JP5576986B2 - ホスファチジン酸ホスファターゼ遺伝子 - Google Patents

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Description

本出願は、新規なホスファチジン酸ホスファターゼ遺伝子とその利用に関する。
不飽和結合を2箇所以上含有する脂肪酸は、高度不飽和脂肪酸(PUFA:polyunsaturated fatty acid)と総称され、アラキドン酸やジホモγリノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが知られている。この高度不飽和脂肪酸は、動物体内で合成できないものも含まれており、このような高度不飽和脂肪酸については、必須脂肪酸として食物から摂取する必要がある。高度不飽和脂肪酸は広く分布しており、例えば、アラキドン酸は動物の副腎腺や肝臓から抽出した脂質から分離される。しかしながら、動物臓器に含まれる高度不飽和脂肪酸は少量で、動物臓器から高度不飽和脂肪酸を抽出したり分離したりするだけでは、大量に供給するには十分ではなかった。そのため、種々の微生物を培養して高度不飽和脂肪酸を獲得する方法が開発されてきた。中でもモルティエレラ(Mortierella)属微生物は、アラキドン酸等の高度不飽和脂肪酸含有脂質を生産する微生物として知られている。
また、高度不飽和脂肪酸を植物で生産させる試みもなされている。高度不飽和脂肪酸は、トリアシルグリセロール(トリグリセリド、TGともいう)などの貯蔵脂質を構成し、微生物の菌体内もしくは植物種子中に蓄積されることが知られている。
貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールは、生体内で以下のとおり生成される。グリセロール−3−リン酸にグリセロール−3−リン酸アシル基転移酵素によりアシル基が転移されてリゾホスファチジン酸が生じ、リゾホスファチジン酸にリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素によりアシル基が転移されてホスファチジン酸が生じ、ホスファチジン酸がホスファチジン酸ホスファターゼにより脱リン酸化されてジアシルグリセロールが生じ、ジアシルグリセロールにジアシルグリセロールアシル基転移酵素によりアシル基が転移されてトリアシルグリセロールが生じる。
上記系路の中で、ホスファチジン酸(phosphatidic acid、以下「PA」と記載する場合もある。また、1,2−ジアシル−sn−グリセロール−3−リン酸という場合もある。)は、トリアシルグリセロールの前駆体であるとともに、ジアシル型グリセロリン脂質の生合成前駆体である。酵母などではPAとシチジン5’−3リン酸(CTP)からホスファチジン酸シチジルトランスフェラーゼ、によりCDPジアシルグリセロール(CDP−DG)が合成され、種々のリン脂質へと生合成される。
上述したとおり、PAを脱リン酸化してジアシルグリセロール(diacylglycerol、以下「DG」と記載する場合もある。)を生合成する反応は、ホスファチジン酸ホスファターゼ(E.C. 3.1.3.4、phosphatidic acid phosphatase、以下「PAP」と記載する場合もある。)が触媒することが知られている。このPAPは細菌から脊椎動物までのすべての生物で存在することが知られている。
真菌類である酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、2つのタイプのPAPが知られている(非特許文献1、2、7)。一方はMg2+依存性のPAP(PAP1)であり、他方はMg2+非依存性のPAP(PAP2)である。PAP1をコードする遺伝子としては、PAH1遺伝子が知られているが(非特許文献3〜5)、pah1Δ変異株はPAP1活性を有していることから、ほかにもPAP1活性を担う遺伝子があると考えられている。pah1Δ変異株では、核膜やERの膜が異常に拡張し、さらにリン脂質の生合成のキーとなる遺伝子の発現が異常に高まることが知られている(非特許文献6)。
一方、PAP2をコードする遺伝子としては、DPP1遺伝子とLPP1遺伝子が知られており、これらが酵母におけるPAP2活性をほぼ担っている。これらの遺伝子がコードする酵素は基質特異性が広く、ジアシルグリセロールピロホスフェート(DGPP)、リゾホスファチジン酸、スフィンゴイドベースホスフェートやイソプレノイドホスフェートなどにも作用し、脱リン酸化することが知られている。
脂質生産菌であるモルティエレラ アルピナ(Mortierella alpina)では、Mg2+依存性PAP1ホモログとして、MaPAH1.1とMaPAH1.2の2種類が知られている(特許文献1)。また、Mg2+非依存性のPAP2ホモログであるMaPAP1遺伝子が知られている(特許文献2)。
国際公開公報第WO2011/081135号パンフレット 国際公開公報第WO2009/008466号パンフレット
Biochem. Biophys. Acta, 1348, 45-55, 1997 Trends Biochem Sci., 31(12), 694-699, 2006 EMBO J., 24, 1931-1941, 2005, J. Biol. Chem., 281(14), 9210-9218, 2006 J. Biol. Chem., 281(45), 34537-34548, 2006 J. Biol. Chem., 282(51), 37026-37035, 2007 J. Biol. Chem., 284(5), 2593-2597, 2009
これまでにいくつかのPAP遺伝子が報告されているが、宿主細胞に導入して発現させた場合に、当該宿主が産生する脂肪酸組成物の脂肪酸組成を変化させ得ることについて検討された例は少ない。宿主細胞に導入する又は発現させることで、目的とする脂肪酸組成の油脂を製造させたり、目的とする脂肪酸の含有量を増加させたりできるような、新規な遺伝子を導入することが求められている。
本発明の目的は、新規なホスファチジン酸ホスファターゼ遺伝子、およびそれにコードされるタンパク質、ならびにそれら利用法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。まず、脂質生産菌Mortierella alpinaのゲノムを解析し、この中から既知のMg2+非依存性のホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP2)遺伝子と相同性のある配列を抽出した。さらに、PAPをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)全長を取得するため、cDNAライブラリーのスクリーニングあるいはPCRにより全長cDNAをクローニングした。その遺伝子を酵母等の高増殖能を有する宿主細胞に導入して、クローニングしたcDNAによりコードされるタンパク質がホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有することを確認した。それにより、新規なホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)に関する遺伝子のクローニングに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、一態様において、本発明は以下の通りであってよい。
(1)以下の(a)〜(g)のいずれかに記載の核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(f)配列番号4からなる塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
(g)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
(2)以下の(a)〜(g)のいずれかに記載の核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜110個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(f)配列番号4からなる塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
(g)配列番号4からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
(3)以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の核酸。
(a)配列番号1で示される塩基配列又はその部分配列を含む核酸
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列又はその部分配列を含む核酸
(c)配列番号4で示される塩基配列又はその部分配列を含む核酸
(d)配列番号5で示される塩基配列又はその部分配列を含む核酸
(4)ホスファチジン酸ホスファターゼ活性が、炭素数17のアシル基を含有するホスファチジン酸よりも炭素数18のアシル基を含有するホスファチジン酸に対する基質特異性が高いことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の核酸。
(5)以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号2において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
(6)以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号2において1〜110個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
(7)ホスファチジン酸ホスファターゼ活性が、炭素数17のアシル基を含有するホスファチジン酸よりも炭素数18のアシル基を含有するホスファチジン酸に対する基質特異性が高いことを特徴とする、(5)又は(6)に記載のタンパク質。
(8)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(9)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を含有する組換えベクター。
(10)(9)に記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
本発明は、新規なPAP遺伝子、及びそれにコードされるタンパク質、ならびにそれらの利用法を提供する。本発明のPAPは、PAPを導入していない宿主が産生する脂肪酸組成物と比較して、組成が異なる脂肪酸組成物を宿主中に産生可能であることが期待される。それにより、所望の特性や効果を有する脂質を提供できるため、食品、化粧料、医薬品、石鹸等に適用できるものとして有用である。
