以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの構造の概略を示す図である。図1(A)はカレントミラー型バイオセンサを上面側から見た図であり、図1(B)は図1(A)におけるX−X’断面を模式的に示す図である。また、図2は本発明の第1実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの回路構成を示す図であり、図3は本発明の第1実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの使用状況を示す斜視図である。
本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、センサ上側に設けられた所定領域に、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質などの生体関連物質を含む被検査液体Fを配置し、その電気的特性を取得するものであり、図1に示すカレントミラー型バイオセンサ100は、トップゲートボトムコンタクトの構造を有するものである。なお、本実施形態では、センサ上側の所定領域に被検査液体Fを配置する例に基づいて説明するが、カレントミラー型バイオセンサ100で測定可能な物質は液体に限らず、気体、固体やジェルなどの被検査物質も含まれる。
本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、第1の電界効果トランジスタと、これとは異なる第2の電界効果トランジスタとを基本の構成としており、センサ内の配線によって、第1及び第2の2つの電界効果トランジスタのペアからカレントミラー回路が構成されるようになっている。また、第1電界効果トランジスタは通常のFETとして利用され(すなわちISFETとしては利用されず)、第2電界効果トランジスタは被検査液体の電気的特性をセンシングするためのISFETとして利用されるようになっている。以下、図1及び図2において、バイオセンサを構成するトランジスタのうち、左側に位置するトランジスタを第1電界効果トランジスタ、右側に位置するトランジスタを第2電界効果トランジスタと定義して説明する。
さらに、本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100においては、バイオセンサを構成する第1電界効果トランジスタ、第2電界効果トランジスタの他に、第1電界効果トランジスタと共にカレントミラー回路を構成するモニタ用トランジスタが設けられており、これにより、モニタテストを実施することができるようになっている。
カレントミラー型バイオセンサ100には、電流入力端子101、電流出力端子102、参照電極接続用端子103、接地端子104、モニタ用端子105の5つの端子が設けられており、これらにより外部構成との電気接続を可能としている。
電流入力端子101は、センサ内においては、第1電界効果トランジスタの第1ドレイン電極111と参照電極接続用端子103、第1電界効果トランジスタのゲート電極114、モニタ用トランジスタゲート電極194と導通するようになっている。この電流入力端子101には不図示の定電流源が接続され、電流Iinを流すように利用される。
また、電流出力端子102は、センサ内においては、第2電界効果トランジスタの第2ドレイン電極112と導通するようになっている。本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、図2に示すようなカレントミラー回路が組まれていることから、この電流出力端子102には、電流入力端子101にIinが流れると、電流Ioutが流れるようになっている。被検査液体Fの電気的特性は、所定の電流Iinを電流入力端子101に流したとき、電流出力端子102にどのような電流Ioutが流れるかによって解析されるようになっている。
参照電極接続用端子103は、センサ内においては、第1電界効果トランジスタの第1ドレイン電極111、第1電界効果トランジスタのゲート電極114、モニタ用トランジスタゲート電極194と導通するようになっている。この参照電極接続用端子103には
、例えば、探針状の参照電極115が接続されるようになっており、参照電極115は被検査液体F中に挿通された状態で、被検査液体Fと電気的に導通させるようにして利用される。
ISFETにおける参照電極115は、通常のFETではゲート電極に相当する電極であるが、ISFETにおいては、この参照電極115は、被検査液体Fの電気的特性を、感応膜140などを介して、第1ドレイン電極111−ソース電極113間の半導体膜120に伝達させるための機能を果たす。図2における第1電界効果トランジスタの回路図は、このような参照電極115と被検査液体Fとの関係を模式的に示したものである。
接地端子104は、センサ内においてはソース電極113、モニタ用トランジスタソース電極193と導通するようになっている。この接地端子104はグランドと接続するために利用される。なお、本発明においては、ソース電極113を接地して、第1ドレイン電極111、第2ドレイン電極112を電流の入力側電極として利用する例について説明するが、ドレイン電極を接地するようにして、2つのソース電極を設けて、これらのソース電極を入力側電極として利用するように構成してもよい。
モニタ用端子105は、センサ内においてはモニタ用トランジスタドレイン電極191と導通するようになっている。このモニタ用端子105は、カレントミラー型バイオセンサ100のモニタテストを実施する際に用いられる。
図2の回路図を参照すると、バイオセンサを構成する第1電界効果トランジスタ、第2電界効果トランジスタのうちの、通常のFETとして利用される第1電界効果トランジスタと、モニタ用トランジスタ190とはカレントミラー回路を構成していることがわかる。また、第1電界効果トランジスタとモニタ用トランジスタ190との間の距離は、第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとの間の距離はより長いことが、図1よりわかる。
上記のような構成の下、カレントミラー型バイオセンサ100のモニタテストにおいては、電流入力端子101に不図示の定電流源を接続し、接地端子104をグランドと接続し、モニタ用端子105に流れる電流Itestを測定する。このようなモニタテストを実施し、所定以上の特性を得ることができることができたのならば、バイオセンサをなす第1電界効果トランジスタ、第2電界効果トランジスタからなるカレントミラー回路の特性も所定以上であることを確認することができる。
第1電界効果トランジスタ、第2電界効果トランジスタのトランジスタが構成するカレントミラー回路と、ISFETとして利用されない第1電界効果トランジスタとモニタ用トランジスタ190とが構成するカレントミラー回路とを比較すれば、前述のようにトランジスタ間の距離の観点からは、後者のカレントミラー回路の方が良好な特性を得るためには不利な条件となる。より不利な条件で構成された後者のカレントミラー回路で、モニタテストを行い、ある一定以上の特性を得ることができれば、前者のカレントミラー回路でも問題のない特性を得ることができるもの推定することができる。
