JP5446538B2 - 定着装置、画像形成装置及び画像形成方法 - Google Patents

定着装置、画像形成装置及び画像形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、定着装置、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
従来、定着装置の低消費電力化を狙ったヒートレス定着技術として、ワックスコアトナーやカプセルトナーを用いた圧力定着方法が報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
また、高光沢画像が得られるとともに、低消費電力を実現する技術が提案されている(特許文献3〜5参照)。
特開昭55−166653号公報 特開昭59−172654号公報 特開2009−9117号公報 特開2004−139039号公報 特開2007−4051号公報
本発明は、高光沢な画像形成が可能な定着装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、該定着装置を備える画像形成装置及び、低消費電力で画像が形成可能な画像形成方法を提供することを目的とする。
上記の課題は、以下の<1>、<7>、<8>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<6>、<9>〜<11>とともに以下に記載する。
<1> 複数のニップ部と、トナーが転写された転写材をニップ部に搬送する搬送手段と、を有し、前記トナーが下記式(1)を満たすことを特徴とする定着装置、
20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃ (1)
(式(1)中、T(10MPa)は、フローテスター印加圧力10MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(1MPa)は、フローテスター印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。)
<2> 前記ニップ部における印加圧力の少なくとも1つが、前記トナーのフローテスター溶融粘度が105Pa・sになる圧力P1以上である、<1>に記載の定着装置、
<3> 前記トナーのフローテスター溶融粘度が105Pa・sになる圧力P1以上で加圧している時間の合計T1は、前記圧力P1においてニップ時間を長くした場合に画像グロス飽和点の値G1の80%に達する時間T0以上である、<2>に記載の定着装置、
<4> 前記ニップ部において前記圧力P1以上で加圧するインターバル時間I1は、加圧合計時間をT1にして加圧間隔を長くしたときに画像グロスが画像グロス飽和点の値G1の50%になる時間以下である、<3>に記載の定着装置、
<5> 前記定着装置と前記転写材との剥離部が1箇所である、<1>〜<4>いずれか1つに記載の定着装置、
<6> 前記ニップ部が加圧部材及び対向部材を有し、前記加圧部材及び/又は前記対向部材に沿って、加圧部材と対向部材との間に配置された無端状ベルトを有する、<1>〜<5>いずれか1つの定着装置、
<7> 像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、前記像保持体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤によりトナー像に現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記定着手段として、<1>〜<6>いずれか1つに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置、
<8> 像保持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体の表面に形成された潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を有し、前記トナーが下記式(1)を満たし、前記定着工程において、複数回加圧することを特徴とする画像形成方法、
20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃ (1)
(式(1)中、T(10MPa)は、フローテスター印加圧力10MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(1MPa)は、フローテスター印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。)
<9> 前記定着工程における印加圧力の少なくとも1つが、前記トナーのフローテスター溶融粘度が105Pa・s以下になる圧力以上である、<8>に記載の画像形成方法、
<10> 前記定着工程において、前記トナーのフローテスター溶融粘度が105Pa・s以下になる圧力P1以上で加圧している時間の合計T1は、前記圧力P1においてニップ時間を長くした場合に画像グロス飽和点の値G1の80%に達する時間T0以上である、<9>に記載の画像形成方法、
<11> 前記定着工程において、前記圧力P1以上で加圧するインターバル時間I1は、加圧合計時間をT1にして加圧間隔を長くしたときに画像グロスが画像グロス飽和点の値G1の50%になる時間以下である、<10>に記載の画像形成方法。
上記<1>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、高光沢な画像形成が可能な定着装置が提供される。
上記<2>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より定着性が改善された定着装置が提供される。
上記<3>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、定着時のトナー流動性が増大し、より光沢性の高い画像が提供される。
上記<4>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、定着時のトナー流動性が増大し、より光沢性の高い画像が提供される。
上記<5>に記載の発明によれば、剥離部が複数である場合に比べ、トナーのオフセットや像ずれが抑制される。
上記<6>に記載の発明によれば、無端状ベルトを有しない場合に比して、トナーのオフセットや像ずれが抑制される。
上記<7>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、高光沢な画像形成が可能な画像形成装置が提供される。
上記<8>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、高光沢な画像形成が可能な画像形成方法が提供される。
上記<9>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より定着性が改善された画像形成方法が提供される。
上記<10>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より高光沢な画像が提供される。
上記<11>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より高光沢な画像が提供される。
第一の実施の形態である画像形成装置を示した概略構成図である。 定着装置の一実施態様を示す概略構成断面図である。 定着装置の他の一実施態様を示す概略構成断面図である。 定着装置のさらに他の一実施態様を示す概略構成断面図である。 25℃でのフローテスター印加圧力とトナーの粘度との関係を示す図である。 ニップ時間と画像グロスとの関係を示す図である。 ニップ間隔と画像グロス増加との関係を示す図である。 トナーの粘度が加圧・解放によって変化することを示す概念図である。 ニップ通過回数と画像グロスとの関係を示す図である。
本実施形態の定着装置は、複数のニップ部と、トナーが転写された転写材をニップ部に搬送する搬送手段と、を有し、前記トナーが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃ (1)
(式(1)中、T(10MPa)は、フローテスター印加圧力10MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(1MPa)は、フローテスター印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。)
本実施形態の画像形成装置は、上記の定着装置を備える。
また、本実施形態の画像形成方法は、像保持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体の表面に形成された潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を有し、前記トナーが前記式(1)を満たし、前記定着工程において、複数回加圧することを特徴とする。
特許文献1及び2に記載のワックスコアトナーやカプセルトナーを使用した圧力定着方法では、定着時のトナーの流動性が十分ではなかったり、シェルが残留する場合があり、これによって十分な光沢度が得られなかった。また、圧力依存性が高いトナーは、加圧時に高圧力でニップする必要があり、また、十分なニップ時間を与える必要があるため、装置の大型化、高荷重化につながった。
本発明の定着方法によれば、圧力定着性を有するトナーを定着するにあたり、複数回加圧する構成にすることにより、装置が小型化され、低消費電力化が達成される。
本発明者等は、鋭意検討した結果、圧力定着性を有するトナーの定着に際し、複数回の加圧により定着(多段圧力定着)させた場合には、トナーの流動性を単一ニップと差異がない状態で保持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。これは、圧力流動性が、トナーを構成する樹脂の組成に由来しており、トナーの結着樹脂に圧力を加えない時には分離しており(相溶しておらず)、圧力を加えた時のみ相溶するという、バロプラスチック特性によるものと考えられる。すなわち、加圧による相溶状態から圧力解放すると、再び相分離状態となる。相分離が行われる前に次の加圧を行うことで、相溶が促進できるため、少ない圧力を複数回に分けて与えることにより、従来には認められなかった樹脂の流動性が得られると考えられる。
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。図1は、第一の実施の形態である画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置である。この画像形成装置には、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kが備えられている。また、各画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10が備えられている。さらに、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20が備えられている。また、二次転写された画像を用紙上に定着させる定着装置60が備えられている。さらに、各装置(各部)の動作を制御する制御部40が備えられている。
本実施の形態において、各画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kには、次のような電子写真用デバイスが順次配設されている。矢印A方向に回転する感光体ドラム(像保持体)11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12が設けられている。また、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。さらに、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられている。また、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。また、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17が設けられている。中間転写ベルト15は、定速性に優れたモータ(図示せず)などにより駆動される駆動ロール31などの各種ロールによって図1に示す矢印B方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16を含んで構成されている。そして、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とを含んで構成される。二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置されている。さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙上にトナー像を二次転写する。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。本実施形態における画像形成装置では、図示しない画像読取装置(IIT)等から画像データが出力される。そして、この画像データは図示しない画像処理装置(IPS)により所定の画像処理が施され、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kの各々の感光体ドラム11に照射している。各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kの現像器14によって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。二次転写部20では、二次転写ロール22が中間転写ベルト15を介してバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送ロール52等により搬送された用紙は、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写部20において、用紙上に一括して静電転写される。その後、トナー像が静電転写された用紙は、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55は、2つの支持ロールと、これら支持ロールに張架されたベルトにより構成され、用紙を最適な搬送速度で定着装置60まで安定的に搬送する。
