JP5451398B2 - 新規なatp:クエン酸リアーゼ遺伝子 - Google Patents
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Description
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(d)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(e)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列。
(b)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号5又は配列番号6で示される塩基配列。
(a)配列番号11又は配列番号12において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
(b)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
本発明のATP:クエン酸リアーゼ(ACL)には、MaACL1及びMaACL2が含まれる。MaACL1及びMaACL2をコードする核酸のcDNA、CDS、ORF及びアミノ酸配列の対応関係を以下の表1に整理して記載した。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
(i) 配列番号11又は12に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号11又は12に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換したアミノ酸配列、
(iii) 配列番号11又は12に示すアミノ酸配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン及びシクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸及び2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン及びグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸及び2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン及び4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン及びホモセリン
G群:フェニルアラニン及びチロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができるが、この場合は、本発明のタンパク質の生物学的機能を保持するために、アミノ酸のヒドロパシー指数(ヒドロパシーアミノ酸指数)を考慮することが好ましい(Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131(1982))。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。本発明の核酸がコードするタンパク質は、本発明の上記活性を有するタンパク質と同等の機能を有する限り、MaACL1又はMaACL2のアミノ酸配列と同一性のあるタンパク質でもよい。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
(i) 配列番号9又は10に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜1050個、1〜750個、1〜700個、1〜650個、1〜600個、1〜550個、1〜500個、1〜450個、1〜400個、1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の塩基が欠失した塩基配列、
(ii) 配列番号9又は10に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜1050個、1〜750個、1〜700個、1〜650個、1〜600個、1〜550個、1〜500個、1〜450個、1〜400個、1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、
(iii) 配列番号9又は10に示す塩基配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜1050個、1〜750個、1〜700個、1〜650個、1〜600個、1〜550個、1〜500個、1〜450個、1〜400個、1〜350個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個さらに好ましくは1〜5個))の他の塩基が付加された塩基配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせた塩基配列であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードしている塩基配列を含む核酸を用いることもできる。
本発明のタンパク質は、配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及び前記タンパク質と同等の機能を有するタンパク質を含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質については、上記のとおりである。「同等の機能を有するタンパク質」とは、上記『本発明のATP:クエン酸リアーゼをコードする核酸』の項で説明したとおり、「本発明の上記活性」を有するタンパク質を意味する。