このように本発明のカレントミラー型バイオセンサによれば、ISFETとして利用されない第1電界効果トランジスタとモニタ用トランジスタ190とが構成するカレントミラー回路を用いてモニタテストを行うことで、バイオセンサをなす2つのトランジスタが構成するカレントミラー回路がある一定以上の特性を満足することを確認可能となり、バイオセンサの信頼性を高めることが可能となる。
次に、本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100の積層構造について説明する
。なお、各端子については図1(B)に示されていないが、各端子は適当な周知の方法によってセンサ内に組み込まれるようになっている。
基材110は、半導体膜120、第1ドレイン電極111、第2ドレイン電極112、ソース電極113を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ガラス等の無機材料、PENまたはPETなどのプラスチック(ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。本実施形態においては基材110の形状を平板としたが、基材110の形状はこれに限定されず、例えば、平膜、フィルム、多孔質膜等の平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路等の立体的な形状を採用することもできる。フィルムを使用する場合、その厚さは特に制限されないが、通常1μm〜1mm程度である。
半導体膜120は、第1ドレイン電極111、第2ドレイン電極112、ソース電極113を覆うようにして基材110上に積層されて形成されている。また、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、モニタ用トランジスタドレイン電極191及びモニタ用トランジスタソース電極193を覆うようにして基材110上に積層されて形成されている。
具体的には、半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、InMZnO(Mはガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)のうち少なくとも1種)を主成分とするアモルファス酸化物によって形成される。特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましい。また、このIGZOを主成分とする半導体膜120には、必要に応じて、Al、Fe、Sn等を構成元素として加えたものであってもよい。IGZO半導体膜など半導体膜120は、室温から150℃程度の低温での製膜が可能であることから、耐熱性に乏しいプラスチック基板やガラス基板に対して好ましく適用できる。
また、半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、酸化物亜鉛(ZnO)を主成分とする酸化物半導体から形成されていてもよい。また、このZnOを主成分とする半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192には、真性の酸化物亜鉛の他に、必要に応じて、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、窒素(N)及び炭素(C)等のp型ドーパント及びホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等のn型ドーパントがドーピングされた酸化亜鉛及びマグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などがドーピングされた酸化亜鉛を加えたものであってもよい。さらに、半導体膜120は、錫を添加した酸化インジウム(インジウム錫オキサイド:ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)または酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物半導体から形成されていてもよい。
なお、半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192の膜厚は、諸条件により適宜選択されることが可能であって、特に、20nm〜100nm程度が好ましい。
半導体膜120における第1ドレイン電極111、ソース電極113との間の領域(I
)は第1電界効果トランジスタのチャンネル領域(I)として、また、半導体膜120に
おけるソース電極113、第2ドレイン電極112との間の領域(I I)は第2電界効果
トランジスタのチャンネル領域(II)として、それぞれ機能する。
また、モニタ用トランジスタ半導体膜192におけるモニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193との間の領域はモニタ用トランジスタ
190のチャンネル領域(m)として機能する。
基材110平面上において、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193は、積層方向に対して垂直となる水平方向で、所定の間隔をもって配置されるようにして形成されている。これら第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112及びモニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193は、半導体膜120及びモニタ用トランジスタ半導体膜192とのオーミック接触が得られるとともに、ゲート絶縁膜130を積層することが可能な導電膜で形成されたものであれば特に限定されるものではない。具体的には、アルミニウム、銅、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)などの導
電性のものから形成される。
なお、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193の膜厚は、諸条件により適宜選択されることが可能であって、特に、20nm〜200nm程度が好ましい。
ゲート絶縁膜130は、半導体膜120、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193を覆うように、半導体膜120、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193上に積層される。また、このゲート絶縁膜130は、層間絶縁膜135を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。具体的には、絶縁性の観点から、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiNx)、窒化酸化珪素(SiOxNy)などのシリコン酸化物若しくはシリコン窒化物から形成される。特に、本実施形態のゲート絶縁膜130には、酸化珪素を用いるのが好ましい。なお、ゲート絶縁膜130の膜厚は、諸条件により適宜選択可能であって、特に、50nmから1μm程度が好ましい。
層間絶縁膜135は、ゲート電極114やゲート絶縁膜130を覆うようにして積層されるものであり、ポリイミドなどの有機系絶縁膜や、酸化珪素などの無機系絶縁膜のいずれも用いることが可能である。この層間絶縁膜135としては、感応膜140を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