なお、上記の説明においては所謂タンデム式の画像形成装置について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータリー現像方式(リボルバー現像方式)の画像形成装置に適用してもよい。
次に、本実施の形態が適用される定着装置60について説明する。
図2は、定着装置60の一実施態様を示す概略構成断面図である。
図2において、定着装置60は、対向する各ロール1−1〜1−5、2−1〜2−5がφ30のSUS(ステンレス鋼)製であり、圧力5MPa(50kgf/cm2)以上のニップ幅が1mmになるように図示しない加圧機構により荷重を調整している。図2では、このニップ部は50mm間隔で5つあり、ベルト張架ロール3、4によってベルト(無端状ベルト)5、6を張架している。
ベルト5、6は特に限定されず、画像形成装置において無端状ベルトとして使用されている公知のベルトから適宜選択すればよいが、定着時におけるベルトへのトナーの貼り付きを抑制する観点から、ベルト基材の表面に弾性体層、剥離層等を形成することが好ましい。
例えば、ベルト基材としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が例示され、これらの中でも、ポリイミド系樹脂及びポリアミドイミド系樹脂を用いることが好ましい。また、ベルト基材の厚みは、0.02mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
図2では、ベルト5、6として、厚さ100μmのポリイミドの基層上に離型層を形成している。離型層としては、厚さ10μmのシリコーンゴム等を用いることができる。各々のベルトは図示しない駆動機構により矢印方向に回転駆動する。
本実施形態において、定着装置は、複数のニップ部を有していれば特に限定されず、加熱手段を有していてもよいが、加圧手段のみにて定着することが好ましい。加熱手段を有していないことにより、より省電力(低消費電力)にて定着されるので好ましい。
また、本実施形態の定着装置が加熱手段を有する場合、該加熱温度は100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。
通常の熱可塑性のトナーを定着する場合、定着装置の加圧部を例えば150℃程度に加熱し、熱と圧力によりトナーを溶融することが行われている。その際に、用紙やトナーの内部に含まれている水分が100℃以上に加熱されて水蒸気が発生し、用紙とトナーと定着部材との密着性不良や定着画像に水蒸気による点状の欠陥が発生する場合がある。そのために、本実施形態のように複数の加圧部材を隣接して設けるためには、各々のニップ部(加圧部)間のギャップでの圧力が水蒸気圧より低圧にならないようにロール間に固定部材を配置する等の対応が必要となり、設計上の規制が多い。本実施形態では、トナーの加熱温度を低く、又は、加熱なしにトナーを定着するため、水蒸気の発生による画像欠陥が抑制され、さらに、設計の自由度が向上するので好ましい。
本実施形態において、定着装置は複数のニップ部を有する。ニップ部の数は2以上であれば特に限定されないが、省エネルギー化及び装置小型化の観点から、3〜5であることが好ましい。
図2では、ニップ部は、5対の加圧部材1−1、1−2、1−3、1−4、1−5と、対向部材2−1、2−2、2−3、2−4、2−5とを有し、加圧部材と対向部材との間で加圧(ニップ)することにより、トナーが転写された転写材7を定着する。
なお、本実施形態において加圧部材とは、転写材のトナーが保持された面側に存在し、対向部材はこれとは逆に、トナーが保持されていない面側に存在する。
なお、図2において、加圧部材1−1と対向部材2−1とが一対となりニップ部を形成しており、定着装置は、複数の加圧部材及び複数の対向部材を備える。しかし、本実施形態の定着装置は、ニップ部(加圧部)を複数有していればよく、これに限定されるものではない。
図3に示すように、1つの加圧部材1と、これに対向する複数の対向部材2−1、2−2、2−3、2−4、2−5とを有していてもよく、図4に示すように、複数の加圧部材1−1、1−2、1−3、1−4、1−5と、これに対向する1つの対向部材2とを有していてもよい。
本実施形態において、定着装置60と転写材7との剥離部は、複数存在していてもよいが、図2に示すように、該剥離部は一箇所であることが好ましい。ここで剥離部とは、定着装置に転写材が搬送されてから、転写材が定着装置から排出されるまでに転写材が定着部材(加圧部材、無端状ベルト)から離れ、非接触になる箇所を意味する。図2において、転写材7は定着装置60に搬送され、定着装置60から搬出される時に剥離される。したがって、剥離部が1箇所である。
また、加圧部材及び/又は対向部材に沿って、加圧部材と対向部材との間に配置された無端状ベルトを有することが好ましい。無端状ベルトを有すると、定着装置と転写材との剥離部が低減し、トナーのオフセット及び像ズレが低減されるので好ましい。
図2に示す定着部材において、無端状ベルトが張架されていない場合には、剥離部は最終的な定着装置60と転写材7との剥離部以外に、加圧部材1−1と対向部材2−1より構成される第1のニップ部と、加圧部材1−2と対向部材2−2から構成される第2のニップ部との間、同様にして、第2のニップ部と第3のニップ部との間、第3のニップ部と第4のニップ部との間、第4のニップ部と第5のニップ部との間にも剥離部が存在し、最終的な剥離部を合わせて、合計5箇所の剥離部が存在する。
本実施形態において、前記ニップ部における印加圧力の少なくとも1つが、前記トナーのフローテスター溶融粘度が105Pa・sになる圧力P1以上であることが好ましい。ニップ部における印加圧力の少なくとも1つがP1以上であることにより、定着性が向上するので好ましい。
本実施形態において、複数存在するニップ部における印加圧力の内、より多くのニップ部において、印加圧力がP1以上であることがより好ましく、ニップ部の全てにおける印加圧力がP1以上であることがさらに好ましい。
なお、前記フローテスター溶融粘度が105Pa・sになる圧力P1は、機内温度で測定することが好ましいが、本実施形態では便宜的に25℃で測定する。
また、本発明において、トナーのフローテスター溶融粘度が105Pa・sになる圧力P1以上で加圧している時間の合計T1は、前記圧力P1において画像グロス飽和点の値G1の80%に達する時間T0以上であることが好ましい。
画像グロス飽和点の値、及び、画像グロス飽和点に達する圧力印加時間は以下の方法により測定される。
本実施形態において、画像グロス飽和点とは、画像グロス増加率(画像グロスのニップ時間に対する増加率)が0.2%/ms以下になる点を意味する。
具体的には、トップコートNの127gsmを評価用紙として、定着圧力をP1で一定とし、ニップ時間を変化させ、画像グロスを測定し、ニップ時間を横軸、画像グロスを縦軸としてグラフを作成し、該グラフの傾き(微分値)から、画像グロス増加率(%/ms)が算出される。なおこのとき、加圧は一段で行う。
画像グロスは、シアン、マゼンタ、イエロートナーを各々4g/m2用紙に重ねて転写したベタ画像を作成し、グロスメーター(日本電色工業(株)製、商品名「VGS−SENSOR」)により入射角60°で計測する。
本実施形態において、ニップ部において圧力P1以上で加圧するインターバル時間I1は、加圧合計時間をT1にして加圧間隔を長くしたときに画像グロスが画像グロス飽和点の値G1の50%になる時間I0以下であることが好ましい。
I0について、さらに詳述する。I0の測定方法としては、加圧合計時間をT1で一定とし、インターバル時間を変化させる。このとき、印加圧力はP1以上であれば特に限定されないが、P1に基づき決定した、定着装置で使用する印加圧力で測定することが好ましい。
本実施形態において、ニップ部が5つある場合には、一つのニップ部での加圧時間は、(T1/5)であり、ニップ部の間隔や、搬送速度を調整することにより、加圧のインターバル時間が調整できる。インターバル時間を変化させながら、得られる画像のグロスを測定する。画像グロスは、シアン、マゼンタ、イエロートナーを各々4g/m2用紙に重ねて転写したベタ画像を作成し、グロスメーター(日本電色工業(株)製、商品名「VGS−SENSOR」)により入射角60°で計測する。
インターバル時間を長くすると、光沢度が低くなる傾向がある。インターバル時間を横軸、グロスを縦軸としてグラフを作成し、画像グロスがG1の50%となるインターバル時間I0を求める。
なお、各色についてI0を測定し、I1は最も短いI0以下とすることが好ましい。
(トナー)
本実施形態において、トナー(本明細書において、静電荷像現像用トナーともいう。)は、式(1)を満たす。
20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃ (1)
式(1)中、T(1MPa)は、フローテスター印加圧力1MPa(10kgf/cm2)においてトナー粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(10MPa)は、フローテスター印加圧力10MPa(100kgf/cm2)においてトナー粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。
なお、「20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃」という表記は、「20℃≦{T(1MPa)−T(10MPa)}≦120℃」と同義であり、「{T(1MPa)−T(10MPa)}の値が20℃以上、120℃以下」と同義である。
ガラス転移温度の高い樹脂(以下、「高Tg樹脂」ともいう。)とガラス転移温度の低い樹脂(以下、「低Tg樹脂」ともいう。)とがミクロな相分離状態を形成している場合、その樹脂は、圧力に対して可塑化挙動を示し、一定以上の加圧下においては常温領域でも流動性を示す。このような樹脂はバロプラスチックと呼ばれることがある。
バロプラスチックを含むトナーに一定以上の圧力が印加された場合には可塑化流動性を示し、それ未満の圧力が印加された場合には、固体的に振舞わせることができる。このことにより、電子写真プロセスにおける定着工程以外の現像工程、クリーニング工程などにおいては、高い信頼性が確保される。
また、高い信頼性を付与することにより、従来実現しがたかった3μm以下などの小径化したトナーも使用される。これによりトナー消費量の低減と高精細な画像が実現可能となる。その結果、高画質、信頼性、また、トナー消費量低減による経済性との両立がなされる。本実施形態においては、バロプラスチックの圧力可塑化効果を積極的に使用することによって、低温定着性と高信頼性が両立される。
本実施形態において、フローテスター印加圧力1MPaにおいて、前記静電荷像現像用トナーの粘度が104Pa・sとなる温度T(1MPa)が60℃以上であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましい。T(1MPa)が60℃以上であると、トナーの現像機内での強度に優れる。
フローテスター印加圧力10MPaにおいて、前記静電荷像現像用トナーの粘度が104Pa・sとなる温度T(10MPa)が80℃以下であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。T(10MPa)が80℃以下であると、十分な定着性が得られ、定着画像強度に優れる。
前記T(1MPa)及びT(10MPa)は、30℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃の関係を満たすことが好ましい。
T(1MPa)−T(10MPa)が30℃以上であると、トナーの定着性に優れ、定着画像強度に優れる。また、T(1MPa)−T(10MPa)が120℃以下であると、定着不良を抑制でき、定着画像強度に優れる。
本実施形態においては、30℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦60℃が好ましい。上記の数値の範囲内であると定着性の観点で好ましい。
ここでのフローテスター測定条件は以下とする。
(株)島津製作所製フローテスターCFT−500Aを用い、開始温度19℃〜最大温度170℃、昇温速度3℃/min、予熱時間300sec、シリンダー圧力1MPa(10kgf/cm2)から10MPa(100kgf/cm2)まで可変とし、ダイL×D=1.0mm×1.0mmの条件で等速昇温した時の軟化状態を測定する。試料としては、トナーについてはトナーの樹脂のみを分取するのは困難であるため、トナー自体を秤量して用いる。プランジャー断面積は10cm2とする。測定方法は、等速昇温するに従い、試料は徐々に加熱され流出がはじまる。さらに昇温すると溶融状態となった試料が大きく流出し、プランジャー降下が停止し、1回の測定を終了する。各温度における流出量を19〜170℃まで3℃きざみで測定し、見かけ粘度η’(Pa・s)を得る。この際、フローテスター印加圧力1MPa(10kgf/cm2)とフローテスター印加圧力10MPa(100kgf/cm2)において、見かけ粘度η’(Pa・s)が1×104Pa・sとなる温度を求め、その差分を算出する。
前記バロプラスチックの例としては、ミクロ相分離構造を有するものが好ましく、特開2007−114635号公報に記載されているようなブロック構造を有する共重合体がより好ましい。以下、ブロック構造を有する樹脂について説明する。
本実施形態において、静電荷像現像用トナーに含まれる結着樹脂の80重量%以上が、バロプラスチックであることが好ましく、100重量%がバロプラスチックであることがより好ましい。
(ブロック構造を有する共重合体)
本実施形態に用いる静電荷像現像用トナーは、ブロック構造を有する共重合体(ブロック共重合体)を含むトナーであることが好ましい。
ブロック構造を有する共重合体は、高いガラス転移温度を有する樹脂(ブロックA)と低いガラス転移温度を有する樹脂(ブロックB)とを有する共重合体であることが好ましい。
(1)エチレン性不飽和化合物を重合させたブロックよりなるブロック共重合体
