下線、点線の下線、および二重下線で示した3つの下線部は、ATP:クエン酸リアーゼ/スクシニル−CoAリアーゼで特に重要とされる部位である(N末端側から順にPROSITEのPS01216, PS00399, PS01217)。すなわち、本発明の変異体は、上記部位が保存されている限り、いかなる変異体であってもよい。従って、変異可能なアミノ酸残基の別の例として、図5に示した3つの下線部で示したアミノ酸残基以外を、変異可能なアミノ酸残基として判断してもよい。
また、本発明のMaACL1及びMaACL2は、互いに87.1%のアミノ酸同一性を有している(図4)。変異可能なアミノ酸残基の別の例として、MaACL1及びMaACL2の間で保存されていない残基については、変異可能なアミノ酸残基として判断してもよい。
当業者であれば、本発明のタンパク質の生物学的活性又は構造に重要であり、同タンパク質のペプチドと類似するペプチドの残基を同定し、この2つのペプチドのアミノ酸残基を比較して、本発明のタンパク質と類似するタンパク質のどの残基が、生物学的活性又は構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基であるかを予測する、いわゆる、構造−機能研究を行うことができる。さらに、このように予測したアミノ酸残基の化学的に類似のアミノ酸置換を選択することにより、本発明のタンパク質の生物学的活性が保持されている変異体を選択することもできる。また、当業者であれば、本タンパク質の変異体の三次元構造及びアミノ酸配列を解析することもできる。さらに、得られた解析結果から、タンパク質の三次元構造に関する、アミノ酸残基のアラインメントを予測することもできる。タンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関与する可能性があるが、当業者であれば、上記したような解析結果に基づいて、このようなタンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基を変化させないような変異体を作製することができる。さらに、当業者であれば、本発明のタンパク質を構成する各々のアミノ酸残基のうち、一つのアミノ酸残基のみを置換するような変異体を作製することもできる。このような変異体を公知のアッセイ方法によりスクリーニングし、個々の変異体の情報を収集することができる。それにより、ある特定のアミノ酸残基が置換された変異体の生物学的活性が、本発明のタンパク質の生物学的活性に比して低下する場合、そのような生物学的活性を呈さない場合、又は、本タンパク質の生物学的活性を阻害するような不適切な活性を生じるような場合を比較することにより、本発明のタンパク質を構成する個々のアミノ酸残基の有用性を評価することができる。また、当業者であれば、このような日常的な実験から収集した情報に基づいて、単独で、又は他の突然変異と組み合わせて、本発明のタンパク質の変異体としては望ましくないアミノ酸置換を容易に解析することができる。
上記したように、配列番号11又は12で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997)、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763-6 等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。このようなアミノ酸の欠失、置換又は付加等の変異がなされた変異体の作製は、例えば、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km 等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
なお、タンパク質のアミノ酸配列に、その活性を保持しつつ1又は複数個のアミノ酸の欠失、置換、又は付加を導入する方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、及び遺伝子を選択的に開裂して選択されたヌクレオチドを除去、置換又は付加した後に連結する方法があげられる。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好ましくは、配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ACL活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
本発明のタンパク質におけるアミノ酸の変異又は修飾の数、あるいは変異又は修飾の部位は、ACL活性、又は本発明の塩基配列がコードするタンパク質及び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の酵素活性の特性が保持される限り制限はない。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
配列番号9又は配列番号10及び本発明の上記活性については上述のとおりである。
上記塩基配列は、当業者に公知の方法で適当なプローブを作製し、このプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリー等から得ることができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001);特にSection 6-7) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997);特にSection6.3-6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);ハイブリダイゼーション条件については特にSection2.10) 等を参照することができる。
ハイブリダイゼーション条件の強さは、主としてハイブリダイゼーション条件、より好ましくは、ハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件によって決定される。本明細書における「ストリンジェントな条件」には、中程度又は高度にストリンジェントな条件が含まれる。
具体的には、中程度にストリンジェントな条件としては、例えばハイブリダイゼーション条件として、1×SSC〜6×SSC、42℃〜55℃の条件、より好ましくは、1×SSC〜3×SSC、45℃〜50℃の条件、最も好ましくは、2×SSC、50℃の条件があげられる。ハイブリダイゼーション溶液中に、例えば、約50%のホルムアミドを含む場合には、上記温度よりも5ないし15℃低い温度を採用する。洗浄条件としては、0.5×SSC〜6×SSC、40℃〜60℃があげられる。ハイブリダイゼーション及び洗浄時には、一般に、0.05%〜0.2%、好ましくは約0.1%SDSを加えてもよい。
高度にストリンジェント(ハイストリンジェント)な条件としては、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を含む。例えば、ハイブリダイゼーション条件として、0.1×SSC〜2×SSC、55℃〜65℃の条件、より好ましくは、0.1×SSC〜1×SSC、60℃〜65℃の条件、最も好ましくは、0.2×SSC、63℃の条件があげられる。洗浄条件として、0.2×SSC〜2×SSC、50℃〜68℃、より好ましくは、0.2×SSC、60〜65℃があげられる。
特に本発明に用いられるハイブリダイゼーション条件としては、例えば、5×SSC、1%SDS、50mM Tris−HCl(pH7.5)及び50%ホルムアミド中42℃の条件でプレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して一晩42℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃で20分間の洗浄を3回行うという条件があげられるが、これらに限定されない。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等があげられる。
本発明に含まれる塩基配列としては、好ましくは、配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ACL活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
(c)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
好ましくは、配列番号9又は10に示される核酸配列に対して少なくとも75%、さらに好ましくは80%、さらに一層好ましくは85%(例えば、90%、95%、さらには98%又は99%)の同一性を有する塩基配列を含む核酸であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。上記したように、MaACL1(配列番号9)及びMaACL2(配列番号10)の同一性は79.1%である。本発明の核酸は、配列番号9又は10に示される核酸配列に対して少なくとも80%以上であり、両者に類似するものを含む。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査や数学的計算により決定することができるが、コンピュータープログラムを使用して2つの核酸の配列情報を比較することにより決定するのが好ましい。配列比較コンピュータープログラムとしては、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlから利用できるBLASTNプログラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10):バージョン2.2.7、又はWU−BLAST2.0アルゴリズム等があげられる。WU−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されているものを用いることができる。