(a)配列番号11又は配列番号12において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質。
(b)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質。
本発明のACLの核酸は、例えば、適切なプローブを用いてcDNAライブラリーからスクリーニングすることにより、クローニングすることができる。また、適切なプライマーを用いてPCR反応により増幅し、適切なベクターに連結することによりクローニングすることができる。さらに、別のベクターにサブクローニングすることもできる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃、
サイクル数:10回以上
得られたPCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。例えば、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick PCR purification Kits(QIAGEN)、ExoSAP-IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のキットを用いる方法、DEAE−セルロース濾紙を用いる方法、透析チューブを用いる方法等がある。アガロースゲルを用いる場合には、アガロースゲル電気泳動を行い、塩基配列断片をアガロースゲルより切り出して、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick Gel extraction Kits(QIAGEN)、フリーズ&スクイーズ法等により精製することができる。
本発明はまた、本発明のMaACL1及びMaACL2をコードする核酸を含有する組換えベクターを提供する。本発明は、さらに、上記組換えベクターによって形質転換された形質転換体も提供する。
本発明は、上記形質転換体から、脂肪酸又は脂質を製造する方法を提供する。すなわち、上記形質転換体を培養して得られる培養物から脂肪酸又は脂質を製造する方法である。具体的には、以下の方法で製造することができる。しかし、本製造方法に関しては、当該方法に限られず、一般的な公知の他の方法を用いて行うこともできる。
(2)GY培地(2.0%グルコース、1.0%酵母エキス)
培養条件は、宿主の増殖に適し、かつ生成した酵素が安定に保たれるのに適当な条件であればいかなる条件でもよいが、具体的には、嫌気度、培養時間、温度、湿度、静置培養又は振盪培養等の個々の条件を調節することができる。培養方法は、同一条件での培養(1段階培養)でもよく、2以上の異なる培養条件を用いる、いわゆる2段階培養又は3段階培養でもよいが、大量培養をする場合には、培養効率がよい2段階培養等が好ましい。
本発明はまた、本発明のMaACL1又はMaACL2が発現している細胞における脂肪酸及び脂質を提供する。脂肪酸は、遊離脂肪酸でもよいし、トリグリセリド、リン脂質等でもよい。
また、本発明は、上記脂肪酸又は脂質を含む食品を提供する。本発明の脂肪酸又は脂質は、常法に従って、例えば、油脂を含む食品、工業原料(化粧料、医薬(例えば、皮膚外用薬)、石鹸等の原料)の製造等の用途に使用することができる。化粧料(組成物)又は医薬(組成物)の剤型としては、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をあげることができるが、これらに限定されない。また、食品の形態としては、カプセル等の医薬製剤の形態、又はタンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等に本発明の脂肪酸及び脂質が配合された自然流動食、半消化態栄養食、及び成分栄養食、ドリンク剤、経腸栄養剤等の加工形態があげられる。
本発明はまた、本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価や選択を行う方法を提供する。具体的には以下のとおりである。
本発明の一態様として、本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価を行う方法があげられる。本発明の上記評価方法としては、まず、本発明の塩基配列に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検菌株である脂質産生菌株の本発明の上記活性について評価する方法があげられる。このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、国際特許出願パンフレットWO01/040514号、特開平8−205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について簡単に説明する。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃、
サイクル数:10回以上
などの条件である。得られた反応生成物であるDNA断片はアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等により分離して、増幅産物の分子量を測定することができる。これにより、増幅産物の分子量が本発明の塩基配列と特異的な領域に相当する核酸分子を含む大きさか否かを確認することにより、被検菌株の本発明の上記活性を予測又は評価することができる。また、上記増幅産物の塩基配列を上記方法等で解析することによって、さらに本発明の上記活性をより正確に予測又は評価することができる。なお、本発明の上記活性の評価方法は、上記のとおりである。