感応膜140は、ゲート絶縁膜130及び層間絶縁膜135の上に積層され、被検査液体F中に含まれるサンプル、すなわち、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質などの生体関連物質を配置可能なものによって形成される。特に、感応膜140は、半導体膜120における第1電界効果トランジスタのチャンネル領域(I)の上に、被検査液体Fに含まれる
生体関連物質が配置されるための所定領域を有している。感応膜140上にはスリット状凹部145が形成されており、被検査液体Fが前記所定領域に滞留しやすい構造となっている。
また、感応膜140は、イオン感応膜であって、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコ
ン窒化膜(SiN4)、タンタル酸化膜(Ta2O5)または酸化アルミニウム膜(Al2O3)によって形成される。これらのイオン感応膜を測定したいイオン種に応じて適宜採用
すればよい。また必要に応じて、DNAタンパク質、糖鎖を固定化する為の表面修飾がなされていてもよい。
隔壁150は、感応膜140上であってスリット状凹部145の周囲に形成されており
、水溶液または培養液などの被検査液体Fを感応膜140上に滞留させるように積層方向に対して所定の高さを有している。隔壁150は、スリット状凹部145外に被検査液体Fを漏出させないための材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス、プラスチックまたは金属によって形成されている。このように、本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、隔壁150によって感応膜140上の被検査液体Fをスリット状凹部145の所定領域に滞留させることができるので、的確に被検査液体F中の生体関連物質の電気的特性を検出することができる。
本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、上述のような構成を有することによって、被検査液体Fに含まれるサンプル、すなわち、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質などの生体関連物質を感応膜140上に配置させることができるようになっている。
被検査液体Fを図示するように感応膜140に滞留させた上で、探針状の参照電極115を被検査液体F中にセットして、電流入力端子101に接続した定電流源により電流Iinを適宜流すようにする。すると、所定の電流Iinを電流入力端子101に流したとき、電流出力端子102に電流Ioutが流れるので、これによりIin−Iout特性を取得して、もって被検査液体F中の生体関連物質の電気的特性を解析する。このような解析によって、被検査液体Fに含まれる生体関連物質の種別、量等を特定することができるようになっている。
以上、本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、被検査液体Fの上部(基材110側と反対側)から光を照射して当該感応膜140に配置された生体関連物質を、基材110側から顕微鏡その他の光学観察機器によって観察することができるので、被検査液体Fの上部から感応膜140に配置された生体関連物質を観察する場合に比べて、当該生体関連物質における観察を高倍率に行うことができるとともに、生体関連物質の電気的特性の検出と当該生体関連物質における高倍率の観察とを両立させることができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は本発明の第2実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの構造の概略を示す図である。この図4は、第1実施形態における図1(B)に相当するものである。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、第2実施形態においては、感応膜140上において、親水性・疎水性を付与する処理がなされている点である。その他の構成については、第1実施形態と同一であるので、同一部材に対しては同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、第2実施形態においては、感応膜140上の所定領域に対しては親水性を付与する処理が施され親水性領域141が形成されると共に、感応膜140上における前記所定領域以外の領域に対しては疎水性を付与する処理が施され疎水性領域142が形成される。このような各処理が施されているため、本実施形態によれば、感応膜140上の被検査液体Fをスリット状凹部145の所定領域に確実に滞留させることができるようになり、より的確に被検査液体F中の生体関連物質の電気的特性を検出することができるようになる。
第2実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100においては、感応膜140上の所定領域は、親水性を発揮するための物質が塗布等によって形成され、親水性領域141とされる。一方、感応膜140上に形成された領域であって、被検査液体Fを滞留させるための所定領域の外周に沿った領域は、疎水性を発揮するための物質が塗布等によって形成され、疎水性領域142とされる。
所定領域は、感応膜140が親水性の物質によって形成されている場合に、他の物質を用いることなく、感応膜140の物質そのものによって代替することができる。また、所定領域は、上記に代えて、感応膜140の表面へ親水性の物質の塗布等、または、低親水性若しくは親水性を有する物質の塗布及びUV照射等によって形成されてもよい。
疎水性領域142は、該当する感応膜140の表面の領域に疎水性の物質の塗布等、または、有機物などの疎水性を有する物質の塗布及び四フッ化メタンガスのプラズマを用いてプラズマ処理を行うことによって形成されている。例えば、本実施形態においては、親水性を有するシリコン酸化膜(SiO2)によって感応膜140が形成されている場合に
は、親水性領域141としては、当該シリコン酸化膜そのものによって形成し、疎水性領域142に相当する領域にレジストなどの有機物を塗布してプラズマ処理を行うことによって当該疎水性領域142を形成するようになっている。
本実施形態のようにカレントミラー型バイオセンサ100の感応膜140上において、親水性・疎水性を付与する処理がなされていると、使用状況によっては、被検査液体Fを感応膜140に滞留させるための隔壁150などの部材を不要とすることも可能となるので、製造コストを抑制することが可能となる。