(d)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。本発明の核酸がコードするタンパク質は、本発明の上記活性を有するタンパク質と同等の機能を有する限り、MaACL1又はMaACL2のアミノ酸配列と同一性のあるタンパク質でもよい。
具体的には、配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%(例えば、90%、95%、98%、さらには、99%)以上の同一性を有するアミノ酸配列等があげられる。上記したように、MaACL1(配列番号11)とMaACL2(配列番号12)の間のアミノ酸配列の同一性は87.1%である。本発明の核酸がコードするタンパク質は、配列番号11又は12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも88%以上であり、両者に類似するものを含む。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好ましくは、配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。さらに好ましくは、配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性パーセントを決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLAST、FASTA(Altschulら、 J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))、及びClustalW等があげられる。特に、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DINASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプログラムを用いて決定することもできる。
複数のアミノ酸配列を並列させる特定のアラインメントスキームは、配列のうち、特定の短い領域のマッチングをも示すことができるため、用いた配列の全長配列間に有意な関係がない場合であっても、そのような領域において、特定の配列同一性が非常に高い領域を検出することもできる。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを用いることができるが、選択パラメーターとしては、以下のものを用いることができる:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(Wootton及びFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;Wootton及びFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、又は、短周期性の内部リピートからなるセグメント(Claverie及びStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、及び(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、又はE−スコア(Karlin及びAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない。
(e)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及びハイブリダイズの条件は上記のとおりである。
また、本発明の核酸には、配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸も含まれる。具体的には、
(i) 配列番号9又は10に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜1050個、1〜750個、1〜700個、1〜650個、1〜600個、1〜550個、1〜500個、1〜450個、1〜400個、1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の塩基が欠失した塩基配列、
(ii) 配列番号9又は10に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜1050個、1〜750個、1〜700個、1〜650個、1〜600個、1〜550個、1〜500個、1〜450個、1〜400個、1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、
(iii) 配列番号9又は10に示す塩基配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜1050個、1〜750個、1〜700個、1〜650個、1〜600個、1〜550個、1〜500個、1〜450個、1〜400個、1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の他の塩基が付加された塩基配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせた塩基配列であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードしている塩基配列を含む核酸を用いることもできる。
本発明の核酸の好ましい態様としては、以下の(a)〜(c)のいずれかに記載の塩基配列のフラグメントを含む核酸も含まれる。
(a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列。
(b)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号5又は配列番号6で示される塩基配列。
(a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列、(b)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、(c)配列番号5又は6で示される塩基配列については、表1に記載したとおりである。上記配列のフラグメントとは、上記塩基配列に含まれるORF、CDS、生物学的活性を有する領域、以下に記載するようなプライマーとして用いた領域、プローブとなりうる領域が含まれ、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。
本発明のATP:クエン酸リアーゼタンパク質
本発明のタンパク質は、配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及び前記タンパク質と同等の機能を有するタンパク質を含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質については、上記のとおりである。「同等の機能を有するタンパク質」とは、上記『本発明のATP:クエン酸リアーゼをコードする核酸』の項で説明したとおり、「本発明の上記活性」を有するタンパク質を意味する。
本発明において、配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質としては、以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質があげられる。
(a)配列番号11又は配列番号12において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質。
(b)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質。
上記のうち、配列番号11又は12において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、又は、配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列については、上記、『本発明のATP:クエン酸リアーゼをコードする核酸』の項で説明したとおりである。また、上記「本発明の上記活性を有するタンパク質」は、配列番号9又は配列番号10の塩基配列を含む核酸によってコードされるタンパク質の変異体、又は、配列番号11又は12に示されるアミノ酸配列において1個又は複数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加等の多くの種類の修飾により変異したタンパク質、あるいはアミノ酸側鎖等が修飾されている修飾タンパク質、他のタンパク質との融合タンパク質であって、かつ、ACL活性を有するタンパク質も含まれる。