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、エチレン性不飽和化合物を重合させたブロックよりなるブロック共重合体を含む。これらブロック共重合体は種々のエチレン性不飽和化合物を重合させることにより得られる。
前記ブロック共重合体は、下記のブロックA及びブロックBを含むブロック共重合体であることが好ましい。前記ブロックAのガラス転移点Tg(A)は60℃以上であることが好ましく、70〜110℃であることがより好ましい。上記範囲内であるとトナーとしての実用強度、定着後の画像強度が良好である。
また、前記ブロックBのガラス転移点Tg(B)は20℃以下であることが好ましく、−100〜10℃であることがより好ましい。上記範囲内であると圧力下での良好な定着性が得られる。
ブロックA及びブロックBが、ブロック共重合体全体の60重量%以上を占めることが好ましく、80〜100重量%を占めることがより好ましく、ブロック共重合体がブロックA及びブロックBよりなるジブロック共重合体であることがさらに好ましい。ブロックA及びブロックBの含有量が上記範囲内であると、圧力下での良好な定着性が得られる。
また、ブロックAとブロックBとの比率としては、ブロックA及びブロックBの総量を100重量%として、ブロックAが占める割合は25〜75重量%であることが好ましく、40〜60重量%であることがより好ましい。上記範囲内であると、トナーとしての実用強度、定着後の画像強度が良好である。
ガラス転移点Tgの測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて−80℃から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行ったときのASTM D3418−82に規定された方法で測定した値をいう。
さらに、ブロックAのホモポリマーのガラス転移点Tg(A)とブロックBのホモポリマーのガラス転移点Tg(B)との差(Tg(A)−Tg(B))が60℃以上であることが好ましい。上記範囲内であると十分な圧力定着性が得られ、また、定着のための熱エネルギーが削減される。
本実施形態において、エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればよく、付加重合性の化合物であることが好ましく、アニオン重合性、カチオン重合性、ラジカル重合性、配位重合性のいずれでもよいが、中でもラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物であることがより好ましい。
本実施形態に用いることができるラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物としては、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類(「(メタ)アクリル酸エステル」等の表記は「アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル」等と同義であり、以下同様とする。)、エチレン性不飽和ニトリル類、エチレン性不飽和カルボン酸、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類等が挙げられる。
より具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、β−カルボキシエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン類等を好ましく例示できる。ブロック共重合体に含まれるブロックとしては、これらのエチレン性不飽和化合物のいずれか1種からなる単独重合体又はこれらを2種以上共重合して得られる共重合体、さらにはこれらの混合物が使用される。
Tg(A)が60℃以上であるブロックAの作製に好ましく用いることができるエチレン性不飽和化合物としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類が挙げられ、中でもスチレンを好ましく用いることができる。
また、Tg(B)が20℃以下であるブロックBの作製に好ましく用いることができるエチレン性不飽和化合物としては(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく挙げられ、中でもアクリル酸エステル類がより好ましく、アルキル基が炭素数1〜8であるアクリル酸アルキルエステル類がさらに好ましく、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が特に好ましい。
これらエチレン性不飽和化合物のブロック共重合体の作製においては、種々のリビング重合法、例えばイオン重合法、リビングラジカル重合法など既存の手法が用いられるが、本実施形態においては、そのモノマーの組み合わせの容易性からリビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
この場合、リビングラジカル重合法としては、NMRP法(Nitroxide Mediated Radical Polymerization)、ATRP法(Atom Transfer Radical Polymerization)、RAFT法(Reversible Addition Fragmentation Transfer)など既存の方法を用いることができる。中でも本実施形態においては、NMRP法が好ましい。
NMRP法に用いるニトロキシド化合物としては、リビングラジカル重合法に用いられる公知のニトロキシド化合物が用いられ、具体的には、特開2004−307502号公報、特開2005−126442号公報、特開2007−518843号公報、特許第4081112号公報等に記載の化合物が用いられる。本実施形態においては、式(I)で表されるモノアルコキシアミンが好ましく用いられる。
Figure 0005446538
(式(I)中、R1は炭素数1〜5個の直鎖又は分岐を有するアルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜8個の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)
1は、炭素数1〜5個の直鎖又は分岐を有するアルキル基を表し、炭素数1〜3の直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
2は水素原子、炭素数1〜8個の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。炭素数1〜8個の直鎖又は分岐を有するアルキル基としてはメチル基、エチル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としてはフェニル基等が挙げられ、アルカリ金属イオンとしてはLi+、Na+、K+等が挙げられ、アンモニウムイオンとしてはNH4 +、NBu4 +、HNBu3 +等が挙げられる。中でも、本実施形態においては、R2は水素原子であることが好ましい。
前記NMRP法は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
また、溶剤、好ましくはエタノール等のアルコール、芳香族溶剤、塩素化溶剤、エーテル又は極性非プロトン溶媒の中から選択される溶剤の存在下又は非存在下で反応させることが好ましく、溶剤の非存在下で反応させることがより好ましい。
また、反応温度は30〜90℃の範囲内が好ましく、50〜90℃の範囲内がより好ましい。
ニトロキシド化合物の使用量は、重合終了時の数平均分子量により決定される。通常、使用する単量体重量と数平均分子量から、使用するニトロキシド化合物量は化学量論的に求められる。
本実施形態において、前記ブロック共重合体の含有量は、静電荷像現像用トナーを100重量%として、50〜99重量%であることが好ましく、70〜95重量%であることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、加圧又は加熱加圧定着において定着性に優れるため好ましい。
<Tgが40℃以上の樹脂>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、前記ブロック共重合体以外にさらにTgが40℃以上の樹脂を含有することが好ましく、Tgが50〜80℃の樹脂を含有することがより好ましい。静電荷像現像用トナーにTgが40℃以上の樹脂を配合することにより、さらに電子写真プロセス内でのトナーの機械的安定性を向上する。
本実施形態においては、Tgが40℃以上の樹脂により、静電荷像現像用トナーのシェル層を形成する態様が好ましい。
前記樹脂としては、ポリエステル樹脂などの重縮合樹脂、及び、エチレン性不飽和化合物の重合体が好ましく例示される。この場合、重縮合樹脂としては、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、トナーの機械的安定性の向上のためには、非結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸や、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の重縮合性単量体を用いた直接エステル化反応、エステル交換反応等により重縮合を行い、作製される。重縮合の際には、重縮合を促進するために、重縮合触媒を併用することが好ましい。
本実施形態において、多価カルボン酸は、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸、それらのアルキルエステル、酸無水物及び酸ハロゲン化物を含む。多価アルコールは、多価アルコール、それらのエステル化合物を含む。なお、多価カルボン酸のアルキルエステルは、低級アルキルエステルであることが好ましい。前記低級アルキルエステルとは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1〜8であるアルキルエステルを表す。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等が挙げられる。
本実施形態に用いることができる多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
これらの多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
多価アルコール(ポリオール)は、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノキシアルコールフルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン)等が挙げられる。
また、ジオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等が挙げられる。
これらの多価アルコール(ポリオール)は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
本実施形態においてエチレン性不飽和化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、親水性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体であってもよい。
親水性基としては、極性基が挙げられ、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基等の酸性極性基:アミノ基等の塩基性極性基、アミド基、ヒドロキシ基、シアノ基、ホルミル基等の中性極性基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、特に本実施形態の静電荷像現像用トナーに好ましく用いられるのは、酸性極性基である。この酸性極性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体が、樹脂粒子表面にある特定の範囲で存在することにより、樹脂粒子に凝集性を付与し、樹脂粒子のトナー化され、さらにトナーに十分な帯電性が与えられる。
好ましく用いられる酸性極性基としては、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。この酸性極性基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及びスルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。上記カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステルも挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
Tgが40℃以上の樹脂は、エチレン性不飽和化合物の重合体である場合には、ランダム共重合体であることが好ましい。
また、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物をモノマー単位として含有する樹脂が好ましく、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合比で0.1〜10mol%含有することが好ましい。上記範囲内であると、水系媒体中での静電荷像現像用トナーの製造工程において、Tgが40℃以上の樹脂がトナーのシェル層を容易に形成するため好ましい。
上記、Tgが40℃以上のエチレン性不飽和化合物の重合体、ポリエステル樹脂などの重縮合樹脂は、トナーに含まれる全結着樹脂の50重量%以下が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。上記範囲内であると、現像機内でのトナー耐久性が向上し、安定した画質特性が得られる。
(2)結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックを有するポリエステルブロック共重合体