図1−1は、MaPAP2.2のゲノム配列およびCDSの塩基配列を示す。 図1−2は、図1−1の続きである。 図2は、MaPAP2.2のアミノ酸配列と、オオキツネタケ由来の推定タンパク質および酵母由来のScDPP1(YDR284C:アクセッション番号 AAS56070))のアミノ酸配列のアラインメントである。 図3は、MaPAP2.2のアミノ酸配列と、Mortierella alpina由来のMg2+非依存性PAP(PAP2)として既知のMaPAP1(WO2009/008466)のアミノ酸配列のアラインメントである。二重下線は、Mg2+非依存性のホスファチジン酸ホスファターゼ2型(PAP2)ファミリー酵素の3つの保存領域(N末端側より順に、ドメイン1、ドメイン2、及びドメイン3)を示す。*は、PAP活性に必至なアミノ酸を示す。 図4は、MaPAP2.2の18:2−PAを18:2−DGに変換する活性に関し、Mg2+依存性について検討した結果を示すグラフである(n=1)。Aは、Mg2+を添加した場合の結果を示す。Bは、EDTAを添加した場合(Mg2+不含)の結果を示す。縦軸は、DG画分中に見出された18:2の、粗酵素液のタンパク質あたりの量(μg/mg・タンパク質)を示す。 図5は、Mg2+不含の反応液における、MaPAP2.2(A)及びMaPAP1(B)の18:2−PAを18:2−DGに変換する活性について検討した結果を示すグラフである(n=3)。縦軸は、DG画分中に見出された18:2の、粗酵素液のタンパク質あたりの量(μg/mg・タンパク質)を示す。 図6Aは、MaPAP2.2を含む反応液およびコントロールにおいて、基質であるホスファチジン酸を添加しない場合の18:1−DGの量を検討した結果を示すグラフである(n=3)。図6Bは、MaPAP2.2を含む反応液およびコントロールにおいて、基質として18:1−PAを添加した場合の、反応後の18:1−DGの量を検討した結果を示すグラフである(n=3)。縦軸はいずれも、DG画分中に見出された18:1の、粗酵素液のタンパク質あたりの量(μg/mg・タンパク質)を示す。 図7は、MaPAP2.2を含む反応液およびコントロールにおいて、基質として17:0−PAを添加した場合の、反応後の17:0−DGの量を検討した結果を示すグラフである(n=3)。縦軸はいずれも、DG画分中に見出された17:0の、粗酵素液のタンパク質あたりの量(μg/mg・タンパク質)を示す。
本発明は、ホスファチジン酸を脱リン酸化して、ジアシルグリセロールを生成させることを特徴とする、Mortierella属由来の新規なホスファチジン酸ホスファターゼ遺伝子、それにコードされるタンパク質、およびそれらの利用法に関する。
ホスファチジン酸ホスファターゼは、ホスファチジン酸を脱リン酸化して、ジアシルグリセロールを生成する反応を触媒する酵素である。本発明のPAPの基質は、通常、ホスファチジン酸であるが、これに限定されない。
ホスファチジン酸ホスファターゼをコードする核酸
本発明のホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)には、MaPAP2.2及びその変異体が含まれる。MaPAP2.2をコードする核酸のcDNA、CDS、ORF及びアミノ酸配列の対応関係を以下の表1に整理して記載した。
つまり、MaPAP2.2に関連する配列としては、MaPAP2.2のアミノ酸配列である配列番号2、MaPAP2.2のORFの領域を示す配列である配列番号1、そして、そのCDSの領域を示す配列である配列番号3、及びそのcDNAの塩基配列である配列番号5があげられる。このうち、配列番号1は配列番号5の第75〜1163番目の塩基配列に相当し、配列番号3は配列番号5の第75〜1166番目の塩基配列に相当する。また、MaPAP2.2をコードするゲノム塩基配列として、配列番号4があげられる。配列番号4のゲノム配列は、エキソン3個とイントロン2個からなっており、エキソン領域は配列番号4の第1〜207番目、第445〜582番目、第889〜1632番目である。
本明細書において核酸とは、一本鎖及び二本鎖のDNAのほか、そのRNA相補体も含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。DNAには、例えば、ゲノムDNAや、前記ゲノムDNAに対応するcDNA、化学的に合成されたDNA、PCRにより増幅されたDNA、及びそれらの組み合わせや、DNAとRNAのハイブリッドがあげられるがこれらに限定されない。
本発明の核酸の好ましい態様としては、(a)配列番号1で示される塩基配列、(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、(c)配列番号5で示される塩基配列、等を含む核酸があげられる。
上記塩基配列を得るためには、PAP活性を有する生物のESTやゲノムDNAの塩基配列データから、既知のPAP活性を有するタンパク質と相同性のあるタンパク質をコードする塩基配列を探索することもできる。PAP活性を有する生物としては、脂質生産菌が好ましく、脂質生産菌としてはM. alpinaがあげられるが、これに限定されない。
EST解析を行う場合には、まず、cDNAライブラリーを作製する。cDNAライブラリーの作製方法については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー作製キットを用いてもよい。本発明に適するcDNAライブラリーの作製方法としては、例えば以下のような方法があげられる。すなわち、脂質生産菌であるM. alpinaの適当な株を適当な培地に植菌し、適当な期間前培養する。この前培養に適する培養条件としては、例えば、培地組成としては、1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0があげられ、培養期間は3〜4日間、培養温度は28℃である条件があげられる。その後、前培養物を適当な条件にて本培養に供する。本培養に適する培地組成としては、例えば、1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1% NaSO、0.05% CaCl・2HO、0.05% MgCl・6HO、pH6.0があげられる。本培養に適する培養条件としては、例えば、300rpm、1vvm、26℃で8日間通気攪拌培養する条件があげられる。培養期間中に適当量のグルコースを添加してもよい。本培養中に適時培養物を採取し、そこから菌体を回収して、全RNAを調製する。全RNAの調製には、塩酸グアニジン/CsCl法等の公知の方法を用いることができる。得られた全RNAから市販のキットを用いてpoly(A)RNAを精製することができる。さらに、市販のキットを用いてcDNAライブラリーを作製することができる。その後、作製したcDNAライブラリーの任意のクローンの塩基配列を、ベクター上にインサート部分の塩基配列を決定できるように設計されたプライマーを用いて決定し、ESTを得ることができる。例えば、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit (STRATAGENE)でcDNAライブラリーを作製した場合は、ディレクショナルクローニングを行うことができる。
ゲノムDNAを解析する場合は、PAP活性を有する生物の細胞を培養し、当該細胞からゲノムDNAを調製する。得られたゲノムDNAの塩基配列を決定し、決定した塩基配列をアッセンブリする。最終的に得られたスーパーコンティグの配列から、既知のPAP活性を有するタンパク質のアミノ酸配列と相同性の高いアミノ酸配列をコードする配列を探索する。このようなアミノ酸配列をコードするものとしてヒットしたスーパーコンティグの配列からプライマーを作製し、上述したcDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行い、得られたDNA断片をプラスミドに組み込み、クローン化する。クローン化されたプラスミドを鋳型として、上述のプライマーを用いてPCRを行うことによりプローブを作製する。作製したプローブを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングする。
MaPAP2.2のアミノ酸配列を、GenBankに登録されているアミノ酸配列に対してBLASTpプログラムで相同性検索を行った。このアミノ酸配列は、オオキツネタケの推定タンパク質(配列番号10、アクセッション番号:XP 001878243)と最も高いスコアでヒットし、同一性は36.7%である。また、Mortierella alpina由来の公知のPAP2(Mg2+非依存性のPAP)であるMaPAP1のアミノ酸配列と、MaPAP2.2のアミノ酸配列の間の同一性は20.5%である。
本発明はまた、上記配列番号1で示される塩基配列、または、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、を含む核酸と同等の機能を有する核酸を含む。「同等の機能を有する」とは、本発明の塩基配列がコードするタンパク質及び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質がホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)活性を有することを意味する。本明細書において、PAP活性とは、ホスファチジン酸を脱リン酸化して、ジアシルグリセロールを生成する反応を触媒する活性である。また、PAP活性は、炭素数17のアシル基を含有するホスファチジン酸よりも炭素数18のアシル基を含有するホスファチジン酸に対する基質特異性が高いものであってもよいが、これに限定されない。また、PAP活性は、Mg2+非依存性であってもよいが、これに限定されない。
配列番号1で示される塩基配列、または、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、を含む核酸の変異体であって当該核酸と同等の機能を有する核酸としては、以下の(a)〜(g)のいずれかに記載のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸があげられる。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
具体的には、
(i) 配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜110個、1〜100個、1〜75個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜110個、1〜100個、1〜75個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換したアミノ酸配列、
(iii) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜110個、1〜100個、1〜75個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせたアミノ酸配列、
からなるタンパク質であって、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
上記のうち、置換は、好ましくは保存的置換である。保存的置換とは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることであるが、もとの配列の構造に関する特徴を実質的に変化させなければいかなる置換であってもよく、例えば、置換アミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを破壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊したりしなければいかなる置換であってもよい。
保存的置換は、一般的には、生物学的合成系や化学的ペプチド合成で導入されるが、好ましくは、化学的ペプチド合成による。この場合、置換基には、非天然アミノ酸残基が含まれていてもよく、ペプチド模倣体や、アミノ酸配列のうち、置換されていない領域が逆転している逆転型又は同領域が反転している反転型も含まれる。
以下に、アミノ酸残基を置換可能な残基ごとに分類して例示するが、置換可能なアミノ酸残基は以下に記載されているものに限定されるものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン及びシクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸及び2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン及びグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸及び2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン及び4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン及びホモセリン