また、第2実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100によっても、これまで説明してきた実施形態が享受する効果と同様のものを享受することが可能である。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図5は本発明の第3実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの構造の概略を示す図である。この図5は、第1実施形態における図1(B)に相当するものである。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、第3実施形態においては、感応膜140上において、細胞接着性・細胞接着阻害性を付与する処理がなされている点である。その他の構成については、第1実施形態と同一であるので、同一部材に対しては同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、第3実施形態においては、感応膜140上の所定領域に対しては細胞接着性を付与する処理が施し細胞接着性領域143が形成されると共に、感応膜140上における前記所定領域以外の領域に対しては細胞接着阻害性を付与する処理が施され細胞接着阻害性領域144が形成される。このような各処理が施されているため、本実施形態によれば、感応膜140上における生体関連物質を含む被検査液体Fを、スリット状凹部145の所定領域に確実に滞留させることができるようになり、より的確に被検査液体F中の生体関連物質の電気的特性を検出することができるようになる。
本実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100においては、感応膜140上の所定領域には細胞の接着性を有する細胞接着性領域143が形成され、前記所定領域以外の領域には、細胞の接着を阻害する細胞接着阻害性領域144が形成される。
すなわち、第3実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100においては、感応膜140上の所定領域は、細胞を接着させる強度の高い物質によって形成されている細胞接着性領域143とされる。一方、感応膜140上に形成された領域であって、被検査液体Fを滞留させるための所定領域の外周に沿った領域は、細胞の接着を阻害する細胞接着阻害性領域144とされる。
なお、「細胞接着性」とは、細胞を接着する強度、すなわち細胞の接着しやすさを意味するとともに、細胞接着性領域143とは、細胞接着性が良好な領域を意味し、細胞接着
阻害性領域144とは、細胞の接着性が悪い領域を意味する。したがって、細胞接着性領域143と細胞接着阻害性領域144とがパターン化された基板上に細胞が含まれた被検査液体Fを滞留させると、細胞接着性領域143には細胞が接着するが、細胞接着阻害性領域144には細胞が接着しないため、細胞接着性領域143、すなわち、所定領域に細胞がパターン状に配列されることになる。
また、細胞接着性は、接着しようとする細胞によって異なる場合もあるため、細胞接着性が良好とは、ある種の細胞に対する細胞接着性が良好であることを意味する。したがって、感応膜140上には、複数種の細胞に対する複数の細胞接着性領域143が存在する場合、すなわち細胞接着性が異なる細胞接着性領域143が2水準以上存在する場合もある。
具体的には、細胞接着性領域143は、炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜に酸化処理及び/または分解処理を施して細胞接着性とした膜で形成されている。この細胞接着性領域143は、感応膜140の表面全体に炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜を形成し、次いで、細胞の接着が望まれる所定領域に対して酸化処理及び/または分解処理を施すことにより当該領域に細胞接着性を付与して細胞接着性領域143に改変する。なお、前記処理を施さない部分は細胞接着阻害性領域144である。
また、細胞接着性領域143は、炭素酸素結合を有する有機化合物を低密度で含む親水性膜で形成されていてもよい。この場合には、細胞接着性領域143は、炭素酸素結合を有する有機化合物を高密度で含む親水性膜が細胞接着阻害性を有するのに対して、前記化合物を低密度で含む親水性膜は細胞接着性を有することを利用したものである。なお、感応膜140の表面に前記化合物が結合しやすい第一領域と結合しにくい第二領域とを設け、該感応膜140の表面に前記化合物の膜を形成すると、第一領域は細胞接着阻害性領域144となり、第二領域は細胞接着性領域143となる。
一方、細胞接着阻害性領域144は、炭素酸素結合を有する有機化合物により形成される親水性膜により形成される。当該親水性膜は、水溶性や水膨潤性を有する、炭素酸素結合を有する有機化合物を主原料とする薄膜であり、酸化される前は細胞接着阻害性を有し、酸化及び/または分解された後は細胞接着性を有しているものであれば特に限定されない。この炭素酸素結合とは、炭素と酸素との間に形成される結合を意味し、単結合に限らず二重結合であってもよい。炭素酸素結合としてはC−O結合、C(=O)−O結合、C=O結合が挙げられる。
また、主原料としては、水溶性高分子、水溶性オリゴマー、水溶性有機化合物、界面活性物質、両親媒性物質等が挙げられ、これらが相互に物理的または化学的に架橋し、感応膜140と物理的または化学的に結合することにより親水性膜となる。具体的な水溶性高分子材料としては、ポリアルキレングリコール及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、双性イオン型高分子、多糖類、等を挙げることができる。分子形状は、直鎖状、分岐を有するもの、デンドリマー等を挙げることができる。より具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、例えば、Plutonic F108、Plutonic F127、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン)、メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリンとアクリルモノマーの共重合体、デキストラン、及びヘパリンが挙げられるがこれらに限定されない。具体的な水溶性オリゴマー材料や水溶性低分子化合物としては、アルキレングリコールオリゴマ
ー及びその誘導体、アクリル酸オリゴマー及びその誘導体、メタクリル酸オリゴマー及びその誘導体、アクリルアミドオリゴマー及びその誘導体、酢酸ビニルオリゴマーの鹸化物及びその誘導体、双性イオンモノマーからなるオリゴマー及びその誘導体、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、双性イオン化合物、水溶性シランカップリング剤、水溶性チオール化合物等を挙げることができる。より具体的には、エチレングリコールオリゴマー、(N−イソプロピルアクリルアミド)オリゴマー、メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリンオリゴマー、低分子量デキストラン、低分子量ヘパリン、オリゴエチレングリコールチオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)−プロピルトリメトキシシラン、及びトリエチレングリコール−ターミネイティッド−チオールが挙げられるがこれらには限定されない。