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、ブロック共重合体として、結晶性ポリエステルブロック(以下、「結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)及び非結晶性ポリエステルブロック(以下、「非結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)を有するポリエステルブロック共重合体を使用することも好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを有するポリエステルブロック共重合体を形成している場合、かかる共重合体は圧力に対して可塑挙動を示し、一定以上の加圧下においては、常温領域でも流動性を示す。また、若干の加熱下であればこのような可塑化流動挙動は促進され、より低圧の加圧下でも定着に必要な樹脂流動性を得ることができると考えられる。
本実施形態においては、結晶性ポリエステルブロックと非結晶性ポリエステルブロックを有するポリエステルブロック共重合体を使用することにより、一定以上の加圧下において流動性が付与され、それ以下の圧力においては、極めて固体的に振舞わせることができる。したがって、加圧又は加熱加圧定着時以外の現像工程、転写工程、クリーニング工程等における信頼性の向上が図られる。
特に、本実施形態の静電荷像現像用トナーは、加圧により可塑化流動挙動が得られるため、定着時に温度変動が発生しやすい厚紙への定着に好適に使用される。これまでは、高速定着が困難であり、定着速度を落としたり、高い加熱温度を設定したりしない限り困難であった厚紙への定着も、薄紙への定着と同様の定着速度や温度設定で行われる。
前記結晶性ポリエステルブロックのTgは0℃以下であることが好ましく、−60〜−30℃であることがより好ましい。また、前記非結晶性ポリエステルブロックのTgは50℃以上であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。
結晶性ポリエステルブロックのTgが0℃以下とは、ポリエステルブロック共重合体に用いる結晶性ポリエステル樹脂ホモポリマーのガラス転移点Tgが0℃以下であることを意味する。また、非結晶性ポリエステルブロックのTgが50℃以上とは、非結晶性ポリエステル樹脂のホモポリマーのガラス転移点が50℃以上であることを意味する。
結晶性ポリエステルのTgは圧力及び/又は温度による定着性能に影響を与え、この値が0℃以下であると、定着のための圧力や熱エネルギーを低減できる。また、非結晶性ポリエステル樹脂のTgはトナーの現像機内でのつぶれや凝集などに対する現像機内安定性に影響を与え、この値が50℃以上であると、現像機内での十分な安定性が得られる。
この場合、上記Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用い、−80℃から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のASTM D3418−82に規定された方法で測定した値をいう。
本実施形態において、静電荷像現像用トナーは、少なくとも1種以上の結晶性ポリエステルブロック及び少なくとも1種以上の非結晶性ポリエステルブロックを有するポリエステルブロック共重合体を含む。前記結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロック以外にも、他のブロックを有していてもよい。
ポリエステルブロック共重合体は、結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックを50〜100重量%有することが好ましく、80〜100重量%有することがより好ましく、結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックよりなるポリエステルブロック共重合体が好ましい。
前記ポリエステルブロック共重合体は、Tgが0℃以下である結晶性ポリエステルブロック及びTgが50℃以上である非結晶性ポリエステルブロックを有することが好ましい。Tgが0℃以下である結晶性ポリエステルブロック及びTgが50℃以上である非結晶性ポリエステルブロックの他に、他の結晶性又は非結晶性ポリエステルブロックを有することもできるが、少なくとも1種以上のTgが0℃以下である結晶性ポリエステルブロック及び少なくとも1種以上のTgが50℃以上である非結晶性ブロックのみからなるポリエステルブロック共重合体であることが好ましく、1種のTgが0℃以下である結晶性ポリエステルブロック及び1種のTgが50℃以上である非結晶性ポリエステルブロックのみからなるジブロック共重合体であることがより好ましい。中でも、1つのTgが0℃以下である結晶性ポリエステルブロック及び1つのTgが50℃以上である非結晶性ブロックのみからなるジブロック共重合体がさらに好ましい。
結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックを有するポリエステルブロック共重合体は、いずれの製造方法により得てもよい。具体的には、結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを混合して、高分子化反応により得る製造方法、結晶性ポリエステル樹脂に非結晶性ポリエステル樹脂形成単量体を混合して重合する方法又はその逆の方法などが使用される。これらの中でも結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を混合して、高分子化反応によりポリエステルブロック共重合体を得る方法が好ましい。
各ポリエステルブロック又はポリエステルブロック共重合体は、硫黄酸を触媒とし、150℃以下で重合して得ることが好ましい。これにより、低エネルギーで各ポリエステルブロック又はポリエステルブロック共重合体を得られるので好ましい。
本実施形態に使用する結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックは、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸又はそれらのアルキルエステルと、多価アルコール又はそれらのエステル化合物、ヒドロキシカルボン酸などの重縮合性単量体を用い、水系媒体中での直接エステル化反応、エステル交換反応等により重縮合を行い作製される。
なお、前記の「結晶性ポリエステルブロック」に示すような「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が15℃以内であることを意味する。一方、吸熱ピークの半値幅が15℃を超える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、「非結晶性」(非晶質)であることを意味する。
重縮合性単量体として用いることができる多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、グルタル酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
また、これらカルボン酸のカルボキシ基を酸無水物、混合酸無水物、酸塩化物、又は、エステル等に誘導したものを用いてもよい。
また、本実施形態に用いられる多価アルコールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ペンタングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。なお、前記ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1分子あたりに1〜6モル付加させていてもよく、エチレンオキサイド2モル付加物、エチレンオキサイド3モル付加物が好ましく用いられる。
また、ジオール以外の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等が挙げられる。
これらの多価アルコールは水系媒体に難溶あるいは不溶であるため、多価アルコールが水系媒体に分散したモノマー滴中でエステル合成反応が進行する。
また、本実施形態に用いられるヒドロキシカルボン酸とは、分子内にヒドロキシ基とカルボキシ基の両方をもつ化合物である。ヒドロキシカルボン酸としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸や脂肪族ヒドロキシカルボン酸が例示できるが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を使用することが好ましい。
具体的には、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、乳酸が例示できる。これらの中でも乳酸を使用することが好ましい。
本実施形態においては、これらの重縮合性単量体の組み合わせにより非結晶性ポリエステルブロックや結晶性ポリエステルブロックを容易に得られる。
結晶性ポリエステルブロックを得るために使用される多価カルボン酸としては、上記多価カルボン酸のうち、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物が挙げられる。
また、結晶性ポリエステルブロックを得るために使用される多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
また、カプロラクトンなど環状単量体を開環重合することにより得られる結晶性ポリエステルブロックも好ましく用いられる。
このような結晶性ポリエステルブロックとしては、エチレングリコールとグルタル酸とを反応して得られるポリエステル、1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸、又はシクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコール、プロパンジオール又は1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコール、プロパンジオール又はブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルが挙げられる。これらの中でも特にコハク酸とプロパンジオールとを反応して得られるポリエステル、グルタル酸とエチレングリコールとを反応して得られるポリエステル、セバシン酸とプロパンジオールとを反応して得られるポリエステルが好ましい。
非結晶性ポリエステルブロックを得るために使用される多価カルボン酸としては、上記の多価カルボン酸のうち、ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル二酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができる。また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。また、これらカルボン酸のカルボキシ基を酸無水物、酸塩化物、又は、エステル等に誘導したものを用いてもよい。
これらの中でも、テレフタル酸やその低級エステル、ジフェニル二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることが好ましい。なお、低級エステルとは、炭素数1〜8の脂肪族アルコールのエステルをいう。
また本実施形態における非結晶性ポリエステルを得るために使用される多価アルコールとしては、上記多価アルコールのうち、特に、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール等を用いることが好ましい。
また非結晶性ポリエステル樹脂としてヒドロキシカルボン酸の重縮合体が用いられる。
前記多価カルボン酸及び多価アルコールは、1種の重縮合樹脂を作製するために、それぞれ1種を単独で用いても、一方が1種で他方が2種以上用いても、それぞれ2種以上ずつを用いてもよい。また、1種の重縮合樹脂を作製するためヒドロキシカルボン酸を用いる場合、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよく、多価カルボン酸や多価アルコールを併用してもよい。
ポリエステルブロック共重合体における結晶性ポリエステルブロックと非結晶性ポリエステルブロックとの重量比は、結晶性ポリエステルブロック/非結晶性ポリエステルブロック=1/20〜20/1であることが好ましく、1/10〜10/1であることがより好ましい。1/9〜5/5であることが、結晶性ポリエステルブロックによるトナー帯電性の悪化を抑制できるためにさらに好ましい。結晶性ポリエステルブロックと非結晶性ポリエステルブロックの割合が上記範囲内であると、トナーを作製した場合のポリエステルブロック共重合体としての帯電性及び機械的強度が十分であり、さらに低温定着性に優れるので好ましい。さらに、加圧下における流動挙動に優れるので好ましい。
結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックとを混合して、高分子化反応によりポリエステルブロック共重合体を得る場合、結晶性ポリエステルブロックは、その結晶融点が40〜150℃であることが好ましく、50〜120℃であることがより好ましく、特に50〜90℃であることが好ましい。用いる結晶性ポリエステルブロックの結晶融点が上記範囲内であると、得られるトナーの耐ブロッキング性が良好であり、また低温においても良好な溶融流動性が得られ、定着性が良好であるので好ましい。
結晶性ポリエステルブロックの融点は、示差走査熱量測定法(DSC)に従い、例えば「DSC−20」(セイコーインスツル(株)製)によって測定でき、具体的には、試料約10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121:87に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂は、複数の融解ピークを示す場合があるが、本実施形態においては、最大のピークをもって融点とみなす。
結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックとを混合して、高分子化反応によりポリエステルブロック共重合体を得る場合、混合する結晶性ポリエステルブロックの数平均分子量は1,000〜100,000であることが好ましく、1,500〜30,000であることがより好ましい。また、混合する非結晶性ポリエステルブロックの数平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、1,500〜30,000であることがより好ましい。