また、本発明のタンパク質は、人工的に作製したものであってもよく、その場合は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
ACLの核酸のクローニング
本発明のACLの核酸は、例えば、適切なプローブを用いてcDNAライブラリーからスクリーニングすることにより、クローニングすることができる。また、適切なプライマーを用いてPCR反応により増幅し、適切なベクターに連結することによりクローニングすることができる。さらに、別のベクターにサブクローニングすることもできる。
例えば、pBlue-ScriptTM SK(+)(Stratagene)、pGEM−T (Promega)、pAmp(TM: Gibco-BRL)、p-Direct(Clontech)、pCR2.1-TOPO(Invitrogene)等の市販のプラスミドベクターを用いることができる。また、PCR反応で増幅する場合、プライマーは、上記の配列番号5又は6等に示される塩基配列のいずれの部分も用いることができる。そして、M. alpina菌体から調製したcDNAに、上記プライマー及び塩基配列ポリメラーゼ等を作用させてPCR反応を行う。上記方法は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))』等に従い、当業者であれば容易に行うことができるが、本発明のPCR反応の条件としては、例えば、以下の条件があげられる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃、
サイクル数:10回以上
得られたPCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。例えば、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick PCR purification Kits(QIAGEN)、ExoSAP-IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のキットを用いる方法、DEAE−セルロース濾紙を用いる方法、透析チューブを用いる方法等がある。アガロースゲルを用いる場合には、アガロースゲル電気泳動を行い、塩基配列断片をアガロースゲルより切り出して、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick Gel extraction Kits(QIAGEN)、フリーズ&スクイーズ法等により精製することができる。
クローニングした核酸の塩基配列は、塩基配列シーケンサーを用いて決定することができる。
ACL発現用ベクター構築及び形質転換体の作製
本発明はまた、本発明のMaACL1及びMaACL2をコードする核酸を含有する組換えベクターを提供する。本発明は、さらに、上記組換えベクターによって形質転換された形質転換体も提供する。
このような組換えベクター及び形質転換体は以下のようにして得ることができる。すなわち、本発明のACLをコードする核酸を有するプラスミドを制限酵素を用いて消化する。なお、末端をT4ポリメラーゼ処理することにより平滑化してもよい。消化後のDNA断片をアガロースゲル電気泳動により精製する。このDNA断片を、発現用ベクターに公知の方法を用いて組み込むことにより、ACL発現用ベクターを得ることができる。この発現ベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、目的とするタンパク質の発現に供する。
このとき、発現ベクター及び宿主は、目的とするタンパク質を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、宿主として、真菌や細菌、植物、動物又はそれらの細胞等があげられる。真菌として、脂質生産菌であるM. alpina等の糸状菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母等があげられる。また細菌として、大腸菌(Escherichia coli)やバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等があげられる。さらに植物としては、ナタネ、ダイズ、ワタ、ベニバナ、アマ等の油糧植物があげられる。
脂質生産菌としては、例えば、MYCOTAXON, Vol.XLIV, NO.2, pp.257-265 (1992)に記載されている菌株を使用することができ、具体的には、モルティエレラ(Mortierella)属に属する微生物、例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・ヒグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS 219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS528.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等のモルティエレラ亜属(subgenus Mortierella)に属する微生物、又はモルティエレラ・イザベリナ(Mortierella isabellina)CBS194.28、IFO6336、IFO7824、IFO7873、IFO7874、IFO8286、IFO8308、IFO7884、モルティエレラ・ナナ(Mortierella nana)IFO8190、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)IFO5426、IFO8186、CBS112.08、CBS212.72、IFO7825、IFO8184、IFO8185、IFO8287、モルティエレラ・ヴィナセア(Mortierella vinacea)CBS236.82等のマイクロムコール亜属(subgenus Micromucor)に属する微生物等があげられる。とりわけ、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)が好ましい。
真菌類を宿主として用いる場合は、本発明の核酸が宿主中で自立複製可能であるか、又は当該菌の染色体上に挿入され得る構造であることが好ましい。それと同時に、プロモーター、ターミネーターを含む構成であることが好ましい。宿主としてM. alpinaを使用する場合、発現ベクターとして、例えば、pD4、pDuraSC、pDura5等があげられる。プロモーターとしては、宿主中で発現できるものであればいかなるプロモーターを用いてもよく、例えば、histonH4.1遺伝子プロモーター、GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子プロモーター、TEF(Translation elongation factor)遺伝子プロモーターといったM. alpinaに由来するプロモーターが用いられる。
M. alpina等の糸状菌への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、パーティクルデリバリー法、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクション等があげられる。栄養要求性のホスト株を用いる場合は、その栄養素を欠いた選択培地上で生育する株を選択することで、形質転換株を取得することができる。また、形質転換に薬剤耐性マーカー遺伝子を用いる場合には、その薬剤を含む選択培地にて培養を行い、薬剤耐性を示す細胞コロニーを得ることができる。
酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして、例えば、pYE22m等があげられる。また、pYES(Invitrogen)、pESC(STRATAGENE)等の市販の酵母発現用ベクターを、用いてもよい。また本発明に適する宿主としては、Saccharomyces cerevisiae EH13−15株(trp1, MATα)等があげられるがこれらに限定されない。プロモーターとしては、例えば、GAPDHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター等の酵母等に由来するプロモーターが用いられる。
酵母への組換えベクターの導入方法としては、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム中のポリヌクレオチド(単数又は複数)の被包、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクション等があげられる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、発現ベクターとしては、例えばファルマシア社のpGEX、pUC18等があげられる。プロモーターとしては、例えば、trpプロモーター、lac プロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の大腸菌やファージ等に由来するプロモーターが用いられる。細菌への組み換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法や塩化カルシウム法を用いることができる。
本発明の脂肪酸又は脂質の製造方法