G群:フェニルアラニン及びチロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができるが、この場合は、本発明のタンパク質の生物学的機能を保持するために、アミノ酸のヒドロパシー指数(ヒドロパシーアミノ酸指数)を考慮することが好ましい(Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131(1982))。
また、非保存的置換の場合は、親水性に基づいてアミノ酸の置換を行うことができる。
本明細書及び図面において、塩基やアミノ酸及びその略語は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature に従うか、又は、例えば、Immunology--A Synthesis(第2版, E.S. Golub及びD.R. Gren監修, Sinauer Associates,マサチューセッツ州サンダーランド(1991))等に記載されているような、当業界で慣用されている略語に基づく。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示す。
D−アミノ酸等の上記のアミノ酸の立体異性体、α,α−二置換アミノ酸等の非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、及びその他の非慣用的なアミノ酸もまた、本発明のタンパク質を構成する要素となりうる。
なお、本明細書で用いるタンパク質の表記法は、標準的用法及び当業界で慣用されている標記法に基づき、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。
同様に、一般的には、特に言及しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向を5’方向とする。
当業者であれば、当業界で公知の技術を用いて、本明細書に記載したタンパク質の適当な変異体を設計し、作製することができる。例えば、本発明のタンパク質の生物学的活性にさほど重要でないと考えられる領域をターゲティングすることにより、本発明のタンパク質の生物学的活性を損なうことなくその構造を変化させることができるタンパク質分子中の適切な領域を同定することができる。また、類似のタンパク質間で保存されている分子の残基及び領域を同定することもできる。さらに、本発明のタンパク質の生物学的活性又は構造に重要と考えられる領域中に、生物学的活性を損なわず、かつ、タンパク質のポリペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的アミノ酸置換を導入することもできる。
特に、図3において二重下線で示したように、MaPAP2.2のアミノ酸配列(配列番号2)中の第115〜123残基、第172〜175残基、及び第229〜233残基に、Mg2+非依存性のホスファチジン酸ホスファターゼ2型(PAP2)ファミリー酵素の3つの保存領域が存在する。また、PAP2ファミリー酵素の3つの保存領域中、ドメイン1のアルギニン、ドメイン2及び3のヒスチジンは、活性に必須なアミノ酸として知られており、MaPAP2.2においても当該アミノ酸が、それぞれ配列番号2の第122残基のアルギニン、第175残基のヒスチジン及び第229残基のヒスチジンとして保存されている。上記保存領域は、PAP2ファミリー酵素に必須の領域であり、本発明のPAPにとっても重要な領域である。従って、本発明の変異体は、上記保存領域が保存されている限り、いかなる変異体であってもよい。
当業者であれば、本発明のタンパク質の生物学的活性又は構造に重要であり、同タンパク質のペプチドと類似するペプチドの残基を同定し、この2つのペプチドのアミノ酸残基を比較して、本発明のタンパク質と類似するタンパク質のどの残基が、生物学的活性又は構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基であるかを予測する、いわゆる、構造−機能研究を行うことができる。さらに、このように予測したアミノ酸残基の化学的に類似のアミノ酸置換を選択することにより、本発明のタンパク質の生物学的活性が保持されている変異体を選択することもできる。また、当業者であれば、本タンパク質の変異体の三次元構造及びアミノ酸配列を解析することもできる。さらに、得られた解析結果から、タンパク質の三次元構造に関する、アミノ酸残基のアラインメントを予測することもできる。タンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関与する可能性があるが、当業者であれば、上記したような解析結果に基づいて、このようなタンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基を変化させないような変異体を作製することができる。さらに、当業者であれば、本発明のタンパク質を構成する各々のアミノ酸残基のうち、一つのアミノ酸残基のみを置換するような変異体を作製することもできる。このような変異体を公知のアッセイ方法によりスクリーニングし、個々の変異体の情報を収集することができる。それにより、ある特定のアミノ酸残基が置換された変異体の生物学的活性が、本発明のタンパク質の生物学的活性に比して低下する場合、そのような生物学的活性を呈さない場合、又は、本タンパク質の生物学的活性を阻害するような不適切な活性を生じるような場合を比較することにより、本発明のタンパク質を構成する個々のアミノ酸残基の有用性を評価することができる。また、当業者であれば、このような日常的な実験から収集した情報に基づいて、単独で、又は他の突然変異と組み合わせて、本発明のタンパク質の変異体としては望ましくないアミノ酸置換を容易に解析することができる。
上記したように、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997)、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。このようなアミノ酸の欠失、置換若しくは付加等の変異がなされた変異体の作製は、例えば、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
なお、タンパク質のアミノ酸配列に、その活性を保持しつつ1若しくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは付加を導入する方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、及び遺伝子を選択的に開裂して選択されたヌクレオチドを除去、置換若しくは付加した後に連結する方法があげられる。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1〜30個、1〜20個、又は1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
本発明の核酸がコードするタンパク質におけるアミノ酸の変異又は修飾の数、あるいは変異または修飾の部位は、PAP活性が保持される限り制限はない。
PAP活性は、公知の方法を用いて測定することが可能である。例えば、以下の文献:J. Biol. Chem., 273, 14331-14338(1998)を参照することができる。
例えば、PAP活性は以下の通り測定してもよい。本発明のPAPを発現させた形質転換細胞を破砕し、その細胞破砕液を遠心分離して上清を回収し、粗酵素液とする。粗酵素液をさらに本発明のPAPについて精製してもよい。そして、本発明のPAPを含む粗酵素液又は精製した本発明のPAPを、100μg/mL ホスファチジン酸、および50mM Tris−HCl(pH7.5)を含む反応液に添加し、25〜28℃で適当な時間反応させる。クロロホルム:メタノールを添加して反応を停止させた後、脂質の抽出を行い、得られた脂質を薄層クロマトグラフィー等により分画し、生成したジアシルグリセロール量を定量することができる。
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
上記塩基配列は、当業者に公知の方法で適当な断片を用いてプローブを作製し、このプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリー等から得ることができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001);特にSection 6-7) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997);特にSection6.3-6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);ハイブリダイゼーション条件については特にSection2.10) 等を参照することができる。
ハイブリダイゼーション条件の強さは、主としてハイブリダイゼーション条件、より好ましくは、ハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件によって決定される。本明細書における「ストリンジェントな条件」には、中程度又は高度にストリンジェントな条件が含まれる。
具体的には、中程度にストリンジェントな条件としては、例えばハイブリダイゼーション条件として、1×SSC〜6×SSC、42℃〜55℃の条件、より好ましくは、1×SSC〜3×SSC、45℃〜50℃の条件、最も好ましくは、2×SSC、50℃の条件があげられる。ハイブリダイゼーション溶液中に、例えば、約50%のホルムアミドを含む場合には、上記温度よりも5ないし15℃低い温度を採用する。洗浄条件としては、0.5×SSC〜6×SSC、40℃〜60℃があげられる。ハイブリダイゼーション及び洗浄時には、一般に、0.05%〜0.2%、好ましくは約0.1%SDSを加えてもよい。
高度にストリンジェント(ハイストリンジェント)な条件としては、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を含む。例えば、ハイブリダイゼーション条件として、0.1×SSC〜2×SSC、55℃〜65℃の条件、より好ましくは、0.1×SSC〜1×SSC、60℃〜65℃の条件、最も好ましくは、0.2×SSC、63℃の条件があげられる。洗浄条件として、0.2×SSC〜2×SSC、50℃〜68℃、より好ましくは、0.2×SSC、60〜65℃があげられる。
特に本発明に用いられるハイブリダイゼーション条件としては、例えば、5×SSC、1%SDS、50mM Tris−HCl(pH7.5)及び50%ホルムアミド中42℃の条件でプレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して一晩42℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃で20分間の洗浄を3回行うという条件があげられるが、これらに限定されない。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス社)、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等があげられる。
本発明に含まれる塩基配列としては、好ましくは、配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号1に示される塩基配列に対して少なくとも70%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
好ましくは、配列番号1に示される塩基配列に対して少なくとも75%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、85%以上、より一層好ましくは90%以上、さらには95%、98%又は99%以上)の同一性を有する塩基配列を含む核酸であって、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