本実施形態において、ポリエステルブロック共重合体の数量平均分子量は、3,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。また本実施形態に用いることができるポリエステルブロック共重合体は、単量体のカルボン酸価数、アルコール価数の選択、架橋剤の添加などによって一部枝分かれや架橋などを有していてもよい。
なお、数平均分子量Mnの値は、公知の種々の方法により求めることができ、測定方法の相異によって若干の差異があるが、本実施形態においては下記の測定法によって求めることが好ましい。すなわち、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって以下に記す条件で数平均分子量Mnを測定する。温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料重量として3mg注入し測定を行う。試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作成された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、数平均分子量Mn=13.7×104となることにより確認される。
また、用いるGPCのカラムとしては、前記条件を満足するものであるならばいかなるカラムを採用してもよい。具体的には、例えばTSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)等が用いられる。なお、溶媒及び測定温度は上記に記載した条件に限定されるものではなく、適当な条件に変更してもよい。
結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックは上記多価アルコールと多価カルボン酸とを常法に従って重縮合反応させることによって製造される。この重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施されるが、好適にはバルク重合が用いられる。また大気圧下で反応が可能であるが、得られるポリエステル分子の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件が用いられる。
具体的には、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の数平均分子量に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造される。
なお、少なくとも結晶性ポリエステルブロック、非結晶性ポリエステルブロック及びポリエステルブロック共重合体のいずれか1つは、硫黄酸触媒の存在下で、150℃以下にて重合されたものであることが好ましい。
反応温度が150℃以下であると、低エネルギーで製造することができるので好ましい。中でも、ポリエステルブロック共重合体を形成する工程が、結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックに、触媒として硫黄酸触媒を添加し、150℃以下にて加熱することにより得られたものであることが好ましい。
硫黄酸触媒としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸などのアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸などの高級脂肪酸硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、ナフテニルアルコール硫酸、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、スルホン化高級脂肪酸、樹脂酸アルコール硫酸、及びこれらすべての塩化合物などが使用できるが、これらに限定されない。またこれらの触媒は、構造中に官能基を有していてもよい。これらの触媒は必要に応じて複数を組み合わせることもある。好ましく使用される硫黄酸触媒としては、アルキルベンゼンスルホン酸が例示され、これらの中でも特にドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、しょうのうスルホン酸等が好ましい。
これらの中でも、特に、硫黄酸触媒としては、以下式(i)又は式(ii)の構造を有するものが好ましい。
Figure 0005446538
式(i)中、R1は炭素数8以上のアルキル基を表す。式(ii)中、R2は炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のアルコキシ基を表す。
式(i)中、R1は炭素数8〜20であることがより好ましく、炭素数8〜16であることがさらに好ましい。R1は分岐アルキル鎖であっても、直鎖アルキル鎖であってもよいが、直鎖アルキル鎖であることが好ましい。
式(ii)中、R2は炭素数8〜20であることがより好ましく、炭素数8〜16であることがさらに好ましい。R2がアルキル基であるとき、分岐アルキル鎖であっても、直鎖アルキル鎖であってもよいが、直鎖アルキル鎖であることがより好ましい。R2がアルコキシ基であるとき、分岐アルキル鎖を有するアルコキシ基であってもよいし、直鎖アルキル基を有するアルコキシ基であってもよいが、直鎖アルキル基を有するアルコキシ基であることがより好ましい。
上記触媒とともに、一般的に使用される他の重縮合触媒を用いることもできる。具体的には、金属触媒、加水分解酵素型触媒、塩基性触媒、硫黄酸以外のブレンステッド酸触媒が例示される。
金属触媒としては以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物、希土類金属触媒を挙げられる。
希土類含有触媒としては具体的には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含むものが有効である。これらは、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、トリフラート構造を有するものが有効であり、前記トリフラートとしては、構造式では、X(OSO2CF33が例示できる。ここでXは、希土類元素であり、これらの中でも、Xは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)などであることが好ましい。
また、ランタノイドトリフラートについては、有機合成化学協会誌、第53巻第5号、p44−54に詳しい。
加水分解酵素型触媒としてはエステル合成反応を触媒するものであれば特に制限はない。加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店、(1982)、等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類される加水分解酵素、フロレチンヒドラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等が挙げられる。
上記のエステラーゼのうち、グリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素を特にリパーゼと呼ぶが、リパーゼは有機溶媒中での安定性が高く、収率良くエステル合成反応を触媒し、さらに安価に入手できることなどの利点がある。したがって、本実施形態においても、収率やコストの面からリパーゼを用いることが好ましい。
リパーゼには種々の起源のものを使用できるが、好ましいものとして、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得られるリパーゼ、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらに、パンクレアチン、ステアプシン等が挙げられる。このうち、シュードモナス属、カンジダ属、アスペルギルス属の微生物由来のリパーゼを用いることが好ましい。
塩基性触媒としては、一般の有機塩基化合物、含窒素塩基性化合物、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキル又はアリールホスホニウムヒドロキシドが挙げられるがこれに限定されない。有機塩基化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類、含窒素塩基性化合物としては、トリエチルアミン、ジベンジルメチルアミン等のアミン類、ピリジン、メチルピリジン、メトキシピリジン、キノリン、イミダゾールなど、さらにナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属類及びカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、ハイドライド、アミドや、アルカリ、アルカリ土類金属と酸との塩、たとえば炭酸塩、燐酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩、フェノール性水酸基との塩が挙げられる。
また、アルコール性水酸基との化合物やアセチルアセトンとのキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
硫黄酸以外のブレンステッド酸触媒としては、各種脂肪酸、高級アルキルリン酸エステル、樹脂酸、ナフテン酸、ニオブ酸が例示できるが、これらに限定されるものではない。
触媒の総添加量としては、重縮合成分に対して0.01〜10重量%とすることが好ましく、0.01〜8重量%とすることがより好ましい。触媒は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、前記ポリエステルブロック共重合体の他に、エチレン性不飽和化合物の重合体を含んでもよい。
エチレン性不飽和化合物とは、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する単量体であって、エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、及び、ビニルエーテル基等が好ましく例示できる(なお、「(メタ)アクリルオキシ基」等は「アクリルオキシ基及び/又はメタクリルオキシ基」を意味しており、以下、同様とする。)。
さらにエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。
芳香族系ビニル単量体としては、スチレン及びその誘導体が挙げられる。ここでいうスチレンの誘導体は、ベンゼン環上に少なくとも1つの置換基を有するスチレンを意味し、前記置換基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリール基、フッ素、塩素、ヨウ素等のハロゲン原子等が挙げられる。
スチレン及びその誘導体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、β−ヒドロキシ−(メタ)アクリル酸エチル、γ−アミノ−(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等を例示することができる。本実施形態に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、これらに制限されることはなく、またこれらのエチレン性不飽和化合物は単独又は2種類以上併用して用いてもよい。
本実施形態において、前記エチレン性不飽和化合物の重合体は、前記エチレン性不飽和化合物を1種又は2種以上共重合して得た共重合体であることが好ましく、共重合体である場合には、ランダム共重合体であることが好ましい。
本実施形態において、エチレン性不飽和化合物としては、静電荷像現像用トナーへの応用を考えた場合、その帯電特性、画質特性などの点から、その主成分として、芳香族系ビニル単量体を用いることが好ましく、スチレン又はその誘導体を用いることがより好ましい。
ここで、主成分であるとは、スチレン及びその誘導体が全エチレン性不飽和化合物のうち50重量%以上であることを意味する。スチレン及びその誘導体の含有量が50重量%以上であると、トナーとして使用する場合において、帯電特性(帯電量、帯電速度)が良好である。
前記エチレン性不飽和化合物の重合体のガラス転移点Tgは、40℃以上であることが好ましく、50〜100℃であることが好ましい。上記の数値の範囲内であると、トナーの保存安定性に優れ、現像機内におけるトナー破壊が抑制される。
また、前記エチレン性不飽和化合物の重合体の数平均分子量は5,000〜50,000が好ましく、8,000〜30,000がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、トナーのシステム内強度、定着性、定着後の画像強度が良好であるため好ましい。
さらに、前記エチレン性不飽和化合物の重合体の添加量はトナーを構成する全結着樹脂重量に対して5〜50重量%であることが好ましく、8〜40重量%であることがより好ましく、8〜30重量%がさらに好ましい。
上記の数値の範囲内であると、トナーの現像機内での安定性に優れ、トナーつぶれや凝集が生じることなく、優れた画質特性を獲得することができ、ポリエステルブロック共重合体による十分な低エネルギー定着特性が得られる。
本実施形態において、エチレン性不飽和化合物は、親水性基を有する単量体であってもよい。
親水性基としては、極性基が挙げられ、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基等の酸性極性基、アミノ基等の塩基性極性基、アミド基、ヒドロキシ基、シアノ基、ホルミル基等の中性極性基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、特にトナーに好ましく用いられるのは、酸性極性基である。この酸性極性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体が、樹脂粒子表面に一定量存在することにより、樹脂粒子に凝集性を付与し、樹脂粒子のトナー化が容易となり、さらにトナーに十分な帯電性が与えられる。