本発明の他の態様として、本発明のACLをコードする核酸又はACLタンパク質を用いて、脂質生産菌の選択を行う方法があげられる。本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養し、配列番号9又は10等の本発明の塩基配列がコードするACLの発現量を測定して、目的とする発現量の菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。また、基準となる菌株を設定し、この基準菌株と被検菌株を各々培養し、各菌株の前記発現量を測定し、基準菌株と被検菌株の発現量を比較して、所望の菌株を選択することもできる。具体的には、例えば、基準菌株及び被検菌株を適当な条件で培養し、各菌株の発現量を測定し、基準菌株よりも被検菌株の方が高発現、又は低発現である被検菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。所望の活性には、上記のように、ACLの発現量及びACLが産生する総脂肪酸量を測定する方法があげられる。
M. alpina 1S−4株を100mlの培地(1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、3日間28℃で前培養した。10l培養槽(Able Co.,東京)に5lの培地(1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KH2PO4、0.1% Na2SO4、0.05% CaCl2・2H2O、0.05% MgCl2・6H2O、pH6.0)を入れ、前培養物を全量植菌し、300rpm、1vvm、26℃の条件で8日間通気攪拌培養した。培養1、2、及び3日目に各々2%、2%、及び1.5%相当のグルコースを添加した。培養1、2、3、6、及び8日目の各ステージに菌体を回収し、塩酸グアジニン/CsCl法でトータルRNAを調製した。Oligotex-dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ)を用いて、トータルRNAからpoly(A)+ RNAの精製を行った。各ステージのcDNAライブラリーを、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE)を用いて作製し、cDNAの5’側からのワンパスシーケンス解析(8000クローン×5ステージ)を行った。得られた配列をクラスタリングした。その結果、約5000の配列を得た。
EST解析で得られた塩基配列をGENEBANKに登録されているアミノ酸配列に対して相同性検索プログラムであるBLASTXで検索し、ATP:クエン酸リアーゼ遺伝子のホモログを抽出した。その結果、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4の4つのACLホモログ配列を見出した。配列番号1と3は、相同性があり、Neurospora crassa由来のATP:クエン酸リアーゼ サブユニット1様の推定タンパク質の同じ領域に、また配列番号2と4も相同性があり、Sordaria macrospora由来のATP:クエン酸リアーゼ サブユニット1様の推定タンパク質の同じ領域にヒットしていた。すなわち、本菌株は少なくとも2つ以上のATP:クエン酸リアーゼホモログを有すると考えられた。各配列を構成するクローンの数と、それが得られたライブラリーの関係を表2に示す。
配列番号1〜4のいずれにも、ACLをコードすると考えられるCDSが存在しなかったため、これらの遺伝子の全長をコードするcDNAをクローン化するために各々の配列に基づき、以下のとおりプライマーを作製した。
配列番号2に基づき設計したプライマー
プライマー422-1:GATACCGTCGTCAACTTTGCCTC(配列番号18)
プライマー422-2:CATCTTGCAGTTGGGGTCCCGCT(配列番号19)
配列番号4に基づき設計したプライマー
プライマー424-1:GTTGACACCGTGGTGAACTTTGCC(配列番号20)
プライマー424-2:GCATCTTGCACCCGGATCCTTCTC(配列番号21)
これらのプライマーを用いて、各々配列番号2及び4を構成するESTを含むcDNAライブラリーを鋳型として、ExTaq(タカラバイオ)を用いてPCR反応を行った。得られたDNA断片をTOPO-TA cloning Kit(INVITROGEN CORPORATION)を用いてTA−クローニングを行い、各々のインサート部分の塩基配列を決定した。
バッファー:5×SSC、1%SDS、50mM Tris−HCl(pH7.5)、50%ホルムアミド;
温度:42℃(一晩);
洗浄条件:0.2× SSC、0.1%SDS溶液中(65℃)で、20分間×3回;