なお、親水性膜は、処理前は高い細胞接着阻害性を有し、酸化処理及び/または分解処理後は弱い細胞接着性を示すものであることが望ましい。また、親水性膜の平均厚さは、0.8nm〜500μmが好ましく、0.8nm〜100μmがより好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、1.5nm〜1μmが最も好ましい。平均厚さが0.8nm以上であれば、タンパク質の吸着や細胞の接着において、基板表面の親水性薄膜で覆われていない領域の影響を受けにくいため好ましい。また、平均厚さが500μm以下であればコーティングが比較的容易である。
以上のようなカレントミラー型バイオセンサ100は、細胞接着性領域143に生体関連物質を結集させて細胞接着阻害性領域144に生体関連物質を存在させないことによって、電気的特性を検出する際に、細胞接着性領域143以外に存在する生体関連物質の影響を排除することができるとともに、細胞接着性領域143に接着された生体関連物質における電気的特性を的確に検出することができる。
また、本実施形態のようにカレントミラー型バイオセンサ100の感応膜140上において、細胞接着性・細胞接着阻害性を付与する処理がなされていると、使用状況によっては、被検査液体Fを感応膜140に滞留させるための隔壁150などの部材を不要とすることも可能となるので、製造コストを抑制することが可能となる。
また、第3実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100によっても、これまで説明してきた実施形態が享受する効果と同様のものを享受することが可能である。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図6は本発明の第4実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの構造の概略を示す図である。図6(A)は第4実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサを上面側から見た図であり、図6(B)は図6(A)におけるX−X’断面を模式的に示す図である。また、図7は本発明の第4実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの回路構成を示す図である。
第1実施形態などにおける参照電極115は、参照電極接続用端子103に接続された探針状のもので、この探針状参照電極115を被検査液体F中に挿通させた状態で、被検査液体Fと電気的に導通させるようにして利用されるものであった。
これに対して、第4実施形態における参照電極115は、予め感応膜140上に設けられた膜状のものであり、隔壁150内に被検査液体Fが満たされると、参照電極115は被検査液体Fと接触して、電気的に導通するように構成されている。図7における第1電界効果トランジスタの回路図は、このような膜状の参照電極115と被検査液体Fとの関係を模式的に示したものである。
以上のような構成であるために、第4実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100には、参照電極接続用端子103が設けられていない。また、第4実施形態における参照電極115は、スルーホールTH0を介して感応膜140上に引き出させるようになっている。なお、その他の構成は、第1実施形態と同一であり、同一部材に対しては同一の符号を付している。
第4実施形態における参照電極115は、アルミニウム、銅、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)などの導通性の材料から形成さ
れる。
上記のような膜状の参照電極115が予め設けられた第4実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100によれば、測定のためのセッティングなどが簡便となるために、バイオセンサによる測定プロセスの効率アップを図ることが可能となる。
また、第4実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100によっても、これまで説明してきた実施形態が享受する効果と同様のものを享受することが可能である。
また、第4実施形態においても、先の実施形態と同様に、感応膜140上において、親水性・疎水性を付与する処理を行うようにしてもよいし、或いは、細胞接着性・細胞接着阻害性を付与する処理を行うようにしてもよい。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図8は本発明の第5実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの構造の概略を示す図である。この図8は、第1実施形態における図1(B)に相当するものである。
本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、第1実施形態のソース電極及び第1、第2ドレイン電極における構造に、コプレーナ型を適用した点に特徴がある。
本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、図8に示すように、基材110、基材110上に、領域(0)にわたって積層された半導体膜220と、半導体膜220に形成された第1ドレイン側拡散領域221、ソース側拡散領域222、第2ドレイン側拡散領域223と、第1ドレイン側拡散領域221と接続される第1ドレイン電極211と、ソース側拡散領域222と接続されるソース電極213と、第2ドレイン側拡散領域223と接続される第2ドレイン電極212と、半導体膜220を覆うように積層される絶縁膜230と、絶縁膜230上に積層されるゲート電極214、感応膜240と、感応膜240上に形成され、当該感応膜240上にサンプルが含まれる水溶液または培養液などの被検査液体Fを滞留させるための隔壁250と、を有している。
また、上記のバイオセンサの基本構成に加えて、モニタ用トランジスタ290に関連する構成として、領域(M)にわたって積層されたモニタ用トランジスタ半導体膜292と
、モニタ用トランジスタ半導体膜292に形成されたドレイン側拡散領域295、ソース側拡散領域297と、ドレイン側拡散領域295と接続されるモニタ用トランジスタドレイン電極291と、ソース側拡散領域297と接続されるモニタ用トランジスタソース電極293と、モニタ用トランジスタ半導体膜292を覆うように積層される絶縁膜230と、絶縁膜230上に積層されるモニタ用トランジスタゲート電極294と、を有している。
第1ドレイン側拡散領域221、ソース側拡散領域222、第2ドレイン側拡散領域223、ドレイン側拡散領域295、ソース側拡散領域297などの各拡散領域は、半導体に対してプラズマ処理(例えば、水素プラズマ、アルゴンプラズマ)の所定の処理を行う
ことによって低抵抗化することによって形成される。また、第1ドレイン側拡散領域221、ソース側拡散領域222、第2ドレイン側拡散領域223は絶縁膜230中に形成されたコンタクトホールを介して各電極30と電気的に結合される。
第5実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100によっても、これまで説明してきた実施形態が享受する効果と同様のものを享受することが可能である。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図9は本発明の第6実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサを上面図であり、図10は図9におけるA−A’断面を模式的に示す図である。