2つの塩基配列の同一性%は、視覚的検査や数学的計算により決定することができるが、コンピュータープログラムを使用して2つの核酸の配列情報を比較することにより決定するのが好ましい。配列比較コンピュータープログラムとしては、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlから利用できるBLASTNプログラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10):バージョン2.2.7、又はWU-BLAST2.0アルゴリズム等があげられる。WU-BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されているものを用いることができる。
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む。
本発明の核酸がコードするタンパク質は、PAP活性を有する限り、MaPAP2.2のアミノ酸配列と同一性のあるタンパク質でもよい。具体的には、本発明の核酸がコードするタンパク質のアミノ酸配列として、配列番号2で示されるアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%(例えば、95%、さらには、98%)以上の同一性を有するアミノ酸配列等があげられる。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好ましくは、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列である。さらに好ましくは、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査及び数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性%を決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLAST、FASTA(Altschulら、 J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))、及びClustalW等があげられる。特に、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DINASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプログラムを用いて決定することもできる。
複数のアミノ酸配列を並列させる特定のアラインメントスキームは、配列のうち、特定の短い領域のマッチングをも示すことができるため、用いた配列の全長配列間に有意な関係がない場合であっても、そのような領域において、特定の配列同一性が非常に高い領域を検出することもできる。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを用いることができるが、選択パラメーターとしては、以下のものを用いることができる:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(Wootton及びFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;Wootton及びFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、又は、短周期性の内部リピートからなるセグメント(Claverie及びStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、及び(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、又はE−スコア(Karlin及びAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない。
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及びハイブリダイズの条件は上記のとおりである。
(f)配列番号4からなる塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
配列番号4からなる塩基配列は、MaPAP2.2をコードするゲノムDNA配列である。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号4からなる塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む。
上記塩基配列は、当業者に公知の方法で適当な断片を用いてプローブを作製し、このプローブを用いて、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、ゲノムライブラリー等から得ることができる。ハイブリダイズの条件は、上記の通りである。
(g)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号4からなる塩基配列に対して少なくとも70%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。好ましくは、配列番号4に示される塩基配列に対して少なくとも75%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、85%以上、より一層好ましくは、90%以上、さらには95%、98%又は99%以上)の同一性を有する塩基配列を含み、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列があげられる。2つの塩基配列の同一性%は、上述したように決定することができる。
配列番号4のゲノムDNA配列は、エキソン3個とイントロン2個からなっており、エキソン領域は配列番号4の第1〜207番目、第445〜582番目、第889〜1632番目である。
別の態様において、本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号4に示されるゲノムDNA配列において、イントロン領域の塩基配列が配列番号4に示される配列に対して100%同一であり、そして、エキソン領域の塩基配列が配列番号4に示される配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、85%以上、より一層好ましくは90%以上、さらには95%以上、98%以上、99%以上)の同一性を有する塩基配列を含み、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列があげられる。
また別の態様において、本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号4に示されるゲノムDNA配列において、エキソン領域の塩基配列が配列番号4に示される配列に対して100%同一であり、そして、イントロン領域の塩基配列が配列番号4に示される配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、85%以上、より一層好ましくは90%以上、さらには95%以上、98%以上、99%以上)の同一性を有する塩基配列を含み、かつ、スプライシングによりイントロン領域が脱離可能であり、それによりエキソン領域が連結してPAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、があげられる。
さらに別の態様において、本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号4に示されるゲノムDNA配列において、イントロン領域の塩基配列が配列番号4に示される配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、85%以上、より一層好ましくは90%以上、さらには95%以上、98%以上、99%以上)の同一性を有する塩基配列を含み、そして、エキソン領域の塩基配列が配列番号5又は配列番号10に示される配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、85%以上、より一層好ましくは90%以上、さらには95%以上、98%以上、99%以上)の同一性を有する塩基配列を含み、かつ、スプライシングによりイントロン領域が脱離可能であり、それにより連結したエキソン領域がPAP活性を有するタンパク質をコードする、塩基配列があげられる。
2つの塩基配列の同一性%は、上述した方法により決定することができる。
また、本発明の核酸には、配列番号1からなる塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸も含まれる。具体的には、
(i) 配列番号1に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜330個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個))の塩基が欠失した塩基配列、
(ii) 配列番号1に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜330個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個))の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、
(iii) 配列番号1に示す塩基配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜330個、1〜300個、1〜250個、1〜200個、1〜150個、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、さらに好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個))の他の塩基が付加された塩基配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせた塩基配列、
であって、かつ、PAP活性を有するタンパク質をコードしている塩基配列を含む核酸を用いることもできる。
本発明の核酸の別の態様としては、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の塩基配列のフラグメントを含む核酸も含まれる。
(a)配列番号1で示される塩基配列
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号4で示される塩基配列
(d)配列番号5で示される塩基配列
(a)配列番号1で示される塩基配列、(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列、(d)配列番号5で示される塩基配列については、表1に記載したとおりである。また、配列番号4で示される塩基配列についても上述の通りである。上記配列のフラグメントとは、上記塩基配列に含まれるORF、CDS、生物学的活性を有する領域、以下に記載するようなプライマーとして用いた領域、プローブとなりうる領域が含まれ、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。
また、本発明の核酸には以下の核酸も含まれる。
(1) 以下の(a)〜(g)のいずれかに記載の核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(f)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