本発明は、上記形質転換体から、脂肪酸又は脂質を製造する方法を提供する。すなわち、上記形質転換体を培養して得られる培養物から脂肪酸又は脂質を製造する方法である。具体的には、以下の方法で製造することができる。しかし、本製造方法に関しては、当該方法に限られず、一般的な公知の他の方法を用いて行うこともできる。
ACLを発現させた生物の培養に用いる培地は、適当なpH及び浸透圧を有し、各宿主の増殖に必要な栄養素、微量成分、血清や抗生物質等の生物材料を含んでいる培養液(培地)であれば、いかなる培養液も用いうる。例えば、M. alpinaを形質転換してACLを発現させた場合は、以下に記す組成の培地等を用いることができるが、これらに限定されない。
(1)1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1% NaSO、0.05% CaCl・2HO、0.05% MgCl・6HO、pH6.0)
(2)GY培地(2.0%グルコース、1.0%酵母エキス)
培養条件は、宿主の増殖に適し、かつ生成した酵素が安定に保たれるのに適当な条件であればいかなる条件でもよいが、具体的には、嫌気度、培養時間、温度、湿度、静置培養又は振盪培養等の個々の条件を調節することができる。培養方法は、同一条件での培養(1段階培養)でもよく、2以上の異なる培養条件を用いる、いわゆる2段階培養又は3段階培養でもよいが、大量培養をする場合には、培養効率がよい2段階培養等が好ましい。
以下に、本発明の脂肪酸の具体的な製造方法として、宿主としてM. alpinaを用いて培養を行った場合を例示して説明する。すなわち、本発明のMaACL1又はMaACL2を導入した形質転換株を、GY培地に植菌し、28℃にて振とう培養を開始する。そして、培養中の3日目に20%グルコース溶液を培養液の20分の1量添加して合計8日間以上振とう培養を行う方法である。
本発明の脂肪酸又は脂質は、以下の方法で抽出することができる。しかし、本製造方法に関しては、当該方法に限られず、一般的な公知の他の方法を用いて行うこともできる。具体的には、本発明に従って形質転換した菌体から以下のようにして抽出することができる。生物(例えば、脂質生産菌又は酵母)の形質転換株について、培養終了後、遠心分離法、ろ過等の常法に従って培養菌体を得る。菌体を十分水洗し、好ましくは乾燥する。乾燥は、凍結乾燥、風乾等によって行うことができる。乾燥菌体を、必要に応じて、ダイノミルや超音波などにより破砕した後、好ましくは窒素気流下で有機溶媒によって抽出処理する。有機溶媒としてはエーテル、ヘキサン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル等を用いることができ、又はメタノール及び石油エーテルの交互抽出又はクロロホルム−メタノール−水の一層系の溶媒を用いた抽出によっても良好な結果を得ることができる。抽出物から減圧下で有機溶媒を留去することにより、脂肪酸を含有する脂質を得ることができる。
さらに、上記脂肪酸を含有する脂質からの脂肪酸の分離は、混合脂肪酸又は混合脂肪酸エステルの状態で、常法(例えば、尿素付加法、冷却分離法、カラムクロマトグラフィー法など)により濃縮分離することにより行うことができる。
本発明の脂質又は脂肪酸の製造方法によれば、菌体の脂肪酸含有率が増加することにより、脂肪酸を効率よく生産することができる。
本発明の脂肪酸の製造方法一例として、実際に宿主としてM. alpinaを用い、本発明のMaACL1又はMaACL2を導入した形質転換株を作製し、脂肪酸を実際に抽出したところ、ACLを形質転換しなかった対照株と比較して、菌体の脂肪酸含有率が約1.1倍向上した。
本発明の脂肪酸又は脂質
本発明はまた、本発明のMaACL1又はMaACL2が発現している細胞における脂肪酸及び脂質を提供する。脂肪酸は、遊離脂肪酸でもよいし、トリグリセリド、リン脂質等でもよい。
本明細書中、「脂肪酸」とは、一般式ROOH(Rはアルキル基)で表される長鎖炭水化物の鎖状あるいは分岐状のモノカルボン酸をいう。例えば、ミリスチン酸(テトラデカン酸)(14:0)、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)(14:1)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)(16:0)、パルミトレイン酸(9−ヘキサデセン酸)(16:1)、ステアリン酸(オクタデカン酸)(18:0)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)(18:1(9))、バクセン酸(11−オクタデセン酸)(18:1(11))、リノール酸(cis, cis−9,12 オクタデカジエン酸)(18:2(9,12))、α−リノレン酸(9,12,15−オクタデカトリエン酸)(18:3(9,12,15))、γ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカトリエン酸)(18:3(6,9,12))、ステアリドン酸(6,9,12,15-オクタデカテトラエン酸)(18:4(6,9,12,15))、アラキジン酸(イコサン酸)(20:0)、(8,11−イコサジエン酸)(20:2(8,11))、ミード酸(5,8,11−イコサトリエン酸)(20:3(5,8,11))、ジホモγ-リノレン酸(8,11,14-イコサトリエン酸)(20:3(8,11,14))、アラキドン酸(5,8,11,14−イコサテトラエン酸)(20:4(5,8,11,14))、エイコサテトラエン酸(8,11,14,17-イコサテトラエン酸)(20:4(8,11,14,17)、エイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17-イコサペンタエン酸)(20:5(5,8,11,14,17))、ベヘン酸(ドコサン酸)(22:0)、(7,10,13,16-ドコサテトラエン酸)(22:4(7,10,13,16))、(7,10,13,16,19-ドコサペンタエン酸)(22:5(7,10,13,16,19))、(4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸)(22:5(4,7,10,13,16))、(4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸)(22:6(4,7,10,13,16,19))、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)(24:0)、ネルボン酸(cis−15−テトラドコサン酸)(24:1)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)(26:0)、等があげられるが、これらに限定されない。なお、上記物質名はIUPAC生化学命名法で定義された慣用名であり、組織名及び、炭素数と二重結合の位置を示す数値を、カッコ内に記載した。
本明細書中、「脂質」とは、脂肪酸とアルコールとがエステル結合した化合物(例えば、グリセリド)又はその類似体(例えばコレステロールエステル)などを含む単純脂質、単純脂質の一部にさらにリン酸、アミノ酸、糖などが結合した複合脂質、及び上記脂質の加水分解物で水に溶けない誘導脂質をいうものとする。
本発明の脂肪酸組成物は、上記の脂肪酸のうち、1またそれ以上の脂肪酸の組み合わせであれば、いかなる数のいかなる種類の脂肪酸からなる組成物でもよい。
本発明の脂肪酸又は脂質を含む食品等
また、本発明は、上記脂肪酸又は脂質を含む食品を提供する。本発明の脂肪酸又は脂質は、常法に従って、例えば、油脂を含む食品、工業原料(化粧料、医薬(例えば、皮膚外用薬)、石鹸等の原料)の製造等の用途に使用することができる。化粧料(組成物)又は医薬(組成物)の剤型としては、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をあげることができるが、これらに限定されない。また、食品の形態としては、カプセル等の医薬製剤の形態、又はタンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等に本発明の脂肪酸及び脂質が配合された自然流動食、半消化態栄養食、及び成分栄養食、ドリンク剤、経腸栄養剤等の加工形態があげられる。
さらに、本発明の食品の例としては、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用食品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人用食品等があげられるが、これらに限定されない。本明細書においては、食品とは、固体、流動体、及び液体、並びにそれらの混合物であって、摂食可能なものの総称をいう。
栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強化されている食品をいう。健康食品とは、健康的な又は健康によいとされる食品をいい、栄養補助食品、自然食品、ダイエット食品等が含まれる。機能性食品とは、体の調節機能を果たす栄養成分を補給するための食品をいい、特定保健用途食品と同義である。幼児用食品とは、約6歳までの子供に与えるための食品をいう。老人用食品とは、無処理の食品と比較して消化及び吸収が容易であるように処理された食品をいう。乳児用調製乳とは、約1歳までの子供に与えるための調製乳をいう。未熟児用調製乳とは、未熟児が生後約6ヶ月になるまで与えるための調製乳をいう。