検出は、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて行った。スクリーニングによって得られたファージクローンから、in vivoエキシジョンにより、プラスミドを切り出し、インサート部分の塩基配列を決定した。それぞれのプローブでのスクリーニングで得られたインサート部分が最長のプラスミドをそれぞれpB−ACL1及びpB−ACL2とした。pB−ACL1、pB−ACL2のインサート部分の塩基配列をそれぞれ配列番号5、配列番号6及び図1、図2に示した。配列番号5には3540bpからなるCDS(配列番号7)が含まれており、また、配列番号6には3525bpからなるCDS(配列番号8)が含まれていた。すなわち、それぞれ、ATP:クエン酸リアーゼホモログの全長をコードしているcDNAが得られたと考えられた。これらの遺伝子をそれぞれ、MaACL1、MaACL2と命名した。これらの遺伝子によってコードされるタンパク質(MaACL1p及びMaACL2p)の推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号11及び配列番号12に示した。
MaACL1遺伝子とMaACL2遺伝子は、相同性があり、CDSで比較すると、同一性は79.1%であった(図3)。また、推定アミノ酸配列を比較すると、同一性は87.1%であった(図4)。一方、NCBIのタンパク質配列データベース(nr)に対して、Blast検索したところ、最も同一性の高かったのは、担子菌U. maydis由来のACL様推定タンパク質(gi_46096782)であり、アミノ酸配列の同一性はMaACL1が61.6%、MaACL2が61.9%であった。また、マウス(gi_29293809)、ヒト(gi_38569421)、ショウジョウバエ(gi_28372804)、線虫(gi_17551266)など、動物由来のACLもしくはACL様推定タンパク質配列とも、より低いが一定の同一性を示した(図5)。
MaACL1及びMaACL2を酵母で発現させるために、以下のとおり酵母発現ベクターを構築した。まず、プラスミドpB−ACL1を鋳型として、プライマーACL1F−EX、プライマーACL1R−HSにより、ExTaq(タカラバイオ) を用いてをおこなった。
プライマーACL1F-EX:GAATTCTCTAGAatgtctgctaaagccgttcgcg(配列番号22)
プライマーACL1R-HS:AAGCTTGTCGACTTAGGCCTTCTTGTTGATCG(配列番号23)
PCR産物を制限酵素EcoRIとHindIIIで消化した。得られたDNA断片を、ベクターpUC18のEcoRI−HindIIIサイトに挿入して、プラスミドpUC−ACL1を得た。これを制限酵素EcoRIとSalIで消化して得られた約3.5kbpののDNA断片をベクターpYE22m (Biosci. Biotech. Biochem., 59, pp1221-1228, (1995))のEcoRI−SalIサイトに挿入し、プラスミドpYEMaACL1を得た。一方プラスミド、pB−ACL2を、制限酵素NotIとSalIで消化、又は制限酵素SalIとKpnIで消化し、それぞれ約2.7kbpと約1kbpのDNA断片を得た。pYE22mを制限酵素EcoRIで消化し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ)で末端を平滑化した後、NotIリンカー(pd(GCGGCCGC))を挿入し、ベクターpYE22mNを得た。このベクターpYE22mNを制限酵素NotIとKpnIで消化し、先に得られたACL2のNotI−SalI断片とSalI−KpnI断片と連結し、プラスミドpYEMaACL2を得た。
プラスミドpYE22m、pYEMaACL1又はpYEMaACL2を用いて酢酸リチウム法により、酵母Saccharomyces cerevisiae EH13−15株(trp1, MATα)(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30, 515-520, (1989))に形質転換した。形質転換株は、SC−Trp(1Lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20gアミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとして選抜した。
各々のベクターでの形質転換株のうち任意の2株ずつ(c−1株、c−2株、MaACL1−1株、MaACL1−2株及びMaACL2−1株、MaACL2−2株)を選択して、以下の条件で培養した。すなわち、前培養として、SC−Trp培地10mlに酵母をプレートから1白金耳植菌し、30℃で2日間振とう培養を行った。本培養は、SC−Trp培地100mlに前培養液を1ml添加し、30℃で1日間振とう培養を行った。
培養液を遠心分離により集菌し、1/2量の滅菌水で洗浄した。抽出バッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、10mM DTT、1mM PMSF) 5mlで懸濁し、フレンチプレスを用いて16kPaで菌体を破砕した。20,000xg、4℃で10分間遠心分離し、上清を回収した。Shehadex G-25を充填したPD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社)に供し、溶出バッファー(10mM リン酸ナトリウム (pH7.4)、1mM MgCl2、0.1mM EDTA、1mM DTT)にて溶出し、酵素液とした。
ACL活性は、下記のACLによる反応によって生じるオキザロ酢酸量を、リンゴ酸デヒドロゲナーゼによる反応により減少するNADH量をA340の変化(6.22mM−1cm−1)。を測定することによって求めた。
M. alpina 1S−4株を、100mlの液体培地(グルコース1%、酵母エキス0.5%、pH6.0)に植菌し、28℃で4日間振とう培養した。フィルターろ過により菌体を集め、CTAB法によりゲノムDNAを抽出した。