(g)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(2) 以下の(a)〜(g)のいずれかである、(1)に記載の核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜130個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズする核酸
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなる塩基配列を含む核酸
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズする核酸
(f)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズする核酸
(g)配列番号4からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなる塩基配列を含む核酸
ホスファチジン酸ホスファターゼタンパク質
本発明のタンパク質は、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及びその変異体であって前記タンパク質と同等の機能を有するタンパク質を含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質については、上記のとおりである。「同等の機能を有するタンパク質」とは、上記『ホスファチジン酸ホスファターゼをコードする核酸』の項で説明したとおり、PAP活性を有するタンパク質を意味する。
本発明において、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質としては、以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質があげられる。
(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、PAP活性を有するタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、PAP活性を有するタンパク質
上記のうち、配列番号2において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、又は、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列については、上記、『ホスファチジン酸ホスファターゼをコードする核酸』の項で説明したとおりである。また、上記「PAP活性を有するタンパク質」は、配列番号1の塩基配列を含む核酸によってコードされるタンパク質の変異体、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において1個又は複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加等の多くの種類の修飾により変異したタンパク質、あるいはアミノ酸側鎖等が修飾されている修飾タンパク質、他のタンパク質との融合タンパク質であって、かつ、PAP活性を有するタンパク質も含まれる。
また、本発明のタンパク質は、人工的に作製したものであってもよく、その場合は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
また、本発明のタンパク質には、以下のタンパク質も含まれる。
(1)(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号2において1〜110個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質
核酸のクローニング
PAPの核酸は、例えば、適切なプローブを用いてcDNAライブラリーからスクリーニングすることにより、クローニングすることができる。また、適切なプライマーを用いてPCR反応により増幅し、適切なベクターに連結することによりクローニングすることができる。さらに、別のベクターにサブクローニングすることもできる。
例えば、pBlue-Script TMSK(+) (Stratagene)、pGEM-T (Promega)、pAmp(TM: Gibco-BRL)、p-Direct (Clontech)、pCR2.1-TOPO(Invitrogene)等の市販のプラスミドベクターを用いることができる。また、PCR反応で増幅する場合、プライマーは、上記の配列番号5等に示される塩基配列のいずれの部分も用いることができるが、例えば、
上流側用プライマーとして、プライマーPAP2.2-1f:5’−TTCCGTCAGGACACTCCTCCAGT−3’(配列番号6)、
下流側用プライマーとして、プライマーPAP2.2-4r:5’−GACAATGCCGAGGATCGAGCC−3’(配列番号7)、
等を、各々用いることができる。そして、M. alpina 菌体から調製したcDNAに、上記プライマー及びDNAポリメラーゼ等を作用させてPCR反応を行う。上記方法は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))等に従い、当業者であれば容易に行うことができるが、本発明のPCR反応の条件としては、例えば以下の条件があげられる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃
サイクル数:10回以上
得られたPCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。例えば、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick PCR purification Kits(QIAGEN)、ExoSAP-IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のキットを用いる方法、DEAE-セルロース濾紙を用いる方法、透析チューブを用いる方法等がある。アガロースゲルを用いる場合には、アガロースゲル電気泳動を行い、塩基配列断片をアガロースゲルより切り出して、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick Gel extraction Kits(QIAGEN)、フリーズ&スクイーズ法等により精製することができる。
クローニングした核酸の塩基配列は、塩基配列シーケンサーを用いて決定することができる。
PAP発現用ベクター構築及び形質転換体の作製
本発明はまた、PAPをコードする核酸を含有する組換えベクターを提供する。本発明は、さらに、上記組換えベクターによって形質転換された形質転換体も提供する。
このような組換えベクター及び形質転換体は以下のようにして得ることができる。すなわち、MaPAP2.2またはその変異体をコードする核酸を有するプラスミドを制限酵素を用いて消化する。用いる制限酵素としては、例えば、EcoRI、KpnI、BamHI及びSalI等があげられるが、これらに限定されない。なお、末端をT4ポリメラーゼ処理することにより平滑化してもよい。消化後のDNA断片をアガロースゲル電気泳動により精製する。このDNA断片を、発現用ベクターに公知の方法を用いて組み込むことにより、PAP発現用ベクターを得ることができる。この発現ベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、目的とするタンパク質の発現に供する。
このとき、発現ベクター及び宿主は、目的とするタンパク質を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、宿主として、真菌や細菌、植物、動物若しくはそれらの細胞等があげられる。真菌として、脂質生産菌であるM. alpina等の糸状菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母等があげられる。また細菌として、大腸菌(Escherichia coli)やバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等があげられる。さらに植物としては、ナタネ、ダイズ、ワタ、ベニバナ、アマ等の油糧植物があげられる。
脂質生産菌としては、例えば、MYCOTAXON,Vol.XLIV,NO.2,pp.257-265(1992)に記載されている菌株を使用することができ、具体的には、モルティエレラ(Mortierella)属に属する微生物、例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・ヒグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS 219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS528.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等のモルティエレラ亜属(subgenus Mortierella)に属する微生物、又はモルティエレラ・イザベリナ(Mortierella isabellina)CBS194.28、IFO6336、IFO7824、IFO7873、IFO7874、IFO8286、IFO8308、IFO7884、モルティエレラ・ナナ(Mortierella nana)IFO8190、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)IFO5426、IFO8186、CBS112.08、CBS212.72、IFO7825、IFO8184、IFO8185、IFO8287、モルティエレラ・ヴィナセア(Mortierella vinacea)CBS236.82等のマイクロムコール亜属(subgenus Micromucor)に属する微生物等があげられる。とりわけ、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)が好ましい。
真菌類を宿主として用いる場合は、本発明の核酸が宿主中で自立複製可能であるか、若しくは当該菌の染色体上に挿入され得る構造であることが好ましい。それと同時に、プロモーター、ターミネーターを含む構成であることが好ましい。宿主としてM. alpinaを使用する場合、発現ベクターとして、例えば、pD4、pDuraSC、pDura5等があげられる。プロモーターとしては、宿主中で発現できるものであればいかなるプロモーターを用いてもよく、例えば、histonH4.1遺伝子プロモーター、GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子プロモーター、TEF(Translation elongation factor)遺伝子プロモーターといったM. alpinaに由来するプロモーターが用いられる。
M. alpina等の糸状菌への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、パーティクルデリバリー法、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクション等があげられる。栄養要求性のホスト株を用いる場合は、その栄養素を欠いた選択培地上で生育する株を選択することで、形質転換株を取得することができる。また、形質転換に薬剤耐性マーカー遺伝子を用いる場合には、その薬剤を含む選択培地にて培養を行い、薬剤耐性を示す細胞コロニーを得ることができる。
酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして、例えば、pYE22m等があげられる。また、pYES(Invitrogen)、pESC(STRATAGENE)等の市販の酵母発現用ベクターを、用いてもよい。また本発明に適する宿主としては、Saccharomyces cerevisiae EH13-15株(trp1, MATα)等があげられるがこれらに限定されない。プロモーターとしては、例えば、GAPDHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター等の酵母等に由来するプロモーターが用いられる。