これらの食品としては、肉、魚、ナッツ等の天然食品(油脂で処理したもの);中華料理、ラーメン、スープ等の調理時に油脂を加える食品;天ぷら、フライ、油揚げ、チャーハン、ドーナッツ、かりん糖等の熱媒体として油脂を用いた食品;バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、即席ラーメン、キャラメル、ビスケット、クッキー、ケーキ、アイスクリーム等の油脂食品又は加工時に油脂を加えた加工食品;おかき、ハードビスケット、あんパン等の加工仕上げ時に油脂を噴霧又は塗布した食品等をあげることができる。しかしながら、本発明の食品は、油脂を含む食品に限定されるわけではなく、例えば、パン、麺類、ごはん、菓子類(キャンデー、チューインガム、グミ、錠菓、和菓子)、豆腐及びその加工品等の農産食品;清酒、薬用酒、みりん、食酢、醤油、みそ等の発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ等の畜産食品;かまぼこ、揚げ天、はんぺん等の水産食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶等があげられる。
本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いた菌株の評価・選択方法
本発明はまた、本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価や選択を行う方法を提供する。具体的には以下のとおりである。
(1)評価方法
本発明の一態様として、本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価を行う方法があげられる。本発明の上記評価方法としては、まず、本発明の塩基配列に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検菌株である脂質産生菌株の本発明の上記活性について評価する方法があげられる。このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、国際特許出願パンフレットWO01/040514号、特開平8−205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について簡単に説明する。
まず、被検菌株のゲノムを調製する。調製方法は、Hereford法や酢酸カリウム法など、いかなる公知の方法をも用いることができる(例えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p130 (1990)参照)。
本発明の塩基配列、好ましくは、配列番号9又は10に基づいてプライマー又はプローブを設計する。上記プライマー又はプローブは本発明の塩基配列のいずれの部分をも用いることができ、またその設計は公知の手法を用いて行うことができる。プライマーとして用いるポリヌクレオチドの塩基数は、通常、10塩基以上であり、15〜25塩基であることが好ましい。また、挟み込む部分の塩基数は、通常、300〜2000塩基が適当である。
上記で作製したプライマー又はプローブを用いて、上記被検菌株のゲノム中に本発明の塩基配列と特異的な配列が存在するか否かを調べる。本発明の塩基配列と特異的な配列の検出は、公知の手法を用いて行うことができる。例えば、本発明の塩基配列に特異的配列の一部又は全部を含むポリヌクレオチド又は上記塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを一つのプライマーとして用い、もう一方のプライマーとしてこの配列よりも上流あるいは下流の配列の一部又は全部を含むポリヌクレオチド、又は上記塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて、例えば、PCR法等によって被検菌株の核酸を増幅し、増幅物の有無、増幅物の分子量の大きさなどを測定することができる。
本発明の方法に適するPCR法の反応条件は、特に限定されないが、例えば、以下の条件があげられる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃、
サイクル数:10回以上
などの条件である。得られた反応生成物であるDNA断片はアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等により分離して、増幅産物の分子量を測定することができる。これにより、増幅産物の分子量が本発明の塩基配列と特異的な領域に相当する核酸分子を含む大きさか否かを確認することにより、被検菌株の本発明の上記活性を予測又は評価することができる。また、上記増幅産物の塩基配列を上記方法等で解析することによって、さらに本発明の上記活性をより正確に予測又は評価することができる。なお、本発明の上記活性の評価方法は、上記のとおりである。
また、本発明の上記評価方法としては、被検菌株を培養し、配列番号9又は10等の本発明の塩基配列がコードするACLの発現量を測定することによって、被検菌株の本発明の上記活性を評価することもできる。なお、ACLの発現量は、被検菌株を適当な条件で培養し、ACLのmRNA又はタンパク質を定量することにより測定できる。mRNA又はタンパク質の定量は、公知の手法を用いて行うことができる。mRNAの定量は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRによって、タンパク質の定量は、例えば、ウエスタンブロッティングによって行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1994-2003)。また、上記活性の評価方法として、本発明のACLが産生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法をあげることもできる。脂肪酸組成物の組成の測定方法は上記のとおりである。
(2)選択方法
本発明の他の態様として、本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いて、脂質生産菌の選択を行う方法があげられる。本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養し、配列番号9又は10等の本発明の塩基配列がコードするACLの発現量を測定して、目的とする発現量の菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。また、基準となる菌株を設定し、この基準菌株と被検菌株を各々培養し、各菌株の前記発現量を測定し、基準菌株と被検菌株の発現量を比較して、所望の菌株を選択することもできる。具体的には、例えば、基準菌株及び被検菌株を適当な条件で培養し、各菌株の発現量を測定し、基準菌株よりも被検菌株の方が高発現、又は低発現である被検菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。所望の活性には、上記のように、ACLの発現量及びACLが産生する総脂肪酸量を測定する方法があげられる。
また、本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養して、本発明の上記活性が高いか又は低い菌株を選択することにより、所望の活性を有する被検菌株を選択することもできる。所望の活性には、上記のように、ACLの発現量及びACLが産生する総脂肪酸量を測定する方法があげられる。
被検菌株又は基準菌株としては、例えば、上記の本発明のベクターを導入した菌株、上記本発明の核酸の発現が抑制された菌株、突然変異処理が施された菌株、自然変異した菌株などを用いることができるがこれらに限定されない。なお、本発明のACL活性は、例えば本明細書中の「本発明のATP:クエン酸リアーゼをコードする核酸」の項目で記載した方法によって測定することが可能である。突然変異処理としては、例えば、紫外線照射や放射線照射などの物理的方法、EMS(エチルメタンスルホネート)、N−メチル−N−ニトロソグアニジンなどの薬剤処理による化学的方法などがあげられる(例えば、大嶋泰治編著、生物化学実験法39 酵母分子遺伝学実験法、p.67−75、学会出版センターなど参照)が、これらに限定されない。
なお、本発明の基準菌株、被検菌株として用いる菌株としては、上記の脂質生産菌又は酵母等があげられるが、これらに限定されない。具体的には、基準菌株、被検菌株は、異なる属や種や属するいかなる菌株を組み合わせて用いてもよく、被検菌株は1又はそれ以上の菌株を同時に用いてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
(1)EST解析