好ましく用いられる酸性極性基としては、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。この酸性極性基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及びスルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。上記カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステルを挙げられる。
これらの単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
親水性基を有するエチレン性不飽和化合物をモノマー単位として含有する重合体が好ましく、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合比で0.1〜10mol%含有することが好ましい。上記の数値の範囲内であると、トナー化における凝集性が良好であるため好ましい。
前記結着樹脂は、前記ポリエステルブロック共重合体及びエチレン性不飽和化合物の重合体の他にも非結晶性ポリエステル樹脂等の他の樹脂を含んでいてもよい。前記ポリエステルブロック共重合体及びエチレン性不飽和化合物の重合体の含有量は、全結着樹脂の50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、圧力下での定着性が良好であるため好ましい。
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、内殻と、前記内殻を被覆する少なくとも1層の外殻を有する多層構造の粒子であってもよい。かかる実施形態においては、結着樹脂は、前記内殻及び前記外殻に含まれる樹脂の両方を含む。
本実施形態においては、前記内殻は少なくとも前記ポリエステルブロック共重合体を結着樹脂として含む粒子であることが好ましく、結着樹脂の他にも着色剤及び離型剤等を含む粒子であることがより好ましい。
また、外殻は前記内殻の表面を被覆する結着樹脂層であることが好ましく、機械的強度の観点から、前記ポリエステルブロック共重合体を含まない結着樹脂層であることがより好ましい。トナーの機械的強度を増加させるときには、前記外殻として用いる結着樹脂としては、前記エチレン性不飽和化合物の重合体、非結晶性ポリエステル樹脂等の樹脂を単独又は複数を組み合わせて用いることが好ましい。
(コアシェル構造を有する樹脂粒子)
本実施形態に用いるトナーは、コアシェル構造を有する樹脂粒子(以下、コアシェル粒子ともいう。)を凝集して得られる静電荷像現像用トナーとすることもできる。
トナー中に含まれるコアシェル構造の樹脂粒子が複数個以上であることを確認する方法は、特に制限はなく、透過型電子顕微鏡にてトナーの断面観察を行う方法や、染色などによりコントラストを明瞭にして断面を走査型電子顕微鏡で観察する方法等が挙げられる。また、製造時のトナー粒径とコアシェル粒子の比、コアシェル粒子の使用量、製法等からトナー中に含まれるコアシェル粒子が2個以上であることが明らかである場合もある。
コアシェル粒子におけるコアを構成する樹脂とシェルを構成する樹脂とは、どちらが高Tg樹脂であってもよい。本実施形態においては、コア又はシェルのうちガラス転移温度の高い方を高Tg相、低い方を低Tg相ともいう。
高Tg相のガラス転移温度(Tg)は、45〜80℃であることが好ましく、50〜70℃の範囲にあることがより好ましい。高Tg相のガラス転移温度が45℃以上であると、トナーとしての保管性に優れ、輸送時やプリンタなどの機内においてケーキングや、連続プリント時などに感光体へのフィルミングが発生しにくく、画質欠陥も起こりにくいため好ましい。また、高Tg相のガラス転移温度が80℃以下であると、定着時(特に厚紙定着時)の定着温度が適度であり、用紙カールなど記録媒体へのダメージを生じにくい。
コアシェル構造を有する樹脂粒子は、コアを構成する樹脂のガラス転移温度とシェルを構成する樹脂のガラス転移温度との差が20℃以上であるものが好ましく、30℃以上であるものがより好ましい。高Tg相と低Tg相のガラス転移温度差が20℃以上であると、十分な圧力可塑化挙動が得られ、用紙カールを抑制される。
本実施形態に用いることができるコアシェル構造を有する樹脂粒子としては、特開2007−310064号公報、特開2007−322953号公報に記載された原料及び製造方法を用いて作製した樹脂粒子が挙げられる。
なお、本実施形態において、トナーは結着樹脂としてブロック共重合体を含有するものであることがより好ましい。
(静電荷像現像用トナー及びその製造方法)
本実施形態において、静電荷像現像用トナーの製造方法は、前記バロプラスチックを含む樹脂粒子及び離型剤粒子を含む分散液中で前記樹脂粒子及び前記離型剤粒子を凝集して凝集粒子を得る工程(以下、「凝集工程」ともいう。)、並びに、前記凝集粒子を加熱して融合合一する工程(以下、「融合合一工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
静電荷像現像用トナーの製造方法において、少なくとも樹脂粒子及び離型剤粒子を含む分散液に、必要に応じて、着色剤粒子を含む粒子(着色剤が重合工程等において樹脂中に予め添加されている場合は、それ自体が着色粒子)や他の樹脂粒子、又は、それらの分散液等を添加してもよい。静電荷像現像用トナーの製造方法においては、前記分散液中の前記樹脂粒子、離型剤粒子及びその他の添加した粒子を凝集(会合)させる既知の凝集法を用いて凝集(会合)させることにより、トナー粒径及び粒径分布を調整することが可能である。詳細には、樹脂粒子分散液及び離型剤粒子分散液を、着色剤粒子分散液等と混合し、さらに凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、樹脂粒子のガラス転移温度以上、又は、融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合合一し、洗浄、乾燥することにより静電荷像現像用トナーが得られる。この製法は加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御される。
樹脂粒子分散液を得るために、ブロック共重合体を水系媒体中に分散するいずれの方法を用いてもよく、例えば機械的シェアや超音波などを使用して乳化又は分散される。
樹脂粒子分散液は、界面活性剤や、高分子分散剤、無機分散剤などの添加物を含んでいてもよい。上記の乳化分散の際に必要に応じて界面活性剤や高分子分散剤、無機分散剤などを水系媒体中に添加することも可能である。
なお、本実施形態において、水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水や、エタノール、メタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、エタノールや水が好ましく、蒸留水及びイオン交換水等の水が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、水系媒体は、水混和性の有機溶媒を含んでいてもよい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アセトンや酢酸等が挙げられる。
本実施形態で用いることができる界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用することが好ましい。
アニオン界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3’−ジスルホンジフェニル尿素−4,4’−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2’,5,5’−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4’−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
また高分子分散剤としては、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、無機分散剤としては、炭酸カルシウムなどが例示されるが、これらはなんら本実施形態を制限するものではない。
さらに、通常、水系媒体中での単量体エマルジョン粒子のOstwald Ripening現象を防ぐためにしばしば、ヘプタノールやオクタノールに代表される高級アルコール類、ヘキサデカンに代表される高級脂肪族炭化水素類を安定助剤として配合することもある。
本実施形態の前記凝集工程においては、ブロック共重合体樹脂粒子分散液以外の樹脂粒子分散液とブロック共重合体樹脂粒子分散液を混合し、凝集以降の工程を実施することもある。その際、ブロック共重合体樹脂粒子分散液を予め凝集し第一の凝集粒子形成後、さらにブロック共重合体樹脂粒子分散液又は別の樹脂粒子分散液を添加し第一の粒子表面に第二のシェル層を形成する等、粒子を多層化することもある。また、当然前記の一例と逆の順序で多層粒子を作製することもある。
また、例えば、凝集工程において、ブロック共重合体を含む樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液を予め凝集し、第一の凝集粒子形成後、さらにブロック共重合体を含む樹脂粒子分散液又は別の樹脂粒子分散液を添加して第一の粒子表面に第二のシェル層を形成することもある。この例示においては着色剤分散液を別に調製しているが、当然、本実施形態におけるブロック共重合体に予め着色剤が配合されてもよい。
凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩が好適に用いられる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。凝集に用いる金属塩化合物としては、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族(2〜13族)に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上であることが好ましく、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
また、本実施形態において、ブロック共重合体樹脂粒子分散液以外にも、従来から知られる乳化重合などを用いて作製された付加重合系樹脂粒子分散液が併用される。本実施形態で用いられる付加重合系樹脂粒子分散液中の樹脂粒子のメジアン径は、本実施形態の樹脂粒子分散液と同様に0.02〜2.0μmであることが好ましい。
これらの付加重合系樹脂粒子分散液を作製するための付加重合系単量体の例としては、スチレン、パラクロルスチレンなどのスチレン類、ビニルナフタレン、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメチレン脂肪族カルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリルロニトリル、アクリルアミド、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、例えばN−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物などの含N極性基を有する単量体やメタクリル酸、アクリル酸、桂皮酸、カルボキシエチルアクリレートなどのビニルカルボン酸類などビニル系モノマーの単独重合体及び共重合体など、さらには各種ワックス類もあわせて使用される。
付加重合系単量体の場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂粒子分散液が作製され、その他の樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に溶かし、イオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機により水系媒体中に粒子状に分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を得られる。
また、付加重合系単量体の重合時に重合開始剤や連鎖移動剤を用いることもある。重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、具体的には、特開2007−310064号公報の段落0037に記載されたラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、具体的には炭素原子と硫黄原子との共有結合を持つものが好ましく、例えば、チオール類が好ましく挙げられる。
本実施形態においては、必要に応じて、本実施形態の結果に影響を与えない範囲で公知の添加剤を、1種又は複数が組み合わせて配合される。例えば、難燃剤、難燃助剤、光沢剤、防水剤、撥水剤、磁性体、無機充填剤(表面改質剤)、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料、結着剤、帯電制御剤等である。これらの添加物は、塗布剤を製造するいずれにおいても配合される。なお、本実施形態においてトナーを作製するに当たり、重合樹脂粒子を水系媒体中で重合する際に、予め着色剤やワックスなどの定着助剤、その他帯電助剤など通常トナーに必要な成分を水系媒体中に予め混合し、重合と共に重合樹脂粒子中に配合させることもある。
本実施形態に用いることができる着色剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。
また、染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等が挙げられる。
また、これらの着色剤は単独又は混合して使用される。これらの着色剤は、任意の方法、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等や、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することにより、着色剤粒子の分散液が調製される。
また、これらの着色剤は極性を有する界面活性剤を用いて、ホモジナイザーによって水系に分散され、また、その他の粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段回で添加してもよい。