酵母への組換えベクターの導入方法としては、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム中のポリヌクレオチド(単数又は複数)の被包、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクション等があげられる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、発現ベクターとしては、例えばファルマシア社のpGEX、pUC18等があげられる。プロモーターとしては、例えば、trpプロモーター、lac プロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の大腸菌やファージ等に由来するプロモーターが用いられる。細菌への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法や塩化カルシウム法を用いることができる。
脂肪酸組成物の製造方法
本発明は、上記形質転換体から、脂肪酸組成物を製造する方法を提供する。すなわち、上記形質転換体を培養して得られる培養物から脂肪酸組成物を製造する方法である。脂肪酸組成物は、1又はそれ以上の脂肪酸の組み合わせを含む組成物である。ここで、脂肪酸は遊離脂肪酸であってもよく、トリグリセリドやリン脂質等の脂肪酸を含む脂質として存在していてもよい。本発明の脂肪酸組成物は、具体的には、以下の方法で製造することができる。しかし、本製造方法に関しては、当該方法に限られず、一般的な公知の他の方法を用いて行うこともできる。
PAPを発現させた生物の培養に用いる培地は、適当なpH及び浸透圧を有し、各宿主の増殖に必要な栄養素、微量成分、血清や抗生物質等の生物材料を含んでいる培養液(培地)であれば、いかなる培養液も用いうる。例えば、酵母を形質転換してPAPを発現させた場合は、SC-Trp培地、YPD培地、YPD5培地等を用いることができるが、これらに限定されない。具体的な培地の組成としてSC-Trp培地を例示する:1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20g、アミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g。
培養条件は、宿主の増殖に適し、かつ生成した酵素が安定に保たれるのに適当な条件であればいかなる条件でもよいが、具体的には、嫌気度、培養時間、温度、湿度、静置培養又は振盪培養等の個々の条件を調節することができる。培養方法は、同一条件での培養(1段階培養)でもよく、2以上の異なる培養条件を用いる、いわゆる2段階培養若しくは3段階培養でもよいが、大量培養をする場合には、培養効率がよい2段階培養等が好ましい。
宿主として酵母を用いて2段階培養を行う場合、本発明の脂肪酸組成物の製造方法は以下のように行うことができる。前培養として、形質転換体のコロニーを、上記のSC-Trp培地等に植菌して、30℃で2日間振盪培養を行う。その後、本培養として、YPD5(2%酵母エキス、1%ポリペプトン、5%グルコース)培地10mlに前培養液を500μl添加し、30℃で2日間振盪培養を行う。
脂肪酸組成物
本発明はまた、MaPAP2.2又はその変異体が発現している細胞における1又はそれ以上の脂肪酸の集合体である脂肪酸組成物を提供する。好ましくは、MaPAP2.2又はその変異体が発現している形質転換体を培養して得られる脂肪酸組成物である。脂肪酸は、遊離脂肪酸であってもよく、トリグリセリド、リン脂質等の脂肪酸を含む脂質の形で存在していてもよい。
本発明の脂肪酸組成物に含まれる脂肪酸としては、長鎖炭水化物の鎖状あるいは分岐状のモノカルボン酸をいい、例えば、ミリスチン酸(テトラデカン酸)(14:0)、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)(14:1)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)(16:0)、パルミトレイン酸(9−ヘキサデセン酸)(16:1)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)(17:0)、ステアリン酸(オクタデカン酸)(18:0)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)(18:1(9))、バクセン酸(11−オクタデセン酸)(18:1(11))、リノール酸(cis, cis−9,12 オクタデカジエン酸)(18:2(9,12))、α−リノレン酸(9,12,15−オクタデカトリエン酸)(18:3(9,12,15))、γ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカトリエン酸)(18:3(6,9,12))、ステアリドン酸(6,9,12,15-オクタデカテトラエン酸)(18:4(6,9,12,15))、アラキジン酸(イコサン酸)(20:0)、(8,11−イコサジエン酸)(20:2(8,11))、ミード酸(5,8,11−イコサトリエン酸)(20:3(5,8,11))、ジホモγ-リノレン酸(8,11,14-イコサトリエン酸)(20:3(8,11,14))、アラキドン酸(5,8,11,14−イコサテトラエン酸)(20:4(5,8,11,14))、エイコサテトラエン酸(8,11,14,17-イコサテトラエン酸)(20:4(8,11,14,17)、エイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17-イコサペンタエン酸)(20:5(5,8,11,14,17))、ベヘン酸(ドコサン酸)(22:0)、(7,10,13,16-ドコサテトラエン酸)(22:4(7,10,13,16))、(7,10,13,16,19-ドコサペンタエン酸)(22:5(7,10,13,16,19))、(4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸)(22:5(4,7,10,13,16))、(4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸)(22:6(4,7,10,13,16,19))、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)(24:0)、ネルボン酸(cis−15−テトラコセン酸)(24:1)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)(26:0)、等があげられるが、これらに限定されない。なお、上記物質名はIUPAC生化学命名法で定義された慣用名であり、組織名及び、炭素数と二重結合の位置を示す数値を、カッコ内に記載した。
本発明の脂肪酸組成物は、上記の脂肪酸のうち、1またそれ以上の脂肪酸の組み合わせであれば、いかなる数のいかなる種類の脂肪酸からなる組成物でもよい。
脂肪酸組成物を含む食品等
また、本発明は、上記脂肪酸組成物を含む食品を提供する。本発明の脂肪酸組成物は、常法に従って、例えば、油脂を含む食品、工業原料(化粧料、医薬(例えば、皮膚外用薬)、石鹸等の原料)の製造等の用途に使用することができる。化粧料(組成物)又は医薬(組成物)の剤型としては、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をあげることができるが、これらに限定されない。また、食品の形態としては、カプセル等の医薬製剤の形態、又はタンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等に本発明の脂肪酸組成物が配合された自然流動食、半消化態栄養食、及び成分栄養食、ドリンク剤、経腸栄養剤等の加工形態があげられる。
さらに、食品の例としては、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用食品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人用食品等があげられるが、これらに限定されない。本明細書においては、食品とは、固体、流動体、及び液体、並びにそれらの混合物であって、摂食可能なものの総称をいう。
栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強化されている食品をいう。健康食品とは、健康的な又は健康によいとされる食品をいい、栄養補助食品、自然食品、ダイエット食品等が含まれる。機能性食品とは、体の調節機能を果たす栄養成分を補給するための食品をいい、特定保健用食品と同義である。幼児用食品とは、約6歳までの子供に与えるための食品をいう。老人用食品とは、無処理の食品と比較して消化及び吸収が容易であるように処理された食品をいう。乳児用調製乳とは、約1歳までの子供に与えるための調製乳をいう。未熟児用調製乳とは、未熟児が生後約6ヶ月になるまで与えるための調製乳をいう。
これらの食品としては、肉、魚、ナッツ等の天然食品(油脂で処理したもの);中華料理、ラーメン、スープ等の調理時に油脂を加える食品;天ぷら、フライ、油揚げ、チャーハン、ドーナッツ、かりん糖等の熱媒体として油脂を用いた食品;バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、即席ラーメン、キャラメル、ビスケット、クッキー、ケーキ、アイスクリーム等の油脂食品又は加工時に油脂を加えた加工食品;おかき、ハードビスケット、あんパン等の加工仕上げ時に油脂を噴霧又は塗布した食品等をあげることができる。しかしながら、本発明の食品は、油脂を含む食品に限定されるわけではなく、例えば、パン、麺類、ごはん、菓子類(キャンデー、チューインガム、グミ、錠菓、和菓子)、豆腐及びその加工品等の農産食品;清酒、薬用酒、みりん、食酢、醤油、みそ等の発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ等の畜産食品;かまぼこ、揚げ天、はんぺん等の水産食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶等があげられる。
PAPをコードする核酸又はPAPタンパク質を用いた菌株の評価・選択方法
本発明はまた、本発明のPAPをコードする核酸又はPAPタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価や選択を行う方法を提供する。具体的には以下のとおりである。
(1)評価方法
本発明の一態様として、本発明のPAPをコードする核酸又はPAPタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価を行う方法があげられる。上記評価方法としては、まず、本発明のPAPをコードする核酸の塩基配列に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検菌株である脂質産生菌株のPAP活性について評価する方法があげられる。このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、国際特許出願パンフレットWO01/040514号、特開平8-205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について簡単に説明する。
まず、被検菌株のゲノムを調製する。調製方法は、Hereford法や酢酸カリウム法など、いかなる公知の方法をも用いることができる(例えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p130 (1990)参照)。