M. alpina 1S−4株を100mlの培地(1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、3日間28℃で前培養した。10l培養槽(Able Co.,東京)に5lの培地(1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1% NaSO、0.05% CaCl・2HO、0.05% MgCl・6HO、pH6.0)を入れ、前培養物を全量植菌し、300rpm、1vvm、26℃の条件で8日間通気攪拌培養した。培養1、2、及び3日目に各々2%、2%、及び1.5%相当のグルコースを添加した。培養1、2、3、6、及び8日目の各ステージに菌体を回収し、塩酸グアジニン/CsCl法でトータルRNAを調製した。Oligotex-dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ)を用いて、トータルRNAからpoly(A) RNAの精製を行った。各ステージのcDNAライブラリーを、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE)を用いて作製し、cDNAの5’側からのワンパスシーケンス解析(8000クローン×5ステージ)を行った。得られた配列をクラスタリングした。その結果、約5000の配列を得た。
(2)ATP:クエン酸リアーゼ遺伝子ホモログの探索
EST解析で得られた塩基配列をGENEBANKに登録されているアミノ酸配列に対して相同性検索プログラムであるBLASTXで検索し、ATP:クエン酸リアーゼ遺伝子のホモログを抽出した。その結果、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4の4つのACLホモログ配列を見出した。配列番号1と3は、相同性があり、Neurospora crassa由来のATP:クエン酸リアーゼ サブユニット1様の推定タンパク質の同じ領域に、また配列番号2と4も相同性があり、Sordaria macrospora由来のATP:クエン酸リアーゼ サブユニット1様の推定タンパク質の同じ領域にヒットしていた。すなわち、本菌株は少なくとも2つ以上のATP:クエン酸リアーゼホモログを有すると考えられた。各配列を構成するクローンの数と、それが得られたライブラリーの関係を表2に示す。
Figure 0005451398
(1)ACLホモログのクローニング
配列番号1〜4のいずれにも、ACLをコードすると考えられるCDSが存在しなかったため、これらの遺伝子の全長をコードするcDNAをクローン化するために各々の配列に基づき、以下のとおりプライマーを作製した。
配列番号2に基づき設計したプライマー
プライマー422-1:GATACCGTCGTCAACTTTGCCTC(配列番号18)
プライマー422-2:CATCTTGCAGTTGGGGTCCCGCT(配列番号19)
配列番号4に基づき設計したプライマー
プライマー424-1:GTTGACACCGTGGTGAACTTTGCC(配列番号20)
プライマー424-2:GCATCTTGCACCCGGATCCTTCTC(配列番号21)
これらのプライマーを用いて、各々配列番号2及び4を構成するESTを含むcDNAライブラリーを鋳型として、ExTaq(タカラバイオ)を用いてPCR反応を行った。得られたDNA断片をTOPO-TA cloning Kit(INVITROGEN CORPORATION)を用いてTA−クローニングを行い、各々のインサート部分の塩基配列を決定した。
その結果、配列番号2の第3番目から443番目、配列番号4の第6番目から第449番目の塩基配列を含むDNA断片が各々クローン化されたことを確認し、これらのプラスミドを各々pCR−422−P及びpCR−424−Pとした。
次に、これらのプラスミドを各々鋳型として、上記プライマーを用いてPCR反応を行った。反応には、ExTaq(タカラバイオ)を用いたが、添付のdNTPミックスの代わりにPCRラベリングミックス(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて、増幅されるDNAをジゴキシゲニン(DIG)ラベルし、cDNAライブラリーのスクリーニングに用いるプローブを作製した。このプローブを用いて、EST解析でそれぞれの配列を構成するESTを得たcDNAライブラリーをスクリーニングした。
ハイブリダイゼーションの条件は、次のとおりである。
バッファー:5×SSC、1%SDS、50mM Tris−HCl(pH7.5)、50%ホルムアミド;
温度:42℃(一晩);
洗浄条件:0.2× SSC、0.1%SDS溶液中(65℃)で、20分間×3回;
検出は、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて行った。スクリーニングによって得られたファージクローンから、in vivoエキシジョンにより、プラスミドを切り出し、インサート部分の塩基配列を決定した。それぞれのプローブでのスクリーニングで得られたインサート部分が最長のプラスミドをそれぞれpB−ACL1及びpB−ACL2とした。pB−ACL1、pB−ACL2のインサート部分の塩基配列をそれぞれ配列番号5、配列番号6及び図1、図2に示した。配列番号5には3540bpからなるCDS(配列番号7)が含まれており、また、配列番号6には3525bpからなるCDS(配列番号8)が含まれていた。すなわち、それぞれ、ATP:クエン酸リアーゼホモログの全長をコードしているcDNAが得られたと考えられた。これらの遺伝子をそれぞれ、MaACL1、MaACL2と命名した。これらの遺伝子によってコードされるタンパク質(MaACL1p及びMaACL2p)の推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号11及び配列番号12に示した。
(2)配列解析
MaACL1遺伝子とMaACL2遺伝子は、相同性があり、CDSで比較すると、同一性は79.1%であった(図3)。また、推定アミノ酸配列を比較すると、同一性は87.1%であった(図4)。一方、NCBIのタンパク質配列データベース(nr)に対して、Blast検索したところ、最も同一性の高かったのは、担子菌U. maydis由来のACL様推定タンパク質(gi_46096782)であり、アミノ酸配列の同一性はMaACL1が61.6%、MaACL2が61.9%であった。また、マウス(gi_29293809)、ヒト(gi_38569421)、ショウジョウバエ(gi_28372804)、線虫(gi_17551266)など、動物由来のACLもしくはACL様推定タンパク質配列とも、より低いが一定の同一性を示した(図5)。
(1)酵母発現ベクターの構築
MaACL1及びMaACL2を酵母で発現させるために、以下のとおり酵母発現ベクターを構築した。まず、プラスミドpB−ACL1を鋳型として、プライマーACL1F−EX、プライマーACL1R−HSにより、ExTaq(タカラバイオ) を用いてをおこなった。
プライマーACL1F-EX:GAATTCTCTAGAatgtctgctaaagccgttcgcg(配列番号22)
プライマーACL1R-HS:AAGCTTGTCGACTTAGGCCTTCTTGTTGATCG(配列番号23)
PCR産物を制限酵素EcoRIとHindIIIで消化した。得られたDNA断片を、ベクターpUC18のEcoRI−HindIIIサイトに挿入して、プラスミドpUC−ACL1を得た。これを制限酵素EcoRIとSalIで消化して得られた約3.5kbpののDNA断片をベクターpYE22m (Biosci. Biotech. Biochem., 59, pp1221-1228, (1995))のEcoRI−SalIサイトに挿入し、プラスミドpYEMaACL1を得た。一方プラスミド、pB−ACL2を、制限酵素NotIとSalIで消化、又は制限酵素SalIとKpnIで消化し、それぞれ約2.7kbpと約1kbpのDNA断片を得た。pYE22mを制限酵素EcoRIで消化し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ)で末端を平滑化した後、NotIリンカー(pd(GCGGCCGC))を挿入し、ベクターpYE22mNを得た。このベクターpYE22mNを制限酵素NotIとKpnIで消化し、先に得られたACL2のNotI−SalI断片とSalI−KpnI断片と連結し、プラスミドpYEMaACL2を得た。
(2)酵母の形質転換
プラスミドpYE22m、pYEMaACL1又はpYEMaACL2を用いて酢酸リチウム法により、酵母Saccharomyces cerevisiae EH13−15株(trp1, MATα)(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30, 515-520, (1989))に形質転換した。形質転換株は、SC−Trp(1Lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20gアミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとして選抜した。
(1)酵母の培養
各々のベクターでの形質転換株のうち任意の2株ずつ(c−1株、c−2株、MaACL1−1株、MaACL1−2株及びMaACL2−1株、MaACL2−2株)を選択して、以下の条件で培養した。すなわち、前培養として、SC−Trp培地10mlに酵母をプレートから1白金耳植菌し、30℃で2日間振とう培養を行った。本培養は、SC−Trp培地100mlに前培養液を1ml添加し、30℃で1日間振とう培養を行った。
(2)酵素液の調製