本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、金属酸化物半導体を用いて構成した点に特徴がある。
本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、図23に示すように、p型シリコン基板320と、p型シリコン基板320上に構成されるn型半導体形成領域321、n型半導体形成領域322、n型半導体形成領域323などの各n型半導体形成領域と、p型シリコン基板320上に積層されるゲート絶縁膜330と、ゲート絶縁膜330上に積層されるゲート電極314、316と、ゲート絶縁膜330、ゲート電極314上に積層される層間絶縁膜335と、コンタクトホールを介してn型半導体形成領域321と導通する第1ドレイン電極311と、コンタクトホールを介してn型半導体形成領域322と導通するソース電極313と、コンタクトホールを介してn型半導体形成領域323と導通する第2ドレイン電極312と、第1ドレイン電極311、第2ドレイン電極312、ソース電極313、層間絶縁膜335上に積層される保護層339と、保護層339上に積層される感応膜340と、感応膜340上に形成され、当該感応膜340上にサンプルが含まれる水溶液または培養液などの被検査液体Fを滞留させるための隔壁(不図示)と、を有している。
また、本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、上記のバイオセンサの基本構成に加えて、モニタ用トランジスタ390に関連する構成として、p型シリコン基板392と、p型シリコン基板392上に構成されるn型半導体形成領域395、n型半導体形成領域397などの各n型半導体形成領域と、p型シリコン基板392上に積層されるゲート絶縁膜330と、ゲート絶縁膜330上に積層されるモニタ用トランジスタゲート電極394と、ゲート絶縁膜330、モニタ用トランジスタゲート電極394上に積層される層間絶縁膜335と、コンタクトホールを介してn型半導体形成領域395と導通するモニタ用トランジスタドレイン電極391と、コンタクトホールを介してn型半導体形成領域397と導通するモニタ用トランジスタゲート電極394と、を有している。
p型シリコン基板320上のn型半導体形成領域321、n型半導体形成領域322、n型半導体形成領域323、n型半導体形成領域395、n型半導体形成領域397などの各n型半導体形成領域は不純物注入によって構成され、n型半導体形成領域321とn型半導体形成領域322との間の領域は、第1電界効果トランジスタチャンネル領域(I
)として機能し、n型半導体形成領域322とn型半導体形成領域323との間の領域は、第2電界効果トランジスタチャンネル領域(II)として機能する。また、n型半導体形成領域395とn型半導体形成領域397との間の領域は、モニタ用トランジスタチャンネル領域(m)として機能する。
また、ゲート絶縁膜330としてはSiO2などのドライ酸化膜が、また、層間絶縁膜
335にはSiO2などのウエット酸化膜が、また、保護層339としてはSi3N4など
の材質が用いられる。
以上のような第6実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサによっても、これまで説明してきた実施形態が享受する効果と同様のものを享受することが可能である。
また、第6実施形態においても、先の実施形態と同様に、感応膜140上において、親水性・疎水性を付与する処理を行うようにしてもよいし、或いは、細胞接着性・細胞接着阻害性を付与する処理を行うようにしてもよい。
また、第6実施形態においても、先の実施形態と同様に、膜状の参照電極を設けるように構成することも可能である。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。一般的に、バイオセンサによって、被検査液体中の細胞、DNAなどの生体関連物質の状態に関連した電気信号を取得する場合には、細胞またはDNAの状態観察を顕微鏡で同時に行うことが重要となる。また、細胞等の状態観察は透過光により高倍率で行うことが望ましい。
これまで説明した実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、ベース基板や、ソース、ドレインなどの各電極が前記透過光を遮断するような材質で構成されているために、感応膜140に配置された被検査液体に含まれる生体関連物質の観察が困難であった。
また、生体関連物質を高倍率で観察するためには、バイオセンサ上に配置された被検査液体と顕微鏡の対物レンズを接近させる必要があるが、イオン感応膜に配置された被検査液体をその上方(ベース基板の反対側)から観察する場合には、水溶液、培養液、その他の薬品など当該被検査液体に含まれる物質が観察するための阻害要因となり、顕微鏡の対物レンズを生体関連物質に接近させることが困難で、観察が難しい。そこで、ベース基板の反対側(上側)に設けた光源から光を照射し、ベース基板側(下側)から対物レンズを接近させて、生体関連物質の状態観察を行うことが考えられるが、これまで説明した実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、ベース基板や、ソース、ドレインなどの各電極が前記光源からの照射光を遮断するような材質で構成されているために、被検査液体に含まれる生体関連物質の観察が困難であった。
以上のような問題に対処するために、第7実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサにおいては、少なくともISFETとして利用されるトランジスタには、透明基板と、前記透明基板上に形成される透明半導体膜と、前記透明半導体膜と電気接続する透明電極とからなるように構成するものである。以下、第7実施形態について説明するが、参照図面としては図1乃至図3を用いる。
第7実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100の積層構造について説明する。なお、各端子については図1(B)に示されていないが、各端子は適当な周知の方法によってセンサ内に組み込まれるようになっている。
基材110は、基材110の下部から感応膜140上部が観察することができるように、透明であって、半導体膜120、第1ドレイン電極111、第2ドレイン電極112、ソース電極113を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。この透明とは、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜140に配置された被検査液体F中の生体関連物質が観察することができる程度に透明であればよい。具体的には、ガラス等の無機材料、PENまたはPETなどのプラスチック(ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂
、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。本実施形態においては基材110の形状を平板としたが、基材110の形状はこれに限定されず、例えば、平膜、フィルム、多孔質膜等の平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路等の立体的な形状を採用することもできる。フィルムを使用する場合、その厚さは特に制限されないが、通常1μm〜1mm程度である。