本発明のPAPをコードする核酸の塩基配列、好ましくは、配列番号1に基づいてプライマー又はプローブを設計する。上記プライマー又はプローブは本発明のPAPをコードする核酸の塩基配列のいずれの部分をも用いることができ、またその設計は公知の手法を用いて行うことができる。プライマーとして用いるポリヌクレオチドの塩基数は、通常、10塩基以上であり、15〜25塩基であることが好ましい。また、挟み込む部分の塩基数は、通常、300〜2000塩基が適当である。
上記で作製したプライマー又はプローブを用いて、上記被検菌株のゲノム中に本発明のPAPをコードする核酸の塩基配列と特異的に対応する配列が存在するか否かを調べる。特異的に対応する配列の検出は、公知の手法を用いて行うことができる。例えば、本発明のPAPをコードする核酸の塩基配列の一部を含むポリヌクレオチド、又は上記塩基配列の一部に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを一つのプライマーとして用い、もう一方のプライマーとしてこの配列よりも上流若しくは下流の配列の一部を含むポリヌクレオチド、又は上記配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて、例えば、PCR法等によって被検菌株の核酸を増幅し、増幅物の有無、増幅物の分子量の大きさなどを測定することができる。
本発明の方法に適するPCR法の反応条件は、特に限定されないが、例えば、以下の条件があげられる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃、
サイクル数:10回以上
などの条件である。得られた反応生成物はアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等により分離して、増幅産物の分子量を測定することができる。これにより、増幅産物の分子量が本発明の塩基配列と特異的な領域に相当する核酸分子を含む大きさか否かを確認することにより、被検菌株のPAP活性を予測又は評価することができる。また、上記増幅産物の塩基配列を上記方法等で解析することによって、さらにPAP活性をより正確に予測又は評価することができる。なお、PAP活性の評価方法は、上記のとおりである。
また、本発明の評価方法は、被検菌株を培養し、配列番号1等の本発明の塩基配列がコードするPAPの発現量を測定することによって、被検菌株のPAP活性を評価するものであってもよい。なお、PAPの発現量は、被検菌株を適当な条件で培養し、PAPのmRNA又はタンパク質を定量することにより測定できる。mRNA又はタンパク質の定量は、公知の手法を用いて行うことができる。mRNAの定量は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRによって、タンパク質の定量は、例えば、ウエスタンブロッティングによって行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1994-2003)。
(2)選択方法
本発明の他の態様として、本発明のPAPをコードする核酸又はPAPタンパク質を用いて、脂質生産菌の選択を行う方法があげられる。本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養し、配列番号1等の本発明の塩基配列がコードするPAPの発現量を測定して、目的とする発現量の菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。また、基準となる菌株を設定し、この基準菌株と被検菌株を各々培養し、各菌株の前記発現量を測定し、基準菌株と被検菌株の発現量を比較して、所望の菌株を選択することもできる。具体的には、例えば、基準菌株及び被検菌株を適当な条件で培養し、各菌株の発現量を測定し、基準菌株よりも被検菌株の方が高発現、又は低発現である被検菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。所望の活性には、上記のように、PAPの発現量及びPAPが産生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法があげられる。
また、本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養して、本発明の上記活性が高いか若しくは低い菌株を選択することにより、所望の活性を有する被検菌株を選択することもできる。所望の活性には、上記のように、PAPの発現量及びPAPが産生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法があげられる。
被検菌株又は基準菌株としては、例えば、上記の本発明のベクターを導入した菌株、上記本発明の核酸の発現が抑制された菌株、突然変異処理が施された菌株、自然変異した菌株などを用いることができるがこれらに限定されない。なお、PAP活性は、例えば本明細書中の「ホスファチジン酸ホスファターゼをコードする核酸」の項目で記載した方法によって測定することが可能である。突然変異処理としては、例えば、紫外線照射や放射線照射などの物理的方法、EMS(エチルメタンスルホネート)、N−メチル−N−ニトロソグアニジンなどの薬剤処理による化学的方法などがあげられる(例えば、大嶋泰治編著、生物化学実験法39 酵母分子遺伝学実験法、p.67-75、学会出版センターなど参照)が、これらに限定されない。
なお、本発明の基準菌株、被検菌株として用いる菌株としては、上記の脂質生産菌又は酵母等があげられるが、これらに限定されない。具体的には、基準菌株、被検菌株は、異なる属や種に属するいかなる菌株を組み合わせて用いてもよく、被検菌株は1又はそれ以上の菌株を同時に用いてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1: Mortierella alpinaのゲノム解析
M. alpina 1S-4株を100mlのGY2:1培地(2%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、28℃で2日間振とう培養した。濾過により菌体を集菌し、DNeasy (QIAGEN) を用いてゲノムDNAを調製した。
上記ゲノムDNAの塩基配列を、Roche 454 GS FLX Standard を用いて決定した。その際、フラグメントライブラリーの塩基配列決定を2ラン分、メイトペアライブラリーの塩基配列決定を3ラン分行った。得られた塩基配列をアッセンブリすることにより、300個のスーパーコンティグが得られた。
実施例2: cDNAの合成とcDNAライブラリーの作製
M. alpina 1S-4株を100mlの培地(1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、3日間28℃で前培養した。10L培養槽(Able Co.、東京)に5Lの培地(1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1%NaSO、0.05%CaCl・2HO、0.05%MgCl・6HO、pH6.0)を入れ、前培養物を全量植菌し、300rpm、1vvm、26℃の条件で8日間通気攪拌培養した。培養1、2、及び3日目に各々2%、2%、及び1.5%相当のグルコースを添加した。培養1、2、3、6、及び8日目の各ステージに菌体を回収し、塩酸グアニジン/CsCl法でトータルRNAを調製した。Oligotex-dT30 <Super> mRNA Purification Kit(Takara Bio Inc.)を用いて、トータルRNAからpoly(A)RNAの精製を行った。各ステージのcDNAライブラリーを、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit (STRATAGENE)を用いて作製した。
実施例3: 酵母由来DPP1ホモログの探索
酵母のScDPP1(YDR284C:アクセッション番号 AAS56070)とScLPP1(YDR503C:アクセッション番号 AAT93210)のホモログをゲノムデータベースより検討した。その結果、2つのスーパーコンティグがヒットした。1つは、MaPAP1に係るゲノム配列を含むスーパーコンティグであり、他方は、配列番号4を含むスーパーコンティグであった。配列番号4に係る遺伝子をMaPAP2.2と命名した。
実施例4: MaPAP2.2のクローニング及び配列解析
(1)クローニング
MaPAP2.2のcDNAをクローン化するために、以下のプライマーを作製した。
プライマーPAP2.2-1f:TTCCGTCAGGACACTCCTCCAGT(配列番号6)
プライマーPAP2.2-4r:GACAATGCCGAGGATCGAGCC(配列番号7)
上記のとおり作製したライブラリーを鋳型とし、プライマーPAP2.2-1FとプライマーPAP2.2-4Rの組み合わせでExTaq(タカラバイオ)を用いて、94℃ 2分、(94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 1分)30サイクルのPCR反応を行った。得られた約0.4kbpのDNA断片を、TOPO-TAクローニングキット(Invitrogen)を使ってクローン化し、インサート部分の塩基配列を決定した。配列番号3の534〜904番目の塩基配列を有するプラスミドをpCR-MaPAP2.2-Pとした。
次に、このプラスミドpCR-MaPAP2.2-Pを鋳型として、上記プライマーを用いてPCRによりプローブを作製した。反応には、ExTaq(タカラバイオ)を用いたが、添付のdNTPミックスの代わりにPCRラベリングミックス(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて、増幅されるDNAをジゴキシゲニン(DIG)ラベルしたプローブを作製し、MaPAP2.2プローブとした。これらのプローブを用いて、cDNAライブラリーをスクリーニングした。
ハイブリダイゼーションの条件は、次のとおりである。
バッファー:5xSSC、1%SDS、50mM Tris−HCl(pH7.5)、50%ホルムアミド;
温度:42℃(一晩);
洗浄条件:0.2x SSC、0.1%SDS溶液中(65℃)で、20分間×3回。
検出は、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて行った。スクリーニングによって得られたファージクローンから、in vivo エキシジョンにより、プラスミドを切り出し、プラスミドDNAを得た。最もインサート長の長いものは、配列番号5の塩基配列を含んでおり、プラスミドpB-MaPAP2.2と名づけた。
開始コドンや終止コドンの存在、他のPAP2ホモログとの比較から、配列番号5の75番目〜1166番目(配列番号3と同じ)が、MaPAP2.2のCDSであると考えられた。
(2)配列解析
MaPAP2.2遺伝子の塩基配列及びこれのコードする推定アミノ酸配列について、BLAST及びclustalWによる解析で、既知の核酸の塩基配列及びアミノ酸配列に対する相同性検索を行った。BLASTXによるGENBANKに登録されているアミノ酸配列に対する相同性検索でヒットしたものの中で、もっともE-Valueの低かった配列は、オオキツネタケ(Laccaria bicolor)由来の推定タンパク質(アクセッション番号:XP 001878243)で、アミノ酸配列の同一性は36.7%であった。MaPAP2.2のアミノ酸配列と、オオキツネタケ由来の推定タンパク質および酵母由来のScDPP1(YDR284C:アクセッション番号 AAS56070))のアミノ酸配列のアラインメントを図2に示した。
また、Mortierella alpina由来のMg2+非依存性PAP(PAP2)として既知のMaPAP1(WO2009/008466)と、MaPAP2.2のアミノ酸配列の同一性は20.5%であった。MaPAP2.2とMaPAP1のアミノ酸配列のアラインメントを図3に示した。PAP2ファミリー酵素には3つの保存領域があり、活性に必須のアミノ酸も知られている。図3に示したとおり、MaPAP2.2においてもこれらの保存領域は保存されており(図3中、二重下線で示した領域)、活性に必須であるドメイン1のアルギニン残基、ドメイン2とドメイン3のヒスチジン残基(図3中、*で示した残基)が保存されていた。