マーカー遺伝子として、モルティエレラ由来のURA5遺伝子を用いるために、当該遺伝子のプロモーター及びターミネーター領域を含むゲノムDNAを以下のようにしてクローン化した。すなわち、モルティエレラ由来URA5遺伝子のcDNA配列(Biosci Biotechnol Biochem., 68, pp277-285(2004))をもとにプローブを作製し、モルティエレラのゲノムライブラリーからスクリーニングを行い、当該遺伝子を含む約2.1kbpの塩基配列を決定した(配列番号13)。
モルティエレラで導入遺伝子を構成的に高発現させるために、多くの生物で構成的に高発現していることが知られるグリセロアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子のホモログをクローン化した。実施例1のESTの中に見い出したGAPDHホモログ配列(配列番号14)を元にプライマー:ATGACCATCAAGATCGGCATCA(配列番号24)とプライマー:TTAAGCATGATCCTTCTTGGCCを(配列番号25)作製した。これらのプライマーを用い、モルティエレラのcDNAを鋳型として、実施例2と同様の方法でプローブを作製し、ゲノムライブラリーからのスクリーニングを行い、GAPDHホモログを含む約3kbpの塩基配列を決定した(配列番号15)。
M. alpinaのGAPDHの構造遺伝子上流0.9kbの領域を
プライマーAAGCTTGATCACGTCGGGTGATGAGTTGCTGTTGAC(配列番号26)、
プライマーGAATTCGATGTTGAATGTGTGGTGTG(配列番号27)
をもちいて、また下流0.5kbの領域を
プライマーTCTAGATAAGAAAAGGGAGTGAATCG(配列番号28)、
プライマーGCGGCCGCGATCCATGCACGGGTCCTTC(配列番号29)を用いて、それぞれPCRで増幅し、GAPDHプロモーター(配列番号16)、GAPDHターミネーター(配列番号17)をクローン化した。これらをそれぞれプライマー上に付加したHindIIIとEcoRI及びXbaIとNotIで消化し、pBluescriptII SK-(Stratagene)上のHindIII/EcoRIサイトとXbaI/NotIサイトにそれぞれ挿入した。さらに、このプラスミドのApaIサイトを平滑化し、プラスミドpD4(Appl Environ Microbiol., 66, pp4655-4661 (2000))をXbaIとHindIII消化後平滑化した18SrDNA(0.9kb)を組み込み、プラスミドpBGptRを作製した。M. alpinaのUra5遺伝子のプロモーター・ターミネーターを含んだゲノムDNAのSalI消化断片(2.1kb)をpBGptRのXhoIサイトに挿入してベクターpH001を作製した。さらに、GAPDHプロモーターとターミネーター間にPUFA有用遺伝子を導入しやすくするためのマルチクローニングサイトを挿入するため、pH001のGAPDHプロモーターの5’末端側のHindIIIサイトとGAPDHターミネーターの3’末端側のNotIサイトを各制限酵素消化後平滑化したあと、セルフライゲションすることによってHindIIIとNotIのサイトを2段階で破壊しベクターpH002を構築した。マルチクローニングサイト作製用オリゴヌクレオチドの
SC/MCS-F2:5’-ctagcgcggccgcctcgagaagcttcccggggcatgcctgcagtctagag(配列番号30)と
SC/MCS-R2:5’-aattctctagactgcaggcatgccccgggaagcttctcgaggcggccgcg(配列番号31)を
相補的にアニーリングさせて作出したEcoRI/NheI突出断片をpH002のEcoRI/XbaIサイトに挿入し、ベクターpH003を構築した。ベクターpH003では、マルチクローニングサイトとしてEcoRI・XbaI・PstI・SphI・SmaI・HindIII・XbaI・NotIが使用可能であった。次に、pUC19のEcoRIサイトとHindIIIサイトのそれぞれの外側に2箇所、8塩基認識の制限酵素AscIサイトを導入し、AscI消化でインサート領域を全体を切り出せるベクターpUCAAを構築した。このpUCAAをEcoRI/HindIII消化後平滑化したところに、pH003をBssHII部分消化して得られるインサート断片(4.4kb)を平滑化したものを挿入し、ベクターpH004を作製した。pH004をEcoRIで部分消化後平滑化したものをライゲーションして、BssHIIに隣接するEcoRIサイトを破壊し、セルフクローニング用の基本ベクターとなるpDuraSCを構築した。
プラスミドpDuraSC−ACL1又はプラスミドpDuraSC−ACL2をもちいて、M. alpinaより特許文献(WO2005019437「脂質生産菌の育種方法」)方法にしたがって誘導したウラシル要求性株Δura−3を宿主としてパーティクルデリバリー法で形質転換を行った。形質転換株の選択には、SC寒天培地(Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco)0.5%、硫酸アンモニウム0.17%、グルコース2%、アデニン0.002%、チロシン0.003%、メチオニン0.0001%、アルギニン0.0002%、ヒスチジン0.0002%、リジン0.0004%、トリプトファン0.0004%、スレオニン0.0005%、イソロイシン0.0006%、ロイシン0.0006%、フェニルアラニン0.0006%、寒天2%)を用いた。
(1)プラスミドpDuraSC−ACL1による形質転換株