本実施形態の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。そして、着色剤は、トナー構成固体分総重量に対して4〜15重量%の範囲で添加される。
黒色着色剤として磁性体を用いる場合は、他の着色剤とは異なり、12〜240重量%添加される。
前記の着色剤の配合量は、定着時の発色性を確保するために好ましい量である。
また、トナー中の着色剤粒子の中心径(メジアン径)を100〜330nmにすることにより、OHP透明性及び発色性が確保される。
なお、着色剤粒子の中心径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)で測定される。
本実施形態で用いられる離型剤の具体例としては、例えば、各種エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。
これらのワックス類は、室温付近では、トルエンなど溶剤にはほとんど溶解しないか、溶解しても極めて微量である。
これらのワックス類を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で粒子状に分散させ、1μm以下の粒子の分散液が作製される。
これらの離型剤は、トナー構成固体分総重量に対して5〜25重量%の範囲で添加することが、オイルレス定着システムにおける定着画像の剥離性を確保する上で好ましい。
なお、得られた離型剤粒子分散液の粒径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)で測定される。また、離型剤を使用するときには、樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を凝集した後に、さらに樹脂粒子分散液を追加して凝集粒子表面に樹脂粒子を付着することが帯電性、耐久性を確保する観点から好ましい。
磁性体としては、具体的には、磁場中で磁化される物質を用いるが、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性の粉末、若しくはフェライト、マグネタイト等の化合物が使用される。本実施形態において水系媒体中でトナーを得るときには、磁性体の水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは予め磁性体の表面を改質し、例えば疎水化処理等を施しておくことが好ましい。
帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料やトリフェニルメタン系顔料など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することができるが、凝集や合一時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
重合、顔料分散、樹脂粒子製造や分散、離型剤分散、凝集、又はその安定化などに用いる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用される。
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムを例示できるがこれに限定されるものではない。
凝集粒子の融合合一工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄することが好ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
さらに本実施形態のトナーは、流動性付与やクリーニング性向上等の目的で無機粒子を混合、又は、樹脂粒子表面へ添加して用いることが好ましい。
本実施形態に用いることができる無機粒子としては、好ましくは一次粒径が5nm〜2μmであり、より好ましくは5nm〜500nmである粒子である。またBET法による比表面積は20〜500m2/gであることが好ましい。トナーに混合される割合は0.01〜5重量%であり、好ましくは0.01〜2.0重量%である。
このような無機粒子としては例えば、シリカ粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ粉末が特に好ましい。
ここでいうシリカ粉末はSi−O−Si結合を有する粉末であり、乾式法及び湿式法で製造されたもののいずれも含まれる。また、無水二酸化ケイ素の他、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛などいずれでもよいが、SiO2を85重量%以上含むものが好ましい。
これらシリカ粉末の具体例としては種々の市販のシリカがあるが、表面に疎水性基を有するものが好ましく、例えばAEROSIL R−972、R−974、R−805、R−812(以上、日本アエロジル(株)製)、タラックス500(タルコ社製)等を挙げることができる。その他シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコンオイル、側鎖にアミンを有するシリコンオイル等で処理されたシリカ粉末などが使用される。
本実施形態に用いるトナーの累積体積平均粒径D50は3.0〜9.0μmの範囲が適当である。D50が3.0μm以上であると、付着力が適度であり、現像性に優れるため好ましい。また、D50が9.0μm以下であると、画像の解像性が良好であるため好ましい。
また、本実施形態に用いるトナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.30以下であることが好ましい。GSDvが1.30以下であると解像性が良好で、トナー飛散やカブリ等の画像欠陥が起こりにくいため好ましい。
本実施形態に用いるトナーの累積体積平均粒径D50や平均粒度分布指標GSDvは、例えば、コールターカウンターTA−II(ベックマン・コールター(株)製)、マルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)等の測定機器で測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16P、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50P、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84Pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16V1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84P/D16P1/2として算出される。
本実施形態のトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点より100〜140の範囲であることが好ましく、110〜135の範囲であることがより好ましい。本実施形態の形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像を画像解析装置によって解析することによって数値化でき、例えば、次のような方法で求められる。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて、トナー粒子の絶対最大長、トナー粒子の投影面積を測定し、SF1を下記の式にて求めることができる。
SF1={(ML)2/A}×(π/4)×100
式中、MLはトナー粒子の最大長を示し、Aは粒子の投影面積を表す。
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
(ブロック共重合体(1)の合成)
ブロック化ビニル樹脂の合成例を説明する。
還流冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたガラス容器にスチレンモノマー(St)150部と2−エチルヘキシルアクリレート7部、MBPAP(MBPAP:2−メチル−2−[N−(tert−ブチル)−N−(1−ジエトキシホスホリル−2,2−ジメチルプロピル)−アミノキシ]−プロピオン酸)14.8部を添加し、窒素気流下80℃にてよく混合し、温度を110℃に上昇させスチレンと2−エチルヘキシルアクリレートの重合を行った。分子量をGPCにて随時測定し、スチレンの数平均分子量が10,000になった時点で、重量減量法にて残留スチレン量を測定し重合率(転化率)を求めたところ99.5%であった。その後、ステアリルアクリレート(StA)210部と2−エチルヘキシルアクリレート20部を添加し130℃にて重合を継続し、ステアリルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートでの鎖延長を行った。
ステアリルアクリレートブロックユニットの数平均分子量数が40,000、初めに重合したスチレン鎖との合計が数平均分子量で60,000になったところで室温まで冷却した。重合物をTHF(THF:テトラヒドロフラン)225部に溶解して取り出し、メタノールに滴下してブロックポリマーを再沈殿させた後、沈殿物を濾過、さらにメタノールで洗浄を繰り返した後、真空凍結乾燥を行い、スチレンとステアリルアクリレートのブロック共重合樹脂(1)を得た。
ブロック共重合樹脂(1)のガラス転移温度は28℃であった。また、フローテスター粘度測定におけるT(1MPa)−T(10MPa)は、32℃であった。
(樹脂粒子分散液(1)の調製)
上記ブロック共重合樹脂(1)400部に、ソルビタンセスキオレートを8.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部を溶解したメチルエチルケトン(MEK)120部を添加し、還流冷却管、撹拌機、イオン交換水滴下装置、加熱装置の付いた反応器に投入後、65℃にてよく混合した。その後、65℃にて1時間加熱混合を行った後、1,000部のイオン交換水を1部/minの速度で滴下し、ブロック共重合樹脂(1)の転相乳化を行った。さらに転相乳化物を冷却し、エバポレーターを用い、60℃減圧下において、乳化液からMEKを除去し、樹脂粒子分散液(1)を得た。
得られた樹脂粒子分散液(1)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は210nm、固形分濃度40%であった。
(着色剤粒子分散液(C1)の調製)
シアン顔料 50重量部
(大日精化工業(株)製、銅フタロシアニン C.I.Pigment Blue15:3)
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR) 5重量部
イオン交換水 200重量部
前記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により5分間分散した後、超音波バスにより10分間分散し、中心径190nm、固形分量21.5%のシアン着色剤粒子分散液を得た。
(離型剤粒子分散液(W1)の調製)
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR) 2重量部
イオン交換水 800重量部
カルナバワックス 215重量部
上記成分を混合し、100℃に加熱し融解した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で15分間乳化した後、さらにゴーリンホモジナイザーを用いて100℃にて乳化を行った。これにより粒子の中心径が170nm、融点が83℃、固形分量が21.5%の離型剤粒子分散液を得た。
(トナー粒子(1)の調製)
次に、トナーの調製についてについて説明する。配合は以下の通りである。
樹脂粒子分散液(1) 272部(樹脂54.4部)
着色剤粒子分散液(C1) 40部(顔料8.6部)
離型剤粒子分散液(W1) 80部(離型剤17.2部)
ポリ塩化アルミニウム 0.15部
イオン交換水 300部
上記配合に従って、成分を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(1)を105部(樹脂21部)追加して緩やかに撹拌した。その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95℃まで加熱した。95℃までの昇温の間、通常の場合、系内のpHは、5.0以下まで低下するが、ここでは水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが5.5以下とならない様に保持した。反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行いシアントナー粒子(1)を得た。このトナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.25であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は133のポテト形状であった。
上記トナー粒子50部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)1.5部を添加し、サンプルミルで混合してシアン色の静電荷像現像用トナー(1)を得た。
そして、ポリメチルメタクリレート(綜研化学(株)製、Mw75,000)を1%被覆した平均粒径50μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が5%になるように前記の外添トナーを秤量し、両者をボールミルで5分間撹拌・混合して静電荷像現像剤(1)を調製した。
<トナーの評価>
静電荷像現像用トナー(1)は、(株)島津製作所製フローテスターCFT−500A型で10MPa、1Mpaの圧力下での104Pa・sになるときの温度がそれぞれ、24℃、102℃であり、78℃の温度差が観測された。
マゼンタ、イエロー及びブラックの静電荷像現像用トナー(1)は、シアン顔料の代わりにマゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド57:2)、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー97)又はブラック顔料(カーボンブラック R330)を用いた以外は、シアンの静電荷像現像用トナー(1)と同様にして調製した。マゼンタ、イエロー及びブラックの静電荷像現像用トナー(1)について、(株)島津製作所製フローテスターCFT−500A型を用いて10MPa、1MPaの圧力下での104Pa・sになるときの温度を測定した結果、シアンの静電荷像現像用トナー(1)と同じ結果が得られた。