実施例5: MaPAP2.2の機能解析
(1)酵母発現ベクターの構築
MaPAP2.2を酵母で発現させるために、以下のとおり酵母発現用ベクターを構築した。まず、プライマーEco-PAP2-2-FとKpn-PAP2-2-Rを作成し、pB-MaPAP2.2を鋳型として、ExTaq(タカラバイオ)にてPCR反応を行った。
Eco-PAP2-2-F:GAATTCATGTTCTCGTCCATGCGCTTCAAG(配列番号8)
Kpn-PAP2-2-R:TGGTACCTCATGGTCCCAAGTATACATCGTTCC(配列番号9)
得られた1.1kbpのDNA断片をTOPO-TA cloning Kit(インビトロジェン)を用いてTAクローニングし、塩基配列を確認し、MaPAP2.2のCDSの正しい塩基配列(配列番号3)を持つプラスミドをpCR-MaPAP2.2とした。pCR-MaPAP2.2を制限酵素EcoRIとKpnIで消化して得られた約1.1kbpのDNA断片と、酵母発現用ベクターpYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995)を制限酵素EcoRI、KpnIで消化して得られた約8.3kbpのDNA断片を、ligation high(TOYOBO)で連結し、プラスミドpYE-MaPAP2.2を構築した。
(2)形質転換酵母の取得
プラスミドpYE22m、pYE-MaPAP2.2、pYE-MaPAP1(WO2009/008466)をそれぞれ用いて酢酸リチウム法により、酵母S. cerevisiae EH13-15株(trp1,MATα)(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30, 515-520, 1989)を形質転換した。形質転換株は、SC-Trp(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids(DIFCO)6.7g、グルコース20g、アミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとして選抜した。
(3)酵母の培養
それぞれのベクターでの形質転換株を、以下の条件で培養した。すなわち、前培養として、SD-Trp 10mlに酵母を植菌し、30℃で1日、振とう培養を行った。本培養として、前培養液1mlをSD-Trp 100mlに添加し、30℃で1日、振とう培養した。
(4)粗酵素液の調製
遠心分離にて集菌後、水洗し、−80℃にて一時保存した。菌体に5mlのバッファーA(50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.3Mスクロース、10mM DTT、1mM PMSF)を添加し、よく懸濁した。その後、フレンチプレスにて16kPaで3回処理することにより、菌体を破砕した。菌体破砕液を1,500×g、4℃にて10分間、遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
(5)PAP活性測定
方法
PAP活性は、以下の通り測定した。反応液として、50mM Tris-HCl(pH7.5)、50μg リノール酸(18:2)−PAまたはオレイン酸(18:1)−PAまたはマルガリン酸(17:0)−PA(基質となるホスファチジン酸)、0.5mM MgClまたは0.5mM EDTA、10mM DTT、100μl粗酵素液、を含む全量500μlの反応液を調製し、28℃で30分間反応させた。クロロホルム:メタノール(1:2)を添加して反応を停止させた。コントロールとして、粗酵素液のかわりにMaPAP2.2遺伝子を含まないプラスミドpYE22mで形質転換した酵母(コントロール株)の菌体破砕液の上清を添加した反応液を用いた。Bligh & Dyer法により脂質を抽出し、遠心濃縮機で乾固させた。クロロホルムに溶解し、TLC(シリカゲル60プレート、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸=70:30:1)により脂質を分画した。プリムリン溶液を噴霧後、UV照射下で脂質を可視化し、リン脂質画分とジグリセリド(DG)画分を掻きとり、含まれる全脂肪酸をメチルエステルに誘導し、ガスクロマトグラフィーにて分析した。
上記の反応において、基質として添加したホスファチジン酸(PA)から変換されたジグリセリド(DG)の量を測定することにより、PAP活性を測定することができる。
結果
結果を図4〜7に示した。
図4に示すとおり、MaPAP2.2の粗酵素液を添加した反応液においては、コントロールと比較して18:2−DGの量が増加した。このことは、MaPAP2.2の存在により、18:2−PAから18:2−DGへの変換が高められた、すなわちMaPAP2.2のはPAP活性を有することが示された。また、図4に記載の結果から、Mg2+の有無にかかわらず、コントロールとMaPAP2.2の高発現株(図4において、MaPAP2-2と表記した)の18:2−PAから18:2−DGへの変換の程度は同等、すなわち、MaPAP2.2はMg2+の有無にかかわらず同等のPAP活性を示すことが明らかとなった。このことは、MaPAP2.2のPAP活性はMg2+に依存しないことを示すものである。
図5は、MaPAP2.2の粗酵素液、又はMaPAP1の粗酵素液を添加したMg2+不含の反応液における18:2−DGの量を検討した結果を示すものである。MaPAP2.2を用いた場合には、18:2−PAから18:2−DGへの変換が有意に高められたのに対し、MaPAP1を用いた場合はコントロールと同程度の18:2−DGしか認められなかった。このことは、MaPAP2.2とMaPAP1とでは異なる基質特異性を有することを示している。
図6は、MaPAP2.2の粗酵素液を含む反応液およびコントロールにおいて、基質として18:1−PAを添加した場合、ならびに添加しない場合の、反応後の18:1−DGの量を検討した結果を示すものである。18:1−PAは酵母において元々存在するホスファチジン酸であるので、18:1−PAを添加しない条件で粗酵素液中の18:1−PAの量(バックグラウンド)を測定し、MaPAP2.2発現株とコントロール株の間で差がないことを確認した(図6A)。その上で、18:1−PAを添加した場合の反応後の18:1−DGの量を測定したところ、コントロールの粗酵素液を用いた場合に比べて、MaPAP2.2の粗酵素液を用いた場合に、より多くの18:1−PAが生成することが確認された(図6B)。この結果は、MaPAP2.2が、18:1−PAを基質とした場合にもPAP活性を有することを示している。
図7は、MaPAP2.2の粗酵素液を含む反応液およびコントロールにおいて、基質として17:0−PAを添加した場合の、反応後の17:0−DGの量を検討した結果を示すものである。図7に示す結果は、この結果は、MaPAP2.2が、17:0−PAを基質とした場合にもPAP活性を有することを示している。
また、図5ないし図7の結果の比較から、18:2−PAを18:2−DGに変換する活性と、18:1−PAを18:1−DGに変換する活性は同程度と考えられた。一方、17:0−PAを17:0−DGに変換する活性は、18:2−PAを18:2−DGに変換する活性や18:1−PAを18:1−DGに変換する活性の1/5程度と見積もられた。このことは、MaPAP2.2のホスファチジン酸ホスファターゼ活性が、炭素数17のアシル基を含有するホスファチジン酸よりも、炭素数18のアシル基を含有するホスファチジン酸に対する基質特異性が高いものであることを示している。
配列番号6:プライマーPAP2.2-1f
配列番号7:プライマーPAP2.2-4r
配列番号8:プライマーEco-PAP2-2-F
配列番号9:プライマーKpn-PAP2-2-R

Claims (10)

  1. 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の核酸。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜30個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
    (b)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
    (c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
    (d)配列番号4からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
  2. 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の核酸。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
    (b)配列番号1からなる塩基配列と同一性が95%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸
    (c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質、をコードする塩基配列を含む核酸
    (d)配列番号4からなる塩基配列と同一性が95%以上の塩基配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードするエキソンを有する塩基配列を含む核酸
  3. 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の核酸。
    (a)配列番号1で示される塩基配列含む核酸
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列含む核酸
    (c)配列番号4で示される塩基配列含む核酸
    (d)配列番号5で示される塩基配列含む核酸
  4. ホスファチジン酸ホスファターゼ活性が、炭素数17のアシル基を含有するホスファチジン酸よりも炭素数18のアシル基を含有するホスファチジン酸に対する基質特異性が高いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の核酸。
  5. 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
    (a)配列番号2において1〜30個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
    (b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
  6. 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
    (a)配列番号2において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
    (b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、ホスファチジン酸ホスファターゼ活性を有するタンパク質
  7. ホスファチジン酸ホスファターゼ活性が、炭素数17のアシル基を含有するホスファチジン酸よりも炭素数18のアシル基を含有するホスファチジン酸に対する基質特異性が高いことを特徴とする、請求項5又は6に記載のタンパク質。
  8. 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を含有する組換えベクター。
  10. 請求項9に記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
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