得られた形質転換株を、GY培地(グルコース2%、酵母エキス1%)4mlに植菌し、28℃で3日間もしくは4日間振とう培養を行った。菌体をろ過により回収し、RNeasy plant kit(QIAGEN)を用いてRNAを抽出した。スーパースクリプトファーストストランドシステム for RT-PCR(インビトロジェン)によりcDNAを合成し、つづいて、プライマーGCGTCATCCCCACCACTGTT(配列番号32)、プライマーGCTGGCGGGAGGAGTGCCAGCACG(配列番号33)を用いてRT−PCRを行った。
得られた形質転換株を、SC寒天培地上で継代培養し、生育の良い株を9株選抜した。さらに、上記選抜した株をGY培地(グルコース2%、酵母エキス1%)4mlに植菌し、28℃で4日間振とう培養を行った。菌体をろ過により回収し、凍結乾燥した。乾燥菌体の一部(約10−20mg程度)をとり、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去して、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。その結果、菌体内脂肪酸含有率、総脂肪酸中のアラキドン酸比率の高い株を選抜し、MaACL2#1とMaACL2#2とした。
プライマーMaGAPDHpfw:CACACCACACATTCAACATC(配列番号34);及び
プライマーACL2-R5:CGAAGCCGGCAAAGGCGGCAGTCG(配列番号35);
の組み合わせで、ExTaq(タカラバイオ)を用いて、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を1サイクルとして、25サイクルのPCR反応を行った。その結果、これらの株において導入コンストラクトからのMaACL2遺伝子の発現が確認できた。
配列番号19:プライマー
配列番号20:プライマー
配列番号21:プライマー
配列番号22:プライマー
配列番号23:プライマー
配列番号24:プライマー
配列番号25:プライマー
配列番号26:プライマー
配列番号27:プライマー
配列番号28:プライマー
配列番号29:プライマー
配列番号30:プライマー
配列番号31:プライマー
配列番号32:プライマー
配列番号33:プライマー
配列番号34:プライマー
配列番号35:プライマー
Claims (12)
- 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1〜100個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と0.1×SSC、65℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(d)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(e)配列番号11又は12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と0.1×SSC、65℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項1に記載の核酸。
(a)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(b)配列番号9又は配列番号10からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と0.1×SSC、65℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
(a)配列番号9又は配列番号10で示される塩基配列。
(b)配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列。
(c)配列番号5又は配列番号6で示される塩基配列。 - 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号11又は配列番号12において1〜100個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
(b)配列番号11又は配列番号12からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ATP:クエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。 - 配列番号11又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸を含有する組換えベクター。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸が導入された形質転換体。
- 請求項6記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
- 請求項6に記載のベクターを導入することによって、脂肪酸生産能が向上した請求項8に記載の形質転換体。
- 形質転換体が、脂質生産菌であることを特徴とする請求項7〜9いずれか記載の形質転換体。
- 脂質生産菌が、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)であることを特徴とする請求項10記載の形質転換体。
- 請求項7〜11のいずれかに記載の形質転換体を培養して得られる培養物から、脂肪酸又は脂質を採取することを特徴とする、前記脂肪酸又は脂質の製造方法。
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