培養液を遠心分離により集菌し、1/2量の滅菌水で洗浄した。抽出バッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、10mM DTT、1mM PMSF) 5mlで懸濁し、フレンチプレスを用いて16kPaで菌体を破砕した。20,000xg、4℃で10分間遠心分離し、上清を回収した。Shehadex G-25を充填したPD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社)に供し、溶出バッファー(10mM リン酸ナトリウム (pH7.4)、1mM MgCl、0.1mM EDTA、1mM DTT)にて溶出し、酵素液とした。
(3)ACL活性測定
ACL活性は、下記のACLによる反応によって生じるオキザロ酢酸量を、リンゴ酸デヒドロゲナーゼによる反応により減少するNADH量をA340の変化(6.22mM−1cm−1)。を測定することによって求めた。
Figure 0005451398
反応液の組成は、10mM Tris−HCl(pH8.4)、10mM MgCl、1mM DTT、10mM ATP、10mM クエン酸、0.2mM CoA、6ユニット リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、0.1mM NADH、50μl 酵素液、全量を1mlとした。CoA添加で反応を開始した。反応は28℃で行った。
結果を表3に示す。c−1株、c−2株と比べて、MaACL1−1株、MaACL1−2株及びMaACL2−1株、MaACL2−2株では、ACL活性が高く、MaACL1遺伝子及びMaACL2遺伝子の産物は、ACL活性を有することが示唆された。
Figure 0005451398
次に、MaACL1のMg2+濃度依存性を調べた。すなわち、上記ACL反応液において、MgCl濃度を5mM、10mM、20mM、40mMにして、同様に測定した。MgCl濃度10mMのときの活性を1とした相対活性を、図6に示した。
図6に示されるように、ACL1は、ATP:クエン酸:Mg2+の比がおおむね1:1:1のとき、最大活性を示した。
(1)モルティエレラのゲノムライブラリーの構築
M. alpina 1S−4株を、100mlの液体培地(グルコース1%、酵母エキス0.5%、pH6.0)に植菌し、28℃で4日間振とう培養した。フィルターろ過により菌体を集め、CTAB法によりゲノムDNAを抽出した。
得られたゲノムDNA約200μgを制限酵素Sau3AIで、切断DNAの分布の中心が20kb付近になるよう、部分分解した。得られたDNA断片を10%−40%のショ糖密度勾配遠心(ローターSW28(Beckman)、25,000rpm、10℃、24時間)を行い、AUTOMATIC LIQUID CHARGER(ADVANTEC社)とMICRO TUBE PUMP(EYELA社)を用いて、1mlずつ分画した。20kbp付近に分布の中心があるフラクションを精製した。こうして得られたゲノムDNA断片をλBlueSTAR/BamHIベクターキット(NOVAGEN社)を用いて、ゲノムライブラリーを作製した。
(2)URA5ゲノムDNAのクローニング
マーカー遺伝子として、モルティエレラ由来のURA5遺伝子を用いるために、当該遺伝子のプロモーター及びターミネーター領域を含むゲノムDNAを以下のようにしてクローン化した。すなわち、モルティエレラ由来URA5遺伝子のcDNA配列(Biosci Biotechnol Biochem., 68, pp277-285(2004))をもとにプローブを作製し、モルティエレラのゲノムライブラリーからスクリーニングを行い、当該遺伝子を含む約2.1kbpの塩基配列を決定した(配列番号13)。
(3)GAPDHホモログゲノムDNAのクローニング
モルティエレラで導入遺伝子を構成的に高発現させるために、多くの生物で構成的に高発現していることが知られるグリセロアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子のホモログをクローン化した。実施例1のESTの中に見い出したGAPDHホモログ配列(配列番号14)を元にプライマー:ATGACCATCAAGATCGGCATCA(配列番号24)とプライマー:TTAAGCATGATCCTTCTTGGCCを(配列番号25)作製した。これらのプライマーを用い、モルティエレラのcDNAを鋳型として、実施例2と同様の方法でプローブを作製し、ゲノムライブラリーからのスクリーニングを行い、GAPDHホモログを含む約3kbpの塩基配列を決定した(配列番号15)。
モルティエレラ発現ベクターの構築
M. alpinaのGAPDHの構造遺伝子上流0.9kbの領域を
プライマーAAGCTTGATCACGTCGGGTGATGAGTTGCTGTTGAC(配列番号26)、
プライマーGAATTCGATGTTGAATGTGTGGTGTG(配列番号27)
をもちいて、また下流0.5kbの領域を
プライマーTCTAGATAAGAAAAGGGAGTGAATCG(配列番号28)、
プライマーGCGGCCGCGATCCATGCACGGGTCCTTC(配列番号29)を用いて、それぞれPCRで増幅し、GAPDHプロモーター(配列番号16)、GAPDHターミネーター(配列番号17)をクローン化した。これらをそれぞれプライマー上に付加したHindIIIとEcoRI及びXbaIとNotIで消化し、pBluescriptII SK-(Stratagene)上のHindIII/EcoRIサイトとXbaI/NotIサイトにそれぞれ挿入した。さらに、このプラスミドのApaIサイトを平滑化し、プラスミドpD4(Appl Environ Microbiol., 66, pp4655-4661 (2000))をXbaIとHindIII消化後平滑化した18SrDNA(0.9kb)を組み込み、プラスミドpBGptRを作製した。M. alpinaのUra5遺伝子のプロモーター・ターミネーターを含んだゲノムDNAのSalI消化断片(2.1kb)をpBGptRのXhoIサイトに挿入してベクターpH001を作製した。さらに、GAPDHプロモーターとターミネーター間にPUFA有用遺伝子を導入しやすくするためのマルチクローニングサイトを挿入するため、pH001のGAPDHプロモーターの5’末端側のHindIIIサイトとGAPDHターミネーターの3’末端側のNotIサイトを各制限酵素消化後平滑化したあと、セルフライゲションすることによってHindIIIとNotIのサイトを2段階で破壊しベクターpH002を構築した。マルチクローニングサイト作製用オリゴヌクレオチドの
SC/MCS-F2:5’-ctagcgcggccgcctcgagaagcttcccggggcatgcctgcagtctagag(配列番号30)と
SC/MCS-R2:5’-aattctctagactgcaggcatgccccgggaagcttctcgaggcggccgcg(配列番号31)を
相補的にアニーリングさせて作出したEcoRI/NheI突出断片をpH002のEcoRI/XbaIサイトに挿入し、ベクターpH003を構築した。ベクターpH003では、マルチクローニングサイトとしてEcoRI・XbaI・PstI・SphI・SmaI・HindIII・XbaI・NotIが使用可能であった。次に、pUC19のEcoRIサイトとHindIIIサイトのそれぞれの外側に2箇所、8塩基認識の制限酵素AscIサイトを導入し、AscI消化でインサート領域を全体を切り出せるベクターpUCAAを構築した。このpUCAAをEcoRI/HindIII消化後平滑化したところに、pH003をBssHII部分消化して得られるインサート断片(4.4kb)を平滑化したものを挿入し、ベクターpH004を作製した。pH004をEcoRIで部分消化後平滑化したものをライゲーションして、BssHIIに隣接するEcoRIサイトを破壊し、セルフクローニング用の基本ベクターとなるpDuraSCを構築した。
MaACL1及びMaACL2をモルティエレラで高発現させるために、以下のようにモルティエレラ発現ベクターを構築した。プラスミドpUC−ACL1を制限酵素XbaIとHindIIIで消化して得られた約3.5kbpのDNA断片を、ベクターpDuraSCのXbaI−SalIサイトに挿入し、プラスミドpDuraSC−ACL1を構築した。一方、ベクターpDuraSCを制限酵素EcoRIで消化しBlunting Kitで末端を平滑化したのちXhoIで消化したものと、プラスミドpB−ACL2を制限酵素NotIで消化しBlunting Kitで末端を平滑化したのちXhoIで部分分解して得られた約3.5kbpの断片を連結し、プラスミドpDuraSC−ACL2を構築した。
モルティエレラの形質転換
プラスミドpDuraSC−ACL1又はプラスミドpDuraSC−ACL2をもちいて、M. alpinaより特許文献(WO2005019437「脂質生産菌の育種方法」)方法にしたがって誘導したウラシル要求性株Δura−3を宿主としてパーティクルデリバリー法で形質転換を行った。形質転換株の選択には、SC寒天培地(Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco)0.5%、硫酸アンモニウム0.17%、グルコース2%、アデニン0.002%、チロシン0.003%、メチオニン0.0001%、アルギニン0.0002%、ヒスチジン0.0002%、リジン0.0004%、トリプトファン0.0004%、スレオニン0.0005%、イソロイシン0.0006%、ロイシン0.0006%、フェニルアラニン0.0006%、寒天2%)を用いた。