<定着装置のニップ構成>
この装置のニップ構成を決めるにあたり実施した実験結果を以下に示す。図5に25℃でのフローテスター印加圧力におけるトナー粘度を示す。これより、本トナーは圧力3MPa以上で急激に粘度が低下し5MPa以上で約104Pa・sとなりほぼ飽和している。印加圧力としては、図5でトナー粘度が105Pa・s以下になるような圧力にすると、トナーが流動しやすくなり高い画像グロスが得やすくなるので好ましい。そこで、5MPaで加圧するロール対の構成とした。
次に、ロール速度を変更し、ニップ時間と画像グロスの関係を調べた結果を図6に示す。用紙はOKトップコートNの127gsm(g/m2)を用いた。画像は、シアン、マゼンタ、イエロートナーを各々4g/m2用紙に転写したベタ画像を用いた。図6より、画像グロスはニップ時間とともに増加するが、100ms近傍でほぼ飽和している。
ここで「飽和」という言葉の定義について説明する。本実施例において、画像グロス増加率(画像グロスのニップ時間に対する増加率)を図6より算出し、画像グロス増加率が0.2%/ms以下になった点を飽和したとする。
図6では、100msで傾きが0.2%/ms以下になっており、飽和点は100msとした。これより、定着装置としては圧力5MPa(50kgf/cm2)以上、ニップ時間が100ms以上であれば高光沢の性能を出せる。しかしながら、1つのロール対でこの条件を満たすには、大径ロール、大荷重、また大荷重を支えるための筐体が必要となり、装置としては非常に大型になってしまう。
そこで、装置を小型化するために複数の加圧部を隣接して設ける構成とし、段階的にトナー粘度を小さくして定着させ高グロスを得る必要がある。複数の加圧部にする場合は、各々の加圧部のニップ時間の合計が100ms以上であれば単一ニップで画像グロスが飽和するときののほぼ80%以上のニップ時間になるので、高グロスが得やすくて好ましい。そこで、ニップ時間の合計を100msになるような構成とし、各々のニップの間隔を決めるために以下の実験を実施した。図7に、5MPaの複数加圧部を5個設け、それらの間隔を変更して5回の加圧定着を実施し、1回のみの加圧時の画像グロスとの増加分を求めた結果を示す。このとき、定着装置のプロセス速度は50mm/sとした。この結果より、2s以上の間隔にすると急激にグロス変化が小さくなっている。これは、本実施例におけるトナーは、圧力解放後1.5sまではトナーが流動できる粘度が残っている状態を示している。通常の熱可塑性のトナーは加熱加圧定着した後に室温におくと0.1s程度で硬化するが、本実施形態のトナーは圧力解放後に粘性が維持できる特徴的な特性を有している。
図8にトナーの粘度が加圧・解放によって変化する様子を概念図で示す。加圧でトナー粘度が大きく低下するが、圧力を解放してもすぐには元の粘性には戻らない特性であるため、粘性が元に戻る前に次の加圧をすることでより短いニップ時間でも粘性が低くなる。これを繰り返すことにより、トナーを十分流動させるための粘性に達し、複数の加圧部をニップ間隔1s程度で離して配置しても高光沢が得られることが分かる。
また、通常の熱可塑性のトナーを定着する場合には、定着装置の加圧部を例えば150℃程度に加熱して熱と圧力によりトナーを溶融する必要がある。その際に、用紙やトナーの内部に含まれている水分が100℃以上に加熱されて水蒸気が発生し、用紙とトナーと定着部材との密着性不良や定着画像の水蒸気による点状の画像欠陥が発生することがある。そのために、本発明のように複数の加圧部を隣接して設けるためには、各々の加圧部間のギャップでの圧力が水蒸気圧より低圧にならないようにロール間に固定部材を配置する等の対応が必要となり設計上の規制が多い。本発明では、熱を用いず圧力のみでトナーを安定して溶融させるために、水蒸気発生による画像欠陥がないばかりでなく設計の自由度が増す利点も有している。
次に、複数加圧する回数による画像グロスの増加を調べた結果を図9に示す。なお、定着装置のプロセス速度は50mm/s、各々のニップ間隔は1sとした。また、比較のため、トナーが圧力解放後に60s放置し十分硬化した後に加圧を繰り返したときの画像グロス結果、また、比較のため通常の熱可塑性トナーを非加熱で繰り返し加圧したときの結果も示している。
これらの結果から、ニップ間隔が1sの条件では複数加圧の回数が多いほど画像グロスは増加し、間隔が60sの条件では画像グロスが約5回加圧で飽和し値も小さくなっており、ニップ間隔1sの条件では圧力解放後にトナーが流動できる粘度が残っていることが分かる。また、熱可塑性のトナーは非加熱では画像グロスの変化が小さく高光沢が得難く、本発明構成が優位であることが示されている。
(比較例1)
比較例では、実施例で使用した樹脂粒子分散液(1)の代わりに、以下の樹脂粒子分散液(C1)を用いた以外はすべて実施例と同様にトナーを作製し評価した。
<比較用トナー粒子(1)の調製、樹脂粒子分散液(C1)の作製(スチレン−ブチルメタクリレート系、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)>
丸型ガラスフラスコ中に、300部のイオン交換水と1.5部のTTAB(テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、(株)シグマ社製)を入れ、20分間、窒素バブリングを実施し、撹拌しながら65℃まで昇温した。n−ブチルメタクリレートモノマー40部を加え、さらに20分間撹拌を行った。開始剤V−50(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、和光純薬工業(株)製)0.5部を予め、10部のイオン交換水に溶解後、フラスコ中に投入した。65℃で、3時間保持し、スチレンモノマー50部と、n−ブチルアクリレートモノマー25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部及び0.8部のドデカンチオールを0.5部のTTABを溶解したイオン交換水100部に乳化した乳化液を2時間かけて定量ポンプを用いてフラスコ中に連続的に投入した。温度を70℃に昇温、さらに2時間保持して、重合を完了した。
重量平均分子量Mwは19,000、平均粒径は280nm、固形分量が25重量%の樹脂粒子分散液(C1)を得た。樹脂を40℃で風乾後、−150℃から(株)島津製作所製示差走査熱量計(DSC)でガラス転移温度を分析すると、25℃付近にポリブチルメタクリレートによるガラス転移が観測され、また42℃付近にスチレン−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体からなると考えられる共重合体によるガラス転移が観測された(ガラス転移温度差:17℃)。
実施例1と同様に静電荷像現像用トナー(C1)を作製し、トナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が5.5μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.19であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は129のポテト形状であった。
実施例1と同様に(株)島津製作所製フローテスターCFT−500A型で10MPa、1MPaの圧力下での104Pa・sになるときの温度がそれぞれ、120℃、110℃であり、10℃の温度差が観測された。
<実施例2>
図3に第二の実施例説明図を示す。本実施例は、実施例1に対してトナー側の加圧部材1を単一のロールで構成した以外は実施例1と略同一である。
<実施例3>
図4に第三の実施例説明図を示す。本実施例は、実施例1に対してトナーの載り面と反対面の対向部材2を単一のロールで構成した以外は実施例1と略同一である。
1、1−1、1−2、1−3、1−4、1−5 加圧部材
2、2−1、2−2、2−3、2−4、2−5 対向部材
3、4 ベルト張架ロール
5、6 ベルト(無端状ベルト)
7 転写材
10 一次転写部
11 感光体ドラム
12 帯電器
13 レーザ露光器
14 現像器
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
17 ドラムクリーナ
20 二次転写部
22 二次転写ロール
25 バックアップロール
30Y、30M、30C、30K 画像形成ユニット
31 駆動ロール
40 制御部
60 定着装置

Claims (11)

  1. 複数のニップ部と、
    トナーが転写された転写材をニップ部に搬送する搬送手段と、を有し、
    前記ニップ部における印加圧力の少なくとも1つが、前記トナーのフローテスター溶融粘度が10 5 Pa・sになる圧力P1以上であり、
    前記トナーのフローテスター溶融粘度が10 5 Pa・sになる圧力P1以上で加圧している時間の合計T1は、前記圧力P1においてニップ時間を長くした場合に画像グロス飽和点の値G1の80%に達する時間T0以上であり、
    前記ニップ部において前記圧力P1以上で加圧するインターバル時間I1は、加圧合計時間をT1にして加圧間隔を長くしたときに画像グロスが画像グロス飽和点の値G1の50%になる時間以下であり、
    前記トナーが下記式(1)を満たすことを特徴とする
    定着装置。
    20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃ (1)
    (式(1)中、T(10MPa)は、フローテスター印加圧力10MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(1MPa)は、フローテスター印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。)
  2. 前記トナーがエチレン性不飽和化合物を重合させたブロックよりなるブロック共重合体を含有する、請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記ブロック共重合体が、ブロックA及びブロックBよりなるジブロック共重合体であり、ブロックAのガラス転移点Tg(A)が60℃以上であり、ブロックBのガラス転移点Tg(B)が20℃以下である、請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記Tg(A)と、前記Tg(B)との差が60℃以上である、請求項3に記載の定着装置。
  5. 前記定着装置と前記転写材との剥離部が1箇所である、請求項1〜4いずれか1つに記載の定着装置。
  6. 前記ニップ部が加圧部材及び対向部材を有し、前記加圧部材及び/又は前記対向部材に沿って、加圧部材と対向部材との間に配置された無端状ベルトを有する、請求項1〜5いずれか1つの定着装置。
  7. 像保持体と、
    前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
    前記像保持体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、
    前記静電潜像を現像剤によりトナー像に現像する現像手段と、
    前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
    前記被転写体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、
    前記定着手段として、請求項1〜6いずれか1つに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
  8. 像保持体表面を帯電させる帯電工程と、
    帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、
    前記像保持体の表面に形成された潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
    前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写工程と、
    前記被転写体に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を有し、
    前記定着工程における印加圧力の少なくとも1つが、前記トナーのフローテスター溶融粘度が10 5 Pa・s以下になる圧力以上であり、
    前記定着工程において、前記トナーのフローテスター溶融粘度が10 5 Pa・s以下になる圧力P1以上で加圧している時間の合計T1は、前記圧力P1においてニップ時間を長くした場合に画像グロス飽和点の値G1の80%に達する時間T0以上であり、
    前記定着工程において、前記圧力P1以上で加圧するインターバル時間I1は、加圧合計時間をT1にして加圧間隔を長くしたときに画像グロスが画像グロス飽和点の値G1の50%になる時間以下であり、
    前記トナーが下記式(1)を満たし、
    前記定着工程において、複数回加圧することを特徴とする
    画像形成方法。
    20℃≦T(1MPa)−T(10MPa)≦120℃ (1)
    (式(1)中、T(10MPa)は、フローテスター印加圧力10MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(1MPa)は、フローテスター印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。)
  9. 前記トナーがエチレン性不飽和化合物を重合させたブロックよりなるブロック共重合体を含有する、請求項8に記載の画像形成方法。
  10. 前記ブロック共重合体が、ブロックA及びブロックBよりなるジブロック共重合体であり、ブロックAのガラス転移点Tg(A)が60℃以上であり、ブロックBのガラス転移点Tg(B)が20℃以下である、請求項9に記載の画像形成方法。
  11. 前記Tg(A)と、前記Tg(B)との差が60℃以上である、請求項10に記載の画像形成方法。
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