なお、顕微鏡などの観察機器による観察を行うときには、被検査液体Fは、基材110、半導体膜120、ゲート絶縁膜130、感応膜140の4つの積層体が積層されてなる領域に置かれた上で、観察が行われることとなる。したがって、本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100においては、基材110、半導体膜120、ゲート絶縁膜130、感応膜140の4つの積層体を通して可視光を透過させたときにおいても、観察機器で観察を行う上で十分な、所定の透過率が得られる程度に、それぞれの積層体の透過率を担保する必要がある。
半導体膜120は、第1ドレイン電極111、第2ドレイン電極112、ソース電極113を覆うようにして基材110上に積層されて形成されている。また、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、モニタ用トランジスタドレイン電極191及びモニタ用トランジスタソース電極193を覆うようにして基材110上に積層されて形成されている。これら半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、基材110の下部から感応膜140が観察することができるように、透明であって、ゲート絶縁膜130を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。また、この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜140に配置された被検査液体F中の生体関連物質が観察することができる程度に透明であればよい。
具体的には、半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、InMZnO(Mはガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)のうち少なくとも1種)を主成分とするアモルファス酸化物によって形成される。特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましい。また、このIGZOを主成分とする半導体膜120には、必要に応じて、Al、Fe、Sn等を構成元素として加えたものであってもよい。IGZO半導体膜など半導体膜120は、室温から150℃程度の低温での製膜が可能であることから、耐熱性に乏しいプラスチック基板やガラス基板に対して好ましく適用できる。
また、半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192は、酸化物亜鉛(ZnO)を主成分とする酸化物半導体から形成されていてもよい。また、このZnOを主成分とする半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192には、真性の酸化物亜鉛の他に、必要に応じて、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、窒素(N)及び炭素(C)等のp型ドーパント及びホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等のn型ドーパントがドーピングされた酸化亜鉛及びマグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などがドーピングされた酸化亜鉛を加えたものであってもよい。さらに、半導体膜120は、錫を添加した酸化インジウム(インジウム錫オキサイド:ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)または酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物半導体から形成されていてもよい。
なお、半導体膜120、モニタ用トランジスタ半導体膜192の膜厚は、諸条件により適宜選択されることが可能であって、特に、20nm〜100nm程度が好ましい。
半導体膜120における第1ドレイン電極111、ソース電極113との間の領域(I
)は第1電界効果トランジスタのチャンネル領域(I)として、また、半導体膜120に
おけるソース電極113、第2ドレイン電極112との間の領域(I I)は第2電界効果
トランジスタのチャンネル領域(II)として、それぞれ機能する。
また、モニタ用トランジスタ半導体膜192におけるモニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193との間の領域はモニタ用トランジスタ190のチャンネル領域(m)として機能する。
基材110平面上において、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193は、積層方向に対して垂直となる水平方向で、所定の間隔をもって配置されるようにして形成されている。これら第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112及びモニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193は、半導体膜120及びモニタ用トランジスタ半導体膜192とのオーミック接触が得られるとともに、基材110の下部から感応膜140が観察することができるように、透明電極であって、ゲート絶縁膜130を積層することが可能な導電膜で形成されたものであれば特に限定されるものではない。また、この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜140に配置された被検査液体F中の生体関連物質が観察することができる程度に透明であればよい。具体的には、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)などの
導電性のものから形成される。
なお、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193の膜厚は、諸条件により適宜選択されることが可能であって、特に、20nm〜200nm程度が好ましい。
ゲート絶縁膜130は、半導体膜120、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193を覆うように、半導体膜120、第1ドレイン電極111、ソース電極113、第2ドレイン電極112、モニタ用トランジスタドレイン電極191、モニタ用トランジスタソース電極193上に積層される。また、このゲート絶縁膜130は、基材110の下部から感応膜140が観察することができるように、透明であって、層間絶縁膜135を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。具体的には、絶縁性の観点から、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiNx)、窒化酸化珪素(SiOxNy)などのシリコン酸化物若しくはシリコン窒化物から形成される。特に、本実施形態のゲート絶縁膜130には、酸化珪素を用いるのが好ましい。なお、ゲート絶縁膜130の膜厚は、諸条件により適宜選択可能であって、特に、50nmから1μm程度が好ましい。