形質転換モルティエレラの評価
(1)プラスミドpDuraSC−ACL1による形質転換株
得られた形質転換株を、GY培地(グルコース2%、酵母エキス1%)4mlに植菌し、28℃で3日間もしくは4日間振とう培養を行った。菌体をろ過により回収し、RNeasy plant kit(QIAGEN)を用いてRNAを抽出した。スーパースクリプトファーストストランドシステム for RT-PCR(インビトロジェン)によりcDNAを合成し、つづいて、プライマーGCGTCATCCCCACCACTGTT(配列番号32)、プライマーGCTGGCGGGAGGAGTGCCAGCACG(配列番号33)を用いてRT−PCRを行った。
その結果、それぞれの形質転換株のうち、ACL1発現量が多い株を選抜した。これらの株を、グルコース2%、酵母エキス1%の液体培地に植菌し、28℃にて振とう培養した。培養中の3日目20%グルコース溶液を培養液の20分の1量添加した。培養中の4、6、7、8日目に菌体の一部を回収し、凍結乾燥した。菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出、ヘキサンを留去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行い、菌体あたりの脂肪酸量を定量した。その結果を図7に示す。
以上のように、MaACL1遺伝子を高発現させたモルティエレラ菌株は、野生株と比べて、培養後期の菌体内油脂含有量を高めることができた。
(2)プラスミドpDuraSC−ACL2による形質転換株
得られた形質転換株を、SC寒天培地上で継代培養し、生育の良い株を9株選抜した。さらに、上記選抜した株をGY培地(グルコース2%、酵母エキス1%)4mlに植菌し、28℃で4日間振とう培養を行った。菌体をろ過により回収し、凍結乾燥した。乾燥菌体の一部(約10−20mg程度)をとり、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去して、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。その結果、菌体内脂肪酸含有率、総脂肪酸中のアラキドン酸比率の高い株を選抜し、MaACL2#1とMaACL2#2とした。
これらの株をGY培地4mlに植菌し、28℃で4日間振とう培養を行った。菌体をろ過により回収し、RNeasy plant kit(QIAGEN)を用いてRNAを抽出した。スーパースクリプトファーストストランドシステム for RT-PCR(インビトロジェン)によりcDNAを合成した。導入したコンストラクトからの各遺伝子の発現を確認するため、上記cDNAを鋳型として、以下のプライマー:
プライマーMaGAPDHpfw:CACACCACACATTCAACATC(配列番号34);及び
プライマーACL2-R5:CGAAGCCGGCAAAGGCGGCAGTCG(配列番号35);
の組み合わせで、ExTaq(タカラバイオ)を用いて、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を1サイクルとして、25サイクルのPCR反応を行った。その結果、これらの株において導入コンストラクトからのMaACL2遺伝子の発現が確認できた。
さらに、この2株と1S−4株をGY培地4mlに植菌し(n=3)、28℃、125rpmで振とう培養した。培養3日目に、20%グルコースを200μl添加し、さらに6日目まで培養した。6日目に菌体の全量を濾過により回収し、凍結乾燥した。乾燥菌体の一部(約10−20mg程度)をとり、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去して、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。菌体内の脂肪酸含有率と、培地あたりのアラキドン酸生産量を、それぞれ以下の表4および表5にまとめた。
Figure 0005451398
Figure 0005451398
以上のように、MaACL2遺伝子を高発現させたモルティエレラ菌株において、野生型と比べて、菌体内脂肪酸含有率及び培地あたりのアラキドン酸生産量を高めることができた。
本発明のACL遺伝子は、脂肪酸や脂質の生産能の向上を図ることができるため、微生物や植物中での高度不飽和脂肪酸の生産性を向上させるものとして、好ましい。それにより、従来よりも安価に効果を有する脂肪酸又は脂質を提供できるため、食品、化粧料、医薬品、石鹸等に適用できるものとして有用である。
配列番号18:プライマー
配列番号19:プライマー
配列番号20:プライマー
配列番号21:プライマー
配列番号22:プライマー
配列番号23:プライマー
配列番号24:プライマー
配列番号25:プライマー
配列番号26:プライマー
配列番号27:プライマー
配列番号28:プライマー
配列番号29:プライマー
配列番号30:プライマー
配列番号31:プライマー
配列番号32:プライマー
配列番号33:プライマー
配列番号34:プライマー
配列番号35:プライマー

Claims (12)

  1. 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
    (a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1〜100個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
    (b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と0.1×SSC、65℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
    (c)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
    (d)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
    (e)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と0.1×SSC、65℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
  2. 以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項1に記載の核酸。
    (a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
    (b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と0.1×SSC、65℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
    (c)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
  3. 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
    (a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列。
    (b)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列。
    (c)配列番号5又は配列番号6で示される塩基配列。
  4. 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
    (a)配列番号11又は配列番号12において1〜100個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
    (b)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
  5. 配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
  6. 請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸を含有する組換えベクター。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸が導入された形質転換体。
  8. 請求項6記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
  9. 請求項6に記載のベクターを導入することによって、脂肪酸生産能が向上した請求項8に記載の形質転換体。
  10. 形質転換体が、脂質生産菌であることを特徴とする請求項7〜9いずれか記載の形質転換体。
  11. 脂質生産菌が、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)であることを特徴とする請求項10記載の形質転換体。
  12. 請求項7〜11のいずれかに記載の形質転換体を培養して得られる培養物から、脂肪酸又は脂質を採取することを特徴とする、前記脂肪酸又は脂質の製造方法。
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