層間絶縁膜135は、ゲート電極114やゲート絶縁膜130を覆うようにして積層されるものであり、ポリイミドなどの有機系絶縁膜や、酸化珪素などの無機系絶縁膜のいずれも用いることが可能であるが、基材110の下部から感応膜140上が観察することができるように、透明であって、感応膜140を積層することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
感応膜140は、ゲート絶縁膜130及び層間絶縁膜135の上に積層され、被検査液体F中に含まれるサンプル、すなわち、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質などの生体関連物質を配置可能なものによって形成される。特に、感応膜140は、半導体膜120における第1電界効果トランジスタのチャンネル領域(I)の上に、被検査液体Fに含まれる
生体関連物質が配置されるための所定領域を有している。感応膜140上にはスリット状凹部145が形成されており、被検査液体Fが前記所定領域に滞留しやすい構造となっている。
また、感応膜140は、イオン感応膜であって、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコ
ン窒化膜(SiN4)、タンタル酸化膜(Ta2O5)または酸化アルミニウム膜(Al2O3)によって形成される。これらのイオン感応膜を測定したいイオン種に応じて適宜採用
すればよい。また必要に応じて、DNAタンパク質、糖鎖を固定化する為の表面修飾がなされていてもよい。
隔壁150は、感応膜140上であってスリット状凹部145の周囲に形成されており、水溶液または培養液などの被検査液体Fを感応膜140上に滞留させるように積層方向に対して所定の高さを有している。隔壁150は、スリット状凹部145外に被検査液体Fを漏出させないための材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス、プラスチックまたは金属によって形成されている。このように、本発明に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、隔壁150によって感応膜140上の被検査液体Fをスリット状凹部145の所定領域に滞留させることができるので、的確に被検査液体F中の生体関連物質の電気的特性を検出することができる。
本実施形態のカレントミラー型バイオセンサ100は、上述のような構成を有することによって、被検査液体Fに含まれるサンプル、すなわち、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質などの生体関連物質を感応膜140上に配置させることができるようになっている。
被検査液体Fを図示するように感応膜140に滞留させた上で、探針状の参照電極115を被検査液体F中にセットして、電流入力端子101に接続した定電流源により電流Iinを適宜流すようにする。すると、所定の電流Iinを電流入力端子101に流したとき、電流出力端子102に電流Ioutが流れるので、これによりIin−Iout特性を取得して、もって被検査液体F中の生体関連物質の電気的特性を解析する。このような解析によって、被検査液体Fに含まれる生体関連物質の種別、量等を特定することができるようになっている。
カレントミラー型バイオセンサ100による被検査液体Fの電気特性の取得と並行して、被検査液体Fの上部(基材110側と反対側)から光を照射して当該感応膜140に配置された生体関連物質を、基材110側から顕微鏡その他の光学観察機器によって観察することができる。特に、透過光を利用した倒立型顕微鏡を用いる場合には、対物レンズを感応膜140に配置された生体関連物質に接近させることができる。なお、必要に応じて明視野観察の他に位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等を用いることも可能である。したがって、感応膜140上の所定領域に配置された生体関連物質の電気的特性の検出と、当該生体関連物質における高倍率の観察とを両立させることができるようになっている。
以上、本発明の第7実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサ100は、被検査液体Fの上部(基材110側と反対側)から光を照射して当該感応膜140に配置された生体関連物質を、基材110側から顕微鏡その他の光学観察機器によって観察することができるので、被検査液体Fの上部から感応膜140に配置された生体関連物質を観察する場合に比べて、当該生体関連物質における観察を高倍率に行うことができるとともに、生体関連物質の電気的特性の検出と当該生体関連物質における高倍率の観察とを両立させることができる。
以上のような第7実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサによっても、これまで説明してきた実施形態が享受する効果と同様のものを享受することが可能である。
また、第7実施形態においても、先の実施形態と同様に、感応膜140上において、親水性・疎水性を付与する処理を行うようにしてもよいし、或いは、細胞接着性・細胞接着阻害性を付与する処理を行うようにしてもよい。
また、第7実施形態においても、先の実施形態と同様に、膜状の参照電極を設けるように構成することも可能である。
図11は本発明の第1実施形態に係るカレントミラー型バイオセンサの構成に基づくシミュレーション結果を示す図である。図11(A)はpHを0〜10まで変化させたときの、入力電量Iinと出力電流Ioutとの関係を示す図であり、図11(B)はIinが20μAである時の、pH変化に伴う出力電流Ioutの変化を示す図である。例えば、図11(B)によれば、0〜10まで変化を7μA幅の出力電流の変化によって検出することが可能であることがわかる。
以上説明したように、本発明のカレントミラー型バイオセンサ100においては、カレントミラー回路を構成する2つのトランジスタとは独立したモニタ用トランジスタを備えており、前記2つのトランジスタのうちISFETとして利用されないトランジスタと、前記モニタ用トランジスタとがカレントミラー回路を構成するようになっている。
前記2つのトランジスタが構成するカレントミラー回路と、ISFETとして利用されないトランジスタと前記モニタ用トランジスタとが構成するカレントミラー回路とを比較すれば、トランジスタ間の距離の観点からは、後者のカレントミラー回路の方が良好な特性を得るためには不利な条件となる。より不利な条件で構成された後者のカレントミラー回路で、モニタテストを行い、ある一定以上の特性を得ることができれば、前者のカレントミラー回路でも問題のない特性を得ることができるもの推定することができる。
以上のような本発明のカレントミラー型バイオセンサ100によれば、ISFETとして利用されないトランジスタと前記モニタ用トランジスタとが構成するカレントミラー回路を用いてモニタテストを行うことで、バイオセンサをなす2つのトランジスタが構成するカレントミラー回路がある一定以上の特性を満足することを確認可能となり、バイオセンサの信頼性を高めることが可能となる。